説明

リニアガイド装置のスライダ抜け止め用ストッパー

【課題】リニアガイド装置のスライダ抜け止め用ストッパーとして、十分な抜け止め効果が得られ、案内レールを傷つけず、安価に得られるものを提供する。
【解決手段】この発明のストッパー5は、案内レール1の両側に配置される一対の側部材51と、案内レール1の上面に配置される、両側部材51を連結する連結部52と、からなる。両側部材51は、案内レール1の両側面の転動溝11aに係合させる溝係合部51aを有する。連結部52の下面(案内レール1側の面)に、案内レール1の取付穴4の座ぐり部41に挿入する突起52aが形成されている。一対の側部材51を開き、突起52aの先端部を座ぐり部41に入れながら、溝係合部51aを案内レール1の溝間面11cに当てて、連結部52を押すことで、ストッパー5を案内レール1に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リニアガイド装置のスライダが案内レールから外れることを防止するストッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアガイド装置は、図5に示すように、案内レール1とスライダ(「ベアリング」とも称される)2と複数個のボール(転動体)3とを備えている。案内レール1およびスライダ2は、互いに対向配置されて転動体3の転動通路を形成する転動溝11,21を有する。この例では、案内レール1の側面と上角部に転動溝11が形成されており、側面に形成されている軌道溝を11a、上角部に形成されている軌道溝を11bで示す。
【0003】
スライダ2は、案内レール1の上側に配置される胴部2Aと、両側に配置される脚部2Bを有する。スライダ2は、また、転動体3の戻し通路22と、この戻し通路22と前記転動通路とを連通させる方向転換路を有する。そして、前記転動通路、戻し通路、および方向転換路で転動体の循環経路が構成され、この循環経路内をボール3が循環することにより、案内レール1およびスライダ2の一方が他方に対して相対的に直線運動する。
リニアガイド装置の案内レール1には、基台等の被取付部にボルトを用いて取り付けるための取付穴4が形成されている。
このようなリニアガイド装置では、搬送時や取り付け時に、スライダが案内レールから外れることを防止する必要がある。特許文献1には、そのために使用されるストッパ装置が記載されている。
【0004】
このストッパ装置は、ストッパ本体と案内レールの上面に設けた係止部とからなり、ストッパ本体は、案内レールの上面を跨ぐように断面C字状に形成されたストッパ部材と、ストッパ部材の中央部(案内レールの上側に配置される部分)に設けたねじ孔に螺合した締め付けボルトと、で構成されている。ストッパ部材の両端部が、案内レール両側面の転動溝に係合させる引掛り部となっている。案内レールの上面に設けた係止部は、ストッパ本体の締め付けボルトが当接する凹または凹凸形状を有する。
【0005】
このストッパ装置は、締め付けボルトの先端を案内レールの前記係止部に係合させることで、ストッパ本体が案内レールに取り付けられる。
なお、スライダが案内レールから外れることを防止するために、案内レールの両端面に雌ねじを形成し、案内レールの上面より突出するように配置した板材をボルトで固定することや、案内レールの取付穴にゴム栓を弾性変形状態で挿入し、案内レールの上面より突出させること(特許文献2など)も行われている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているストッパ装置は、ボルトの先端を案内レールの上面に接触させて取り付けるため、案内レールの上面を傷つける恐れがある。また、板材をボルトで固定する方法では、案内レールの両端面に雌ねじを形成するためコスト高となる。さらに、ゴム栓を用いる方法では、スライダの重量が重い場合にはスライダが当たった衝撃によって外れやすく、抜け止め効果が十分でない場合がある。
【0007】
特許文献3には、十分な抜け止め効果が得られ、案内レールを傷つけず、安価に得られるリニアガイド装置のスライダ抜け止め用ストッパーとして、内側部材と外側部材とからなるものが記載されている。
このストッパーの内側部材は、案内レールの両側に配置され、案内レールの転動溝に係合させる溝係合部を有する一対の側部材と、案内レールの上面に配置され、一対の側部材を連結し、前記取付穴に挿入される突起を有する連結部とからなり、前記連結部に前記側部材が開くことを許容する切り込みが形成されている。外側部材は、内側部材の外側に配置されて前記側部材が開かないように押さえるとともに、前記連結部を上から押さえる部材である。
