説明

リップシールおよびこれを用いた回転継手

【課題】シールすべき空間の圧力状態に関わらず、十分なシール機能を発揮することができるリップシールおよびこれを用いた回転継手を提供する。
【解決手段】リップ部5と、該リップ部5を含む可動筒部4と、所定の空間を画定する溝3と、を有するリップシール1であって、リップ部5が、円筒面または円筒内面に摺動可能に密着させられる円環形状であり、溝3が、可動筒部4に半径方向に隣接して形成され、少なくともその一部に体積変化可能な密閉空間6cを有し、可動筒部4における少なくとも先端部が、密閉空間6cの体積変化に応じて、リップ部5の半径方向に弾性変形可能であるリップシール1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リップシールおよびこれを用いた回転継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸の外周面に密着させられる円環状のリップ部と、該リップ部が設けられた先端部を半径方向に膨張または収縮させるように弾性変形可能な円筒状部と、該円筒状部の半径方向に全周にわたって隣接する周溝とを有するリップシールが知られている。このリップシールは、回転軸とその外側に配置される円筒内面との間の円筒状の空間を密閉するように、シールすべき空間側に周溝の開口を向けて配置されるようになっている。これにより、シールすべき空間が正圧となったときに円筒状部を弾性変形させてリップ部を半径方向内方に収縮させ、回転軸の外周面に押し当てる力を増大させてシール機能を向上させるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、固定部材と回転部材との間の円筒状の空間を密閉して、両部材に設けられた管路を接続する回転継手においては、流路に接続されたポンプの駆動方向によってシールすべき空間内の圧力状態が変動するため、従来のリップシールを用いたのでは、シールすべき空間が負圧となった場合に、リップシールのシール機能が低下し、外部から空間内に空気が吸引されてしまうという不都合がある。
【0004】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、シールすべき空間の圧力状態に関わらず、十分なシール機能を発揮することができるリップシールを提供することを目的としている。
また、本発明は、十分なシール機能を発揮することができる本発明のリップシールの少なくとも2つを一対として用い、各リップシールの先端部を含む面同士を互いに対向配置してシールすることにより、シールすべき空間における圧力が、正圧になろうと負圧になろうとこれに影響されることなく、十分に高い密閉度を有する空間を、安定的に提供可能な回転継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、リップ部と、該リップ部を含む可動筒部と、所定の空間を画定する溝と、を有するリップシールであって前記リップ部が、円筒面または円筒内面に摺動可能に密着させられる円環形状であり、前記溝が、前記可動筒部に半径方向に隣接して形成され、少なくともその一部に体積変化可能な密閉空間を有し、前記可動筒部における少なくとも先端部が、前記密閉空間の体積変化に応じて、前記リップ部の半径方向に弾性変形可能であるリップシールを提供する。
【0006】
本発明によれば、リップシールを、その可動筒部の先端を、シールすべき空間側に向けて円筒面および円筒内面の間に形成された円筒状の隙間に周方向に沿って配置する。そして、円筒面および円筒内面が相対的に回転させられると、リップ部が円筒面または円筒内面と密着しながら摺動してこれらとの隙間を密閉しながら相対的に回転させられ、先端部側の空間をシールすることができる。
【0007】
この場合に、可動筒部の先端部が隣接するシールすべき空間が正圧になると、従来のシップシールと同様に可動筒部が膨張または収縮してリップ部を摺動している円筒面または円筒内面に押し当て、シール機能を向上させることができる。
【0008】
また、可動筒部の先端部が隣接するシールすべき空間が負圧になると、溝内に形成された密閉空間の体積が変化(膨張)し、その変化に応じて可動筒部の先端部が、リップ部の半径方向に押圧されて弾性変形することにより、溝と隣接する可動筒部が摺動している円筒面または円筒内面の方向へ押圧され、リップ部がそれらに押し当てられてシール機能を向上させることができる。
すなわち、本発明のリップシールによれば、シールすべき空間の圧力が変動しても、常に十分なシール機能を発揮することができる。
【0009】
