説明

リン系供与体を含む触媒組成物及び方法

次の組成物:ホスフィット、ホスホニット、ピロホスフィット、及び/又はジホスファゼン、の1又はそれ以上を含む外部電子供与体を有する触媒組成物が開示される。本外部電子供与体を含有するチーグラー・ナッタ触媒組成物は、強い活性を示し、高いアイソタクチシティ及び高いメルトフローレートをもつプロピレン系オレフィンを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年12月26日出願の米国特許仮出願第61/141,170号に対する優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、次の:ホスフィット、ホスホニット、ピロホスフィット(ジホスフィット)、及び/又はジホスファゼン(イミノジホスフィット)、の1又はそれ以上を含む外部電子供与体を含む触媒組成物ならびにそれから製造される結果として生じるオレフィン系ポリマーに関する。
【0003】
チーグラー・ナッタ触媒組成物は、オレフィン系ポリマーの製造に知られている。チーグラー・ナッタ触媒組成物には、一般に遷移金属ハロゲン化物(すなわち、チタン、クロム、バナジウム)を含有するプロ触媒、共触媒、例えば有機アルミニウム化合物、及び所望により外部電子供与体及び/又は活性制限剤が含まれる。現在当分野では、外部電子供与体としての使用に適した限定された一組の化合物が認められている。オレフィン系ポリマーに対する適用の多様化及び精緻化の進展によって、当分野では、改良され多様化された特性をもつオレフィン系ポリマーに対する必要性が認められる。望ましいのは、重合中に強い触媒活性及び高い水素応答性に寄与するチーグラー・ナッタ触媒組成物に対する外部電子供与体であると思われる。さらに望ましいのは、高いアイソタクチシティ、高いメルトフローレート、及び低い毒性をもつプロピレン系ポリマーを製造する、チーグラー・ナッタ触媒に対する外部電子供与体である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、次の:ホスフィット、ホスホニット、ピロホスフィット、及び/又はジホスファゼンの1又はそれ以上を含む外部電子供与体を含む触媒組成物に関する。本開示の外部電子供与体は、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Nata)プロ触媒組成物との高い適合性を示し、これらのプロ触媒と組み合わせた場合に高い触媒活性及び高い水素応答性に寄与する。その上、本外部電子供与体は、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物と併せて使用した場合に、高いアイソタクチシティ及び高いメルトフローレートをもつオレフィン系ポリマーを生成する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、触媒組成物が提供される。触媒組成物には、プロ触媒組成物、共触媒、及び外部電子供与体が含まれる。プロ触媒組成物には、マグネシウム部分が含まれる。外部電子供与体には、ホスフィット及び所望によりアルコキシシランが含まれる。触媒組成物には、所望により活性制限剤が含まれてよい。
【0006】
一実施形態では、プロ触媒組成物には、マグネシウム部分、チタン部分、及び/又は内部電子供与体の組合せが含まれる。
【0007】
一実施形態では、プロ触媒組成物の内部電子供与体は、芳香族酸エステル、ジエーテル、シリルエステル及びそれらの組合せであってよい。
【0008】
一実施形態では、下に提供されるように、外部電子供与体には、構造(VI)のホスフィットが含まれる。
【化1】

【0009】
構造(VI)のR、R、及びRは、同じであるか又は異なっている。R−Rの各々は、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びそれらの組合せから選択される。もう一つの実施形態では、R−Rは、同じであるか又は異なり、R−Rの各々は、C−Cアルキル基から選択される。さらなる実施形態では、R−Rの少なくとも2つのR基は、P−環構造の環員である。
【0010】
もう一つの触媒組成物が本開示において提供される。一実施形態では、プロ触媒組成物、共触媒、及び外部電子供与体を含む触媒組成物が提供される。プロ触媒組成物には、マグネシウム部分が含まれる。外部電子供与体には、ホスホニット(又は関連化合物)及び所望によりアルコキシシランが含まれる。触媒組成物には、所望により活性制限剤が含まれてよい。
【0011】
一実施形態では、下に提供されるように、外部電子供与体には、構造(IX)のホスホニットが含まれる。
【化2】

【0012】
及びRは、同じであるか又は異なっている。R及びRの各々は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、及びそれらの組合せから選択される。Xは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、置換アミノ基、非置換アミノ基ハロゲン化物、偽ハロゲン化物、及びヒドロキシル基から選択される。
【0013】
一実施形態では、R、R及び/又はXのいずれかは、P−環構造の環員である。
【0014】
もう一つの触媒組成物が本開示において提供される。一実施形態では、プロ触媒組成物、共触媒、及び外部電子供与体を含む触媒組成物が提供される。プロ触媒組成物には、マグネシウム部分が含まれる。外部電子供与体には、ピロホスフィット及び所望によりアルコキシシランが含まれる。触媒組成物には、所望により活性制限剤が含まれてよい。
【0015】
一実施形態では、下に提供されるように、外部電子供与体には、構造(XI)のピロホスフィットが含まれる。
【化3】

【0016】
、R、R及びRは、同じであるか又は異なっている。R−Rの各々は、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びそれらの組合せから選択される。一実施形態では、R−Rの任意のR基は、P−環構造の環員でありうる。
【0017】
もう一つの触媒組成物が本開示において提供される。一実施形態では、プロ触媒組成物、共触媒、及び外部電子供与体を含む触媒組成物が提供される。外部電子供与体には、ジホスファゼン及び所望によりアルコキシシランが含まれる。触媒組成物には、所望により活性制限剤が含まれてよい。
【0018】
一実施形態では、下に提供されるように、外部電子供与体には、構造(XII)のジホスファゼンが含まれる。
【化4】

【0019】
、R、R及びRは、同じであるか又は異なっている。R−Rの各々は、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びそれらの組合せから選択される。一実施形態では、R−Rの少なくとも1つのR基は、P−環構造の環員でありうる。
【0020】
重合プロセスが本開示において提供される。一実施形態では、重合プロセスには、重合条件下で、オレフィンと触媒組成物を接触させることが含まれる。触媒組成物は、前述の触媒組成物のいずれであってもよい。触媒組成物は、次の:ホスフィット、ホスホニット、ピロホスフィット、ジホスファゼン、及びその任意の組合せの1又はそれ以上を含む外部電子供与体を含む。触媒組成物には、所望によりアルコキシシラン及び/又は活性制限剤が含まれてよい。このプロセスには、オレフィン系ポリマーを形成することが含まれる。
【0021】
一実施形態では、オレフィンは、プロピレンである。プロセスには、約0.01g/10分〜約2000g/10分のメルトフローレートを有するプロピレン系ポリマーを形成することが含まれる。
【0022】
一実施形態では、オレフィンは、プロピレンである。プロセスには、約0.5%〜約10%のキシレン可溶部含量を有するプロピレン系ポリマーを形成することが含まれる。
【0023】
本開示の利点は、改良された外部電子供与体の提供である。
【0024】
本開示の利点は、オレフィン系ポリマーの重合のための改良された触媒組成物の提供である。
【0025】
本開示の利点は、改良されたチーグラー・ナッタ触媒組成物の提供である。
【0026】
本開示の利点は、ホスフィット、及び/又はホスホニット、及び/又はピロホスフィット、及び/又はジホスファゼンを含む外部電子供与体をもつ触媒組成物であり、該触媒組成物は、重合の間に改良された活性及び/又は改良された水素応答を示す。
【0027】
本開示の利点は、ホスフィット、及び/又はホスホニット、及び/又はピロホスフィット、及び/又はジホスファゼンを含む外部電子供与体をもつ触媒組成物であり、該触媒組成物は、高いアイソタクチシティ及び/又は高いメルトフローレートをもつオレフィン系ポリマーを生成する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一実施形態では、触媒組成物が提供される。本明細書において、「触媒組成物」は、重合条件下でオレフィンと接触するとオレフィン系ポリマーを形成する組成物である。触媒組成物には、プロ触媒組成物、共触媒、及び外部電子供与体が含まれる。外部電子供与体は、ホスフィットを含む。触媒組成物には、所望により活性制限剤が含まれてよい。
【0029】
プロ触媒組成物には、(i)マグネシウム;(ii)周期律表第IV〜VIII族の元素の遷移金属化合物;(iii)(i)及び/又は(ii)のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、及び/又はアルコキシド;(iv)内部電子供与体;ならびに(v)(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の組合せが含まれうる。適したプロ触媒成分の限定されない例としては、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、及びそれらの組合せのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、及びアルコキシドが挙げられる。
【0030】
一実施形態では、プロ触媒組成物には、マグネシウム部分が含まれる。適したマグネシウム部分の限定されない例としては、無水マグネシウムクロライド及び/又はそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシドもしくはアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハライド、及び/又はカルボキシル化マグネシウムジアルコキシドもしくはアリールオキシドが挙げられる。もう一つの実施形態では、マグネシウム部分は、マグネシウムジ−(C1−4)アルコキシド、例えばジエトキシマグネシウムなどである。もう一つの実施形態では、マグネシウム部分は、マグネシウムクロライドである。
【0031】
一実施形態では、プロ触媒組成物には、チタン部分が含まれる。適したチタン部分の限定されない例としては、チタンアルコキシド、チタンアリールオキシド、チタンアルコキシハライド、及びチタンハライドが挙げられる。さらなる実施形態では、チタン部分は、四塩化チタンである。
【0032】
プロ触媒組成物にはまた、内部電子供与体も含まれる。本明細書において、「内部電子供与体」は、結果として得られるプロ触媒組成物中に存在する、1対の電子を1又はそれ以上の金属に供与する、プロ触媒組成物の形成の間に付加された化合物である。特定の理論に縛られるものではないが、内部電子供与体は、活性部位の形成の調節を支援し、それにより触媒の立体選択性を強化すると考えられる。
【0033】
一実施形態では、プロ触媒組成物は、プロ触媒前駆体及び内部電子供与体を、内部電子供与体がその中に組み込まれているマグネシウム部分及びチタン部分の組合せ又は錯体に変換するハロゲン化を経て生成される。マグネシウム部分及びチタン部分は、本明細書に開示されるいずれの個別のマグネシウム又はチタン部分であってよい。
【0034】
一実施形態では、内部電子供与体は、芳香族酸エステル、ジエーテル、シリルエステル、及びそれらの組合せである。
【0035】
一実施形態では、内部電子供与体は、芳香族酸エステルである。本明細書において、「芳香族酸エステル」は、次の構造(I):
【化5】

