説明

リフロー半田付け装置の不活性ガス供給システムおよび不活性ガス供給方法

【課題】不活性ガスの消費量を削減できるリフロー半田付け装置の加熱炉内への不活性ガス供給システムを提供する。
【解決手段】本発明の不活性ガス供給システムは、加熱炉内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段、加熱炉内の雰囲気温度を設定する雰囲気温度設定手段、加熱炉内雰囲気の基準温度を設定する基準温度設定手段、加熱炉へ供給される不活性ガスの基準量を設定する不活性ガス基準量設定手段および該雰囲気温度と該基準温度との差および該基準量に基づいて、加熱炉内雰囲気を低酸素濃度に維持できる不活性ガス供給量を演算し、不活性ガス供給手段の加熱炉内への不活性ガス量を調整する演算調整手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板等の基板に電子部品等の部品を半田付けするリフロー半田付け装置の加熱炉内への不活性ガス供給システムおよびこのシステムを使用した不活性ガス供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の各種回路が構成されている基板、例えばプリント基板に対して、各種回路を構成するための電子機器の実装を行う技術がある。実装されたチップ部品等の電子部品は、プリント基板の配線部に対して半田付けにより電気的に接続を行うが、このような半田付けの技術として、リフロー半田付けが通常行われている。リフロー半田付けは、プリント基板の所定の部位に対してクリーム半田等を塗布した後に、これらのプリント基板、電子部品等からなる半田付け対象物のワークを加熱炉(リフロー炉)内に搬送し、プリント基板の半田付け部を加熱して、プリント基板と電子部品を半田付けする技術である。
【0003】
このようなリフロー半田付けを実施するリフロー半田付け装置は、プリント基板を搬送するコンベアが取付けられたリフロー半田付け装置本体の加熱炉内に、コンベアの搬送方向に並べられた予熱ゾーン、中間加熱ゾーン、リフロー加熱ゾーンおよび冷却ゾーンを有し、これらのゾーンに夫々設けられた加熱手段でプリント基板及びその上に搭載された電子部品全体(ワーク)を加熱するものである(特許文献1)。
なお、中間加熱ゾーンや冷却ゾーンは特に設けないこともある。
【0004】
予熱ゾーンはワークを急速に加熱する昇温ゾーン、中間加熱ゾーンは、ワークの各部の温度を均一にして、所定の予熱温度にまで加熱するゾーン、リフロー加熱ゾーンは、半田溶融温度を超える温度までワークを加熱してワークの基板と電子部品等を半田付けする加熱ゾーン、冷却ゾーンは半田付け後のワークを冷却するゾーンである。
【0005】
ワークを加熱する手段としては、熱風による対流加熱するものと、パネルヒータ等の赤外線による輻射加熱するもの、さらにはそれらの加熱を併用するものとが知られている。
また、冷却ゾーンでは、リフロー加熱ゾーンから搬送されるワークをプロペラファンなどの送風機により送風して冷却している(特許文献1参照)。また、これに、クーラーなどの冷房機器を冷却ゾーンに設けて冷却能力を高めることもある。
【0006】
リフロー半田付けは、炉内雰囲気が空気であると、クリーム半田や基板状の銅箔等の表面が酸化するために良好な半田付けできなくなる。このため、通常、低酸素化雰囲気で行われるが、この雰囲気を維持するために不活性ガス、一般には窒素ガス(Nガス)が炉内に供給されている。
炉内の酸素濃度は、クリーム半田に含まれるフラックスの種類や量やワークによってもことなるが、およそ100〜1000ppmの範囲にすることが求められる。
【0007】
ところで近年、環境問題がクローズアップされ、半田付けに使用されるクリーム半田の半田として、従来のSn−Pnから錫・銀系半田やインジウム系の鉛フリーの半田が使用されるようになってきた。
【0008】
従来の鉛入り半田を使用する場合、半田の融点が約180℃、リフロー温度が約220℃であるが、錫・銀系の鉛フリー半田では、半田の融点が約220℃、リフロー温度が240℃、インジウム系半田では、融点は約206℃、リフロー温度は約230℃である。
【0009】
このように、使用する半田材料やフラックスによりリフロー温度は異なり、最近では、鉛フリー半田の使用が普及していることや生産効率のアップを図ることなどにともない、加熱炉の雰囲気温度の設定値はさらに上昇しており、炉内雰囲気の設定温度が300℃域でのリフロー半田付けも行われている。
【0010】
