説明

レクチン結合体

本発明は、内皮細胞の表面上のレセプターに特異的に結合する少なくとも1つの標的化ユニット、およびリンカーによってその標的化ユニットにカップリングされている少なくとも1つのエフェクターユニットを含む結合体に関し、ここでエフェクターユニットが少なくとも1つのシグナルユニット、および任意に少なくとも1つの治療活性物質を示し、かつ標的化ユニットがレクチンまたはそのフラグメントもしくは誘導体を含み、ここでこのレクチンがL-セレクチンではなく、かつシグナルユニットがランタニドイオンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内皮細胞の表面上のレセプターに特異的に結合する少なくとも1つの標的化ユニット、およびリンカーによってこの標的化ユニットにカップリングされた少なくとも1つのエフェクターユニットを含む結合体に関する。本発明はまた、この結合体を含む組成物、ならびにそれらの使用およびこの結合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
すべての細胞は、例えば、細胞−細胞相互作用および同様のプロセスを容易にする特別な表面分子を有する。従って、これはまた、血管内皮の細胞にも適用される。これらの表面分子の大部分はプロテオグリカンおよび糖タンパク質からなり、これらは、多かれ少なかれ強くグリコシル化されたタンパク質構造である。オリゴサッカリドのそれぞれの発現は、種間で異なるが、器官間でもまた異なる。さらに、このいわゆるグリコカリックスの特徴的な様式の変化もまた、病態生理学的プロセスに起因する内皮の発生または修飾の範囲内にある。結果として、その下に配置された組織の機能的状態でさえもが、内皮細胞の表面を通してシグナル伝達される。
【0003】
グリコカリックスの修飾をもたらす(病態)生理学的プロセスには、例えば、炎症性反応、ホルモンの効果、侵襲性生物(例えば、ウイルスなど)に対する反応、および特に、増殖している細胞に起因するグリコカリックスの修飾(例えば、これらが血管形成の間に起こる場合)が含まれる。内皮の増殖をもたらすこれらのプロセスは、創傷治癒の範囲内にある組織の新規形成、ならびに腫瘍増殖の間および腫瘍細胞の転移の伝播の間の制御不能な細胞の増殖が含まれる。
【0004】
それゆえに、正常状態から逸脱する、血管内皮の細胞表面上のこれらのマーキングは、検出可能であり、すなわち、下に位置している組織の病態生理学的状態の診断のために使用可能であるが、さらにそれらはまた、それらが適切なキャリア分子に結合されているときに治療活性物質の標的化された輸送のために使用可能である。特に、所定の数の糖分子のカップリングに伴って生じ、かつある強度でアミノ酸から形成される構造の変動性を超える、可能な構造の大きな変動性は、細胞の発生における種々の段階の表示を可能にし、かつそれぞれの活性な機能の表示もまた可能にする。
【0005】
繰り返された試みは、活性物質の標的化された輸送のために、病理学的変化を示す血管内皮上の特定のマーカー、または診断目的のために使用され得る粒子の輸送のための特定のマーカーを使用するためになされてきた。例えば、モノクローナル抗体が、標的探索粒子としてしばしば使用される。この技術の一般的用途は、使用される構造の低い特異性によって、または免疫応答を引き起こすことによってもまた、より困難にされる。身体の免疫応答に起因する免疫学的効果および標識された細胞の破壊が、抗体の使用に伴って深刻な問題であることは、まさに診断方法の範囲内である。疾患の病巣の細胞それ自体の上の標的構造もまた、標的探索粒子にとっての標的であると多くの場合記載されており、それによって、ここでは、特に疾患を有する領域に接近することの困難さが、体系的な適用に伴う不利な点といわれるべきである。
【0006】