また、本発明は、円筒面または円筒内面に摺動可能に密着させられる円環状のリップ部と、該リップ部が設けられた先端部を含み、該先端部を、前記リップ部の半径方向に膨張または収縮させるように弾性変形可能である、円筒状の可動筒部と、該可動筒部に半径方向に隣接し、その全周にわたってかつ前記先端部側に向かって開口して形成され、該開口側に向かい深さ軸に沿って漸次溝幅が小さくなる周溝と、該周溝内の深さ軸の途中位置に配置され、該周溝内に密閉された空間を画定しつつ前記深さ軸に沿って摺動可能に設けられた環状の摺動部材とを備えるリップシールを提供する。
【0010】
本発明によれば、リップシールを、その可動筒部の先端部をシールすべき空間側に向けて円筒面および円筒内面の間に形成された円筒状の隙間に周方向に沿って配置する。そして、円筒面および円筒内面が相対的に回転させられると、リップ部が円筒面または円筒内面と密着しながら摺動してこれらとの隙間を密閉しながら相対的に回転させられ、先端部側の空間をシールすることができる。
この場合に、可動筒部の先端部が隣接するシールすべき空間が正圧になると、従来のリップシールと同様に可動筒部が膨張または収縮してリップ部を摺動している円筒面または円筒内面に押し当て、シール機能をさらに向上させることができる。
【0011】
また、可動筒部の先端部が隣接するシールすべき空間が負圧になると、摺動部材によって密閉されている周溝内の空間の体積が膨張し、摺動部材が先端部の方向へ押圧されて摺動させられる。このときに、摺動部材が、開口に向かって小さくなっている溝幅を半径方向に押し広げながら移動することにより、周溝と隣接する可動筒部が摺動している円筒面または円筒内面の方向へ押圧され、リップ部がそれらに押し当てられてシール機能をさらに向上させることができる。
【0012】
すなわち、本発明によれば、従来のリップシールの構成に加え、負圧のときにもリップ部が摺動する面側へ押圧される構成を設けることで、シールすべき空間の圧力が正圧および負圧に変動しても常に十分なシール機能を得ることができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、前記本発明のリップシールを、各可動筒部の先端部を対向させ対で配置して先端部間にシールすべき空間を形成して、該空間を回転部材および固定部材の管路を接続する流路にして回転継手として用いる。これにより、送液ポンプの駆動方向にしたがって流路内の圧力が正圧および負圧に変動しても、その変動にかかわらずリップシールのシール機能が十分に発揮されて流路内からの液体のリークや外部からの空気の吸引を安定して防ぐことができる。
【0014】
また、本発明は、円筒面または円筒内面に摺動可能に密着させられる円環状のリップ部と、該リップ部が設けられた先端部を含み、該先端部を、前記リップ部の半径方向に膨張または収縮させるように弾性変形可能である、円筒状の可動筒部と、該可動筒部に半径方向に隣接し、その全周にわたってかつ前記先端部側に向かって開口して形成された周溝と、該周溝内に配置され、内外圧差に応じて膨張又は収縮可能な弾性材料からなる環状のチューブ部材と、を備えるリップシールを提供する。
【0015】
本発明によれば、可動筒部の先端部が隣接するシールすべき空間が、正圧になると、先端部が膨張または収縮することによりリップ部が摺動している円筒面または円筒内面に押し当てられる。また、負圧になると、チューブ部材が膨張して周溝の内壁を半径方向に押し広げる方向に押圧し、これによりリップ部が摺動している円筒面または円筒内面の方向へ押圧される。すなわち、シールすべき空間の圧力が正圧および負圧に変動して、常にシール機能を十分に発揮することができる。
【0016】
また、本発明のリップシールにおいては、更に、溝または周溝の半径方向外壁面に、耐熱収縮層を有していてもよい。
このようにすることで、リップシールを長時間に亘って使用した際の熱収縮による変形などを効果的に防止することができ、より高いシール機能を安定的に十分に発揮することができる。
【0017】
また、本発明によれば、前記本発明のリップシールを、各可動筒部の先端部を対向させて一対で配置して先端部間に流路を形成して回転継手として用いることで、流路内の圧力が正圧および負圧に変動しても常に十分なシール機能が発揮される。したがって、流路内から液体が漏えいしたり流路外から空気が吸引されたりすることなく、安定的に液体を送液等できる。
【0018】
また、本発明は、少なくとも、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のリップシールの2つを一対として有し、該一対のリップシールにおける前記先端部を含む面同士が互いに対向配置して用いられる回転継手を提供する。
【0019】
本発明によれば、各リップシールの先端部を含む面の間に形成された空間を流路として用いることにより、流路内の圧力が送液ポンプの駆動方向によって正圧または負圧に変動しても、これに影響されることなく常に十分なシール機能が発揮することができる。これにより、リップ部と、該リップ部と摺動する円筒面または円筒内面との隙間から液体がリークしたり空気が吸引されたりすること防いで、安定的に液体を送液等できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のリップシールによれば、シールすべき空間の圧力状態に関わらず、十分なシール機能を発揮することができるという効果を奏する。
