説明

リンパ節腫脹抑制剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにリンパ節の腫脹を抑制する方法

【課題】リンパ節の腫脹を抑制できるリンパ節腫脹抑制剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにリンパ節の腫脹を抑制する方法を提供する。
【解決手段】リンパ節腫脹抑制剤は、平均分子量が10万〜160万のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンパ節腫脹抑制剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにリンパ節の腫脹を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活および生活習慣の急激な変化によって、自己免疫性疾患を患う患者が増加している。自己免疫疾患とは、本来は細菌・ウイルスや腫瘍などの自己と異なる異物を認識し排除するための役割を持つ免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまうことで症状を来す疾患の総称であり、この原因として、T細胞、B細胞およびマクロファージなど免疫担当細胞の異常が原因とされている。
【0003】
また、多くの自己免疫疾患の症状は慢性的に経過し、難治性であるため、日本では公費負担の対象として定められた特定疾患に含まれている疾患も多い。治療法は疾患により異なるが、免疫異常が疾患の原因となっていることから、多くの疾患でステロイドと免疫抑制剤が第一選択の薬剤として用いられる。しかしながら、これらの薬剤には少なからず副作用があることが知られており、副作用の少ない免疫異常改善薬が求められている。
【0004】
自己免疫疾患の症状のひとつとして、リンパ節の腫脹が挙げられる。このリンパ節の腫脹は、炎症性サイトカインの影響によりリンパ球の細胞死が抑制されたり、細胞増殖が促進されたり、細胞が肥大したりして引き起こされる。
【0005】
特許文献1には、ヒアルロン酸、特に低分子量のヒアルロン酸が、非正常細胞のFas抗原の発現を促進し、非正常細胞の自滅を増強することが示されている。しかしながら、ヒアルロン酸の経口摂取による効果については、一切記載されていない。
【特許文献1】特開2000−136138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、リンパ節の腫脹を抑制できるリンパ節腫脹抑制剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにリンパ節の腫脹を抑制する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、リンパ節腫脹の抑制に関して鋭意研究を重ねた結果、平均分子量10万〜160万のヒアルロン酸および/またはその塩を摂取することにより、意外にも、リンパ節の腫脹を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の一態様に係るリンパ節腫脹抑制剤は、平均分子量が10万〜160万のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する。
【0009】
本発明の一態様に係る医薬品は上記リンパ節腫脹抑制剤を有効成分として含有する。この場合、上記医薬品は経口的に摂取可能である。
【0010】
本発明の一態様に係る食品は、上記リンパ節腫脹抑制剤を含有する。
【0011】
本発明の一態様に係るリンパ節の腫脹を抑制する方法は、平均分子量が10万〜160万のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む。
【発明の効果】
【0012】
上記リンパ節腫脹抑制剤および上記リンパ節の腫脹を抑制する方法によれば、平均分子量10万〜160万のヒアルロン酸および/またはその塩を経口摂取することによってリンパ節の腫脹を抑制することが可能となる。したがって、リンパ節の腫脹に関連する疾患を改善するための、副作用がない、またはきわめて小さい医薬品および食品を提供できるとともに、ヒアルロン酸および/またはその塩の更なる利用拡大が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにリンパ節の腫脹を抑制する方法を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0014】
1.リンパ節腫脹抑制剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにリンパ節の腫脹を抑制する方法
