説明

リン脂質コポリマー

【課題】医療デバイスおよびそのコーティングの形成のための増強された特性を有するポリマーを改善すること。
【解決手段】少なくとも1種の環状モノマーを、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質を含有する開始剤と接触させる工程;該少なくとも1種の環状モノマーを重合させる工程;および得られたコポリマーを回収する工程、を包含する方法。上記少なくとも1種の環状モノマーはラクトンを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2007年8月15日に出願された米国仮特許出願番号60/964,856の利益および優先権を主張する。この米国仮特許出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、リン脂質を開始剤として利用して形成されたコポリマー、このようなコポリマーを含有する組成物、およびこのようなコポリマーまたは組成物から作製されたかあるいはこのようなコポリマーまたは組成物でコーティングされた物品に関する。
【背景技術】
【0003】
医療デバイスおよびそのコーティングを形成する際の生体適合性材料の使用は、公知である。生体適合性材料は、これらのデバイスの表面特性を改善するために利用され得る。改善され得る表面特性の例としては、細胞接着、タンパク質接着、潤滑性、薬物送達、タンパク質またはDNAの送達などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの材料はまた、移植物に対する身体の免疫応答を最小にし得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療デバイス上の現在の生体適合性材料およびコーティングは、満足に機能するが、医療デバイスおよびそのコーティングの形成のための増強された特性を有するポリマーに関して、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
方法であって、
少なくとも1種の環状モノマーを、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質を含有する開始剤と接触させる工程;
該少なくとも1種の環状モノマーを重合させる工程;および
得られたコポリマーを回収する工程、
を包含する、方法。
【0006】
(項目2)
上記少なくとも1種の環状モノマーがラクトンを含む、項目1に記載の方法。
【0007】
(項目3)
上記少なくとも1種の環状モノマーが、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、ラクチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
【0008】
(項目4)
上記少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質が、ホスホリルコリンジオール、ホスホリルコリンポリオール、ホスホリルコリンマクロジオール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
【0009】
(項目5)
上記少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質が、以下の式:
【0010】
【化5】

のホスホリルコリンポリオールを含み、該式において、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するポリオールであり、そしてyは、約1〜約10の数である、項目1に記載の方法。
【0011】
(項目6)
上記少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質が、以下の式:
【0012】
【化6】

のホスホリルコリンマクロジオールを含み、該式において、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するポリオールであり、Rは、約1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するアルキル基であり、xは、約1〜約1000の数であり、yは、約1〜約10の数であり、そしてzは、約1〜約1000の数である、項目1に記載の方法。
【0013】
(項目7)
上記少なくとも1種の環状モノマーおよび上記少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質を、少なくとも1種のさらなるモノマーと接触させる工程をさらに包含し、該さらなるモノマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマー、ビニルモノマー、シリコーン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
【0014】
(項目8)
コポリマーであって、
以下の式:
【0015】
【化7】

のホスホリルコリンポリオールを含有する少なくとも1種のリン脂質であって、該式において、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するポリオールであり、そしてyは、約1〜約10の数である、リン脂質;および
少なくとも1種の環状モノマー、
を含む、コポリマー。
【0016】
(項目9)
上記少なくとも1種の環状モノマーが、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、ラクチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目8に記載のコポリマー。
【0017】
(項目10)
上記コポリマーが、上記コポリマーの約5重量%〜約95重量%の量の上記リン脂質、および該コポリマーの約5重量%〜約95重量%の量の上記環状モノマーを含む、項目8に記載のコポリマー。
【0018】
(項目11)
少なくとも1種のさらなるモノマーをさらに含み、該さらなるモノマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマー、ビニルモノマー、シリコーン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目8に記載のコポリマー。
【0019】
(項目12)
項目8に記載のコポリマーを含有する医療デバイス。
【0020】
(項目13)
上記コポリマーが上記医療デバイスの少なくとも一部分上のコーティングを構成している、項目12に記載の医療デバイス。
【0021】
(項目14)
上記医療デバイスが、縫合糸、外科手術用メッシュ、抗接着デバイス、コンタクトレンズ、眼内レンズ、ステープル、クリップ、バットレス、ラップバンド、カテーテル、帯具、ステント、移植片、ステント/移植片、結び目なしの創傷閉鎖具、封止剤、接着剤、組織足場、ピン、ねじ、整形外科機器、スペーサー、およびペースメーカーからなる群より選択される、項目12に記載の医療デバイス。
【0022】
(項目15)
コポリマーであって、
以下の式:
【0023】
【化8】

