説明

リンクプレートチェーン

特に無段式に変速比調節可能な円錐形プーリ式巻掛け式伝動装置に用いられるリンクプレートチェーン(1)であって、該リンクプレートチェーン(1)の、リンクプレートパッケージにより形成された個々のチェーンリンク(15)を結合するロッカジョイント(3)が、リンクプレート(2)に設けられた切欠き(10)に押し込まれたロッカピン(4,5)のペアとして形成されており、該ロッカピン(4,5)が、互いに支持される転動面(12)を備えている。リンクプレートチェーン(1)の長手方向で隣接する3つのチェーンリンク(15)に属する、リンクプレートチェーン(1)の横方向で互いに隣り合って位置するそれぞれ3つのリンクプレート(101,102,103)が、1つのリンクプレート部分列(20)を形成しており、リンクプレート部分列(20)の、リンクプレートチェーン(1)の横方向で外側のリンクプレートが、隣接する別のリンクプレート部分列(20S)の、横方向で隣接する外側のリンクプレート(107)と同じチェーンリンク(15)に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に無段式に変速比調節可能な円錐形プーリ式巻掛け式伝動装置に用いられるリンクプレートチェーンであって、該リンクプレートチェーンの、リンクプレートパッケージにより形成された個々のチェーンリンクを結合するクレードルジョイントもしくはロッカジョイント(Wiegegelenk)が、リンクプレートに設けられた切欠き内に押し込まれたクレードル部材もしくはロッカピンのペアとして形成されており、該ロッカピンが、互いに支持された転動面を備えている形式のものに関する。
【0002】
リンクプレートチェーンは、多くの実施形態の形で知られている。たとえば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3027834号明細書には、リンクプレートチェーンの2列反復配列型リンクプレートユニット(Zweilaschenverband)および3列反復配列型リンクプレートユニット(Dreilaschenverband)が記載されている。さらに欧州特許第0800018号明細書には、このような形式のリンクプレートが使用され得る無段式に変速比調節可能な円錐形プーリ式巻掛け式伝動装置の1例が記載されている。
【0003】
このような形式のリンクプレートチェーンには、音響的な特性を改善するために、互いに異なるピッチの個々のチェーンリンクが備えられる。つまり短いピッチと長いピッチとが存在する連結したチェーンリンク配列が行われる。このためには、特に3列反復配列型リンクプレートユニットでは、個々のリンクプレートが互いに引っかかることを阻止することが必要となる。このためには、いくつかのリンクプレートにいわゆるオーバラップ突端(Ueberlappungszipfel)を設けることが知られている。この場合には、一般に4種類のリンクプレートタイプ、すなわちオーバラップ突端のない短いリンクプレートタイプ、オーバラップ突端を有する短いリンクプレートタイプ、オーバラップ突端のない長いリンクプレートタイプおよびオーバラップ突端を有する長いリンクプレートタイプが必要とされる。リンクプレートタイプ列において単独の長いリンクプレートしか列に組み入れられない場合でも、つまり長いリンクプレートから成るチェーンリンクの後に、短いリンクプレートから成る少なくとも1つのチェーンリンクが続く場合でも、3種類のリンクプレートタイプ、すなわちオーバラップ突端のない短いリンクプレートと、オーバラップ突端を有する短いリンクプレートと、長いリンクプレートとが必要となる。
【0004】
本発明の課題は、リンクプレートチェーンの内部でのリンクプレートの配置、特に短いリンクプレートと長いリンクプレートとの互いに異なるピッチを有するリンクプレートの配置を改良して、オーバラップ突端を不要にすることのできる配置を提供することである。本発明の別の課題は、必要とされるリンクプレートタイプの数を減じることである。
【0005】
この課題は、請求項1に記載のリンクプレートチェーンにより解決される。すなわち、この課題は、特に無段式に変速比調節可能な円錐形プーリ式巻掛け式伝動装置に用いられるリンクプレートチェーンであって、該リンクプレートチェーンの、リンクプレートパッケージにより形成された個々のチェーンリンクを結合するロッカジョイントが、リンクプレートに設けられた切欠き内に押し込まれたロッカピンのペアとして形成されており、該ロッカピンが、互いに支持された転動面を備えている形式のものにおいて、リンクプレートチェーンの長手方向で隣接した3つのチェーンリンクに属する、リンクプレートチェーンの横方向で相並んで位置するそれぞれ3つのリンクプレートが、1つのリンクプレート部分列を形成しており、リンクプレート部分列の、リンクプレートチェーンの横方向で外側のリンクプレートが、隣接した別のリンクプレート部分列の、横方向で隣接した外側のリンクプレートと同じチェーンリンクに配置されていることを特徴とするリンクプレートチェーンによって解決される。