一方、半田付けの際には半田や部品の酸化や酸化防止を目的とし、不活性ガスとして一般には窒素ガス(Nガス)を炉内に充満させ、雰囲気を一定の酸素濃度以下に低下させているが、窒素ガスなどの不活性ガスは比較的高価であり、その消費量を削減することが望まれていた。
【0011】
しかし、前述したように、リフロー半田付け装置の炉内雰囲気の設定温度が上昇傾向にあるにもかかわらず、通常、操業では不活性ガスの供給量は一定に保持しおり、この設定温度を考慮して、不活性ガス(窒素ガス)の供給量(消費量)を低減することは行われていなかった。
すなわち、リフロー半田付け装置は、使用される半田材料、フラックスや部品の特性に応じて、加熱炉における最適なリフロー温度は異なり、前述したように、その温度は上昇傾向にあるにもかかわらず、炉内へ供給される不活性ガス供給量は、従来では、一定の温度条件に合わせて、例えば一般的な鉛フリー半田の融点(217℃程度)を考慮して260℃程度の炉内雰囲気温度を基準にして、一定に保たれていた。その結果、不活性ガスを必要以上に炉内へ供給し、無駄に消費していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−133718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、従来のリフロー半田付け装置の使用状況では、炉内の設定温度がより高い温度に設定される場合でも、不活性ガスの供給量を調整することはなく、不活性ガスが無駄に消費されていた。
本発明の目的は、このような問題を解決するリフロー半田付け装置の加熱炉内への不活性ガス供給システムおよび供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、炉内の気体(空気)が炉内雰囲気温度の上昇にともない体積が膨張することに着目し、不活性ガスを一定量供給した場合、炉内雰囲気温度が上昇しているほど、炉内の酸素濃度が低下することに着目し、上記の課題を解決するために、本発明において以下の手段を採用する。
[1]リフロー半田付け装置の加熱炉内への不活性ガスを供給するリフロー半田付け装
置の不活性ガス供給システムであって、加熱炉内に不活性ガスを供給する不活性
ガス供給手段、加熱炉内の雰囲気温度を設定する雰囲気温度設定手段、加熱炉内
雰囲気の基準温度を設定する基準温度設定手段、加熱炉へ供給される不活性ガス
の基準量を設定する不活性ガス基準量設定手段および該雰囲気温度と該基準温度
との差および該基準量に基づいて、加熱炉内雰囲気を低酸素濃度に維持できる不
活性ガス供給量を演算して、不活性ガス供給手段の加熱炉内へ供給する不活性ガ
ス量を調整する演算調整手段を備えたことを特徴とする、不活性ガス供給量を低
減することができるリフロー半田付け装置の不活性ガス供給システム。
[2]前記リフロー半田付け装置の加熱炉が少なくとも予熱ゾーンと加熱ゾーンを備
え、前記不活性ガス供給手段が加熱ゾーンに不活性ガスを供給し、前記雰囲気温
度設定手段が加熱ゾーンの設定温度であり、前記基準温度および基準量がそれぞ
れ加熱ゾーンの基準温度、加熱ゾーンの基準量であることを特徴とする、[1]
に記載の不活性ガス供給量を低減することができるリフロー半田付け装置の不活
性ガス供給システム。
[3]前記加熱炉の炉内雰囲気を低酸素濃度にすることを特徴とする、[1]に記載の
不活性ガス供給量を低減することができるリフロー半田付け装置の不活性ガス供
給システムによる不活性ガス供給方法。
[4]前記加熱ゾーン内雰囲気を低酸素濃度にすることを特徴とする、[2]に記載の
不活性ガス供給量を低減することができるリフロー半田付け装置の不活性ガス供
給システムによる不活性ガス供給方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、リフロー半田付け装置の加熱炉内の雰囲気を低酸素濃度に維持するために供給される不活性ガスの供給量を、設定された炉内雰囲気温度と基準温度の差に応じて調整することにより、不活性ガスの消費量を削減できた。しかも、このために格別に複雑な手段を必要としないで、低コストで不活性ガスの消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】不活性ガス(窒素ガス)供給量を一定として、炉内(加熱ゾーン)雰囲気の温度を変えた場合の酸素濃度の推移を示したものである。
【図2】加熱炉の炉内雰囲気の温度を260℃と350℃に設定して、ワークである基板を10枚連続して炉内へ搬送したときの酸素濃度の推移を示したものである。
【図3】本発明における不活性ガス供給量算出過程の基本的なチャート図を示す。