のホスホリルコリンマクロジオールを含む少なくとも1種のリン脂質であって、該式において、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するポリオールであり、Rは、約1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するアルキル基であり、xは、約250〜約750の数であり、yは、約1〜約10の数であり、そしてzは、約250〜約750の数である、リン脂質、および
少なくとも1種の環状モノマー、
を含む、コポリマー。
【0024】
(項目16)
上記少なくとも1種の環状モノマーが、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、ラクチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目15に記載のコポリマー。
【0025】
(項目17)
上記コポリマーが、該コポリマーの約5重量%〜約95重量%の量のリン脂質、および該コポリマーの約5重量%〜約95重量%の量の環状モノマーを有する、項目15に記載のコポリマー。
【0026】
(項目18)
少なくとも1種のさらなるモノマーをさらに含み、該さらなるモノマーが、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマー、ビニルモノマー、シリコーン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目15に記載のコポリマー。
【0027】
(項目19)
項目15に記載のコポリマーを含有する医療デバイス。
【0028】
(項目20)
上記コポリマーが上記医療デバイスの少なくとも一部分上のコーティングを構成している、項目19に記載の医療デバイス。
【0029】
(項目21)
上記医療デバイスが、縫合糸、外科手術用メッシュ、抗接着デバイス、コンタクトレンズ、眼内レンズ、ステープル、クリップ、バットレス、ラップバンド、カテーテル、帯具、ステント、移植片、ステント/移植片、結び目なしの創傷閉鎖具、封止剤、接着剤、組織足場、ピン、ねじ、整形外科機器、スペーサー、およびペースメーカーからなる群より選択される、項目19に記載の医療デバイス。
【0030】
本開示は、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質と、環状モノマーを含む第二のモノマーとを含む、コポリマーを提供する。このようなコポリマーを含有する組成物、医療デバイス、およびコーティングもまた提供される。
【0031】
(要旨)
コポリマーを形成するための方法、および得られるコポリマーが提供される。ある実施形態において、本開示の方法は、少なくとも1種の環状モノマーを、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質を含有する開始剤と接触させる工程、この少なくとも1種の環状モノマーを重合させる工程、および得られたコポリマーを回収する工程を包含する。
【0032】
適切な環状モノマーとしては、ある実施形態において、ラクトンが挙げられ得る。適切な環状モノマーの具体的な例としては、ある実施形態において、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、ラクチド、およびこれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0033】
本開示のコポリマーは、ある実施形態において、以下の式:
【0034】
【化9】

のホスホリルコリンポリオールを含む少なくとも1種のリン脂質、および少なくとも1種の環状モノマーを含み得る。この式において、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するポリオールであり、そしてyは、約1〜約10の数である。
【0035】
ある実施形態において、本開示のコポリマーは、少なくとも1種のさらなるモノマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマー、ビニルモノマー、シリコーン、およびこれらの組み合わせ)を含み得る。
【0036】
他の実施形態において、本開示のコポリマーは、以下の式:
【0037】
【化10】

のホスホリルコリンマクロジオールを含む少なくとも1種のリン脂質、および少なくとも1種の環状モノマーを含み得る。この式において、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するポリオールであり、Rは、約1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するアルキル基であり、xは、約250〜約750の数であり、yは、約1〜約10の数であり、そしてzは、約250〜約750の数である。
【0038】
本開示のコポリマーを含有する組成物もまた、記載される。本開示のコポリマーまたは本開示のコポリマーを含有する組成物から形成され得るか、あるいは本開示のコポリマーまたは本開示のコポリマーを含有する組成物でコーティングされた医療デバイスを備える物品もまた、記載される。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、医療デバイスおよびそのコーティングの形成のための増強された特性を有するポリマーが改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
(詳細な説明)
本開示は、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質モノマーを、少なくとも1種の環状モノマー(ある実施形態において、ラクトン)と含有するコポリマー、およびこのようなコポリマーを含有する組成物を提供する。
【0041】
本開示のコポリマーは、第一のモノマーとして、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質を有し得る。このようなリン脂質は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、ホスホリルコリンジオール、ホスホリルコリンポリオール、ホスホリルコリンマクロジオール、およびこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態において、第一のモノマーとして使用するために適切なリン脂質としては、以下の式:
【0042】
【化11】

のホスホリルコリンポリオールが挙げられる。この式において、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するポリオール(例えば、任意のヒドロキシル含有基(任意のアルコール、ジオール、ポリオールなどが挙げられる)、ならびに少なくとも1個のヒドロキシル基を有する任意のモノマー、オリゴマー、ポリマーなど)であり、そしてyは、約1〜約10、ある実施形態において、約2〜約6の数である。
【0043】
ある実施形態において、Rは、以下の式:
【0044】
【化12】

