説明

リング状目地の取付装置

【課題】管部材の管端にリング状目地を面一に取り付ける作業を迅速に行えて構成が簡単な取付装置を提供する
【解決手段】昇降台3が出没昇降する円筒孔5と、円筒孔内で昇降台の昇降を案内する案内軸6と、リング状目地7の載置面8を円筒孔の周囲に有する固定台1とを備え、昇降台上に、案内軸に形成したテーパー部9に押されて円周方向へスライドしてリング状目地を押し拡げるとともに戻しばね15により案内軸方向へ押し戻される複数の円形分割体10を設け、円形分割体の上方に、昇降台と共に昇降し且つ管部材12の管端13を受ける段部14を備えた押え板11を設け、昇降台をアクチュエータ4により昇降作動させた

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管などの管部材の管端に熱膨張性のリング状目地を取り付けする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水管や給水管として、硬質塩化ビニール製の内管の外周を繊維混入モルタルの外管で被覆した構成を有する耐火二層管が知られており、これらを接続するための耐火二層管継手も知られている。
【0003】
こうした構成の耐火二層管を配管接続する場合、継ぎ目に耐火性を向上させるために熱膨張性の目地を設け、火災などで配管が加熱されたときに目地が膨張して管内を閉塞することで煙が内管を伝って拡がったり内管が延焼したりすることを防止するようにしている(特許文献1)。リング状目地は配管接続の施工時に各継ぎ目に手作業で取り付けてもよいが、接続部では内管同士が接着剤で接合されるので、目地の付け忘れが発見されても解体して再施工することが困難であるという問題があった。出願人は、この問題を解決する一手段として、図1に示したように、継手を構成する硬質塩化ビニール製の管部材12の管端13に熱膨張性のリング状目地7を管端13と面一になるように嵌着し、これを図2に示したような射出成型機の分割金型29にセットして外管を構成するモルタル32を成型することでリング状目地を継手と一体に取り付けることを提案した。この継手を使用すると、配管施工時に目地の取り付けを省略でき、付け忘れも防止できる利点がある。
【0004】
熱膨張性のリング状目地は熱膨張剤を含むゴム質のもので弾力性はあまり大きくない。従来は図1に示したように、管端に面一に取り付ける作業を人手により行っていたが、目地の弾力性が乏しいため単純な作業の割には面倒で時間がかかり、多数の継手に取り付けるには多くの人手を要してコスト高になる不都合があった。枝管の数が多い継手の場合は更にコスト高になって好ましくない。
【特許文献1】特開2003−161392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記不都合を解消することを課題とするもので、管部材の管端にリング状目地を面一に取り付ける作業を迅速に行えて構成が簡単な取付装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記課題を解決すべく、昇降台が出没昇降する円筒孔と、該円筒孔内で昇降台の昇降を案内する案内軸と、リング状目地の載置面を該円筒孔の周囲に有する固定台とを備え、該昇降台上に、該案内軸に形成したテーパー部に押されて円周方向へスライドして該リング状目地を押し拡げるとともに戻しばねにより該案内軸方向へ押し戻される複数の円形分割体を設け、該円形分割体の上方に、該昇降台と共に昇降し且つ管部材の管端を受ける段部を備えた押え板を設け、該昇降台をエアシリンダー等のアクチュエータにより昇降作動させるようにした。
該リング状目地を昇降台の載置面に載せ、管部材の管端を押え板の段部に当ててアクチュエータに下降作動を行わせると、昇降台に設けた円形分割体が案内軸のテーパー部に沿ってリング状目地の内径を押し拡げながら下降し、その下降が進行すると該管端がリング状目地の円形穴内へ没入するようになる。そして円形穴内に完全に管端が進入すると、リング状目地はそれ自体の弾力性で管端の周囲に面一な状態で取り付き、次いでアクチュエータが上昇作動すると円形分割体は戻しばねにより案内軸方向に押し戻され、リング状目地が取り付いた管部材は原位置に戻り、これを昇降台から取り外すと図1に示したような加工品が得られる。
