説明

リニアアクチュエータ

【課題】 出力反対側への前記出力軸の突出をなくして、該出力軸の長さを短くするとともに、該出力軸のストロークを有効に活用できるリニアアクチュエータを提供することにある。
【解決手段】 モータ(22)の回転子(24)の中空軸(25)内に配設される駆動用ナット部材(26)と、前記中空軸(25)内を挿通し、その外周面に、前記駆動用ナット部材(26)のねじ部(26a)と螺合するねじ部(27a)が形成される出力軸(27)と、前記回転子(24)の出力反対側を軸支する軸受け(31)が配設されたフレーム(29)と、前記出力軸(27)の出力反対側に固着された端軸(36)と、前記出力軸(27)の出力軸側に固着された接続部材(41)と、該接続部材(41)に固着され前記出力軸(27)と平行に配設されるリニア軸(43)と、該リニア軸(43)を摺動可能に保持するリニア軸受(44)を有し、前記モータ(22)の出力軸側端面を閉塞する摺動ガイド機構(42)と、を備えたリニアアクチュエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアアクチュエータに関し、特に、該アクチュエータの出力反対側(ここで、出力反対側とは、該アクチュエータの出力軸が出力する側の反対側をいう。)への出力軸の突出をなくし、出力軸のストロークを有効に活用することで小型化と、関連機能を有する装置の付加が可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のリニアアクチュエータとしては、例えば、図4(a)の断面図および
図4(b)の側面図に示すものがある。図4(a)および図4(b)において、このリニアアクチュエータ1は、モータ2を構成する固定子3と、該固定子3内の軸心上に、中空状の回転軸5に固着して、回動自在に配設される回転子4のほか、該回転子4の鉄心4aから離れた軸心上の部位で、前記中空軸5の中空部分が拡径された中空拡径部5a内に固着される駆動用ナット部材6と、該中空軸5内を、外部に突出して往復動するように挿通し、その外周面に、前記ナット部材6のねじ部6aと螺合するねじ部7aが形成される出力軸7とを備える。
【0003】
そして、前記中空軸5は、その一方の側に形成された前記中空拡径部5aと、前記回転子鉄心4aを間に、その他方の側の中空小径部5bとが、前記固定子3の両側にそれぞれ固定されたフレーム8,9に配設された軸受10,10および11により、回動自在に支持されている。
【0004】
また、前記中空小径部5b側の前記フレーム9には、該中空小径部5bを支持する前記軸受11を収容する軸受保持部9aが形成され、該軸受保持部9aの外側端内に、円筒状のブッシュ12が、前記出力軸7を貫通させるとともに、該出力軸7を直動自在に支持するように配設されている。前記円筒状のブッシュ12は、前記出力軸7のねじ部7aの回り止め機能を有する場合もある。なお、13は、エンドキャップ、12a,12aは、穴用止め輪、15は、前記モータ2の巻線に駆動電力を供給する引出線14用のクランプである。
【0005】
このようにして、該アクチュエータ1は、前記モータ2を駆動するとき、その前記回転子4に発生する回動動力を、前記中空軸5を介して、前記駆動用ナット部材6内で互いに螺合する前記両ねじ部6a,7aにより、前記出力軸7から、外部に直動動力として出力するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−294553号公報
【特許文献2】特開昭63−35150号公報
【特許文献3】特開平10−322963号公報
【特許文献4】特開昭62−272857号公報
【特許文献5】実開昭57−127567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の前記リニアアクチュエータ1の出力軸7は、前記回転子4に対して、前記駆動用ナット部材6の位置と反対の側(出力反対側)から、直動動力を出力していた。しかしながら、前記出力軸7からストロークが出力されるとき、該出力軸7が、前記駆動用ナット部材6との螺合がはずれない範囲で、かつ該駆動用ナット部材6から抜けないように、その長さが、「ストローク」+「駆動用ナット部材6の位置から前記中空小径部5b側の前記フレーム9端までの距離」分の、極めて長い長さを必要としていた。
【0008】