を含むモノカルボン酸エステル又はポリカルボン酸エステルである。
【0036】
前記式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル、1〜10個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル、アルコキシカルボニル基、及びヘテロ原子もしくはヘテロ原子含有基から選択される。本明細書において、用語「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」とは、分枝状もしくは非分枝状、飽和もしくは不飽和、環式、多環式もしくは非環式種、及びそれらの組合せを含む、水素と炭素原子だけを含有する置換基をさす。ヒドロカルビル基の限定されない例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0037】
本明細書において、用語「置換ヒドロカルビル」及び「置換炭化水素」とは、1又はそれ以上の非ヒドロカルビル置換基で置換されているヒドロカルビル基をさす。非ヒドロカルビル置換基の限定されない例は、ヘテロ原子である。本明細書において、「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の原子をさす。ヘテロ原子は、周期律表の第IV、V、VI、及びVII族の非炭素原子であってよい。ヘテロ原子の限定されない例としては、F、Cl、Br、N、O、P、B、S、及びSiが挙げられる。本明細書において、用語「ハロヒドロカルビル」とは、1又はそれ以上のハロゲン原子で置換されているヒドロカルビルをさす。
【0038】
一実施形態では、構造(I)のRのヒドロカルビル基には、1〜10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換ヒドロカルビル基が含まれ得る。
【0039】
構造(I)の芳香族酸エステルのR−Rは、同じであるか又は異なり、各々は、水素、1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜10個の原子を有する置換ヒドロカルビル基、1〜10個の炭素原子を有するカルボン酸塩、ヘテロ原子、及びそれらの組合せから選択される。
【0040】
一実施形態では、芳香族酸エステルは、安息香酸エステルである。本明細書において、「安息香酸エステル」は、下の構造(II):
【化6】

をもつモノカルボン酸エステルである。
【0041】
前記式中、Rは、構造(I)のRと同じである。A−Aは、同じであるか又は異なり、各々は、水素、1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜10個の原子を有する置換ヒドロカルビル基、ヘテロ原子、及びそれらの組合せから選択される。適した安息香酸エステルの限定されない例としては、アルキルp−アルコキシベンゾエート(例えば、エチルp−メトキシベンゾエート、メチルp−エトキシベンゾエート、エチルp−エトキシベンゾエートなど)、アルキルベンゾエート(例えば、エチルベンゾエート、メチルベンゾエートなど)、アルキルp−ハロベンゾエート(エチルp−クロロベンゾエート、エチルp−ブロモベンゾエート)、ベンゾイルハライド(例えば、ベンゾイルクロライドなど)、及び安息香酸無水物が挙げられる。一実施形態では、安息香酸エステルは、エチルベンゾエート、ベンゾイルクロライド、エチルp−ブロモベンゾエート、n−プロピルベンゾエート、及び安息香酸無水物から選択される。もう一つの実施形態では、安息香酸エステルは、エチルベンゾエートである。
【0042】
一実施形態では、芳香族酸エステルは、フタル酸エステルである。本明細書において、「フタル酸エステル」とは、下の構造(III)をもつポリカルボン酸エステルをさす。
【化7】

【0043】
前記式中、R及びRは、同じであるか又は異なり、各々は、1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル及び1〜10個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基から選択される。B−Bは、同じであるか又は異なり、各々は、水素、1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜10個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、ヘテロ原子、及びそれらの組合せから選択される。適したフタル酸エステルの限定されない例としては、ジメチルフタラート、ジエチルフタラート、ジ−n−プロピルフタラート、ジイソプロピルフタラート、ジ−n−ブチルフタラート、ジイソブチルフタラート、ジ−tert−ブチルフタラート、ジイソアミルフタラート、ジ−tert−アミルフタラート、ジネオペンチルフタラート、ジ−2−エチルヘキシルフタラート、ジ−2−エチルデシルフタラート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フタラート、ジイソブチル4−t−ブチルフタラート、及びジイソブチル4-クロロフタラートが挙げられる。一実施形態では、フタル酸エステルは、ジイソブチルフタラートである。
【0044】
一実施形態では、芳香族酸エステルには、アシルハライド又は無水物が含まれる。特定の理論に縛られることを望むものではないが、アシルハライド及び/又は無水物は、プロ触媒前駆体のエトキシド種と反応して対応するエチルエステルを形成すると考えられる。一実施形態では、ベンゾイルクロライドは、単独で、又はエチルベンゾエートと組み合わせて使用される。もう一つの実施形態では、フタロイルクロライド及び/又は無水フタル酸を、フタラートを置き換えるために使用する。
【0045】
一実施形態では、内部電子供与体は、ジ−エーテルである。ジ−エーテルは、構造(IV)により表されるジアルキルジ−エーテル化合物であってよい。
【化8】

【0046】
前記式中、R〜Rは、相互に独立に、アルキル、アリール又は20個までの炭素原子を有するアラアルキル基であり、それは、R及びRが水素原子であってもよいという条件で、所望により第14族、第15族、第16族、又は第17族のヘテロ原子を含有することができる。ジアルキルエーテルは、線状であっても分枝状であってもよく、以下の群:1〜18個の炭素原子をもつ、アルキル、脂環式、アリール、アルキルアリールもしくはアリールアルキルラジカル、及び水素の1又はそれ以上を含んでよい。適したジアルキルジエーテル化合物の限定されない例としては、ジメチルジエーテル、ジエチルジエーテル、ジブチルジエーテル、メチルエチルジエーテル、メチルブチルジエーテル、メチルシクロヘキシルジエーテル、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソ-ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジエトキシプロパン、2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−1,3−ジエトキシプロパン、2−クミル−1,3−ジエトキシプロパン、2−(2−フェニルエチル(phenyllethyl))−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(ジフェニルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−ナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(フルオロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−デカヒドロナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−t−ブチルフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−n−プロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−n−プロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−エチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(p−クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジ−n−ブトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−t−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジネオペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−(3,7−ジメチルオクチル)1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル(dicylopentyl)−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−ヘプチル−2−n−ペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、1,3−ジシクロヘキシル−2,2−ビス(メトキシメチル)プロパン、3,3−ビス(メトキシメチル)−2,5−ジメチルヘキサン、又は前述の任意の組合せが挙げられる。一実施形態では、内部電子供与体は、1,3−ジシクロヘキシル−2,2−ビス(メトキシメチル)プロパン、3,3−ビス(メトキシメチル)−2,5−ジメチルヘキサン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン及びそれらの組合せである。
【0047】
一実施形態では、内部電子供与体にはシリルエステルが含まれうる。一実施形態では、シリルエステルは、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、2008年11月25日出願の同時係属中の米国特許出願第61/117,820号(代理人整理番号67098)に開示されるあらゆるシリルエステルであってよい。
【0048】
一実施形態では、シリルエステルは、下に示されるような構造(V)を有する。
【化9】