【図4】本発明が適用されるリフロー半田付け装置の実施形態の縦断面図および本発明の不活性ガス供給システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
リフロー加熱装置の加熱炉においては、炉内の雰囲気温度が上昇すると、炉内雰囲気(空気)は膨張し(シャルルの法則により1℃の上昇で、1/273膨張する)、ここにほぼ一定温度の不活性ガスを供給する場合、炉内の温度が上昇しているほど、炉内の酸素濃度は低下する。炉内へ供給される不活性ガスの温度は大気の温度等により変動するが、おおむね一定である。
【0018】
図1は、不活性ガスとして窒素ガスの供給量を同じ(一定)として、加熱炉の炉内雰囲気の温度を100℃→200℃→300℃→350℃と変えた場合の酸素濃度の推移を示したものである。
このように、炉内への窒素ガス(Nガス)供給量が同じであるため、気体の体積膨張に起因して炉内の酸素濃度が低下することが分かる。
【0019】
以上のことから、従来の鉛フリー半田を使用したときの炉内の設定温度(例えば、260℃程度)を基準温度として設定し、この基準温度での不活性ガス供給量(消費量)を基準量とし、この量を100%とすると、炉内温度が基準温度の260℃より高温に設定した場合は、炉内の酸素濃度を同じにするには不活性ガス供給量(消費量)は100%を下回り、不活性ガス供給量(消費量)を低減できることが分かる。
【0020】
ここでの不活性ガスの基準量は、この基準量の不活性ガスを炉内に供給すると、炉内の雰囲気の温度を基準温度に設定したとき、炉内雰囲気が目標とする低酸素濃度になるように決められるものである。ここで、低酸素濃度とは、通常は酸素濃度が1000ppm以下程度である。なお、目標とする低酸素濃度は半田材料、フラックスやワーク等により決まるものである。通常は酸素濃度が100〜1000ppmの範囲内程度である。
【0021】
例えば、加熱炉内の雰囲気の基準温度を260℃とし、このときの不活性ガス供給量(基準量)を200L/minとすると(以下、この使用条件を「基準の条件」ということがある)、炉内温度を260℃より高温のT℃に設定した場合の不活性ガス供給量は、200L×(273+260)/(273+T)の供給量(L/min)とすることで、基準の条件での炉内雰囲気の酸素濃度と同じ濃度にすることができる。
【0022】
仮に炉内雰囲気の設定温度を300℃、350℃とすると、基準の条件と同じ酸素濃度にするには、不活性ガス供給量は以下のようになる。
炉内雰囲気の設定温度が300℃の場合:
200L×(273+260)/(273+300)=186L/min
炉内雰囲気の設定温度が350℃の場合:
200L×(273+260)/(273+350)=171L/min
このように、加熱炉内の設定温度が上昇すると、炉内へ供給する不活性ガス量はより少ない量で、基準の条件における炉内雰囲気と同じ低酸素濃度を維持できることが導き出せる。
【0023】
図2は、窒素ガス(不活性ガス)の供給量を一定にして、炉内雰囲気の温度を260℃と350℃に設定し、ワークとしての基板を10枚連続して炉内へ搬送したときの酸素濃度の推移を示したものである。
この図からも分かるように、窒素ガス供給量を200L/minとした場合は、炉内の酸素濃度は、設定温度が基準温度の260℃では230ppmを前後しているが、設定温度350℃では80ppmを前後しており、前者の1/2以下の酸素濃度である。
【0024】
また、設定温度を350℃、窒素ガス供給量を171L/minとした場合でも、酸素濃度は150ppmを前後しており、設定温度260℃、窒素ガス供給量200L/minの場合、すなわち基準の条件の場合よりも低い。
そして、設定温度を260℃、窒素ガス供給量を171L/minとした場合は、酸素濃度は400ppmを前後しており、基準の条件の場合よりもかなり高い値となっている。
【0025】
このように、リフロー半田付け装置では、不活性ガスが加熱炉内に供給された場合、炉内雰囲気の設定温度が基準温度よりも高くなると、より少ない不活性ガス供給量で基準の条件での酸素濃度と同等の低酸素雰囲気を形成することができる。
【0026】
上記の知見に基づき、加熱炉の炉内雰囲気の基準温度、操業時の加熱炉の炉内雰囲気の設定温度と加熱炉の炉内へ供給する不活性ガスの基準量を定めることを前提とし、本発明の不活性ガス供給システムでは、加熱炉の雰囲気温度設定手段、基準温度設定手段および不活性ガスの基準量設定手段を設け、それぞれに基準温度、雰囲気温度および不活性ガス基準量を設定できるようにする。例えば、鉛フリー半田の融点(217℃)を考慮して炉内雰囲気の基準温度、不活性ガスの基準量をそれぞれ260℃、200L/minとする。
