説明

ルーフ装置及びルーフ装置用ウェザーストリップ

【課題】第1パネルにのみウェザーストリップを取り付ける構成にあって、ルーフパネルの開口縁との間のシール性を確保しつつ、可動部材の移動に際して同可動部材との摺動抵抗が増大することを的確に抑制することができる。
【解決手段】ウェザーストリップ40は、後側パネル30に取り付けられる取付部41、取付部41に連結される基部42、及び基部42に連結されるシール部45を備える。基部42は、取付部41から外側に向けて略水平方向に延びる上側部43、上側部43の下方に全体が位置するとともに上側部43の外側の端部P2から内側に向けて延びて取付部41に連結される下側部44を有する。シール部45は、上側部43の外側の端部P2に連結されて上側部43よりも下方に全体が位置するとともにフランジ部62に向けて凸となる外側部46、外側部46の下側の端部P3から上方及び内側に向けて延びて下側部44に連結される内側部47を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフ装置及びルーフ装置用ウェザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両のルーフパネルに形成された開口部に2つのパネルを車両前後方向に沿って並設するとともに、これらパネルのうち車両前側に位置するパネル(以下、「前側パネル」)を可動機構の作動を通じて車両後側に位置するパネル(以下、「後側パネル」)の鉛直方向上方に移動させる、所謂アウタースライド式のルーフ装置が周知である。尚、以降において、鉛直方向上下方向を単に上下方向、車両前後方向を単に前後方向と称することとする。
【0003】
こうしたルーフ装置は、上記可動機構として、ルーフパネルにおいて前後方向に延びる開口縁とこれに対向する後側パネルの縁部との間隙を前後方向及び上下方向に移動可能な可動部材を備えており、この可動部材の移動に連動して後側パネルの上方に前側パネルが移動するようになっている。
【0004】
また、ルーフパネルの開口縁と後側パネルの縁部との間にはこれらの間をシールするウェザーストリップが設けられている。こうしたウェザーストリップとしては、例えば特許文献1に記載のもののように、ルーフパネルの開口縁と後側パネルの縁部との双方に設けられるものがある。こうしたウェザーストリップによれば、可動部材(特許文献1では、「支持レバー11」)がウェザーストリップよりも下方に存在するときには、各ウェザーストリップ同士が当接して後側パネルとルーフパネルとの間がシールされる。また、可動部材がルーフパネルの開口縁と後側パネルの縁部との間隙に存在するときには各ウェザーストリップがそれぞれ可動部材に当接して後側パネルと可動部材との間及びルーフパネルと可動部材との間がそれぞれシールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−154339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来のルーフ装置にあっては、ルーフパネルの開口縁と後側パネルの縁部との双方にウェザーストリップを設ける必要があることから、部品点数の増大や組み付け工数の増大といった問題が生じる。
【0007】
尚、こうした問題に対して、後側パネルにのみウェザーストリップを取り付けることで部品点数の増大や組み付け工数の増大を回避することが考えられる。しかしながら、従来一般のウェザーストリップを後側パネルに単に採用した場合には、以下の問題が新たに生じることとなる。
【0008】
すなわち、ルーフパネルの開口縁に対してウェザーストリップをある程度大きな圧力にて当接させるようにすると、ルーフパネルに対してのウェザーストリップによるシール性を高めることができるようにはなるものの、可動部材の上方或いは下方への移動に際して、可動部材がウェザーストリップ上を摺動する際の抵抗が過度に大きなものとなるといった背反が生じる。
【0009】
一方、ルーフパネルの開口縁に対してウェザーストリップをそれほど大きな圧力にて当接させないようにすると、上述した可動部材の移動に伴う摺動抵抗の増大については抑制することができるものの、ルーフパネルに対してのウェザーストリップによるシール性が悪化するといった背反が生じる。
【0010】
