説明

リチウム2次電池用負極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム2次電池

【課題】リチウム2次電池の寿命特性を向上させることができるリチウム2次電池用負極活物質と、前記負極活物質を含むリチウム2次電池を開示する。
【解決手段】SiOマトリックスおよびSi結晶粒を含むコア、および前記コアを連続または不連続的にコーティングするコーティング層を含み、前記コーティング層は、SiCおよびCを含み、CuKα線を用いたX線回折分析(XRD)の時、SiCの(111)面のSiの(111)面に対するピーク面積比は、0.01〜0.5であるリチウム2次電池用負極活物質が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム2次電池用負極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯用小型電子機器の電源として脚光を浴びているリチウム2次電池は、有機電解液を使用することに伴って、既存のアルカリ水溶液を使用した電池より2倍以上高い放電電圧を示し、その結果、高いエネルギー密度を示す電池である。
【0003】
リチウム2次電池の正極活物質としては、LiCoO、LiMn、LiNi1−xCo(0<x<1)などのようにリチウムイオンのインターカレーションが可能な構造を有するリチウムと遷移金属からなる酸化物が主に使用される。
【0004】
負極活物質としては、リチウムのインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボンを含む多様な形態の炭素系材料が適用されてきた。最近は安定性およびより高容量の要求に応じて、Siのような非炭素系負極活物質に対する研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態は、リチウム2次電池の寿命特性を向上させることができるリチウム2次電池用負極活物質を提供することにその目的がある。
【0006】
本発明の他の一実施形態は、前記負極活物質を含むリチウム2次電池を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、SiOマトリックスおよびSi結晶粒を含むコア、および前記コアの少なくとも一部上に位置するコーティング層を含み、前記コーティング層は、SiCおよびCを含み、CuKα線を用いたX線回折分析(XRD)の時、SiCの(111)面のSiの(111)面に対するピーク面積比は約0.01〜約0.5であるリチウム2次電池用負極活物質を提供する。
【0008】
前記コアは、SiO(0.3≦x≦1.2)で表示されるように、SiOマトリックスおよびSi結晶粒の含量比が決定され得る。
【0009】
前記負極活物質は、約0.5μm〜約50μmの平均粒子サイズを有することができる。
【0010】
前記コーティング層の厚さは、約0.01μm〜約1μmであってもよい。
【0011】
前記コア対前記コーティング層の重量比は、約99:0.1〜約90:10であってもよい。
【0012】
本発明の他の一実施形態は、SiOマトリックスおよびSi結晶粒を含むシリコンオキシド粉末を製造する段階と、前記シリコンオキシド粉末をエッチャントに含浸して少なくとも前記SiOマトリックスの一部をエッチングして、前記Si結晶粒が前記シリコン粉末の表面に露出されるようにエッチングされた粉末を得る段階と、前記エッチングされた粉末を炭素原料物質で表面処理してSiCおよび炭素を含む炭素コーティング層を形成する段階とを含むリチウム2次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0013】
前記シリコンオキシド粉末をエッチャントに約5分〜約120分間含浸することができる。
【0014】
前記エッチャントは、少なくとも一つのFイオンを含む物質を含むことができる。
【0015】
前記エッチャントは、約0.5M〜約12MのFイオン濃度を有することができる。
【0016】
前記エッチングされた粉末を炭素原料物質で表面処理する段階は、約700℃〜約1300℃で炭素含有ガスに前記エッチングされた粉末を露出させる段階を含むことができる。
【0017】
前記エッチングされた粉末を炭素原料物質で表面処理する段階は、前記エッチングされた粉末の表面上に炭素含有液体をコーティングし、前記炭素含有液体を約800℃〜約1300℃で炭化させる段階を含むことができる。
【0018】
前記炭素含有液体は、炭素原料物質および溶媒を含むことができる。
【0019】
前記溶媒は、ジメチルスルホキシドまたはテトラヒドロフランであってもよい。
【0020】
前記炭素原料物質は、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ(mesophase pitch)、石油系ピッチ、石炭系オイル、石油系重質油、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、およびこれらの組み合わせから選択された一つであってもよい。
【0021】
前記炭素原料物質は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアニリン(PAn)、ポリアセンチレン(Polyacetylene)、ポリピロール(Polypyrrole)、ポリチオフェン(Polythiophene)、塩酸でドーピングされた伝導性高分子、およびこれらの組み合わせから選択された一つであってもよい。
【0022】
本発明のさらに他の一実施形態は、前記負極活物質を含む負極;リチウムをインターカレーションおよびデインターカレーションすることができる正極活物質を含む正極;および非水電解液を含むリチウム2次電池を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明による前記負極活物質を含むリチウム2次電池は、寿命特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態によるリチウム2次電池を概略的に示した図面である。
【図2】実施例1〜2、および比較例1で製造された負極活物質に対してXRDを測定した結果である。
【図3】実施例1〜3および比較例1〜2で製造された負極活物質を使用して製造されたリチウム2次電池の寿命特性を評価したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるもので、本発明は、これによって制限されず、後述する特許請求の範囲の範疇により定義される。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、SiOマトリックスおよびSi結晶粒を含むコア、および前記コアを連続または不連続的にコーティングするコーティング層を含むリチウム2次電池用負極活物質が提供される。前記コーティング層は、SiCおよび炭素を含む。
