説明

ルーフとピラーとの結合構造

【課題】ピラーに車両内側向きの荷重が加わった場合に、ピラー上部の車両内部への侵入を低減し、結合部への負荷を低減したルーフとピラーとの結合構造を提供する。
【解決手段】ルーフセンタリインホースメント36とBピラー12とを結合するガセット20aは、荷重に対してガセット20aの折れ曲がりを許容する折れ部27と、折れ部27の折れ曲がりを規制する逆への字部23とを有する。Bピラー12に車両内側向きの入力が加わった場合、荷重に対して折れ部27で折れ曲がることにより、荷重に対する衝撃を吸収し、結合部への負荷を低減することができる。逆への字部23がスペーサ34と当接することで、ガセット20aの折れ曲がりは所定量で規制され、Bピラー12の車両内側への侵入は低減され、ルーフセンタリインホースメント36に至る新たな荷重伝達経路ができ、ボルト16,30等への負荷が減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフを水平方向に支持するルーフレールと当該ルーフレールを上下方向に支持するピラーとを結合するルーフとピラーとの結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のルーフを水平方向に支持するルーフレールと当該ルーフレールを上下方向に支持するピラーとを結合する結合構造において、外部からの荷重による衝撃や変形を低減する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ループパネルの両側部の前後方向骨格部材を形成するサイドルーフレールの車室内側へのねじりを、ルーフパネルの車幅方向に配設されたルーフボウへ伝達せず、サイドルーフレールの車室内側への曲げと車室外側へのねじりをルーフボウへ伝達する構造とした車体骨格部材の結合部構造が開示されている。
【0003】
この特許文献1の車体骨格部材の結合部構造では、センターピラーに側方から外力が作用して曲げモーメントが発生すると、センターピラーの曲げに伴ってサイドルーフレールは車室内側にねじれ、補強部材を上方に押し上げようとするが、補強部材に設けた折れビードが、このねじれ変形により略V字状に折れ変形する。即ち、サイドルーフレールがねじり上げられる分、補強部材自身が折れ変形することでルーフボウの押し上げが抑制される。
【0004】
また、センターピラーの変形増大に伴ってサイドルーフレールが車室内側に侵入してくる場合には、補強部材の略V字状の折れ変形が終了し、該補強部材は略Y字部材となるので、その略湾曲部からサイドルーフレールへの荷重をルーフボウに伝達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−100936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術では、ルーフボウの押し上げは抑制されるものの、あくまでもルーフレールとピラーとの結合部はボルトや溶接等により直接に結合されており、折れ変形に伴うピラー上部の車両内部への侵入が生じてしまう。ピラーに車両内側向きの荷重が加わり、ピラー上部が車室内に侵入した場合、ルーフレールとピラーとを結合しているボルト等へのせん断荷重が増加し、ボルト耐力が不足する可能性がある。ボルト耐力の不足に対し、ボルトの強度の強化やボルト径の増大等の対策も考えられるが、質量増につながる恐れがある。
【0007】
本発明は、このような実情に考慮してなされたものであり、その目的は、ピラーに車両内側向きの荷重が加わった場合に、ピラー上部の車両内部への侵入を低減し、結合部への負荷を低減したルーフとピラーとの結合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両のルーフを水平方向に支持するルーフレールと、ルーフレールを上下方向に支持するピラーと、ルーフレールとピラーとを結合する結合部材とを備え、結合部材は、ピラーへの車両内側向きの荷重に対して結合部材の折れ曲がりを許容する折れ部と、折れ部での折れ曲がりを所定の折れ曲がり量までに規制する折れ規制部とを有するルーフとピラーとの結合構造である。
【0009】
この構成によれば、車両のルーフを水平方向に支持するルーフレールと、ルーフレールを上下方向に支持するピラーと、ルーフレールとピラーとを結合する結合部材とを備え、結合部材は、ピラーへの車両内側向きの荷重に対して結合部材の折れ曲がりを許容する折れ部を有するため、荷重に対して折れ部で折れ曲がることにより、荷重に対する衝撃を吸収し、結合部への負荷を低減することができる。また、結合部材は、折れ部での折れ曲がりを所定の折れ曲がり量までに規制する折れ規制部を有するため、ピラーの車両内側への侵入を低減することができる。
【0010】
この場合、結合部材はガセットであって、折れ規制部は、車両内側に突出する凸部により形成されていることが好適である。
【0011】
この構成によれば、結合部材はガセットであって、折れ規制部は、車両内側に突出する凸部により形成されているため、荷重によって折れ曲がる結合部材を車両内側に突出する凸部がルーフレールあるいはピラーとに当接することにより折れ曲がり量が規制されるため、荷重がルーフレールに伝達されることにより、ピラー上部の車両内部への侵入を低減し、結合部への負荷を低減することができる。
【0012】