【0007】
該円形分割体の夫々と案内軸のテーパー部との間に、角軸状ピースを着脱自在に介在させ、該角軸状ピースが該テーパー部と接触する部分を、該テーパー部のテーパー角に沿った傾斜面に形成することで、保守が容易で部品が安価になり、さらには円形分割体に円滑な作動を行わせることができる。
【0008】
該アクチュエータは、該昇降台が人力等により多少押し下げられたとき降下作動の行程を行い、該管部材の管端の周囲にリング状目地が対応した位置になったとき上昇作動の行程を行って原位置へ復帰させるように動作することで、人手による安全な作業を行え、該アクチュエータと昇降台を連結する連杆の間に緩衝復帰ばねを介在させ、該昇降台が該緩衝復帰ばねを撓めて多少降下したとき該アクチュエータが降下作動の行程を行うようにすることで、上記作動を簡単な構成で実施できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の取付装置は、円筒孔、案内軸およびリング状目地の載置面を備えた固定台と、該円筒孔内をアクチュエータにより出没昇降する昇降台を設け、該昇降台には案内軸のテーパー部と戻しばねによりスライドする円形分割体と押え板を設けた構成を有するもので、管部材の管端を押え板の段部に載せ、アクチュエータの作動で昇降台が固定台の円筒孔内へ出没することで円形分割体が弾力性の乏しいリング状目地をわずかに押し開き、その間に管部材が進入して管端の周囲に端面と面一な状態で目地を嵌着できるから、簡単な構成の装置で弾力性の乏しいリング状目地を管端に正確且つ迅速に取り付けできる。
【0010】
また、該円形分割体の夫々と案内軸のテーパー部との間に、角軸状ピースを着脱自在に介在させた構成とすることにより、昇降作動を繰り返しても主として該角軸状ピースと案内軸が摩耗するだけで済み、これらを交換する保守作業は押え板を取り外して簡単に行え、しかもこれらの部品は安価であるから保守コストも安くなる。この角軸状ピースが案内軸のテーパー部と接触する部分を、該テーパー部のテーパー角に沿った傾斜面に形成することで円形分割体に円滑な作動を行わせることができる。
【0011】
アクチュエータは、昇降台が人力等により多少押し下げられたとき降下作動するので手を挟むおそれもなく、管部材の管端の周囲にリング状目地が対応した位置となったとき上昇作動の行程を行って原位置へ復帰するように作動することで、人手で管部材を持って作業しても管部材の遊動が少なくなり、安全に目地の取り付け作業を行える。また、アクチュエータと昇降台を連結する連杆の間に緩衝復帰ばねを介在させておくことで、該昇降台が該緩衝復帰ばねを撓めて多少降下してから該アクチュエータに降下作動の行程を行なわせることができ、管部材を昇降台に載せてから昇降台を降下させる作動を簡単な構成で制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づき説明すると、図3において、符号1は機台2に固定された円形の固定台、符号3はエアシリンダーからなるアクチュエータ4により昇降作動する円板状の昇降台を示す。該固定台1は、図4に示したように、昇降台3が出没昇降する円筒孔5と、該円筒孔5内で昇降台3の昇降を案内する案内軸6と、該円筒孔5の周囲にあってリング状目地7を載置する環状の載置面8が設けられており、該案内軸6の中間部には先細となるテーパー部9を設けるようにした。
【0013】
該昇降台3の上面の案内軸6の周囲には、図5に明示したような扇形の4個の円形分割体10を円周方向へスライド自在に設け、その円形分割体10の上方は押え板11で押えるようにした。該円形分割体10の周面で形成される円の直径は、リング状目地7の内径より多少小さく形成され、該押え板11の直径は円形分割体10の直径より多少小さく形成してその周囲に硬質塩ビ製などの管部材12の管端13を受ける環状の段部14を設けた。また、各円形分割体10の外周面には凹溝16を設けてそこにコイルばねをリング状に形成した戻しばね15を収容し、このばね15により円周方向へスライドした円形分割体10が案内軸6の方へ押し戻されるようにした。
