説明

リチウム一次電池

一次リチウム電池が提供され、該電池は、リチウムを含むアノード及び二硫化鉄を含むカソードを有する。電池の特徴は、リチウムの最大許容レベル及び標準電池寸法によって課される制約内で、電池の性能を向上するために最適化される。本発明の最初の態様では、該電池の電解質は、リチウム塩と、1,3−ジオキソランと、グリコールジエーテルと、水とを含む。本発明の別の態様では、電池は、5mm未満の内部穴径(56)を有する、PTC装置(54)を含む。本発明の更なる態様では、電池は、アノード(40)と缶(20)との間に電気的接続を確立するように構成されたアノードタブ(18)であって、缶に溶接される、アノードタブと、キャップアセンブリに溶接されるカソードタブ(58)と、を含む。本発明の最後の態様では、電池のカソードタブ及びアノードタブのそれぞれの少なくとも一部分は、絶縁テープで被覆される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムを含むアノードと、二硫化鉄(FeS)を含むカソードとを有する、リチウム一次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムのアノードを有する一次(非充電式)電気化学電池は知られており、また広範囲に亙って商業化されている。アノードは、本質的にリチウム金属から構成されている。一種の一次リチウム電池は、黄鉄鉱としても既知の二硫化鉄(FeS)を含むカソードを有する。そのような電池は、Li/FeS電池と表される。また、リチウム電池は、有機溶媒に溶解したリチウムトリフルオロメタンスルホン酸(LiCFSO)等のリチウム塩を備えた、電解質も含む。これらの電池は、当該技術分野において、一次リチウム電池と呼ばれ、一般に、充電式であることは意図されない。これらの電池は、円筒形電池の形態であり、典型的に、AAサイズ又はAAAサイズの電池であるが、他のサイズの円筒形電池であってもよい。Li/FeS電池は、一般に、約1.2〜1.8ボルトの電圧(未使用)を有し、これは、従来のZn/MnOアルカリ電池とほぼ同一である。しかしながら、Li/FeS電池のエネルギー密度(電池体積cm当たりのワット−時間)は、類似サイズのZn/MnOアルカリ電池よりも高い。
【0003】
Li/FeS電池全体は、同一のサイズのZn/MnOアルカリ電池よりもかなり強力である。つまり、所与の連続する電流ドレインでは、電圧対時間の放電プロファイルにおいて明らかであり得るように、特に200mAmPを越える、より高い電流ドレインで、Li/FeS電池の電圧は、Zn/MnOアルカリ電池より長い期間、より平坦である。結果として、Li/FeS電池から、同一のサイズのアルカリ電池から得られるエネルギー出力と比較して、より高いエネルギー出力が得られる。
【0004】
それ故、Li/FeS電池は、Li/FeS電池が従来のZn/MnOアルカリ電池と交換可能に使用することができ、かつより長い耐用年数を有する点で、特により高い電力要求に関して、同一のサイズのアルカリ電池、例えば、AAA、AA、C若しくはDサイズ又は任意の他のサイズの電池を凌ぐ利点を有する。同様に、Li/FeS電池は、Li/FeS電池とほぼ同一の電圧(未使用)を有する、同一のサイズの充電式ニッケル水素電池の代替品として使用することができる。それ故、一次Li/FeS電池は、高パルス電力需要での動作を必要とするデジタルカメラに電力を供給するために使用することができる。
【0005】
Li/FeS電池のカソード材料は、最初に、従来のコーティング方法によって金属基材上に容易にコーティングすることができる、スラリー混合物(カソードスラリー)等の形態で調製されてもよい。電池に添加される電解質は、所望の高電力出力範囲にわたって必要な電気化学反応を効率的に生じさせる、Li/FeS系に好適な有機電解質でなければならない。電解質は、良好なイオン伝導度を呈し、また、十分に安定であり、未放電電極材料(アノード及びカソード構成要素)との望ましくない反応を引き起こさず、また、放電生成物に対して非反応性でなければならない。更に、電解質は、必要な還元反応に関与し、結果としてカソードにLiS生成物をもたらすことができるように、良好なイオン移動度及びアノードからカソードへのリチウムイオン(Li+)の輸送を可能にするべきである。
【0006】
カソードは、一般に、FeS活性材料、伝導性炭素粒子、及び結合剤を含む、固体を含有した、スラリーの形態で調製される。結合剤を溶解し、スラリー内の固体構成要素の良好な分散及び混合を提供するために、溶媒が添加される。カソードスラリーは、薄い伝導性基材の片側又は両側上にコーティングされ、次いで、溶媒が蒸発し、基材の片側又は両側上に乾燥カソードコーティングが残るように乾燥され、カソード複合材料シートを形成する。
【0007】
電池電極アセンブリは、リチウムのシート、FeS活性材料を含有するカソード複合シート、及びセパレータをその間に用いて形成される。電極アセンブリは、例えば、米国特許第4,707,421号に示されるように、らせん状に巻き付けられ、電池ケーシングに挿入されてもよい。Li/FeS電池のための代表的なカソードコーティング混合物は、米国特許第6,849,360号に記載される。アノードシートの一部分(例えば、アノードタブ)は、典型的に、電池の負端子を形成する電池ケーシングに電気的に接続される。電池は、ケーシングから絶縁されたエンドキャップで閉じられている。カソード複合材料シートから延在するカソードタブを、電池の正端子を形成する端部キャップに電気的に接続することができる。ケーシングは、一般に、端部キャップの周囲縁部上で曲げられて、ケーシングの開放端部を封止している。電池は、外部短絡放電又は過熱等の不正な条件に暴露される場合に、電池を停止させるために、内部にPTC(正の熱係数)装置等を備えてもよい。
【0008】
一次Li/FeS電池で使用される電解質は、有機溶媒に溶解したリチウム塩で形成される。Li/FeS一次電池の電解質に使用され得る代表的なリチウム塩は、米国特許第5,290,414号及び米国特許第6,849,360 B2号に参照され、これには、リチウムトリフルオロメタンスルホン酸、LiCFSO(LiTFS)、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、Li(CFSON(LiTFSI)、ヨウ化リチウム、LiI、臭化リチウム、LiBr、テトラフルオロホウ酸リチウム、LiBF、ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiPF、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、LiAsF、Li(CFSOC、及び様々な混合物等の塩が挙げられる。一般に、特定の塩は、特定の電解質溶媒混合物と最もよく働く。米国特許第6,218,054号、同第5,290,414号、及び同第5,514,491号は、1,3ジオキソラン及びジメトキシエタン(DME)の混合物中に溶質としてヨウ化リチウムを含有している電解質の製剤を開示する。これらの参照では、全ての開示される電解質製剤は、ジオキソランよりDMEを大幅に多く含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,707,421号