【0006】
この場合、リンクプレート部分列とは、長手方向で隣接し合ったチェーンリンクの、相並んで位置しかつロッカジョイントにおいて互いにオーバラップしている複数のリンクプレートを意味する。この場合、リンクプレートチェーンは、同形式のリンクプレート部分列、またはリンクプレートチェーンの長手方向に関して鏡像対称的に配置されたリンクプレート部分列から構成される。リンクプレート部分列の概念を、複数のリンクプレート部分列からモジュール式にリンクプレートチェーン全体を構成することを可能にするように、できるだけ少数のリンクプレートがまとめられた(任意の)部分量形成体(Teilmengenbildung)とみなすこともできる。リンクプレートチェーンの横方向とは、ロッカジョイントに沿った方向を意味しており、つまりロッカジョイントのジョイント軸線に対して軸方向の方向を意味している。リンクプレートチェーンの長手方向とは、このリンクプレートチェーンが力を伝達することのできる方向である。外側のリンクプレート部分列の外側のリンクプレートは、当然ながら隣接したリンクプレートを有しておらず、この外側のリンクプレートは、リンクプレートチェーンのアウタリンクプレートを形成する。
【0007】
有利な構成では、リンクプレート部分列の、リンクプレートチェーンの長手方向(「チェーン走行方向」とも呼ばれる)で外側のリンクプレートが、リンクプレートチェーンの長手方向で隣接した別のリンクプレート部分列の真ん中のリンクプレートによってオーバラップされる。すなわちリンクプレート部分列の真ん中のリンクプレートにより、隣接し合ったリンクプレート部分列の外側のリンクプレートは、ロッカジョイントもしくはロッカピンに沿った移動運動を実施することができず、またリンクプレートチェーンの横方向および長手方向から形成された平面に対して垂直な軸線を中心とした旋回運動をも実施することができなくなる。
【0008】
別の有利な構成では、それぞれ同じチェーンリンクに属する隣接し合ったリンクプレート部分列が、リンクプレートチェーンの長手方向に延びる平面に対して鏡像対称的に配置されている。リンクプレートチェーンの横方向で相並んで位置し、かつそれぞれ3つの同じチェーンリンクに属する複数のリンクプレート部分列を考えると、これらのリンクプレート部分列は、いわばジグザク状に配置されており、すなわち相並んで位置するリンクプレート部分列は、互いに対してそれぞれ鏡像対称的である。
【0009】
さらに有利な別の構成では、チェーンリンクが、リンクプレートチェーンの長手方向で測定した、ジョイントのジョイント軸線同士の相互間隔によって規定されたピッチを有しており、リンクプレートチェーンが、少なくとも1つの短いピッチを有するチェーンリンクと、長いピッチを有するチェーンリンクとから成っており、共通のチェーンリンクに属するリンクプレート部分列の少なくとも一部の真ん中のリンクプレートが、長いピッチを有している。すなわち、リンクプレート部分列の一部は、同じピッチを有するリンクプレートから成っており、リンクプレート部分列の別の部分は、短いピッチを有するリンクプレートと、長いピッチを有するリンクプレートとの混合から成っている。この場合、長いピッチを有するリンクプレートはそれぞれ、リンクプレート部分列の、長手方向で見て真ん中に位置している。つまり、このようなリンクプレート部分列は、長いピッチを有する1つのチェーンリンクが、リンクプレートチェーンの長手方向で見て両側で短いピッチを有するチェーンリンクによって隣接されるようなチェーンリンクに属している。短いピッチとは、ロッカジョイント同士の間隔が、長いピッチの場合よりも小さいことを意味している。
【0010】
さらに有利な別の構成では、リンクプレートチェーンが、2つのタイプのリンクプレート、すなわち短いピッチを有するリンクプレートと、長いピッチを有するリンクプレートを有している。この場合、付加的な特殊化されたチェーンリンクは不要にされる。さらに別の有利な構成では、リンクプレートチェーンが、25%よりも大きいピッチジャンプを有している。ピッチジャンプとは、チェーンリンク同士の間のピッチの差、つまりは短いピッチを有するリンクプレートと長いピッチを有するリンクプレートとの間のピッチの差を意味する。本発明によるリンクプレートチェーンは、2つよりも多いピッチを有していてもよく、つまりたとえば短いピッチ、中間のピッチおよび長いピッチを有するチェーンリンクまたは任意の数のピッチを有していてもよい。リンクプレートチェーン内部での本発明によるリンクプレートの配置により、ピッチ毎に1つのリンクプレートタイプを使用することが可能になる。すなわち、リンクプレートチェーンが、たとえば5種類のピッチを有している場合には、5種類のリンクプレートが必要となる。