【0049】
「m」及び「n」の文字は、各々1から5までの整数であり、m及びnは同じであるか又は異なり、m及びnは、各々、それぞれの炭素鎖中の炭素原子の数を示す。Cm炭素鎖及び/又はCn炭素鎖中のさらなる炭素には、各々、1又はそれ以上のR’置換基(群)が含まれることは当然理解される。R’置換基(群)は、水素、又は1〜20個の炭素原子を有する置換/非置換ヒドロカルビル基であってよい。
【0050】
構造(V)の置換基R、R、R、R、R、R及びRは、同じであっても異なっていてもよい。R−Rの各々は、水素、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びそれらの組合せから選択される。
【0051】
構造(V)の記号「X」は、電子供与基を表す。用語「電子供与基」とは、1又はそれ以上の電子対をプロ触媒前駆体に供与する官能基をさす。電子対は、一般にプロ触媒形成の間に、例えば、例としてハロゲン化の間などに、供与される。適した電子供与基の限定されない例としては、−C(=O)OR、−O(O=)CR、−(O=)CNHR、−(O=)CNRR'、−NH(O=)CR、−NR’(O=)CR、−C(=O)R、−OR、−NHR、−NR’R、−SR、S(=O)R、−S(=O)R、−OS(=O)(OR)、及びそれらの組合せが挙げられる。電子供与基XのR及びR’は、1〜20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換ヒドロカルビル基であってよい。
【0052】
一実施形態では、内部電子供与体は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、2008年11月25日出願の同時係属中の米国特許出願第61/117,763号(代理人整理番号67097)に開示される、混合された内部電子供与体であってよい。
【0053】
一実施形態では、プロ触媒組成物には、マグネシウム部分、チタン部分、及び1又はそれ以上の内部電子供与体の組合せが含まれる。マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体(群)は、本明細書に開示されるいずれの個別の組成であってよい。
【0054】
一実施形態では、プロ触媒組成物は、内部電子供与体と複合体を形成した混合マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。「MagTi化合物」は、式MgTi(OR(IED)を有し、ここで、Rは、1〜14個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素ラジカル、又は、R’が1〜14個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素ラジカルであるCOR’であり;各々のOR基は、同じであるか又は異なり;Xは、独立に、塩素、臭素又はヨウ素、好ましくは塩素であり;dは、0.5〜56、又は2〜4であり;fは、2〜116又は5〜15であり;かつ、gは、0.5〜116、又は1〜3である。用語「IED」とは、内部電子供与体をさす。内部電子供与体は、本明細書に開示されるいずれの内部電子供与体であってよい。MagTi化合物の限定されない例としては、The Dow Chemical Company,Midland,Michiganより入手可能なSHACの商標名のプロ触媒が挙げられる。
【0055】
一実施形態では、プロ触媒組成物のチタン含量は、総固体重量に基づいて、約0.1重量%〜約6.0重量%、又は約1.0重量%〜約4.5重量%、又は約1.5重量%〜約3.5重量%である。固体プロ触媒組成物中のチタン対マグネシウムの重量比は、好適には約1:3と約1:160の間、又は約1:4と約1:50の間、又は約1:6と1:30の間である。重量百分率は、プロ触媒組成物の総重量に基づく。
【0056】
一実施形態では、マグネシウム対内部電子供与体のモル比は、約100:1〜約1:1、又は約30:1〜約2:1、又は約15:1〜約3:1である。重量百分率は、プロ触媒組成物の総重量に基づく。
【0057】
もう一つの実施形態では、プロ触媒組成物には、チタンクロライドがその上に付着し、内部電子供与体がその中に組み込まれている、マグネシウムクロライド担体が含まれる。
【0058】
プロ触媒組成物中のエトキシド含量は、前駆体金属エトキシドの金属ハライドへの変換の完全性を示す。内部電子供与体は、ハロゲン化の間にエトキシドがハロゲン化物に変換されるのを助ける。一実施形態では、プロ触媒組成物には、約0.01重量%〜約1.0重量%、又は約0.05重量%〜約0.5重量%のエトキシドが含まれる。重量百分率は、プロ触媒組成物の総重量に基づく。
【0059】
一実施形態では、内部電子供与体は、リン原子を含まないか、あるいはリン原子がない。もう一つの実施形態では、プロ触媒組成物は、リン原子を含まないか、あるいはリン原子がない。
【0060】
本触媒組成物には、共触媒が含まれる。本明細書において、「共触媒」は、プロ触媒を活性重合触媒に変換する能力のある物質である。共触媒としては、アルミニウム、リチウム、亜鉛、錫、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、及びそれらの組合せの、水素化物、アルキル、又はアリールを挙げることができる。一実施形態では、共触媒は、式RAlにより表されるヒドロカルビルアルミニウム共触媒であり、ここで、各々のRは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヒドリドラジカルであり;少なくとも1つのRは、ヒドロカルビル基であり;2又は3個のRラジカルは、環状ラジカルに加わって複素環構造を形成してよく;各々のRは、同じであっても異なっていてもよく;かつ、ヒドロカルビルラジカルである各々のRは、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する。さらなる実施形態では、各々のアルキルラジカルは、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、かかるヒドロカルビルラジカルは、混合ラジカルであり得る、すなわち、該ラジカルはアルキル、アリール、及び/又はシクロアルキル基を含み得る。適したラジカルの限定されない例は:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、5,5−ジメチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、フェニル、フェネチル、メトキシフェニル、ベンジル、トリル、キシリル、ナフチル、ナフタル(naphthal)、メチルナプチル(methylnapthyl)、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルである。
【0061】
適したヒドロカルビルアルミニウム化合物の限定されない例は、次の通りである:トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、ジ−イソブチルアルミニウムヒドリド、ジヘキシルアルミニウムヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、ヘキシルアルミニウムジヒドリド、ジ−イソブチルヘキシルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、トリドデシルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリナフチルアルミニウム、及びトリトリルアルミニウム。一実施形態では、共触媒は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、ジ−イソブチルアルミニウムヒドリド、及びジヘキシルアルミニウムヒドリドから選択される。
【0062】
一実施形態では、共触媒は、式RAlX3−nにより表されるヒドロカルビルアルミニウム化合物であり、ここでnは、1又は2であり、Rは、アルキルであり、かつ、Xは、ハロゲン化物又はアルコキシドである。適した化合物の限定されない例は、次の通りである:メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、テトラエチルジアルミノキサン、テトライソブチルジアルミノキサン、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、及びジメチルアルミニウムクロライド。
【0063】
一実施形態では、共触媒は、トリエチルアルミニウムである。アルミニウムのチタンに対するモル比は、約5:1〜約500:1、又は約10:1〜約200:1、又は約15:1〜約150:1、又は約20:1〜約100:1である。もう一つの実施形態では、アルミニウムのチタンに対するモル比は、約45:1である。
【0064】
本触媒組成物には、外部電子供与体が含まれる。本明細書において、「外部電子供与体」は、プロ触媒形成とは独立して付加される化合物であり、1対の電子を金属原子に供与する能力のある少なくとも1つの官能基を含む。一実施形態では、外部電子供与体には、リン系化合物が含まれる。本明細書において、「リン系の」化合物は、1又はそれ以上のリン原子を含む化合物であり、本明細書に開示される互変異性体を除いて、ホスホリル基(P=O)を含む化合物を除外する。一実施形態では、リン系化合物には、次の:ホスフィット、ホスホニット、ピロホスフィット、ホスファゼン、及びジホスファゼンの1又はそれ以上が含まれる。特定の理論に縛られるものではないが、本リン系外部電子供与体は、水素応答及び/又は触媒の立体選択性を増強する(すなわち、所与水素/モノマー比でのポリマーメルトフローを増大させ、かつ/又はフォルマント(formant)ポリマー中のキシレン可溶部材料を減少させる)と考えられる。
【0065】
一実施形態では、外部電子供与体には、ホスフィットが含まれる。ホスフィットは、構造(VI)を有する:
【化10】

【0066】
前記式中、R、R、及びRは、同じであるか又は異なっている。R−Rの各々は、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びそれらの組合せから選択される。
【0067】
一実施形態では、構造(VI)のR−Rは、同じであるか又は異なり、R−Rの各々は、C−Cアルキル基、及びそれらの組合せから選択される。
【0068】
一実施形態では、構造(VI)のR−Rは、同じであるか又は異なり、R−Rの各々は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、C環構造、C環構造、及びそれらの組合せから選択される。本明細書において、「C環構造」は、5個の炭素原子を含有する環状構造である。「C環構造」は、6個の炭素原子を含有する環状構造である。環構造は、芳香族であっても非芳香族であってもよい。環構造は、単環式であっても多環式であってもよく、ヒドロカルビルであってよく、又はヘテロ原子を含んでもよい。C環構造の限定されない例は、シクロペンチル基である。C環構造の限定されない例としては、シクロヘキシル基又はフェニル基が挙げられる。多環式環構造の限定されない例は、フルオレン系化合物である。
【0069】
一実施形態では、構造(VI)のR−Rの各々は、メチル基であり、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、C環構造、及びC環構造から選択される。
【0070】
一実施形態では、構造(VI)のR−Rの各々は、エチル基であり、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、C環構造、C構造、及び、フルオレン系化合物である多環式環構造から選択される。
【0071】
一実施形態では、構造(VI)のR−Rの各々は、エチル基であり、構造(VI)のRは、メチル基である。
【0072】
一実施形態では、構造(VI)のR−Rの各々は、エチル基であり、Rは、プロピル基である。
【0073】
一実施形態では、構造(VI)のR−Rの各々は、ブチル基である。
【0074】
一実施形態では、構造(VI)のR−Rの各々は、エチル基である。
【0075】
一実施形態では、R−Rの少なくとも1つ、又は少なくとも2つのR基は、P−環構造の環員である。本明細書において、「P−環構造」は、少なくとも1つのP−O結合が含まれる環構造である。P−環構造は、単環式構造であっても多環式構造であってもよい。P−環構造は芳香族であってもなくてもよい。P−環構造に適した環員の限定されない例としては、次の原子:C、O、P、N、及びSが挙げられる。一実施形態では、P−環構造には、5〜8員が含まれる。さらなる実施形態では、R−Rの各々は、P−環構造の環員である。
【0076】
構造(VI)に適したP−環構造の限定されない例を、下の表Aに示す。
【表1】