【0027】
負極活物質に含まれているSiCは、寿命特性の側面で有利に作用することができるが、容量や効率の側面で不利に作用することがある。前記負極活物質は、適正量のSiCを含むことによって、容量や効率特性を減少させずに寿命特性を向上させたものである。
【0028】
前記負極活物質は、特定範囲のXRDピーク面積比を有するようなSiCの含量を含み、具体的には、前記負極活物質に対するCuKα線を用いたX線回折分析(XRD)の時、SiCの(111)面のSiの(111)面に対するピーク面積比は、約0.01〜約0.5である。
【0029】
前記負極活物質のコアは、SiOマトリックスおよびSi結晶粒を含んでSiO(0.3≦x≦1.2)で表示され得る。前記xの範囲は、SiOマトリックスおよびSi結晶粒の含量比により決定される。
【0030】
前記コーティング層に含まれる炭素は、結晶質炭素または非晶質炭素などを例に挙げられ、具体的に前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、麟片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0031】
前記負極活物質は、約0.5μm〜約50μmの平均粒子サイズを有することができ、また、前記コーティング層は、約0.01μm〜約1μmの厚さを有することができる。前記範囲のコーティング層の厚さを適用して、十分なコーティング効果を確保しながら抵抗増加により引き起こされる寿命劣化を防止して、効果的なコーティング効果を期待することができる。前記負極活物質において、前記コア対前記コーティング層の重量比が約99:0.1〜約90:10であってもよい。
【0032】
前記負極活物質の製造方法は、SiOマトリックスおよびSi結晶粒を含むシリコンオキシド粉末を製造する段階;前記シリコンオキシド粉末をエッチャントに含浸して少なくとも前記SiOマトリックスの一部をエッチングして、前記Si結晶粒が前記シリコン粉末の表面に露出されるようにエッチングされた粉末を得る段階;および前記エッチングされた粉末を炭素原料物質で表面処理してSiCおよび炭素を含む炭素コーティング層を形成する段階を含む。
【0033】
前記製造方法により形成された負極活物質は、負極活物質の製造方法により前述した負極活物質を製造することができる。
【0034】
まず、SiOマトリックスおよびSi結晶粒を含むシリコンオキシド粉末を製造して準備する。この時、SiOマトリックスおよびSi結晶粒を含むシリコンオキシド粉末を製造する方法には公知の方法が適用可能で、特定の方法に制限されない。
【0035】
前記シリコンオキシド粉末をエッチャントに含浸させると、SiOが選択的にエッチングされる。この時、エッチング時間によりSiOがエッチングされる程度を調節することができる。前述した負極活物質を製造するためには、約5分〜約120分間酸溶液に含浸させてエッチングすることができる。前記エッチャントには、任意の適切な公知の物質を使用することができ、例えば、酸溶液を使用するか、またはHF、NHF、NHHFなどのようにFイオンを含む化合物のような物質を使用することができる。
【0036】
イオンを含む化合物がエッチャントとして使用される場合、約0.5M〜約12MのFイオン濃度を有するエッチャント溶液を使用して前記SiOマトリックスの少なくとも一部をエッチングすることができる。酸溶液をエッチャントとして使用する場合、当業者であれば容易に、前記濃度範囲のFイオン濃度を有するエッチャント溶液と同一のエッチング速度を有することができる濃度に酸溶液を調節して、使用することができる。一般に、酸溶液のエッチング速度はFイオンを含む化合物より遅い。
【0037】
前記エッチングされたシリコンオキシド粉末に炭素コーティング層を形成するようになると、シリコンオキシド粉末表面のSiと炭素が反応してSiCを形成するようになる。したがって、前記炭素コーティング層は、炭素(C)のみならずSiCを共に含む。前記エッチングされたシリコンオキシド粉末は、表面のSiOが除去された状態であるため、より容易にSiCを形成することができるようになる。この時、炭素コーティング処理温度を調節することによって、形成されるSiCの含量を調節することができる。
【0038】
気相法により炭素コーティング層を形成する場合、約700℃〜約1300℃、具体的に約950℃〜約1050℃で炭素原料物質を反応ガスとして注入して、エッチングされたシリコンオキシド粉末の表面に炭素コーティング層を形成させることができる。気相法の例として、化学気相蒸着法(CVD)などが挙げられる。
【0039】
液相法により炭素コーティング層を形成する場合、炭素原料物質をエッチングされたシリコンオキシド粉末の表面に液状コーティングさせた後、約800℃〜約1300℃、具体的に約1000℃〜約1100℃で炭化させて、炭素コーティング層を形成させることができる。液相法の例として、含浸法、スプレー法などが挙げられる。液状コーティングの溶媒としては、DMSO(ジメチルスルホキシド)、THF(テトラヒドロフラン)などを使用することができる。
【0040】
前記炭素原料物質としては、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ(mesophase pitch)、石油系ピッチ、石炭系オイル、石油系重質油、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂などの高分子樹脂を使用することができるが、これに限定されるわけではない。特に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)などのビニル系樹脂、ポリアニリン(PAn)、ポリアセンチレン(Polyacetylene)、ポリピロール(Polypyrrole)、ポリチオフェン(Polythiophene)などの伝導性高分子などが選択され得、前記伝導性高分子は、塩酸などを利用してドーピングされた伝導性高分子であってもよい。
【0041】
本発明の他の一実施形態によれば、前述した負極活物質を含む負極;リチウムをインターカレーションおよびデインターカレーションすることができる正極活物質を含む正極;および非水電解液を含むリチウム2次電池を提供する。
【0042】