また、本発明の回転継手によれば、十分なシール機能を発揮することができる前記本発明のリップシールの少なくとも2つを一対として用いることにより、シールすべき空間における圧力が正圧であろうと負圧であろうとこれに影響されることなく、十分に高い密閉度を有する密閉空間を安定的に提供可能であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係るリップシール1について、図1〜図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るリップシール1は、図1(a)に示されるように、環状のリップシール本体2と、該リップシール本体2の一方の端面2aに設けられた周溝(溝)3と、該周溝3と内周面2bとの間に形成された可動筒部4と、該可動筒部4の先端部におけるリップ部5とを備え、また、周溝3の内部には、図1(b)に示されるように、摺動体6aおよびバネ6bから成る摺動部材6とを備えている。
【0022】
リップシール本体2は、円筒形状を有し、内周面2bが摺動性の材質で構成されて滑り抵抗が小さくなっている。また、外圧に応じて半径方向に弾性変形可能な材質、例えば、シリコーン樹脂等で構成されている。
【0023】
周溝3は、リップシール本体2の内周面2b近傍に、全周にわたって形成されており、先端部側に向かって開口している。周溝3における半径方向内方の内壁は、その開口に向かって漸次径寸法が大きくなる(周溝3の溝径は、その開口に向かって漸次寸法が小さくなる)テーパ状になっている。一方、半径方向外方の内壁は、径寸法を変えずに周溝3の深さ軸に沿って延びている。これにより、溝幅が端面2aに向かって漸次小さくなっている。
【0024】
可動筒部4は、周溝3と内周面2bとの間に全周にわたって形成された円筒状の部分であり、外圧により半径方向内方へ押圧されると、その方向に弾性収縮するようになっている。これにより、可動筒部4の先端部の内周面2bが半径方向内方へ押圧されてリップ部5として機能するようになっている。なお、本発明でいう「円筒状」には、本実施形態にもあるように、可動筒部4の外壁(つまり、周溝3における半径方向内方の内壁)が上述のようにテーパ状になっているもの等も含まれる。
【0025】
摺動体6aは、周溝3を深さ方向の途中位置で塞ぎ、底壁側に大気圧の空気で満たされ密閉された空間(密閉空間)6cを画定している。摺動体6aは、密閉空間6cの密閉を維持しながら周溝3の内壁に沿って深さ方向に摺動可能になっている。
バネ6bは、摺動体6aと周溝3の底壁とに両端が固定され、摺動体6aの移動と同時に深さ方向に伸縮させられる。
【0026】
摺動体6aは、密閉空間6cと隣接する周溝3内の圧力が大気圧よりも小さくなると、密閉空間6cの体積が膨張することにより溝3の開口側へ押圧されてバネ6bを延伸させながら摺動させられる。このとき、テーパ状に形成された溝3の内壁を押して溝幅を広げながら移動して、図1(b)の2点鎖線で示されるように、可動筒部4が半径方向内方へ押圧されて収縮し、リップ部5が半径方向内方に押圧されるようになっている。
【0027】
また、摺動体6aは、密閉空間6cと隣接する周溝3内の圧力が大気圧よりも大きくなると、その圧力とバネ6bの弾性復元力により底壁側に摺動させられ、密閉空間6cの体積は収縮する。
【0028】
以下、前述にように構成された本発明に係るリップシール1の使用方法および作用について、図2に示されるように、遠心分離機で回転させられる遠心分離容器7に液体を給排する場合を例に挙げて説明する。
この場合、リップシール1は、遠心分離機の回転軸8と、該回転軸8の外周を覆うハウジング9との隙間に配置され、回転継手として用いられる。
【0029】
回転軸8は、直立した円柱状であり、遠心分離機のロータ10と一体で設けられている。また、回転軸8の内部には液体を給排する配管8aが設けられ、一端は回転軸8の外周面に開口し、他端は、送液チューブ11を介して遠心分離機に装着され密閉された遠心分離容器7内に接続されている。
【0030】
ハウジング9は、円筒状であり、その円筒内面が回転軸8の外周面(円筒面)を覆っている。また、ハウジング9は、回転軸8の配管8aの開口8bと略同一の高さに送液チューブ11の一端が挿入されている。送液チューブ11の他端は図示しない送液ポンプに接続され、該送液ポンプによって送液方向が選択されるようになっている。
【0031】
リップシール1はハウジング9と一体で設けられ、回転軸8は、リップシール1の内周面2bと密着しながら摺動して回転させられる。また、リップシール1は、図3に示されるように、配管8aの開口8bを上下に挟み、周溝3およびリップ部5を有する端面2aを対向させて一対で配置され、各端面2a間に形成された空間が、配管8aおよび送液チューブ11と連通して流路2cになっている。
