説明

リニアセンサ用カラーフィルタの製造方法

【課題】異なるカラーセンサチップ間における同色のカラーフィルタの列の膜厚が、カラーセンサチップの半導体基板上での配置や、カラーセンサチップ内でのカラーフィルタの列の配置によらず、一定であるようなリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法を提案すること。
【解決手段】平行配列した複数のリニアイメージセンサ列の前面に各センサ列に対応したカラーフィルタの各々の列を互いに異なる色光を透過する単色フィルタとして配置し、その最小集合単位としてのカラーセンサチップを半導体基板上に複数配置するためのカラーフィルタの製造方法であって、各チップ間を仕切るスクライブラインを有し、スクライブラインに平行に最も近接して形成する色のカラーフィルタ列の形成に先立って、透明樹脂層をスクライブライン上に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD等の光電変換素子を有するリニアカラーセンサ、特に密着型の画像読み取りのためのカラーセンサに用いるカラーフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置は画像の記録、通信、放送の内容の拡大に伴って広く用いられるようになっている。撮像装置として種々の形式のものが提案されているが、小型、軽量で高性能のものが安定して製造されるようになった固体撮像素子を組み込んだ撮像装置が、デジタルカメラやデジタルビデオとして普及してきている。
【0003】
固体撮像素子は、撮影対象物からの光学像を受け、入射した光を電気信号に変換する複数の光電変換素子を有する。光電変換素子の種類はCCD(電荷結合素子)タイプとCMOS(相補型金属酸化物半導体)タイプとに大別される。また、光電変換素子の配列形態から、光電変換素子を1列に配置したリニアセンサー(ラインセンサー)と、光電変換素子を縦横に2次元的に配列させたエリアセンサー(面センサー)との2種類に大別される。いずれのセンサにおいても光電変換素子の数(画素数)が多いほど撮影された画像は精密になる。
【0004】
固体撮像素子の内、上記リニアセンサとしては、レンズで縮小・結像させて使うレンズ縮小型の他に、光源・レンズ・センサを一体化したモジュールを原稿面に密着させて画像を等倍率で読み取る密着型リニアセンサが複写機やファクシミリ、OCR等の画像読み取り装置に多用されている(特許文献1参照)。密着型リニアセンサにおいては、被写界深度が浅いため、受光面まで到達する光路長を均一に揃えることが品質を向上する上で特に重要である。
【0005】
また、光電変換素子に入射する光の経路に特定の波長の光を透過する各種のカラーフィルタを設けることで、対象原稿の色情報を得ることを可能としたリニアカラーセンサーも普及している。カラーフィルタの色としては、赤色(R)、青色(B)、緑色(G)の3色からなる3原色系、あるいは、シアン色(C)、マゼンタ色(M)、イエロー色(Y)からなる補色系が一般的である。
【0006】
上述のリニアカラーセンサに用いられるカラーフィルタは、図2に示すように、半導体基板1上にカラーセンサチップ3を規則的に多数作り込む工程で製造される。点線の矢印で拡大表示するように、複数の光電変換素子5を直線的に並べたリニアイメージセンサ列2を半導体基板上に複数平行配列し、各センサ列の前面に各センサ列に対応したカラーフィルタの各々の列を互いに異なる色光を透過する単色フィルタとして配置し、その最小集合単位に外部接続端子6や配線層を加えた一片をカラーセンサチップ3とする。個々のカラーセンサチップ3は、スクライブライン4により仕切られる。
【0007】
カラーフィルタは、フォトリソグラフィ法を用いて形成することが主流となっている。すなわち、基板上に所定の色の感光性着色樹脂を塗布した後、所定のパターンを有する露光用フォトマスクを介して感光性着色樹脂にパターン露光、現像を行い、所定の部位に着色樹脂からなるカラーフィルタを形成する。また、基板上への感光性着色樹脂の塗布としては、回転塗布法を用いることが多い。すなわち、基板上に感光性着色樹脂を滴下した後、基板を回転することで滴下した感光性着色樹脂を基板上に塗り広げる方法である。
【0008】
図4は、従来のカラーフィルタの製造方法の一例を工程順に説明するためのカラーセン
サチップの模式断面図である。
