リニア振動モータの駆動制御装置、リニア振動モータの駆動制御方法および小型電気機器
【課題】電源電圧の低下に起因する動作と、特定の制御モードへの切り換えに起因する動作との混同を抑制することができるリニア振動モータの駆動制御装置、リニア振動モータの駆動制御方法および小型電気機器を提供する。
【解決手段】リニア振動モータの停止制御の開始前後における振動振幅の時間的変化の度合いを、通常の制御モードから他の制御モードへの遷移の前後における度合いよりも小さくする。そのようにすることで、リニア振動モータの停止制御の開始前後における作動音の変化の度合いを、制御モードの遷移前後における作動音の変化の度合いよりも小さくすることができる。すなわち、作動音の変化の度合いの違いによって、電池残容量の低下に伴う停止制御に起因する作動音の変化なのか、制御モードの遷移に起因する作動音の変化なのかを、ユーザは聴覚を通じて識別することが可能となる。
【解決手段】リニア振動モータの停止制御の開始前後における振動振幅の時間的変化の度合いを、通常の制御モードから他の制御モードへの遷移の前後における度合いよりも小さくする。そのようにすることで、リニア振動モータの停止制御の開始前後における作動音の変化の度合いを、制御モードの遷移前後における作動音の変化の度合いよりも小さくすることができる。すなわち、作動音の変化の度合いの違いによって、電池残容量の低下に伴う停止制御に起因する作動音の変化なのか、制御モードの遷移に起因する作動音の変化なのかを、ユーザは聴覚を通じて識別することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニア振動モータの駆動制御装置、リニア振動モータの駆動制御方法および小型電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型電気機器として、内刃および外刃の間にひげを挟み込むことにより当該ひげを切断する電気かみそりが知られている。
特許文献1に記載される電気かみそりでは、駆動源としてリニア振動モータが採用されている。このリニア振動モータは、電池の電力を利用して振動を発生する。電池電圧がしきい値電圧まで低下した旨検出されるときには、リニア振動モータの停止に向けた給電制御である停止制御の実行を通じて、当該モータの振動振幅が徐々に小さくされる。これにより、電池電圧の低下時におけるリニア振動モータの急停止が回避される。
【0003】
また、特許文献2に記載される電気かみそりでは、その制御モードとして、ひげの切断を行う際の通常の制御モード、および刃部の洗浄を行う際の洗浄用の制御モードを有している。電気かみそりを動作させる際に操作されるメインスイッチのオン時間に応じて、通常の制御モードと洗浄用の制御モードとの切り替えが行われる。洗浄用の制御モードでは、刃の振動振幅が通常の制御モードよりも小さく設定される。このため、刃の洗浄時における水あるいはひげ屑の飛散が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−65634号公報
【特許文献2】特開2004−16285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の出願人は、特許文献1の停止制御機能と特許文献2の制御モードの切り替え機能とを併せ持つ電気かみそりを検討している。前述したように、通常の制御モードから他の制御モードへ遷移する際には、リニア振動モータの振動振幅が変更されることにより作動音の変化が発生するところ、ユーザはこの作動音の変化により制御モードの変更を認識できる場合も多い。これは、通常の制御モードから停止制御へ遷移する際においても同様である。
【0006】
ここで、制御モードの切り替えに起因する作動音の変化と、停止制御の実行開始に起因する作動音の変化とが互いに近似することが懸念される。この場合、ユーザは、制御モードの切り替えに起因する作動音の変化と、停止制御の実行開始に起因する作動音の変化とを混同することにより、作動音の変化を通じた電気かみそりの制御状態の識別が困難となるおそれがある。たとえば、実際には停止制御の実行が開始されたにもかかわらず、その際の作動音の変化が制御モードの切り替え時の作動音の変化と近似しているために、ユーザは制御モードが切り替えられた旨誤認識することが想定される。この場合、ユーザは違和感を覚え、ひいては電気かみそりの使い勝手にも影響を及ぼしかねない。
【0007】
なお、この問題は、電気かみそりに限らず、電動歯ブラシあるいは電動バリカンなどのリニア振動モータが搭載される他の小型電気機器においても同様に発生し得る。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、電源電圧の低下に起因する動作と、特定の制御モードへの切り換えに起因する動作との混同を抑制することができるリニア振動モータの駆動制御装置、リニア振動モータの駆動制御方法および小型電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電池の電力を利用して振動を発生するリニア振動モータの駆動制御装置において、前記電池の残容量状態を検出する電池状態検出部と、前記リニア振動モータに対する給電制御を通じて前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記リニア振動モータの制御モードとして通常の制御モード、および、他の制御モードを有し、前記通常の制御モードでの給電制御の実行中に前記電池状態検出部を通じて前記電池の残容量が低下した旨検出されるときには、前記リニア振動モータの停止に向けた給電制御である停止制御を実行し、前記通常の制御モードから他の制御モードへ遷移するときには、当該遷移の前後において前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方が前記通常の制御モード時と異なるように給電制御を実行し、前記停止制御の実行を開始するときには、当該開始の前後における前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方の時間的変化の度合いが、前記通常の制御モードから前記他の制御モードへの遷移の前後における前記度合いよりも小さくなるように給電制御を実行することをその要旨とする。
【0009】
前記リニア振動モータの駆動制御装置において、前記制御部は、前記給電制御としてパルス電流の制御を通じて前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方を制御することが好ましい。
【0010】
また、前記リニア振動モータの駆動制御装置において、前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方を検出するフィードバック制御用検出部を備え、前記制御部は、前記フィードバック制御用検出部の検出結果に応じて、前記リニア振動モータへの給電をフィードバック制御することが好ましい。
【0011】
また、前記リニア振動モータの駆動制御装置において、外部電源を接続可能とする一方で、前記制御部は、前記停止制御の実行を開始した後に前記外部電源が接続された旨検出したとき、リニア振動モータに対する給電制御を一定期間だけ停止した後、前記通常の制御モードでの給電制御の実行を開始することが好ましい。
【0012】
また、前記リニア振動モータの駆動制御装置において、前記制御部は、前記電池状態検出部の検出結果に応じた前記電池の残容量の状態、および、前記制御モードの少なくとも一方を外部の表示装置に表示させるとともに、前記停止制御の実行を開始する際には、その旨併せて前記表示装置に表示させることが好ましい。
【0013】
また、前記リニア振動モータの駆動制御装置において、前記制御部は、前記リニア振動モータの停止後、前記電池の残容量の低下に起因して停止した旨前記表示装置に表示させることが好ましい。
【0014】
また、前記リニア振動モータの駆動制御装置において、前記電池は二次電池としてもよい。
前記リニア振動モータの駆動制御装置は、小型電気機器に好適である。
【0015】
本発明は、電池の電力を利用して振動を発生するリニア振動モータの駆動制御方法において、前記リニア振動モータの制御モードとして通常の制御モード、および、他の制御モードを有し、前記通常の制御モードでの給電制御の実行中に前記電池の残容量が低下した旨検出されるときには、前記リニア振動モータの停止に向けた給電制御である停止制御を実行し、前記通常の制御モードから他の制御モードへ遷移するときには、当該遷移の前後において前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方が前記通常の制御モード時と異なるように給電制御を実行し、前記停止制御の実行を開始するときには、当該開始の前後における前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方の時間的変化の度合いが、前記通常の制御モードから前記他の制御モードへの遷移の前後における前記度合いよりも小さくなるように給電制御を実行することをその要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電源電圧の低下に起因する動作と、特定の制御モードへの切り換えに起因する動作との混同を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態における電気かみそりの斜視図。
【図2】同じくリニア振動モータの概略構成を示すブロック図。
【図3】(a)は、通常の制御モードから停止制御へ遷移したときの振動振幅の時間的変化を示す波形図、同じく(b),(c)はそれぞれパルス信号のパルス幅の時間的変化を示す波形図、同じく(d)はリニア振動モータに供給される駆動電流の時間的変化を示す波形図、同じく(e)は電池電圧の時間的変化を示す波形図、同じく(f)は電池状態検出部の検出信号の時間的変化を示す波形図。
【図4】(a)は、通常の制御モードから他の制御モードへ遷移したときの振動振幅の時間的変化を示す波形図、同じく(b),(c)はそれぞれパルス信号のパルス幅の時間的変化を示す波形図、同じく(d)はリニア振動モータに供給される駆動電流の時間的変化を示す波形図。
【図5】(a)は通常の制御モードから停止制御へ遷移したときの振動振幅の時間的変化を示す波形図、(b)は通常の制御モードから他の制御モードへ遷移したときの振動振幅の時間的変化を示す波形図。
【図6】通常の制御モードから停止制御へ遷移した場合、および通常の制御モードから他の制御モードへ遷移した場合のそれぞれにおける振動振幅の時間的変化を示すグラフ。
【図7】第2の実施の形態におけるリニア振動モータの概略構成を示すブロック図。
【図8】同じくフィードバック制御を実行する場合、およびフィードバック制御を実行しない場合のそれぞれにおける振動振幅の時間的変化を示すグラフ。
【図9】第3の実施の形態におけるリニア振動モータの概略構成を示すブロック図。
【図10】(a)は外部電源が接続されていない状態で停止制御が実行されている場合に外部電源が接続されたときの振動振幅の時間的変化を示す波形図(出力停止機能無し)、同じく(b),(c)はそれぞれパルス信号のパルス幅の時間的変化を示す波形図、同じく(d)はリニア振動モータに供給される駆動電流の時間的変化を示す波形図、同じく(e)は電池電圧の時間的変化を示す波形図、同じく(f)は電池状態検出部の検出信号の時間的変化を示す波形図。