本発明の目的は、ルーフパネルの開口縁と第1パネルとのうち第1パネルにのみウェザーストリップを取り付ける構成にあって、ルーフパネルの開口縁との間のシール性を確保しつつ、可動部材の移動に際して同可動部材との摺動抵抗が増大することを的確に抑制することのできるルーフ装置及びルーフ装置用ウェザーストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ルーフパネルの開口部に設けられる第1パネルと、前記ルーフパネルの開口縁とこれに対向する前記第1パネルの縁部との間隙を前記縁部の延びる方向及び鉛直方向に移動可能な可動部材と、前記可動部材の移動に連動して前記第1パネルの鉛直方向上方に移動する第2パネルとを備えるルーフ装置に適用されるウェザーストリップであって、前記第1パネルの縁部に取り付けられるとともに、前記可動部材が前記ルーフパネルの開口縁と前記ウェザーストリップとの間に存在しないときには前記ルーフパネルの開口縁に当接して前記第1パネルと前記ルーフパネルとの間をシールする一方、前記可動部材が前記ルーフパネルの開口縁と前記ウェザーストリップとの間に存在するときには前記可動部材に当接するルーフ装置用ウェザーストリップであって、前記第1パネルの縁部に取り付けられる取付部と、前記取付部に連結されて同取付部とにより第1の内部空間を形成する基部と、同基部に連結されて同基部とにより第2の内部空間を形成するとともに前記ルーフパネルの開口縁或いは前記可動部材に当接するシール部とを備え、前記基部は、前記ルーフパネルの開口縁及び前記可動部材のいずれにも当接していない状態において、前記取付部から前記ルーフパネルの開口縁に向けて同ルーフパネルの頂面の延びる方向に沿って延びる上側部と、同上側部の鉛直方向下方に全体が位置するとともに同上側部の前記開口縁側の端部から前記取付部に向けて延びて同取付部に連結される下側部とを有してなり、前記シール部は、前記ルーフパネルの開口縁及び前記可動部材のいずれにも当接していない状態において、前記上側部の前記開口縁側の端部に連結されて同上側部よりも鉛直方向下方に全体が位置するとともに前記ルーフパネルの開口縁に向けて凸となる外側部と、同外側部の鉛直方向下側の端部から鉛直方向上方及び前記下側部に近接する方向に延びて同下側部に連結される内側部とを有してなることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、上側部はルーフパネルの頂面の延びる方向に沿って延びる形状を有しているのに対して、外側部及び内側部は上側部に比べて同方向への指向性が低い。そのため、上側部及びこれと取付部とに連結される下側部に対してある程度の圧縮力が作用しても、これら上側部及び下側部は撓むことなくその形状が維持される。
【0013】
可動部材がウェザーストリップよりも鉛直方向下方に存在しており、ルーフパネルの開口縁とウェザーストリップとの間に存在しないとき、すなわちルーフパネルの開口縁にシール部が当接するときには、ウェザーストリップの圧縮量が小さい。このとき、上述した理由から、シール部は積極的に撓むものの基部はそれほど撓むことはない。このため、ルーフパネルの開口縁に対してシール部が適切な圧力にて当接することとなり、ルーフパネルとの間を的確にシールすることができる。
【0014】
一方、可動部材がウェザーストリップよりも鉛直方向上方に移動して、ルーフパネルの開口縁とウェザーストリップとの間に存在するとき、すなわち可動部材にシール部が当接するときには、ウェザーストリップの圧縮量が大きくなる。このとき、基部は、上側部が取付部との連結位置を支点として鉛直方向上方に変位する態様にて撓む。また、上側部と外側部との連結位置が取付部側に変位することに伴い、シール部は、外側部及び内側部が取付部側に変位するとともに上側部の鉛直方向下方に位置する姿勢を維持しながら更に撓むこととなる。このため、シール部及び基部の双方が好適に撓むこととなり、可動部材に対してシール部が過度に大きい圧力にて当接すること、ひいては可動部材の移動に伴う摺動抵抗の増大を抑制することができる。
【0015】
従って、ルーフパネルの開口縁と第1パネルとのうち第1パネルにのみウェザーストリップを取り付ける構成にあって、ルーフパネルの開口縁との間のシール性を確保しつつ、可動部材の移動に際して同可動部材との摺動抵抗が増大することを的確に抑制することができるようになる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のルーフ装置用ウェザーストリップにおいて、前記内側部は、前記ルーフパネルの開口縁及び前記可動部材のいずれにも当接していない状態において、前記第2の内部空間に向けて凸となる形状を有してなることをその要旨としている。
【0017】
ルーフパネルに対するルーフ装置の組み付けに際しては以下の問題が生じるおそれがある。すなわち、ルーフパネルに対してルーフ装置を組み付ける際には、まずは第1パネルに対してウェザーストリップを取り付け、次に、この第1パネルをルーフパネルに対して鉛直方向上方或いは下方から組み付けることとなる。ここで、上述したように、上側部はルーフパネルの頂面の延びる方向に沿って延びる形状を有しているのに対して、外側部及び内側部は上側部に比べて同方向への指向性が低いために、第1パネルをルーフパネルに対して鉛直方向下方から組み付ける場合には、基部が撓みにくくシール部が好適に撓むことで、ウェザーストリップを好適な姿勢に維持したまま組み付けることができ、ルーフパネルの開口縁との間のシール性を確保することができる。