(1)半導体基板1に予め形成された光電変換素子5、第一配線層7、第二配線層8、を有するカラーフィルタ形成前のセンサチップを隣接するセンサチップと仕切るスクライブラインが図の中央に表示される。カラーフィルタの各列11、12、13を以下の図のように左側Lと右側Rを表す記号を付けて表し、図の配列に従う時、表示されたスクライブラインをCF異色近接スクライブライン41と称する。即ち、CF異色近接スクライブライン41とは、異なる3色のカラーフィルタの列11、12、13を形成してカラーセンサチップとなる予定のチップにおいて、隣接するチップを仕切るスクライブラインに平行に同程度に最も近接した両側の2つのチップのカラーフィルタの列が互いに異なる色を形成する関係にある場合のスクライブラインを言う。なお、外部接続端子6は、配線層から連結する位置にあるが、本図では省略する。
(2)上述のようなチップにまたがる関係を有する半導体基板1上に、表面の平坦化を向上する目的で、第一平坦化層9を形成する。
(3)次に、カラーフィルタの列(第一色)11を所定の位置に形成し、図で11L、11Rと表現する。
(4)次に、カラーフィルタの列(第二色)12を所定の位置に形成し、図で12L、12Rと表現する。第二色の列12を形成するために、感光性着色樹脂を基板上に塗布する際、既に形成済みの第一色の列11および2層の配線層7、8が平面上に突出している周囲の段差形状の影響を受けて、フォトリソグラフィ法による工程後に形成される図の2箇所の第二色の列12L、12Rの列幅方向の最低膜厚に差異が生じる。図の左側の第二色の列12Lの右側は図の右側の第二色の列12Rの右側に較べて、塗布時の突出物の影響が少ないため、列幅方向の最低膜厚は左側の列の12Lの方が小さくなる。なお、配線層7、8が形成された本来カラーフィルタの列ではない部分上にも光学的な遮蔽のために着色層を残すことができる。
(5)次に、カラーフィルタの列(第三色)13を所定の位置に形成し、図で13L、13Rと表現する。第三色の列13を形成するために、感光性着色樹脂を基板上に塗布する際、既に形成済みの第一色の列11、第二色の列12および2層の配線層7、8に第二色が積層された部分が平面上に突出している周囲の段差形状の影響を受けて、フォトリソグラフィ法による工程後に形成される図の2箇所の第三色の列13L、13Rの列幅方向の最低膜厚に差異が生じる。図の右側の第三色の列13Rの左側は図の左側の第三色の列13Lの左側に較べて、塗布時の突出物の影響が少ないため、列幅方向の最低膜厚は右側の列の13Rの方が小さくなる。なお、配線層7、8が形成された本来カラーフィルタの列ではない部分上にも光学的な遮蔽のために着色層を残すことができる。
(6)次に、カラーセンサチップ3が配列された基板全体に透明な第二平坦化層10を平坦化と表面保護の目的で塗布形成する。図示されていない外部接続端子6上には、選択的マスキングにより膜形成を除外するか、膜形成後に選択的にエッチングで窓明けすることができる。最終的にスクライブラインに沿って断裁し、個々のカラーセンサチップを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−208158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、リニアセンサ用カラーフィルタを製造するにあたって、各色の塗布工程を実施する際に、所定のカラーフィルタの列として残る部分の近傍の平面上に突出している周囲の段差形状の影響が、同色の列であっても同じではない配列となる場合に、列幅方向の最低膜厚で代表される各列の膜厚がスクライブラインを挟んで隣接するカラーセンサチップの同色の列の膜厚と大きな差異を有することがある。そのように同色のカラーフィ
ルタの膜厚が異なるカラーセンサチップはセンサ感度に差異が生じるので、これらのカラーセンサチップを組み合わせて密着型リニアセンサとして使用すると、高い品質が得られない。
【0011】
本発明は、前記の問題点に鑑みて提案するものであり、本発明が解決しようとする課題は、異なるカラーセンサチップ間における同色のカラーフィルタの列の膜厚が、カラーセンサチップの半導体基板上での配置や、カラーセンサチップ内でのカラーフィルタの列の配置によらず、一定であるようなリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、平行配列した複数のリニアイメージセンサ列の前面に各センサ列に対応したカラーフィルタの各々の列を互いに異なる色光を透過する単色フィルタとして配置し、その最小集合単位としてのカラーセンサチップを半導体基板上に複数配置するためのカラーフィルタの製造方法であって、各チップ間を仕切るスクライブラインを有し、スクライブラインに平行に最も近接して形成する色のカラーフィルタ列の形成に先立って、透明樹脂層をスクライブライン上に形成することを特徴とするリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記カラーセンサチップが異なる3色のカラーフィルタの列を有し、各チップ間を仕切るスクライブラインの内、スクライブラインで仕切られる2つのカラーセンサチップのスクライブラインに平行に最も近接した両側のカラーフィルタの列が互いに異なる色となるようなCF異色近接スクライブラインを有し、チップ内各色の中央の列に配置される色のカラーフィルタの列をカラーフィルタの第一色として形成した後に、前記CF異色近接スクライブライン上に透明樹脂層を形成し、その後、CF異色近接スクライブラインに近接して配置される他の2色を順次形成して、それぞれカラーフィルタの第二色、第三色とすることを特徴とする請求項1に記載のリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法である。