同時に、このような従来のリニアアクチュエータ1にあっては、前記出力反対側に、前記出力軸7が突出するため、取付けに必要なスペースが大きく、また、該出力反対側に電磁ブレーキなどの機能を有する装置が付加することができないという問題点があった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みなされたもので、その目的は前記問題点を解決し、前記出力反対側への前記出力軸の突出をなくして、該出力軸の長さを短くするとともに、該出力軸のストロークを有効に活用できるリニアアクチュエータを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記出力軸の前記出力反対側の軸端側で、前記中空軸端に、前記回転子に関連する他の機能(例えば、回動検出、回転数検出およびブレーキなど)を有する装置の付加が可能なリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための本発明の構成は、モータ(22)の回転子(24)の中空軸(25)内に配設される駆動用ナット部材(26)と、前記中空軸(25)内を挿通し、その外周面に、前記駆動用ナット部材(26)のねじ部(26a)と螺合するねじ部(27a)が形成される出力軸(27)と、前記回転子(24)の出力反対側を軸支する軸受け(31)が配設されたフレーム(29)と、前記出力軸(27)の出力反対側に固着された端軸(36)と、前記出力軸(27)の出力軸側に固着された接続部材(41)と、該接続部材(41)に固着され前記出力軸(27)と平行に配設されるリニア軸(43)と、該リニア軸(43)を摺動可能に保持するリニア軸受(44)を有し、前記モータ(22)の出力軸側端面を閉塞する摺動ガイド機構(42)と、を備えたことにある。
また、本発明の構成は、モータ(22)の回転子(24)の中空軸(25)内に配設される駆動用ナット部材(26)と、前記中空軸(25)内を挿通し、その外周面に、前記駆動用ナット部材(26)のねじ部(26a)と螺合するねじ部(27a)が形成される出力軸(27)と、前記回転子(24)の出力反対側を軸支する軸受け(31)が配設されたフレーム(29)と、前記出力軸(27)の出力反対側に固着された端軸(36)と、前記出力軸(27)を軸方向にのみ摺動可能に保持するリニア軸受(62)を有し、前記モータ(22)の出力軸側端面を閉塞する摺動ガイド機構(60)と、を備えたことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のように構成されているので、該出力軸の長さを短くするとともに、前記出力反対側へ前記出力軸の突出をなくして、該出力軸のストロークを有効に活用できる。
また、前記中空軸を途中から中実軸にするか、または、そのまま中空軸を延長することにより省スペース化することができる。
また、前記中空軸を中空にすることにより、前記出力軸を貫通させることもできる。
さらに、前記出力反対側へ、前記回転子に関連する他の機能(例えば、回動検出、回転数検出およびブレーキなど)を有する装置を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のリニアアクチュエータの一実施の形態を示す、縦断面図である。
【図2】図1の左側面図である。
【図3】本発明のリニアアクチュエータの他の実施の形態を示す、縦断面図である。
【図4】従来のリニアアクチュエータを示し、図4(a)は、その縦断面図、図4(b)は、図4(a)の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の好適な発明の実施の形態を詳しく説明する。図1および図2は、本発明のリニアアクチュエータの一実施の形態を示し、図1は、その縦断面図、図2は、図1の左側面図である。
【0015】
図1および図2において、このリニアアクチュエータ20は、モータ、例えばステッピングモータ22を構成する固定子23と、該固定子23内の軸心上に、中空状の回転軸(以下、中空軸という)25に固着して、回動自在に配設される回転子24とのほか、該回転子24の鉄心24aから離れた軸心上の部位で、前記中空軸25の中空部分が拡径された中空拡径部25a内に固着される駆動用ナット部材26と、該中空軸25内を、外部に突出して往復動するように挿通し、その外周面に、前記駆動用ナット部材26のねじ部26aと螺合するねじ部27aが形成される出力軸27と、該出力軸27を直動させるガイド機構40とからなる。
【0016】
前記回転子鉄心24aが固着された前記中空軸25は、その一方の側に形成された中空拡径部25aと、該回転子鉄心24aを間に、その他方の側の中空小径部25bとが、前記固定子23の軸方向両側に、図示しない締結ねじによりそれぞれ固定されたフレーム28,29で、該フレーム28,29に配設された軸受30,30および31により、回動自在に支持されている。そして、前記中空拡径部25aは、その端側外周面に設けられたねじ部25cに、ロックナット32を螺合させ、該中空拡径部25aの外周面に形成された段部25dとともに、前記軸受30,30の内輪側に回動自在に固定されている。
【0017】
