説明

リッドの仮止め方法および装置

【課題】小型のリッドであっても、吸着ノズルでリッドを保持しながら容器に仮止めすることを可能にする。
【解決手段】リッドを容器にスポット接合することで両者を仮止めするリッドの仮止め方法および装置であって、少なくとも作用端近傍7Aがレーザ光透過性を有する吸着ノズル7によりリッド10を吸着保持し、吸着ノズル7に保持されたリッド10を容器11の開口部に位置決めして載置し、吸着ノズル7がリッド10を容器11の方向に付勢した状態で、作用端近傍7Aを透過させてレーザ光をリッド10に照射することでこのリッド10を容器11に仮止めすることを特長とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子、弾性表面波フィルタ等の電子部品を収容した容器の開口部に、蓋体であるリッドを接合することで該容器を気密封止する封止作業の際、事前に該容器の開口部と該リッドとを仮止めする方法およびその装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水晶振動子、弾性表面波フィルタ等の電子部品を容器に気密封止する方法として、マイクロパラレルシーム接合法が広く用いられている。図5は従来からあるシールリング付き容器の断面図であり、まずセラミック基板51に金属製シールリング52をろう接してなる容器53の内部に水晶振動子等の電子部品54を収納し、この電子部品54をワイヤ55によって外リード56に電気的に接続したものを準備する。そしてこの容器53の開口部にはコバール等からなるリッド57が位置決めされて載置される。
【0003】
このとき、位置決めされたリッド57が容器53の開口部に接合されるまでに何らかの外力で位置ずれしてしまったり、例えば接合がシーム溶接である場合、接合を開始するためにローラ電極が接触することで位置ずれしてしまうことがある。これを避けるためにリッド57は通常スポット接合によって容器53の開口部周縁に仮止めされる。このようにリッド57を容器53に載置しスポット接合を行なう仮止め装置が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1で開示されたリッドの仮止め装置を図6に基づいて説明する。図6において、58は吸着ノズルであり図示しない排気手段と接続され、その負圧により先端にリッド57を吸着保持している。また59は一対の電極であり吸着ノズル58と連動して下降し、まずリッド57が容器53の上面の開口部に当接する。ここで吸着ノズル58の下降動作は停止するが、吸着動作とともにリッド57を下方に付勢する動作は維持し、リッド57の位置ずれを阻止する。一方一対の電極59は下降動作を続け、容器53上に載置されたリッド57に接触して通電することで、その抵抗発熱を利用して仮止め(スポット接合)を行なう。
【0005】
ここで一対の電極59の形状は単なる棒状のものでも一応の目的は果たすが、常に同じ部分がリッド57と接することで、異物の付着や磨耗がその作用部に集中し、電極としての寿命が短いものになる。そこで従来から、図7で示すように電極としてテーパ付きのローラ電極60を一対設け、その間隙に吸着ノズル61を配置する構造が採用されてきた。このような電極を使用すれば、ある一定のスポット接合回数の度にローラを微小角度回転させることでローラ部分の全周がリッドと接触する作用部として使用できるので、電極交換の頻度が激減する。この微小角度の回転はリッドから離隔してローラ電極60が移動しているときに適当な他の固定部材に接触し、その摩擦力でローラが回転するようにすれば容易に自動化も可能である。
【0006】
そして更に近年では高密度実装の要求から容器の小型化が進み、そのサイズは上面視で1.6×0.8mm程度にまで縮小してきている。このようなことから、一対のローラ電極の間隙に吸着ノズルを配置しつつローラ電極の間隔を縮小することに工夫が必要となり、特許文献2には、吸着ノズルと一対のローラ電極の構成は図7で示したものと同様だが、矩形のリッドの対向する辺の略中央部ではなく対角をスポット接合し、少しでも小型の容器に対応しようとする技術が開示されている。
【0007】
さらに特許文献3には、作用端(吸着端)である下端の近傍の側面がテーパ状に小径になった吸着ノズルを用い、この吸着ノズルのテーパに沿った角度でローラ電極を傾斜させて回転自在に保持する技術が開示されている。これは吸着ノズル全体の機械的強度を確保し、且つ吸着ノズル内部の空気流路の小径部を短くすることで空気抵抗を軽減し、その吸着力を確保する工夫がなされたものである(図8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−64220号公報(第3頁、図3)