【図11】(a)は外部電源が接続されていない状態で停止制御が実行されている場合に外部電源が接続されたときの振動振幅の時間的変化を示す波形図(出力停止機能有り)、同じく(b),(c)はそれぞれパルス信号のパルス幅の時間的変化を示す波形図、同じく(d)はリニア振動モータに供給される駆動電流の時間的変化を示す波形図、同じく(e)は電池電圧の時間的変化を示す波形図、同じく(f)は電池状態検出部の検出信号の時間的変化を示す波形図。
【図12】第4の実施の形態におけるリニア振動モータの概略構成を示すブロック図。
【図13】同じくリニア振動モータの動作状態と停止制御の実行が開始された旨の表示タイミングとの関係を示すタイミングチャート。
【図14】同じくリニア振動モータの動作状態と電池の残容量低下した旨の表示タイミングとの関係を示すタイミングチャート。
【図15】第5の実施の形態におけるリニア振動モータの概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施の形態>
以下、本発明を、電気かみそりに具体化した一実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0019】
<電気かみそりの全体構成>
図1に示すように、電気かみそり11のハウジング12の上部には、リニア振動モータ13を介して内刃14が設けられるとともに、当該内刃14に覆い被さるように外刃15が着脱可能に設けられている。外刃15がハウジング12に取り付けられた状態において、内刃14の外面は外刃15の内面に対して摺接可能とされている。ハウジング12の外面に設けられるスイッチ16が操作されたとき、リニア振動モータ13には動作電力が供給される。当該電力の供給を受けてリニア振動モータ13は動作して振動を発生する。外刃15の内部に導入される髭は、外刃15と振動する内刃14とに挟まれることによって切断される。
【0020】
<リニア振動モータ>
つぎに、リニア振動モータの構成を詳細に説明する。図2に示すように、リニア振動モータ13は、ハウジング12に固定されるフレーム21を有している。フレーム21の下部には固定子22が固定されている。固定子22は、磁性材料により形成されたコア23に導線24がコイル状に巻回されてなる電磁石である。フレーム21の内部には、内刃14に連結される振動子25が設けられている。振動子25の振動方向(図2中の左右方向)における両端部とフレーム21の内面との間は、それぞれ圧縮コイルばね26,26により連結されている。振動子25は、合成樹脂材料、あるいは非磁性材料により形成されている。振動子25の下部には永久磁石27が外部に露出する態様で設けられている。永久磁石27は、振動方向において2極着磁されている。永久磁石27は、固定子22に対して上下方向において所定の間隔をおいて対向している。したがって、振動子25は、2つの圧縮コイルばね26,26の弾性力に抗して、あるいは当該弾性力を利用するかたちで振動方向に沿って往復動可能とされている。
【0021】
<リニア振動モータの駆動制御装置>
つぎに、リニア振動モータ13の駆動制御装置について説明する。図2の下部に示されるように、駆動制御装置30は、制御部31、および、電池状態検出部32を備えてなる。
【0022】
電池状態検出部32は、ハウジング12に内蔵される電池(一次電池)33の残容量を検出する。本例では、電池状態検出部32は、電池33の状態として電池33の両端電圧を検出し、その検出結果に基づき電池33の残容量の低下を判定する。電池状態検出部32は、電池の両端電圧が残容量低下検出用のしきい値Vhまで低下した旨検出されるとき、その旨示す検出信号を生成する。制御部31は、当該検出信号の生成の有無に基づき電池33の両端電圧の低下の有無を判定可能とされている。なお、しきい値Vhは、制御部31の最小動作電圧よりも大きな値に設定される。
【0023】
制御部31は、図示しない不揮発性の記憶装置を有している。この記憶装置には、リニア振動モータ13を統括制御するための各種の制御プログラムおよびデータが記憶されている。制御部31は、当該記憶装置に記憶された制御プログラムの実行を通じて、固定子22に対する給電制御を行う。
【0024】
制御部31は、電池33の電力を利用してリニア振動モータ13の駆動電力を生成し、この生成される駆動電力を固定子22に印加する。詳述すると、制御部31は、図示しない駆動回路を通じて、固定子22に対する駆動電流をPWM(パルス幅変調)制御する。駆動回路は、MOSFETなどの4つのスイッチング素子がHブリッジ型に接続されてなるインバータ回路である。制御部31において生成されるパルス波である制御信号(PWM信号)に基づいて各スイッチング素子がオンオフ動作することにより、固定子22に供給される駆動電流の方向が切り替えられる。すなわち、図2に破線の矢印で示される第1の方向の駆動電流Id1、および、同図に実線の矢印で示される第2の方向の駆動電流Id2が、固定子22に対して特定のタイミングで交互に供給される。
【0025】
固定子22に駆動電流が供給されると、振動子25の永久磁石27が駆動電流の方向に応じて圧縮コイルばね26,26を撓ませつつ特定の振動方向に沿って駆動される。制御部31の制御を通じて駆動電流の方向が適当なタイミングで切り換えられることにより、固定子22に発生する磁界の方向が切り替わる。その結果、振動子25は、2つの圧縮コイルばね26,26の弾性力に抗して、あるいは当該弾性力を利用するかたちで特定の振動方向に沿って振動する。この振動子25の振動に伴い、当該振動子25に連結される内刃14も振動する。
【0026】
本例では、制御部31によるリニア振動モータ13の制御モードとして、通常の制御モード、および、洗浄用の制御モードが設定されている。
通常の制御モードは、髭の切断を行う際の制御モードである。この制御モードでは、PWM信号のパルス幅(デューティ比)の制御を通じて、髭の切断に適した振動振幅でリニア振動モータ13が駆動される。リニア振動モータ13が停止した状態で、スイッチ16が操作されたとき、通常の制御モードでリニア振動モータ13は駆動制御される。
【0027】
洗浄用の制御モードは、内刃14などの刃部の洗浄を行う際の制御モードである。この制御モードでは、PWM信号のパルス幅の制御を通じて、刃部の洗浄に適した振動振幅でリニア振動モータ13が駆動される。通常の制御モードでの駆動制御の実行中において、定められた制御モード遷移条件が成立したとき、通常の制御モードから洗浄用の制御モードへ遷移する。制御モード遷移条件としては、図示しない制御モード切り替え用のスイッチが操作されること、あるいは通常の制御モードでの累積使用時間がしきい値時間に達した旨検出されることなどがある。通常の制御モードから他の制御モードへ遷移するとき、制御部31は、当該遷移の前後においてリニア振動モータ13の振動振幅が通常の制御モード時と異なるように給電制御(PWM制御)を実行する。本例では、当該制御モードの遷移の前後において、リニア振動モータ13の振動振幅が通常の制御モード時よりも小さくされる。
【0028】
また、制御部31は、つぎのような制御も実行する。すなわち、制御部31は、たとえば通常の制御モードでの給電制御の実行中において、電池状態検出部32を通じて検出される電池33の残容量が残容量低下検出用のしきい値Vhまで低下した旨判断されるとき、リニア振動モータ13の停止に向けた給電制御である停止制御を実行する。本例では、この停止制御の実行を開始するときには、当該開始の前後におけるリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化の度合いが、通常の制御モードから洗浄用の制御モードへの遷移の前後における前記度合いよりも小さくなるように給電制御を実行する。
【0029】
なお、制御部31の記憶装置には、通常の制御モード、および洗浄用の制御モードでの給電制御、ならびに停止制御においてそれぞれ使用される制御信号のパルス幅(デューティ比)に関する情報が格納されている。制御部31は、当該記憶装置に格納されたパルス幅に関する情報を使用して、制御信号のパルス幅を設定する。
【0030】
<リニア振動モータの駆動制御方法>
次に、リニア振動モータの駆動制御方法について説明する。
まず通常の制御モードでの給電制御について説明する。図3(a)に示されるように、通常の制御モードでは、振動子25の振動の振幅および周波数が、それぞれ髭の切断に適した一定値となるように給電制御される。すなわち、図3(b),(c)に示されるように、制御部31は、固定子22に対する第1の方向の駆動電流を制御する第1の制御信号(図中の右出力)、および、固定子22に対する第2の方向の駆動電流を制御する第2の制御信号(図中の左出力)を生成する。第1および第2の制御信号のパルス幅(デューティ比)は、通常用として定められたパルス幅でそれぞれ一定とされる。また、第1の制御信号と第2の制御信号の位相は、半周期程度ずらされる。その結果、図3(d)に示されるように、固定子22に供給される駆動電流は、第1および第2の制御信号の位相差およびパルス幅に応じたパルス状の電流(パルス電流)となる。同図に示されるように、第1および第2の制御信号のパルス周期に応じて、固定子22に供給される駆動電流の向きが切り替わる。
【0031】
<通常の制御モード→停止制御>
つぎに、通常の制御モードから停止制御への遷移について説明する。図3(e)に示されるように、電気かみそりの使用に伴い電池33の両端電圧は徐々に低下する。そして、制御部31は、電池状態検出部32を通じて電池33の両端電圧がしきい値Vhまで低下した旨検出されて、電池状態検出部32から検出信号が入力されるとき(タイミングT1)、停止制御の実行を開始する。
【0032】
すなわち、図3(b),(c)に示されるように、制御部31は、第1および第2の制御信号のパルス幅を、リニア振動モータ13の停止に向けて徐々に小さく設定する。その結果、図3(d)に示されるように、固定子22に供給される駆動電流の量は、第1および第2の制御信号のパルス幅の減少の度合いに応じて、徐々に減少する。そして図3(a)に示されるように、駆動電流量の減少に伴い、振動子25の振動振幅は、リニア振動モータ13の停止に向けて徐々に小さくなる。内刃14の振動振幅も停止に向けて徐々に小さくなることから、電池33の両端電圧の低下時におけるリニア振動モータ13の急停止が回避される。
【0033】
<通常の制御モード→洗浄用の制御モード>
つぎに、通常の制御モードから洗浄用の制御モードへの遷移について説明する。制御部31は、通常の制御モードでの給電制御の実行中において、定められた制御モード遷移条件が成立した旨判断されるとき、リニア振動モータ13の制御モードを洗浄用の制御モードへ遷移させる。
【0034】
すなわち、図4(b),(c)に示されるように、制御部31は、洗浄用の制御モードでの給電制御の実行を開始するに際して(タイミングT2)、第1および第2の制御信号のパルス幅を洗浄時用として定められたパルス幅に固定的に設定する。この洗浄時用のパルス幅は、通常時のパルス幅よりも小さく設定されている。図4(b),(c)の例では、洗浄時用のパルス幅は、通常時のパルス幅の1/3程度とされている。その結果、図4(d)に示されるように、固定子22に供給される駆動電流量は、第1および第2の制御信号のパルス幅に応じて、通常時の駆動電流量よりも少なくなる。ここでは、洗浄時の駆動電流は通常時の1/2程度となる。そして図4(a)に示されるように、駆動電流量の半減に伴い、振動子25の振動振幅も通常時に比べて半減する。図5(a),(b)に示されるように、通常の制御モードから洗浄用の制御モードへの遷移前後における振動振幅の時間的変化の度合いは、通常の制御モードから停止制御への遷移前後における度合いに比べて小さなものとなる。