【0011】
冒頭で挙げた問題は、無段式に変速比調節可能な円錐形プーリ式巻掛け式伝動装置における本発明によるリンクプレートチェーンの使用によっても解決される。
【0012】
以下に本発明の実施例を添付の図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】自体公知のリンクプレートチェーンを上から見た図である。
【図2】図1に示したリンクプレートチェーンの側面図である。
【図3】3列反復配列型リンクプレートユニットの自体公知のリンクプレートチェーンを上から見た図である。
【図4】互いに異なる長さのリンクプレートを有する図3に示したリンクプレートチェーンを上から見た図である。
【図5】オーバラップ突端を有する自体公知のリンクプレートチェーンを上から見た図である。
【図6】図5によるリンクプレートチェーンの側面図である。
【図7】オーバラップ突端を有する自体公知のリンクプレートチェーンの別の実施形態を上から示した図である。
【図8】図7に図示のリンクプレートチェーンからオーバラップ突端を省いたリンクプレートによる可能な傾倒運動を示す図である。
【図9】本発明によるリンクプレートチェーンを上から見た図である。
【0014】
図1は、円錐形プーリ式巻掛け式伝動装置(continuous variable transmiddion;CVT)に用いられる巻掛け手段として使用される自体公知のリンクプレートチェーン1の一部を上から見た図である。このような円錐形プーリ式巻掛け式伝動装置は、それぞれプーリを形成する2つの円錐形ディスクペアを有しており、両円錐形ディスクペアを巡ってリンクプレートチェーンが循環する。このような円錐形プーリ式巻掛け式伝動装置の変速比を連続的に調節するためには、円錐形ディスクペアの円錐形ディスク同士の間の間隔が互いに逆向きに調節される。
【0015】
このようなリンクプレートチェーン1は、個々のリンクプレート2から構成されている。これらのリンクプレート2は、リンクプレートチェーンの長手方向で相並んで延びる列I,II,III等内に配置されている。隣接する列I,II,III等の少なくともいくつかのリンクプレート2は、互いに対してずらされて配置されているので、リンクプレートチェーン1を横方向に貫通して延びるロッカジョイント3は、リンクプレートチェーン1の長手方向ユニットおよび横方向ユニットを生ぜしめる。リンクプレートチェーン1の長手方向Lに対して直交する横方向で相並んで位置する、同じロッカジョイント3を有するリンクプレート2は、リンクプレートスタック15を形成する。このリンクプレートスタック15は、チェーンリンク15とも呼ばれる。
【0016】
図2は、図1に示したリンクプレート2aの側面図を示している。図面から判るように、全体を符号「3」で示された各ロッカジョイントは、ロッカピン4,5のペアにより形成される。それぞれのロッカピン4,5の互いに離反した側の側面6,7は、各リンクプレートに設けられた切欠き10の内面に接触している。図2では、ロッカピン4の側面6がリンクプレート2aの内面8に接触している。ロッカピン5の側面7は、リンクプレート2bの内面9に接触している。この場合、図2に示したリンクプレート2bは、隣接するリンクプレート2aの切欠き10を通じて見えている領域の右側の縁部を示すライン11により示されている。1つの単独の切欠き10の代わりに、リンクプレートが、各1つのロッカジョイントを収容するための互いに分離された2つの切欠きを有していてもよい。その場合、両切欠きは、図2のように長孔の形で形成されているのではなく、2つの個別の切欠きとして形成されている。各ロッカピンペア4,5の互いに接して向かい合った面は、転動面12を形成する。ロッカピンは、リンクプレートチェーンの湾曲時に、この転動面に沿って互いに転動する。互いに転動する2つのロッカピン4,5の2つの転動面12は、ロッカピン4,5に沿って形成された転動ライン14に沿って互いに接触している。
【0017】
チェーン長手方向でのロッカジョイント3の2つの回転軸線もしくは転動ライン14の間隔は、リンクプレートチェーン1のピッチTと呼ばれる。すなわち、ピッチTは、たとえばチェーンリンク15内部の2つの転動ライン14の間隔により表される。
【0018】
ロッカピン4,5の、リンクプレートチェーン1から側方に突出した端面13は、当付け面を形成する。この当付け面は、円錐形プーリ式巻掛け式伝動装置の円錐形ディスクの円錐面と摩擦接触する。