【0018】
しかしながら、仮に、ウェザーストリップがルーフパネルの開口縁及び可動部材のいずれにも当接していない状態において、内側部がその外周側に向けて凸となる形状を有している場合、ウェザーストリップが取り付けられた状態の第1パネルを、ルーフパネルに対して鉛直方向上方から組み付ける場合には、内側部が撓む易いために、外側部が上側部よりも鉛直方向上方に変位してしまうおそれがある。その結果、ウェザーストリップを好適な姿勢に維持することができなくなり、ルーフパネルの開口縁との間のシール性を的確に確保することができないおそれがある。
【0019】
この点、上記構成によれば、内側部が第2の内部空間に向けて凸となる形状を有していることから、ウェザーストリップが取り付けられた状態の第1パネルを、ルーフパネルに対して鉛直方向上方から組み付ける場合に、内側部が容易に撓むことを抑制することができ、外側部が上側部よりも鉛直方向上方に変位することを的確に抑制することができる。従って、ウェザーストリップが取り付けられた状態の第1パネルを、ルーフパネルに対して鉛直方向上方及び下方のいずれの方向から組み付ける場合であれ、ルーフパネルの開口縁との間のシール性を的確に確保することができるようになる。
【0020】
また、上記問題点を解決するために、請求項3に記載の発明は、ルーフパネルの開口部に設けられる第1パネルと、前記ルーフパネルの開口縁とこれに対向する前記第1パネルの縁部との間隙を前記縁部の延びる方向及び鉛直方向に移動可能な可動部材と、前記可動部材の移動に連動して前記第1パネルの鉛直方向上方に移動する第2パネルと、前記第1パネルの縁部に取り付けられるウェザーストリップであって、前記可動部材が同ウェザーストリップよりも鉛直方向下方に存在するときには前記ルーフパネルの開口縁に当接して前記第1パネルと前記ルーフパネルとの間をシールする一方、前記可動部材が前記ルーフパネルの開口縁と前記ウェザーストリップとの間に存在するときには前記可動部材に当接するウェザーストリップとを備えるルーフ装置であって、前記ウェザーストリップは、前記第1パネルの縁部に取り付けられる取付部と、前記取付部に連結されて同取付部とにより第1の内部空間を形成する基部と、同基部に連結されて同基部とにより第2の内部空間を形成するとともに前記ルーフパネルの開口縁或いは前記可動部材に当接するシール部とを備え、前記基部は、前記ルーフパネルの開口縁及び前記可動部材のいずれにも当接していない状態において、前記取付部から前記ルーフパネルの開口縁に向けて同ルーフパネルの頂面の延びる方向に沿って延びる上側部と、同上側部の鉛直方向下方に全体が位置するとともに同上側部の前記開口縁側の端部から前記取付部に向けて延びて同取付部に連結される下側部とを有してなり、前記シール部は、前記ルーフパネルの開口縁及び前記可動部材のいずれにも当接していない状態において、前記上側部の前記開口縁側の端部に連結されて同上側部よりも鉛直方向下方に全体が位置するとともに前記ルーフパネルの開口縁に向けて凸となる外側部と、同外側部の鉛直方向下側の端部から鉛直方向上方及び前記下側部に近接する方向に延びて前記下側部に連結される内側部とを有してなることをその要旨としている。
【0021】
同構成によれば、請求項1に係る発明に準じた構成を備えていることから、請求項1に係る発明の作用効果に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、第1パネルにのみウェザーストリップを取り付ける構成にあって、ルーフパネルの開口縁との間のシール性を確保しつつ、可動部材の移動に際して同可動部材との摺動抵抗が増大することを的確に抑制することのできるルーフ装置用ウェザーストリップ及びルーフ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るルーフ装置及びルーフ装置用ウェザーストリップの一実施形態について、ルーフ装置及びウェザーストリップの適用されるルーフパネルの斜視構造を示す斜視図であって、前側パネルが全閉とされた状態を示す斜視図。
【図2】同実施形態におけるルーフパネルの斜視構造を示す斜視図であって、前側パネルが後側パネルの上方に移動した状態を示す斜視図。
【図3】同実施形態におけるルーフ装置の断面構造を部分的に示す断面図であって、図2におけるX−X線に沿った断面図。
【図4】同実施形態におけるルーフ装置の断面構造を部分的に示す断面図であって、図2におけるY−Y線に沿った断面図。
【図5】同実施形態のウェザーストリップを中心とした断面構造を示す断面図であって、ウェザーストリップに対して圧縮力が作用していない状態の断面図。
【図6】同実施形態のウェザーストリップを中心とした断面構造を示す断面図であって、ウェザーストリップがルーフパネルに当接している状態の断面図。