また、特許文献3には、内側部材および外側部材は、合成樹脂の射出成形等で作製できるため、板材をボルトで固定する方法よりコストが低く抑えられると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−344032号公報
【特許文献2】特開2008−249073号公報
【特許文献3】特開2010−190244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3に記載されたストッパーは、十分な抜け止め効果が得られ、案内レールを傷つけないものであるが、二つの部材からなり、両部材の構造が複雑であるため、製造コストの点で改善の余地がある。
この発明は、リニアガイド装置のスライダ抜け止め用ストッパーとして、十分な抜け止め効果が得られ、案内レールを傷つけず、特許文献3に記載されたものよりも安価に得られるものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明のリニアガイド装置のスライダ抜け止め用ストッパーは、案内レールと、案内レールの上側に配置される胴部および両側に配置される脚部を有するスライダと、複数個の転動体と、を備え、案内レールおよびスライダは、互いに対向配置されて転動体の転動通路を形成する転動溝を有し、案内レールは、さらに、案内レールをボルトで被取付部に取り付けるための取付穴を長さ方向に複数個有し、転動体の転動により案内レールおよびスライダの一方が他方に対して相対的に直線運動するリニアガイド装置の、スライダが案内レールから外れることを防止するストッパーであって、下記の構成(1) を有することを特徴とする。
【0011】
(1) 案内レールの両側に配置され、案内レールの転動溝に係合させる溝係合部を有する一対の側部材と、案内レールの上面に配置され、前記一対の側部材を連結し、前記取付穴に嵌まる突起を有する連結部とが、弾性材料により一体に成形されている。
この発明のスライダ抜け止め用ストッパーをリニアガイドに取り付ける際には、一対の側部材を弾性変形させて開き、案内レールの取付穴に連結部の突起の先端部を入れながら、連結部を案内レール側に押し付ける。これにより、前記取付穴に前記突起が嵌まり、前記溝係合部が案内レールの転動溝に係合されるため、十分なスライダの抜け止め効果が得られ、案内レールを傷つけない。
【発明の効果】
【0012】
この発明のリニアガイド装置のスライダ抜け止め用ストッパーは、十分な抜け止め効果が得られ、案内レールを傷つけず、一つの部材のみで構成されているため、特許文献3に記載されたものよりも安価に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態のストッパーをリニアガイド装置の案内レールに取り付ける方法を説明する図である。
【図2】第1実施形態のストッパーがリニアガイド装置の案内レールに取り付けられた状態を示す平面図である。
【図3】第2実施形態のストッパーを示す正面図である。
【図4】第2実施形態のストッパーがリニアガイド装置の案内レールに取り付けられた状態を示す平面図である。
【図5】リニアガイド装置の構造を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1および2を用いて、第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態のストッパーを、リニアガイド装置の案内レールに取り付ける方法を説明する図であって、(a)は取付前のストッパーと案内レールの状態を、(b)は取付途中の状態を、(c)は取付が完了した状態をそれぞれ示す。図2は図1(c)の平面図に相当する。
【0015】
第1実施形態のストッパー5は、図1(a)に示すように、案内レール1の両側に配置される一対の側部材51と、案内レール1の上面に配置され、一対の側部材51を連結する連結部52とからなる。側部材51は、案内レール1の両側面の転動溝11aに係合する溝係合部51aを有する。連結部52の下面(案内レール1側の面)の中心に、円柱状の突起52aが形成されている。この突起52aをなす円柱の直径は、案内レール1の取付穴4(座繰り部41と軸収納部42からなる)の座繰り部41の直径とほぼ同じである。
【0016】
図2に示すように、ストッパー5の奥行き(案内レール1の長さ方向の寸法)は、案内レール1の取付穴4の座繰り部41の直径より大きい。
このストッパー5は、合成ゴムや熱可塑性エラストマー(弾性材料)により、一対の側部材51と連結部52が、溝係合部51aおよび突起52aを含めて一体に成形されたものである。
