説明

リング組み付け装置

【課題】Oリングへの傷が付きにくいOリング組み付け装置を提供する。
【解決手段】Oリング5に差し込まれた後、Oリング5を拡径動作するチャック装置1の複数の長爪部11をOリング5の径外方向へ直線移動させる。これにより、Oリング5の捻れを防止することができるので、ワーク4のOリング溝41に押し込む際におけるOリング5の暴れを抑止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Oリング組み付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外面に溝部が設けられた円筒状の被組付け物にOリングを組み付けるためのOリング組み付け装置として、複数の爪の先端をOリングに挿入した後拡径することにより、複数の爪によりOリングを保持し、この爪を被組付け物の先端に合わせて爪からOリングを外して被組付け物の溝部に組み付ける爪拡縮式のOリング組み付け装置が知られている。
【0003】
また、本出願人の出願になる下記の特許文献1は、先端が先細テーパ面(切頭円錐面)となっている円筒部材の外周面にOリングを嵌着した後、この円筒部材に被組み付け物を嵌入した状態にて、Oリングの軸方向移動を禁止しつつ円筒部材を軸方向に抜き出してOリングを被組み付け物に組み付ける円筒着脱式のOリング組み付け装置を提案している。
【特許文献1】特開2004−138226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した爪拡縮式のOリング組み付け装置では、Oリングを保持するための各爪の拡径動作時にOリングに捻れが生じるため、Oリングを被組み付け物に嵌着する際にOリングが暴れてOリングが被組み付け物の所定のOリング溝にきちんと収まらなかったり、Oリングに傷が付いたりする場合があった。
【0005】
また、上記した円筒着脱式のOリング組み付け装置では、Oリングが置かれたOリング載置プレートの孔に円筒部材の先細の先端部を差し込んでOリングを円筒部材に一時的に嵌着保持させる際、Oリングが円筒部材の外周面とOリング載置プレートの孔の内周縁との間に噛み込んでOリングに傷が付く場合があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、Oリング組み付け時の傷発生を良好に防止可能なOリング組み付け装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のOリング組み付け装置は、円弧状のOリング保持面を先端部にそれぞれ有して全体として略円筒状に配置される複数の長爪部と、前記複数の長爪部に嵌着されて前記長爪部の長手方向へ進退することにより前記Oリング保持面上のOリングを前記長爪部の先端側へ押し出す付勢リングと、前記複数の長爪部をOリングの軸心方向並びに径方向へ進退させ、前記付勢リングを前記長爪部の長手方向へ進退させる駆動部とを備え、前記駆動部が、縮径状態の前記複数の長爪部をOリングに挿入した後、前記複数の長爪部をOリング拡径方向へ直線変位させてOリングを前記Oリング保持面に保持させ、前記複数の長爪部の先端を被組み付け物の先端部に当接させた状態にて前記付勢リングにより前記Oリングを前記被組み付け物に嵌着させることをその特徴としている。
【0008】
すなわち、この発明のOリング組み付け装置は、Oリングに挿入された縮径状態の複数の長爪部によりOリングを拡径する際、各長爪部をOリングの拡径方向へそれぞれ直線変位させる。すなわち、各長爪部は、Oリングの軸心方向に対して直角方向すなわち径方向外側へ直線移動する。その結果、Oリングはその拡径方向へ捻れることなく変形するので、この拡径動作によりOリングに捻れが生じることがなく、この捻れによりその後の被組み付け物へのOリング組み付け時にOリングが暴れることがなく、Oリングの組み付け不良やOリングの傷付きなどの不具合を良好に防止することができる。
【0009】
更に説明すると、上記した従来の複数の爪によるOリングの拡径動作では、各爪の先端はOリングの拡径方向へ揺動機構により円弧運動していたため、この爪の円弧運動がOリングに捻れを与えていた。本発明者らは、この爪の円弧運動によるOリングの捻れは、その後の被組み付け物のOリング溝へのOリングのセットにおいて捻れを戻そうとするOリングの望ましくない動きを誘発し、これが上記した不具合を生じさせることを見い出し、これに基づいて、爪を円弧運動(揺動動作)ではなく拡径方向への直線動作への変更を着想した。その結果として、本発明によりOリングの組み付け不良を大幅に低減することができたものである。
【0010】
好適な態様において、前記付勢リングのOリング当接側の前端面は、前記複数の長爪部に嵌着されたOリングに接面する部位から径方向外側へ向かうにつれて軸方向においてOリングから離れる向きに傾斜するテーパー面となっている。