【図7】同実施形態のウェザーストリップを中心とした断面構造を示す断面図であって、ウェザーストリップが可動部材に当接している状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図7を参照して、本発明に係るルーフ装置及びルーフ装置用ウェザーストリップを車両の屋根部に搭載されるルーフ装置(以下、「ルーフ装置1」)及びルーフ装置用ウェザーストリップ(以下、ウェザーストリップ40)として具体化した一実施形態について説明する。
【0025】
尚、以降においては、車両前後方向を単に「前後方向」と称するとともに、鉛直方向を単に「上下方向」と称する。また、ルーフ装置の中心に近接する側を単に「内側」と称するとともに、ルーフ装置の中心から離間する側を単に「外側」と称する。
【0026】
図1及び図2に、本実施形態のルーフ装置1及びウェザーストリップ40が適用される車両のルーフパネル60についてその斜視構造を示す。尚、図1は前側パネル20が全閉とされた状態を示しており、図2は前側パネル20が後側パネル30の上方に移動した状態を示している。
【0027】
図1及び図2に併せ示すように、ルーフパネル60には前後方向及び車幅方向にそれぞれ延びる四辺を有する略矩形状の開口部Aが形成されており、開口部Aにはルーフ装置1が設けられている。
【0028】
ルーフ装置1は、開口部Aにおいて前側に設けられるパネルである前側パネル20と、前側パネル20の後側に隣接して設けられるパネルである後側パネル30とを備えている。
【0029】
また、ルーフ装置1には、図1に示した全閉状態の前側パネル20を、上方及び後方に移動させて後側パネル30の上方に移動させる可動機構10を備えている(図2参照)。この可動機構10は、ルーフパネル60の前後方向に延びる開口縁とこれに対向する後側パネル30の縁部との間隙を上下方向及び前後方向に移動可能な可動部材13を備えている。可動部材13は、図2に示すように、前側パネル20の左前部及び左後部に設けられるとともに、右前部及び右後部にも設けられており、前側パネル20に連結されている。可動部材13の上述した移動に連動して前側パネル20が後側パネル30の上方に移動することができるようになっている。
【0030】
次に、図3及び図4を参照して、ウェザーストリップ40を中心としたルーフ装置1の構成について説明する。尚、図3は図2におけるX−X線に沿った断面構造を示しており、図4は図2におけるY−Y線に沿った断面構造を示している。また、ここでは、ルーフ装置1の車幅方向における左側の構成についてのみ説明するが、ルーフ装置1は基本的には左右対称の構造を有しているため、右側の構成については説明を割愛する。
【0031】
図3及び図4に併せ示すように、ルーフパネル60は、略水平方向に沿って延びるルーフパネル本体61と、ルーフパネル本体61の内側の端部から屈曲して下方に延びるフランジ部62とを有している。
【0032】
後側パネル30は、略平板状をなすガラス製のパネル本体31と、パネル本体31の縁部に設けられる樹脂製のパネル縁部32とを有している。パネル縁部32には、上方に突出する上側突起32aと、下方に突出する下側突起32bとが形成されている。パネル縁部32には後に詳述するウェザーストリップ40が取り付けられている。
【0033】
後側パネル30及びルーフパネル60の下方には、可動機構10を構成するガイドレール11が前後方向に沿って延びる態様にて設けられている。
図4に示すように、前側パネル20は、略平板状をなすガラス製のパネル本体21と、パネル本体21の縁部に設けられる樹脂製のパネル縁部22とを有している。このパネル縁部22には、前側パネル20の全閉時にパネル縁部22とルーフパネル60の開口縁、すなわちフランジ部62との間をシールするウェザーストリップ25が設けられている。
【0034】
ガイドレール11の内部には、電動モータ(図示略)からの駆動力により前後方向に沿って移動するとともに可動部材13を前後方向及び上下方向に移動させる駆動部12が設けられている。駆動部12は、周知のリンク機構を備えており、同リンク機構を介して可動部材13を駆動する。具体的には、駆動部12は、自身の後方への移動に伴って可動部材13を後方及び上方に移動させる一方、自身の前方への移動に伴って可動部材13を前方及び下方に移動させる。
【0035】
可動部材13は略平板状をなしており、その平面がルーフパネル60のフランジ部62の外側面に対して略平行となる態様にて設けられている。また、可動部材13の上端部には前側パネル20と可動部材13とを連結する連結部14が設けられている。
【0036】
図3に示すように、ウェザーストリップ40は、可動部材13がウェザーストリップ40よりも下方に存在してフランジ部62の外側面(図3において左面)とウェザーストリップ40との間に存在しないときには、フランジ部62の外側面に当接して後側パネル30とルーフパネル60との間をシールする。
【0037】