のものであり得る。
【0045】
他の実施形態において、第一のモノマーとして使用するために適切なリン脂質としては、以下の式:
【0046】
【化13】

のホスホリルコリンマクロジオールが挙げられる。この式において、Rは、上で定義されたとおりであり、Rは、約1個の炭素原子〜約10個の炭素原子、ある実施形態においては、約3個の炭素原子〜約8個の炭素原子を有するアルキル基であり、xは、約1〜約1000、ある実施形態においては、約250〜約750の数であり、yは、約1〜約10、ある実施形態においては、約2〜約6の数であり、そしてzは、約1〜約1000、ある実施形態においては、約250〜約750の数である。
【0047】
少なくとも1個のヒドロキシル基を有するリン脂質がベースとなり得る他のホスホリルコリンの例としては、ホスホリルコリン(例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなど)、およびその組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。モノマーベースのホスホリルコリンを含む他のホスホリルコリンが利用され得、これらとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される場合、「(メタ)アクリル」は、メタクリル基および/またはアクリル基の両方を包含する。
【0048】
本開示のコポリマーは、上記少なくとも1個のヒドロキシル基を有するリン脂質を環状モノマーと重合させることによって、形成され得る。本開示のコポリマーを形成するために利用され得る適切な環状モノマーとしては、ラクトン(例えば、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、バレロラクトン)、ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オンが挙げられる)、グリコリド、ラクチド、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、例えば、カプロラクトンおよび1,5−ジオキセパン−2−オンを用いる場合、これらの環状二量体(これらは、14員のラクトン環である)が、それぞれのモノマーの代わりに使用され得る。
【0049】
上記少なくとも1個のヒドロキシル基を有するリン脂質と上記環状モノマーとの共重合を行うための条件は、当業者の知識の範囲内である。少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質が環状モノマーと反応し得る条件は、使用される特定のリン脂質、使用される特定の環状モノマー、および達成されることが望ましい重合度に依存して広く変動し得る。得られるコポリマー中のリン脂質の量は、このコポリマーの約5重量%〜約90重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約10重量%〜約50重量%であり得、環状モノマーは、このコポリマーの約10重量%〜約95重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約50重量%〜約90重量%の量で存在する。
【0050】
ある実施形態において、環状モノマーおよび少なくとも1個のヒドロキシル基を有するリン脂質は、触媒(例えば、オクタン酸スズ)の存在下で、時々、窒素ガスなどの不活性雰囲気下で化合され得る。
【0051】
ある実施形態において、本開示のコポリマーは、環状モノマーを適切な溶媒中に溶解することにより調製された、モノマー溶液から調製され得る。ある実施形態において、このモノマー溶液は、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質を含有し得る。利用され得る適切な溶媒としては、例えば、水、低級アルコール、上記のものの混合物などが挙げられる。他の実施形態において、水溶液または水性懸濁物が、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質と組み合わせた環状モノマーから形成され得る。なお他の実施形態において、環状モノマーは、有機溶媒と組み合わせられ得、そして得られる溶液が、次いで、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質を含有する、適合性の水溶液と混合されるか、または非適合性の水溶液と乳化され得る。適切な有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、クロロホルム、塩化メチレン、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0052】
本開示のコポリマーを調製することに加えて、これらの方法はまた、ある実施形態において、デバイスの表面/内部の改変のために利用され得る。この改変は、医療デバイスを、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するリン脂質および/または環状モノマーのモノマー溶液で、例えば、浸漬により含浸し、そしてインサイチュでこのモノマー溶液を重合させてグラフトコポリマーを調製すること、あるいは医療デバイスの表面または内部に本開示のコポリマーの相互侵入網目構造を調製することによる。
【0053】
溶液はまた、化学的カップリング剤(例えば、シラン、ビニルシロキサンなど)とともに使用されて、医療デバイスの表面にグラフト重合または相互侵入するのみでなく、本開示のコポリマーをデバイスの表面に共有結合により繋留し得る。
【0054】
他のモノマーとの共重合はまた、モノマー(ある実施形態において、ビニル基を有する)を、例えば、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質と一緒に、エネルギー(照射(例えば、γ線および/または電子線、紫外光、パルスレーザーアブレーションデポジション、プラズマエネルギー処理、化学開始、光開始、陽電子開始が挙げられる高エネルギー放射線など)が挙げられる)に曝露することによって、開始され得る。
【0055】
ある実施形態において、開始のための高エネルギー放射線の使用は有利であり得る。なぜなら、高エネルギー放射線は、さらなる開始剤(例えば、化学開始剤または触媒)の使用を必要としないはずであるからである。例えば、いくつかの実施形態において、γ放射線が、約0.05Mrad〜約0.5Mrad、ある実施形態においては、約0.1Mrad〜約0.3Mradの低線量で適用されて、重合を開始させ得る。
【0056】
重合を開始させるための他の方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、米国特許第5,290,548号、同第5,376,400号、同第5,804,263号、同第5,885,566号、および同第6,387,379号(これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されているものが挙げられる。
【0057】
共重合は、1種以上の重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾ−ビス(2−メチルプロピオニトリル)、ベンゾインメチルエーテル、これらの組み合わせなど)の存在下で行われ得る。使用され得る他の重合開始剤は、当業者の知識の範囲内であり、例えば、「Polymer Handbook」第3版、J.BrandrupおよびE.H.Immergut編、Wiley−Interscience,New Youk出版,1989に開示されているものが挙げられる。