【0077】
一実施形態では、外部電子供与体は、全体又は一部において共触媒と複合体形成されうる。
【0078】
一実施形態では、外部電子供与体には、ホスフィット及び1又はそれ以上のアルコキシシランが含まれる。ホスフィットは、本明細書に開示されるいずれのホスフィットであってもよい。アルコキシシランは、一般式:SiR(OR’)4−m(I)を有し、ここで、Rは、独立に出現のたびに、水素、あるいは、1又はそれ以上の第14族、第15族、第16族、又は第17族ヘテロ原子を含有する1又はそれ以上の置換基で所望により置換されたヒドロカルビル又はアミノ基であり、前記Rは、水素及びハロゲンを計算に入れずに20個までの原子を含有し;R’は、C1−20アルキル基であり;かつ、mは、0、1、2又は3である。一実施形態では、Rは、C6−12アリール、アルキル又はアラルキル、C3−12シクロアルキル、C3−12分枝アルキル、又はC3−12環状もしくは非環状アミノ基であり、R’は、C1−4アルキルであり、かつ、mは、1又は2である。適したシラン組成物の限定されない例としては、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、エチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、及びジメチルジメトキシシランが挙げられる。一実施形態では、アルコキシシランは、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、及びその任意の組合せである。もう一つの実施形態では、アルコキシシランは、ジシクロペンチルジメトキシシランである。
【0079】
一実施形態では、外部電子供与体には、約0.1モル%〜約99.9%モル% ホスフィット及び約99.9モル%〜約0.1モル% アルコキシシランが含まれてよい。
【0080】
一実施形態では、触媒組成物には、活性制限剤(ALA)が含まれる。本明細書において、「活性制限剤」(「ALA」)は、高温(すなわち約85℃よりも高い温度)下で触媒活性を低下させる材料である。ALAは、重合反応器の不調を抑制するか、あるいは防ぎ、重合プロセスの継続性を確保する。一般に、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応器温度が上昇するにつれて増大する。チーグラー・ナッタ触媒はまた、一般に生成されるポリマーの融点温度付近で高い活性を維持する。発熱重合反応により生成された熱は、ポリマー粒子に凝集塊を形成させる可能性があり、最終的にポリマー製造プロセスの継続性の崩壊をもたらす可能性がある。ALAは、高温下で触媒活性を低下させ、それにより反応器の不調を防ぎ、粒子の凝集を減少させ(又は防ぎ)、重合プロセスの継続性を確保する。
【0081】
活性制限剤は、カルボン酸エステル、ジエーテル、ジオールエステル、及びそれらの組合せであってよい。カルボン酸エステルは、脂肪族もしくは芳香族、モノ−もしくはポリ−カルボン酸エステルであってよい。適したポリカルボン酸エステルの限定されない例としては、ジメチルフタラート、ジエチルフタラート、ジ−n−プロピルフタラート、ジイソプロピルフタラート、ジ−n−ブチルフタラート、ジイソブチルフタラート、ジ−tert−ブチルフタラート、ジイソアミルフタラート、ジ−tert−アミルフタラート、ジネオペンチルフタラート、ジ−2−エチルヘキシルフタラート、及びジ−2−エチルデシルフタラートが挙げられる。
【0082】
脂肪族カルボン酸エステルは、C−C30脂肪酸エステルであってよく、モノ−もしくはポリ−(2又はそれ以上の)エステルであってよく、直鎖又は分枝鎖であってよく、飽和又は不飽和、及びその任意の組合せであってよい。C−C30脂肪酸エステルはまた、1又はそれ以上の第14族、第15族又は第16族ヘテロ原子含有置換基で置換されていてもよい。適したC−C30脂肪酸エステルの限定されない例としては、脂肪族C4−30モノカルボン酸のC1−20アルキルエステル、脂肪族C8−20モノカルボン酸のC1−20アルキルエステル、脂肪族C4−20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1−4アリルモノ−及びジエステル、脂肪族C8−20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1−4アルキルエステル、ならびに、C2−100(ポリ)グリコール又はC2−100(ポリ)グリコールエーテルのC4−20モノ−もしくはポリカルボキシレート誘導体が挙げられる。さらなる実施形態では、C−C30脂肪酸エステルは、イソプロピルミリステート、ジ−n−ブチルセバケート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ−もしくはジアセテート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ−もしくはジ−ミリステート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ−もしくはジ−ラウレート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ−もしくはジ−オレエート、グリセリルトリ(アセテート)、C2−40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリ−エステル、ならびにそれらの混合物であってよい。さらなる実施形態では、C−C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリステート又はジ−n−ブチルセバケートである。
【0083】
一実施形態では、活性制限剤には、ジエーテルが含まれる。ジエーテルは、既に開示される構造(IV)により表されるいずれのジ−エーテルであってよい。
【0084】
一実施形態では、活性制限剤には、次の構造(VII)を有するスクシネート組成物が含まれる:
【化11】

【0085】
前記式中、R及びR’は、同じであるか又は異なり、R及び/又はR’は、以下の群:線状もしくは分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル又はアルキルアリール基、の1又はそれ以上を含有し、所望によりヘテロ原子を含有する。1又はそれ以上の環構造は、炭素原子の2位及び3位の一方又は両方を介して形成することができる。
【0086】
一実施形態では、活性制限剤には、次の構造(VIII)により表されるジオールエステルが含まれる:
【化12】

【0087】
前記式中、nは、1〜5の整数である。R及びRは、同じであっても異なっていてもよく、各々は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、アリル、フェニル、又はハロフェニル基から選択されうる。R、R、R、R、R、及びRは、同じであっても異なっていてもよく、各々は、水素、ハロゲン、1〜20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換ヒドロカルビルから選択されうる。R−R基は、所望により、炭素、水素又は両方を置換する1又はそれ以上のヘテロ原子を含んでよく、該ヘテロ−原子は、窒素、酸素、硫黄、ケイ素、リン及びハロゲンから選択される。R及びRは、同じであっても異なっていてもよく、どちらかのフェニル環の2位、3位、4位、5位、及び6位のいずれの炭素原子と結合されてもよい。
【0088】
一実施形態では、外部電子供与体及び活性制限剤は、重合反応器に別々に添加され得る。もう一つの実施形態では、外部電子供与体及び活性制限剤は、事前に一緒に混合した後、重合反応器に混合物として添加され得る。混合物中には、1よりも多くの外部電子供与体又は1よりも多くの活性制限剤が使用され得る。
【0089】
一実施形態では、触媒組成物には、前述のアルコキシシランのいずれか及び/又は前述の活性制限剤のいずれかと組み合わせた前述のホスフィットのいずれかが含まれる。本触媒組成物のいずれかは、本明細書に開示される2又はそれ以上の実施形態を含んでよい。
【0090】
本開示は、もう一つの触媒組成物を提供する。一実施形態では、プロ触媒組成物、共触媒、及び外部電子供与体を含む触媒組成物が提供される。プロ触媒には、マグネシウム部分が含まれる。プロ触媒組成物及び共触媒は、本明細書に開示されるいずれの個別のプロ触媒組成物及び共触媒であってもよい。外部電子供与体は、ホスホニットを含む。プロ触媒組成物及び共触媒は、本明細書に開示されるいずれの個別のプロ触媒組成物及び共触媒であってもよい。触媒組成物には、所望によりアルコキシシラン及び/又はALAが含まれてよい。アルコキシシラン及び/又はALAは、本明細書に開示されるいずれの個別のアルコキシシラン及び/又はALAであってもよい。
【0091】
一実施形態では、ホスホニットは、構造(IX)を有する:
【化13】