一方、図4に示すように、ウェザーストリップ40は、可動部材13がフランジ部62の外側面とウェザーストリップ40との間に存在するときには可動部材13の内側面(図4において左面)に当接する。
【0038】
ここで、前述したように、フランジ部62と後側パネル30とのうち後側パネル30にのみウェザーストリップを設ける構成にあって、従来一般のウェザーストリップを単に採用した場合には、以下の問題が新たに生じることとなる。
【0039】
すなわち、フランジ部62の外側面に対してウェザーストリップをある程度大きな圧力にて当接させるようにウェザーストリップを構成すると、ルーフパネル60に対してのウェザーストリップによるシール性を高めることができるようにはなるものの、可動部材13の上方への移動に際して、可動部材13がウェザーストリップ上を摺動する際の抵抗が過度に大きなものとなるといった背反が生じる。
【0040】
一方、フランジ部62に対してウェザーストリップをそれほど大きな圧力にて当接させないようにすると、上述した可動部材13の移動に伴う摺動抵抗の増大については抑制することができるものの、ルーフパネル60に対してのウェザーストリップによるシール性が悪化するといった背反が生じる。
【0041】
そこで、本実施形態では、以下に説明するウェザーストリップ40を採用することにより、ルーフパネル60のフランジ部62との間のシール性を確保しつつ、可動部材13の移動に際して可動部材13との摺動抵抗が増大することを的確に抑制するようにしている。
【0042】
次に、図5を参照して、ウェザーストリップ40の構造について詳細に説明する。尚、図5は、圧縮力が作用していない状態のウェザーストリップ40の断面構造を示している。また、図5では、後側パネル30及びルーフパネル60を二点鎖線にて仮想的に示している。
【0043】
図5に示すように、ウェザーストリップ40は、後側パネル30のパネル縁部32に取り付けられる取付部41と、取付部41に連結されて取付部41とにより第1の内部空間S1を形成する基部42と、基部42に連結されて基部42とにより第2の内部空間S2を形成するシール部45とを有している。これらのうちシール部45がフランジ部62の外側面或いは可動部材13に当接することとなる。
【0044】
取付部41は、パネル縁部32の上側突起32aの上部を内包する態様にてこれに係合する上側係合片41aと、下側突起32bの下部を内包する態様にてこれに係合する下側係合片41bとを有している。また、取付部41には、フランジ部62の外側面に略平行な面である外側平面41cが形成されている。
【0045】
基部42は、取付部41の上側係合片41aの上面に連結されてフランジ部62に向けて延びる上側部43と、上側部43の下方に全体が位置するとともに上側部43の外側の端部P2から取付部41の外側平面41cの下端部に向けて延びて同下端部に連結される下側部44とを有している。ここで、上側部43は、ルーフパネル本体61の頂面の延びる方向(図5においては左右方向)に沿って延びており、上側部43の内周面と取付部41の外側平面41cとは略直交している。また、上側部43において取付部41と連結されている部分のうちで最も外側の位置(以下、「連結位置P1」)から上記端部P2までの長さは、下側部44において上記端部P2から取付部41と連結されている端部P5までの長さよりも短い。
【0046】
シール部45は、上側部43の外側の端部P2に連結されて上側部43よりも下方に全体が位置するとともに外側に向けて凸となる外側部46と、外側部46の下側の端部P3から上方及び取付部41に近接する方向(図5においては斜め左上方向)に延びて下側部44に連結される内側部47とを有している。ここで、外側部46は略U字状をなしており、上記端部P3は上記端部P2の略直下に位置している。また、内側部47は、シール部45と基部42とにより形成される第2の内部空間S2に向けて凸となる形状、より具体的には略円弧状を有している。また、内側部47と下側部44との連結位置P4は、下側部44における中央位置よりもやや、取付部41と下側部44との連結位置P5寄りとされている。
【0047】
ちなみに、上側部43の上面と外側部46の上面との境界部分は連続した円滑面とされている。
尚、本実施形態では、取付部41がソリッドゴムにより形成されているのに対して、基部42及びシール部45はゴムスポンジにより形成されている。また、従来一般のウェザーストリップと同様にして、ウェザーストリップ40の外表面には、摺動抵抗を低減するためのシリコン系塗料が塗布されている。また、基部42及びシール部45はそれらの厚さが略同一とされている。また、取付部41、基部42及びシール部45は同一の材料にて形成されている。すなわち、ウェザーストリップ40を構成する取付部41、基部42及びシール部45は二色成形にて形成されている。ちなみに、ウェザーストリップ40の材料としてはエチレンプロプレンゴム(EPDM)が採用されている。