【0058】
ある実施形態において、ヒドロキシル基を有するリン脂質自体が、本開示のコポリマーを形成する際に、開始剤として働き得る。従って、このような実施形態において、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するリン脂質は、環状モノマーの開環重合において開始剤として働き得、そしてこのモノマーと重合して、本開示のコポリマーを形成し、任意のさらなる開始剤を必要としない。
【0059】
他の実施形態において、本開示の得られるコポリマーは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するリン脂質を、このコポリマーの約5重量%〜約95重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約15重量%〜約85重量%の量で有し得る。本開示のコポリマーは、環状モノマーを、このコポリマーの約5重量%〜約95重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約15重量%〜約85重量%の量で有し得る。
【0060】
本開示のコポリマーは、多くの望ましい特性(抗菌特性、低下したタンパク質接着および細胞接着、血液および生物学的組織との適合性、ならびに免疫細胞の減少した活性化が挙げられる)を有する。
【0061】
ある実施形態において、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するリン脂質および環状モノマーはまた、さらなるモノマー(ビニルモノマーが挙げられる)、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリプロピレングリコール(「PPG」)、PEG/PPGコポリマー、シリコーン、これらの組み合わせなどの存在下で共重合されて、優れた溶解度、湿潤性、熱特性、フィルム形成特性などを有するコポリマーを与え得る。
【0062】
例えば、いくつかの実施形態において、本開示のコポリマーは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するリン脂質と、環状モノマーと、さらなるPEGベースのモノマーまたはプレポリマーとのランダムコポリマーを含み得る。
【0063】
少なくとも1個のヒドロキシル基を有するリン脂質および環状モノマーを用いてコポリマーを形成することに加えて、いくつかの実施形態において、これらのさらなる成分は、本開示のコポリマーと、混合物またはブレンドとして組み合わせられ得る。従って、ある実施形態において、本開示のコポリマーとブレンドされ得る材料としては、環状モノマー、ビニルモノマー、PEG、PPG、PEG/PPGコポリマー、シリコーン、および上記のものの組み合わせ、ならびに他のリン脂質(上に記載されたものなどのホスホリルコリンが挙げられる)が挙げられる。本開示のコポリマーがこれらの他のモノマーおよび/またはリン脂質(例えば、ホスホリルコリン)と組み合わせられてブレンドを生成する場合、本開示のコポリマーは、ブレンドをさらに増強するための適合剤として働き得る。
【0064】
本開示のコポリマーは、医療デバイス、薬物送達デバイス、医療デバイスのためのパッケージ材料、そのコーティングなどを形成するために利用され得る。ある実施形態において、本開示のコポリマーは、他のポリマー材料と組み合わせられて、医療デバイス、薬物送達デバイス、医療デバイスのためのパッケージ材料、そのコーティングなどを形成し得る。本開示のコポリマーが組み合わせられ得る他のポリマー材料の例としては、例えば、天然材料、合成材料、生体吸収性材料、および/または生体非吸収性材料の任意の組み合わせが挙げられる。本開示のコポリマーと組み合わせられ得る材料のいくつかの非限定的な例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ホスファジン)、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリプロピレン、脂肪族ポリエステル、グリセロール、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオキサエステル、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ならびにこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンドおよび組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
ある実施形態において、本開示のコポリマーと組み合わせられ得る適切な材料としては、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、および上記のものの種々の組み合わせを有する、ホモポリマー、コポリマー、および/またはブレンドが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、グリコリドとトリメチレンカーボネートとのコポリマーが、本開示のコポリマーと組み合わせられ得る。これらのさらなるコポリマーを形成するための方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、米国特許第4,300,565号(この全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示される方法が挙げられる。グリコリドとトリメチレンカーボネートとの適切なコポリマーは、このコポリマーの約60重量%〜約75重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約65重量%〜約70重量%の量のグリコリドを有し得、トリメチレンカーボネートは、このコポリマーの約25重量%〜約40重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約30重量%〜約35重量%の量で存在する。
【0066】
本開示のコポリマーと組み合わせられ得る他の適切な材料としては、ある実施形態において、グリコリドと、ジオキサノンと、トリメチレンカーボネートとのコポリマーが挙げられる。このような材料としては、例えば、コポリマーの約55重量%〜約65重量%、ある実施形態においてはコポリマーの約58重量%〜約62重量%、いくつかの実施形態においてはコポリマーの約60%の量のグリコリドと、コポリマーの約10重量%〜約18重量%、ある実施形態においては、コポリマーの約12重量%〜約16重量%、いくつかの実施形態においてはコポリマーの約14重量%の量のジオキサノンと、コポリマーの約17重量%〜約35重量%、ある実施形態においては、コポリマーの約22重量%〜約30重量%、ある実施形態においては、コポリマーの約26重量%の量のトリメチレンカーボネートとを有するコポリマーが挙げられ得る。
【0067】
他の実施形態において、グリコリドと、ラクチドと、トリメチレンカーボネートと、ε−カプロラクトンとのコポリマーが、本開示のコポリマーと組み合わせられ得る。このような材料としては、例えば、コポリマーの約14重量%〜約20重量%、ある実施形態においては、コポリマーの約16重量%〜約18重量%、いくつかの実施形態においては、コポリマーの約17重量%のカプロラクトンと、コポリマーの約4重量%〜約10重量%、ある実施形態においては、コポリマーの約6重量%〜約8重量%、いくつかの実施形態においては、コポリマーの約7重量%の量のラクチドと、コポリマーの約4重量%〜約10重量%、ある実施形態においては、コポリマーの約6重量%〜約8重量%、ある実施形態においては、コポリマーの約7重量%の量のトリメチレンカーボネートと、コポリマーの約60重量%〜約78重量%、ある実施形態においては、コポリマーの約66重量%〜約72重量%、ある実施形態においては、コポリマーの約69重量%の量のグリコリドとを有するランダムコポリマーが挙げられ得る。