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記カラーフィルタの第二色を形成後に、第三色の形成に先立って、前記CF異色近接スクライブライン上の透明樹脂層の上にさらに透明樹脂層を積層形成することを特徴とする請求項2に記載のリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法である。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、前記スクライブライン上に形成した透明樹脂層の総膜厚を、次に形成対象とする色のカラーフィルタ列の形成工程において透明樹脂層と隣接しない同色フィルタ列の両隣接部の内の共通のカラーフィルタの列ではない側の膜厚と同程度とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカラーフィルタの製造方法によれば、リニアセンサ用カラーフィルタの各列の膜厚が、カラーセンサチップの半導体基板上での配置や、カラーセンサチップ内でのカラーフィルタの列の配置によらず、色により一定にできるので、異なるカラーセンサチップの同色センサ感度に差異が少なく、これらのカラーセンサチップを組み合わせて密着型リニアセンサとして使用すると、高い品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のカラーフィルタの製造方法に用いられるカラーセンサチップの構成を説明するための模式平面図である。
【図2】カラーセンサチップの半導体基板上への配置状態を説明するための模式平面図である。
【図3】本発明のカラーフィルタの製造方法の一例を工程順に説明するためのカラーセンサチップの模式断面図である。
【図4】従来のカラーフィルタの製造方法の一例を工程順に説明するためのカラーセンサチップの模式断面図である。
【図5】凸部を有する一例の下地に樹脂パターンを形成する場合の膜厚の決まり方を説明するための模式断面図であって、(a)は樹脂を塗布した工程、(b)は樹脂パターンを形成した工程を示す。
【図6】凸部を有する他の例の下地に樹脂パターンを形成する場合の膜厚の決まり方を説明するための模式断面図であって、(a)は樹脂を塗布した工程、(b)は樹脂パターンを形成した工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に従って説明する。
【0019】
図1は、本発明のカラーフィルタの製造方法に用いられるカラーセンサチップの構成を説明するための模式平面図であって、特に、隣接する2つのチップに共通するスクライブライン41を挟んで、各チップの外部接続端子6の列がいずれも遠い側に配置される例について述べる。カラーセンサチップ3の全体の配列は、図2に示すように、半導体基板1上に規則的に配置され、各チップは半導体基板の周辺部を除き、4辺を隣接する他のカラーセンサチップとスクライブライン4で仕切られる。
【0020】
本発明は、平行配列した複数のリニアイメージセンサ列2の前面に各センサ列に対応したカラーフィルタの各々の列11、12、13を互いに異なる色光を透過する単色フィルタとして配置し、その最小集合単位としてのカラーセンサチップ3を半導体基板1上に複数配置するためのカラーフィルタの製造方法であって、各チップ間を仕切るスクライブライン4を有し、スクライブラインに平行に最も近接して形成する色のカラーフィルタ列の形成に先立って、透明樹脂層20をスクライブライン上に形成することを特徴とするリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法である。
【0021】
特に、前記カラーセンサチップ3が異なる3色のカラーフィルタの列を有し、各チップ間を仕切るスクライブライン4の内、スクライブラインで仕切られる2つのカラーセンサチップのスクライブラインに平行に同程度に最も近接した両側のカラーフィルタの列が互いに異なる色となるようなCF異色近接スクライブライン41を有する場合に、後述の理由で、本発明により最も顕著な効果が得られる。具体的には、チップ内各色の中央の列に配置される色のカラーフィルタの列11をカラーフィルタの第一色として形成した後に、前記CF異色近接スクライブライン41上に図1の透明樹脂層20または図3の透明樹脂層21を形成し、その後、CF異色近接スクライブライン41に近接して配置される他の2色を順次形成して、それぞれカラーフィルタの第二色12、第三色13とすることを特徴とするリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法である。