【0035】
<振動振幅の時間的変化の比較>
つぎに、通常の制御モードから洗浄用の制御モードおよび停止制御へそれぞれ遷移した場合のリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化を、図6のグラフに基づき比較する。当該グラフにおいて、横軸は時間、縦軸は振動子25の振幅である。また、当該グラフにおいて、通常の制御モードから本例の停止制御へ遷移した場合の振動振幅の時間的変化は実線で、通常モードから洗浄用の制御モードへ遷移した場合の振動振幅の時間的変化は鎖線で示す。また、比較例として、停止制御へ遷移した際の振動振幅の変化の度合いが、洗浄用の制御モードへ遷移した場合よりも大きくされるときの振動振幅の時間的変化を一点鎖線で示す。
【0036】
さて、当該グラフに示されるように、通常の制御モードから本例の停止制御への遷移の前後におけるリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化量Aは、通常の制御モードから洗浄用の制御モードへの遷移の前後におけるリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化量Bよりも、かなり小さなものとなる。これら振動振幅の時間的変化量A,Bの差は、リニア振動モータ13の作動音の明確な違いとしてユーザの聴覚に訴えられる程度とされる。すなわち、結果として作動音の違いがユーザによって明確に識別可能となるように、停止制御時および洗浄用の制御モード時における第1および第2の制御信号のパルス幅がそれぞれ設定される。
【0037】
このように、本例の駆動制御方法によれば、リニア振動モータ13の停止制御の開始前後における作動音の変化の度合いは、制御モードの遷移前後における作動音の変化の度合いに比べて明らかに小さなものとなる。このため、作動音の変化の度合いの違いによって、電池残容量の低下に伴う停止制御に起因する作動音の変化なのか、制御モードの遷移に起因する作動音の変化なのかを、ユーザは聴覚を通じて明確に識別することが可能となる。したがって、電源残容量の低下に起因する停止動作と、特定の制御モードへの遷移に起因する動作との混同を抑制することができる。
【0038】
なお、停止制御時の振幅の時間的変化の度合いと制御モードの遷移時における振幅の時間的変化の度合いとの差は大きくするほどよい。当該度合いの差が大きくなるほど、聴覚を通じた作動音の識別が容易になる。
【0039】
ここで、停止制御および洗浄用の制御モードへそれぞれ遷移する際の作動音を、つぎのようにして異ならせることも考えられる。すなわち、本例とは逆に、停止制御への遷移の前後における振動振幅の時間的変化量Cを、洗浄用の制御モードへの遷移の前後における振動振幅の時間的変化量Bよりも大きくする。この場合、確かに振動振幅の時間的変化量の差は発生するものの、停止制御および洗浄用の制御モードへの遷移前後における振動振幅の時間的変化の傾向は、それぞれの制御用として設定される制御信号のパルス幅に応じた振動振幅に至るまで、同様の変化傾向となるおそれがある。すなわち、洗浄モード遷移時、および停止制御への遷移時のそれぞれにおいて、振動振幅は同じ傾向で急激に落ち込む。この場合、わずかな時間ではあるものの、作動音の識別が困難となることが懸念される。
【0040】
したがって、本例のように、通常の制御モードから停止制御への遷移の前後におけるリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化量Aは、通常の制御モードから洗浄用の制御モードへの遷移の前後におけるリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化量Bよりも小さくすることが好ましい。これは、通常の制御モードから停止制御への遷移の前後におけるリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化量Aを小さくするほど、停止制御への遷移時および洗浄用の制御モードへの遷移時における振動振幅が、同様の傾向で変化する領域が少なくなるからである。すなわち、本例の駆動制御方法によれば、停止制御への遷移前後、および洗浄用の制御モードへの遷移前後において、即時に振動振幅の時間的変化量、ひいては作動音の変化に違いを出しやすい。図6の例では、洗浄モード遷移時には振動振幅が急激に落ち込むのに対して、停止制御への遷移時には振動振幅の落ち込みはほとんどない。この振動振幅の時間的変化量の差は、作動音の違いとして明確に識別可能である。
【0041】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)リニア振動モータ13の振動の振幅あるいは周波数の違いは、リニア振動モータ13の作動音の違いとしてユーザの聴覚に訴えられる。このことを利用して、本例では、リニア振動モータ13の停止制御の開始前後における振動振幅の時間的変化の度合いを、通常の制御モードから他の制御モードへの遷移の前後における度合いよりも小さくする。そのようにすることで、リニア振動モータ13の停止制御の開始前後における作動音の変化の度合いを、制御モードの遷移前後における作動音の変化の度合いよりも小さくすることができる。すなわち、作動音の変化の度合いの違いによって、電池残容量の低下に伴う停止制御に起因する作動音の変化なのか、制御モードの遷移に起因する作動音の変化なのかを、ユーザは聴覚を通じて識別することが可能となる。したがって、電源残容量の低下に起因する停止動作と、特定の動作モードへの遷移に起因する動作との混同を抑制することができる。なお、停止制御時の振幅の時間的変化の度合いと、制御モードの遷移時における振幅の時間的変化の度合いとの差は、大きくするほどよい。当該度合いの差が大きくなるほど、聴覚を通じた作動音の識別が容易になる。
【0042】
(2)固定子22をパルス駆動するようにした。このため、停止制御などの際、パルス制御を通じて、リニア振動モータ13の振幅を簡単に制御することができる。同様にして、リニア振動モータ13の周波数を制御することもできる。
【0043】
(3)本例のリニア振動モータ13は、電気かみそりなどの小型電気機器に好適である。
<第2の実施の形態>
つぎに、本発明の第2の実施の形態を説明する。本例は、リニア振動モータの振幅に基づき給電をフィードバック制御する点で前記第1の実施の形態と異なる。したがって、前記第1の実施の形態と同一の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0044】
図7に示すように、駆動制御装置30は、駆動検知部41を備えてなる。この駆動検知部41は、電磁石である固定子22の第1および第2の端子にそれぞれ接続されている。駆動検知部41は、固定子22に誘起される電圧に基づき振動子25の振動の振幅を検出し、この検出される振幅に応じた電気信号を生成する。制御部31は、通常の制御モードから停止制御へ遷移する際、駆動検知部41において生成される電気信号に基づき、そのときの振動振幅を検出する。そして制御部31は、停止制御への遷移の前後における振幅の時間的変化の度合いがなるべく小さくなるように、固定子22に対する給電をフィードバック制御する。
【0045】
図8のグラフに示されるように、当該振幅に基づく給電のフィードバック制御(以下、「振幅フィードバック制御」という。)を実行することによって、停止制御への遷移前後の振動振幅の時間的変化の度合いは、当該振幅フィードバック制御を実行しない場合に比較して、より小さなものとなる。なお、当該グラフにおいて、横軸は時間、縦軸は振動子25の振動振幅である。また当該グラフにおいて、振幅フィードバック制御を実行しないときの振動振幅の時間的変化を一点鎖線で、振幅フィードバック制御を実行したときの振動振幅の時間的変化を実線で示す。
【0046】
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(4)制御部31は、駆動検知部41の検出結果、すなわちその時々の振動振幅に応じて、リニア振動モータ13への給電をフィードバック制御する。このため、通常の制御モードから停止制御へ遷移する際、振動フィードバック制御を実行しない場合と比較して、振動振幅の時間的変化の度合いを、より小さくすることができる。また、その時々に応じて最適な給電制御を実施することができる。
【0047】
<第3の実施の形態:図9〜図11>
つぎに、本発明の第3の実施の形態を説明する。本例は、外部電源を接続可能とした点で前記第2の実施の形態と異なる。
【0048】
図9に示すように、本例の駆動制御装置30には、図示しない電源アダプタを介して外部電源51が接続可能とされている。外部電源51としては、たとえば商用電源が想定される。この場合、電源アダプタとして、商用電源から供給される交流電力を制御部31の動作に適した直流電力に変換するAC−DCアダプタを採用する。
【0049】
さて、図10(e),(f)に示されるように、電池33の残容量状態の低下が検出されてリニア振動モータ13の停止制御の実行が開始された後に外部電源51が接続された場合(タイミングT3)、即時に外部電源51の電力に基づく通常の制御モードでの給電制御の実行が開始される構成とすることが考えられる。この場合、図10(a)〜図10(d)に示されるように、停止制御の実行中であってリニア振動モータ13の振動振幅が減衰しきっていないため、外部電源51からの電力に基づく通常の制御モードでの給電制御により、リニア振動モータ13の振動振幅が急激に増大する。すなわち、振動子25がフレーム21に衝突する態様で激しく往復動することにより、打音あるいは、うなり音が発生するなどのおそれがある。
【0050】
そこで、本例では、停止制御の実行中において、外部電源51が駆動制御装置30に接続された場合、一定期間だけリニア振動モータ13への給電を停止させる。すなわち、図11(e),(f)に示されるように、制御部31は、電池33の残容量状態の低下が検出されてリニア振動モータ13の停止制御の実行が開始された後に外部電源51が接続された場合(タイミングT4)、一定期間だけ第1および第2の制御信号の生成を停止する。正確には、図11(b),(c)に示されるように、制御部31は、当該一定期間においては、第1および第2の制御信号のパルス幅(デューティ比)を0(零)に設定する。その結果、図11(d)に示されるように、固定子22に供給される駆動電流も0(零)となる。図11(a)に示されるように、この一定期間においてリニア振動モータ13の振動振幅は減衰する。そして当該一定期間が経過したとき、図11(a)〜図11(d)に示されるように、制御部31は通常の制御モードでの給電制御の実行を再び開始する。当該一定期間においてリニア振動モータ13の振幅が減衰した後に通常の制御モードでの給電が実行されることにより、当該振動の振幅は時間の経過とともに徐々に増大する。
【0051】
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(5)電池33の残容量の低下による停止制御の実行中において外部電源51の接続が検出されるとき、一定期間だけリニア振動モータ13への給電を停止させる。この一定期間にリニア振動モータ13の振幅を減衰させることにより、外部電源51の電力に基づく給電に起因する振動の増大が緩和される。したがって、急激な振幅増大が抑制されることにより、うなり音の発生なども抑制される。