リチウム2次電池は、使用するセパレータと電解質の種類によりリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池に分類され、形態により円筒型、角型、コイン型、パウチ型などに分類され、サイズによりバルクタイプと薄膜タイプに分類され得る。これら電池の構造と製造方法は、当該分野で広く知られているため、詳細な説明は省略する。
【0043】
図1は、本発明の一実施形態によるリチウム2次電池の分解斜視図である。図1を参照すれば、前記リチウム2次電池100は円筒型で、負極112、正極114、および前記負極112と正極114との間に配置されたセパレータ113、前記負極112、正極114およびセパレータ113に含浸された電解質(図示せず)、電池容器120、そして前記電池容器120を封入する封入部材140を主な部分として構成されている。このようなリチウム2次電池100は、負極112、正極114およびセパレータ113を順次に積層した後、スピロール状に巻き取られた状態で電池容器120に収納して構成される。
【0044】
前記負極は、集電体および前記集電体の上に形成された負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、前述した負極活物質を含む。
【0045】
前記負極活物質に関する詳細な説明は前述の通りである。
【0046】
前記負極活物質層はまた、バインダーを含み、選択的に導電材をさらに含むこともできる。
【0047】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また負極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たし、その代表的な例としてポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレイテッドスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されない。
【0048】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0049】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0050】
前記正極は、電流集電体およびこの電流集電体に形成される正極活物質層を含む。
【0051】
前記正極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物(リチエイテッドインターカレーション化合物)を使用することができる。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケルまたはこれらの組み合わせの金属とリチウムとの複合酸化物のうちの1種以上を使用することができ、その具体的な例としては、下記化学式のうちのいずれか一つで表現される化合物を使用することができる:Li1−b(上記式中、0.90≦a≦1.8および0≦b≦0.5である);Li1−b2−c(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、および0≦c≦0.05である);LiE2−b4−c(上記式中、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1−b−cCoα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α≦2である);LiNi1−b−cCo2−αα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiNi1−b−cCo2−α(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiNi1−b−cMnα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α≦2である);LiNi1−b−cMn2−αα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiNi1−b−cMn2−α(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiNi(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5および0.001≦d≦0.1である。);LiNiCoMnGeO(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5および0.001≦e≦0.1である。);LiNiG(上記式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiCoG(上記式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiMnG(上記式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiMn(上記式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiTO;LiNiVO;Li(3−f)(PO(0≦f≦2);Li(3−f)Fe(PO(0≦f≦2);およびLiFePO
【0052】
前記化学式中、Aは、Ni、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであり;Rは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであり;Dは、O、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;Eは、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであり;Zは、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはこれらの組み合わせであり;Qは、Ti、Mo、Mnまたはこれらの組み合わせであり;Tは、Cr、V、Fe、Sc、Yまたはこれらの組み合わせであり;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはこれらの組み合わせである。
【0053】