【0032】
液体を、ハウジング9に接続された送液チューブ11から流路2cおよび配管8aを通って遠心分離容器7へ給液し、またはその反対の方向へ液体を排出すると、それぞれ送液ポンプの吐出および吸引にしたがって流路2c内の圧力が正圧または負圧に変化するようになっている。
【0033】
このように構成された遠心分離機を作動させて回転軸8を回転させ、ハウジング9に接続された送液チューブ11から配管8aを介して遠心分離容器7内へ液体を供給すると、流路2c内が正圧になることによりリップ部5が回転軸8側に押圧されて回転軸8との隙間を密閉し、液体が外部にリークすることなく給液される。また、送液方向を逆転させ、遠心分離容器7内から配管8aを介して送液チューブ11の方向へ液体を排出すると、流路2c内が負圧になって摺動部材6が移動し、リップ部5が回転軸8との隙間を密閉して外部から空気が吸引されることなく排液される。
【0034】
このように、本実施形態によれば、従来のリップシールの構成に加え、負圧時にもリップ部5が回転軸8側に押し当てられる構成を設けることで、シールすべき空間である流路2c内が正圧・負圧の双方のときにシール機能を発揮させることができる。これにより、同一の配管8aおよび流路2cを用いて給液と排液の両方を行って圧力が変動する場合でも、常に十分なシール機能を得ることができるという利点がある。
【0035】
なお、上記実施形態においては、リップシール本体2の材質として、シリコーン樹脂を例に挙げたが、これ以外にも、例えば、耐摩耗性に優れる材質、具体的には、ブタジエンゴム、スチレン‐ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン‐プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、カルボキシニトリルゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴムなどの合成ゴムおよび熱可塑性ゴムなどのエラストマーならびに天然ゴム等も好適に用いられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上が併用されていてもよい。
【0036】
また、上記実施形態においては、摺動部材として摺動体とバネとを用いることとしたが、これに代えて、摺動体と他の弾性部材、例えば、上述の材質からなるゴム等の樹脂を用いてもよく、また、密閉空間内をゲル等の内部に気泡を含み弾性を有する物質で満たしてもよい。このようにすることで、流路2c内の圧力の変動によって摺動体6aが周溝3の深さ方向に摺動して内壁を半径方向内方に押圧し、同様の効果を得ることができる。
【0037】
また、上記実施形態においては、周溝内に摺動部材を備えるリップシールを用いたが、これに代えて、図4に示されるように、周溝内の周方向に沿って円環状の弾性チューブ(チューブ部材)を設けたリップシールを用いてもよく、これらの双方を一対として併用した回転継手をもちいてもよい。なお、弾性チューブを用いる場合には、周溝の内壁はテーパ状でなくてもよい。
【0038】
弾性チューブ12は、その半径方向に弾性伸縮する材質、例えば、シリコーン樹脂などの樹脂製のもののほか、上述の、リップシール本体2に適用可能な材質と同様の材質を好適に用いることができる。また、弾性チューブ12の両端は接続されてその内部が密閉され、該内部は例えば空気で満たされている。
【0039】
このようにすることで、流路2c内が負圧のときは、弾性チューブ12内の空気が膨張することにより、弾性チューブ12が半径方向に押圧されて膨張し、リップ部5が回転軸8側へ押圧される。これにより、リップ部5が回転軸8との隙間を密閉し、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
また、上記実施形態においては、周溝、可動筒部およびリップ部が内周面側に設けられ、内周面が摺動させられることとしたが、これに代えて、周溝、可動筒部およびリップ部が外周面側に設けられ、外周面が摺動させられることとしてもよい。
この場合、上記実施形態の構成を用いて説明すれば、リップシール1は回転軸8と一体で設けられ、静止する回転軸8の外周回りにハウジング9が回転させられる。また、流路2c内が正圧および負圧のときに可動筒部4およびリップ部5が半径方向外方に押圧されてハウジング9に押し当てられることによりシール機能を発揮する。
【0041】