【特許文献2】米国特許第6,849,360号
【特許文献3】米国特許第5,290,414号
【特許文献4】米国特許第6,849,360 B2号
【特許文献5】米国特許第6,218,054号
【特許文献6】米国特許第5,514,491号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
広くは、本発明は、一次リチウム電池及びそのような電池を作製するための方法を取り上げる。
【0011】
一態様では、本発明は、リチウムを含むアノードと、二硫化鉄を含むカソードと、アノード及びカソードの間に配置されたセパレータと、リチウム塩、1,3−ジオキソラン、グリコールジエテル、及び水を含む電解質と、を備えた、一次リチウム電池を取り上げる。
【0012】
一部の実施態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含む。グリコールジエーテルは、DMEを含む。1,3−ジオキソラン対DMEの重量比は、4:6〜9:1の範囲である。電解質中の水の濃度は、約50ppm〜1000ppm、例えば、約100ppm〜600ppm又は約100ppm〜300ppmである。電解質は、LiI、LiCl、LiBr LiClO、LiAsF、LiPF、LiTFS、LiTFSI、LiBOBからなる群から選択される、2つ以上の塩の混合物を含む。電解質は、約0.006〜0.5M/Lの濃度のLiTFSと組み合わせて、約0.5〜2.0M/Lの濃度でLiIを含む。電解質は、3,5−ジメチルイソオキサゾール(DMI)、ピリジン、トリメチルピラゾール、ジメチルピラゾール、及びジメチルイミダゾールからなる群から選択される、添加剤を更に含む。
【0013】
一部の実施態様では、電池は、予放電されており、アノードは、電池の製造中に伸張されるリチウムホイルを含む。一部のそのような場合では、アノードは、リチウムホイルの伸張及び電池の予放電の後に、約1.0g、例えば、約0.9g〜1.0gの重量のリチウムを含んでもよい。
【0014】
電池は、場合によっては、1未満、例えば、0.83〜0.96又は0.87〜0.91のアノード/カソード比を有するように、平衡が保たれてもよい。
【0015】
別の態様では、本発明は、缶と、缶に封止された、正端子を備えたキャップアセンブリと、缶内に配置された、らせん状に巻き付けられた電極アセンブリと、を備える、一次リチウム電池を取り上げる。電極アセンブリは、リチウムを含むアノードと、二硫化鉄を含むカソードと、アノードとカソードとの間に配置されたセパレータと、を含み、アノードと缶との間に電気的接続を確立するように構成されたアノードタブであって、缶に溶接されるアノードタブ、及びカソードと正端子との間に電気的接続を確立するように構成されて、キャップアセンブリに溶接されたカソードタブと、を更に備える。
【0016】
一部の実施態様は、以下の特徴のうちの1つ以上、並びに任意の上述される特徴を含んでもよい。カソードタブは、Z折りを含む。電池は、アノードタブを缶に接続するためにアノードタブと缶との間に溶接された、金属溶接ディスクを更に備える。
【0017】
更に別の態様では、本発明は、らせん状に巻き付けられた電極アセンブリを缶に挿入する工程であって、電極アセンブリが、リチウムを含むアノード、二硫化鉄を含むカソード、及びアノードとカソードとの間に配置されるセパレータとを備えるたのである、工程と、アノードから延在するアノードタブを缶に溶接する工程と、カソードから延在するカソードタブをバッテリの正端子に溶接する工程と、を含む、一次リチウム電池を製造する方法を取り上げる。
【0018】
一部の実施態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含む。カソードタブを溶接する工程は、カソードタブを正端子を備えたキャップアセンブリに溶接する工程を含む。その方法は、アノードタブを金属溶接ディスクに溶接する工程と、金属溶接ディスクを缶に溶接する工程と、を更に含む。その方法は、カソードタブ内にZ折りを形成する工程を更に含む。その方法は、金属シートを延伸して缶本体を形成し、缶本体をニッケルめっきすることによって、缶を形成する工程を更に含む。
【0019】
更なる態様では、本発明は、リチウムを含むアノードと、二硫化鉄を含むカソードと、アノードとカソードとの間に配置されたセパレータと、約5mm未満の内部穴径を有するPTC装置と、を備える、一次リチウム電池を取り上げる。
【0020】
一部の実施態様では、PTC装置は、約2.00mm未満の内部穴径を有する。電池は、任意の上述される特徴を含んでもよい。
【0021】
更に別の態様では、本発明は、らせん状に巻き付けられた電極アセンブリを缶に挿入する工程であって、電極アセンブリが、リチウムを含むアノード、二硫化鉄を含むカソード、及びアノードとカソードとの間に配置されたセパレータとを含み、カソード及びアノードが、それぞれ、カソードタブ及びアノードタブを含むものである、工程と、カソードタブ及びアノードタブのそれぞれの少なくとも一部分に絶縁テープを適用する工程と、アノードタブと缶との間に電気的接続を確立する工程と、カソードタブとバッテリの正端子との間に電気的接続を確立する工程と、を含む、一次リチウム電池を製造する方法を取り上げる。
【0022】
場合によっては、絶縁テープを適用する工程は、電極アセンブリがらせん状に巻き付けられる前に実施される。テープは、合成ゴムポリイソブテン接着剤と共に、ポリプロピレンフィルムを含んでもよい。電池は、任意の上述される特徴を含んでもよい。
【0023】
また、本発明は、別の態様では、缶と、缶に封止された、正端子を含むキャップアセンブリと、缶内にらせん状に巻き付けられた電極アセンブリと、を含む、一次リチウム電池を取り上げる。電極アセンブリは、リチウムを含み、缶に電気的に接続されたアノードタブを備えた、アノード、二硫化鉄を含み、正端子に電気的に接続されたカソードタブを備えた、カソード、及びアノードとカソードとの間に配置されたセパレータ、を備える。カソードタブ及びアノードタブのそれぞれの少なくとも一部分が、絶縁テープで被覆される。
【0024】
場合によっては、アノードタブは、缶に溶接され、カソードタブは、正端子に溶接される。電池は、任意の上述される特徴を含んでもよい。
【0025】
更なる態様では、本発明は、缶と、アニールされたポリプロピレンコポリマーを備える封止によって缶に封止された、正端子を備えたキャップアセンブリと、缶内に、らせん状に巻き付けられた電極アセンブリであって、リチウムを含み、缶に電気的に接続されたアノードタブを備えた、アノード、二硫化鉄を含み、正端子に電気的に接続されたカソードタブを備えた、カソード、及びアノードとカソードとの間に配置されたセパレータ、を備える、電極アセンブリと、を備える、一次リチウム電池を取り上げる。
【0026】
場合によっては、アノードタブは、缶に溶接され、カソードタブは、正端子に溶接される。電池は、任意の上述される特徴を含んでもよい。
【0027】