【0048】
次に、図6及び図7を参照して、ウェザーストリップ40の作用について説明する。尚、図6はウェザーストリップ40がフランジ部62の外側面に当接している状態の断面構造を示している。また、図7はウェザーストリップ40が可動部材13の内側面に当接している状態の断面構造を示している。
【0049】
前述したように、上側部43はルーフパネル本体61の頂面の延びる方向に沿って延びる形状を有しているのに対して、外側部46及び内側部47は上側部43に比べて同方向への指向性が低い。そのため、上側部43及びこれと取付部41とに連結される下側部44に対してある程度の圧縮力が作用しても、これら上側部43及び下側部44は撓むことなくその形状が維持される。
【0050】
図6に示すように、可動部材13がウェザーストリップ40よりも下方に存在しているとき、すなわちフランジ部62の外側面とウェザーストリップ40との間に可動部材13が存在しないときには、ウェザーストリップ40の圧縮量は小さい。このとき、上述した理由から、シール部45は積極的に撓むものの基部42はそれほど撓むことはない。このため、フランジ部62に対してシール部45が適切な圧力にて当接することとなり、ルーフパネル60との間が的確にシールされるようになる。
【0051】
一方、図7に示すように、可動部材13がウェザーストリップ40よりも上方に移動して、フランジ部62とウェザーストリップ40との間に存在するとき、すなわち可動部材13に対してシール部45が当接するときには、ウェザーストリップ40の圧縮量が大きくなる。このとき、基部42は、上側部43が取付部41との連結位置P1を支点として上方に変位する態様にて撓む。また、図7に一点鎖線の矢印にて示すように、上側部43と外側部46との連結位置P2が内側に変位することに伴い、シール部45は、外側部46及び内側部47が内側に変位するとともに上側部43の下方に位置する姿勢を維持しながら更に撓むこととなる。このため、シール部45及び基部42の双方が好適に撓むこととなり、可動部材13に対してシール部45が過度に大きい圧力にて当接すること、ひいては可動部材13の移動に伴う摺動抵抗の増大が抑制されるようになる。
【0052】
またこのとき、内側部47の外表面が下側部44の外表面に当接し得るものの、基部42及びシール部45の双方においてはこれらの内周面同士が当接することはない。
ところで、ルーフパネル60に対するルーフ装置1の組み付けに際しては以下の問題が生じるおそれがある。すなわち、ルーフパネル60に対してルーフ装置1を組み付ける際には、まずは後側パネル30に対してウェザーストリップ40を取り付け、次に、この後側パネル30をルーフパネル60に対して上方或いは下方から組み付けることとなる。ここで、後側パネル30をルーフパネル60に対して下方から組み付ける場合には、基部42が撓みにくくシール部45が好適に撓むことで、ウェザーストリップ40を好適な姿勢に維持したまま組み付けることができ、フランジ部62との間のシール性を確保することができる。
【0053】
しかしながら、上述したウェザーストリップとは異なり、仮に、ウェザーストリップがフランジ部62及び可動部材13のいずれにも当接していない状態において、内側部がその外周側に向けて凸となる形状を有している場合に、後側パネルをルーフパネル60に対して上方から組み付ける場合には、内側部が撓み易いために、外側部が上側部よりも上方に変位してしまうおそれがある。その結果、ウェザーストリップを好適な姿勢に維持することができなくなり、ルーフパネル60との間のシール性を的確に確保することができないおそれがある。
【0054】
これに対して、本実施形態では、前述したように、内側部47がのフランジ部62及び可動部材13のいずれにも当接していない状態において、第2の内部空間S2に向けて凸となる形状を有している(図5参照)。このため、ウェザーストリップ40が取り付けられた状態の後側パネル30を、ルーフパネル60に対して上方から組み付ける場合に、内側部47が容易に撓むことが抑制され、外側部46が上側部43よりも上方に変位することが的確に抑制されるようになる。従って、ウェザーストリップ40を好適な姿勢に維持したまま後側パネル30をルーフパネル60に対して組み付けることができ、ルーフパネル60との間のシール性を的確に確保することができるようになる。