【0019】
図1は、いわゆる2列反復配列型リンクプレートユニットにおけるリンクプレートチェーン1を示している。このリンクプレートチェーンでは、リンクプレート2の配置が、それぞれ2つのピッチの後で繰り返されているか、またはチェーンの側方の方向で有利には2列毎に反復する。図1から判るように、ピッチTは、ピン(ロッカピン)の直径dの2倍と、リンクプレートの厚さDの2倍とに、連続し合ったリンクプレート間の小さな間隔を加算した値により規定される。
【0020】
図3に示したいわゆる3列反復配列型リンクプレートユニットを用いると、より小さなピッチTが得られている。この3列反復配列型リンクプレートユニットでは、パターンがそれぞれ3つのピッチの後で反復するか、または有利にはリンクプレートチェーンの横方向で3列毎に反復する。図3から判るように、3列反復配列型リンクプレートユニットにおいて、ピッチTは、ロッカピンの厚さの2倍もしくはピンの直径dの2倍に、リンクプレート2の厚さDと、リンクプレートとロッカジョイントもしくはロッカピンとの間の小さな間隔とを加算した値である。図3に示した3列反復配列型リンクプレートユニットは、図1に示した2列反復配列型リンクプレートユニットよりも小さなピッチTを有している。図4は、互いに異なる2つのピッチT、すなわち短いピッチTKと長いピッチTLとを有するリンクプレートチェーンの、図1および図3に類似した部分を示している。互いに異なるピッチTKおよびTLは、互いに異なる2種類のリンクプレート、すなわち短いリンクプレート2kおよび長いリンクプレート2lが使用されることにより可能となる。この場合、この短いリンクプレート2kと長いリンクプレート2lとは、実質的にリンクプレートチェーンの長手方向で測定された切欠き10(図2参照)の長さ、ひいてはリンクプレート2の全長の点でのみ互いに異なっている。互いに異なるピッチを有するリンクプレートチェーン1は、リンクプレートチェーンもしくは円錐形プーリの音響的な励振の理由、ひいては騒音快適性の理由から有利である。なぜならば、互いに異なるチェーンピッチ、ひいてはリンクプレートチェーン1内部の端面13の互いに異なる間隔により、単一音の励振が低減されるか、もしくは抑制され得るからである。
【0021】
図3に示したチェーンと同じ3列反復配列型リンクプレートユニットに配置されている、図4に示したリンクプレートチェーンの構成において生じる問題は、短いリンクプレートまたは長いリンクプレートであってよくかつ図4で見て最も上方のリンクプレート2kの右側に続いているリンクプレート2xが、リンクプレート2kに、隣接する列で右側に続いたリンクプレート2k1にもはやオーバラップしていないので、リンクプレート2xが、リンクプレートチェーン1の長手方向に対して直交する横方向で、ロッカジョイント3もしくはロッカピン4,5に対して側方に移動し得ることにある。
【0022】
リンクプレートスタック15内で個々のリンクプレートがこのように移動することを阻止するために、いくつかのリンクプレート2に、図5および図6に示したオーバラップ突端16を配置することが知られている。これに関して図5には、図1、図3および図4に相当するリンクプレートチェーン1の一部が上から見た平面図で図示されている。図6は、図2に類似した側面図を示している。図示されているのは、長いピッチTLかまたは短いピッチTKを有するリンクプレートスタックもしくはチェーンリンク15である。長いピッチTLを有するチェーンリンク15のリンクプレート2は、それぞれリンクプレート2lとして示されており、相応して短いピッチTKを有するチェーンリンク15のリンクプレート2は、リンクプレート2kとして示されている。図5に示したリンクプレート2は、付加的に、リンクプレート2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7として通し番号を付与されている。図5で符号「2.6」を有する長いリンクプレート2lzは、オーバラップ突端16を有しており、該オーバラップ突端16の形状は、図6の側面図から判る。符号「2.2」を有する長いリンクプレート2lzは、同じくオーバラップ突端16を有しているが、このオーバラップ突端16は、図6の側面図では遮蔽されているので見えていない。オーバラップ突端16により、隣接した列内の隣接したチェーンリンク15のリンクプレート、つまり符号「2.3」を有するリンクプレートとのオーバラップAが常に生ぜしめられるようになる。図5で符号「2.4」を有するリンクプレート2kzは、同様のオーバラップ突端16を有しているので、このオーバラップ突端16は、符号「2.2」を有するリンクプレート2lとのオーバラップBを常に有している。