もちろん、この化合物表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または前記化合物とコーティング層を有する化合物を混合して使用することもできる。前記コーティング層は、コーティング元素化合物として、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートまたはコーティング元素のヒドロキシカーボネートを含むことができる。これらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質であってもよい。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。コーティング層形成工程は、前記化合物にこのような元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング、浸漬法など)でコーティングすることができれば如何なるコーティング方法も使用可能であり、これについては当該分野に務める者によく理解され得る内容であるため、詳しい説明は省略する。
【0054】
前記正極活物質層はまた、バインダーおよび導電材を含む。
【0055】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たし、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレイテッドスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されない。
【0056】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを使用することができ、また、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上混合して使用することができる。
【0057】
前記電流集電体としては、Alを使用することができるが、これに限定されない。
【0058】
前記負極と前記正極は、それぞれ活物質、導電材および結着剤を溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を電流集電体に塗布して製造する。このような電極製造方法は、当該分野で広く知られた内容であるため、本明細書で詳細な説明は省略する。前記溶媒としては、N−メチルピロリドンなどを使用することができるが、これに限定されない。
【0059】
前記電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0060】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンを移動することができる媒質の役割を果たす。
【0061】
前記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系または非陽子性溶媒を使用することができる。前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができ、前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオン酸塩、エチルプロピオン酸塩、γ−ブチロラクトン、デカノライド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができ、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどを使用することができる。また前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、前記非陽子性溶媒としては、R−CN(Rは、C2〜C20の直鎖状、分枝状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0062】
前記非水性有機溶媒は、単独または一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は、目的とする電池性能に応じて適切に調節することができ、これは当該分野に務める者には広く理解され得る。
【0063】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートを混合して使用するとよい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1〜約1:9の体積比に混合して使用すると電解液の性能が優秀に現れ得る。
【0064】
前記非水性有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に前記芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。この時、前記カーボネート系溶媒と前記芳香族炭化水素系有機溶媒は、約1:1〜約30:1の体積比に混合され得る。
【0065】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては、下記化学式1の芳香族炭化水素系化合物を使用することができる。
【0066】
[化学式1]
【化1】

【0067】
前記化学式1中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1〜C10のアルキル基、C1〜C10のハロアルキル基またはこれらの組み合わせである。
【0068】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、1,2,3−トリフルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2−ジヨードベンゼン、1,3−ジヨードベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,2,3−トリヨードベンゼン、1,2,4−トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、1,2−ジフルオロトルエン、1,3−ジフルオロトルエン、1,4−ジフルオロトルエン、1,2,3−トリフルオロトルエン、1,2,4−トリフルオロトルエン、クロロトルエン、1,2−ジクロロトルエン、1,3−ジクロロトルエン、1,4−ジクロロトルエン、1,2,3−トリクロロトルエン、1,2,4−トリクロロトルエン、ヨードトルエン、1,2−ジヨードトルエン、1,3−ジヨードトルエン、1,4−ジヨードトルエン、1,2,3−トリヨードトルエン、1,2,4−トリヨードトルエン、キシレンまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0069】
前記非水性電解質は、電池寿命を向上させるためにビニレンカーボネートまたは下記化学式2のエチレンカーボネート系化合物をさらに含むこともできる。