【特許文献2】特開2003−1428号公報(第3頁、図1、図7)
【特許文献3】特開2009−731号公報(第5頁、図2)
【特許文献4】特開2007−12752号公報(第11頁、図9.図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年のモバイル機器等の部品として要求される部品サイズは、依然小型化の傾向が止まらず、特許文献3で説明した吸着ノズルのテーパ形状の作用端においても、吸着孔はリッドの外形内に収まるが、それに吸着ノズルの肉厚を加えた作用端の外形はリッドの外形内に収まり難く、仮止めのためのスポット接合を施す領域が得られなくなってきた。
【0010】
また、ローラ電極によるシーム接合ではないが、リッドに対しレーザ光を照射することで封止を行なう技術において、特許文献4に開示された仮止めの技術がある。ここでは、図9に平面図で示すように、複数の容器62が整列して載置され、さらに夫々の容器62にリッド63が位置決めして載置される。そしてそれらリッド63に対し押え治具である棒状体64を上から当ててレーザ光をスポット的に照射することで仮止めを行なっている。つまりここでは、吸着ノズルを備えたピックアップツールにより、1枚毎にリッド63を容器62の上に位置決めして載置したのちに、別工程として仮止め接合を行なうのであるから、リッド63を載置してから押え治具64を当てるまでにリッド63が位置ずれする可能性を含み、また、1枚毎にリッド63を載置するのと同時に仮止めを行なうよりも効率が悪い。
【0011】
また、リッドの周縁を全周に亘ってレーザ溶接した場合、溶接痕(ビード)が美観を損ねるため、仕上がり外観の良いローラ電極によるシーム接合でリッドの周縁を封止しようとする要求も多い。したがって発明者は、電極によった抵抗溶接での仮止めにとらわれず、外形寸法の小さなリッドにも対応でき、後の工程でリッドの全周を封止接合する方法も選ばないリッドの仮止め方法およびその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は第1の態様として、電子部品を収容する容器の開口部にリッドを載置し、このリッドの周縁を前記開口部に接合する封止作業に先立って、前記リッドを前記容器にスポット接合することで両者を仮止めするリッドの仮止め方法において、少なくとも作用端近傍がレーザ光透過性を有する吸着ノズルによりリッドを吸着保持し、前記吸着ノズルに保持された前記リッドを容器の開口部に位置決めして載置し、前記吸着ノズルが前記リッドを前記容器の方向に付勢した状態で、前記作用端近傍を透過させてレーザ光を前記リッドに照射することでこのリッドを前記容器に仮止めすることを特長とするリッドの仮止め方法を提供するものである。
【0013】
また本発明の第2の態様として、前記レーザ光の照射位置は、前記リッドの上面又は端面であって、且つ前記吸着ノズルの吸着作用端の外形が前記リッドの外形を覆っていることを特徴とする第1の態様として記載のリッドの仮止め方法を提供するものである。
【0014】
また本発明の第3の態様として、電子部品を収容する容器の開口部にリッドを載置し、このリッドの周縁を前記開口部に接合する封止作業に先立って、前記リッドを前記容器にスポット接合することで両者を仮止めするリッドの仮止め装置であって、レーザ光発生部と、レーザ光伝送部と、レーザ光射出光学部と、少なくとも作用端近傍がレーザ光透過性を有する材料で構成された吸着ノズルとを備えることを特徴とするリッドの仮止め装置を提供するものである。
【0015】
さらに本発明の第4の態様として、複数のレーザ光射出光学部と、このレーザ光射出光学部と前記レーザ光発生部とに介在するレーザ光分岐光学部とを備えることを特徴とする第3の態様として記載のリッドの仮止め装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、吸着ノズル作用端の周囲にリッドの上面が露出した領域が狭く、吸着ノズルの作用端に至近の位置、あるいは該作用端の領域に一部が重なる位置でスポット接合を行なう場合でも、レーザ光が吸着ノズルを透過するため、リッドと吸着ノズルの作用端との面積に大きな差がない場合でも、自由な位置をスポット接合することができ、確実に仮止めを行なうことが可能となる。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、吸着ノズルの作用端外形の内側でレーザ光によるスポット接合が可能であるため、リッドの外形が吸着ノズルの作用端に形成された吸着孔よりも大きければ、該作用端の外形よりも小さなリッドが仮止め可能となる。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1、第2の態様に記載したリッドの仮止めを行なう装置を得ることができる。また本発明の第4の態様によれば、リッド上の複数箇所(例えば2箇所)をスポット接合して仮止めを行なえるので、より確実な仮止め作業を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態を示すリッドの仮止め装置の側面図