【0011】
すなわち、この態様によれば、付勢リングを長爪部の先端向きに押し込むことにより、Oリングを長爪部のOリング保持面上を摺動させて被組み付け物の外周面に嵌着させる際、Oリングが付勢リングの内周面と長爪部のOリング保持面との間の隙間に噛み込んでOリングに傷が付くのを良好に防止することができる。
【0012】
更に説明すると、付勢リングを長爪部の先端向きに押し込むことにより、Oリングは上記テーパ面上を拡径方向へ僅かに付勢されるため、Oリングは付勢リングの内周面と長爪部のOリング保持面との間の隙間から離れ、その結果として上記噛み込みが良好に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態を図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
この実施形態のOリング組み付け装置の構成を図1を参照して説明する。
【0015】
(構造の概要)
1はチャック装置、2はパーツフィーダ、3はワークローダ、4はワーク(被組み付け物)、5は今回取り付けるOリング、6は次回取り付けるOリングである。なお、図面において、Oリング5、6は正確にはハッチングにより断面図示されるべきであるが、単に円により模式図示されている。
【0016】
チャック装置1は、円弧状のOリング保持面10を先端部にそれぞれ有して全体として略円筒状に配置される複数の長爪部11と、各長爪部11に嵌着された付勢リング12と、長爪部11及び付勢リング12を駆動する駆動部13とを有している。なお、この実施形態では長爪部11は2つとされ、Oリング保持面10は半円形状とされるがそれに限定されないことはもちろんである。
【0017】
各長爪部11の先端部は、後述するワークの先端部が嵌入するための溝部11aを有している。付勢リング12の上端面は円錐状のテーパー面12aとなっている。すなわち、付勢リング12のOリング当接側の端面は、複数の長爪部に嵌着されたOリングに接面する部位から径方向外側へ向かうにつれて軸方向においてOリングから離れる向きに傾斜するテーパー面となっている。
【0018】
駆動部13は各長爪部11を軸方向(高さ方向)へ進退させ、各長爪部11をOリング5の軸心を中心として径方向へ進退させる。すなわち、駆動部13は各長爪部11をOリング5の径方向へ直線移動させる。駆動部13は付勢リング12を軸方向へ進退させる。
【0019】
なお、駆動部13による長爪部11及び付勢リング12の駆動自体は簡単な動作であるため、その駆動機構の詳細についての説明は省略する。また、長爪部11や付勢リング12の形状や動作の詳細はOリング組み付け工程の説明の途中で必要に応じて説明するものとする。
【0020】
パーツフィーダ2は、振動によりOリング5をチャック装置1のOリング受取り位置に移動させるものであって、Oリング載置面21をもつプレート板22と、Oリング5の移動を規制する制止バー23と、Oリング5の左方移動を停止させるストッパ24とを有している。図2では図示されていないが、プレート板22には溝が形成されており、この溝はOリング載置面21の左端に達して開口している。この開口上にストッパ24が配置されている。図1では制止バー23はプレート板22の上記溝に上下に貫通しており、Oリング載置面21上のOリング6を貫通している。プレート板22を振動させることによりOリング5が左方に移動し、ストッパ24により停止させられる。この停止位置にて、Oリング5はチャック装置1のOリング受取り位置にセットされる。なお、パーツフィーダ2としては振動型に限らず、公知の各種のものを採用することができる。
【0021】
ワークローダ3は、Oリング溝41をもつ円柱状のワーク(被組み付け物)の基端部を爪31で把持している。ワーク4を所定姿勢で支持できるのであれば、ワークローダ3の形状、構造は自由である。
【0022】
以下、Oリング組み付け工程を順次説明する。
【0023】
(Oリング組み付け工程1)
まず、図1に示すようにOリング5の軸心に沿いつつ縮径状態の長爪部11が上昇し、長爪部11がプレート板22の上記溝を貫通し、プレート板22のOリング載置面21上のOリング5を貫通する(図2参照)。付勢リング12はプレート板22の下に位置している。
【0024】
次に、図3に示すように、ストッパ24を斜め上方へ移動させ、駆動部13が長爪部11を左右方向へ移動させ(拡径する)、Oリング5は長爪部11の先端部のOリング保持面10に保持する。その後、図4に示すようにチャック装置1を左方に移動させ、ワーク4の直下に同軸配置する(図5)。
【0025】
次に、図5に示すように、ストッパ24を元の位置に復帰させ、かつ、ワークローダ3を降下させる。これにより、ワーク4の下端部が各長爪部11の先端部の溝部11aに嵌入する。その結果、長爪部11の先端(上端)はワーク4のOリング溝41の直下に達する(図6)。
【0026】