また、上記実施形態においては、周溝の半径方向内方側に配置された内壁がテーパ状に形成されていることとしたが、溝の形状は端面2aに向かって漸次溝幅が小さくなっていればよい。例えば、半径方向外側に配置された内壁または対向する両方の内壁がテーパ状であってもよい。また、溝は、全周にわたって形成された周溝である必要はなく、例えば、上記実施形態における可動筒部に半径方向に隣接し周方向に沿って複数の溝が形成されていてもよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、可動筒部の内周面(半径方向外壁面)に耐熱収縮層を有することが好ましい。
耐熱収縮層として用いられる材質は、耐熱性・耐熱収縮性に優れる材質であればよく、具体的には、ステンレススチール等の金属層のほか、ポリアセタールやフッ素樹脂等のプラスチック層等でよい。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、耐熱収縮層は、1層からなるものでもよく2層からなるものでもよい。
【0043】
このようにすることで、リップシール1を長時間使用して摺動により摩擦熱が発生しても、リップシール1、特に、回転軸8と摺動させられる可動筒部4およびリップ部5が熱収縮により変形したり熱により劣化したりするのを防止して、十分なシール機能を持続させることができる。
【0044】
また、上記実施形態において、リップシール1の製造方法としては特に制限はなく、公知の成形加工等でよい。さらに、耐熱収縮層を設ける場合にも、その製造方法としては特に制限はなく、リップシール本体2との一体成形加工等でよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係るリップシールの(a)全体の構成および(b)周溝内の断面を示す図である。
【図2】図1のシップシールを用いた遠心分離機の全体の構成を示す図である。
【図3】図1のリップシールの配置の詳細を示す図である。
【図4】図1のリップシールの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 リップシール
2 リップシール本体
2a 端面
2b 内周面
2c 流路
3 周溝(溝)
4 可動筒部
5 リップ部
6 摺動部材
6a 摺動体
6b バネ
6c 空間(密閉空間)
7 遠心分離容器
8 回転軸
8a 配管
8b 開口
9 ハウジング
10 ロータ
11 送液チューブ
12 弾性チューブ(チューブ部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リップ部と、該リップ部を含む可動筒部と、所定の空間を画定する溝と、を有するリップシールであって、
前記リップ部が、円筒面または円筒内面に摺動可能に密着させられる円環形状であり、
前記溝が、前記可動筒部に半径方向に隣接して形成され、少なくともその一部に体積変化可能な密閉空間を有し、
前記可動筒部における少なくとも先端部が、前記密閉空間の体積変化に応じて、前記リップ部の半径方向に弾性変形可能であるリップシール。
【請求項2】
円筒面または円筒内面に摺動可能に密着させられる円環状のリップ部と、
該リップ部が設けられた先端部を含み、該先端部を、前記リップ部の半径方向に膨張または収縮させるように弾性変形可能である、円筒状の可動筒部と、
該可動筒部に半径方向に隣接し、その全周にわたってかつ前記先端部側に向かって開口して形成され、該開口側に向かい深さ軸に沿って漸次溝幅が小さくなる周溝と、
該周溝内の深さ軸の途中位置に配置され、該周溝内に密閉された空間を画定しつつ、該深さ軸に沿って摺動可能に設けられた環状の摺動部材と、を備えるリップシール。
【請求項3】
円筒面または円筒内面に摺動可能に密着させられる円環状のリップ部と、
該リップ部が設けられた先端部を含み、該先端部を、前記リップ部の半径方向に膨張または収縮させるように弾性変形可能である、円筒状の可動筒部と、
該可動筒部に半径方向に隣接し、その全周にわたってかつ前記先端部側に向かって開口して形成された周溝と、
該周溝内に配置され、内外圧差に応じて膨張又は収縮可能な弾性材料からなる環状のチューブ部材と、を備えるリップシール。
【請求項4】
前記溝または前記周溝の半径方向外壁面に、耐熱収縮層を有する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のリップシール。
【請求項5】
少なくとも、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のリップシールのうち2つを一対として有し、該一対のリップシールにおける前記先端部を含む面同士が互いに対向配置して用いられる回転継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−121680(P2010−121680A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294610(P2008−294610)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】