説明

リードフレームの製造方法

【課題】 電気めっきまたは無電解めっきラインを通板することによってPdめっきを施したリードフレームにおいて、Pdのめっきが極薄めっきであっても幅方向の中間部において均一な厚みのPdめっきを得ること。
【解決手段】 通板用のリードフレーム1は、均一な厚みのPdめっきを施すパッド2、リード3、ダムバー4、セクションバー5を含む中間部を有し、その幅方向の両端部6にはPdのめっきは殆ど施されないようにするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気めっきまたは無電解めっきラインを通板し、その表面にPdめっきを施した半導体装置用のリードフレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置用のリードフレームとして、例えば、特公昭63−49382号公報、特許第2746840号公報に記載されているように、半導体素子を搭載するためのダイボンディング性、及び半導体素子とリードとのワイヤーボンディング性と、リードフレームそのものの耐食性等を確保し、めっき処理やめっき層そのものを環境に優しいPdめっきとしたものがある。
【0003】
かかるPdめっきは、耐食性や生産性を高めるために、Cuのような帯状金属板からプレスまたはエッチングによりリードフレームを単列あるいは複数列に形成してNiを下地めっき後、Pdめっきラインを通板する方式、または、短冊状に配列した所定長さのリードフレームをめっきラインに通板して、通板したリードフレームの全幅にわたって、例えば25nm以上の厚みに均一なPdめっき層を形成するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、電気めっきラインにおいては、通電によって析出したPd核が通板の幅方向の両端に集中する傾向があり、そのため、通板したリードフレームの幅方向両端部にめっき層が必要以上に形成され、その中間部のめっき層が部分的に薄くなる傾向がある。このような傾向は無電解めっきラインでも発生する。
【0005】
この通板したリードフレームの幅端部への集中析出は、Pdが無駄となるばかりではなく、幅方向のPdめっき層の厚みの不均一性をもたらし、半田濡れ性に害を及ぼすことにもなり、例えば0.02μm厚以下の極薄めっきを施す場合には、幅方向中間部のPdめっき層の厚みが場所によって不足して、組立て作業時の半田濡れ性が劣化し、ワイヤーボンディング不良、あるいはボンディングの信頼性を低下させる恐れがある。
【0006】
本発明において解決すべき課題は、電気めっきまたは無電解めっきラインを通板することによってPdめっきを施したリードフレームにおいて、Pdのめっきが極薄めっきであっても幅方向の中間部において均一な厚みのPdめっきを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電気めっきもしくは無電解めっきラインを通板しPdめっきを施したリードフレームを製造するに当たって、通板したリードフレームの幅方向の幅方向両端部において、析出Pdをなくすか、または、極く少なくすることによって、幅方向の中間部におけるPdめっきの厚みの均一性化を図ったものである。
【0008】
このリードフレームの幅方向の両端部におけるPdめっきの厚みを、幅方向の中間部の厚みの25%以下とすることによって、幅方向中間部のPdめっき厚みを25nm程度の極薄としても、リードフレームの幅方向の中間部には均一な厚みのPdめっきを、不良箇所が生じることなく得ることができ、Pdの析出量を少なくし、コスト低減に寄与する。
【0009】
この幅方向の両端部における析出Pd量をなくすか、または、極く少なくしたリードフレームを得るためには、電気めっきもしくは無電解めっきラインの両端部にエッジマスクを設けるか、リードフレームそのものにマスクを付けて通板するか、リードフレームを幅方向に立てて、めっき液中を通る下方側の端部はエッジマスクを通し、上方側の端部はめっき液上面から出して通板する等の手段を採用する。
【0010】
この幅方向の両端部は、半導体装置に組立てる際のガイドレール部に相当する幅とすることができる。この両端部は、半導体装置として機能しないので何等の支障を生じることにはならない。
【発明の効果】
【0011】
1.幅方向中間部のPdめっき厚みは、極薄であってもばらつきは少なく、めっき不良箇所が生じることなく均一にめっきされる。
【0012】
2.リードフレームの幅方向の両端部のPdめっき層をなくすか、または、極く少なくしたことにより、不都合は生じることはなく、Pd重量の少なくとも5%の節減によりコストが低減する。
【0013】
3.Pd表面にAuめっきを施す際は、同様のマスクをすることで、Auの節減により、コストが低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、リードフレームを連続して電気めっきラインに適用した実施例によって本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る通板用のリードフレーム1の形態を示すもので、本発明に係る通板用のリードフレーム1は、均一な厚みのPdめっきを施すパッド2、リード3、ダムバー4、セクションバー5を含む中間部を有し、その幅方向の両端部6にはPdのめっきは殆ど施されないようにするものである。
【0016】