また、車両のルーフは周囲を補強材により支持されるサンルーフであって、折れ規制部は、ピラーへの荷重に対して、補強材と当接することにより、折れ部での折れ曲がりを所定の折れ曲がり量までに規制するものとできる。
【0013】
この構成によれば、車両のルーフは周囲を補強材により支持されるサンルーフであって、折れ規制部は、ピラーへの荷重に対して、補強材と当接することにより、折れ部での折れ曲がりを所定の折れ曲がり量までに規制するため、サンルーフ車において、ピラーに車両内側向きの荷重が加わった場合に、ピラー上部の車両内部への侵入を低減し、結合部への負荷を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のルーフとピラーとの結合構造によれば、ピラーに車両内側向きの荷重が加わった場合に、ピラー上部の車両内部への侵入を低減し、結合部への負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係るルーフとピラーとの結合構造を示す横断面図である。
【図2】第1実施形態に係るガセットを示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る結合構造に外力が加わったときの状態を示す横断面図である。
【図4】第2実施形態に係るルーフとピラーとの結合構造を示す横断面図である。
【図5】第2実施形態に係るガセットを示す斜視図である。
【図6】第2実施形態に係る結合構造に外力が加わったときの状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1に示す本発明の第1実施形態に係るルーフとピラーとの結合構造は、天蓋にサンルーフを有するサンルーフ車に適用される。特に、本実施形態の結合構造は、前部ドアと後部ドアの間でサンルーフを上下方向に支持するBピラーと、ルーフレールとしてサンルーフ中央部の車幅方向に配設されてサンルーフを水平方向に支持するルーフセンタリインホースメントとの結合に適用される。
【0018】
図1に示すように、前部ドアと後部ドアの間でサンルーフ38を上下方向に支持するBピラー12の上部には、サンルーフ38の両側で車両前後方向に伸びるレール14が取り付けられている。透過性を有するサンルーフ38は、サンルーフ38中央部の車幅方向に配設されたルーフセンタリインホースメント36により水平方向に支持されている。サンルーフ38の周囲は、車両前後方向の長さが50〜150mm程度のプラスティック製のスペーサ34が配置されている。
【0019】
Bピラー12とルーフセンタリインホースメント36とは、板状の金属材であるガセット20aを介して結合されている。図2に示すように、ガセット20aの両端部は屈曲され、Bピラー12との結合のためのピラー結合部21と、ルーフセンタリインホースメント36との結合のためのルーフ結合部22とされている。ピラー結合部21とルーフ結合部22とには、それぞれボルトを通すためのボルト穴部24が設けられている。
【0020】
ガセット20aには折れ部27が設けられている。折れ部27は荷重により折れ曲がるようにされている。ガセット20aには、車両内側にへ字形状に突出した凸部である逆への字部23が設けられている。逆への字部23は、スペーサ34と当接する当接面28を有している。
【0021】
図1に戻り、ガセット20aのピラー結合部21とBピラー12上部とは、ボルト穴部24を介してボルト16及びナット18により結合されている。また、ガセット20aのルーフ結合部22とルーフセンタリインホースメント36とは、スペーサ34を間に挟んでボルト穴部24を介してボルト30及びナット32により結合されている。ガセット20aの上部は、サンルーフ38の両側で車両前後方向に伸びるルーフ40により覆われる。
【0022】
以下、本実施形態のルーフとピラーとの結合構造の作用について説明する。図3に示すように、Bピラー12に車両内側向きの入力が加わった場合、レール14を押し込みながら回転させる。上記特許文献1等の従来の構造では、ガセット20aからの入力をボルト等のみで負担することになり、ボルトの耐力を超え、Bピラー12の車両内側への侵入が増大してしまう。
【0023】
本実施形態では、ガセット20aは、Bピラー12への車両内側向きの荷重に対してガセット20aの折れ曲がりを許容する折れ部27を有するため、荷重に対して折れ部27で折れ曲がることにより、荷重に対する衝撃を吸収し、結合部への負荷を低減することができる。
【0024】
また、ガセット20aに逆への字部23が設けられているため、ガセット20aの折れ部27の曲げ変形により、逆への字部23はスペーサ34に近づいていく。逆への字部23の当接面28がスペーサ34と当接することで、ガセット20aの折れ曲がりは所定量で規制され、Bピラー12の車両内側への侵入は低減される。さらに、Bピラー12からガセット20a及びスペーサ34を介してルーフセンタリインホースメント36に至る新たな荷重伝達経路ができ、ボルト16,30及びナット18,32への負荷が減少する。
【0025】
特に、本実施形態では、サンルーフ38の周囲のスペーサ34と逆への字部23の当接面28とが当接することで、ガセット20aの曲がりが制限されるため、サンルーフ車において、Bピラー12に車両内側向きの荷重が加わった場合に、ピラー上部の車両内部への侵入を低減し、結合部への負荷を低減することが可能となる。