このストッパー5を案内レール1に取り付ける際には、図1(b)に示すように、先ず、案内レール1の取付穴4の上で、ストッパー5の一対の側部材51を開き、連結部52の突起52aの先端部を取付穴4の座ぐり部41に入れながら、溝係合部51aを案内レール1の側面の溝間面11cに当てる。
【0017】
この状態から、連結部52を案内レール1の上面側に押し付ける。これにより、取付穴4の座ぐり部41に突起52aが嵌まり、溝係合部51aが案内レール1の転動溝11aに係合する。
この実施形態のストッパー5によれば、十分なスライダの抜け止め効果が得られ、案内レールを傷つけない。また、一つの部材のみで構成されているため、特許文献3に記載されたものよりも安価に得られる。
【0018】
[第2実施形態]
図3および4を用いて、第2実施形態について説明する。
第2実施形態のストッパー5Aは、図3に示すように、案内レール1の両側に配置される一対の側部材51と、案内レール1の上面に配置され、一対の側部材51を連結する連結部52とからなる。側部材51は、案内レール1の両側面の転動溝11aに係合する溝係合部51aを有する。連結部52の下面(案内レール1側の面)の中心に、直方体の突起52aが形成されている。
【0019】
図4に示すように、ストッパー5Aの奥行き(案内レール1の長さ方向の寸法)は、案内レール1の取付穴4の座繰り部41の直径より少し小さい。また、突起52aをなす直方体の底面の長さは、ストッパー5Aの奥行き方向全体に渡る長さである。突起52aをなす直方体の底面の幅は、図4に示すように、突起52aの角部が座繰り部41に接触する寸法である。
【0020】
このストッパー5Aは、合成ゴムや熱可塑性エラストマー(弾性材料)により、一対の側部材51と連結部52が、溝係合部51aおよび突起52aを含めて一体に成形されたものである。
このストッパー5Aの案内レール1に対する取付方法は第1実施形態のストッパー5と同じである。
この実施形態のストッパー5Aによれば、十分なスライダの抜け止め効果が得られ、案内レールを傷つけない。また、一つの部材のみで構成されているため、特許文献3に記載されたものよりも安価に得られる。
【0021】
また、第1実施形態のストッパー5は、厚さ方向(案内レール1の長さ方向)で形状が変化しているため、スライド機構を有する金型を使用して成形する必要があるが、第2実施形態のストッパー5Aは、厚さ方向全体で形状が同じになっているため、スライド機構が不要となる。これにより、第2実施形態のストッパー5Aは、第1実施形態のストッパー5よりも成形加工がさらに容易になる。
【符号の説明】
【0022】
1 案内レール
11a 案内レールの側面の転動溝
11b 案内レールの上角部の転動溝
11c 案内レールの側面の溝間面
2 スライダ
21 転動溝
22 戻し通路
2A 胴部
2B 脚部
3 ボール(転動体)
4 取付穴
41 座繰り部
42 軸収納部
5 ストッパー
5A ストッパー
51 ストッパーの側部材
51a 側部材の溝係合部
52 ストッパーの連結部
52a 連結部の突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、案内レールの上側に配置される胴部および両側に配置される脚部を有するスライダと、複数個の転動体と、を備え、
案内レールおよびスライダは、互いに対向配置されて転動体の転動通路を形成する転動溝を有し、
案内レールは、さらに、案内レールをボルトで被取付部に取り付けるための取付穴を長さ方向に複数個有し、
転動体の転動により案内レールおよびスライダの一方が他方に対して相対的に直線運動するリニアガイド装置の、スライダが案内レールから外れることを防止するストッパーであって、
案内レールの両側に配置され、案内レールの転動溝に係合させる溝係合部を有する一対の側部材と、案内レールの上面に配置され、前記一対の側部材を連結し、前記取付穴に嵌まる突起を有する連結部とが、弾性材料により一体に成形されていることを特徴とするリニアガイド装置のスライダ抜け止め用ストッパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104493(P2013−104493A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249157(P2011−249157)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】