このようなオーバラップ突端16は、特に25%よりも多いピッチジャンプがある場合に必要とされる。ピッチジャンプとは、長いリンクプレートと短いリンクプレートとの長さの差、ひいては短いピッチTKと長いピッチTLとの差を意味している。つまりオーバラップ突端16により、特に長いリンクプレート2lの領域ではリンクプレートが側方へ移動し得ないようになり、これによりリンクプレートチェーン1の引っかかりが起こらなくなる。オーバラップ突端16の使用は、互いに異なる4種類のリンクプレートタイプ、すなわち短いリンクプレート2kと、オーバラップ突端を有する短いリンクプレート2kzと、長いリンクプレート2lと、オーバラップ突端を有する長いリンクプレート2lzとの使用を必要とする。図7に示したリンクプレート順序では、互いに異なる3種類のリンクプレートタイプにまで減らすことが可能である。
【0023】
短いピッチTK−長いピッチTL−短いピッチTKを有する典型的なリンクプレート配列もしくはピッチ配列が図示されている。この配列では、リンクプレートの引っかかりを阻止するために、短いリンクプレート2kzがオーバラップ突端16を備えている。オーバラップ突端16により、短いリンクプレート2k、2kzを有する隣接し合ったチェーンリンク15は側方に重なり合うように移動し得なくなり、こうしてリンクプレートチェーン1の引っかかりが生じなくなる。オーバラップ突端16が存在しないと、図8に示したようにリンクプレートの引っかかりが生じてしまう。図8に示した配列では、オーバラップ突端を有する短いリンクプレート2kzが、オーバラップ突端のない短いリンクプレート2kによって代えられている。図面から判るように、短いピッチを有する、1つの列中で隣接し合ったリンクプレート2kは回転してしまい(回転矢印17により示す)、こうして引っかかってしまう。同じように、隣接し合った列の隣接し合ったチェーンリンク15のリンクプレートが移動してしまい(矢印18で示す)、こうして引っかかりを生ぜしめてしまうことも考えられる。
【0024】
図9には、短いピッチTKを有するチェーンリンク15と、長いピッチTLを有するチェーンリンク15とを有する本発明によるリンクプレートチェーン1が示されている。このリンクプレートチェーン1は、互いに異なる2種類のリンクプレートタイプ、すなわち短いリンクプレート2kと長いリンクプレート2lとから成っている。このリンクプレートチェーン1ではオーバラップ突端16が不要にされているにもかかわらず、リンクプレート2k,2lの相互の引っかかりが確実に阻止される。短いリンクプレート2kは、短いピッチTKを有するチェーンリンク15を形成し、長いリンクプレート2lは、長いピッチTLを有する相応するチェーンリンク15を形成する。図9に実施例として示されているような本発明によるリンクプレート配列では、オーバラップ突端16を有するリンクプレート2の使用を不要にすることができる。こうして、互いに異なる2種類のピッチTL,TKを有する3列反復配列型リンクプレートユニットのリンクプレートチェーン1を製造することが可能となる。このリンクプレートチェーン1は、2種類のリンクプレートタイプからしか成っておらず、それにもかかわらず個々のリンクプレートの引っかかり(Verkanten)の危険が生じない。個々のリンクプレート2を容易に区別し、かつ図1〜図8で使用した符号に対してリンクプレート符号を容易に区別できるようにするために、図9のリンクプレートは、符号「101」から始まる通し番号を付与されている。図面から判るように、このリンクプレート配列は、3列反復配列型リンクプレートユニットである。この場合、たとえば短いピッチTKを有する短いリンクプレート2kであるリンクプレート101から始まって、リンクプレート102がオーバラップして続いている。この場合、このリンクプレート102は、長いピッチTLを有する長いリンクプレート2lである。このリンクプレート102にオーバラップしてリンクプレート103がさらに続いており、このリンクプレート103は短いピッチTKを有する短いリンクプレート2kである。リンクプレートチェーン1の長手方向において、これらのリンクプレートにリンクプレート2の同様の配列が続いている。これらのリンクプレート2は、短いリンクプレート2kに付いては「104」で、長いリンクプレート2lについては「105」で、短いリンクプレート2kについては「106」でそれぞれ示されている。リンクプレート101,104は、列Iに配置されており、リンクプレート102,105は列IIに配置されており、リンクプレート103,106は列IIIに配置されている。