【0014】
図示の例では、各円形分割体10と案内軸6との間に、図6に示したような角軸状ピース24を井桁状に組んで着脱自在に夫々介在させ、昇降台3が降下するとき、案内軸6のテーパー部9によって該角軸状ピース24が外方へ押されて移動し、これに伴い円形分割体10が円周方向へ押し出されるようにした。該角軸状ピース24がテーパー部9と摺接する部分には、そのテーパー部の角度と同じ角度を有する傾斜面25を形成し、円滑なスライドが行えるようにした。角軸状ピース24は案内軸6との摺接で部分的に摩耗Aするが、図5の配置状態で摩耗したとき、図8のように井桁の組み方を変えることで摩耗部Aを外し、摩耗していない部分Bをテーパー部9に摺接させることができ、角軸状ピース24を交換することなく長時間にわたり使用できる。また、角軸状ピース24は形状が円形分割体10よりも単純であるから安価に製作でき、消耗品のコストを小さく抑えることができる。
【0015】
該昇降台3と押え板11は円形分割体10を収容する隙間を存してボルト17により一体化され、該ボルト17の先端をエアシリンダーのアクチュエータ4に連なる連杆18と一体の可動板19に止め付けした。支軸27を中心としてアクチュエータ4により揺動されるレバー21が該連杆18に設けた係合軸20と係合し、アクチュエータ4が往復動すると連杆18および昇降台3が昇降作動を行う。該連杆18の中間部には、機台2に固定したカラー26に支持された緩衝復帰ばね22を設け、アクチュエータ4が停止状態にあるとき、該昇降台3が人力などで強制的に多少押し下げられ、これに伴い連杆18が該緩衝復帰ばね22を撓めて下動すると、センサー23の触手が連杆18に設けたピン28により動かされる。センサー23はエアシリンダーのアクチュエータ4に昇降台3を降下させる作動を行なうバルブを切り替えるように指示し、これによりアクチュエータ4が昇降台3を降下させる降下作動を行ったのち上昇させるための復動作動を行う。復動作動でレバー21が原位置に戻るとき、連杆18は緩衝復帰ばね22により押されて上昇し、その結果、昇降台3も原位置へ上昇する。
【0016】
リング状目地7は矩形断面のもので、その多数個を固定台1の側方のホッパー(図示してない)に用意しておき、1個ずつ固定台1の載置面8上へ送り出すようにした。
【0017】
図示の装置の作動を説明する。まず、リング状目地7を昇降台3の載置面8に載せ、人手により管部材12を持ってその管端13を押え板11の環状の段部14に一致するように載せる。そして、多少力を込めて管部材12を押し下げると、昇降台3が連杆18とともに緩衝ばね22を撓めて降下する。その降下で角軸状ピース24がテーパー部9により押されて動くようになると、連杆18のピン28がセンサー23に触れ、アクチュエータ4がレバー21を揺動させ、連杆18および昇降台3が降下する。この降下で管端13がリング状目地7の環状内へ誘導され、この降下開始と同時にテーパー部9で押された角軸状ピース24は、円形分割体10をその円周方向へスライドさせるので、リング状目地7の内径が管端13の進入を妨げないように拡げられる。管端13が完全にリング状目地7の径内に進入したとき、その径内を円形分割体10が通過するため、リング状目地7の内径はそれ自身の持つ弾力性で縮小して管端13の周囲に嵌着した状態になる。
【0018】
該昇降台3の降下限度は、段部14の下面が載置面8と一致した位置であり、この位置に達したとき、アクチュエータ4が復動して連杆18および昇降台3が緩衝ばね22により上昇して原位置に復帰する。この上昇に伴いテーパー部9の径が小さくなるので、円形分割体10は、その周囲に捲回した戻しばね15の力により角軸状ピース24とともに円周方向へスライドした位置から案内軸6方向へ押し戻された元の状態に戻り、次の取り付け作業に備えた状態で昇降台3が復帰する。復帰したのち昇降台3から管部材12を取り外す。リング状目地7は、図1に示したような管端13に面一に取り付けられ、管部材12を昇降台3に載せれば、1〜2秒で取り付けを完了することができる。リング状目地7が取り付けられた管部材12は、図2に示したように、分割金型29内に管端13を蓋30で塞いで収容され、モルタル注入口31からモルタル32を注入して管部材12をモルタルで被覆し、金型29から取り出して養生することにより管端に目地を備えた耐火性のよい耐火二層管継手が得られ、目地付きであるため配管接続作業における目地の施工作業を省略できて便利である。