【0055】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、ウェザーストリップ40は、後側パネル30のパネル縁部32に取り付けられる取付部41と、取付部41に連結されて取付部41とにより第1の内部空間S1を形成する基部42と、基部42に連結されて基部42とにより第2の内部空間S2を形成するとともにルーフパネル60のフランジ部62或いは可動部材13に当接するシール部45とを備えるものとしている。また、基部42は、ルーフパネル60のフランジ部62及び可動部材13のいずれにも当接していない状態において、取付部41から外側に向けてルーフパネル本体61の頂面の延びる方向に沿って延びる上側部43と、上側部43の下方に位置するとともに上側部43の外側の端部P2から内側に向けて延びて取付部41に連結される下側部44とを有するものとしている。また、シール部45は、フランジ部62及び可動部材13のいずれにも当接していない状態において、上側部43の外側の端部P2に連結されて上側部43よりも下方に位置するとともにフランジ部62に向けて凸となる外側部46と、外側部46の下側の端部P3から上方及び内側に向けて延びて下側部44に連結される内側部47とを有するものとしている。
【0056】
こうした構成によれば、ルーフパネル60のフランジ部62と後側パネル30とのうち後側パネル30にのみウェザーストリップ40を取り付ける構成にあって、ルーフパネル60のフランジ部62との間のシール性を確保しつつ、可動部材13の移動に際して可動部材13との摺動抵抗が増大することを的確に抑制することができるようになる。
【0057】
(2)本実施形態では、内側部47は、フランジ部62及び可動部材13のいずれにも当接していない状態において、シール部45と基部42とにより形成される第2の内部空間S2に向けて凸となる形状を有するものとしている。
【0058】
こうした構成によれば、ウェザーストリップ40が取り付けられた状態の後側パネル30を、ルーフパネル60に対して上方から組み付ける場合に、内側部47が容易に撓むことを抑制することができ、外側部46が上側部43よりも上方に変位することを的確に抑制することができる。従って、ウェザーストリップ40が取り付けられた状態の後側パネル30をルーフパネル60に対して上方及び下方のいずれの方向から組み付ける場合であれ、ルーフパネル60のフランジ部62との間のシール性を的確に確保することができるようになる。
【0059】
(3)本実施形態では、ウェザーストリップ40が最も圧縮された状態において、基部42及びシール部45の双方ではこれらの内面同士が当接することはない。このため、互いに貼り付き易く離れにくい内周面同士の当接を回避することができ、ウェザーストリップ40の内周面同士の貼り付きに起因する劣化を抑制することができるようになる。また、ウェザーストリップ40の内周面同士の貼り付きを回避することができることから、こうした貼り付き及びその解除に伴い発生する異音についてもこれを抑制することができるようになる。尚、内側部47の外表面と下側部44の外表面とは当接するものの、これら外表面には摺動抵抗を低減するためのシリコン系塗料が塗布されていることから、これら外表面同士が貼り付くことはない。
【0060】
(4)本実施形態では、ウェザーストリップ40が後側パネル30に組み付けられた状態において、ルーフパネル60に対してルーフ装置1が組み付けられることとなる。しかも、ルーフパネル60側にはウェザーストリップを設ける必要がない。このため、ウェザーストリップ40が後側パネル30に組み付けた状態のルーフ装置1として出荷することが可能となる。これにより、車両の製造ラインにおいては、ウェザーストリップを組み付ける工程が不要となり、ひいては車両の製造工程の簡素化を図ることができるようになる。
【0061】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ウェザーストリップの材料を、上記実施形態にて例示したエチレンプロプレンゴム(EPDM)以外の樹脂材料に変更してもよい。
【0062】
・ウェザーストリップの外表面に塗布する塗料はシリコン系塗料に限定されるものではなく、摺動抵抗を低減することのできるものであれば、例えばフッ素系塗料等の任意の塗料に変更することができる。
【0063】
・上記実施形態によるように、内側部47を、フランジ部62及び可動部材13のいずれにも当接していない状態において、第2の内部空間S2に向けて凸となる形状を有するものとすることが、ウェザーストリップ40が取り付けられた状態の後側パネル30を、ルーフパネル60に対して上方から組み付ける場合に、内側部47が容易に撓むことを抑制する上では望ましい。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、内側部の一端から他端にわたり略直線状に形成するようにしてもよい。この場合であっても、ウェザーストリップ40がフランジ部62及び可動部材13のいずれにも当接していない状態において、内側部がその外周側に向けて凸となる形状を有している場合に比べて、内側部47が容易に撓むことをある程度は抑制することができるようになる。
【符号の説明】
【0064】