図9の図平面内でリンクプレートチェーンの長手方向で右側に向かって見て(長手方向の右側に向かう方向は、符号「19」を有する矢印により示されている、すなわち長手方向とは、矢印方向ならびに矢印方向とは逆向きの方向を意味する)、1つのロッカジョイント3に相並んでオーバラップして配置されたリンクプレート2は、それぞれ矢印21により示された上方に向かって積み重ねられている。すなわちリンクプレート102は、矢印21の方向にずらされてリンクプレート101にスタックされており、リンクプレート103は相応して矢印21の方向にずらされてリンクプレート102にスタックされている。このことはリンクプレート104,105,106によっても繰り返され、この場合リンクプレート104は、当然ながらリンクプレート103に対して、矢印21の方向とは逆の方向でずらされている。図9から判るように、ここではリンクプレート102,105である長いリンクプレート2lはそれぞれ、先行するリンクプレート部分列20もしくは後続のリンクプレート部分列20の最初のリンクプレートまたは最後のリンクプレートにオーバラップする。リンクプレート部分列20とは、リンクプレート2の、3列反復配列型リンクプレートユニットを形成するそれぞれ1つの配列セット、つまりたとえば、1つのリンクプレート部分列20を形成するリンクプレート101,102,103のセットならびに1つのリンクプレート部分列20’を形成するリンクプレート104,105,106のセットを意味する。この場合、長いリンクプレート102は、隣接したリンクプレート部分列20’の最初の短いリンクプレート、つまりリンクプレート104にオーバラップしている。相応して、リンクプレート105は、隣接したリンクプレート部分列20の最後の短いリンクプレート103、つまりリンクプレート103にオーバラップする。
【0025】
リンクプレートチェーンの、図9に矢印21により示されている横方向では、列I,II,IIIのリンクプレート部分列20,20’に、それぞれリンクプレート部分列20が続いている。これらのリンクプレート部分列20は、長手方向に延びる平面に関して、リンクプレート部分列20,20’に対して鏡像対称的に形成されている。リンクプレート101と同じチェーンリンク内のリンクプレート109を起点として長手方向で、リンクプレート部分列20の隣接したリンクプレートは、矢印21の方向ではなく、つまり図9で見て上方に向かってスタックされたリンクプレートではなく、矢印21とは逆の方向、つまり下方に向かってスタックされたリンクプレート108,107が続いている。リンクプレート107,108および109は、リンクプレートスタック20に対して鏡像対称的なリンクプレートスタック20Sを形成する。相応して、このリンクプレートスタック20Sに続いたリンクプレート110,111,112は、リンクプレートスタック20’に対して鏡像対称的に配置されたリンクプレートスタック20S’を形成する。
【0026】
このリンクプレートスタック内の長いリンクプレート、つまり図9ではリンクプレートスタック20内のリンクプレート102、リンクプレートスタック20’内のリンクプレート105、リンクプレートスタック20S内のリンクプレート108およびリンクプレートスタック20S’内のリンクプレート111はそれぞれ、隣接したリンクプレートスタックの短いリンクプレートとオーバラップするように配置されている。たとえばリンクプレート102は、隣接したリンクプレートスタック20’のリンクプレート104とオーバラップしている。リンクプレートスタック20Sのリンクプレート108は、隣接したリンクプレートスタック20S’のリンクプレート110とオーバラップしており、リンクプレートスタック20S’のリンクプレート111は、リンクプレートスタック20Sのリンクプレート107とオーバラップしている。このような配置により、いずれのリンクプレートもロッカジョイントに沿った移動運動または傾倒運動によって別のリンクプレートと引っかかる可能性を有さないことが保証されている。
【0027】
本発明によるリンクプレート配列は、1つのリンクプレート部分列20内に、短いリンクプレート、長いリンクプレート、そして再び短いリンクプレートの配列セットか、または3つの短いリンクプレートの配列セットを有している。
【0028】
たとえばリンクプレート103および107ならびにリンクプレート106および112においてそうであるように、リンクプレート部分列20は常に、リンクプレートチェーン1の横方向で外側のリンクプレートによって次のリンクプレート部分列20に完全に合致するように載着される。すなわち、リンクプレートチェーン1の横方向で隣接し合うリンクプレート部分列20のリンクプレートは、オーバラップして配置されているのではなく、リンクプレートチェーン1内で合致して配置されている。
【0029】