本発明の一実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤は、平均分子量10万から160万のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有することを特徴とする。
【0015】
ここで、「ヒアルロン酸」とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの二糖からなる繰り返し構成単位を1以上有する多糖類をいう。また、「ヒアルロン酸の塩」としては、特に限定されないが、食品または薬学上許容しうる塩であることが好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0016】
また、本実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤で使用するヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は10万〜160万であり、好ましくは10万〜80万である。ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量が10万未満または160万を超えると、リンパ節腫脹を抑制しにくい。また、上記ヒアルロン酸の分子量が10万〜80万である場合、リンパ節腫脹をより効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明で規定される平均分子量の測定方法について説明する。
【0018】
本発明で規定される平均分子量は、ヒアルロン酸および/またはその塩の極限粘度から算出された分子量である。ヒアルロン酸および/またはその塩の極限粘度を求めるには、まず、複数のヒアルロン酸および/またはその塩の水溶液を調製し、ウベローデ粘度計(柴田科学器械工業株式会社)におけるヒアルロン酸および/またはその塩の水溶液の流下秒数および溶媒の流下秒数から、下記式1および式2に基づいて比粘度および還元粘度を算出する。この際、流下秒数が200〜1000秒になるような係数のウベローデ粘度計を用いる。また、ヒアルロン酸および/またはその塩の水溶液の濃度は、該測定器に適する濃度を選択する。また、測定は30℃の恒温水槽中で行い、温度変化のないようにする。
【0019】
(式1)

【0020】
(式2)

【0021】
次いで、各ヒアルロン酸および/またはその塩の水溶液について、得られた還元粘度を縦軸に、乾燥物換算のヒアルロン酸および/またはその塩濃度を横軸にプロットして検量線を作成し、前記ヒアルロン酸および/またはその塩濃度を0に外挿することにより、ヒアルロン酸および/またはその塩の極限粘度を得る。下記式3に基づいて、ヒアルロン酸および/またはその塩の極限粘度から平均分子量Mを求めることができる。
【0022】
(式3)
極限粘度(dL/g)=K’Mα
(上記式3において、K’=0.036、α=0.78である。)
本実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤に含まれるヒアルロン酸としては、基本的にはβ−D−グルクロン酸の1位とβ−D−N−アセチル−グルコサミンの3位とが結合した2糖単位を少なくとも1個含む2糖以上のものでかつβ−D−グルクロン酸とβ−D−N−アセチル−グルコサミンとから基本的に構成されるものであり、2糖単位が複数個結合したもの、またはそれらの要素が結合した糖であってもよく、またこれらの誘導体、例えば、アシル基等の加水分解性保護基を有したもの等も使用し得る。該糖は不飽和糖であってもよく、不飽和糖としては、非還元末端糖、通常、グルクロン酸の4,5位炭素間が不飽和のもの等が挙げられる。
【0023】
ヒアルロン酸および/またはその塩は、動物等の天然物(例えば鶏冠、さい帯、皮膚、関節液などの生体組織など)から抽出されたものでもよく、または、微生物もしくは動物細胞を培養して得られたもの(例えばストレプトコッカス属の細菌等を用いた発酵法)、化学的もしくは酵素的に合成されたものなどいずれも使用することができる。
【0024】
本実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤で使用するヒアルロン酸は、市販品を使用することができるが、例えば、以下の製造法1および2に従って製造することもできる。
【0025】
1.1.製造法1(鶏冠からの抽出)
まず、鶏冠に加熱処理を施す。これは、鶏冠に含まれる蛋白質を熱変性させたり、酵素失活させたりするためである。加熱処理は如何なる方法をとってもよいが、熱水中に鶏冠を浸漬する方法をとると効率よく行うことができる。加熱温度や時間は、鶏冠中の蛋白質が変性したり、酵素が失活したりする範囲内であれば、特に制限がなく、熱水による加熱法を採用する場合は、60〜100℃の熱水中に原料を20〜90分間浸漬するとよい。