【0068】
本開示のコポリマーは、医療デバイス、薬物送達デバイス、医療デバイスのためのパッケージ材料、およびこれらのコーティングの製造において、多くの用途を見出し得る。ある実施形態において、外科手術用物品が、本開示のコポリマーから製造され得る。医療デバイスおよび/または外科手術用デバイスの例としては、クリップおよび他のファスナー、ステープル、縫合糸、ピン、ねじ、プロテーゼデバイス、創傷包帯、帯具、薬物送達デバイス、吻合リング、外科手術用ブレード、コンタクトレンズ、抗接着デバイス、眼内レンズ、外科手術用メッシュ、ステント、ステントコーティング、移植片、カテーテル、ステント/移植片、結び目のない創傷閉鎖具、封止剤、接着剤、組織足場、ステープル留めデバイス、バットレス、ラップバンド、整形外科機器、スペーサー、ペースメーカー、および他の移植可能なデバイスが挙げられるが、これらに限定されない。繊維が、本開示のコポリマーから作製され得る。ある実施形態において、本開示のコポリマーから作製される繊維は、他の繊維(吸収性繊維または非吸収性繊維のうちのいずれかを含む)と一緒に編まれるかまたは織られて、布地を形成し得る。これらの繊維はまた、不織材料にされて、メッシュおよびフェルトなどの布を形成し得る。
【0069】
本発明のコポリマーは、当業者の知識の範囲内である任意の技術(例えば、押出し成型、成型および/または溶媒キャスティング)を使用して、物品に形成され得る。これらのコポリマーは、単独で使用されても、他のポリマーとブレンドされてもよく、この他のポリマーは、吸収性であっても非吸収性であってもいずれでもよい。他の材料と組み合わせられた本開示のコポリマーは、ある実施形態において、本開示の組成物と称され得る。
【0070】
本開示のコポリマーまたは組成物を用いて形成され得るパッケージ材料としては、医療デバイス、医薬品、布地、消費財、食品などの製品のためのパッケージが挙げられる。
【0071】
本開示のコポリマーはまた、物品(布地、医療デバイス、およびパッケージ材料が挙げられる)のためのコーティングを形成するために使用され得る。ある実施形態において、本開示のコポリマーまたは組成物を用いて形成されるコーティングは、溶液として塗布され得、そしてこの溶媒が蒸発させられて、コーティング成分(ある実施形態において、本開示のコポリマー、および必要に応じて、他の材料)を残す。この溶液を形成する際に利用され得る適切な溶媒としては、選択されたコーティング組成物のために適切な任意の溶媒または溶媒の組み合わせが挙げられる。適切であるためには、溶媒は、(1)コポリマーを含むコーティング成分と混和性でなければならず、そして(2)コーティングされる物品を形成するために使用される任意の材料の一体性に目に見えるほどの影響を与えてはならない。適切な溶媒のいくつかの例としては、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、アセトニトリル、酢酸、塩化メチレン、クロロホルムおよび水が挙げられる。ある実施形態において、塩化メチレンが、溶媒として使用され得る。
【0072】
本開示による医療デバイスおよびパッケージ材料は、次いで、当業者の知識の範囲内である技術に従って滅菌され得る。
【0073】
本開示のコーティング溶液を調製することは、比較的単純な手順であり得、そしてブレンド、混合などによって達成され得る。1つの実施形態において、本開示のコポリマーおよび塩化メチレンがコーティング溶液を形成するために利用される場合、所望の量のコポリマーが、容器に入れられ得、続いて所望の量の塩化メチレンが添加され得る。次いで、これらの2つの成分は、これらの成分を合わせるために、徹底的に混合され得る。
【0074】
当業者の知識の範囲内である任意の技術を使用して、コーティング溶液またはコーティング懸濁物を物品に塗布し得る。適切な技術としては、浸漬、スプレー、ワイプおよびブラッシングが挙げられる。コーティング溶液またはコーティング懸濁物で濡らされた物品は、引き続いて、この溶媒を気化させて除去するための充分な時間および温度で、乾燥オーブンを通過させられ得るか、または乾燥オーブン内に保持され得る。
【0075】
本開示のコーティングを有する医療デバイスもまた、本開示のコポリマーから形成され得る。他の実施形態において、医療デバイスは、他の吸収性材料、非吸収性材料、およびこれらの組み合わせから形成され得る。医療デバイスを形成するために利用され得る適切な吸収性材料としては、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、ジオキサノン、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組み合わせが挙げられる。医療デバイスを形成するために利用され得る適切な非吸収性材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとのコポリマー、ポリエチレンとポリプロピレンとのブレンド)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリミド、ポリアミド、これらの組み合わせ)などが挙げられる。
【0076】
本開示のコポリマーコーティングでコーティングされ得る布地としては、本開示のコポリマーから作製された繊維、ならびに他の天然繊維、合成繊維、天然繊維のブレンド、合成繊維のブレンド、および天然繊維と合成繊維とのブレンドが挙げられる。布地を形成するために利用される適切な他の材料としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー、ポリエステル/ポリエーテル、ポリウレタン、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組み合わせが挙げられる。適切な材料の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、およびナイロン6,6が挙げられる。
【0077】
上記のように、ある実施形態において、本開示による組成物は、上記コポリマーと他のさらなる成分とを組み合わせることによって形成され得る。ある実施形態において、本開示のコポリマーを含有するコーティング組成物は、脂肪酸成分(例えば、脂肪酸または脂肪酸塩または脂肪酸エステルの塩)と組み合わせられ得る。適切な脂肪酸は、飽和であっても不飽和であってもよく、そして約12個より多くの炭素原子を有する高級脂肪酸が挙げられ得る。適切な飽和脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸およびラウリン酸が挙げられる。適切な不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸が挙げられる。さらに、脂肪酸のエステル(例えば、トリステアリン酸ソルビタン)または硬化ヒマシ油が使用され得る。
【0078】