また、前記中空拡径部25aには、その内周面の一部にねじ部25eが設けられており、前記駆動用ナット部材26は、その外周面に設けられたねじ部26bを、前記中空拡径部25aの内周面のねじ部25eに螺着されている。そして、前記駆動用ナット部材26は、その内周面に設けられた前記ねじ部26aを、前記出力軸27のねじ部27aと螺合させながら、該出力軸27を貫通させ、かつ、図示しないねじにより、前記ナット部材26に固定されたエンドプレート33とロックナット32を締結することにより緩み止めもされている。
【0018】
34は、前記出力軸27を貫通させて、前記アクチュエータ20の端部に、補助フレーム35を介して、図示しない締結ねじにより固定されるとともに、その外周部に前記ガイド機構40の保持部34aが形成されるガイド保持部材である。
【0019】
他方、前記中空軸25の前記中空小径部25b側の前記フレーム29には、該中空小径部25bの端部25fを支持する前記軸受31が配設されており、該端部25fの内周部分に、前記中空軸25の中心軸線上で、該端部25fを閉塞するように、軸方向に延長し、前記フレーム29の外方に突出する端軸36を挿入、固着している。そして、該端軸36の突出部36aに、前記回転子24に関連する他の機能、例えば、回動検出、回転数検出およびブレーキなどの機能を有する装置37を結合または接続することを可能にしている。
【0020】
前記装置37は、前記フレーム29の外方に配設され、前記端軸36の突出部36aに接続される、前記回転子24に関連する他の機能を有する装置、例えば、エンコーダを示す。
【0021】
前記ガイド機構40は、前記出力軸27の先端に接続部材41を介して接続され、かつ、前記アクチュエータ20の端部に固定されるガイド保持部材34の半径方向の外周に形成される、単数または複数(本実施の形態では、2個等配)の摺動ガイド機構42からなっている。
【0022】
すなわち、該摺動ガイド機構42は、前記出力軸27の出力先端に接続された前記接続部材41を介し、その両端部(180°隔てて)に接続され、その軸方向が、該出力軸27の軸方向に平行に配設されるリニア軸43と、前記ガイド保持部材34の外周に形成された保持部34a内に、前記出力軸27に対して対称に固着され、前記リニア軸43を摺動自在に配設されるリニア軸受44またはリニアブッシュとからなっている。前記出力軸27は、前記ガイド機構40により、直動するように案内される。
【0023】
このように、該リニアアクチュエータ20は、前記モータ22を駆動するとき、その前記回転子24に発生する回動動力を、前記中空軸25を介して、前記駆動用ナット部材26内で互いに螺合する前記両ねじ部26a,27aにより、前記出力軸27から、前記ガイド機構40により案内されながら、外部に直動動力として出力する。
【0024】
また、該リニアアクチュエータ20は、前記駆動用ナット部材26が、前記ガイド保持部材34の近くに配置されているため、前記出力軸27の長さは、「ストローク」+「駆動用ナット部材26の厚さ」+「ガイド保持部材34の厚さ」だけでよいことになる。このことにより、前記出力軸27の長さを短くできるため、該出力軸27を前記中空軸25の内部(アクチュエータ20の本体内)に内蔵することもでき、前記中空小径部25b側(出力反対側)に、前記他の機能を有する装置37を付加することができる。
【0025】
前記他の機能を有する装置37を付加する際は、前記中空小径部25bの端部25fに固着された前記端軸36の突出部36aに組み付けるか、または一体的構造にすることができる。前記回転子24に関連する、前記他の機能を有する装置37としては、電磁ブレーキ、エンコーダ、タコジェネレータ、スリット板などがある。
【0026】
図3は、本発明のリニアアクチュエータの他の実施の形態を示す縦断面図で、前記実施の形態の図1との相違点は、前記ガイド機構40とガイド機構60とにあるので、図3で、図1と同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0027】
図3において、リニアアクチュエータ50の前記出力軸27の出力側端に配設されるガイド機構60としての回り止め機構は、該出力軸27の外周面に形成される該出力軸27の軸心に平行して形成されるガイド溝61と、前記出力軸心上に配設され、該ガイド溝61に沿って、転動する図示しない鋼球の列によってガイドするリニア軸受62またはリニアブッシュとからなっている。前記リニアアクチュエータ50は、その出力軸27から、前記ガイド機構60により案内されながら、前述と同様に、外部に直動動力として出力する。
【0028】
これにより、前記アクチュエータ50を、さらに小型化することができる。なお、この場合、前記出力軸27に対して、機械的に、回転方向の荷重や垂直方向の荷重に弱くなるが、使用に際し、公知の補強機構をこれに付加することで、それを補うことができる。