【0070】
[化学式2]
【化2】

【0071】
前記化学式2中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)またはC1〜C5のフルオロアルキル基であり、前記RとRのうちの少なくとも一つは、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)またはC1〜C5のフルオロアルキル基である。
【0072】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。前記ビニレンカーボネートまたは前記エチレンカーボネート系化合物をさらに使用する場合、その使用量を適切に調節して寿命を向上させることができる。
【0073】
前記リチウム塩は、前記非水性有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム2次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。前記リチウム塩の代表的な例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは自然数である)、LiCl、LiI、LiB(C(リチウムビスオキサラトボレート(lithium bis(oxalato)borate;LiBOB)またはこれらの組み合わせが挙げられ、これらを支持(supporting)電解塩として含む。前記リチウム塩の濃度は、0.1M〜2.0M範囲内で使用するとよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な電導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンは効果的に移動することができる。
【0074】
セパレータ113は、負極112と正極114を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、リチウム電池で通常使用されるものであれば全て使用可能である。つまり、電解質のイオン移動に対して低抵抗である場合、電解液含湿能力が優秀なものが使用され得る。例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはこれらの調合物の中で選択されたもので、不織布または織布形態でも関係ない。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなポリオレフィン系高分子セパレータが主に使用され、耐熱性または機械的強度の確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されることもでき、選択的に単層または多層構造で使用され得る。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。かかる下記実施例は本発明の一実施例に過ぎず、本発明は下記実施例に限定されない。
【0076】
〔実施例1〕:負極活物質の製造
シリカ(SiO)マトリックスにナノSi結晶粒が分散された形態であるシリコンオキシド粉末(モル比1:1)50gを3M HF水溶液400mLに30分間担持して表面のSiOを除去した。SiOの除去反応が完了した後、減圧ろ過装置を利用して残留不純物を洗浄した後に乾燥した。乾燥されたシリコンオキシド粉末にロータリーキルン(rotary kiln)装備を利用してメタンガスを1000℃で1時間注入して、気相炭素コーティングを行った。反応が完了した後、コーティングされた粉末を捕執した。前記コーティングされた粉末の負極活物質は、5μmの粒子サイズを有し、前記コーティング層の厚さは50nmであった。
【0077】
〔実施例2〕:負極活物質の製造
HF水溶液(4M HF)400mLに30分間担持してエッチングを行った点を除いて、実施例1と同一に行って粉末を捕執した。前記コーティングされた粉末の負極活物質は5μmの粒子サイズを有し、前記コーティング層の厚さが50nmであった。
【0078】
〔実施例3〕:負極活物質の製造
HF水溶液(6M HF)400mLに30分間担持してエッチングを行った点を除いては、実施例1と同一に行って粉末を捕執した。前記コーティングされた粉末の負極活物質は、5μmの粒子サイズを有し、前記コーティング層の厚さは50nmであった。
【0079】
〔比較例1〕:負極活物質の製造
シリカ(SiO)マトリックスにナノSi結晶粒が分散された形態であるシリコンオキシド粉末(モル比1:1)50gにロータリーキルン(rotary kiln)装備を利用してメタンガスを1000℃で1時間注入して、気相炭素コーティングを行った。反応が完了した後、コーティングされた粉末を捕執した。前記コーティングされた粉末の負極活物質は、5μmの粒子サイズを有し、前記コーティング層の厚さは50nmであった。
【0080】
〔比較例2〕:負極活物質の製造
HF水溶液(12M HF)に150分間担持してエッチングを行った点を除いては、実施例1と同一に行って粉末を捕執した。前記コーティングされた粉末の負極活物質は、5μmの粒子サイズを有し、前記コーティング層の厚さは50nmであった。
【0081】
(実験例1:X線回折分析(XRD)測定)
実施例1、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2により製造された負極活物質を利用して、X線回折分析(XRD)を施して、XRD測定結果から得たSiCの(111)面のSiの(111)面に対するピーク面積比を下記表1に示した。
【0082】
[XRD分析条件]
機器セッティング:40kV、40mA
ターゲットおよび波長:Cu供給源、CuKα平均値(1.5418Å)
スキャンモード、ステップ(step)、間隔(interval):θ/2θscan、0.01゜step、3sec/step
スリットシステム(slit system):D.S.=A.S.S.=0.5deg
【0083】
図2は、実施例1、実施例2および比較例1に対するXRD測定結果を示すグラフである。
【0084】
(実験例2:容量特性の評価)
実施例1、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2により製造されたリチウム2次電池用負極活物質を利用して、2016コイン型半電池(coin−type half cell)を製造して、25℃、0.5Cで充放電して最初のサイクル放電容量を測定し、下記表1に記載した。
【0085】
(実験例3:サイクル寿命特性の評価)