さらに、リンクプレートチェーンの内部のリンクプレートの上述した配列により、リンクプレートチェーンの横方向でそれぞれ外側に配置されたリンクプレートである、リンクプレートチェーンの各端部リンクプレートが短いリンクプレートであることが保証されている。
【符号の説明】
【0030】
1 リンクプレートチェーン
2 リンクプレート
2k 短いピッチTKを有するリンクプレート
2k 長いピッチTLを有するリンクプレート
3 ロッカジョイント
4 ロッカピン
5 ロッカピン
6 側面
7 側面
8 内面
9 内面
10 切欠き
11 ライン
12 転動面
13 端面
14 転動ライン
15 リンクプレートスタック/チェーンリンク
16 オーバラップ突端
17 矢印
18 矢印
19 矢印
20 リンクプレート部分列
20’ リンクプレート部分列
20S 鏡像対称的なリンクプレート部分列
20S’ 鏡像対称的なリンクプレート部分列
21 矢印
A,B オーバラップ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に無段式に変速比調節可能な円錐形プーリ式巻掛け式伝動装置に用いられるリンクプレートチェーン(1)であって、該リンクプレートチェーン(1)の、リンクプレートパッケージにより形成された個々のチェーンリンク(15)を結合するロッカジョイント(3)が、リンクプレート(2)に設けられた切欠き(10)に押し込まれたロッカピン(4,5)のペアとして形成されており、該ロッカピン(4,5)が、互いに支持された転動面(12)を備えている形式のものにおいて、リンクプレートチェーン(1)の長手方向で隣接した3つのチェーンリンク(15)に属する、リンクプレートチェーン(1)の横方向で相並んで位置するそれぞれ3つのリンクプレート(101,102,103)が、1つのリンクプレート部分列(20)を形成しており、リンクプレート部分列(20)の、リンクプレートチェーン(1)の横方向で外側のリンクプレートが、隣接した別のリンクプレート部分列(20S)の、横方向で隣接した外側のリンクプレート(107)と同じチェーンリンク(15)に配置されていることを特徴とするリンクプレートチェーン。
【請求項2】
リンクプレート部分列(20)の、リンクプレートチェーン(1)の長手方向で外側のリンクプレート(103)が、リンクプレートチェーンの長手方向で隣接した別のリンクプレート部分列(20’)の真ん中のリンクプレート(105)によってオーバラップされる、請求項1記載のリンクプレートチェーン。
【請求項3】
それぞれ同じチェーンリンク(15)に属する隣接し合ったリンクプレート部分列(20,20S)が、リンクプレートチェーンの長手方向に延びる平面に対して鏡像対称的に配置されている、請求項2記載のリンクプレートチェーン。
【請求項4】
チェーンリンク(15)が、リンクプレートチェーンの長手方向で測定したジョイントのジョイント軸線同士の相互間隔によって規定されたピッチ(T)を有しており、リンクプレートチェーン(1)が、少なくとも1つの短いピッチ(TK)と、長いピッチ(TL)とを有するチェーンリンク(15)から成っており、共通のチェーンリンク(15)に属するリンクプレート部分列(20,20S;20’,20S’)の少なくとも一部の真ん中のリンクプレート(102,105,108,111)が、長いピッチ(TL)を有している、請求項2または3記載のリンクプレートチェーン。
【請求項5】
リンクプレートチェーンが、2つのタイプのリンクプレート、つまり短いピッチを有するリンクプレート(2k)と、長いピッチを有するリンクプレート(2l)とを有している、請求項4記載のリンクプレートチェーン。
【請求項6】
リンクプレートチェーン(1)が、25%よりも多いピッチジャンプを有している、請求項5記載のリンクプレートチェーン。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載のリンクプレートチェーンの、無段式に変速比調節可能な円錐形プーリ式巻掛け式伝動装置における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−512494(P2010−512494A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540594(P2009−540594)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【国際出願番号】PCT/DE2007/002099
【国際公開番号】WO2008/071145
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】