【0029】
なお、本発明の技術は前記実施例における技術に限定されるものではなく、同様な機能を果たす他の態様の手段によってもよく、また本発明の技術は前記構成の範囲内において種々の変更、付加が可能である。
【0030】
以上の説明から明らかなように、本発明のリニアアクチュエータによれば、モータの回転子の中空軸内に配設される駆動用ナット部材と、該中空軸内を挿通し、その外周面に、前記駆動用ナット部材のねじ部と螺合するねじ部が形成される出力軸とを備え、前記モータの前記回転子に発生する回動動力を、互いに螺合する前記両ねじ部により、前記出力軸から直動動力として出力するアクチュエータにおいて、前記出力軸の出力側を、前記駆動用ナット部材の位置と同じ側で、かつ、該位置に近い位置に設け、前記出力軸を直動可能にし、かつ、該出力軸を直動させるガイド機構を設け、前記ガイド機構は、前記出力軸に接続部材を介して接続され、かつ、前記モータの外周に配設される単数または複数の摺動ガイド機構からなり、該摺動ガイド機構は、リニア軸受またはリニアブッシュと、該リニア軸受またはリニアブッシュに摺動自在に、前記出力軸に平行して配設されるリニア軸とからなるので、該リニアアクチュエータの出力反対側への前記出力軸の突出をなくして、該出力軸の長さを短くするとともに、該出力軸のストロークを有効に活用できる。
また、本発明によれば、前記中空軸の前記出力反対側の端部に、前記中空軸の中心軸線上に延長して端軸を形成するので、前記出力軸の前記出力反対側の軸端側で、前記中空軸端に、前記回転子に関連する他の機能(例えば、回動検出、回転数検出およびブレーキなど)を有する装置を付加することができる。また、前記中空軸を、途中から中実軸にして、該中実軸の中心軸線上に前記閉塞部に対応する部位まで延長して、端軸を形成し、該軸端に、前記回転子に関連する他の前記機能を有する装置を、付加することもできるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0031】
20,50,60 リニアアクチュエータ
22 モータ
23 固定子
24 回転子
25 中空軸
25a 中空拡径部
25b 中空小径部
25f 端部
26 駆動用ナット部材
26a,27a ねじ部
27 出力軸
34 ガイド保持部材
34a 保持部
36 端軸
36a 突出部
37 他の機能を有する装置
40,60 ガイド機構
41 接続部材
42 摺動ガイド機構
43 リニア軸
44,62 リニア軸受
61 ガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(22)の回転子(24)の中空軸(25)内に配設される駆動用ナット部材(26)と、
前記中空軸(25)内を挿通し、その外周面に、前記駆動用ナット部材(26)のねじ部(26a)と螺合するねじ部(27a)が形成される出力軸(27)と、
前記回転子(24)の出力反対側を軸支する軸受け(31)が配設されたフレーム(29)と、
前記出力軸(27)の出力反対側に固着された端軸(36)と、
前記出力軸(27)の出力軸側に固着された接続部材(41)と、
該接続部材(41)に固着され前記出力軸(27)と平行に配設されるリニア軸(43)と、
該リニア軸(43)を摺動可能に保持するリニア軸受(44)を有し、前記モータ(22)の出力軸側端面を閉塞する摺動ガイド機構(42)と、
を備えたリニアアクチュエータ。
【請求項2】
モータ(22)の回転子(24)の中空軸(25)内に配設される駆動用ナット部材(26)と、
前記中空軸(25)内を挿通し、その外周面に、前記駆動用ナット部材(26)のねじ部(26a)と螺合するねじ部(27a)が形成される出力軸(27)と、
前記回転子(24)の出力反対側を軸支する軸受け(31)が配設されたフレーム(29)と、
前記出力軸(27)の出力反対側に固着された端軸(36)と、
前記出力軸(27)を軸方向にのみ摺動可能に保持するリニア軸受(62)を有し、前記モータ(22)の出力軸側端面を閉塞する摺動ガイド機構(60)と、
を備えたリニアアクチュエータ。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−118732(P2009−118732A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30882(P2009−30882)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【分割の表示】特願2000−37560(P2000−37560)の分割
【原出願日】平成12年2月16日(2000.2.16)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】