別の態様では、本発明は、リチウムを含むアノード、二硫化鉄を含むカソード、アノードとカソードとの間に配置されたセパレータを備えた、電極アセンブリを形成する工程と、電極アセンブリを缶に挿入する工程と、電池に、リチウム塩、1,3−ジオキソラン、グリコールジエーテル、及び水を含む、電解質を添加する工程と、を含む、一次リチウム電池を作製する方法を取り上げる。
【0028】
方法、及び方法によって形成される電池は、任意の上述された特徴を含むことができる。また、一部の実施態様では、方法は、アノードのリチウム含有量を所定のリチウム含有量に低減するために、電池を予放電する工程、及び/又は電池が1未満のアノード/カソード比を有するように、電池の平衡を保つ工程を含むことができる。
【0029】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0030】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を添付図面及び以下の説明に示す。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一実施態様による、円筒形リチウム一次電池の概略図。
【図2】アノードタブに溶接された溶接ディスクを有する、アノードタブの概略図。
【図3】リチウム一次電池の概略断面図。
【図3A】図3の領域Aの拡大詳細図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書に記載される電池では、電池の安全性を維持する一方で、電池の性能を向上するという全体的な目的を達成するために、多数の特徴が最適化されている。政府規制によって、電池が含有することができるリチウムの量が制限されており(現在、最大1グラム)、一方、標準電池サイズは、電池の外部体積を決定し、それ故、使用できる可能な内部電池体積に制限を課す。これらの制約内で電池の性能を最適化するために、本明細書に開示される電池は、高率の電池の活性物質(好ましい実施態様では、電池の活性物質の実質的に全て)を効率的に利用するように設計された。内部電池体積は、活性構成要素対不活性構成要素の割合を有するように、最大化されている。
【0033】
一般的な電池構成
図1を参照すると、電池10は、筐体又は「缶」20と、リチウム金属を含むアノードシート40と、セパレータ50と、二硫化鉄(FeS)を含むカソードシート60と、を備える。また、電池は、電解質も含む。
【0034】
電池は、任意のサイズ、例えば、AAAA(40.2×8.4mm)、AAA(44.5×10.5mm)、AA(50×14mm)、C(49.2×25.5mm)、又はD(60.5×33.2mm)サイズのものであってもよい。また、電池10は、「2/3A」電池(33.5×16.2mm)又はCR2電池(26.6×15.3mm)であってもよい。
【0035】
電池は、円筒形であってもよく、又はらせん状に巻き付けられた平らな電池若しくは角柱形電池、例えば、立方形の全体形状を有する方形電池の形態であってもよい。らせん状に巻き付けられた電池では、筐体20の好ましい形状は、図1に示されるような円筒形である。アノード、カソード、及びセパレータは、平らな電極複合材料をらせん状に巻き付けることによって作ることができる、らせん状に巻き付けられた電極アセンブリ25(図2)を画定する。
【0036】
電解質
一部の実施態様では、電解質は、リチウム塩の溶媒への溶解度を最適化するように製剤される。好ましい電解質は、ヨウ化リチウム、別のリチウム塩(例えば、LiTFS)、1,3ジオキソラン及び1,2−ジメトキシエタン(DME)の混合物、並びに少量の水を含む。
【0037】
ヨウ化リチウムの溶解度は、1,3ジオキソランへの溶解度の方が、DMEへの溶解度より大幅に高い。これらの2つの溶媒の量の平衡を保つことによって、ヨウ化リチウムの溶解度を最適化することができ、それによって、特に負温度での電解質の伝導度を向上する。
【0038】
更に、場合によっては、DMEは、金属リチウムとの反応性を呈する。結果として、過剰のDMEは、金属リチウムと接触する際に電解質中で副反応を誘起することによって、電池に悪影響を及ぼす場合がある。
【0039】
それ故、本明細書に開示される電池の好ましい電解質は、ジオキソラン及びDMEの組み合わせを使用する。ジオキソラン対DMEの重量比は、一般に、少なくとも2:3であるべきである。比は、塩の溶解度を増加し、DMEの金属リチウムに対する見込まれる反応性を抑制するように選択される。ジオキソラン対DMEの好ましい重量比は、一般に、4:6〜9:1の範囲である。
【0040】
一般に、水は、電解質の伝導度を改善するために、約50ppm〜1000ppmの濃度で電解質中に存在するべきである。
【0041】
電解質は、例えば、以下のリスト、LiI、LiCl、Li Br LiC1O、LiAsF、LiPF、LiTFS、LiTFSI、LiBOBから選択され得る、2つ以上の塩の混合物を含んでもよい。好ましい組み合わせは、約0.006〜0.5M/Lの濃度のLiTFSと組み合わせて、約0.5〜2.0M/Lの濃度のLiIを含む。
【0042】
ジオキソランの見込まれる重合を抑制するために、DMEと、ジオキソランと、水との混合物に加えて、所望により、3,5−ジメチルイソオキサゾール(DMI)(0.1重量%〜1重量%)の添加剤を含むことができる。DMIの代替物には、ピリジン、トリメチルピラゾール、ジメチルピラゾール、又はジメチルイミダゾールが挙げられる。この溶媒の混合物中のLiIの濃度の範囲は、約0.5M〜2.0Mである。
【0043】
また、エーテル類の他の組み合わせも使用することができる。例えば、1,2ジエトキシエタン(又は他のグリム類(グリコールジエーテル類))を、DMEの全て又は一部分に代用することができる。テトラヒドロフラン(THF)、若しくはMe−THF、又はTHFの類似する誘導体を、ジオキソランの全て又は一部分の代用として使用することができる。
【0044】
電解質製剤は、例えば、(混合物中の溶媒の重量%)
以下の溶媒の混合物、70%のジオキソラン、30%のDME、0.2%のDMI、及び150ppmの水中に、0.8MのLiI+0.006M/LのLiTFSを含んでもよい。
【0045】
別の実施例として、製剤は、
以下の溶媒の混合物、45%のジオキソラン、55%のDME、0.2%のDMI、及び150ppmの水中に、0.8MのLiI+0.006M/LのLiTFSを含んでもよい。
【0046】
他の好適な電解質が使用されてもよい。例えば、電解質は、体積比が8:2のジオキソラン及びスルホランの混合物、0.8MのLiTFSI塩、600〜1000ppmのピリジン、及び100〜300ppmの水を含んでもよい。
【0047】
好ましくは、AA電池は、少なくとも1.7cmの電解質を含む。
【0048】
電池筐体(缶)
缶は、好ましくは、約0.15mm〜0.40mm、好ましくは約0.26〜0.31mmの壁厚さを有する、ニッケルめっきされた冷延鋼(CRS)から形成される。ニッケルは、事前めっきされてもよく、及び/又は缶が延伸された後に事後めっきされてもよい。
【0049】