適切な脂肪酸塩としては、C以上の脂肪酸(特に、約12個〜約22個の炭素原子を有する脂肪酸)の多価金属イオン塩、およびその混合物が挙げられる。ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸の、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩、および亜鉛塩が挙げられる、脂肪酸塩が、本開示のいくつかの実施形態において有用であり得る。いくつかの有用な塩としては、市販の「食品等級」のステアリン酸カルシウムが挙げられ、これは、約3分の1のC16脂肪酸および3分の2のC18脂肪酸、ならびに少量のC14脂肪酸およびC22脂肪酸の混合物を含有する。
【0079】
本開示の組成物に含有され得る適切な脂肪酸エステルの塩としては、乳酸ステアロイルのカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、バリウム塩、または亜鉛塩;乳酸パルミチルのカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、バリウム塩、または亜鉛塩;および/あるいは乳酸オレイルのカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、バリウム塩、または亜鉛塩が挙げられる。ある実施形態において、2−乳酸ステアロイルカルシウム(例えば、商標VERVの下でAmerican Ingredients Co.,Kansas City,MO.から市販されている2−乳酸ステアロイルカルシウム)が利用され得る。利用され得る他の脂肪酸エステル塩としては、乳酸ステアロイルリチウム、乳酸ステアロイルカリウム、乳酸ステアロイルルビジウム、乳酸ステアロイルセシウム、乳酸ステアロイルフランシウム、乳酸パルミチルナトリウム、乳酸パルミチルリチウム、乳酸パルミチルカリウム、乳酸パルミチルルビジウム、乳酸パルミチルセシウム、乳酸パルミチルフランシウム、乳酸オレイルナトリウム、乳酸オレイルリチウム、乳酸オレイルカリウム、乳酸オレイルルビジウム、乳酸オレイルセシウム、および乳酸オレイルフランシウムが挙げられる。上記のものの組み合わせもまた、ある実施形態において利用され得る。
【0080】
ある実施形態において、上記のような脂肪酸成分(乳酸ステアロイルカルシウムを含む)は、本開示のコポリマーと組み合わせられ得るか、または本開示のコポリマーを医療物品、パッケージ、布地などに塗布するために利用される任意のコーティング溶液に含有され得る。
【0081】
利用される場合、脂肪酸成分は、本開示のコポリマーを含有する組成物全体の約5重量%〜約60重量%の量で存在し得る。ある実施形態において、脂肪酸成分は、組成物全体の約15重量%〜約55重量%の量で存在し得る。
【0082】
ある実施形態において、コポリマーは、組成物の約45重量%〜約60重量%の量で存在し得、そして脂肪酸成分(例えば、脂肪酸塩または脂肪酸エステルの塩)は、組成物の約40重量%〜約55重量%の量で存在し得る。他の実施形態において、コポリマーは、組成物の約50重量%〜約55重量%の量で存在し得、そして脂肪酸成分は、組成物の約45重量%〜約50重量%の量で存在し得る。
【0083】
他の実施形態において、本開示のコポリマーは、さらなるポリマー材料(例えば、オリゴマーおよび/またはポリマー)と組み合わせられ得る。さらなるポリマー材料は、生体吸収性であっても非吸収性であってもよい。本開示のコポリマーを含有する組成物において利用され得る生体吸収性ポリマーは、当業者の知識の範囲内であり、そしてモノマー(例えば、グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、ジオキサノン、ジオキセパノンなど)、およびホモポリマー、コポリマー、ならびにこれらの組み合わせから誘導される結合を含むものが挙げられる。同様に、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリチロシンカーボネート、ポリヒドロキシアルカノエート、これらの組み合わせなどが添加され得る。さらなるポリマー材料は、本開示のコポリマーとブレンドされても、本開示のコポリマーと結合(して、例えば、ブロックコポリマーを形成)してもよい。
【0084】
ある実施形態において、本開示のコポリマーは、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これらのコポリマーなどであり、アクリレート基を有するもの(例えば、アクリレートPEG、および/またはアクリレートPEG/PPGコポリマー)を含むものと組み合わせられ得る。このような組み合わせは、本開示のコポリマーと、ポリアルキレンオキシドのオリゴマーもしくはポリマー、または他の非毒性界面活性剤とのブレンドまたはコポリマーを含み得る。従って、得られる組成物は、上記コポリマーの存在に起因して、抗菌特性を有し得る。他の実施形態において、これらのコポリマーは、シリコーンアクリレートと組み合わせられ得る。
【0085】
所望であれば、本開示のコポリマーに加えて、本明細書中に記載される組成物は、必要に応じて、さらなる成分(例えば、色素、抗菌剤、増殖因子、成長因子、抗炎症剤など)を含有し得る。用語「抗菌剤」は、本開示において使用される場合、抗生物質、防腐剤、消毒薬、およびこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態において、抗菌剤は、トリクロサン(triclosan)または上記環状モノマーのうちの1つなどの防腐剤であり得る。
【0086】
上記コポリマーと組み合わせられ得る抗菌剤のクラスは、ミノサイクリンなどのテトラサイクリン;リファンピンなどのリファマイシン;エリスロマイシンなどのマクロライド;ナフシリンなどのペニシリン;セファゾリンなどのセファロスポリン;イミペネムおよびアズトレオナムなどのβ−ラクタム抗生物質;ゲンタマイシンおよびTOBRAMYCIN(登録商標)などのアミノグリコシド;クロラムフェニコール;スルファメトキサゾールなどのスルホンアミド;バンコマイシンなどの糖ペプチド;シプロフロキサシンなどのキノロン;フシジン酸;トリメトプリム;メトロニダゾール;クリンダマイシン;ムピロシン;アンホテリシンBなどのポリエン;フルコナゾールなどのアゾール;ならびにスルバクタムなどのβ−ラクタムインヒビターを含む。添加され得る他の抗菌剤としては、例えば、抗菌ペプチドおよび/または抗菌タンパク質、化学療法薬物、テロメラーゼインヒビター、他の環状モノマー(5−環状モノマー、ミトキサントロン、フラノン、ハロゲン化フラノン、フラノン官能性ポリマーおよび/またはコポリマーが挙げられる)などが挙げられる。
【0087】
上記コポリマーと組み合わせられ得る防腐剤および消毒剤の例としては、ヘキサクロロフェン;クロルヘキシジンおよびシクロヘキシジンなどのカチオン性ビグアニド;ヨウ素およびポビドン−ヨウ素などのヨウ素担体;PCMX(すなわち、p−クロロ−m−キシレノール)およびトリクロサン(すなわち、2,4,4’−トリクロロー2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル)などのハロ置換されたフェノール化合物;ニトロフラントインおよびニトロフラゾンなどのフラン医療調製物;メテナミン;グルタルアルデヒドおよびホルムアルデヒドなどのアルデヒド;ならびにアルコールが挙げられる。いくつかの実施形態において、抗菌剤のうちの少なくとも1つは、防腐剤(例えば、トリクロサン)であり得る。
【0088】
他の実施形態において、ポリマー薬物(すなわち、このような化合物のポリマー形態であり、例えば、ポリマー抗生物質、ポリマー防腐剤、ポリマー非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)など)が、利用され得る。ある実施形態において、エステル結合、無水物結合、ナイロン結合またはウレタン結合を有するポリマー薬物が利用され得る。
【0089】