1…ルーフ装置、10…可動機構、11…ガイドレール、12…駆動部、13…可動部材、14…連結部、20…前側パネル(第2パネル)、21…パネル本体、22…パネル縁部、25…ウェザーストリップ、30…後側パネル(第1パネル)、31…パネル本体、32…パネル縁部、32a…上側突起、32b…下側突起、40…ウェザーストリップ、41…取付部、41a…上側係合片、41b…下側係合片、41c…外側平面、42…基部、43…上側部、44…下側部、45…シール部、46…外側部、47…内側部、60…ルーフパネル、61…ルーフパネル本体、62…フランジ部、A…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルの開口部に設けられる第1パネルと、前記ルーフパネルの開口縁とこれに対向する前記第1パネルの縁部との間隙を前記縁部の延びる方向及び鉛直方向に移動可能な可動部材と、前記可動部材の移動に連動して前記第1パネルの鉛直方向上方に移動する第2パネルとを備えるルーフ装置に適用されるウェザーストリップであって、前記第1パネルの縁部に取り付けられるとともに、前記可動部材が前記ルーフパネルの開口縁と前記ウェザーストリップとの間に存在しないときには前記ルーフパネルの開口縁に当接して前記第1パネルと前記ルーフパネルとの間をシールする一方、前記可動部材が前記ルーフパネルの開口縁と前記ウェザーストリップとの間に存在するときには前記可動部材に当接するルーフ装置用ウェザーストリップであって、
前記第1パネルの縁部に取り付けられる取付部と、前記取付部に連結されて同取付部とにより第1の内部空間を形成する基部と、同基部に連結されて同基部とにより第2の内部空間を形成するとともに前記ルーフパネルの開口縁或いは前記可動部材に当接するシール部とを備え、
前記基部は、前記ルーフパネルの開口縁及び前記可動部材のいずれにも当接していない状態において、前記取付部から前記ルーフパネルの開口縁に向けて同ルーフパネルの頂面の延びる方向に沿って延びる上側部と、同上側部の鉛直方向下方に全体が位置するとともに同上側部の前記開口縁側の端部から前記取付部に向けて延びて同取付部に連結される下側部とを有してなり、
前記シール部は、前記ルーフパネルの開口縁及び前記可動部材のいずれにも当接していない状態において、前記上側部の前記開口縁側の端部に連結されて同上側部よりも鉛直方向下方に全体が位置するとともに前記ルーフパネルの開口縁に向けて凸となる外側部と、同外側部の鉛直方向下側の端部から鉛直方向上方及び前記下側部に近接する方向に延びて同下側部に連結される内側部とを有してなる
ことを特徴とするルーフ装置用ウェザーストリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のウェザーストリップにおいて、
前記内側部は、前記ルーフパネルの開口縁及び前記可動部材のいずれにも当接していない状態において、前記第2の内部空間に向けて凸となる形状を有してなる
ことを特徴とするルーフ装置用ウェザーストリップ。
【請求項3】
ルーフパネルの開口部に設けられる第1パネルと、前記ルーフパネルの開口縁とこれに対向する前記第1パネルの縁部との間隙を前記縁部の延びる方向及び鉛直方向に移動可能な可動部材と、前記可動部材の移動に連動して前記第1パネルの鉛直方向上方に移動する第2パネルと、前記第1パネルの縁部に取り付けられるウェザーストリップであって、前記可動部材が同ウェザーストリップよりも鉛直方向下方に存在するときには前記ルーフパネルの開口縁に当接して前記第1パネルと前記ルーフパネルとの間をシールする一方、前記可動部材が前記ルーフパネルの開口縁と前記ウェザーストリップとの間に存在するときには前記可動部材に当接するウェザーストリップとを備えるルーフ装置であって、
前記ウェザーストリップは、前記第1パネルの縁部に取り付けられる取付部と、前記取付部に連結されて同取付部とにより第1の内部空間を形成する基部と、同基部に連結されて同基部とにより第2の内部空間を形成するとともに前記ルーフパネルの開口縁或いは前記可動部材に当接するシール部とを備え、
前記基部は、前記ルーフパネルの開口縁及び前記可動部材のいずれにも当接していない状態において、前記取付部から前記ルーフパネルの開口縁に向けて同ルーフパネルの頂面の延びる方向に沿って延びる上側部と、同上側部の鉛直方向下方に全体が位置するとともに同上側部の前記開口縁側の端部から前記取付部に向けて延びて同取付部に連結される下側部とを有してなり、
前記シール部は、前記ルーフパネルの開口縁及び前記可動部材のいずれにも当接していない状態において、前記上側部の前記開口縁側の端部に連結されて同上側部よりも鉛直方向下方に全体が位置するとともに前記ルーフパネルの開口縁に向けて凸となる外側部と、同外側部の鉛直方向下側の端部から鉛直方向上方及び前記下側部に近接する方向に延びて前記下側部に連結される内側部とを有してなる
ことを特徴とするルーフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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