グリコカリックスの糖タンパク質およびプロテオグリカンについての天然のリガンドはレクチンである。レクチンはグリコカリックスの糖構造に対して強力な親和性を有するタンパク質または糖タンパク質である。レクチンの構造は広範に変化するが、共通の特徴は、タンパク質が常に関与することである。さらなるレクチンの共通の特徴は、これらが特異的かつ可逆的に高い親和性で糖質に優先的に結合することである。ここで、オリゴサッカリドへの結合の親和性は、モノサッカリドへの結合の親和性よりも何倍も高い。結果として、オリゴサッカリドおよび内皮細胞表面の異なる空間的およびまた機能的な一時的形成が、レクチンの空間特異的連結を容易にする。選択性に関するこの非常に好ましい特性に加え、種々の供給源からのこれらのタンパク質構造の利用可能性もまた非常に好ましい。
【0007】
WO 01/17566は、内皮および/または白血球のリガンドの特異的発現と関連している、リンパ節における変化、炎症性プロセス、または病理学的変化を示すための造影剤を示す。この造影剤を用いて、特別にあらかじめ準備された(specifically exprimed)内皮リガンド、具体的にはL-セレクチンまたはL-セレクチン誘導体についてのレセプターが、所定の配列におけるシグナルユニットにカップリングされる。
【0008】
WO 85/01442は、癌治療または腫瘍細胞の検出のために使用される、治療剤または放射活性標識のいずれかを伴う、ピーナツレクチン、オレンジ果皮からのレクチン抽出物、マクルラ・ポミフェーラ(Maclura pomifera)レクチン、ドリコス(Dolichos biflorus)凝集素、およびダイズ凝集素から選択される、種々のレクチンの結合体を記載する。
【発明の開示】
【0009】
対照的に、本発明の目的は、新規の型のレクチン結合体の提供であり、これは、身体に対して低い毒性負荷を有する特に有効な様式でグリコカリックスの病態生理学的変化の診断を容易にし、さらにまた、任意に、治療活性物質に単純かつ有効にカップリングされ得る。後者の型の態様は、活性物質の標的化された輸送のみならず、患者体内の活性物質の蓄積の追跡もまた、容易にする。
【0010】
この目的は、本願の請求項1に記載の結合体によって、本発明に従って解決される。この結合体は、内皮細胞の表面上のレセプターに特異的に結合する少なくとも1つの標的化ユニット、およびリンカーによって該標的化ユニットにカップリングされた少なくとも1つのエフェクターユニットを含み、これは、少なくとも1つのシグナルユニット、および任意に少なくとも1つの治療活性物質を含み、それによって、標的化ユニットがレクチンまたはそのフラグメントもしくは誘導体を含み、そのためにレクチンがL-セレクチンでなく、かつシグナルユニットがランタニドイオンを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の意味におけるレクチンのフラグメントは、天然に存在するレクチンの部分を意味し、これは好ましくは天然に存在する型の結合特異性を有する。
【0012】
本発明の意味におけるレクチンの誘導体は、好ましくは、化学修飾されたレクチンを意味し、これは、未修飾のレクチンの結合特異性を有する。レクチンの化学修飾の例は、ビオチン化である。
【0013】
本発明に従うレクチンの化学修飾は:
(i)放射活性修飾、例えば、放射活性リン酸化、または硫黄、水素、炭素、窒素を用いる放射活性標識、
(ii)着色基(例えば、ジゴキシゲニンなど)、
(iii)蛍光基(例えば、フルオレセインなど)、
(iv)化学発光基、および/または
(v)固定相上での固定化のための基(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン、ストレプタグ)、
(vi)高電子密度を有する物質(例えば、金)を用いる標識
を含み得るか、または(i)から(vi)の下に引用された2つまたはそれ以上の修飾に従う修飾の組み合わせを含み得る。これらの修飾は、当業者に公知である反応を用いて実証され得る。
【0014】
本発明のさらなる局面において、内皮細胞の表面上のレセプターに特異的に結合する少なくとも1つの標的化ユニット、および少なくとも1つの治療活性物質を含み、リンカーによって該標的化ユニットにカップリングされる少なくとも1つのエフェクターユニットを含む結合体が提供され、この標的化ユニットはレクチンまたはそのフラグメントもしくは誘導体を含み、それによって、このレクチンがピーナツレクチン、オレンジピールのレクチン抽出物、マクルラ・ポミフェーラ(Maclura pomifera)レクチン、ドリコス(Dolichos biflorus)凝集素、またはダイズ凝集素ではないことを特徴とする結合体が提供される。