実施例1、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2により製造されたリチウム2次電池用負極活物質を利用して、2016コイン型半電池(coin−type half cell)を製造してサイクル寿命特性を評価した。
【0086】
25℃、0.5Cで充放電を80回実施しながらサイクル寿命特性を評価し、その結果を図3に示し、80サイクル以降容量維持率を80サイクル放電容量/最初のサイクル放電容量で計算して下記表1に記載した。
【0087】
【表1】

【0088】
前記表1の結果から、SiCの含量が微々たる比較例1の場合、寿命特性が良好ではなく、SiCの含量が過度に生成された比較例2の場合、容量特性が劣等であった。これから、SiCの含量が増加すれば寿命特性を改善するが、本発明の実施形態で提示する範囲を逸脱するように過度に生成されると、容量の側面で不適切になるため、前記本発明の実施例に提示する範囲内のSiCの含量である場合に容量および寿命特性を同時に満たすことを確認することができた。
【符号の説明】
【0089】
100…リチウム2次電池
112…負極
113…セパレータ
114…正極
120…電池容器
140…封入部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiOマトリックスおよびSi結晶粒を含むコア、および前記コアの少なくとも一部上に位置するコーティング層を含み、
前記コーティング層は、SiCおよびCを含み、
CuKα線を用いたX線回折分析の時、SiCの(111)面のSiの(111)面に対するピーク面積比は、0.01〜0.5である、リチウム2次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記コアは、SiO(0.3≦x≦1.2)で表示されるように、SiOマトリックスおよびSi結晶粒の含量比が決定される、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記負極活物質は、0.5μm〜50μmの平均粒子サイズを有する、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記コーティング層の厚さは、0.01μm〜1μmである、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記コア対前記コーティング層の重量比は、99:0.1〜90:10である、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項6】
SiOマトリックスおよびSi結晶粒を含むシリコンオキシド粉末を製造する段階と、
前記シリコンオキシド粉末をエッチャントに含浸して少なくとも前記SiOマトリックスの一部をエッチングして、前記Si結晶粒が前記シリコン粉末の表面に露出されるようにエッチングされた粉末を得る段階と、
前記エッチングされた粉末を炭素原料物質で表面処理してSiCおよび炭素を含む炭素コーティング層を形成する段階と、
を含む、リチウム2次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記シリコンオキシド粉末をエッチャントに5分〜120分間含浸する、請求項6に記載のリチウム2次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記エッチャントは、少なくとも一つのFイオンを含む物質を含む、請求項6に記載のリチウム2次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記エッチャントは、0.5M〜12MのFイオン濃度を有する、請求項6に記載のリチウム2次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記エッチングされた粉末を炭素原料物質で表面処理する段階は、700℃〜1300℃で炭素含有ガスに前記エッチングされた粉末を露出させる段階を含む、請求項6に記載のリチウム2次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記エッチングされた粉末を炭素原料物質で表面処理する段階は、前記エッチングされた粉末の表面上に炭素含有液体をコーティングし、前記炭素含有液体を800℃〜1300℃で炭化させる段階を含む、請求項6に記載のリチウム2次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記炭素含有液体は、炭素原料物質および溶媒を含む、請求項11に記載のリチウム2次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記溶媒は、ジメチルスルホキシドまたはテトラヒドロフランである、請求項12に記載のリチウム2次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記炭素原料物質は、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ、石油系ピッチ、石炭系オイル、石油系重質油、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、およびこれらの組み合わせから選択された一つである、請求項12に記載のリチウム2次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記炭素原料物質は、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアニリン、ポリアセンチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、塩酸でドーピングされた伝導性高分子、およびこれらの組み合わせから選択された一つである、請求項12に記載のリチウム2次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜5に記載の負極活物質を含む負極と、
リチウムをインターカレーションおよびデインターカレーションすることができる正極活物質を含む正極と、
非水電解液と、
を含む、リチウム2次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−69674(P2013−69674A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181428(P2012−181428)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】