従来の電池缶は、両側上にニッケルめっきが事前に適用された鋼シートを延伸することによって生産される。延伸プロセスは、場合によっては、ニッケルめっきされた表面上に亀裂の形成をもたらし、鉄基材を露出し得る。この露出した鉄基材は、潜在的に腐食する可能性があり、漏れを生じ、電池の性能及び製品の外観に影響を及ぼす可能性がある。それ故、一般に、缶材料は、缶が延伸された後に事後めっきされることが好ましい。
【0050】
一部の実施態様では、片側がニッケルめっきされていない鋼プレート(例えば、CRS)に延伸プロセスを実施し、底面を有する円筒形缶を形成する。次いで、これらの缶は、銅による攻撃のない、仕上げニッケル浴を使用して、電気めっきされる。フラッシュ事後めっきプロセスは、典型的に、CRS缶に4ミクロン(160μインチ)のニッケルめっきを追加する。
【0051】
ニッケルめっき厚さは、缶の内側表面上及び外側表面上で同一である必要はない。缶の内側表面は、通常、摩耗力を受けないため、めっきは、厚くなくてもよい。缶の内側上のめっきの厚さは、電池の化学的性質での電気化学的安定性を提供するのに十分な厚さでさえあればよい。缶の外側表面は、より多くの摩耗力を受ける(例えば、ビード付け、圧着中)。したがって、腐食を防止するために、一般に、外側表面上には、より厚いニッケルめっきが必要とされる。有利にも、この選択的めっきは、延伸されたCRS缶のめっきプロセス中に、自然に起こる傾向がある。例えば、外面上に3ミクロンの厚さのニッケルめっきが適用される際、内面上には、わずか約0.4〜0.5ミクロンの厚さのニッケルめっきしか適用されない。それ故、このプロセスは、缶の外側表面上に、より厚いめっきが望まれる、選択的ニッケルめっきに非常に好適である。
【0052】
アノードタブの缶への接続
電気化学電池において一般的であるように、アノードは、例えば、アノードタブを介してアノードを缶の壁に接続することによって、外部電池包装材の負端子に接続される。この接続は、従来的に、缶の内側からの抵抗溶接によって形成されてきた、缶の側面又は底への溶接部によって提供することができる。
【0053】
この抵抗溶接技術は、大規模生産のために自動化することが困難な場合がある。この種類の溶接は、非常に小さな直径(〜1.016mm(〜0.040”))の銅溶接ロッドを巻き付けられたアセンブリの芯を通して底まで挿入し、ロッドを使用して、アノードタブと缶表面との間に物理的接触を適用することを必要とする。溶接ロッドは、挿入中、プラスチックセパレータ材料の内側の巻き線を拘束する、又は捕まえる傾向があり、また、曲がり、永久に変形した状態となる場合がある。
【0054】
発明者は、アノードタブと電池缶との間に中間接続を形成する金属を導入することによって、溶接を簡単化することができることを発見した。この金属は、溶接ディスクと称することができる。この溶接ディスクは、溶接ロッドを、巻き付けられたアセンブリの芯を通して底まで挿入する必要なく、巻き付けられたアセンブリの外部に容易にスポット溶接することができる。溶接ディスクを電池缶に取り付けるために、第2のスポット溶接が後で使用される。溶接ディスクを使用することによって、プロセスを簡単化することに加えて、溶接廃物及びダウンタイムを削減し、一貫した電池の性能を確実なものにするのを助長し、ばらつきのより低い、低インピーダンスを提供し、ロバスト接続を提供することができる。
【0055】
溶接ディスク材料は、電池の化学的性質と適合性がある。溶接ディスク材料は、例えば、304L SSであってもよい。溶接ディスクの形状は、円板形又は正方形であってもよい。溶接ディスクの厚さは、好ましくは、約0.5〜1.5mm、例えば、約1.0mmである。アノードタブ18は、図2に示されるように、抵抗溶接(RSW)又はレーザービーム溶接(LBW)のいずれかによって、溶接ディスク62にスポット溶接される。スポット溶接部64の典型的な直径は、約0.50mm(+/−0.10)である。典型的なスポット溶接貫通は、薄い方の材料の厚さの約40〜60%である。次いで、巻き付けられたアセンブリは、以下に記載されるように、巻き付けられた電極アセンブリの上端及び下端に絶縁体を有して、缶の解放端部に挿入される。溶接ディスクは、例えば、レーザービームによって、缶の底に溶接される。
【0056】
カソードからバッテリの正端子への電流収集
以下により詳細に記載されるように、カソード複合材料シートを形成するために、カソード活性物質、例えば、アルミホイル又はステンレス鋼が、カソード基材上にコーティングされる。カソード基材は、電流コレクタとして機能する。次いで、例えば、アルミニウム1145で形成することができるカソードタブ58(図3A)は、カソード基材に超音波溶接される。カソードタブは、好ましくは、約52〜56mmの長さ、4.9〜5.1mmの幅、及び0.05〜0.15mmの厚さ、例えば、0.09〜0.11mmの厚さである。厚さは、処理を容易にするように、並びに製品の通電容量を向上するように選択される。アルミニウムは、その正極性のため、及びアルミニウムが、使用中に直面する電位で電気化学的に安定であるため、好ましい。カソードタブは、カソードのリード線縁部に位置づけられる。しかしながら、タブがカソードの長さに沿った任意の位置に位置付けられた電池を設計することができる。負のタブ及び正のタブの両方を反対の端部に有することの一利点は、これが、均一の電流分布を提供し、従って電極の全長に沿って均一な放電を提供するということである。
【0057】
電池の組み立て中、カソードタブは、正端子に接続される。正端子は、複数の部品を含むアセンブリからなる。部品のうちの1つは、接触カップ27(図3A)である。この部品は、例えば、アルミニウム5052 H34で作製することができ、一般に、安全弁を含む。アルミニウムカソードタブは、この接触カップにレーザー溶接される。溶融ナゲット(溶接結合領域)の典型的な直径は、約0.4〜0.5mm(熱影響域(HAZ)を含まない)である。溶接貫通の典型的な深さは、2つのうちの厚い方の材料の約40〜60%である。別の方法としては、また、カソードタブと接触カップとの間の接続は、超音波溶接によっても達成することができる。
【0058】
カソードタブの寸法(L×W×T)は、例えば、55×2.6×0.1mmであってもよい。
【0059】
アルミニウム合金1145の典型的な化学組成を以下の表1に示す。
【表1】

【0060】
表2は、カソードタブの好ましい物理的特性を定義する。
【表2】

【0061】
電極アセンブリ
Li/FeS電池は、望ましくは、らせん状に巻き付けられたアノードシート及びカソード複合材料シートを含み、その間にセパレータを有する、らせん状に巻き付けられた電池の形態である。
【0062】
