説明

リフレクタ・高圧放電ランプ

【課題】冒頭で述べた形式のリフレクタ・高圧放電ランプを改良して、給電部の酸化が阻止されるものを提供する。
【解決手段】リフレクタ(8)と放電管(1)との間の室が、ガス密に閉鎖されており、不活性ガス又は不活性ガス混合物により充填されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフレクタ・高圧放電ランプであって、このリフレクタ・高圧放電ランプが、石英ガラスより成るガス密な放電管から成っており、この放電管に、放電バルブのカバーに直線上に取り付けられた2つのネックが設けられており、これらのネック内に、タングステンより成るそれぞれ1つの電極が、シールシートを介してガス密に封入されており、少なくとも1つの不活性ガス、必要に応じて金属ハロゲン化物及び必要に応じて水銀から成る充填材が設けられており、放電管から放出された光を収集し、収束し、かつ給電線を貫通案内するためのリフレクタが設けられており、このリフレクタに放電管を保持するための孔が設けられており、透光性の材料より成るカバーディスクが設けられている形式のものに関する。特にリフレクタ・高圧放電ランプは、データプロジェクタ及びリアプロジェクションテレビジョン又はこれに類するもののために使用されるように、短い電極間隔を有する放電管を有している。
【背景技術】
【0002】
上に述べた放電ランプの作動時には極めて高い温度が生じる。放電管は放電室の外部では約1000℃にまで加熱される。放電管のシールされた区分の温度はこれよりも約500℃低い。放電室からの間隔が大きい程、それだけ温度は低くなる。この場合に、問題はガラス内に封入されておらず、空気に接触する給電部の部分である。給電部はモリブデンワイヤより成っている。400℃の温度を超えるとモリブデンは腐食する。腐食の原因は、空気中酸素によるモリブデンの酸化である。これにより、耐用寿命の範囲内で比較的多くのランプが故障する。それ故、まさにランプの出力が高い場合(>200W)には、バルブネックのシール区分を比較的長くする(>20mm)ことが不可欠である。このことはモリブデン・給電ワイヤの領域内の温度を下げるが、しかしながら、ランプデザインを著しく制限する。
【0003】
モリブデンワイヤの温度は、放電管のシール区分の端部では放電室からの間隔の増大に伴い低下する。すなわち、温度を低下させるためにはシール区分及びモリブデンシートを延長することができる。ランプ出力がわずかな場合(100〜120W)には、この措置でまだ十分である。しかしながら、ランプ出力がより高い場合(200〜250W)にはこのことはもはやいえない。この場合には、例えば、ノイズ発生の欠点を伴う空気流により得ることができるようなアクティブな冷却が不可欠である。このためには、しばしばスリットがリフレクタの外側にフライス加工され、これにより、強制冷却によって直接の空気流が可能となる。しかしながら、幾つかの場合にはリフレクタジオメトリがより長い放電管を可能にしない。しかしながら、放電管を短縮した場合には温度が過度に上昇する。この場合には、例えばヨーロッパ特許庁特許公開第0551939号明細書に記載のように、モリブデンの適宜な被覆層によって、幾らか改善された熱的な抵抗力を達成することができる。これにより、この領域の温度は450℃に上昇され得る。この領域の意図的な冷却を可能にする補助手段、例えば金属薄板を取り付けることもでき(ヨーロッパ特許庁特許公開第1158354号明細書参照)、この金属薄板はモリブデンワイヤにスポット溶接され、より良好な熱の搬出ために働く。
【特許文献1】ヨーロッパ特許庁特許公開第0551939号明細書
【特許文献2】ヨーロッパ特許庁特許公開第1158354号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の課題は、冒頭で述べた形式のリフレクタ・高圧放電ランプを改良して、給電部の酸化が阻止されるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、リフレクタ高圧放電ランプが、石英ガラスより成るガス密な放電管から成っており、この放電管に、放電バルブのカバーに直線上に取り付けられた2つのネックが設けられており、これらのネック内に、タングステンより成るそれぞれ1つの電極が、シールシートを介してガス密に封入されており、少なくとも1つの不活性ガス、必要に応じて金属ハロゲン化物及び必要に応じて水銀より成る充填材が設けられており、放電管から放出された光を収集し、収束し、かつ給電線を貫通案内するためのリフレクタが設けられており、このリフレクタに、放電管を保持するための孔が設けられており、透光性の材料より成るカバーディスクが設けられている形式のものにおいて、リフレクタと放電管との間の室がガス密に閉じられており、不活性ガス又は不活性ガス混合物により充填されていることにより解決される。
【発明の効果】