【0022】
また、特に、前記カラーフィルタの第二色12を形成後に、第三色の形成に先立って、前記CF異色近接スクライブライン41上の透明樹脂層21の上にさらに透明樹脂層22を積層形成することを特徴とするリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法である。
【0023】
図3は、本発明のカラーフィルタの製造方法の内、前記2層の透明樹脂層を形成する一例について、工程順に説明するためのカラーセンサチップの模式断面図であって、図1の模式平面図をX−X’方向に断裁した断面の主要部を(1)〜(8)の工程順に表す。
(1)一般にシリコンウェハを用いる半導体基板1に予め形成された複数の光電変換素子
5、第一配線層7、第二配線層8、を有するカラーフィルタ形成前のセンサチップを隣接するセンサチップと仕切るスクライブライン41が図の中央に表示される。カラーフィルタの各列11、12、13を以下の図のように左側Lと右側Rを表す記号を付けて表し、図の配列に従う時、表示されたスクライブラインをCF異色近接スクライブライン41と称する。即ち、CF異色近接スクライブライン41とは、異なる3色のカラーフィルタの列11、12、13を形成してカラーセンサチップとなる予定のチップにおいて、隣接するチップとの間を仕切るスクライブラインに平行に同程度に最も近接した両側の2つのチップのカラーフィルタの列が互いに異なる色を形成する関係にある場合のスクライブラインを言う。なお、外部接続端子6は、配線層から連結する位置にあるが、本図では省略する。
【0024】
前記光電変換素子5を半導体製造プロセスにより形成した半導体基板1上に、前記複数の配線層7、8を各配線層間の層間絶縁膜を介して積層配置して多層配線部を形成するとともに、スクライブライン4、41を配線層形成工程またはその前後の工程で形成しておくことができる。上記多層配線部形成工程は、フォトリソグラフィー法または印刷法に適宜エッチング法等の加工手段を加えるなど、一般的な方法を用いて可能であり、詳細な説明は省略する。
【0025】
(2)上述のようなチップにまたがる関係を有する半導体基板1上に、表面の平坦化を向上する目的で、第一平坦化層9を形成する。第一平坦化層9は、カラーフィルタの着色樹脂を塗布する際の下地を平坦にする目的であり、例えば、無色透明なアクリル樹脂溶液を0.1μmの厚さで薄く塗布形成し、熱処理することにより、形成できる。
【0026】
(3)次に、カラーフィルタの列(第一色)11をチップ内各色の中央の列にあたる位置に形成し、図で11L、11Rと表現する。カラーフィルタの列(第一色)11として例えば緑色を選択した場合、緑色の顔料を分散した着色樹脂として感光性ネガ型レジストを塗布し、プレベイク、選択的露光、現像、熱処理のフォトリソグラフィ法の各工程を経て形成することは、従来のカラーフィルタの製造方法と同様である。また、必要とする色特性を考慮して顔料の材質および含有比率、ならびに分散樹脂としての処方を適宜選択することも同様である。第一色の列の膜厚は、レジスト塗布時の平面からの突起物の配置状態に関して、例えば、11Lと11Rとがほぼ対称の関係に所定の位置が決められるので、プロセス上のばらつきによる膜厚変動以外は、特別の傾向は生じない。
【0027】
(4)次に、透明樹脂層21をCF異色近接スクライブライン41上にパターン形成する。透明樹脂層21は、引き続いて形成するカラーフィルタの列(第二色)12の膜厚をカラーセンサチップ間で一定とする目的で、平面上の凸部の状態を調整するものであり、この場合は、2層の配線層7、8が平面上に突出している影響を同色の各列で同様に受けることを補うものであるので、膜厚が上記2層の配線層7、8が平面上に突出している多層配線部に近いことが望ましい。また、スクライブラインの視認性を損なわないことも好ましいので、感光性の透明樹脂を塗布後にパターン形成することができる。
【0028】
(5)次に、カラーフィルタの列(第二色)12を所定の位置に形成し、図で12L、12Rと表現する。カラーフィルタの列(第二色)12として例えば赤色を選択した場合、赤色の顔料を分散した着色樹脂として感光性ネガ型レジストを塗布し、プレベイク、選択的露光、現像、熱処理のフォトリソグラフィ法の各工程を経て形成することは、第一色の緑色のカラーフィルタの列の製造方法と同様である。また、前記透明樹脂層21を既に形成済みであるため、図の左側の第二色の列12Lの右側は図の右側の第二色の列12Rの右側と同程度に突出物の影響を受け、列幅方向の最低膜厚は同等になる。なお、配線層7、8が形成された本来カラーフィルタの列ではない部分上にも光学的な遮蔽のために着色層を残すことができる。