【0052】
<第4の実施の形態>
つぎに、本発明の第4の実施の形態を説明する。本例は、制御モードなどを表示する点で前記第3の実施の形態と異なる。本例は、基本的には前記第3の実施の形態と同様の構成とされている。
【0053】
図12に示すように、制御部31には表示部61が接続されている。この表示部61は、電池33の残容量、およびその時々の制御モードなどを表示するものであって、電気かみそり11のハウジング12の表面に露出する態様で設けられる。表示部61は、たとえば複数のLED(発光ダイオード)などの発光素子を備えてなる。制御部31は、電池33の残容量に応じて点灯する発光素子の個数を異ならせたり、制御モードの種別に応じて特定の発光素子を点灯させたりする。制御部31は、電池33の残容量、および制御モードの種別に応じて、表示部61に対する表示指令を生成する。表示部61は、当該表示指令に基づき表示を行う。
【0054】
図13に示されるように、制御部31は、通常の制御モードで動作しているとき、その旨表示部61に表示させる。また、通常の制御モードでの動作中において、停止制御の実行が開始されたとき(タイミングT5)、電池33の残容量が低下したこと、すなわち停止制御の実行中である旨表示部61に表示させる。さらに、図14に示されるように、停止制御を経て、リニア振動モータ13が停止したとき(タイミングT6)、電池33の残容量の低下に起因して停止した旨表示部61に表示させる。
【0055】
なお、本例では、制御部31は、電池状態検出部32の検出結果に応じた電池33の残容量の状態、および、制御モードのそれぞれについて表示するようにしたが、残容量状態、および、その時々の制御モードの少なくとも一方を表示部61に表示させるようにしてもよい。この場合においても、停止制御の実行を開始する際には、その旨併せて表示部61に表示させる。また、本例では、表示部61をLEDなどの発光素子としたが、たとえば液晶ディスプレイなども採用可能である。
【0056】
したがって、本例によれば、以下の効果を得ることができる。
(6)電池33の残容量、および制御モード、ならびに停止制御による動作停止である旨表示することにより、「残容量低下により停止する」こと、および「停止した」ことを、ユーザにわかりやすく伝えることができる。また、表示部61の表示を通じて、電池33の残容量の低下による停止制御への遷移と、他の制御モードである洗浄用の制御モードへの遷移との混同を抑制することもできる。
【0057】
<第5の実施の形態>
つぎに、本発明の第5の実施の形態を説明する。本例では、図15に示すように、電気かみそり11(正確には、リニア振動モータ13)の動作電源として、一次電池である先の電池33に代えて、二次電池71が採用されている。二次電池71の電力は制御部31へ供給される。制御部31は、この二次電池71の電力を利用してリニア振動モータ13の給電を行う。また、この場合、駆動制御装置30には、先の第3の実施の形態と同様にして、外部電源51が接続可能とされている。外部電源51が接続されたとき、この外部電源51からの電力は二次電池71、および制御部31へそれぞれ供給される。
【0058】
したがって、本例によれば、以下の効果を得ることができる。
(7)電気かみそり11の動作電源として二次電池71を設けたことにより、繰り返しの充電が可能である。このため、繰返し使用可能とされるリニア振動モータ13、ひいては電気かみそり11を構築することができる。
【0059】
<他の実施の形態>
なお、前記実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・第1〜第5の実施の形態では、電池33の残容量は、当該電池33の両端電圧に基づき推定するようにしたが、電圧以外の物理量に基づき電池33の状態を検出するようにしてもよい。たとえば、電気かみそり11(リニア振動モータ13)の累積使用時間を計測し、この計測値に基づき電池33の残容量を推定する。
【0060】
・第1〜第5の実施の形態において、洗浄用の制御モードへ遷移した場合、一定時間だけ経過した後に、リニア振動モータ13を自動的に停止することも可能である。
・第1〜第5の実施の形態では、通常の制御モード以外の他の制御モードとして、洗浄用の制御モードを有する電気かみそり11を例に挙げたが、洗浄用以外の制御モードを有する電気かみそり11にも各実施の形態を適用可能である。たとえば、深剃り用の制御モード、あるいは浅剃り用の制御モードなどを有するものにも適用可能である。なお、制御モードの種別によっては、通常の制御モードから他の制御モードへの遷移の前後において、リニア振動モータ13の振動の振幅あるいは周波数の少なくとも一方が、通常の制御モード時よりも高くする構成の採用も想定される。
【0061】
・第1〜第5の実施の形態では、リニア振動モータ13に対する給電の制御方式として、PWM方式を採用したが、PFM(周波数変調)方式を採用してもよい。PWM制御は、パルス波である制御信号の周期を一定に維持しつつパルス幅を変更する制御であるのに対し、PFM制御は、パルス波である制御信号のパルス幅を一定としつつパルス周期(周波数)を変更する制御である。また、たとえば制御モード毎に、リニア振動モータ13に対する給電の制御方式を、PWM方式とPFM方式とで切り替えることも可能である。
【0062】
・第1の実施の形態では、リニア振動モータ13の停止制御の開始前後における振動振幅の時間的変化の度合いを、通常の制御モードから他の制御モードへの遷移の前後における度合いよりも小さくするようにしたが、つぎのようにしてもよい。すなわち、リニア振動モータ13の停止制御の開始前後における振動周波数の時間的変化の度合いを、通常の制御モードから他の制御モードへの遷移の前後における度合いよりも小さくする。振動振幅と同様に、リニア振動モータ13の振動周波数の違いも、リニア振動モータ13の作動音の違いとしてユーザの聴覚に訴えられる。このため、第1の実施形態の(1)〜(3)と同様の効果を得ることができる。なお、この変形例は、第2〜第5の実施の形態に適用可能である。特に、当該変形例を第2の実施の形態に適用する場合には、振幅フィードバック制御に代えて、周波数フィードバック制御を実行する。すなわち、駆動検知部41の検出結果、すなわちその時々の振動周波数に応じて、リニア振動モータ13への給電をフィードバック制御する。ちなみに、駆動検知部41は、固定子22に誘起される電圧に基づき振動子25の振動周波数を検出することも可能である。
【0063】
・本例では、いわゆる小型電気機器として電気かみそりを例に挙げて説明したが、電動歯ブラシ、電動バリカンなどの他の小型電気機器に本発明を適用してもよい。この場合にも、本例と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
11…電気かみそり(小型電気機器)、13…リニア振動モータ、30…駆動制御装置、31…制御部、32…電池状態検出部、33…電池、41…駆動検知部(フィードバック制御用検出部)、51…外部電源、61…表示部(表示装置)、71…二次電池。
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニア振動モータの駆動制御装置、リニア振動モータの駆動制御方法および小型電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型電気機器として、内刃および外刃の間にひげを挟み込むことにより当該ひげを切断する電気かみそりが知られている。
特許文献1に記載される電気かみそりでは、駆動源としてリニア振動モータが採用されている。このリニア振動モータは、電池の電力を利用して振動を発生する。電池電圧がしきい値電圧まで低下した旨検出されるときには、リニア振動モータの停止に向けた給電制御である停止制御の実行を通じて、当該モータの振動振幅が徐々に小さくされる。これにより、電池電圧の低下時におけるリニア振動モータの急停止が回避される。
【0003】
また、特許文献2に記載される電気かみそりでは、その制御モードとして、ひげの切断を行う際の通常の制御モード、および刃部の洗浄を行う際の洗浄用の制御モードを有している。電気かみそりを動作させる際に操作されるメインスイッチのオン時間に応じて、通常の制御モードと洗浄用の制御モードとの切り替えが行われる。洗浄用の制御モードでは、刃の振動振幅が通常の制御モードよりも小さく設定される。このため、刃の洗浄時における水あるいはひげ屑の飛散が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−65634号公報
【特許文献2】特開2004−16285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の出願人は、特許文献1の停止制御機能と特許文献2の制御モードの切り替え機能とを併せ持つ電気かみそりを検討している。前述したように、通常の制御モードから他の制御モードへ遷移する際には、リニア振動モータの振動振幅が変更されることにより作動音の変化が発生するところ、ユーザはこの作動音の変化により制御モードの変更を認識できる場合も多い。これは、通常の制御モードから停止制御へ遷移する際においても同様である。
【0006】
ここで、制御モードの切り替えに起因する作動音の変化と、停止制御の実行開始に起因する作動音の変化とが互いに近似することが懸念される。この場合、ユーザは、制御モードの切り替えに起因する作動音の変化と、停止制御の実行開始に起因する作動音の変化とを混同することにより、作動音の変化を通じた電気かみそりの制御状態の識別が困難となるおそれがある。たとえば、実際には停止制御の実行が開始されたにもかかわらず、その際の作動音の変化が制御モードの切り替え時の作動音の変化と近似しているために、ユーザは制御モードが切り替えられた旨誤認識することが想定される。この場合、ユーザは違和感を覚え、ひいては電気かみそりの使い勝手にも影響を及ぼしかねない。
【0007】
なお、この問題は、電気かみそりに限らず、電動歯ブラシあるいは電動バリカンなどのリニア振動モータが搭載される他の小型電気機器においても同様に発生し得る。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、電源電圧の低下に起因する動作と、特定の制御モードへの切り換えに起因する動作との混同を抑制することができるリニア振動モータの駆動制御装置、リニア振動モータの駆動制御方法および小型電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電池の電力を利用して振動を発生するリニア振動モータの駆動制御装置において、前記電池の残容量状態を検出する電池状態検出部と、前記リニア振動モータに対する給電制御を通じて前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記リニア振動モータの制御モードとして通常の制御モード、および、他の制御モードを有し、前記通常の制御モードでの給電制御の実行中に前記電池状態検出部を通じて前記電池の残容量が低下した旨検出されるときには、前記リニア振動モータの停止に向けた給電制御である停止制御を実行し、前記通常の制御モードから他の制御モードへ遷移するときには、当該遷移の前後において前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方が前記通常の制御モード時と異なるように給電制御を実行し、前記停止制御の実行を開始するときには、当該開始の前後における前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方の時間的変化の度合いが、前記通常の制御モードから前記他の制御モードへの遷移の前後における前記度合いよりも小さくなるように給電制御を実行することをその要旨とする。