カソード複合材料シートは、二硫化鉄(FeS)カソード活性材料を含むカソードスラリーで形成されてもよい。(本明細書で使用される場合、「スラリー」という用語は、通常の辞書の意味を有し、それ故、固体粒子の液体中へ、分散及び懸濁を意味することが理解される。)このスラリーは、基材、好ましくは、アルミホイル又はステンレス鋼等の電気的に伝導性の基材の少なくとも片側上にコーティングされる。カソードスラリーは、一般に、周囲条件、例えば、約22℃で形成される。カソードスラリーは、伝導性炭素粒子(例えば、アセチレンブラック及びグラファイト)、ポリマー結合剤材料、及び溶媒を更に含む。FeS及び炭素粒子は、例えば、エラストマーブロックコポリマー、好ましくは、Kraton G1651エラストマー(Kraton Polymers,Houston,Texas)等のスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)ブロックコポリマーであってもよいポリマーによって、基材に結合される。このポリマーは被膜形成剤であり、FeS粒子のみならずカソード混合物中の伝導性炭素粒子添加剤に対しても良好な親和性及び凝集特性を有する。ポリマーは電解質の化学的浸食に抗する。
【0063】
コーティングされた基材は、湿潤カソード複合材料シートを形成する。次いで、溶媒は蒸発され、伝導性炭素粒子、並びに、互いに及び基材に結合するポリマー結合剤に加えて、FeSも含む、乾燥カソードコーティング混合物が残る。一部の実施態様では、シートの片側がコーティングされ、乾燥され、次いで、もう一方の側がコーティングされ、乾燥される。これは、乾燥カソード複合材料シートを形成し、これは、カソードコーティングを基材のそれぞれの側上に押し付けるために、カレンダリングされてもよい。
【0064】
カソードは乾燥状態で好ましくは4重量%以下の結合剤及び85〜95重量%のFeSを含有する。コーティングされたカソード寸法は、例えば、284×41×0.179mmであってもよい。カソードの幅は、缶底とビード位置との間の使用できる高さに基づいて選択される。カソード幅は、例えば、40.7〜41.3mmの範囲に及ぶことができる。
【0065】
カソードは、それぞれが個々のカソードの寸法を有するセグメントが基材上にコーティングされ、コーティングされていない領域によって分離される、連続コーティングプロセスを使用して製造されてもよい。これらのコーティングされていない領域は、「無質量域(mass free zones)」(MFZ)と称することができ、高信頼性でカソードタブを基材に溶接できるようにするのに役立つ。一部の実施形態では、MFZの幅は、約11〜15mmである。
【0066】
アノードは、好ましくは、適切な処理及び性能要件に好適な厚さとなるように選択される、純リチウムのストリップである。リチウムホイルは、ホイルの一方の端部に沿って、電気的に伝導性のタブに低温結合される。タブは、アノードから電池の負端子に電流を伝導する。他の変形では、アノードタブを、長さに沿った任意の他の位置に接続することができる。負電極が電気的導通を維持するために、基材は使用されないが、リチウムが放電する際の導通を維持するために、基材を含むことができる。この電流コレクタは、電池の内部環境で電気化学的に安定である、任意の金属のものであってもよい。アノード寸法は、例えば、308.50×0.1575×39mmであってもよい。リチウム幅は、例えば、38.85〜39.15mmの範囲に及ぶことができる。アノードは、より良い活性物質の利用及び安全性のために、好ましくは、カソード幅内に保たれる。この理由のため、リチウム(アノード)幅は、通常、カソード幅より小さい。例えば、リチウム幅は、カソード幅より約2mm小さくてもよい。別の変形では、リチウム幅は、面積、及び従って電池の性能の改善のために、カソード幅程度であってもよい。ニッケルめっきされたCRSタブ(23.60×4.00×0.085mm)は、リチウムとの接触領域内にギザギザを付けられてもよい。ギザギザパターンは、タブのリチウムとの結合を改善する。
【0067】
アノードタブ及びカソードタブは、異極性電極の内部短絡を防止するために、絶縁テープで部分的に被覆される。一部の実施態様では、このテープは、合成ゴムポリイソブテン接着剤(PPI 5011)を有する、ポリプロピレンフィルムである。このテープの厚さは、例えば、0.05〜0.06mmであってもよい。テープは、片側に0.025mmの厚さの合成ゴム接着剤をコーティングした0.03mmの厚さのポリプロピレンのフィルム裏材を有する。
【0068】
電池の化学的性質と安定であり、上記の表に示されるものと類似する特性を有する、任意のテープ材料を使用することができる。
【0069】
アノードアセンブリは、セパレータ材料の2つのピース間に置かれる。アノード及びカソードは、好ましくは、カソードの先端がアノードの先端より約0〜3mm先導するように定置される。次いで、アノード/セパレータアセンブリ及びカソードアセンブリは、巻き付けられた電極アセンブリを形成するために、アノードが、カソードから電気的に絶縁されるが、活性物質の効率的な利用のために、カソードに近接するように、好ましくは、3.5mmの直径のマンドレルの周囲に巻き付けられる。このアセンブリは、周囲にテープを適用することによって、巻き付けられた状態で保持される。このテープは、異なる寸法を有することを除き、アノードタブ及びカソードタブを被覆するために使用されるテープと同一のものであってもよい。このテープは、任意のサイズのものであってもよく、例えば、44mm×20mmのテープを使用することができる。一部の実施形態では、テープは、巻き付けられた電極アセンブリの全周辺及び高さを被覆することができる。
【0070】
電池アセンブリ
上述される巻き付けられたアセンブリは、巻き付けられた電極アセンブリの上端及び下端に置かれた絶縁体(以下に記載される)と共に、ニッケルめっきされた低温ロール鋼缶の解放端部に挿入される。上述されるように、溶接ディスク62は、例えば、レーザー溶接によって、缶の底に溶接される。次いで、缶にビードが付けられ、ビードが付けられた領域48(図3A)が形成される。ビードが付けられた領域は、巻き付けられた電極の移動を制限し、キャップアセンブリに滑らかな座面を提供する。ビードが付けられた領域内の缶の壁の薄化は、電池ロバスト性及び封止品質を保つために、一般に、元の壁厚さの17%を超えるべきではない。好ましくは、ビード深さ及び隣接区域は、良好な封止圧縮を提供するのに十分な深さの平らな環状棚を提供するように選択される。ビード深さ(電池の外側上で測定される)は、例えば、約0.5〜1.5mm、例えば、約1.15〜1.35mmであってもよい。上側ビード半径は、例えば、約0.3〜1.0mm、例えば、約0.55〜0.75mmであってもよく、中間ビード半径は、例えば、約0.10〜0.70mm、例えば、約0.34〜0.38mmであってもよい。また、これらの半径も、電池の外側上で測定される。
【0071】
次いで、カソードタブは、上述されるように、例えば、レーザー溶接又は超音波溶接によって、正のキャップアセンブリに溶接される。
【0072】
適切な体積の電解質(例えば、1.6cc〜1.8cc)が電池に添加された後、キャップアセンブリは、巻き付けられた電極アセンブリ25の上方のカソードタブ58内に「Z」折りが形成されるように、ビードが付けられたアセンブリ(ビードの上側部分上にある)上に置かれる(図3及び図3Aを参照)。
【0073】