【図2】本発明の実施形態を示すリッドの仮止め装置の要部側面図
【図3】本発明の実施形態を示す容器およびリッドの平面図
【図4】本発明の他の実施形態を示す側面図
【図5】従来の技術を示す容器の断面図
【図6】従来の技術を示すリッドの仮止め装置の要部側面図
【図7】従来の技術を示すリッドの仮止め装置の要部側面図
【図8】従来の技術を示すリッドの仮止め装置の要部側面図
【図9】従来の技術を示す容器およびリッドの平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付図面を参照して本発明に係るリッドの仮止め方法および装置の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明に係るリッドの仮止め装置の側面図であり、符号1は図示しないガイド機構と駆動機構により紙面を見て左右の方向に移動可能であると共に、吸着ノズルおよびレーザ光射出光学部を支持するベースである。2はカムプレート、3はカムプレート2に連動するカムフォロア、4はアーム、5はカムフォロア3をカムプレート2の半径の変化に追従させるためにベース1とアーム左端4Aとの間に装架された引っ張りコイルばね、6はレーザ光射出光学部、7はその作用端(吸着面となる一端)近傍7Aがレーザ光透過性を有する材料で構成された吸着ノズルである。
【0022】
7Bはベース1に上下動自在に支持された吸着ノズル本体部であり、排気孔7Cから図示しない排気装置に接続され排気が行なわれることにより吸着ノズルの下端である吸着作用端に負圧を生じさせる。8は吸着ノズルの上端7Cとアーム4の右端4B間に装架された引っ張りコイルばね、9はベース1に上下動自在に支持された支持ブロック、10は吸着ノズル7に吸着された状態のリッド、11はステージ12上に位置決めして載置された容器、13はレーザ光発生部、14はレーザ光発生部からレーザ光射出光学部までレーザ光を導くための、光ファイバからなるレーザ光伝送部である。
【0023】
次に、スポット接合によるリッドの仮止め動作を図1および図2に基づいて説明する。図1は、図示しないリッド供給部から吸着ノズル7によりリッド10を吸着し、仮止めステージまで移動した状態を示す。ここで、図示しないモータの駆動に伴いその回転軸2Aを中心にカムプレート2が回転する。カムプレート2はモータのシャフトの回転軸2Aに対して偏心しており、その回転により半径の小さい部分が回転軸2Aの下方に来ると、アーム4に軸着され、引っ張りコイルばね6によりカムプレート2側に付勢されているカムフォロア3は上方に移動する。
【0024】
カムフォロア3の上昇に伴い、アームの左端4Aは支点4Cを中心に上昇し、同時にアームの右端4Bが下降する。ここでアームの右端4Bは、吸着ノズルの上端7Cと支持ブロック9に一体的に設けられた突起部9Aとを下方から支持しており、アームの右端4Bが下降するのに伴い吸着ノズル7とレーザ光射出光学部6も同時に下降する。吸着ノズル7が下降することにより、その作用端に吸着保持されたリッド10は容器11の上面に当接する。これより吸着ノズル7は下降を停止するが、カムプレート2は回転を続け、アームの右端4Bは更に下降し続ける。
【0025】
ここで、下降するアームの右端4Bと下降が停止した状態の吸着ノズルの上端7Cとの相対的変位は、引っ張りコイルばね8の伸びが吸収するとともに、その反力により所定の押圧力で吸着ノズル7がリッド10を容器11に向かって付勢するようにしている。また、吸着ノズル7が静止した後もレーザ光射出光学部6はアームの右端4Bの下降に伴って下降を続けるが、やがてアームの右端4Bの下面が吸着ノズル本体7Bに固定してあるマイクロスイッチ15に当接して接点を切り替える。そしてマイクロスイッチ15の接点が切り替わると、カムプレート2の回転が停止し、同時にレーザ光射出光学部6が予め調整された所望の高さに停止する。
【0026】