【0026】
なお、凍結した鶏冠を用いる場合には、鶏冠をそのまま加熱してもよいが、凍結鶏冠を流水中等に入れ緩慢解凍した後、加熱処理を施したほうが一定品位のものが得られやすく、好ましい。
【0027】
次に、加熱処理した鶏冠をペースト化する。このペースト化によりヒアルロン酸の収率が向上する。ペースト化に先立ち、加熱処理後の鶏冠を細断機により薄く切断したり、または肉挽き用チョッパー等で細断したりしておくと、ペースト化がしやすくなる。ペースト化の一例を示すと、鶏冠に対して約1〜5倍量の清水を加え、ホモゲナイザーにて10〜60分間ホモゲナイズを行うことで、鶏冠は破砕・微粒子化され、ペーストに仕上げることができる。なお、ペースト化には、ホモゲナイザーの他に、高速撹拌機や擂潰機を用いてもよい。
【0028】
次に、ペースト化した鶏冠に、塩酸、硫酸等の酸剤、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤を添加し酸処理またはアルカリ処理してヒアルロン酸を低分子化し、処理後のヒアルロン酸の平均分子量が10万〜160万となるように調整する。調製方法としては、酸剤あるいはアルカリ剤の濃度、添加量および処理時間等を適宜組み合わせて、処理後のヒアルロン酸が所望の分子量となるようにすればよいが、アルカリ処理による方法がヒアルロン酸の分子量をコントロールし易く好ましい。アルカリ処理による一例を示すと、ペースト化した鶏冠に、鶏冠に対し10〜30%濃度のアルカリ水溶液を約1〜5%添加し、25〜70℃で約15〜90分間処理を行った後、塩酸等で中和し、分子量を調整する。
【0029】
次に、分子量を調整した原料に蛋白分解酵素を添加して、プロテアーゼ処理する。使用する蛋白分解酵素は、市販しているものであれば種類を問わず使用することができ、例えば、ペプシン、トリプシン、パパイン、プロメリン等が挙げられる。蛋白分解酵素の添加量は、鶏冠に対して0.01〜1%が適当である。また、プロテアーゼ処理の温度と時間は、35〜65℃で1〜10時間の範囲が適当である。
【0030】
最後に、得られたプロテアーゼ処理物からヒアルロン酸を分取して、粗製のヒアルロン酸を得た後、このヒアルロン酸を精製することにより純度90%以上、平均分子量10万〜160万のヒアルロン酸が得られる。
【0031】
ここで、ヒアルロン酸の分取・精製は、情報に従って行うことができる。例えば、まず、プロテアーゼ処理した原料を濾過して固形物を除去して、粗製のヒアルロン酸を含有した濾液を得る。なお、濾過に先立ち、脱臭・脱色や一部の蛋白分解物を除去する目的で、プロテアーゼ処理物に活性炭を添加し処理してもよい。そして得られた濾液に食塩を溶解させた後、エタノールを添加してヒアルロン酸を沈殿させ、沈殿物を分取する。その後、この沈殿物にエタノール濃度約80〜95容量%の含水エタノールを添加し、ホモゲナイザーで洗浄し、沈殿物を分取する。この含水エタノールによる洗浄を2〜10回程度繰り返し、分取した沈殿物を乾燥することで、製造例1のヒアルロン酸を得ることができる。
【0032】
1.2.製造法2(微生物発酵法)
ヒアルロン酸算出ストレプトコッカス属の微生物(Streptococcus Zoopidemicus)の培養液に活性炭を添加して脱臭・脱色処理を行った後、濾過処理する。得られた濾液に食塩を溶解させた後、エタノールを添加してヒアルロン酸を沈殿させ、沈殿物を分取する。その後、この沈殿物にエタノール濃度約80〜95容量%の含水エタノールを添加し、ホモゲナイザーで洗浄し、沈殿物を分取する。この含水エタノールによる洗浄を2〜10回程度繰り返し、分取した沈殿物を乾燥することで、製造例2のヒアルロン酸(平均分子量10万〜160万)を得ることができる。
【0033】
なお、本発明において使用するヒアルロン酸の純度は、医薬品または食品で使用できるレベルであればよく、好ましくは90%以上であればよく、より好ましくは95%以上であればよい。この純度は乾物換算で100%よりヒアルロン酸以外の不純物を除いた値として定義される。ここで、不純物としては、蛋白分解物、脂肪分(粗脂肪)、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。具体的に鶏冠を原料とするヒアルロン酸の純度は、以下式(4)で求めることができる。
【0034】
(式4)
ヒアルロン酸の純度(%)=100−蛋白分解物(%)−粗脂肪(%)−コンドロイチン硫酸(%)
式4中、蛋白分解物(%)はLowry法により求めた値であり、粗脂肪(%)は新・食品分析法(光琳(株)発行)「第1章一般成分および関連成分、1−4脂質、1−4−2エーテル抽出法」により求めた値であり、また、コンドロイチン硫酸(%)は、以下に説明する方法により得た値である。
【0035】