本開示のコポリマーは、種々の任意の成分(例えば、安定剤、シックナー、着色剤など)と組み合わせられ得る。これらの任意の成分は、本開示のコポリマーを用いて形成される組成物の総重量の約10%までを占め得る。
【0090】
ある実施形態において、本開示による医療デバイスは、縫合糸であり得る。本開示による縫合糸は、モノフィラメントであってもマルチフィラメントであってもよく、そして本開示のコポリマーまたは任意の従来の材料(生体吸収性材料と非生体吸収性材料との両方が挙げられる)を用いて作製され得る。適切な材料としては、外科手術用てぐす、絹、綿、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)、ポリアミド、ポリグリコール酸、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)およびグリコリド−ラクチドコポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
ある実施形態において、縫合糸は、ポリオレフィンから作製され得る。適切なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとのコポリマー、およびポリエチレンとポリプロピレンとのブレンドが挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリプロピレンが、縫合糸を形成するために利用され得る。ポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレンであっても、アイソタクチックポリプロピレンとシンジオタクチックポリプロピレンまたはアタクチックポリプロピレンとの混合物であってもよい。
【0092】
他の実施形態において、縫合糸は、合成吸収性ポリマー(例えば、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、アルキレンカーボネート(すなわち、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなど)、ジオキサノン、オルトエステル、ヒドロキシアルカノエート、ヒドロキシブチレート、チロシンカーボネート、ポリミドカーボネート、ポリイミノカーボネート(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)およびポリ(ヒドロキノン−イミノカーボネート))、ならびにこれらのコポリマーおよび組み合わせから作製されるもの)から作製され得る。利用され得る1つの組み合わせとしては、グリコリドおよびラクチドをベースとするポリエステルが挙げられ、グリコリドとラクチドとのコポリマーが挙げられる。
【0093】
上記のように、縫合糸は、モノフィラメントであってもマルチフィラメントであってもよい。縫合糸がモノフィラメントである場合、このような縫合糸を製造するための方法は、当業者の知識の範囲内である。このような方法は、縫合糸材料(例えば、本開示のコポリマーまたは別の適切な材料(例えば、ポリオレフィン樹脂))を形成する工程、ならびにこの樹脂を押出し成型し、延伸し、そして徐冷してモノフィラメントを形成する工程を包含する。
【0094】
縫合糸が複数のフィラメントから作製される場合、この縫合糸は、当業者の知識の範囲内である任意の技術(例えば、編組、織ることまたは編むこと)を使用して作製され得る。これらのフィラメントはまた、不織縫合糸を製造するように組み合わせられ得る。フィラメント自体は、縫合糸形成プロセスの一部として、延伸されるか、配向されるか、捲縮されるか、撚られるか、混繊されるか、または空気で絡まされて、糸を形成し得る。
【0095】
ある実施形態において、本開示のマルチフィラメント縫合糸は、編組によって製造され得る。編組は、当業者の知識の範囲内である任意の方法によってなされ得る。例えば、縫合糸および他の医療デバイスのための編組構築は、米国特許第5,019,093号、同第5,059,213号、同第5,133,738号、同第5,181,923号、同第5,226,912号、同第5,261,886号、同第5,306,289号、同第5,318,575号、同第5,370,031号、同第5,383,387号、同第5,662,682号、同第5,667,528号、および同第6,203,564号に記載されており、これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。一旦、縫合糸が構築されると、当業者の知識の範囲内である任意の手段によって滅菌され得る。
【0096】
いくつかの場合において、管状編組またはシースが、コア構造体の周りに構築され得、このコア構造体は、組機の中心を通して供給される。公知の管状編組縫合糸(コアを有するものを含む)は、例えば、米国特許第3,187,752号、同第3,565,077号、同第4,014,973号、同第4,043,344号、および同第4,047,533号に開示されている。
【0097】
ある実施形態において、本開示による縫合糸は、当業者の知識の範囲内である任意の外科手術用針に取り付けられて、針付き縫合糸を製造し得る。創傷は、針付き縫合糸を組織に通して創傷閉鎖を作製することによって、縫合され得る。次いで、この針は縫合糸から除去され得、そしてこの縫合糸が結ばれ得る。この縫合糸は、組織内に残り得、そしてその抗菌特性によって、この組織の汚染および感染を防止することを補助し得、これによって、創傷の治癒を促進し、そして感染を最少にする。縫合糸コーティングはまた、外科医がこの縫合糸を組織に通すことを有利に増強し、そして外科医が縫合糸を結び得る容易さおよび確実さを高める。
【0098】
コーティングとして塗布される場合、いくつかの実施形態において、本開示のコポリマーの環状モノマー部分は、このコポリマーのリン脂質成分を医療デバイスに付着させるためのテザーとして働き得る。従って、ある実施形態において、環状モノマー(例えば、ラクトン)は、リン脂質をデバイス表面に繋留し得、このデバイス表面は、ある実施形態において、医療デバイスの表面から生物学的環境内へと外側に突出し得る。
【0099】
上記説明は、多くの詳細を含むが、これらの詳細は、本明細書中の開示の範囲に対する限定と解釈されるべきではなく、単に、本開示の特に有用な実施形態の例示と解釈されるべきである。当業者は、添付の特許請求の範囲によって規定されるような、本開示の範囲および趣旨の範囲内で、他の多くの可能性を予測する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
少なくとも1種の環状モノマーを、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質を含有する開始剤と接触させる工程;
該少なくとも1種の環状モノマーを重合させる工程;および
得られたコポリマーを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の環状モノマーがラクトンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の環状モノマーが、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、ラクチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質が、ホスホリルコリンジオール、ホスホリルコリンポリオール、ホスホリルコリンマクロジオール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質が、以下の式:
【化1】