【0006】
この場合にリフレクタと放電管との間の室の充填材は、高電圧に対して絶縁破壊強さのあるガス、有利には純粋な窒素より成っている。窒素のほかには、リフレクタと放電管との間の室の充填材は六弗化硫黄より成っていてもよい。有利には、不活性ガス混合物も可能であり、この不活性ガス混合物の主成分は窒素及び/又は六弗化硫黄であり、副成分は不活性ガスである。
【0007】
不活性ガス又は不活性ガス混合物の充填圧は、有利には1×10hPaより小さいか、又はこれに等しい。
【0008】
これらのリフレクタ・高圧放電ランプではリフレクタはガラス、ガラスセラミック、セラミック又は金属より成っている。リフレクタのためのカバーとして設けられたディスクはリフレクタにガス密に結合されており、この場合にシールとしてはガラス又はシリコーンをベースとした接着剤、エポキシ樹脂又はビスマレイミド類が設けられていてよい。
【0009】
リフレクタと放電ランプとの間の室内の不活性ガス雰囲気の漏出を阻止するためには、さらに放電管の保持部及び給電線の貫通案内部のためにリフレクタ内に設けられた孔が、ガラス又はシリコーンをベースとした接着剤、エポキシ樹脂又はビスマレイミド類により気密に閉じられている。
【0010】
付加的には、リフレクタと放電管との間の室内には、ガス相で可能な酸化性の成分を自身に結合させるゲッタが配置されていてよい。
【0011】
本発明により、酸化が生じることなしに給電部の領域内の温度を任意に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態を図面につきさらに詳しく説明する。
【0013】
図1は、リフレクタ・高圧放電ランプの第1実施例を示している。このリフレクタ・高圧放電ランプは、石英ガラスより成る高圧ガス放電ランプ1と、反射性の被覆層8aを有する、ガラスより成るリフレクタ8とから組み立てられている。このリフレクタ8は、光放出側でガラスより成るディスク9により閉鎖されている。このディスク9は、シリコーンより成る真空密な接着剤11により、周全体にわたってリフレクタ8に接着されている。リフレクタ8とディスク9との間の領域はガス密に閉じられており、1×10hPaの常温充填圧の窒素により充填されている。
【0014】
高圧放電ランプ1は、放電バルブ1aと、この放電バルブ1aに直径上に取り付けられた両方のシャフト1b,1cとにより組み立てられている。放電管はリフレクタ8の光学的な軸線に配置されており、一方のシャフト1cにより、リフレクタのネック領域内に設けられた中央の孔16内でケイ酸塩ベースのセラミックの接合剤10により固定されている。この接合剤10はネック領域の約50%を充填している。その後方ではネックはシリコーンより成る真空密の接着剤13によりガス密に閉鎖されている。放電バルブ1aの放電室2内には、直径上に向かい合ってタングステンより成る電極3が配置されている。これらの電極3は、タングステンより成るシールシート4a,4bを介して放電管1のシャフト1b,1c内に封入されている。シールシート4a,4bの外側の端部には、モリブデンより成る給電部6a,6bが溶接されており、この場合に一方の給電部6aの自由な端部はニッケルワイヤより成る別の給電線7に接続されており、かつリフレクタ8の中央の孔16の領域内の他方の給電部6bの自由な端部は、直接にベース14に接続されている。
【0015】
放電管1の放電室2は水銀5、金属ハロゲン化物及び不活性ガス混合物より成る充填材を有している。
【0016】
放電管への別の給電線7が側方の孔8bを通過しており、この孔8bはシリコーンより成る真空密な接着剤12によりガス密に閉鎖されており、この場合に給電線7は共に接着されている。
【0017】
図2は、リフレクタ・高圧放電ランプの第2実施例を示しており、図1によるリフレクタ・高圧放電ランプに広範囲に対応している。しかしながら、この構成ではリフレクタ8は側方の孔8b,8cを有している。放電管のシールされた領域内には気泡1dが位置しており、シャフト1bのこの領域の周囲には外側にワイヤフィラメント15が巻きつけられている。このワイヤフィラメント15は、ランプに不可欠な点火電圧を低減する役割を有している。ワイヤフィラメント15は第2の側方のリフレクタ孔8cを通過して案内されており、このリフレクタ孔8cはシリコーン12によりシールされている。
【0018】
図3によるリフレクタ・高圧放電ランプは、図2によるリフレクタ・高圧放電ランプとは次のこと、すなわち、ワイヤフィラメント15が側方の孔を通過してではなく、リフレクタネック16を通過して外側へ案内されていることにより異なっている。
【0019】
図4によるリフレクタ・高圧放電ランプは図1によるユニットに対応しているが、しかしながら、ベース及び側方の孔を有していない。放電ランプ1の、リフレクタネックに向いていない方の端部の給電部のための給電線は、ここでもリフレクタネック16の領域を通過して案内されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるリフレクタ・高圧放電ランプの第1実施例を側方から見た断面図である。