次に、図6に示すように、したがって、制止バー23を降下させることによりOリング6を移動自在とし、このOリング6を左方へ移動可能とする。また、付勢リング12を上昇させる。これにより、付勢リング12は、長爪部11のOリング保持面10上に嵌着されているOリング5を上方へ移動させる。これによりOリング5はOリング保持面10上を摺動し、長爪部11の先端から外れてワーク4のOリング溝41に嵌め込まれる(図6)。
【0027】
付勢リング12の上端面は円錐状のテーパー面12aとなっており、Oリング保持面10に嵌着されたOリング5はテーパー面12aの最内径部分に接している。したがって、付勢リング12がOリング5を上方へ押し込む際にテーパー面12aはOリング5に径外側へ付勢するため、Oリング5が僅かに拡径され、長爪部11のOリング保持面10と付勢リング12の内周面との間の隙間から離れる。これにより、この隙間にOリング5が噛み込んでOリング5の表面に傷が付くのが良好に防止される。
【0028】
次に、図7に示すように、付勢リング12を降下し、パーツフィーダ2を振動させて次のOリング6をプレート板22のOリング載置面21上をストッパ24に達するまで左方へ移動させる。
【0029】
次に、図8に示すように、制止バー23を上昇させて3番目のOリング7の変位を規制するとともに、チャック装置1を降下させる。
【0030】
次に、図9に示すように、長爪部11を縮径して初期形状とするとともにチャック装置1を右方に移動させることにより、チャック装置1をパーツフィーダ2のプレート板22の直下の元の位置にセットする(図10)。その後、ワークローダ3により新規なワークをセットし、次のサイクルに移行する。
【0031】
このようにすれば、既述したように、Oリング取り付けに際してOリングに傷が付きにくいという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態のOリング組み付け装置のOリング組み付け工程1を示す模式側面図である。
【図2】実施形態のOリング組み付け装置のOリング組み付け工程2を示す模式側面図である。
【図3】実施形態のOリング組み付け装置のOリング組み付け工程3を示す模式側面図である。
【図4】実施形態のOリング組み付け装置のOリング組み付け工程4を示す模式側面図である。
【図5】実施形態のOリング組み付け装置のOリング組み付け工程5を示す模式側面図である。
【図6】実施形態のOリング組み付け装置のOリング組み付け工程6を示す模式側面図である。
【図7】実施形態のOリング組み付け装置のOリング組み付け工程7を示す模式側面図である。
【図8】実施形態のOリング組み付け装置のOリング組み付け工程8を示す模式側面図である。
【図9】実施形態のOリング組み付け装置のOリング組み付け工程9を示す模式側面図である。
【図10】実施形態のOリング組み付け装置のOリング組み付け工程9完了後、工程1開始前の状態を示す模式側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 チャック装置
2 パーツフィーダ
3 ワークローダ
4 ワーク
5〜7 Oリング
10 リング保持面
11 長爪部
11a 溝部
12 付勢リング
12a テーパー面
13 駆動部
21 リング載置面
22 プレート板
23 制止バー
24 ストッパ
31 爪
41 ワークのOリング溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状のOリング保持面を先端部にそれぞれ有して全体として略円筒状に配置される複数の長爪部と、
前記複数の長爪部に嵌着されて前記長爪部の長手方向へ進退することにより前記Oリング保持面上のOリングを前記長爪部の先端側へ押し出す付勢リングと、
前記複数の長爪部をOリングの軸心方向並びに径方向へ進退させ、前記付勢リングを前記長爪部の長手方向へ進退させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、
Oリングに挿入された縮径状態の前記複数の長爪部をOリング拡径方向へ直線変位させてOリングを前記Oリング保持面に保持させ、
前記複数の長爪部の先端を被組み付け物の先端部に当接させた状態にて前記付勢リングにより前記Oリングを前記被組み付け物に嵌着させることを特徴とするOリング組み付け装置。
【請求項2】
請求項1記載のOリング組み付け装置において、
前記付勢リングのOリング当接側の前端面は、前記複数の長爪部に嵌着されたOリングに接面する部位から径方向外側へ向かうにつれて軸方向においてOリングから離れる向きに傾斜するテーパー面となっているOリング組み付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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