のホスホリルコリンポリオールを含み、該式において、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するポリオールであり、そしてyは、約1〜約10の数である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質が、以下の式:
【化2】

のホスホリルコリンマクロジオールを含み、該式において、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するポリオールであり、Rは、約1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するアルキル基であり、xは、約1〜約1000の数であり、yは、約1〜約10の数であり、そしてzは、約1〜約1000の数である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の環状モノマーおよび前記少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のリン脂質を、少なくとも1種のさらなるモノマーと接触させる工程をさらに包含し、該さらなるモノマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマー、ビニルモノマー、シリコーン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
コポリマーであって、
以下の式:
【化3】

のホスホリルコリンポリオールを含有する少なくとも1種のリン脂質であって、該式において、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するポリオールであり、そしてyは、約1〜約10の数である、リン脂質;および
少なくとも1種の環状モノマー、
を含む、コポリマー。
【請求項9】
前記少なくとも1種の環状モノマーが、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、ラクチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項10】
前記コポリマーが、前記コポリマーの約5重量%〜約95重量%の量の前記リン脂質、および該コポリマーの約5重量%〜約95重量%の量の前記環状モノマーを含む、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項11】
少なくとも1種のさらなるモノマーをさらに含み、該さらなるモノマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマー、ビニルモノマー、シリコーン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項12】
請求項8に記載のコポリマーを含有する医療デバイス。
【請求項13】
前記コポリマーが前記医療デバイスの少なくとも一部分上のコーティングを構成している、請求項12に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記医療デバイスが、縫合糸、外科手術用メッシュ、抗接着デバイス、コンタクトレンズ、眼内レンズ、ステープル、クリップ、バットレス、ラップバンド、カテーテル、帯具、ステント、移植片、ステント/移植片、結び目なしの創傷閉鎖具、封止剤、接着剤、組織足場、ピン、ねじ、整形外科機器、スペーサー、およびペースメーカーからなる群より選択される、請求項12に記載の医療デバイス。
【請求項15】
コポリマーであって、
以下の式:
【化4】

のホスホリルコリンマクロジオールを含む少なくとも1種のリン脂質であって、該式において、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するポリオールであり、Rは、約1個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するアルキル基であり、xは、約250〜約750の数であり、yは、約1〜約10の数であり、そしてzは、約250〜約750の数である、リン脂質、および
少なくとも1種の環状モノマー、
を含む、コポリマー。
【請求項16】
前記少なくとも1種の環状モノマーが、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、グリコリド、ラクチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項15に記載のコポリマー。
【請求項17】
前記コポリマーが、該コポリマーの約5重量%〜約95重量%の量のリン脂質、および該コポリマーの約5重量%〜約95重量%の量の環状モノマーを有する、請求項15に記載のコポリマー。
【請求項18】
少なくとも1種のさらなるモノマーをさらに含み、該さらなるモノマーが、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマー、ビニルモノマー、シリコーン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項15に記載のコポリマー。
【請求項19】
請求項15に記載のコポリマーを含有する医療デバイス。
【請求項20】
前記コポリマーが前記医療デバイスの少なくとも一部分上のコーティングを構成している、請求項19に記載の医療デバイス。
【請求項21】
前記医療デバイスが、縫合糸、外科手術用メッシュ、抗接着デバイス、コンタクトレンズ、眼内レンズ、ステープル、クリップ、バットレス、ラップバンド、カテーテル、帯具、ステント、移植片、ステント/移植片、結び目なしの創傷閉鎖具、封止剤、接着剤、組織足場、ピン、ねじ、整形外科機器、スペーサー、およびペースメーカーからなる群より選択される、請求項19に記載の医療デバイス。

【公開番号】特開2009−46666(P2009−46666A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186555(P2008−186555)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】