【0009】
前記リニア振動モータの駆動制御装置において、前記制御部は、前記給電制御としてパルス電流の制御を通じて前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方を制御することが好ましい。
【0010】
また、前記リニア振動モータの駆動制御装置において、前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方を検出するフィードバック制御用検出部を備え、前記制御部は、前記フィードバック制御用検出部の検出結果に応じて、前記リニア振動モータへの給電をフィードバック制御することが好ましい。
【0011】
また、前記リニア振動モータの駆動制御装置において、外部電源を接続可能とする一方で、前記制御部は、前記停止制御の実行を開始した後に前記外部電源が接続された旨検出したとき、リニア振動モータに対する給電制御を一定期間だけ停止した後、前記通常の制御モードでの給電制御の実行を開始することが好ましい。
【0012】
また、前記リニア振動モータの駆動制御装置において、前記制御部は、前記電池状態検出部の検出結果に応じた前記電池の残容量の状態、および、前記制御モードの少なくとも一方を外部の表示装置に表示させるとともに、前記停止制御の実行を開始する際には、その旨併せて前記表示装置に表示させることが好ましい。
【0013】
また、前記リニア振動モータの駆動制御装置において、前記制御部は、前記リニア振動モータの停止後、前記電池の残容量の低下に起因して停止した旨前記表示装置に表示させることが好ましい。
【0014】
また、前記リニア振動モータの駆動制御装置において、前記電池は二次電池としてもよい。
前記リニア振動モータの駆動制御装置は、小型電気機器に好適である。
【0015】
本発明は、電池の電力を利用して振動を発生するリニア振動モータの駆動制御方法において、前記リニア振動モータの制御モードとして通常の制御モード、および、他の制御モードを有し、前記通常の制御モードでの給電制御の実行中に前記電池の残容量が低下した旨検出されるときには、前記リニア振動モータの停止に向けた給電制御である停止制御を実行し、前記通常の制御モードから他の制御モードへ遷移するときには、当該遷移の前後において前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方が前記通常の制御モード時と異なるように給電制御を実行し、前記停止制御の実行を開始するときには、当該開始の前後における前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方の時間的変化の度合いが、前記通常の制御モードから前記他の制御モードへの遷移の前後における前記度合いよりも小さくなるように給電制御を実行することをその要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電源電圧の低下に起因する動作と、特定の制御モードへの切り換えに起因する動作との混同を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態における電気かみそりの斜視図。
【図2】同じくリニア振動モータの概略構成を示すブロック図。
【図3】(a)は、通常の制御モードから停止制御へ遷移したときの振動振幅の時間的変化を示す波形図、同じく(b),(c)はそれぞれパルス信号のパルス幅の時間的変化を示す波形図、同じく(d)はリニア振動モータに供給される駆動電流の時間的変化を示す波形図、同じく(e)は電池電圧の時間的変化を示す波形図、同じく(f)は電池状態検出部の検出信号の時間的変化を示す波形図。
【図4】(a)は、通常の制御モードから他の制御モードへ遷移したときの振動振幅の時間的変化を示す波形図、同じく(b),(c)はそれぞれパルス信号のパルス幅の時間的変化を示す波形図、同じく(d)はリニア振動モータに供給される駆動電流の時間的変化を示す波形図。
【図5】(a)は通常の制御モードから停止制御へ遷移したときの振動振幅の時間的変化を示す波形図、(b)は通常の制御モードから他の制御モードへ遷移したときの振動振幅の時間的変化を示す波形図。
【図6】通常の制御モードから停止制御へ遷移した場合、および通常の制御モードから他の制御モードへ遷移した場合のそれぞれにおける振動振幅の時間的変化を示すグラフ。
【図7】第2の実施の形態におけるリニア振動モータの概略構成を示すブロック図。
【図8】同じくフィードバック制御を実行する場合、およびフィードバック制御を実行しない場合のそれぞれにおける振動振幅の時間的変化を示すグラフ。
【図9】第3の実施の形態におけるリニア振動モータの概略構成を示すブロック図。
【図10】(a)は外部電源が接続されていない状態で停止制御が実行されている場合に外部電源が接続されたときの振動振幅の時間的変化を示す波形図(出力停止機能無し)、同じく(b),(c)はそれぞれパルス信号のパルス幅の時間的変化を示す波形図、同じく(d)はリニア振動モータに供給される駆動電流の時間的変化を示す波形図、同じく(e)は電池電圧の時間的変化を示す波形図、同じく(f)は電池状態検出部の検出信号の時間的変化を示す波形図。
【図11】(a)は外部電源が接続されていない状態で停止制御が実行されている場合に外部電源が接続されたときの振動振幅の時間的変化を示す波形図(出力停止機能有り)、同じく(b),(c)はそれぞれパルス信号のパルス幅の時間的変化を示す波形図、同じく(d)はリニア振動モータに供給される駆動電流の時間的変化を示す波形図、同じく(e)は電池電圧の時間的変化を示す波形図、同じく(f)は電池状態検出部の検出信号の時間的変化を示す波形図。
【図12】第4の実施の形態におけるリニア振動モータの概略構成を示すブロック図。
【図13】同じくリニア振動モータの動作状態と停止制御の実行が開始された旨の表示タイミングとの関係を示すタイミングチャート。
【図14】同じくリニア振動モータの動作状態と電池の残容量低下した旨の表示タイミングとの関係を示すタイミングチャート。
【図15】第5の実施の形態におけるリニア振動モータの概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施の形態>
以下、本発明を、電気かみそりに具体化した一実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0019】
<電気かみそりの全体構成>
図1に示すように、電気かみそり11のハウジング12の上部には、リニア振動モータ13を介して内刃14が設けられるとともに、当該内刃14に覆い被さるように外刃15が着脱可能に設けられている。外刃15がハウジング12に取り付けられた状態において、内刃14の外面は外刃15の内面に対して摺接可能とされている。ハウジング12の外面に設けられるスイッチ16が操作されたとき、リニア振動モータ13には動作電力が供給される。当該電力の供給を受けてリニア振動モータ13は動作して振動を発生する。外刃15の内部に導入される髭は、外刃15と振動する内刃14とに挟まれることによって切断される。
【0020】
<リニア振動モータ>
つぎに、リニア振動モータの構成を詳細に説明する。図2に示すように、リニア振動モータ13は、ハウジング12に固定されるフレーム21を有している。フレーム21の下部には固定子22が固定されている。固定子22は、磁性材料により形成されたコア23に導線24がコイル状に巻回されてなる電磁石である。フレーム21の内部には、内刃14に連結される振動子25が設けられている。振動子25の振動方向(図2中の左右方向)における両端部とフレーム21の内面との間は、それぞれ圧縮コイルばね26,26により連結されている。振動子25は、合成樹脂材料、あるいは非磁性材料により形成されている。振動子25の下部には永久磁石27が外部に露出する態様で設けられている。永久磁石27は、振動方向において2極着磁されている。永久磁石27は、固定子22に対して上下方向において所定の間隔をおいて対向している。したがって、振動子25は、2つの圧縮コイルばね26,26の弾性力に抗して、あるいは当該弾性力を利用するかたちで振動方向に沿って往復動可能とされている。
【0021】
<リニア振動モータの駆動制御装置>
つぎに、リニア振動モータ13の駆動制御装置について説明する。図2の下部に示されるように、駆動制御装置30は、制御部31、および、電池状態検出部32を備えてなる。
【0022】
電池状態検出部32は、ハウジング12に内蔵される電池(一次電池)33の残容量を検出する。本例では、電池状態検出部32は、電池33の状態として電池33の両端電圧を検出し、その検出結果に基づき電池33の残容量の低下を判定する。電池状態検出部32は、電池の両端電圧が残容量低下検出用のしきい値Vhまで低下した旨検出されるとき、その旨示す検出信号を生成する。制御部31は、当該検出信号の生成の有無に基づき電池33の両端電圧の低下の有無を判定可能とされている。なお、しきい値Vhは、制御部31の最小動作電圧よりも大きな値に設定される。
【0023】
制御部31は、図示しない不揮発性の記憶装置を有している。この記憶装置には、リニア振動モータ13を統括制御するための各種の制御プログラムおよびデータが記憶されている。制御部31は、当該記憶装置に記憶された制御プログラムの実行を通じて、固定子22に対する給電制御を行う。
【0024】
制御部31は、電池33の電力を利用してリニア振動モータ13の駆動電力を生成し、この生成される駆動電力を固定子22に印加する。詳述すると、制御部31は、図示しない駆動回路を通じて、固定子22に対する駆動電流をPWM(パルス幅変調)制御する。駆動回路は、MOSFETなどの4つのスイッチング素子がHブリッジ型に接続されてなるインバータ回路である。制御部31において生成されるパルス波である制御信号(PWM信号)に基づいて各スイッチング素子がオンオフ動作することにより、固定子22に供給される駆動電流の方向が切り替えられる。すなわち、図2に破線の矢印で示される第1の方向の駆動電流Id1、および、同図に実線の矢印で示される第2の方向の駆動電流Id2が、固定子22に対して特定のタイミングで交互に供給される。
【0025】
固定子22に駆動電流が供給されると、振動子25の永久磁石27が駆動電流の方向に応じて圧縮コイルばね26,26を撓ませつつ特定の振動方向に沿って駆動される。制御部31の制御を通じて駆動電流の方向が適当なタイミングで切り換えられることにより、固定子22に発生する磁界の方向が切り替わる。その結果、振動子25は、2つの圧縮コイルばね26,26の弾性力に抗して、あるいは当該弾性力を利用するかたちで特定の振動方向に沿って振動する。この振動子25の振動に伴い、当該振動子25に連結される内刃14も振動する。
【0026】
本例では、制御部31によるリニア振動モータ13の制御モードとして、通常の制御モード、および、洗浄用の制御モードが設定されている。