【0029】
上記のように列幅方向の最低膜厚を制御する状況を、図5および図6によりさらに模式化して説明する。
図5は、凸部を有する一例の下地に樹脂パターンを形成する場合の膜厚の決まり方を説明するための模式断面図であって、(a)は樹脂を塗布した工程、(b)は樹脂パターンを形成した工程を示す。工程中の下地14が高さDの凸部Bと底部Aとを有し、両者に跨る領域に樹脂層15を塗布する場合、樹脂の塗布状態は、一般に図に示すとおり、表面が傾斜を有するようになる。フォトリソグラフィ法でパターン形成して得られた樹脂パターン形成物16は、上記の塗布状態を反映して、図の右端が低くなり、樹脂パターンの最低膜厚17は小さくなる。
【0030】
また、図6は、凸部を有する他の例の下地に樹脂パターンを形成する場合の膜厚の決まり方を説明するための模式断面図であって、(a)は樹脂を塗布した工程、(b)は樹脂パターンを形成した工程を示す。工程中の下地24が高さDの凸部Bと底部Aと高さEの凸部Cとを有し、三者に跨る領域に樹脂層25を塗布する場合、樹脂の塗布状態は、一般に図に示すとおり、表面がやや凹む形状を有するようになる。フォトリソグラフィ法でパターン形成して得られた樹脂パターン形成物26は、上記の塗布状態を反映して、形成物26の中央部よりやや右寄りが最も低くなるものの、樹脂パターンの最低膜厚27は、塗布条件が同じであれば、図5に示した例の樹脂パターンの最低膜厚17よりは大きくなる。
【0031】
上述の事情と同様な理由で、本発明における透明樹脂層の機能により、カラーフィルタ塗布時の下地の突起状態が均一化され、異なるカラーセンサチップ間における同色のカラーフィルタの列の膜厚が、カラーセンサチップの半導体基板上での配置や、カラーセンサチップ内でのカラーフィルタの列の配置上、最もばらつきの発生し易い配置の場合であっても、一定とすることができる。
【0032】
(6)次に、CF異色近接スクライブライン41上に既に形成した透明樹脂層21の上に重ねて透明樹脂層22をパターン形成する。積層形成する透明樹脂層22は、引き続いて形成するカラーフィルタの列(第三色)13の膜厚をカラーセンサチップ間で一定とする目的で、平面上の凸部の状態を調整するものである。この場合は、2層の配線層7、8の上に光学的な遮蔽のために既に残して形成した着色層を加えた膜厚が平面上に突出している影響を次に形成する第三色の各列で同様に受けることを補うものであるので、透明樹脂層21の上に積層形成される透明樹脂層22を加えた総膜厚が、上記2層の配線層7、8が平面上に突出している多層配線部にその上の着色層も加えた膜厚に近いことが望ましい。即ち、(4)で形成した透明樹脂層21の場合と同様に、前記透明樹脂層の総膜厚を、次に形成対象とする色のカラーフィルタ列の形成工程において透明樹脂層と隣接しない同色フィルタ列の両隣接部の内の共通のカラーフィルタの列ではない側の膜厚と同程度とする。また、スクライブラインの視認性を損なわないことも好ましいので、感光性の透明樹脂を塗布後にパターン形成して設けることができる。
【0033】
(7)次に、カラーフィルタの列(第三色)13を所定の位置に形成し、図で13L、13Rと表現する。カラーフィルタの列(第三色)13として例えば青色を選択した場合、青色の顔料を分散した着色樹脂として感光性ネガ型レジストを塗布し、プレベイク、選択的露光、現像、熱処理のフォトリソグラフィ法の各工程を経て形成することは、第一色の緑色、第二色の赤色のカラーフィルタの列の製造方法と同様である。また、前記透明樹脂層21に積層した透明樹脂層22を既に形成済みであるため、図の右側の第三色の列13Rの左側は図の左側の第三色の列13Lの左側と同程度に突出物の影響を受け、列幅方向の最低膜厚は同等になる。なお、配線層7、8が形成された本来カラーフィルタの列ではない部分上にも光学的な遮蔽のために着色層を残すことができる。
【0034】
(8)次に、カラーセンサチップ3が配列された基板全体に透明な第二平坦化層10を平坦化と表面保護の目的で塗布形成する。即ち、カラーフィルタの異なる色の列間の膜厚の不均一さも含めて微小な凹凸を覆い、平坦で均一な表面に近付けるものであり、例えば、無色透明なアクリル樹脂溶液を0.2μmの厚さで塗布形成し、熱処理することにより、形成できる。図示されていない外部接続端子6上には、選択的マスキングにより膜形成を除外するか、膜形成後に選択的にエッチングで窓明けすることができる。最終的にスクライブラインに沿って断裁し、個々のカラーセンサチップを得ることができる。
【0035】