【0092】
前記式中、R及びRは、同じであるか又は異なっている。R及びRの各々は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基から選択される。
【0093】
用語Xは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、置換アミノ基、非置換アミノ基、ハロゲン化物、偽ハロゲン化物、又はヒドロキシル基(−OH)から選択される基を表す。本明細書において、「偽ハロゲン化物」とは、電荷及び反応性がハロゲン化物に似ている、ともに結合した2又はそれ以上の原子をさす。適した偽ハロゲン化物の限定されない例としては、アジド、イソシアネート、イソシアニド、カルボキシレート、スルホネート、ホスフィネート、及びホスフェートが挙げられる。
【0094】
本明細書において、「アミノ基」とは、アンモニア、第一級アミン、又は第二級アミンから誘導される窒素含有化合物(それぞれ0、1、又は2個の、1〜20個の炭素原子を有する、置換(もしくは非置換)ヒドロカルボニル基をもつ)をさす。適したアミノ基の限定されない例としては、−NH、−NHR、又は−NRが挙げられ、ここでR及びRは、1〜20個の炭素原子を有する置換(もしくは非置換)ヒドロカルボニル基である。一実施形態では、R及びRは、一緒になるか、あるいは結合して環構造を形成することができる。さらなる実施形態では、R及び/又はRは、一緒になるか、あるいは、構造(IX)のR及び/又はRと結合して環構造を形成することができる。一実施形態では、Xは、第二級アミノ基であり、構造(IX)は、ホスホルアミダイトである。
【0095】
一実施形態では、Xは、ヒドロキシル基(−OH)である。Xがヒドロキシル基である場合、構造(IX)は、互変異性体である。「互変異性体」は、本明細書において、水素原子の移動の結果生じる2つの相互転換可能な構造の間で化学平衡状態である化合物である。従って、Xが、ヒドロキシル基である場合、構造(IX)は、下の平衡(X)により表される互変異性体である:
【化14】

【0096】
一実施形態では、R、R及びXのいずれか、又はR、R及びXの少なくとも2個は、一緒になるか、あるいは、ともに結合してP−環構造を形成することができる。一実施形態では、P−環構造には、5〜8員が含まれる。さらなる実施形態では、R、R及びXの各々は、P−環構造の環員である。
【0097】
構造(IX)に適したP−環構造の限定されない例を、下の表Bに示す。
【表2】

【0098】
一実施形態では、構造(IX)のR及びRは、同じであるか又は異なっている。Xは、ヒドロカルビル基である。R、R、及びXの各々は、C−Cアルキル基、及びそれらの組合せから選択される。
【0099】
一実施形態では、構造(IX)のR及びRは、同じであるか又は異なっている。Xは、ヒドロカルビル基である。R、R、及びXの各々は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、C環構造、C環構造、及びそれらの組合せから選択される。
【0100】
一実施形態では、構造(IX)のR及びRの各々は、メチル基である。Xは、ハロゲン化物又はヒドロカルビル基から選択される。ヒドロカルビル基は、C−Cアルキル基である。C−Cアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、C環構造、C環構造から選択される。もう一つの実施形態では、Xは、クロライドである。
【0101】
一実施形態では、構造(IX)のR及びRの各々は、エチル基である。Xは、ハロゲン化物又はヒドロカルビル基から選択される。ヒドロカルビル基は、C−Cアルキル基である。C−Cアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、C環構造、C環構造から選択される。さらなる実施形態では、Xは、クロライドである。
【0102】
一実施形態では、構造(IX)のR及びRの各々は、エチル基である。Xは、メチル基であるヒドロカルビル基である。
【0103】
一実施形態では、外部電子供与体は、全体又は一部において共触媒と複合体形成されうる。
【0104】
一実施形態では、外部電子供与体には、ホスホニット及びアルコキシシランが含まれる。アルコキシシランは、本明細書に開示されるいずれのアルコキシシランであってよい。さらなる実施形態では、外部電子供与体には、約0.1モル%〜約99.9%モル% ホスホニット及び約99.9モル%〜約0.1モル% アルコキシシランが含まれてよい。さらなる実施形態では、触媒組成物には、ALAが含まれる。
【0105】
一実施形態では、外部電子供与体には、ホスフィット及びホスホニットが含まれる。ホスフィットは、本明細書に開示されるいずれのホスフィットであってよい。ホスホニットは、本明細書に開示されるいずれのホスホニットであってよい。外部電子供与体には、約0.1モル%〜約99.9モル%のホスフィット及び約99.9モル%〜約0.1モル%のホスホニットが含まれてよい。さらなる実施形態では、外部供与体には、ホスフィット、ホスホニット、及びアルコキシシランが含まれる。なおさらなる実施形態では、触媒組成物には、ALAが含まれる。
【0106】
本開示は、もう一つの触媒組成物を提供する。一実施形態では、プロ触媒組成物、共触媒、及び外部電子供与体を含む触媒組成物が提供される。プロ触媒組成物には、マグネシウム部分が含まれる。外部電子供与体は、ピロホスフィットを含む。外部電子供与体には、所望により本明細書において考察されるアルコキシシランが含まれてよい。触媒組成物には、所望により既に本明細書に開示されている活性制限剤が含まれてよい。
【0107】
プロ触媒組成物は、本明細書に開示されるいずれのプロ触媒組成物であってよい。共触媒は、本明細書に開示されるいずれの共触媒であってよい。
【0108】
触媒組成物には、ピロホスフィットを含む外部電子供与体が含まれる。ピロホスフィットは、構造(XI)を有する:
【化15】

【0109】
前記式中、R、R、R及びRは、同じであるか又は異なり、各々は、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びそれらの組合せから選択される。
【0110】
一実施形態では、R−Rは、同じであるか又は異なっている。構造(XI)のR−Rの各々は、C−Cアルキル基、及びそれらの組合せから選択される。
【0111】
一実施形態では、構造(XI)のR−Rは、同じであるか又は異なっている。R−Rの各々は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、C環構造、C環構造、及びそれらの組合せから選択される。
【0112】
一実施形態では、構造(XI)のR−Rの各々は、メチル基である。
【0113】
一実施形態では、構造(XI)のR−Rの各々は、エチル基である。
【0114】
一実施形態では、構造(XI)のR−Rの各々は、ブチル基である。
【0115】
一実施形態では、R−Rの少なくとも1つのR基、又は少なくとも2つのR基は、P−環構造の環員である。一実施形態では、P−環構造には、5〜8員が含まれる。さらなる実施形態では、R−Rの各々は、P−環構造の環員である。
【0116】
構造(XI)に適したP−環構造の限定されない例を、下の表Cに示す。
【表3】

【0117】
一実施形態では、外部電子供与体には、ピロホスフィット及びアルコキシシランが含まれる。アルコキシシランは、本明細書に開示されるいずれのアルコキシシランであってよい。さらなる実施形態では、外部電子供与体には、約0.1モル%〜約99.9%モル% ピロホスフィット及び約99.9モル%〜約0.1モル% アルコキシシランが含まれてよい。
【0118】
一実施形態では、外部電子供与体には、ピロホスフィットがホスフィット及び/又はホスホニットと組み合わせて含まれる。ホスフィットは、本明細書に開示されるいずれのホスフィットであってよい。ホスホニットは、本明細書に開示されるいずれのホスホニットであってよい。外部電子供与体は、約0.1モル%〜約99.9モル%のホスホニット、約0.1モル%〜約99.9モル%のホスホニット、及び約99.9モル%〜約0.1モル%のピロホスフィットを含んでよい。さらなる実施形態では、外部供与体には、ピロホスフィット、ホスフィット及び/又はホスホニット、及びアルコキシシランが含まれる。もう一つの実施形態では、触媒組成物には、ALAが含まれる。
【0119】
本開示は、もう一つの触媒組成物を提供する。一実施形態では、プロ触媒組成物、共触媒、及び外部電子供与体を含む触媒組成物が提供される。外部電子供与体は、ジホスファゼンを含む。外部電子供与体には、所望により本明細書に開示されるアルコキシシラン及び/又はALAが含まれてよい。
【0120】
プロ触媒組成物は、本明細書に開示されるいずれのプロ触媒組成物であってよい。共触媒は、本明細書に開示されるいずれの共触媒であってよい。一実施形態では、プロ触媒組成物には、マグネシウム部分が含まれる。
【0121】
触媒組成物には、ジホスファゼンを含む外部電子供与体が含まれる。ジホスファゼンは、構造(XII)を有する:
【化16】