【図2】本発明によるリフレクタ・高圧放電ランプの第2実施例を側方から見た断面図である。
【図3】本発明によるリフレクタ・高圧放電ランプの第3実施例を側方から見た断面図である。
【図4】本発明によるリフレクタ・高圧放電ランプの第4実施例を側方から見た断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 高圧放電ランプ、 1a 放電バルブ、 1b,1c シャフト、 2 放電室、 3 電極、 4a,4b シールシート、 5 水銀、 6a,6b 給電部、 7 給電線、 8 リフレクタ、 8a 被覆層、 8b,8c 孔、 9 ディスク、 10 接合剤、 11 接着剤、 12 シリコーン、 13 接着剤、 14 ベース、 15 ワイヤフィラメント、 16 孔/リフレクタネック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフレクタ・高圧放電ランプであって、該リフレクタ・高圧放電ランプが、
石英ガラスより成るガス密な放電管(1)から成っており、該放電管(1)に、放電バルブ(1a)のカバーに直線上に取り付けられた2つのネック(1b,1c)が設けられており、該ネック(1b,1c)内に、タングステンより成るそれぞれ1つの電極(3)が、シールシート(4a,4b)を介してガス密に封入されており、少なくとも1つの不活性ガス、必要に応じて金属ハロゲン化物(5)及び必要に応じて水銀より成る充填材が設けられており、
前記リフレクタ・高圧放電ランプに、放電管(1)から放出された光を収集し、収束し、給電線(7)を貫通案内するためのリフレクタ(8)が設けられており、該リフレクタ(8)に、放電管(1)を保持するための孔が設けられており、透光性の材料より成るカバーディスク(9)が設けられている形式のものにおいて、
リフレクタ(8)と放電管(1)との間の室が、ガス密に閉鎖されており、不活性ガス又は不活性ガス混合物により充填されていることを特徴とする、リフレクタ・高圧放電ランプ。
【請求項2】
リフレクタ(8)と放電管(1)との間に設けられた室の充填材が、純粋な窒素より成っている、請求項1記載のリフレクタ・高圧放電ランプ。
【請求項3】
リフレクタ(8)と放電管(1)との間に設けられた室の充填材が、六弗化硫黄より成っている、請求項1記載のリフレクタ・高圧放電ランプ。
【請求項4】
リフレクタ(8)と放電管(1)との間に設けられた室の充填材が、不活性ガス混合物より成っており、該不活性ガス混合物の主成分が、窒素及び/又は六弗化硫黄であり、不活性ガス混合物の副成分が、不活性ガスである、請求項1記載のリフレクタ・高圧放電ランプ。
【請求項5】
不活性ガス又は不活性ガス混合物の充填圧が、1×10hPaより小さいか、又はこれに等しい、請求項1記載のリフレクタ・高圧放電ランプ。
【請求項6】
リフレクタ(8)が、ガラス、ガラスセラミック、セラミック又は金属より成っている、請求項1記載のリフレクタ・高圧放電ランプ。
【請求項7】
ディスク(9)とリフレクタ(8)との間の間隙が、ガラスにより気密に充填されている、請求項1記載のリフレクタ・高圧放電ランプ。
【請求項8】
ディスク(9)が、シリコーンをベースとした接着剤、エポキシ樹脂又はビスマレイミド類により、リフレクタ(8)に気密に接着されている、請求項1記載のリフレクタ・高圧放電ランプ。
【請求項9】
リフレクタ孔(8b、8c;16)が、ガラス又はシリコーンをベースとした接着剤、エポキシ樹脂又はビスマレイミド類により気密に閉じられている、請求項1記載のリフレクタ・高圧放電ランプ。
【請求項10】
リフレクタ(8)と放電管(1)との間の室内にゲッタが配置されており、該ゲッタが、ガス相で可能な酸化性の成分を自身に結合する、請求項1記載のリフレクタ・高圧放電ランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−302893(P2006−302893A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113678(P2006−113678)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(390009472)パテント−トロイハント−ゲゼルシヤフト フユール エレクトリツシエ グリユーラムペン ミツト ベシユレンクテル ハフツング (152)
【氏名又は名称原語表記】Patent−Treuhand−Gesellschaft fuer elektrische Gluehlampen mbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】