次いで、缶20の縁部49は、キャップアセンブリを缶に封止するために、キャップアセンブリの周囲で圧着される。所望により、予圧着工程が実施されてもよい。予圧着中、缶の上側縁部は、例えば、垂直から25〜35°缶の軸に向かって曲げられる。この曲げは、キャップアセンブリを、ビード及び缶に対して中心に置き、キャップアセンブリの伝導性構成要素を電池構成要素に対して先行加重し、カソードタブ58内のZ折りを圧縮し、それ故、組み立てられた部品間の良好な電気接触を確実なものにする。この工程は、任意ではあるが、信頼性のある電池圧着を確実なものにするのを助長するため、一般に、好ましい。
【0074】
次に、縁部は、図3Aに示される位置に完全に圧着される。圧着の後、縁部49内の曲がりは、例えば、約0.90〜1.25の曲率半径Rを有する。缶縁部とキャップアセンブリとの間に、プラスチック封止51が提供される。この封止は、圧着中に変形し、缶の壁とキャップアセンブリとの間の空隙を充填し、電池の内部構成要素を外部環境から効果的に封止する。また、圧縮された封止は、伝導性キャップアセンブリ構成要素上に十分な圧力を生成し、その結果、電流が装置を通って流れることができるように、これらの構成要素間に信頼性のある電気接触を提供する。更に、また、封止は、負に帯電した缶と正に帯電したキャップアセンブリとの間に、適切な電気絶縁を提供する。
【0075】
封止51は、例えば、射出成形部品であってもよい。封止に好適な材料は、高衝撃ポリプロピレンコポリマー樹脂である、ポリプロピレン射出成形等級プラスチックである。この材料は、例えば、Himontから商標名Profax(登録商標)SB 786で市販されている。
【0076】
電池内に封止が組み立てられる前に、これは、好ましくは、標準気圧で実施される以下のアニーリング工程、(a)温度を15分間で40℃から90℃に上昇させ、(b)90℃で2時間保持し、(c)1時間で90℃から40℃に低下させ、(d)電池組み立ての前に最低24時間、封止を、標準気圧で(空気)露点が−28℃を越えて上昇しない環境に定置する(材料中の含水量を安定化させるため)ことによって、状態調節される。
【0077】
一般に、封止圧縮率(圧縮される厚さ/元の壁厚さ×100%)は、約25〜70%、例えば、約35〜45%である。
【0078】
電池の内部体積は、圧着高さを最小化することによって、増加することができる。一部の好ましい実施態様では、圧着高さは、3.5mm未満、例えば、約3.25mmである。
【0079】
電池バランシング
一部の実施態様では、Li/FeS2電池は、電池サイズに関わらず、アノード対カソード界面理論容量比が1.0未満となるように、望ましく平衡が保たれる。つまり、電池は、アノードの理論容量がカソードの理論容量未満となるように平衡が保たれる。好ましくは、Li/FeS電池は、電池サイズに関わらず、アノード対カソード理論容量比が、約0.83〜0.96、望ましくは約0.87〜0.91となるように平衡が保たれる。例えば、Li/FeS電池のサイズは、円筒型AA若しくはAAAサイズ、又はこれより小さい若しくは大きいサイズであってもよい。アノードの理論容量及びカソードの理論容量は、アノード部分及びカソード部分が放電可能であるように、その間にセパレータを有する、アノード部分及びカソード部分に基づく。高放電速度でのカソード活性物質利用が90%未満であるため、高速な放電での電池効率(性能)を改善するために、1.0未満の電池平衡が望ましい。
【0080】
セパレータ
セパレータは、イオン輸送を可能にし、短絡を防止するために、残りが無傷の間に電流を遮断することによって、安全性を保証するように設計された、電気絶縁材料として機能する。セパレータは、電池容量に貢献することなく、内部空間を占領するが、安全性及び性能のために欠かせない。セパレータ膜は、3つの主要アイテム、信頼性、エネルギー性能、及び安全遮断性能をそれらの構成に組み込む必要がある。効果的な電極分離及び信頼性のある性能を保証するために、優れた機械的強度が必要とされる。セパレータが電極間のイオン輸送の障壁としての役割を果たすことができるように、高温での熱整合性は、電池が短絡する場合に必要不可欠である。膜の多孔率及び透過性は、電池内のイオン輸送に影響を与え、全体の総抵抗を増大させる。
【0081】
本明細書に記載される電池で使用されるセパレータは、好ましくは、微多孔性ポリプロピレンフィルムである。他の好適な材料には、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン、ポリ(二フッ化ビニル)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリトリフェニルアミン等のポリオレフィン類、並びにこれら及び他のポリオレフィン類の多層複合材料、コポリマー、並びに混合物が挙げられる。セパレータは、電気抵抗を低減し、イオン伝導度を増加させるために、界面活性剤コーティング、例えば、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコールジメタクリレート)、Al/SiO、又はポリ(ビニルアセテート)を含んでもよい。
【0082】
電池内のセパレータの長さは、電極の長さ及び巻き付け機の処理要件によって決定される。AA電池内の典型的なセパレータ長さは、392mmである(2つのピースのそれぞれ)。セパレータは、比較的薄くてもよく、例えば、約0.04mm未満、0.03mm未満、又は更には0.020mm未満であってもよい。好ましいセパレータ厚さは、一般に、約0.012mm〜約0.030mmである。セパレータは、好ましくは、電池を短絡から安全に守るために、アノード及びカソードの両方のサイズを超過するサイズで適用される。例えば、幅が39mmのアノード及び幅が41mmのカソードを完全に絶縁するために、材料の2つの44mmの幅の膜ストリップを採用することができる。
【0083】
一部の好ましい電池は、Celgard(登録商標)2400膜、25±3μmの厚さの単層微多孔性ポリプロピレン系膜で形成されたセパレータを含む。好ましいセパレータ特性を以下の表にリストする。
【表3】

【0084】
絶縁体
本明細書に開示される電池では、缶は、負電位にある。カソード(正極性)が缶(負極性)に接触するのを防止するために、2つの絶縁体が使用される。底絶縁体66(図3)は、アセンブリ中にアノードタブを収容するように設計された切り抜きを含む。ビード絶縁体68(図3A)は、中心に開口部を有する。この設計は、カソードタブを開口部に通すことを可能にし、また、電解質の巻き付けられた電極アセンブリの上端への導入も容易にする。これらの絶縁体のそれぞれは、好ましくは、約0.25〜0.30mmの厚さ、例えば、約0.28mmの厚さである。底絶縁体及びビード絶縁体は、同一の厚さのものであっても異なる厚さのものであってもよい。絶縁体材料は、電池の化学的性質との化学反応性、用途温度での熱安定性、及び加工の容易さに基づいて選択される。好ましい材料は、ポリブチルテレフタレート(PBT)、例えば、1〜2%のClariant Remafin Black CEA 8019Aカラーコンセントレート(50%ポリエチレン50%カーボンブラック)を含有する、DuPont Crastin(登録商標)6129C NC010樹脂である。
【0085】
カソードの多孔率