基準温度は、本発明のシステムが適用されるリフロー半田付け装置の炉内雰囲気の設定温度の中で最も低い温度を採用することが望ましい。
【0027】
そして、図3のチャート図に示すように、本発明の不活性ガス供給システムでは、炉内雰囲気の設定温度と基準温度の差および不活性ガスの基準量に基づいて、加熱炉に供給する不活性ガス量を演算し、不活性ガス供給手段から不活性ガス量を自動調整して、炉内へ供給することを可能にする演算調整手段が設けられている。
【0028】
本発明の不活性ガス供給システムとこのシステムが適用されるリフロー半田付け装置を図4に基づいて更に詳細に説明する。
なお、リフロー半田付け装置は、単一ゾーンからなる加熱炉を有するものと、予熱ゾーンやリフロー加熱ゾーン(以下、単に「加熱ゾーン」という)等の複数のゾーンからなる加熱炉を有するものがある。
以下の説明では、リフロー半田付け装置の加熱炉は複数のゾーンからなるものであり、加熱ゾーンに不活性ガスとして窒素ガスが供給される場合について説明する。
本発明の不活性ガス供給システムは、単一のゾーンからなる加熱炉を有するリフロー半田付け装置にも適用できる。また、複数のゾーンを有する加熱炉を有するリフロー半田付け装置の加熱ゾーン以外の、例えば予熱ゾーンに不活性ガスを供給する場合も同様に適用できる。
【0029】
図4において、1は半田付け対象のワーク(プリント基板、電子部品等)、2はワークを搬送する搬送コンベア、3は加熱炉であり、予熱ゾーン31、中間加熱ゾーン32、加熱ゾーン33および冷却ゾーン34からなる。ゾーン31〜33には、ワークを上下から加熱する上部および下部のヒーター4及びファン5が設けられている。冷却ゾーン34には、ワークに送風する上下のファン5が設けられている。なお、7は加熱ゾーンの雰囲気温度をモニターするための温度センサー、6は加熱ゾーン33の酸素濃度を監視するモニターのための雰囲気ガスサンプリング孔である。
【0030】
そして、本発明の不活性ガス供給システムは、不活性ガス供給手段8、加熱ゾーン雰囲気の基準温度を設定する基準温度設定手段10、操業時の加熱ゾーン雰囲気温度を設定する雰囲気温度設定手段11、加熱ゾーンへ供給される不活性ガスの基準量を設定する不活性ガス基準量設定手段12、雰囲気温度設定手段11から入力される雰囲気温度と基準温度設定手段10から入力される基準温度との差および基準量設定手段12から入力される基準量に基づいて、加熱ゾーン内の雰囲気を所定の低酸素濃度に維持できる不活性ガス供給量を演算し、この演算結果に基づいて不活性ガス供給手段8の加熱炉内への不活性ガス量を調整する演算調整手段9から構成される。
図4に示すリフロー半田付け装置では、不活性ガスの供給は加熱ゾーンの上部から行っているが、加熱ゾーン上部と下部の両方から行う場合もある。
【0031】
不活性ガス供給手段8は、不活性ガス供給源と連通する配管と、この配管に設けられ、演算調整手段9からの指令で操作される、不活性ガス量を調整する比例制御弁などで構成すればよい。また、配管には適宜、流量計を取り付けることもできる。
【0032】
本発明の不活性ガス供給システムでは、予め、基準温度設定手段10、雰囲気温度設定手段11および不活性ガス基準量設定手段12にそれぞれ基準温度、雰囲気温度と基準ガス供給量が設定される。
なお、加熱ゾーンの温度は、上記の操業時の加熱ゾーン雰囲気温度を設定する雰囲気温度設定手段11の設定温度に応じて、ここには記載していない温度制御装置により、該設定温度になるように制御される。
不活性ガス基準量の値は、加熱ゾーンの炉内温度がこの基準温度に設定された場合、炉内雰囲気が所定の低酸素濃度になるように予め実験等により求められているものである。
【0033】
リフロー半田付け装置にワークが搬送されて、半田付けが開始されると、演算調整手段9は、基準設定温度と雰囲気温度設定手段11から入力された加熱ゾーンの雰囲気温度を比較して、両者の差に基づいて削減できる不活性ガス量を演算して、この量を基準不活性ガス供給量から差し引いた不活性ガス供給量を演算して求め、不活性ガス供給手段の不活性ガス供給量がこの値になるよう、不活性ガス供給手段8の例えば比例制御弁等に信号を送り、不活性ガス供給量を自動調整する。
【実施例】
【0034】
図4に示す、加熱炉が4つのゾーンに分割されているリフロー半田付け装置リフロー半田付け装置を使用して、不活性ガスとして窒素ガスを炉内に供給し低酸素雰囲気においてリフロー半田付けを行った。
【0035】
ワークとして、160×160×1.6mmの基板を搬送した。