通常の制御モードは、髭の切断を行う際の制御モードである。この制御モードでは、PWM信号のパルス幅(デューティ比)の制御を通じて、髭の切断に適した振動振幅でリニア振動モータ13が駆動される。リニア振動モータ13が停止した状態で、スイッチ16が操作されたとき、通常の制御モードでリニア振動モータ13は駆動制御される。
【0027】
洗浄用の制御モードは、内刃14などの刃部の洗浄を行う際の制御モードである。この制御モードでは、PWM信号のパルス幅の制御を通じて、刃部の洗浄に適した振動振幅でリニア振動モータ13が駆動される。通常の制御モードでの駆動制御の実行中において、定められた制御モード遷移条件が成立したとき、通常の制御モードから洗浄用の制御モードへ遷移する。制御モード遷移条件としては、図示しない制御モード切り替え用のスイッチが操作されること、あるいは通常の制御モードでの累積使用時間がしきい値時間に達した旨検出されることなどがある。通常の制御モードから他の制御モードへ遷移するとき、制御部31は、当該遷移の前後においてリニア振動モータ13の振動振幅が通常の制御モード時と異なるように給電制御(PWM制御)を実行する。本例では、当該制御モードの遷移の前後において、リニア振動モータ13の振動振幅が通常の制御モード時よりも小さくされる。
【0028】
また、制御部31は、つぎのような制御も実行する。すなわち、制御部31は、たとえば通常の制御モードでの給電制御の実行中において、電池状態検出部32を通じて検出される電池33の残容量が残容量低下検出用のしきい値Vhまで低下した旨判断されるとき、リニア振動モータ13の停止に向けた給電制御である停止制御を実行する。本例では、この停止制御の実行を開始するときには、当該開始の前後におけるリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化の度合いが、通常の制御モードから洗浄用の制御モードへの遷移の前後における前記度合いよりも小さくなるように給電制御を実行する。
【0029】
なお、制御部31の記憶装置には、通常の制御モード、および洗浄用の制御モードでの給電制御、ならびに停止制御においてそれぞれ使用される制御信号のパルス幅(デューティ比)に関する情報が格納されている。制御部31は、当該記憶装置に格納されたパルス幅に関する情報を使用して、制御信号のパルス幅を設定する。
【0030】
<リニア振動モータの駆動制御方法>
次に、リニア振動モータの駆動制御方法について説明する。
まず通常の制御モードでの給電制御について説明する。図3(a)に示されるように、通常の制御モードでは、振動子25の振動の振幅および周波数が、それぞれ髭の切断に適した一定値となるように給電制御される。すなわち、図3(b),(c)に示されるように、制御部31は、固定子22に対する第1の方向の駆動電流を制御する第1の制御信号(図中の右出力)、および、固定子22に対する第2の方向の駆動電流を制御する第2の制御信号(図中の左出力)を生成する。第1および第2の制御信号のパルス幅(デューティ比)は、通常用として定められたパルス幅でそれぞれ一定とされる。また、第1の制御信号と第2の制御信号の位相は、半周期程度ずらされる。その結果、図3(d)に示されるように、固定子22に供給される駆動電流は、第1および第2の制御信号の位相差およびパルス幅に応じたパルス状の電流(パルス電流)となる。同図に示されるように、第1および第2の制御信号のパルス周期に応じて、固定子22に供給される駆動電流の向きが切り替わる。
【0031】
<通常の制御モード→停止制御>
つぎに、通常の制御モードから停止制御への遷移について説明する。図3(e)に示されるように、電気かみそりの使用に伴い電池33の両端電圧は徐々に低下する。そして、制御部31は、電池状態検出部32を通じて電池33の両端電圧がしきい値Vhまで低下した旨検出されて、電池状態検出部32から検出信号が入力されるとき(タイミングT1)、停止制御の実行を開始する。
【0032】
すなわち、図3(b),(c)に示されるように、制御部31は、第1および第2の制御信号のパルス幅を、リニア振動モータ13の停止に向けて徐々に小さく設定する。その結果、図3(d)に示されるように、固定子22に供給される駆動電流の量は、第1および第2の制御信号のパルス幅の減少の度合いに応じて、徐々に減少する。そして図3(a)に示されるように、駆動電流量の減少に伴い、振動子25の振動振幅は、リニア振動モータ13の停止に向けて徐々に小さくなる。内刃14の振動振幅も停止に向けて徐々に小さくなることから、電池33の両端電圧の低下時におけるリニア振動モータ13の急停止が回避される。
【0033】
<通常の制御モード→洗浄用の制御モード>
つぎに、通常の制御モードから洗浄用の制御モードへの遷移について説明する。制御部31は、通常の制御モードでの給電制御の実行中において、定められた制御モード遷移条件が成立した旨判断されるとき、リニア振動モータ13の制御モードを洗浄用の制御モードへ遷移させる。
【0034】
すなわち、図4(b),(c)に示されるように、制御部31は、洗浄用の制御モードでの給電制御の実行を開始するに際して(タイミングT2)、第1および第2の制御信号のパルス幅を洗浄時用として定められたパルス幅に固定的に設定する。この洗浄時用のパルス幅は、通常時のパルス幅よりも小さく設定されている。図4(b),(c)の例では、洗浄時用のパルス幅は、通常時のパルス幅の1/3程度とされている。その結果、図4(d)に示されるように、固定子22に供給される駆動電流量は、第1および第2の制御信号のパルス幅に応じて、通常時の駆動電流量よりも少なくなる。ここでは、洗浄時の駆動電流は通常時の1/2程度となる。そして図4(a)に示されるように、駆動電流量の半減に伴い、振動子25の振動振幅も通常時に比べて半減する。図5(a),(b)に示されるように、通常の制御モードから洗浄用の制御モードへの遷移前後における振動振幅の時間的変化の度合いは、通常の制御モードから停止制御への遷移前後における度合いに比べて小さなものとなる。
【0035】
<振動振幅の時間的変化の比較>
つぎに、通常の制御モードから洗浄用の制御モードおよび停止制御へそれぞれ遷移した場合のリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化を、図6のグラフに基づき比較する。当該グラフにおいて、横軸は時間、縦軸は振動子25の振幅である。また、当該グラフにおいて、通常の制御モードから本例の停止制御へ遷移した場合の振動振幅の時間的変化は実線で、通常モードから洗浄用の制御モードへ遷移した場合の振動振幅の時間的変化は鎖線で示す。また、比較例として、停止制御へ遷移した際の振動振幅の変化の度合いが、洗浄用の制御モードへ遷移した場合よりも大きくされるときの振動振幅の時間的変化を一点鎖線で示す。
【0036】
さて、当該グラフに示されるように、通常の制御モードから本例の停止制御への遷移の前後におけるリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化量Aは、通常の制御モードから洗浄用の制御モードへの遷移の前後におけるリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化量Bよりも、かなり小さなものとなる。これら振動振幅の時間的変化量A,Bの差は、リニア振動モータ13の作動音の明確な違いとしてユーザの聴覚に訴えられる程度とされる。すなわち、結果として作動音の違いがユーザによって明確に識別可能となるように、停止制御時および洗浄用の制御モード時における第1および第2の制御信号のパルス幅がそれぞれ設定される。
【0037】
このように、本例の駆動制御方法によれば、リニア振動モータ13の停止制御の開始前後における作動音の変化の度合いは、制御モードの遷移前後における作動音の変化の度合いに比べて明らかに小さなものとなる。このため、作動音の変化の度合いの違いによって、電池残容量の低下に伴う停止制御に起因する作動音の変化なのか、制御モードの遷移に起因する作動音の変化なのかを、ユーザは聴覚を通じて明確に識別することが可能となる。したがって、電源残容量の低下に起因する停止動作と、特定の制御モードへの遷移に起因する動作との混同を抑制することができる。
【0038】
なお、停止制御時の振幅の時間的変化の度合いと制御モードの遷移時における振幅の時間的変化の度合いとの差は大きくするほどよい。当該度合いの差が大きくなるほど、聴覚を通じた作動音の識別が容易になる。
【0039】
ここで、停止制御および洗浄用の制御モードへそれぞれ遷移する際の作動音を、つぎのようにして異ならせることも考えられる。すなわち、本例とは逆に、停止制御への遷移の前後における振動振幅の時間的変化量Cを、洗浄用の制御モードへの遷移の前後における振動振幅の時間的変化量Bよりも大きくする。この場合、確かに振動振幅の時間的変化量の差は発生するものの、停止制御および洗浄用の制御モードへの遷移前後における振動振幅の時間的変化の傾向は、それぞれの制御用として設定される制御信号のパルス幅に応じた振動振幅に至るまで、同様の変化傾向となるおそれがある。すなわち、洗浄モード遷移時、および停止制御への遷移時のそれぞれにおいて、振動振幅は同じ傾向で急激に落ち込む。この場合、わずかな時間ではあるものの、作動音の識別が困難となることが懸念される。
【0040】
したがって、本例のように、通常の制御モードから停止制御への遷移の前後におけるリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化量Aは、通常の制御モードから洗浄用の制御モードへの遷移の前後におけるリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化量Bよりも小さくすることが好ましい。これは、通常の制御モードから停止制御への遷移の前後におけるリニア振動モータ13の振動振幅の時間的変化量Aを小さくするほど、停止制御への遷移時および洗浄用の制御モードへの遷移時における振動振幅が、同様の傾向で変化する領域が少なくなるからである。すなわち、本例の駆動制御方法によれば、停止制御への遷移前後、および洗浄用の制御モードへの遷移前後において、即時に振動振幅の時間的変化量、ひいては作動音の変化に違いを出しやすい。図6の例では、洗浄モード遷移時には振動振幅が急激に落ち込むのに対して、停止制御への遷移時には振動振幅の落ち込みはほとんどない。この振動振幅の時間的変化量の差は、作動音の違いとして明確に識別可能である。
【0041】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)リニア振動モータ13の振動の振幅あるいは周波数の違いは、リニア振動モータ13の作動音の違いとしてユーザの聴覚に訴えられる。このことを利用して、本例では、リニア振動モータ13の停止制御の開始前後における振動振幅の時間的変化の度合いを、通常の制御モードから他の制御モードへの遷移の前後における度合いよりも小さくする。そのようにすることで、リニア振動モータ13の停止制御の開始前後における作動音の変化の度合いを、制御モードの遷移前後における作動音の変化の度合いよりも小さくすることができる。すなわち、作動音の変化の度合いの違いによって、電池残容量の低下に伴う停止制御に起因する作動音の変化なのか、制御モードの遷移に起因する作動音の変化なのかを、ユーザは聴覚を通じて識別することが可能となる。したがって、電源残容量の低下に起因する停止動作と、特定の動作モードへの遷移に起因する動作との混同を抑制することができる。なお、停止制御時の振幅の時間的変化の度合いと、制御モードの遷移時における振幅の時間的変化の度合いとの差は、大きくするほどよい。当該度合いの差が大きくなるほど、聴覚を通じた作動音の識別が容易になる。