活性成分、及びそれ故電池の性能は、電池を意図される適用負荷で適切に機能できるようにする一方で、電極の多孔率を可能な限り最小化することによって、高めることができる。本明細書に記載される電池では、アノードの体積は、アノードが多孔性を有さないため、寸法に直接関係する。しかしながら、カソードの見掛け体積は、カソードの多孔率に大きく依存する。同一のカソード質量で、多孔率が異なる場合、体積は、大きく異なる可能性がある(体積は、高多孔率のカソードでより高い)。
【0086】
25%未満のカソードの多孔率、例えば、約17〜24%、例えば、約22%が、AA電池に理想的であることが発見された。カソード寸法は、この多孔率を目標として選択することができる。
【0087】
カソードの多孔率は、以下のように計算される。
【0088】
1.カソード試料の重量を測定し、グラム単位の重量(W)を記録する。
2.カソード厚さを測定し、cm単位の厚さ(ST)を記録する。ホイルの厚さを差し引き、cm単位のコーティング厚さ(CT)を求める。
3.cm単位のコーティングされた領域(CA)を測定する。
4.多孔率%を次のように計算する:(P)=(CA×CT−((W−(SA×R))/D))/(CA×CT)
式中:
R=アルミホイル坪量(20μmのホイルには、0.0058g/cmを使用する)
D=カソード混合物の密度
SA=ホイル面積
PTC装置の構成
【0089】
リチウム電池は、一般に、バッテリ分野において周知である、正の熱係数(PTC)安全装置を含む。PTC装置54を図3Aに示す。好ましくは、PTC装置は、装置が指定温度範囲に到達する際、自体の電気抵抗を数桁の規模で変化させる能力を有する、電気的に伝導性の要素を含む。PTC装置は、薄いシート(例えば、公称約0.36mm)に形成され、ニッケル又はニッケルでフラッシュめっきされた銅ホイルの2つの薄いシート間(例えば、それぞれ約0.03mm)で層状にされた、伝導性材料で充填又はドープされたポリマー、例えば、炭素でドープされたポリプロピレンを含む。
【0090】
PTC装置54は、電池換気の場合にガスが脱出できるようにする、中心の軸方向に延在する内部穴56を含む。好ましくは、内部穴径は、5mm未満、例えば、4mm未満、3mm未満、又は約2.00mmである。比較的小さな内部穴径を使用することによって、PTC装置の領域が増加し、安全性を妥協することなく、PTC装置の全体抵抗が低減される。PTC装置によってもたらされる抵抗の低減は、電池の性能を改善する。好ましくは、PTCは、約9〜20ミリオーム、例えば、約12〜20ミリオームの抵抗を有する。
【0091】
好ましい電池寸法
電極高さ対電池高さの関係を図3に図示する。AA電池では、使用される最大電極幅(高さ)は、41.25mm(典型的に41mm)である。電極の高さは、一般に、電池のビード高さ(BH)の約90〜91%であり、最終電池高さ(CH)の約81〜83%である。これらの寸法は、十分な電解質体積のための余地を与えるため、及び電池の放電中の体積変化に対応するのに十分な空間を可能にするために、内部適合の適切さで選択される。
【0092】
界面電極高さは、ここでは、アノード及びカソードが互いに向き合う場合の電極高さとして定義される。一部の実施態様では、巻き付けられたアセンブリ内の界面電極高さ1センチメートル毎に、0.28ccの空隙体積が存在する。換言すれば、完全に充填される場合、巻き付けられたアセンブリの界面高さ1センチメートル毎に、0.28ccの電解質を収容することができる。空隙体積は、約0.25〜0.30ccの範囲に及んでもよい。
【0093】
巻き付けられたアセンブリ(WA)内の空隙体積数は、以下に示されるように計算される。
【0094】
巻き付けられたアセンブリの直径=12.80mm
WAの高さ1cmの体積=3.14/4×(12.8/10)^2×1=1.286cc(a)
カソードの高さ1cmの体積=0.4095cc(b)
アノードの高さ1cmの体積=0.4880cc(c)
セパレータの高さ1cmの体積=0.1085cc(d)
WAの高さ1cm内の空隙体積=(a)−(b)−(c)−(d)=0.28cc
【0095】
上述されるように、アルミニウムタブがカソードに使用され、ニッケルめっきされたCRSタブがアノードに使用される。好ましいタブ寸法は、電池内のタブ位置及びそれが形成する半径の鋭さに少なくとも一部において基づいて決定される。タブの断面寸法(すなわち、幅×厚さ)を決定する別の因子は、タブが運ぶ負荷電流の量である。寸法は、好ましくは、意図される用途における性能に影響を及ぼすことなく、電圧降下を可能な限り最小化する。タブ長さは、電池アセンブリ処理の必要性によって決定され、可能な限り小さく保たれる。好適なタブ寸法の一実施例を以下に示す。
【0096】
カソードタブ:
長さ:55+/−0.5mm
幅:2.6+/−0.1mm
厚さ:典型的に0.10mm
断面積:0.26mm
アノードタブ:
長さ:23.60+/−0.25mm
幅:4.0+/−0.1mm
厚さ:典型的に0.085mm
断面積:0.34mm
【0097】
リチウムレベルを制御するための予放電
現行のUN DOT規定は、電池製造業者が消費者向け電池に1グラムを超えるリチウムを含ませることを阻止する。したがって、一次リチウム電池製造業者の間での現在の実務は、この制限を超過しない商用電池を得ることである。長さ=308.5mm、幅=39mm、及び厚さ=0.157mmを有するアノードは、1.8889cmのリチウム体積をもたらす。0.534g/ccのリチウム密度を使用すると、そのようなアノード中の平均リチウム重量は、1.0087グラム(有効桁が1桁では1.0グラム)である。
【0098】
上記の寸法を有するアノードに入り得るリチウムの理論量(リチウム寸法が、長さ、幅、及び厚さに関して最大であり、電池製造プロセス中にリチウムの伸張が生じないと仮定する)は、1.07グラムである。しかしながら、本巻き付けプロセスにおいて観測された典型的なリチウムの伸張は、〜5%である。この伸張を考慮し、実際に電池に入るリチウムは、1.019グラムであると推定される。
【0099】
完成した電池を、試験を含む任意の目的のために放出される前に予放電することによって、リチウムのレベルを認可されるレベルに低減することができる。電解質充填後の典型的なOCVは、〜3.45Vである。電池のOCVを〜1.8V付近にするために、予放電が行われる。電池をより高い電圧に保つことは、アルミニウム基材の腐食をもたらす可能性がある。また、予放電は、いずれの電圧遅延問題も低減すると思われる。予放電動作では、電池を作動させた後、数時間以内に、電池から固定量の容量が排除される。この容量の量は、所与の電池サイズの内部活性物質量によって決定される。電池から取り出される容量の量は、例えば、電池の初期容量の約3%であってもよい。一部の実施態様では、AA電池から取り出される容量は、例えば、約0.131Ahであってもよい。この動作は、約1〜4Ampで約2〜20秒間放電し、続いて1〜100秒間休止させ、これを約10〜100サイクル行うことによって行われる。場合によっては、電池は、サイクル間の1つ以上の段階で、又はサイクルの完了後に、例えば、高温で保管されてもよい。リチウム1グラム当たり3.862Ahのリチウム理論容量に基づき、0.131Ahは、0.034グラムのリチウムが放電されたことを表す。つまり、予放電の終わりでは、AA電池内に残るリチウムの平均量は、1グラム未満である。