加熱炉内のリフロー加熱ゾーンで半田付けが行われるときの目標酸素濃度を300ppm以下とした。
基準設定温度と基準窒素ガス供給量をそれぞれ260℃、200L/minとして、加熱ゾーンの雰囲気の設定温度を260℃、350℃の2水準にして、半田付けを行った。表1にその結果を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
比較例1は加熱ゾーンの設定温度を260℃、窒素ガス供給量が200L/minであり、基準の条件で操業が行われている。この操業は従来例に相当するものであり、加熱ゾーンの実測した酸素濃度は目標とする300ppm以下を達成している。
そして、比較例2では、加熱ゾーンの実測した酸素濃度が100ppm以下であり、目標の酸素濃度を大きく下回っており、過剰に窒素ガスを消費していることが分かる。
【0038】
これに対して、本発明例では、加熱ゾーンの設定温度を350℃として、本発明を適用して、比較例1、2に比べて少ない窒素ガス消費量で、加熱ゾーンの酸素濃度の実測値は200ppm以下を達成しており、基準の条件で行われる比較例1と遜色のない低酸素雰囲気を形成できている。本発明例の窒素ガスの削減量は、比較例1と比較すると13920lL(=96000L−82080L)になる。
【0039】
上記の結果からも分かるように、本発明の不活性ガス供給システムを採用することにより、不活性ガスの消費を削減することができる。
なお、実施例では、複数の加熱ゾーンからなる加熱炉を有するリフロー半田付け装置を対象としたが、単一の損からなる加熱炉を有するものについても同様の結果が得られる。また、前者の場合、加熱ゾーン以外のゾーンに不活性ガスを供給する場合にも本発明は同様の結果を得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ワーク(半田付け対象物)
2 搬送コンベア
3 加熱炉
31 予熱ゾーン
32 中間加熱ゾーン
33 加熱ゾーン
34 冷却ゾーン
4 (上部、下部)ヒーター
5 (上部、下部)ファン
6 雰囲気ガスサンプリング孔
7 雰囲気温度を検知する温度センサー
8 不活性ガス供給手段
9 演算調整手段
10 基準温度設定手段
11 雰囲気温度設定手段
12 不活性ガス基準量設定手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフロー半田付け装置の加熱炉内への不活性ガスを供給するリフロー半田付け装置の不活性ガス供給システムであって、加熱炉内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段、加熱炉内の雰囲気温度を設定する雰囲気温度設定手段、加熱炉内雰囲気の基準温度を設定する基準温度設定手段、加熱炉へ供給される不活性ガスの基準量を設定する不活性ガス基準量設定手段および該雰囲気温度と該基準温度との差および該基準量に基づいて、加熱炉内雰囲気を低酸素濃度に維持できる不活性ガス供給量を演算して、不活性ガス供給手段の加熱炉内へ供給する不活性ガス量を調整する演算調整手段を備えたことを特徴とする、不活性ガス供給量を低減することができるリフロー半田付け装置の不活性ガス供給システム。
【請求項2】
前記リフロー半田付け装置の加熱炉が少なくとも予熱ゾーンと加熱ゾーンを備え、前記不活性ガス供給手段が加熱ゾーンに不活性ガスを供給し、前記雰囲気温度設定手段が加熱ゾーンの設定温度であり、前記基準温度および基準量がそれぞれ加熱ゾーンの基準温度、加熱ゾーンの基準量であることを特徴とする、請求項1に記載の不活性ガス供給量を低減することができるリフロー半田付け装置の不活性ガス供給システム。
【請求項3】
前記加熱炉の炉内雰囲気を低酸素濃度にすることを特徴とする、請求項1に記載の不活性ガス供給量を低減することができるリフロー半田付け装置の不活性ガス供給システムによる不活性ガス供給方法。
【請求項4】
前記加熱ゾーン内雰囲気を低酸素濃度にすることを特徴とする、請求項2に記載の不活性ガス供給量を低減することができるリフロー半田付け装置の不活性ガス供給システムによる不活性ガス供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−142354(P2012−142354A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292498(P2010−292498)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(592151122)日本アントム株式会社 (7)
【Fターム(参考)】