【0122】
前記式中R、R、R及びRは、同じであるか又は異なっている。R−Rの各々は、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びそれらの組合せから選択される。
【0123】
一実施形態では、R−Rは、同じであるか又は異なっている。構造(XII)のR−Rの各々は、C−Cアルキル基、及びそれらの組合せから選択される。さらなる実施形態では、R−Rの各々は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、C環構造、C環構造、及びそれらの組合せから選択される。
【0124】
一実施形態では、構造(XII)のR−Rの各々は、エチル基である。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、C環構造、及びC環構造から選択される。
【0125】
一実施形態では、構造(XII)のR−Rの各々は、エチル基であり、構造(XII)のRは、イソプロピル基である。
【0126】
一実施形態では、R−Rの少なくとも1つのR基は、P−環構造の環員である。一実施形態では、P−環構造には、P−O結合及びP−N結合が含まれる。もう一つの実施形態では、P−環構造には、5〜8員が含まれる。
【0127】
一実施形態ではR−Rの少なくとも2つのR基は、1又はそれ以上のP−環構造の環員である。R−Rのいずれか2つのR基は、同じP−環構造の環員でありうる。R−Rのいずれか2つのR基は、2つの別個のP−環構造の環員である。一実施形態では、R−Rの各々は、P−環構造の環員である。
【0128】
構造(XII)に適したP−環構造の限定されない例を下の表Dに示す。
【表4】