まず、ヒアルロン酸を乾燥し、その50mgを精密に量り、精製水を加えて溶かし、正確に100mLとして試験溶液とし、その試験溶液4mLを試験管にとり、0.5mol/L濃度の硫酸1mLを加えて混和し、水浴中で10分間加熱し、その後冷却して得られた溶液に0.04mol/L濃度の臭化セチルトリメチルアンモニウムを0.2mL加えて混和し、室温で1時間放置し、層長10mm、波長660nmにおける吸光度を測定する。
【0036】
次に、得られた吸光度データをコンドロイチン硫酸の検量線に適用して精製ヒアルロン酸中のコンドロイチン硫酸量(%)を求める。ここで、その検量線は、クジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Aナトリウム塩(SG(Special Grade)、生化学工業株式会社製)を乾燥(減圧、五酸化リン、60℃、5時間)させたものを精密に量り、精製水を加えて溶かし、1mL中に10μg、20μg、30μg、40μgのコンドロイチン硫酸Aナトリウム塩を含む溶液をそれぞれ調製し、それぞれの溶液4mlについて、0.5ml/L濃度の硫酸1mLを加えて混和した後、0.04mol/L濃度の臭化セチルトリメチルアンモニウムを0.2mL加えて混和し、室温で1時間放置した後、同様に吸光度を測定し、その吸光度を縦軸に、対応するコンドロイチン硫酸Aナトリウム塩溶液(μg/mL)を横軸にプロットすることによって作成したものである。
【0037】
本発明の一実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤は、平均分子量10万〜160万のヒアルロン酸および/またはその塩を通常0.1質量%以上含有するものであり、好ましくは0.5〜100質量%含有する。
【0038】
本発明の一実施形態に係る医薬品は、本実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤を有効成分として含有する。より具体的には、本実施形態に係る医薬品は、本実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤を5〜100質量%含有することができる。
【0039】
本実施形態に係る医薬品は、平均分子量が10万〜160万のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることによって、ヒトまたはヒト以外の動物においてリンパ節の腫脹を抑制することができる。これにより、リンパ節の腫脹を伴う疾患、例えば、炎症性疾患(例えば、リウマチ関節炎(RA);喘息;鼻炎等のアレルギー性疾患;血管疾患;血栓症または有害な血小板凝集;血栓溶解後の再閉塞;再潅流傷害;乾癬、湿疹、接触皮膚炎およびアトピー性皮膚炎等の皮膚炎症性疾患;糖尿病(例えば、インスリン依存型糖尿病、自己免疫型糖尿病);多発性硬化症;全身性ループスエリテマトーデス(SLE);潰瘍性大腸炎、クローン病(局所性腸炎)および嚢炎(例えば、直腸結腸切除および回腸肛門吻合後に生じる腸疾患)等の炎症性腸疾患;小児脂肪便症、非熱帯性スプルー、血清反応陰性関節症に関連した腸疾患、リンパ球性または膠原性大腸炎、および好酸球性胃腸炎等の胃腸管への白血球浸潤が関与する疾患;皮膚、尿路、気道および関節滑膜等の他の上皮皮膜組織への白血球浸潤に関連した疾患;膵炎;乳腺炎(乳腺);肝炎;胆嚢炎;胆管炎または胆管周囲炎(胆管および肝臓の周囲組織);気管支炎;副鼻腔炎;過敏性肺炎等の間質性線維症を生じる肺の炎症性疾患;膠原病;サルコイドーシス;骨粗鬆症;骨関節症;アテローム性動脈硬化症;新生物の転移または癌性増殖を含む新生物疾患;外傷(外傷治癒強化);網膜剥離、アレルギー性結膜炎;自己免疫性、ブドウ膜炎等のある種の眼病;シェーグレン症候群;臓器移植後の拒絶反応(慢性および急性);宿主対移植片または移植片対宿主疾患;内膜肥厚;動脈硬化症(移植後の移植片動脈硬化症を含む);経皮的経管冠動脈血管形成術(PTCA)あるいは経皮的経管動脈再疎通術等の手術後の再梗塞または再狭窄;腎炎;腫瘍血管新生;悪性腫瘍;多発性骨髄腫;骨髄腫誘発骨吸収;敗血症;脳卒中、外傷性脳損傷および脊髄損傷等の中枢神経傷害;メニエール病;慢性疲労症候群でみられるリンパ節腫脹;壊死性リンパ節炎;慢性リンパ節腫脹;およびウイルス感染または細菌感染等の感染症でみられるリンパ節腫脹からなる群から選ばれる病態)に罹患した患者(ヒトまたはヒト以外の動物)の症状を改善することができる。なかでも、リウマチ関節炎(RA)、膠原病等の自己免疫性疾患や、膝変形性関節炎などの関節炎の症状を有意に改善することができる。また、ヒト以外の動物としては、例えばヒト以外の哺乳類が挙げられる。
【0040】
また、本発明の一実施形態に係る食品は、本実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤を含有する。より具体的には、本実施形態に係る食品は、本実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤を0.1〜100質量%含有することができる。