【0015】
本発明はまた、これらの結合体を製造するための方法、ならびに診断方法および/または治療方法におけるこれらの結合体の使用を含む。
【0016】
本発明に係る結合体の使用を通して、それぞれの課題に一致した標的化ユニットおよびエフェクターユニットから形成されるので、病態生理学的変化は、これらの病態生理学的変化によって修飾されたグリコカリックス間の特異的相互作用の利用を通して検出可能かつ証明可能にされることができ、標的化ユニットとして使用されるレクチン、および任意に活性物質は疾患の位置に輸送されることができ、かつ患者体内の蓄積が追跡されることができる。
【0017】
病理学的に変化した内皮細胞から準備される特定の糖質構造または特定のレクチンを別として、特徴的なグリコカリックスはまた、例えば、プラーク、動脈硬化症、またはバイオフィルムなどの、血管壁に沈着する粒子によって標識されることができる。血管の実際の表面はその上の沈着によって覆われており、それゆえにグリコカリックスはもはや表面に出ることができないという事実もまた、血管の変化の指標として採用されるべきであり、かつ病態生理学的な変化を指摘し得る。さらに、本発明に係る結合体を用いて、血管の下に位置する組織の特徴的なグリカンもまた、それが血管組織の部分的損失を伴う病理学的プロセスに起因して露出された場合には、ある状況下で形成されることができる。
【0018】
好ましくは、標的として作用する血管壁のグリコカリックスの糖質構造は、炎症性疾患または下に位置する腫瘍組織に特徴的である。
【0019】
炎症性疾患についての適切な内皮マーカーは、例えば、VCAMPGP1、クラス1MHC抗原、ICAM-1、VCAM-1、ELAM-1、E-セレクチン、P-セレクチン、またはVLA-4である。
【0020】
細胞表面分子4Ff2、EndoGlyx-1、エンドグリン(CD105)、ガレクチン、および特にエンドシアリンは、血管内皮の下に位置する腫瘍組織についてのマーカー、ならびに腫瘍増殖および血管内皮に対する関連する変化によって引き起こされる血管形成についてのマーカーとして適切である。
【0021】
病態生理学的プロセスによって修飾される内皮細胞のグリコカリックスの特徴的な糖質構造に特異的に結合する、レクチン、それらのフラグメント、または誘導体は、本発明に係る結合体のための標的化ユニットとして作用する。
【0022】
好ましくは、一価のレクチンが結合体のために使用され、その結果、血液細胞、例えば、赤血球の凝集がその適用の間に起こらない。
【0023】
正常な身体の機能もまた、使用されるレクチンによって影響される、または妨げられるべきではない。
【0024】
結合体中で使用されるそれらのレクチン、それらのフラグメント、または誘導体は、植物、動物、細菌、ウイルス、またはヒトを起源とする。
【0025】
本発明のために適切なレクチンの特定の例は以下である:
ウイルスのレクチン:
ロタウイルスのレクチン
ワクシニアウイルスのレクチン
細菌のレクチン:
アドヘシン、特に百日咳菌(Bordetella Pertussis)のアドヘシン
糖質結合分子のファミリー13
菌叢ディクチオステリウム(dictyostelium)からのコミチン(Comitin)レクチン
コレラ菌(Vibrio Cholera)のニューロアミニダーゼ
単細胞生物のレクチン:
エントアメーバのレクチン
植物からのレクチン:
LEA、DSA、GSA-1B4、PHA、SBA、UEA-1、CSA-1、WGA、ポテトレクチン(STA)、オオムギレクチン、LAA-1、MAA、GNA、DBA、ジャカリン(jacalin)、SCAman、ConA、ECA、PSA、RCA、LOLI、モデシン(modeccin)、アブリン、ビスカム(viscum)、リシン、ML-1、アリウムレクチン
動物レクチン:
ボトリラス・シュロッセリ(Botryllus Schlosseri)からのBSCLT