【0042】
(2)固定子22をパルス駆動するようにした。このため、停止制御などの際、パルス制御を通じて、リニア振動モータ13の振幅を簡単に制御することができる。同様にして、リニア振動モータ13の周波数を制御することもできる。
【0043】
(3)本例のリニア振動モータ13は、電気かみそりなどの小型電気機器に好適である。
<第2の実施の形態>
つぎに、本発明の第2の実施の形態を説明する。本例は、リニア振動モータの振幅に基づき給電をフィードバック制御する点で前記第1の実施の形態と異なる。したがって、前記第1の実施の形態と同一の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0044】
図7に示すように、駆動制御装置30は、駆動検知部41を備えてなる。この駆動検知部41は、電磁石である固定子22の第1および第2の端子にそれぞれ接続されている。駆動検知部41は、固定子22に誘起される電圧に基づき振動子25の振動の振幅を検出し、この検出される振幅に応じた電気信号を生成する。制御部31は、通常の制御モードから停止制御へ遷移する際、駆動検知部41において生成される電気信号に基づき、そのときの振動振幅を検出する。そして制御部31は、停止制御への遷移の前後における振幅の時間的変化の度合いがなるべく小さくなるように、固定子22に対する給電をフィードバック制御する。
【0045】
図8のグラフに示されるように、当該振幅に基づく給電のフィードバック制御(以下、「振幅フィードバック制御」という。)を実行することによって、停止制御への遷移前後の振動振幅の時間的変化の度合いは、当該振幅フィードバック制御を実行しない場合に比較して、より小さなものとなる。なお、当該グラフにおいて、横軸は時間、縦軸は振動子25の振動振幅である。また当該グラフにおいて、振幅フィードバック制御を実行しないときの振動振幅の時間的変化を一点鎖線で、振幅フィードバック制御を実行したときの振動振幅の時間的変化を実線で示す。
【0046】
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(4)制御部31は、駆動検知部41の検出結果、すなわちその時々の振動振幅に応じて、リニア振動モータ13への給電をフィードバック制御する。このため、通常の制御モードから停止制御へ遷移する際、振動フィードバック制御を実行しない場合と比較して、振動振幅の時間的変化の度合いを、より小さくすることができる。また、その時々に応じて最適な給電制御を実施することができる。
【0047】
<第3の実施の形態:図9〜図11>
つぎに、本発明の第3の実施の形態を説明する。本例は、外部電源を接続可能とした点で前記第2の実施の形態と異なる。
【0048】
図9に示すように、本例の駆動制御装置30には、図示しない電源アダプタを介して外部電源51が接続可能とされている。外部電源51としては、たとえば商用電源が想定される。この場合、電源アダプタとして、商用電源から供給される交流電力を制御部31の動作に適した直流電力に変換するAC−DCアダプタを採用する。
【0049】
さて、図10(e),(f)に示されるように、電池33の残容量状態の低下が検出されてリニア振動モータ13の停止制御の実行が開始された後に外部電源51が接続された場合(タイミングT3)、即時に外部電源51の電力に基づく通常の制御モードでの給電制御の実行が開始される構成とすることが考えられる。この場合、図10(a)〜図10(d)に示されるように、停止制御の実行中であってリニア振動モータ13の振動振幅が減衰しきっていないため、外部電源51からの電力に基づく通常の制御モードでの給電制御により、リニア振動モータ13の振動振幅が急激に増大する。すなわち、振動子25がフレーム21に衝突する態様で激しく往復動することにより、打音あるいは、うなり音が発生するなどのおそれがある。
【0050】
そこで、本例では、停止制御の実行中において、外部電源51が駆動制御装置30に接続された場合、一定期間だけリニア振動モータ13への給電を停止させる。すなわち、図11(e),(f)に示されるように、制御部31は、電池33の残容量状態の低下が検出されてリニア振動モータ13の停止制御の実行が開始された後に外部電源51が接続された場合(タイミングT4)、一定期間だけ第1および第2の制御信号の生成を停止する。正確には、図11(b),(c)に示されるように、制御部31は、当該一定期間においては、第1および第2の制御信号のパルス幅(デューティ比)を0(零)に設定する。その結果、図11(d)に示されるように、固定子22に供給される駆動電流も0(零)となる。図11(a)に示されるように、この一定期間においてリニア振動モータ13の振動振幅は減衰する。そして当該一定期間が経過したとき、図11(a)〜図11(d)に示されるように、制御部31は通常の制御モードでの給電制御の実行を再び開始する。当該一定期間においてリニア振動モータ13の振幅が減衰した後に通常の制御モードでの給電が実行されることにより、当該振動の振幅は時間の経過とともに徐々に増大する。
【0051】
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(5)電池33の残容量の低下による停止制御の実行中において外部電源51の接続が検出されるとき、一定期間だけリニア振動モータ13への給電を停止させる。この一定期間にリニア振動モータ13の振幅を減衰させることにより、外部電源51の電力に基づく給電に起因する振動の増大が緩和される。したがって、急激な振幅増大が抑制されることにより、うなり音の発生なども抑制される。
【0052】
<第4の実施の形態>
つぎに、本発明の第4の実施の形態を説明する。本例は、制御モードなどを表示する点で前記第3の実施の形態と異なる。本例は、基本的には前記第3の実施の形態と同様の構成とされている。
【0053】
図12に示すように、制御部31には表示部61が接続されている。この表示部61は、電池33の残容量、およびその時々の制御モードなどを表示するものであって、電気かみそり11のハウジング12の表面に露出する態様で設けられる。表示部61は、たとえば複数のLED(発光ダイオード)などの発光素子を備えてなる。制御部31は、電池33の残容量に応じて点灯する発光素子の個数を異ならせたり、制御モードの種別に応じて特定の発光素子を点灯させたりする。制御部31は、電池33の残容量、および制御モードの種別に応じて、表示部61に対する表示指令を生成する。表示部61は、当該表示指令に基づき表示を行う。
【0054】
図13に示されるように、制御部31は、通常の制御モードで動作しているとき、その旨表示部61に表示させる。また、通常の制御モードでの動作中において、停止制御の実行が開始されたとき(タイミングT5)、電池33の残容量が低下したこと、すなわち停止制御の実行中である旨表示部61に表示させる。さらに、図14に示されるように、停止制御を経て、リニア振動モータ13が停止したとき(タイミングT6)、電池33の残容量の低下に起因して停止した旨表示部61に表示させる。
【0055】
なお、本例では、制御部31は、電池状態検出部32の検出結果に応じた電池33の残容量の状態、および、制御モードのそれぞれについて表示するようにしたが、残容量状態、および、その時々の制御モードの少なくとも一方を表示部61に表示させるようにしてもよい。この場合においても、停止制御の実行を開始する際には、その旨併せて表示部61に表示させる。また、本例では、表示部61をLEDなどの発光素子としたが、たとえば液晶ディスプレイなども採用可能である。
【0056】
したがって、本例によれば、以下の効果を得ることができる。
(6)電池33の残容量、および制御モード、ならびに停止制御による動作停止である旨表示することにより、「残容量低下により停止する」こと、および「停止した」ことを、ユーザにわかりやすく伝えることができる。また、表示部61の表示を通じて、電池33の残容量の低下による停止制御への遷移と、他の制御モードである洗浄用の制御モードへの遷移との混同を抑制することもできる。
【0057】
<第5の実施の形態>
つぎに、本発明の第5の実施の形態を説明する。本例では、図15に示すように、電気かみそり11(正確には、リニア振動モータ13)の動作電源として、一次電池である先の電池33に代えて、二次電池71が採用されている。二次電池71の電力は制御部31へ供給される。制御部31は、この二次電池71の電力を利用してリニア振動モータ13の給電を行う。また、この場合、駆動制御装置30には、先の第3の実施の形態と同様にして、外部電源51が接続可能とされている。外部電源51が接続されたとき、この外部電源51からの電力は二次電池71、および制御部31へそれぞれ供給される。
【0058】
したがって、本例によれば、以下の効果を得ることができる。
(7)電気かみそり11の動作電源として二次電池71を設けたことにより、繰り返しの充電が可能である。このため、繰返し使用可能とされるリニア振動モータ13、ひいては電気かみそり11を構築することができる。
【0059】
<他の実施の形態>
なお、前記実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・第1〜第5の実施の形態では、電池33の残容量は、当該電池33の両端電圧に基づき推定するようにしたが、電圧以外の物理量に基づき電池33の状態を検出するようにしてもよい。たとえば、電気かみそり11(リニア振動モータ13)の累積使用時間を計測し、この計測値に基づき電池33の残容量を推定する。
【0060】
・第1〜第5の実施の形態において、洗浄用の制御モードへ遷移した場合、一定時間だけ経過した後に、リニア振動モータ13を自動的に停止することも可能である。
・第1〜第5の実施の形態では、通常の制御モード以外の他の制御モードとして、洗浄用の制御モードを有する電気かみそり11を例に挙げたが、洗浄用以外の制御モードを有する電気かみそり11にも各実施の形態を適用可能である。たとえば、深剃り用の制御モード、あるいは浅剃り用の制御モードなどを有するものにも適用可能である。なお、制御モードの種別によっては、通常の制御モードから他の制御モードへの遷移の前後において、リニア振動モータ13の振動の振幅あるいは周波数の少なくとも一方が、通常の制御モード時よりも高くする構成の採用も想定される。
【0061】
・第1〜第5の実施の形態では、リニア振動モータ13に対する給電の制御方式として、PWM方式を採用したが、PFM(周波数変調)方式を採用してもよい。PWM制御は、パルス波である制御信号の周期を一定に維持しつつパルス幅を変更する制御であるのに対し、PFM制御は、パルス波である制御信号のパルス幅を一定としつつパルス周期(周波数)を変更する制御である。また、たとえば制御モード毎に、リニア振動モータ13に対する給電の制御方式を、PWM方式とPFM方式とで切り替えることも可能である。
【0062】