【0026】
さらに、本実施形態では、ガセット20aの変形前は、ガセット20aの下に、ダクト、ハーネス等の周辺部品との隙間を設けており、変形時にガセット20aの曲げ変形と連動して、逆への字部23が車両内側へ移動してサンルーフ38の端部のスペーサ34と接触するため、変形前はガセット20aが周辺部品と干渉しない利点も有する。
【0027】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の結合構造は、天蓋にサンルーフを有さない車両に適用される点が上記第1実施形態と異なっている。図4に示すように、本実施形態では、スペーサ34をガセット20bのスペーサ挟持部25が挟持し、その上部にルーフセンタリインホースメント38が配置され、スペーサ34、ガセット20b及びルーフセンタリインホースメント38がボルト30及びナット32により結合される。ガセット20b及びルーフセンタリインホースメント38の上部は、ルールにより覆われる。
【0028】
図5に示すように、本実施形態のガセット20bは、スペーサ34を挟持することが可能なようにスペーサ挟持部25が設けられている。スペーサ挟持部25には、ボルト穴部24が設けられている。上記第1実施形態のガセット20aと同様に、本実施形態のガセット20bも折れ部27及び逆への字部23を有する。逆への字部23は当接面28を有する。
【0029】
以下、本実施形態のルーフとピラーとの結合構造の作用について説明する。図6に示すように、Bピラー12に車両内側向きの入力が加わった場合、レール14を押し込みながら回転させる。本実施形態では、上記第1実施形態と同様にガセット20bは、Bピラー12への車両内側向きの荷重に対してガセット20bの折れ曲がりを許容する折れ部27を有するため、荷重に対して折れ部27で折れ曲がることにより、荷重に対する衝撃を吸収し、結合部への負荷を低減することができる。
【0030】
また、ガセット20bに逆への字部23が設けられているため、ガセット20bの折れ部27の曲げ変形により、逆への字部23はスペーサ挟持部25に挟持されたスペーサ34に近づいていく。逆への字部23の当接面28が挟持部25を介してスペーサ34と当接することで、ガセット20bの折れ曲がりは所定量で規制され、Bピラー12の車両内側への侵入は低減される。さらに、Bピラー12からガセット20b及びスペーサ34を介してルーフセンタリインホースメント36に至る新たな荷重伝達経路ができ、ボルト16,30及びナット18,32への負荷が減少する。
【0031】
特に、本実施形態では、ルーフセンタリインホースメント36に固定されたスペーサ34と逆への字部23の当接面28とが挟持部25を介して当接することで、ガセット20bの曲がりが制限されるため、サンルーフを有さない車両においても、Bピラー12に車両内側向きの荷重が加わった場合に、ピラー上部の車両内部への侵入を低減し、結合部への負荷を低減することが可能となる。
【0032】
なお、上記第1実施形態と同様に、本実施形態では、ガセット20bの変形前は、ガセット20bの下に、ダクト、ハーネス等の周辺部品との隙間を設けており、変形時にガセット20ab曲げ変形と連動して、逆への字部23が車両内側へ移動してサンルーフ38の端部のスペーサ34と接触するため、変形前はガセット20bが周辺部品と干渉しない利点も有する。
【0033】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
10a,10b…結合構造、12…Bピラー、14…レール、16…ボルト、18…ナット、20a,20b…ガセット、21…ピラー結合部、22…ルーフ結合部、23…逆への字部、24…ボルト穴部、25…スペーサ挟持部、27…折れ部、28…当接面、30…ボルト、32…ナット、34…スペーサ、36…ルーフセンタリインホースメント、38…サンルーフ、40…ルーフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフを水平方向に支持するルーフレールと、
前記ルーフレールを上下方向に支持するピラーと、
前記ルーフレールと前記ピラーとを結合する結合部材と、
を備え、
前記結合部材は、
前記ピラーへの前記車両内側向きの荷重に対して前記結合部材の折れ曲がりを許容する折れ部と、
前記折れ部での折れ曲がりを所定の折れ曲がり量までに規制する折れ規制部と、
を有する、ルーフとピラーとの結合構造
【請求項2】
前記結合部材はガセットであって、
前記折れ規制部は、前記車両内側に突出する凸部により形成されている、請求項1に記載のルーフとピラーとの結合構造。
【請求項3】
前記車両のルーフは周囲を補強材により支持されるサンルーフであって、
前記折れ規制部は、前記ピラーへの荷重に対して、前記補強材と当接することにより、前記折れ部での折れ曲がりを所定の折れ曲がり量までに規制する、請求項1又は2に記載のルーフとピラーとの結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−179782(P2010−179782A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25269(P2009−25269)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】