【0100】
他の実施形態
本発明の多数の実施形態を記載した。しかし、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な変更が行われてもよいことが理解される。例えば、電池は、上述される特徴の全てを含む必要はなく、これらの特徴の任意の望ましい組み合わせを含むことができる。それ故に、他の実施形態は、本発明請求項の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムを含むアノードと、
二硫化鉄を含むカソードと、
前記アノードとカソードとの間に配置されたセパレータと、
リチウム塩、1,3−ジオキソラン、グリコールジエーテル、及び水を含む電解質と、を備えた、一次リチウム電池。
【請求項2】
前記グリコールジエーテルがDMEを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
1,3−ジオキソラン対DMEの重量比が、4:6〜9:1の範囲にある、請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記電解質中の水の濃度が、約50ppm〜1000ppmである、請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記電解質が、LiI、LiCl、LiBr LiC1O、LiAsF、LiPF、LiTFS、LiTFSI、LiBOBからなる群から選択される、2つ以上の塩の混合物を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項6】
前記電解質が、3,5−ジメチルイソオキサゾール(DMI)、ピリジン、トリメチルピラゾール、ジメチルピラゾール、及びジメチルイミダゾールからなる群から選択される添加剤を更に含む、請求項1に記載の電池。
【請求項7】
前記電池が、予放電されており、前記アノードが、前記電池の製造中に伸張するリチウムホイルを備え、前記アノードが、前記リチウムホイルの伸張及び前記電池の予放電の後、0.9g〜1.0gの重量のリチウムを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項8】
前記電池が、1未満のアノード/カソード比を有する、請求項1に記載の電池。
【請求項9】
缶と、
前記缶に封止された、正端子を備えたキャップアセンブリと、
リチウムを含むアノード、二硫化鉄を含むカソード、及び前記アノードとカソードとの間に配置されたセパレータを備えた、前記缶内に配置された、らせん状に巻き付けられた電極アセンブリと、を備え、
前記電極アセンブリが、前記アノードと前記缶との間に電気的接続を確立するように構成されたアノードタブであって、前記缶に溶接されるアノードタブ、及び前記カソードと前記正端子との間に電気的接続を確立するように構成されて、前記キャップアセンブリに溶接されたカソードタブと、を更に備える、一次リチウム電池。
【請求項10】
一次リチウム電池を製造する方法であって、
らせん状に巻き付けられた電極アセンブリを缶に挿入する工程であって、前記電極アセンブリが、リチウムを含むアノード、二硫化鉄を含むカソード、及び前記アノードと前記カソードとの間に配置されるセパレータを備えたものである、工程と、
前記アノードから延在するアノードタブを前記缶に溶接する工程と、
前記カソードから延在するカソードタブを前記バッテリの正端子に溶接する工程と、を含む方法。
【請求項11】
リチウムを含むアノードと、
二硫化鉄を含むカソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータと、
約5mm未満の内部穴径を有するPTC装置と、を備える一次リチウム電池。
【請求項12】
一次リチウム電池を製造する方法であって、
らせん状に巻き付けられた電極アセンブリを缶に挿入する工程であって、前記電極アセンブリが、リチウムを含むアノード、二硫化鉄を含むカソード、及び前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータとを備え、前記カソード及び前記アノードが、それぞれ、カソードタブ及びアノードタブを含むものである、工程と、
前記カソードタブ及び前記アノードタブのそれぞれの少なくとも一部分に絶縁テープを適用する工程と、
前記アノードタブと前記缶との間に電気的接続を確立する工程と、
前記カソードタブと前記バッテリの正端子との間に電気的接続を確立する工程と、を含む、方法。
【請求項13】
缶と、
前記缶に封止された、正端子を備えるキャップアセンブリと、
前記缶内に、らせん状に巻き付けられた電極アセンブリであって、
リチウムを含み、前記缶に電気的に接続されたアノードタブを備えた、アノード、
二硫化鉄を含み、前記正端子に電気的に接続されたカソードタブを備えた、カソード、及び
前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータ、を備え、
前記カソードタブ及び前記アノードタブのそれぞれの少なくとも一部分が、絶縁テープで被覆される電極アセンブリと、を備える、一次リチウム電池。
【請求項14】
缶と、
アニールされたポリプロピレンコポリマーを備える封止によって前記缶に封止された、正端子を備えたキャップアセンブリと、
前記缶内に、らせん状に巻き付けられた電極アセンブリであって、
リチウムを含み、前記缶に電気的に接続されたアノードタブを備えた、アノード、
二硫化鉄を含み、前記正端子に電気的に接続されたカソードタブを備えた、カソード、及び
前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータ、を備える、電極アセンブリと、を備える、一次リチウム電池。
【請求項15】
一次リチウム電池を作製する方法であって、
リチウムを含むアノード、二硫化鉄を含むカソード、及び前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータを備えた、電極アセンブリを形成する工程と、
前記電極アセンブリを缶に挿入する工程と、
前記電池に、リチウム塩、1,3−ジオキソラン、グリコールジエーテル、及び水を含む、電解質を添加する工程と、を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【公表番号】特表2011−521426(P2011−521426A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510544(P2011−510544)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/042191
【国際公開番号】WO2009/148727
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)
【Fターム(参考)】