【0019】
昇降台3の昇降を繰り返すと、案内軸6と摺接する部材が摩耗し、昇降距離に変化を来たし、管端13に面一にリング状目地7を取り付け出来なくなる不都合を生るので摩耗した部材の交換を行わなければならないが、本発明のものでは、円形分割体10と案内軸6の間に角軸状ピース24が介在されているから、製作費の比較的高価な円形分割体10が摩耗することがなく、製作容易で安価な角軸状ピース24を交換するだけで済む。また、この角軸状ピース24は4本を用意して円形分割体10と案内軸6の間に井桁状に配置するようにしたので、図5に示した状態で使用して各角軸状ピース24に摩耗Aが生じると、図8に見られるように井桁の組み方を変えて新たな部分Bが案内軸6に摺接するように配置することでその交換までの期間を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】リング状目地を管部材に取り付けた状態の斜視図
【図2】管部材にモルタルを被覆する状態の断面図
【図3】本発明の実施例を示す一部切断側面図
【図4】図3の要部の拡大断面図
【図5】図4の5−5線部分の平面図
【図6】角軸状ピースの斜視図
【図7】図4の昇降台降下状態の断面図
【図8】角軸状ピースの組み方の変更状態を示す平面図
【符号の説明】
【0021】
1 固定台、3 昇降台、4 アクチュエータ、5 円筒孔、6 案内軸、7 リング状目地、8 載置面、9 テーパー部、10 円形分割体、11 押え板、12 管部材、13 管端、14 段部、15 戻しばね、18 連杆、22 緩衝復帰ばね、24 角軸状ピース、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降台が出没昇降する円筒孔と、該円筒孔内で昇降台の昇降を案内する案内軸と、リング状目地の載置面を該円筒孔の周囲に有する固定台とを備え、該昇降台上に、該案内軸に形成したテーパー部に押されて円周方向へスライドして該リング状目地を押し拡げるとともに戻しばねにより該案内軸方向へ押し戻される複数の円形分割体を設け、該円形分割体の上方に、該昇降台と共に昇降し且つ管部材の管端を受ける段部を備えた押え板を設け、該昇降台をエアシリンダー等のアクチュエータにより昇降作動させたことを特徴とするリング状目地の取付装置。
【請求項2】
上記円形分割体の夫々と案内軸のテーパー部との間に、角軸状ピースを着脱自在に介在させ、該角軸状ピースが該テーパー部と接触する部分を、該テーパー部のテーパー角に沿った傾斜面に形成したことを特徴とする請求項1に記載のリング状目地の取付装置。
【請求項3】
上記アクチュエータは、上記昇降台が人力等により多少押し下げられたとき降下作動の行程を行い、上記管部材の管端の周囲にリング状目地が対応した位置になったとき上昇作動の行程を行って原位置へ復帰することを特徴とする請求項1に記載のリング状目地の取付装置。
【請求項4】
上記アクチュエータと昇降台を連結する連杆の間に緩衝復帰ばねを介在させ、該昇降台が該緩衝復帰ばねを撓めて多少降下したとき該アクチュエータが降下作動の行程を行うことを特徴とする請求項3に記載のリング状目地の取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−265261(P2008−265261A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136007(P2007−136007)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(595025224)フネンアクロス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】