【0129】
一実施形態では、外部電子供与体には、ジホスファゼン及びアルコキシシランが含まれる。アルコキシシランは、本明細書に開示されるいずれのアルコキシシランであってよい。さらなる実施形態では、外部電子供与体には、約0.1モル%〜約99.9%モル% ジホスファゼン及び約99.9モル%〜約0.1モル% アルコキシシランが含まれてよい。もう一つの実施形態では、触媒組成物には、ALAが含まれる。
【0130】
一実施形態では、外部電子供与体には、ジホスファゼンがホスフィット及び/又はホスホニット、及び/又はピロホスホニットと組み合わせて含まれる。ホスフィット、ホスホニット、及びピロホスホニットは、本明細書に開示されるいずれの個別のホスフィット、ホスホニット、又はピロホスホニットであってよい。外部電子供与体は、約0.1モル%〜約99.9モル%のジホスファゼン及び約99.9モル%〜約0.1モル%のホスフィット、及び/又はホスホニット、及び/又はピロホスホニットを含んでよい。さらなる実施形態では、外部供与体には、アルコキシシランが含まれる。もう一つの実施形態では、触媒組成物には、ALAが含まれる。
【0131】
一実施形態では、次の:ホスフィット、ホスホニット、ピロホスフィット、及びジホスファゼンの2又はそれ以上の混合物が含まれる外部電子供与体が含まれる触媒組成物が提供される。一実施形態では、外部電子供与体は、前述の組成物のいずれか2つ(二成分)の混合物である。もう一つの実施形態では、外部電子供与体は、前述の組成物のいずれか3つの混合物である。もう一つの実施形態では、外部電子供与体は、前述の組成物の4つ全ての混合物である。もう一つの実施形態では、前述の外部電子供与体混合物のいずれかを含有する触媒組成物には、アルコキシシラン及び/又はALAが含まれうる。
【0132】
一実施形態では、オレフィン系ポリマーを製造するためのプロセスが提供される。プロセスには、重合条件下でオレフィンと触媒組成物を接触させることが含まれる。触媒組成物は、本明細書に開示されるいずれの触媒組成物であってよい。プロセスには、オレフィン系ポリマーを形成することがさらに含まれる。
【0133】
一実施形態では、触媒組成物には、次の:ホスフィット、ホスホニット、ピロホスフィット、及び/又はジホスファゼンの1又はそれ以上からなる外部電子供与体が含まれる。触媒組成物には、所望により、既に開示されているアルコキシシラン及び/又は活性制限剤が含まれてよい。
【0134】
本明細書において、「重合条件」は、所望のポリマーを形成するための触媒組成物とオレフィンとの間の重合を促進するのに適した重合反応器内部の温度及び圧力パラメータである。重合プロセスは、1つ、又は1つより多くの反応器において作用する、気相、スラリー、又はバルク重合プロセスであってよい。
【0135】
1又はそれ以上のオレフィンモノマーを、重合反応器に導入し、触媒組成物と反応させてオレフィン系ポリマー(又はポリマー粒子の流動床)を形成することができる。適したオレフィンモノマーの限定されない例としては、エチレン、プロピレン、C4−20α−オレフィン類、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなど;C4−20ジオレフィン類、例えば、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)及びジシクロペンタジエンなど;スチレン、o−、m−、及びp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン(vinylnapthalene)を含む、C8−40ビニル芳香族化合物;ならびにハロゲン−置換C8−40ビニル芳香族化合物類、例えば、クロロスチレン及びフルオロスチレンなどが挙げられる。
【0136】
一実施形態では、オレフィン系ポリマーは、プロピレン系オレフィン、エチレン系オレフィン、及びそれらの組合せであってよい。一実施形態では、オレフィン系ポリマーは、プロピレン系ポリマーである。
【0137】
一実施形態では、重合は気相重合によって起こる。本明細書において、「気相重合」は、上昇する流動媒体の通過であり、該流動媒体は、流動媒体により流動化した状態で維持されるポリマー粒子の流動床を通じて触媒の存在下で1又はそれ以上のモノマーを含有する。「流動化」「流動化した」又は「流動化する」は、細かく分割されたポリマー粒子の床が、ガスの上昇流により持ち上げられ、かき混ぜられる、気固接触プロセスである。流動化は、流体の上昇流が粒子の床の隙間を通じて微粒子の重量を上回る圧力差及び摩擦抵抗増分を達成する場合に、微粒子の床で起こる。従って、「流動床」は、流動媒体の流れにより流動化した状態で浮遊した複数のポリマー粒子である。「流動媒体」は、1又はそれ以上のオレフィンガス、所望によりキャリアガス(例えば、H又はNなど)及び所望により気相反応器を通じて上る液体(例えば、炭化水素など)である。
【0138】
典型的な気相重合反応器(または気相反応器)には、容器(すなわち反応器)、流動床、分配プレート、入口及び出口パイプ、コンプレッサー、サイクルガス冷却器もしくは熱交換器、及び生成物排出システムが含まれる。容器には、反応帯及び減速帯(velocity reduction zone)が含まれ、その各々は分配プレートの上に位置する。床は、反応帯に位置する。一実施形態では、流動媒体には、プロピレンガス及び少なくとも1つのその他のガス、例えば、オレフィン及び/又はキャリアガス、例えば、水素又は窒素などが含まれる。
【0139】
一実施形態では、接触は、触媒組成物を重合反応器に供給すること及びオレフィンを重合反応器に導入することを経由して起こる。一実施形態では、プロセスには、オレフィンを共触媒と接触させることが含まれる。共触媒は、プロ触媒組成物を重合反応器に導入するよりも前に、プロ触媒組成物(プレミックス)と混合することができる。もう一つの実施形態では、共触媒は、プロ触媒組成物とは独立に重合反応器に添加される。共触媒の重合反応器への独立した導入は、プロ触媒組成物の供給と同時に、又は実質的に同時に起こってよい。
【0140】
一実施形態では、プロセスには、外部電子供与体(及び所望により活性制限剤)とプロ触媒組成物を混合することが含まれる。外部電子供与体は、触媒組成物とオレフィンとの接触よりも前に、共触媒と複合体形成し、プロ触媒組成物(プレミックス)と混合され得る。もう一つの実施形態では、外部電子供与体及び/又は活性制限剤は、独立に重合反応器に添加され得る。一実施形態では、プロ触媒組成物、共触媒、及び外部電子供与体は、重合反応器への添加よりも前に混合されるか、あるいは組み合わされる。
【0141】
一実施形態では、ポリプロピレンホモポリマーは、第1の反応器中で生成される。第1の反応器の内容物は、その後、エチレン(及び所望によりプロピレン)が導入されている第2の反応器に移される。これにより、第2の反応器においてプロピレン−エチレン共重合体の製造がもたらされる。
【0142】
一実施形態では、ポリプロピレンホモポリマーは、第1の反応器におけるプロピレン及び本プロ触媒組成物、共触媒、外部電子供与体、及び活性制限剤のいずれかの導入により形成される。ポリプロピレンホモポリマーは、エチレン(及び所望によりプロピレン)及び外部電子供与体及び所望により活性制限剤とともに第2の反応器に導入される。外部電子供与体及び活性制限剤は、第1の反応器で使用されるそれぞれの成分と同じであっても異なっていてもよい。これにより、第2の反応器においてプロピレン−エチレン共重合体(すなわち耐衝撃性共重合体)が製造される。
【0143】
一実施形態では、オレフィンは、プロピレンである。プロセスには、約0.01g/10分〜約2000g/10分、又は約0.01g/10分〜約1000g/10分、又は約0.1g/10分〜約500g/10分、又は約0.5g/10分〜約150g/10分、又は約1g/10分〜約100g/10分のメルトフローレート(MFR)を有するプロピレン系ポリマーを形成することが含まれる。さらなる実施形態では、プロピレン系ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーである。
【0144】
一実施形態では、オレフィンは、プロピレンである。プロセスには、約0.5%〜約10%、又は約1%〜約8%、又は約1%〜約5%のキシレン可溶部含量を有するプロピレン系ポリマーを形成することが含まれる。さらなる実施形態では、プロピレン系ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーである。
【0145】
一実施形態では、オレフィンは、プロピレンである。プロセスには、約5kg/g/時〜約50kg/g/時、又は約10kg/g/時〜約40kg/g/時の生産速度でプロピレン系ポリマーを形成することが含まれる。本明細書において「生産速度」とは、1時間あたりに重合反応器で消費される触媒組成物1グラム当たりに生成されるポリマーのキログラム数をさす。
【0146】
本重合プロセスは、本明細書に開示される2又はそれ以上の実施形態を含んでよい。
【0147】
外部電子供与体の有効性は、主に、それを使用するプロ触媒組成物とのその適合性による。特定の理論に縛られるものではないが、ある種の外部電子供与体と特定のプロ触媒との間の、同じプロ触媒と適合性の低い外部電子供与体によるよりも良好な結果をもたらす、電気的及び/又は立体適合性が存在する。1つの外部電子供与体が、特定のプロ触媒と別の外部電子供与体よりもうまく機能することになると外見的に示唆するものはないので、この適合性は予測できない。本開示により実証されるように、ホスフィット、及び/又はホスホニット、及び/又はピロホスフィット、及び/又はジホスファゼンを含む外部電子供与体をもつ本触媒組成物は、高い立体規則性、高い活性、及び改良された水素応答を実証し、高いアイソタクチシティ及び高いメルトフローをもつフォルマントオレフィン系ポリマー(特にプロピレン系ポリマー)をもたらす。
【0148】
定義
【0149】
全ての元素周期律表への言及は、2003年にCRC Press社が出版し著作権を有する元素周期律表をさすものとする。また、1又は複数の族へのあらゆる言及は、族の番号付けにIUPAC系を用いるこの元素周期律表において反映される1又は複数の族をさすものとする。それとは反対の記述のない限り、文脈から暗示されない限り、又は当分野で慣用されていない限り、全ての部及び百分率は重量に基づく。米国特許実務の目的上、本明細書において参照されるあらゆる特許、特許出願又は公報の内容は、特に、合成技法、定義(本明細書に記載されるいずれの定義と矛盾のない程度まで)、及び当分野の一般知識の開示に関して、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる(又はその同等の米国特許が参照によりそのように組み込まれる)。
【0150】
用語「含む」及びその派生語は、その同じものが本明細書に開示されていようといまいと、任意の追加の成分、工程又は手順の存在を排除することを意図するものではない。疑いを避けるため、用語「含む」の使用によって特許請求される全ての組成物には、それとは反対の記述のない限り、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物(ポリマーであってもなくても)が含まれてよい。その一方、用語「から本質的になる」は、実現可能性に絶対必要ではない成分、工程又は手順を除いて、あらゆるその他の成分、工程又は手順を後続の説明の範囲から除外する。用語「からなる」は、具体的に説明又は列挙されないあらゆる成分、工程又は手順を除外する。用語「又は」は、特に明記されない限り、列挙されたメンバーを個別に言及し、さらに任意の組合せで言及する。
【0151】
本明細書において列挙されるどの数値範囲にも、任意の下方値とそれより高い任意の値との間に少なくとも2単位の分離があるという条件で、下方値から上方値までの全ての値が1単位の増分で含まれる。一例として、成分、又は組成もしくは物理的特性の値の量、例えば、ブレンド成分、軟化温度、メルトインデックスなどの量が、1〜100の間であると述べられている場合、それは、全ての個々の値、例えば、1、2、3など、及び全ての下位範囲、例えば、1〜20、55〜70、197〜100などは、本願において明示的に列挙されることを意図する。1未満の値については、1単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01又は0.1であると見なされる。これらは具体的に意図されるもののほんの例であり、列挙される最低値と最高値との間の数値の全ての可能性な組合せが、本願において明示的に述べられていると見なされる。言い換えれば、本明細書において列挙される任意の数値範囲には、述べられた範囲内の任意の値又は下位範囲が含まれる。本明細書において考察されるように、数値範囲(参照メルトインデックス、メルトフローレート、及びその他の特性)が列挙されている。
【0152】
用語「ブレンド」又は「ポリマーブレンド」は、本明細書において、2又はそれ以上のポリマーのブレンドである。そのようなブレンドは、混和性であってもなくてもよい(分子レベルで相分離していない)。そのようなブレンドは、相分離していてもしていなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当分野で公知の任意のその他の方法から決定される1又はそれ以上のドメイン配置を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0153】
用語「組成物」には、本明細書において、組成物を構成する材料の混合物、ならびに、組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物が含まれる。
【0154】
用語「ポリマー」は、同じ種類か又は異なる種類のモノマーを重合することにより調製される高分子化合物である。「ポリマー」には、ホモポリマー、共重合体、ターポリマー、インターポリマーなどが含まれる。用語「インターポリマー」は、少なくとも2種類のモノマー又はコモノマーの重合により調製されるポリマーを意味する。それには、限定されるものではないが、共重合体(通常、2つの異なる種類のモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーをさす)、ターポリマー(通常、3つの異なる種類のモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーをさす)、テトラポリマー(通常、4つの異なる種類のモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーをさす)などが含まれる。
【0155】
用語「インターポリマー」とは、本明細書において、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合により調製されるポリマーをさす。従って、一般名インターポリマーには、通常、2つの異なるモノマーから調製されるポリマー、及び2つより多くの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーをさすために用いられる共重合体が含まれる。
【0156】
用語「オレフィン系ポリマー」は、重合形態で、ポリマーの総重量に基づいて、過半数重量パーセントのオレフィンを含有するポリマー、例としてエチレン又はプロピレンである。オレフィン系ポリマーの限定されない例としては、エチレン系ポリマー及びプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0157】
用語「エチレン系ポリマー」とは、本明細書において、過半数重量パーセントの重合エチレンモノマー(重合可能なモノマーの総重量に基づく)を含み、所望により少なくとも1つの重合コモノマーを含むことのできるポリマーをさす。
【0158】
用語「プロピレン系ポリマー」とは、本明細書において、過半数重量パーセントの重合プロピレンモノマー(重合可能なモノマーの総量に基づく)を含み、所望により少なくとも1つの重合コモノマーを含むことのできるポリマーをさす。
【0159】
用語「アルキル」とは、本明細書において、分枝もしくは非分枝の、飽和もしくは不飽和の非環状炭化水素ラジカルをさす。適したアルキルラジカルの限定されない例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、2−プロペニル(又はアリル)、ビニル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル(又は2−メチルプロピル)などが挙げられる。これらのアルキルは、1及び20個の炭素原子を有する。
【0160】
用語「置換アルキル」とは、本明細書において、アルキルの任意の炭素に結合した1又はそれ以上の水素原子が、別の基、例えば、ハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、アルキルハロ、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、及びそれらの組合せなどで置換されている、説明したばかりのアルキルをさす。適した置換アルキルとしては、例えば、ベンジル、トリフルオロメチルなどが挙げられる。
【0161】
用語「アリール」とは、本明細書において、芳香族置換基をさし、単一の芳香環であってもよいし、一緒に縮合しているか、共有結合しているか、又は共通の基、例えば、メチレン又はエチレン部分などに結合している、複数の芳香環であってもよい。芳香環(1又は複数)としては、数ある中でも、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びビフェニルを挙げることができる。これらのアリールは、1及び20個の炭素原子を有する。
【0162】
用語「ホスホニット」には、2つのアルコキシ基と1つのヒドロカルビル基に結合したリン原子をもつ化合物だけでなく、ヒドロカルビル基がハロゲン(ハロホスホニットを形成)又はアミノ基(NR、ホスホルアミダイトを形成)又はヒドロキシル(−OH)基で置換されている化合物及びそれらの互変異性体も含まれる。
【0163】
試験方法
【0164】
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D 1238−01試験法に従って、プロピレン系ポリマーについて230℃、荷重2.16kgで測定される。
【0165】
エチレン系ポリマーに関するメルトインデックスは、ASTM D 1238−01試験法に従って、エチレン系ポリマーについて190℃、荷重2.16kgで測定される。
【0166】
キシレン可溶部(XS)は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,539,309号に記載される、H NMR法を用いて測定される。
【0167】
キシレン可溶部はまた、Viscotek GPCmax VE 2001 GPC溶媒/サンプルモジュール及びTDA 302三重検出器アレイを用いるフローインジェクションポリマー分析(FIPA)によっても測定することができる。FIPA法の詳細な説明は、Journal of Applied Polymer Science, 2002, 85(10),2178及びその中の参照文献に記載されている。
【0168】
多分散指数(PDI)は、Zeichner GR, Patel PD (1981) 「A comprehensive Study of Polypropylene Melt Rheology」 Proc. of the 2nd World Congress of Chemical Eng., Montreal, Canadaによる方法を使用する、TA Instrumentsにより製造される応力制御動的スペクトロメーターであるAR−G2レオメータにより測定される。ETCオーブンを使用して温度を180℃±0.1℃に制御する。オーブンの内部に植物窒素をパージして、サンプルが酸素及び水分により分解しないようにする。一対の直径25mmコーン及びプレートのサンプルホルダーを使用する。サンプルを、50mm×100mm×2mmのプラックに圧縮成形する。サンプルを19mmの正方形に切断し、下部プレートの中央に装填する。上部コーンの形状は、(1)コーン角:5:42:20(°:分:秒);(2)直径:25mm;(3)トランケーション・ギャップ:149μmである。下部プレートの形状は、25mmの円筒である。
試験手順:
・コーン及びプレートのサンプルホルダーを、180℃のETCオーブンで2時間加熱する。次に、窒素ガスブランケット下でギャップをゼロに合わせる。
・コーンを2.5mmまで上昇させ、サンプルを下部プレートの上面に装填する。
・2分の計時を開始する。
・法線力を観察することにより、上部コーンを速やかに下げてサンプルの上面にわずかに載せる。
・2分後、上部コーンを下げることにより、サンプルを165μmのギャップまで下に絞る。
・法線力を観察し、法線力が<0.05ニュートンまで下がったら、過剰なサンプルをスパチュラでコーン及びプレートサンプルホルダーの端から除去する。
・149μmのトランケーション・ギャップまで上部コーンを再び下げる。
・発振周波数掃引試験を、これらの条件下で行う:
i.試験は180℃にて5分間遅延した。
ii.周波数:628.3r/s〜0.1r/s。
iii.データ獲得速度:5ポイント/ディケイド。
iv.歪み:10%
・試験が完了すると、交差点弾性率(crossover modulus)(Gc)を、TA Instrumentsにより供給されるレオロジー・アドバンテージ・データ・アナリシス(Rheology Advantage Data Analysis)プログラムにより検出する。
・PDI=100,000/Gc(Pa単位で表される)。
【0169】
例であって限定でない、本開示の実施例をこれから提供する。
【0170】
1.外部電子供与体
【0171】
下の表1に外部電子供与体として使用した化合物を記載する。
【表5】