図2は、図1に示す通板用のリードフレーム1に、連続的にPdによる電気めっきを施すためのめっきラインを示す。このめっきラインは、通板用リードフレーム1を洗浄し、活性化のための前処理槽Aと、Pdめっきを施すためのPdめっき槽Bと、めっき処理後の通板を後洗浄するための後処理槽Cが連続して配置されている。通板用のリードフレーム1を前処理槽Aから、めっき槽B、さらに、後処理槽Cを通板する過程で、めっき槽B内に、例えば塩化アンミンパラジウムからなるめっき液中を通し、めっき電極Dに通電することによって、通板用のリードフレーム1の両端部を除く中間部にPdめっきを施す。両端部へのPdめっきは、Pdめっき槽Bの通板用のリードフレーム1の両端部に相当する位置にエッジマスクEを配置し、リードフレーム1の両端部をエッジマスクE内を通過させることによってPdめっきを施すことが防止される。
【0017】
図3は、このエッジマスクEを通板側からみた状態を示す。このエッジマスクEは、通板用のリードフレーム1の両端縁を塩ビ材からなるU字形のマスク材E1と、テフロン(登録商標)からなる、すり疵防止のためのスリップ材E2から構成されている。そして、スリップ材E2と、リードフレーム1の両端部6は、密着もしくはすり疵防止に最低限度のスキ間が開いている。通板用のリードフレーム1のエッジマスクEによって覆われる両端部6は、めっき後のリードフレームが、半導体素子を搭載するダイボンディング等の半導体装置の組立て作業において、連続作業のためのガイド部の幅に相当する長さである。
【0018】
このめっきラインによって、図1に示す例えばリードフレームのパッド2、リード3、ダムバー4を含む中間部の長さが約30mmで、その幅方向のエッジマスクEによって覆われる両端部5の一方の端部の幅が2mmの通板用リードフレーム1において、両端部のPdめっき厚みが0.01μm、中間部のPdめっき厚み0.05μmのPdめっきを施したリードフレームの中間部におけるPdめっきの厚みのばらつきは、±0.01μmに過ぎなかった。この均一なPdめっきを施し、400℃で30秒間加熱したリードフレームの中間部における半田として、Sn−37Pbを用い、半田の温度235℃で、浸漬深さ2mm、フラックスとして不活性R−タイプの半田濡れ性テストでは、ゼロクロスタイム0.5秒以下であった。これに対して、端部も中間部と同様の厚みでPdめっきを施した比較例においては、中間部のめっきの厚みのばらつきは、±0.03μmであって、半田濡れ性テストも良くなかった。
【0019】
この実施例ではPdめっきについて述べたが、Pd合金めっき、例えばPd−Ni合金めっき、Pd−Co合金めっき、Pd−Cu合金めっき等にも同様に適用できる。また、Pdめっきの下地メッキとしてNiめっきだけでなく、Ni合金めっきが適用できる。
【0020】
さらに、前記PdめっきやPd合金めっきを施した後に、Auめっきをその上に施すこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のリードフレームを製造するのに使用される通板用リードフレームを示す。
【図2】本発明のリードフレームを製造するのに使用される電気めっきラインを示す。
【図3】本発明のリードフレームの両端部のPdめっき量を低減するのに使用されるエッジマスクを示す。
【図4】本発明のリードフレームそのものにマスクを付けて通板する方法を示す。
【図5】本発明のリードフレーム上端部をめっき液面から出して通板する方法を示す。
【符号の説明】
【0022】
1 通板用リードフレーム 2 パッド
3 リード 4 ダムバー 5 セクションバー
6 幅方向の両端部
A 前処理槽 B めっき槽 C 後処理槽
D めっき電極
E エッジマスク
E1 マスク材 E2 スリップ材
F マスク
G めっき液上面
H リードフレーム上端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気めっきまたは無電解めっきラインを通板し、幅方向の中間部には均一な厚みにPdめっきを施し、且つ、幅方向の両端部には、Pdめっきを中間部より薄く施すか、または、Pdめっきを施さない半導体装置用のリードフレームの製造方法。
【請求項2】
幅方向の中間部には均一な厚みにPdめっきを施し、且つ、幅方向の両端部には、Pdめっきを中間部より薄く施すか、または、Pdめっきを施さない手段は、
リードフレームを両端部にエッジマスクを設けためっきラインを通板するか、
リードフレームの両端のみにエッジマスクを取り付け付けてめっきラインを通板するか、
または、
リードフレームを幅方向に立てて、リードフレームの上方側の端部はめっき液上面から突出させ、下方側の端部はめっきラインの底面に設けたエッジマスクを通して通板するかの何れかである請求項1に記載の半導体装置用のリードフレームの製造方法。
【請求項3】
前記リードフレームの幅方向の両端部は、リードフレームを使用して半導体装置を組立てる際のガイドレール部に相当する部分とする請求項1記載のリードフレームの製造方法。
【請求項4】
Pdめっき厚みを、前記リードフレームの幅方向の両端部において、中間部の厚みの25%以下とする請求項1記載のリードフレームの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−113048(P2008−113048A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24154(P2008−24154)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【分割の表示】特願2000−361652(P2000−361652)の分割
【原出願日】平成12年11月28日(2000.11.28)
【出願人】(000144038)株式会社三井ハイテック (300)
【出願人】(592181602)古河精密金属工業株式会社 (15)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【出願人】(391003015)株式会社野毛電気工業 (20)
【Fターム(参考)】