以下に、さらに具体的な実施形態を説明する。図3の模式断面図に示すカラーセンサチップを半導体基板上に複数配置するためのカラーフィルタの形成において、各色のカラーフィルタの列幅を40μmとし、下層の透明樹脂層および上層の透明樹脂層の列幅を60μmとした。スクライブライン上に透明樹脂層を形成する前に、第一色として緑色を形成したところ、CF異色近接スクライブライン41を挟んで対称位置にできた緑色列の膜厚は、共に1.71μmで等しかった。
【0036】
次に、CF異色近接スクライブライン41上に透明樹脂層を膜厚0.60μmに形成後、第二色として赤色を形成したところ、透明樹脂層に隣接した列12Lは代表的な底部膜厚で1.46μm、透明樹脂層に隣接しない列12Rは代表的な底部膜厚で1.53μmと0.07μmの差となり、透明樹脂層を設けない従来の方法での0.13μmの差に較べて、大幅に改善した。
【0037】
次に、下層の透明樹脂層上に上層の透明樹脂層を膜厚1.13μm積層形成し総膜厚を1.73μmとした後、第三色として青色を形成したところ、透明樹脂層に隣接した列13Rは代表的な底部膜厚で2.02μm、透明樹脂層に隣接しない列13Lは代表的な底部膜厚で2.15μmと0.13μmの差となり、透明樹脂層を設けない従来の方法での0.32μmの差に較べて、大幅に改善した。
【符号の説明】
【0038】
1・・・半導体基板
2・・・リニアイメージセンサ列
3・・・カラーセンサチップ
4・・・スクライブライン
5・・・光電変換素子
6・・・外部接続端子
7・・・第一配線層
8・・・第二配線層
9・・・第一平坦化層
10・・・第二平坦化層
11、11L、11R・・・カラーフィルタの列(第一色)
12、12L、12R・・・カラーフィルタの列(第二色)
13、13L、13R・・・カラーフィルタの列(第三色)
14、24・・・工程中の下地
15,25・・・樹脂層
16、26・・・樹脂パターン形成物
17、27・・・樹脂パターンの最低膜厚
20、21、22・・・透明樹脂層
41・・・CF異色近接スクライブライン
A・・・下地の底部
B・・・下地の凸部
C・・・下地の第二の凸部
D・・・凸部の高さ
E・・・第二の凸部の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行配列した複数のリニアイメージセンサ列の前面に各センサ列に対応したカラーフィルタの各々の列を互いに異なる色光を透過する単色フィルタとして配置し、その最小集合単位としてのカラーセンサチップを半導体基板上に複数配置するためのカラーフィルタの製造方法であって、各チップ間を仕切るスクライブラインを有し、スクライブラインに平行に最も近接して形成する色のカラーフィルタ列の形成に先立って、透明樹脂層をスクライブライン上に形成することを特徴とするリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記カラーセンサチップが異なる3色のカラーフィルタの列を有し、各チップ間を仕切るスクライブラインの内、スクライブラインで仕切られる2つのカラーセンサチップのスクライブラインに平行に最も近接した両側のカラーフィルタの列が互いに異なる色となるようなCF異色近接スクライブラインを有し、チップ内各色の中央の列に配置される色のカラーフィルタの列をカラーフィルタの第一色として形成した後に、前記CF異色近接スクライブライン上に透明樹脂層を形成し、その後、CF異色近接スクライブラインに近接して配置される他の2色を順次形成して、それぞれカラーフィルタの第二色、第三色とすることを特徴とする請求項1に記載のリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記カラーフィルタの第二色を形成後に、第三色の形成に先立って、前記CF異色近接スクライブライン上の透明樹脂層の上にさらに透明樹脂層を積層形成することを特徴とする請求項2に記載のリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記スクライブライン上に形成した透明樹脂層の総膜厚を、次に形成対象とする色のカラーフィルタ列の形成工程において透明樹脂層と隣接しない同色フィルタ列の両隣接部の内の共通のカラーフィルタの列ではない側の膜厚と同程度とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリニアセンサ用カラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−232579(P2011−232579A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103241(P2010−103241)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】