・第1の実施の形態では、リニア振動モータ13の停止制御の開始前後における振動振幅の時間的変化の度合いを、通常の制御モードから他の制御モードへの遷移の前後における度合いよりも小さくするようにしたが、つぎのようにしてもよい。すなわち、リニア振動モータ13の停止制御の開始前後における振動周波数の時間的変化の度合いを、通常の制御モードから他の制御モードへの遷移の前後における度合いよりも小さくする。振動振幅と同様に、リニア振動モータ13の振動周波数の違いも、リニア振動モータ13の作動音の違いとしてユーザの聴覚に訴えられる。このため、第1の実施形態の(1)〜(3)と同様の効果を得ることができる。なお、この変形例は、第2〜第5の実施の形態に適用可能である。特に、当該変形例を第2の実施の形態に適用する場合には、振幅フィードバック制御に代えて、周波数フィードバック制御を実行する。すなわち、駆動検知部41の検出結果、すなわちその時々の振動周波数に応じて、リニア振動モータ13への給電をフィードバック制御する。ちなみに、駆動検知部41は、固定子22に誘起される電圧に基づき振動子25の振動周波数を検出することも可能である。
【0063】
・本例では、いわゆる小型電気機器として電気かみそりを例に挙げて説明したが、電動歯ブラシ、電動バリカンなどの他の小型電気機器に本発明を適用してもよい。この場合にも、本例と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
11…電気かみそり(小型電気機器)、13…リニア振動モータ、30…駆動制御装置、31…制御部、32…電池状態検出部、33…電池、41…駆動検知部(フィードバック制御用検出部)、51…外部電源、61…表示部(表示装置)、71…二次電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の電力を利用して振動を発生するリニア振動モータの駆動制御装置において、
前記電池の残容量状態を検出する電池状態検出部と、前記リニア振動モータに対する給電制御を通じて前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記リニア振動モータの制御モードとして通常の制御モード、および、他の制御モードを有し、
前記通常の制御モードでの給電制御の実行中に前記電池状態検出部を通じて前記電池の残容量が低下した旨検出されるときには、前記リニア振動モータの停止に向けた給電制御である停止制御を実行し、
前記通常の制御モードから他の制御モードへ遷移するときには、当該遷移の前後において前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方が前記通常の制御モード時と異なるように給電制御を実行し、
前記停止制御の実行を開始するときには、当該開始の前後における前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方の時間的変化の度合いが、前記通常の制御モードから前記他の制御モードへの遷移の前後における前記度合いよりも小さくなるように給電制御を実行するリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリニア振動モータの駆動制御装置において、
前記制御部は、前記給電制御としてパルス電流の制御を通じて前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方を制御するリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のリニア振動モータの駆動制御装置において、
前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方を検出するフィードバック制御用検出部を備え、
前記制御部は、前記フィードバック制御用検出部の検出結果に応じて、前記リニア振動モータへの給電をフィードバック制御するリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のリニア振動モータの駆動制御装置において、
外部電源を接続可能とする一方で、
前記制御部は、前記停止制御の実行を開始した後に前記外部電源が接続された旨検出したとき、リニア振動モータに対する給電制御を一定期間だけ停止した後、前記通常の制御モードでの給電制御の実行を開始するリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のリニア振動モータの駆動制御装置において、
前記制御部は、前記電池状態検出部の検出結果に応じた前記電池の残容量の状態、および、前記制御モードの少なくとも一方を外部の表示装置に表示させるとともに、前記停止制御の実行を開始する際には、その旨併せて前記表示装置に表示させるリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のリニア振動モータの駆動制御装置において、
前記制御部は、前記リニア振動モータの停止後、前記電池の残容量の低下に起因して停止した旨前記表示装置に表示させるリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちいずれか一項のリニア振動モータの駆動制御装置において、
前記電池は二次電池であるリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項8】
電池の電力を利用して振動を発生するリニア振動モータの駆動制御方法において、
前記リニア振動モータの制御モードとして通常の制御モード、および、他の制御モードを有し、
前記通常の制御モードでの給電制御の実行中に前記電池の残容量が低下した旨検出されるときには、前記リニア振動モータの停止に向けた給電制御である停止制御を実行し、
前記通常の制御モードから他の制御モードへ遷移するときには、当該遷移の前後において前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方が前記通常の制御モード時と異なるように給電制御を実行し、
前記停止制御の実行を開始するときには、当該開始の前後における前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方の時間的変化の度合いが、前記通常の制御モードから前記他の制御モードへの遷移の前後における前記度合いよりも小さくなるように給電制御を実行するリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のうちいずれか一項のリニア振動モータの駆動制御装置を備えてなる小型電気機器。
【請求項1】
電池の電力を利用して振動を発生するリニア振動モータの駆動制御装置において、
前記電池の残容量状態を検出する電池状態検出部と、前記リニア振動モータに対する給電制御を通じて前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記リニア振動モータの制御モードとして通常の制御モード、および、他の制御モードを有し、
前記通常の制御モードでの給電制御の実行中に前記電池状態検出部を通じて前記電池の残容量が低下した旨検出されるときには、前記リニア振動モータの停止に向けた給電制御である停止制御を実行し、
前記通常の制御モードから他の制御モードへ遷移するときには、当該遷移の前後において前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方が前記通常の制御モード時と異なるように給電制御を実行し、
前記停止制御の実行を開始するときには、当該開始の前後における前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方の時間的変化の度合いが、前記通常の制御モードから前記他の制御モードへの遷移の前後における前記度合いよりも小さくなるように給電制御を実行するリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリニア振動モータの駆動制御装置において、
前記制御部は、前記給電制御としてパルス電流の制御を通じて前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方を制御するリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のリニア振動モータの駆動制御装置において、
前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方を検出するフィードバック制御用検出部を備え、
前記制御部は、前記フィードバック制御用検出部の検出結果に応じて、前記リニア振動モータへの給電をフィードバック制御するリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のリニア振動モータの駆動制御装置において、
外部電源を接続可能とする一方で、
前記制御部は、前記停止制御の実行を開始した後に前記外部電源が接続された旨検出したとき、リニア振動モータに対する給電制御を一定期間だけ停止した後、前記通常の制御モードでの給電制御の実行を開始するリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のリニア振動モータの駆動制御装置において、
前記制御部は、前記電池状態検出部の検出結果に応じた前記電池の残容量の状態、および、前記制御モードの少なくとも一方を外部の表示装置に表示させるとともに、前記停止制御の実行を開始する際には、その旨併せて前記表示装置に表示させるリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のリニア振動モータの駆動制御装置において、
前記制御部は、前記リニア振動モータの停止後、前記電池の残容量の低下に起因して停止した旨前記表示装置に表示させるリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちいずれか一項のリニア振動モータの駆動制御装置において、
前記電池は二次電池であるリニア振動モータの駆動制御装置。
【請求項8】
電池の電力を利用して振動を発生するリニア振動モータの駆動制御方法において、
前記リニア振動モータの制御モードとして通常の制御モード、および、他の制御モードを有し、
前記通常の制御モードでの給電制御の実行中に前記電池の残容量が低下した旨検出されるときには、前記リニア振動モータの停止に向けた給電制御である停止制御を実行し、
前記通常の制御モードから他の制御モードへ遷移するときには、当該遷移の前後において前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方が前記通常の制御モード時と異なるように給電制御を実行し、
前記停止制御の実行を開始するときには、当該開始の前後における前記振動の振幅、および、周波数の少なくとも一方の時間的変化の度合いが、前記通常の制御モードから前記他の制御モードへの遷移の前後における前記度合いよりも小さくなるように給電制御を実行するリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のうちいずれか一項のリニア振動モータの駆動制御装置を備えてなる小型電気機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−182889(P2012−182889A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43049(P2011−43049)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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