【0041】
本実施形態に係る食品(食料品および飲料)は、上記患者が長期にわたって無理なく摂取することによって、治療の一環として、または治療の補助として、炎症性疾患の症状の緩和および改善を図ることができる。
【0042】
ヒアルロン酸および/またはその塩を経口摂取することによってリンパ節腫脹が抑制される作用機序については必ずしも明らかではないが、腸管上皮表面の受容体を通じて、ヒアルロン酸および/またはその塩がリンパ節腫脹を抑制することによるものであると推察される。
【0043】
本実施形態に係る医薬品は、リンパ節腫脹抑制剤である、ヒアルロン酸および/またはその塩以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の原料を含むことができる。そのような原料の例としては水、賦形剤、抗酸化剤、防腐剤、湿潤剤、粘稠剤、緩衝剤、吸着剤、溶剤、乳化剤、安定化剤、界面活性剤、滑沢剤、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料、アルコール類等が挙げられる。
【0044】
本実施形態に係る医薬品の剤形は特に限定されないが、該医薬品を経口摂取する場合、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤等の固形製剤、水剤、懸濁剤、シロップ剤、乳剤等の液剤等の経口投与剤が挙げられる。
【0045】
本実施形態に係る食品は、リンパ節腫脹抑制剤である、ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する。上記食品の態様は特に限定されないが、例えば、ガム、キャンディー、グミキャンディー、トローチ様食品、ゼリー飲料、米飯加工食品、製パン類、レトルト缶詰、冷凍食品、惣菜、乾燥食品、マヨネーズ等調味料、飲料、菓子、デザート類、サプリメント類等の一般食品全般、生理機能を表現することを許可された特定保健用食品全般が挙げられ、このうち、利便性に優れている点で、サプリメント類が好ましい。
【0046】
また、サプリメント類の形態としては、例えば、錠剤状、散剤状、細粒状、顆粒状、カプセル状(ハードカプセル、ソフトカプセル)等の固形状、液状、懸濁液状、ゼリー状、シロップ状等の流動状が挙げられる。
【0047】
上記食品を経口摂取することによって、リンパ節腫脹を抑制する効果を発揮し、リンパ節腫脹を伴う疾患の症状を総合的に緩和させることができる。また、上記食品を、リンパ節腫脹を伴う疾患の食事に添加または混合することによって、摂取することもできる。
【0048】
上記の通り任意の食料品および飲料に、本実施形態に係る食品を含有させることができるが、リンパ節腫脹を伴う疾患の症状の緩和を図るためには、本実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤を継続的に摂取するのが望ましいため、日常的に摂取する食品および飲料に本実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤を含有させるのが望ましい。
【0049】
ヒアルロン酸および/またはその塩は生体物質であるため、多量に摂取しても副作用がない、またはきわめて低いと考えられるが、医薬品として摂取するヒアルロン酸および/またはその塩の量は、一日当たり10mg〜1000mg、好ましくは100〜500mgを目安とすることができる。投与回数は、症状に応じて一日当たり一回もしくは複数回を選択できる。また、食品として摂取する本発明のヒアルロン酸および/またはその塩の量は、一日当たり1〜1000mg、好ましくは15〜300mgを目安とすることができる。また、本発明のヒアルロン酸および/またはその塩を含有する飲料の場合は、本実施形態に係るリンパ節腫脹抑制剤を飲料中に0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%含有させることができる。
【0050】
2.実施例
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0051】
2.1.実施例1
実施例1では、MRLマウスに本発明のヒアルロン酸を飲水投与し、本発明のヒアルロン酸および/またはその塩を含有するリンパ節腫脹抑制剤による効果について調査した。MRLマウスは、リウマチなどの自己免疫疾患を自然発症する病態モデルマウスであり、自己免疫疾患により、種々の症状が生じることが知られている。
【0052】