図2は図1の要部を拡大した図であり、図2(a)はリッド10が容器11に載置される前の状態、図2(b)はリッド10が容器11上に載置され、その後レーザ光射出光学部6がリッド10にレーザ光を照射している状態を示している。ここでレーザ光射出光学部6はレーザ光伝送部14の光ファイバ終端面から拡散光として射出されるレーザ光を光学レンズを介すことで所定の位置に再集光するものである。そしてこの再集光させる位置がリッド10の上面又は端面であるが、これらの部分は吸着ノズルの作用端によって覆い隠されている。しかし、吸着ノズル7の作用端近傍7Aはレーザ光透過性を有するため当該レーザ光を透過し、リッド10及びリッド10と容器11とに介在した接合材にエネルギーを付与し発熱させることでスポット接合が行なわれる。
【0027】
次に、リッド10が吸着ノズル7によって容器に載置された様子を図3に平面図で示す。ここで、2点鎖線で示した2つの円は吸着ノズル7の作用端の外形と吸着ノズル7の作用端に設けられた吸着孔の外形である。該吸着孔の外形はリッド10の上面に収まる径となっているが、該作用端の外形はリッド10の外形があまりに小さいため、その領域からはみ出した状態となっている。そして斜線でハッチングされた小さな円は、図示しないレーザ光射出光学部がレーザ光を照射し、スポット接合がなされる部分である。この図ではスポット接合される部分を代表的な候補として4箇所示したが、本実施形態ではこれらのうちのいずれか1箇所がスポット接合される。
【0028】
次に図4に基づいて他の実施形態を説明する。この実施形態は図1に基づいて説明した実施形態が、リッド1枚に対して1箇所の仮止めスポット接合を行なうものであったのに対し、リッド1枚に対し2箇所の仮止めスポット接合を行なうように構成されたものである。したがって、レーザ光発生部13で発生したレーザ光はレーザ光分岐光学部16によって二手に分岐され、一対設けられたレーザ光射出光学部6に伝送される。この実施形態ではレーザ光射出光学部6を支持する支持ブロック9も一対設けられているだけで、動作に関しては図1に基づいて説明した実施形態と同等であるので、説明は省略する。
【0029】
このような構成とすることにより、一対のレーザ光射出光学部から同時に1枚のリッドの2箇所にレーザ光を照射することができるため、図3でスポット接合部の位置の候補を示したうち、対向する2つの辺の略中央部を2箇所スポット接合することが可能となり。リッドの片浮き等の可能性が少なく、より確実なリッドの仮止めを実現することができる。また、図3ではリッド10の形状が平面視で長方形であり、スポット接合を4角に行なう場合は、レーザ光が吸着ノズルの作用端を透過せずとも可能であるように思われるが、このリッド10の形状(長方形)のアスペクト比が小さく(正方形に近く)なればそれも不可能になり、本発明に係るリッドの仮止め方法および装置がその効果を発揮するものである。
【符号の説明】
【0030】
1 ベース
2 カムプレート
3 カムフォロア
4 アーム
5、8 引っ張りコイルばね
6 レーザ光射出光学部
7 吸着ノズル
9 支持ブロック
10 リッド
11 容器
12 ステージ
13 レーザ光発生部
14 レーザ光伝送部
15 マイクロスイッチ
16 レーザ光分岐光学部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収容する容器の開口部にリッドを載置し、このリッドの周縁を前記開口部に接合する封止作業に先立って、前記リッドを前記容器にスポット接合することで両者を仮止めするリッドの仮止め方法において、少なくとも作用端近傍がレーザ光透過性を有する吸着ノズルによりリッドを吸着保持し、前記吸着ノズルに保持された前記リッドを容器の開口部に位置決めして載置し、前記吸着ノズルが前記リッドを前記容器の方向に付勢した状態で、前記作用端近傍を透過させてレーザ光を前記リッドに照射することでこのリッドを前記容器に仮止めすることを特長とするリッドの仮止め方法。
【請求項2】
前記レーザ光の照射位置は、前記リッドの上面又は端面であって、且つ前記吸着ノズルの吸着作用端の外形が前記リッドの外形を覆っていることを特徴とする請求項1に記載のリッドの仮止め方法。
【請求項3】
電子部品を収容する容器の開口部にリッドを載置し、このリッドの周縁を前記開口部に接合する封止作業に先立って、前記リッドを前記容器にスポット接合することで両者を仮止めするリッドの仮止め装置であって、レーザ光発生部と、レーザ光伝送部と、レーザ光射出光学部と、少なくとも作用端近傍がレーザ光透過性を有する材料で構成された吸着ノズルとを備えることを特徴とするリッドの仮止め装置。
【請求項4】
複数のレーザ光射出光学部と、このレーザ光射出光学部と前記レーザ光発生部とに介在するレーザ光分岐光学部とを備えることを特徴とする請求項3に記載のリッドの仮止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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