【0172】
2.外部電子供与体の調製
【0173】
市販されていないホスフィットは、三塩化リン又はジエチルクロロホスフィットと適切なアルコール(類)から、公開されている方法:(a)Organic Syntheses, Coll. Vol. 4, p.955 (1963); Vol. 31, p.111 (1951)及び/又は(b)米国特許出願第2004/0106815号、に従って調製される。アルコール(9−(メトキシメチル)−9H−フルオレン−9−イル)メタノールは、米国特許出願公開第2004/0106814号及び同第2006/0142146号に記載される通りに調製される。ジホスファザン化合物は、ジエチルクロロホスフィット及び適切な第一級アミンから、公開される方法:(c)J. Chem Soc. 1964, 1543及び/又は(d)Polyhedron 1993, 12(5),533及び/又は(e)Tetrahedron: Asymmetry 1995, 6(2)427及び/又は(f)J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 14712及び/又は(g)J. Organomet Chem. 2005, 690, 742、との類似性により調製される。あるいは、ジホスファゼンは、ClPN(R)PCl(R=ヒドロカルビル)中間体及び適切なアルコール(類)から、公開されている方法:(h)Inorg. Chem. 1982, 21, 2139及び/又は(i)J. Organomet Chem. 1990, 390, 203及び/又は(j)J. Organomet Chem. 2007, 692, 1875、に従って調製することができる。
【0174】
3.触媒組成物の調製
【0175】
SHAC(商標)320触媒の鉱油中のスラリー(固体含量5.4重量%)を、固体成分中のTi含量が2.68重量%の触媒から調製する。触媒組成物のスラリーを、0.20g又は0.33gの5.4% スラリー(それぞれ、6.0又は10.0μモル Ti)と、適切なモル量の外部電子供与体、及び5.4mL(1.5ミリモル)トリエチルアルミニウム(0.28M 溶液として)を20分間前もって混合することにより調製する。添加される外部電子供与体の量は、電子供与体の分子量に基づき、Tiに対して19〜38モル当量の範囲である。全ての操作は、不活性雰囲気のグローブボックス中で行われる。調製後、触媒スラリーを、統合されたニードル(integrated needle)を用いて7つの蓋付きバイアル(septa-capped vial)から重合反応器インジェクターの中に充填した後、反応器の中に注入する。マイクロモルのTiを添加し、外部供与体のTiに対するモル比、及び重合結果を表(2〜5)に収載する。
【0176】
4.重合
【0177】
重合は、攪拌した3.8Lステンレス鋼オートクレーブ中で行う。温度制御は、循環水を用いて、統合された反応器ジャケットを加熱又は冷却することによってり維持する。揮発性物質をガス抜きした後に内容物を空にすることができるように、反応器の上部は運転ごとに開けておく。重合又は触媒調製に使用した全ての化学物質は、精製カラムに通して不純物を取り除く。プロピレン及び溶媒は2本のカラムに通す。この第1のカラムはアルミナを含有し、第2のカラムは精製反応体(purifying reactant)(Engelhard Corporationより入手可能なQ5(商標))を含有する。窒素及び水素ガスは、Q5(商標)反応体を含有する単一カラムに通過させる。
【0178】
反応器ヘッドを本体に取り付けた後、反応器を140℃まで加熱する間及びその後約30℃まで冷却する間に、窒素でパージする。次に、反応器をジエチルアルミニウムクロライドのイソオクタン中溶液(1重量%)で満たし、15分間かき混ぜる。この掃去溶液(scavenging solution)を、次に回収タンクにフラッシし、反応器を約1375gのプロピレンで満たす。マスフローメーターを用いて水素を添加し、反応器を62℃にする。添加した水素の量は、1000〜8000SCCの範囲であり、表(2〜5)中のH/Cモル比として示される。触媒を、油又は軽質炭化水素中のスラリーとして注入し、インジェクターをイソオクタンで3回フラッシして完全な送達を保障する。注入後、反応器温度を5分間にわたって67℃まで一定に上昇させる、又は発熱量が大きい場合には冷却によって67℃で維持する。1時間の運転時間の後、反応器を周囲温度まで冷却し、ガス抜きし、ヘッドを取り外し、内容物を空にする。ポリマー重量は、一晩乾燥後に測定されるか、又は換気したヒュームフードで一定重量に測定される。
【0179】
表1の外部電子供与体を含有する触媒に関する触媒特性、プロセス性能及び結果として得られるポリマー特性を表(2〜5)に記載する。
【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【0180】
本開示は、本明細書に収載される実施形態及び説明に限定されるものでなく、以下の特許請求の範囲内にある実施形態の部分及び様々な実施形態の要素の組合せを含む、それらの実施形態の変更形態も含むことが特に意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム部分を含むプロ触媒組成物と;
共触媒と;
ホスフィット、ホスホニット、ピロホスフィット及びジホスファゼンのうちの少なくとも1つを含む外部電子供与体と
を含む触媒組成物。
【請求項2】
前記プロ触媒組成物が、チタン部分、内部電子供与体、及びそれらの組合せからなる群より選択される成分を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記プロ触媒組成物が、芳香族酸エステル、ジエーテル、シリルエステル、及びそれらの組合せからなる群より選択される内部電子供与体を含む、請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記ホスフィットが、構造(VI)を有し
【化1】

前記ホスホニットが、構造(IX)を有し
【化2】

前記ピロホスフィットが、構造(XI)を有し
【化3】

かつ、前記ジホスファゼンが、構造(XII)を有し
【化4】

式中、R、R、R、R及びRは、同じであるか又は異なり、R−Rの各々は、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びそれらの組合せからなる群より選択され;かつ、
Xは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、置換アミノ基、非置換アミノ基、ハロゲン化物、偽ハロゲン化物、及びヒドロキシル基からなる群より選択される、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記外部供与体が、ホスフィットであり、R−Rが、同じであるか又は異なり、R−Rの各々が、C−Cアルキル基、及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記外部供与体が、ホスホニットであり、R、R、及びXの各々が、同じであるか又は異なり、R、R、及びXの各々が、C−Cアルキル基、及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記外部供与体が、ピロホスフィットであり、R−Rが、同じであるか又は異なり、R−Rの各々が、C−Cアルキル基、及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記外部供与体が、ジホスファゼンであり、R−Rが、同じであるか又は異なり、R−Rの各々が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、C環構造、C環構造、及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記外部電子供与体が、アルコキシシランを含む、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項10】
活性制限剤を含む、請求項4に記載の触媒組成物。

【公表番号】特表2012−514118(P2012−514118A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544586(P2011−544586)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/069693
【国際公開番号】WO2010/078330
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】