14週令(体重約27〜37g)のMRL lpr/lpr系(SPF)の雌マウス24匹(日本チャールズリバー株式会社)を実験に用いた。22±3℃、相対湿度50±20%に設定した飼育室にてマウスを飼育し、ラット・マウス用固形型飼料CE−2(日本クレア株式会社)を飼料として与えた。下記の表1の通りに、試験物質を蒸留水で希釈したものを自由摂取させて与えた。試験物質の詳細は、以下の通りである。
1群:蒸留水(大塚蒸留水、株式会社大塚製薬工場製)
2群:低分子ヒアルロン酸(上記製造法1に準じて平均分子量400〜2万に調整したもの、試作品A)
3群:ヒアルロン酸(上記製造法1に準じて平均分子量10〜80万に調整したもの、試作品B)
4群:ヒアルロン酸(上記製造法2に準じて平均分子量60〜160万に調整したもの、試作品C)
これらの試験物質は、室温にてクリーンベンチを用いて無菌的に調製した。調製には注射用蒸留水を用いて所定濃度に調製し、使用時まで冷蔵保存した。
【0053】
【表1】

【0054】
各種ヒアルロン酸の投与量として、飲水投与で効果が期待される200mg/kg/日を設定した。マウスの1日当たりの飲水量は、予備検討の結果6ml/匹であり、MRLマウスの体重が約33gであることから、各種ヒアルロン酸の濃度を1.1mg/mlに設定した。本実施例では病態の初期段階である14週令から投与を開始した。投与期間は、飲水投与での薬効を評価するのに適切と考えられる28日間試験を続けた。
【0055】
28日間の摂取試験の後、マウスを安楽死せしめ、頸部リンパ節を摘出した。摘出した頸部リンパ節について重量測定を行った。摘出した頸部リンパ節の重量測定結果を表2に示す。表2において、各群の重量相対比は、蒸留水摂取群の頸部リンパ節重量に対する各群の頸部リンパ節重量を示している。
【0056】
【表2】

【0057】
表2に示すように、蒸留水摂取群の頸部リンパ節の重量に比べて、試作品B(平均分子量10万〜80万)および試作品C(平均分子量60万〜160万)を投与した群の頸部リンパ節の重量は約半分となっており、有意(p=0.05、Ficher多重比較検定)に小さかった。一方、試作品A(低分子ヒアルロン酸)摂取群のリンパ節の重量と、蒸留水摂取群のリンパ節の重量との比較より、試作品Aにリンパ節腫脹抑制効果がほとんどないことがわかる。以上から、分子量10万〜160万のヒアルロン酸の経口摂取によりリンパ節の腫脹が効果的に抑制される結果、自己免疫疾患の症状が軽減しているものと推察される。
【0058】
2.2.実施例2
実施例1の試作品B(平均分子量10万〜80万のヒアルロン酸)をそのままリンパ節腫脹抑制剤として使用して、内容物が下記の配合であるソフトカプセルを製した。
<配合割合>
リンパ節腫脹抑制剤(実施例1の試作品B) 20%
オリーブ油 50%
ミツロウ 10%
中鎖脂肪酸トリグリセリド 10%
乳化剤 10%
――――――――――――――――――――――――――――――
100%
【0059】
2.3.実施例3
実施例1の試作品C(平均分子量60万〜160万のヒアルロン酸)をそのままリンパ節腫脹抑制剤として使用して、下記の配合の散剤(顆粒剤)を製した。
<配合割合>
リンパ節腫脹抑制剤(実施例1の試作品B) 10%
乳糖 60%
トウモロコシデンプン 25%
ヒプロメロース 5%
――――――――――――――――――――――――――――――
100%
【0060】
2.4.実施例4
実施例1の試作品B(平均分子量10万〜60万のヒアルロン酸)をそのままリンパ節腫脹抑制剤として使用して、下記の配合の錠剤を製した。
<配合割合>
リンパ節腫脹抑制剤(実施例1の試作品B) 25%
乳糖 24%
結晶セルロース 20%
トウモロコシデンプン 15%
デキストリン 10%
乳化剤 5%
二酸化ケイ素 1%
――――――――――――――――――――――――――――――
100%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均分子量が10万〜160万のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する、リンパ節腫脹抑制剤。
【請求項2】
請求項1記載のリンパ節腫脹抑制剤を有効成分として含有する医薬品。
【請求項3】
経口的に摂取される、請求項2記載の医薬品。
【請求項4】
請求項1記載のリンパ節腫脹抑制剤を含有する食品。
【請求項5】
平均分子量が10万〜160万のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む、ヒトまたはヒト以外の動物においてリンパ節の腫脹を抑制する方法。

【公開番号】特開2009−249321(P2009−249321A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97715(P2008−97715)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】