ミオムファラリア・ガラブラータ(Miomphalaria Glabrata)からのBgSEL
ハリネズミからのフィコリン/オプソニンP35レクチン
ヘビからのエキセチン
ヘビからのBjcuL
ヘビからのRVV-X
線形動物のエレガンス線虫(Caenorhabditis Elegans)からのガレクチン
カイコからのBmLBP
無脊椎動物のCCF-1
マウスのLy-49
リムリン
リムルス因子C
LFA
HPA
ヒトレクチン:
1)C型レクチン
コレクチンのファミリー:Clq、MBL、HSP-A、HSP-D、コレクチン43、α-フィコリン、β-フィコリン、コングルチニン、P35
シグレック(siglec)のファミリー:シグレック1(シアロアドヘシン)、シグレック2(CD22)、シグレック3、シグレック4、シグレック5、シグレック6、シグレック7、シグレック8、シグレック9、シグレック10
レクチカンのファミリー:アグレカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン
サイトカイン:IL-3、TFN-α、トロンボモジュリン、CD11b/CD18、CD66b、エラスチン/ラミニン結合タンパク質、CD44、EN4、CD36、ヘベイン(hevein)、シュドヘベイン
接着分子:ガラクトシルレセプター、PECAM-1(CD31)、EpCAM、ICAM-1(CD54)、ELAM-1(CD62E)、VCAM-1(CD106)、CD72、ビトロネクチン、LEC-CAM、特にLEC-CAM-1
免疫系と関連するC型レクチン:NK細胞ドメイン、例えば、Ly-49、CD23、またはCD69、単球およびマクロファージレクチン、CD72、T&Bリンパ芽球ムチン型レクチン、P47、LSLCL遺伝子産物
他のレクチン:肝アシアロ糖タンパク質レセプター、テトラネクチン、P58/ERGIC-53、LOX-1、IX/X結合タンパク質の凝固因子、ポリシスチン-1-C型レクチン、C型レクチンドメインを有するムチン型タンパク質、ミエリン結合糖タンパク質、エンドシアリン(TEM1)、エンドグリックス、リポポリサッカリド結合タンパク質。
2)S型レクチン
S-Lacレクチン
ガレクチン:ガレクチン-1、ガレクチン-3、ガレクチン-9。
【0026】
特に好ましいものは、植物レクチン、本発明では、特にLEA、GSA-1B4、UEA-1、ConA、およびWGA、動物レクチンLFA、ならびに人体レクチン、本発明では、特にLOX-1、トロンボモジュリン、エンドシアリン、エンドグリックス、およびガレクチン-1である。
【0027】
本発明に係る結合体のさらなる機能的構成成分は、適切な方法によってレクチンにカップリングされたシグナルユニットであり、およびこれは、生理学的条件下でレクチン上で安定な状態のままである。このシグナルユニットは、ランタニドイオン、好ましくは、ガドリニウムイオンまたはユーロピウムイオンを含む。本発明では、ランタニドイオンが適切なキレート剤に好ましくは結合する。適切なキレート形成分子またはキレート剤のいくつかの非制限的な例は、EDTA、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N,N,N四酢酸)、DFO(デフェロキサミン)である。DTPAまたはDFOが特に好ましい。
【0028】
適切な方法によってオリゴマー形成またはポリマー形成されたキレーターユニットもまた、結合体中のより高い金属イオン負荷を達成するためのシグナルユニットとして使用されることができる。例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、もしくはN,N-ビス-(2-ヒドロキシエチルグリシン)などの適切なジオール、またはエチレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、もしくは1,6-ヘキサメチルジアミンなどのジアミンが二官能性の架橋剤として使用されることができ、その結果、キレート剤モノマーは、エステルまたはアミドの機能によって互いにカップリングされる。
【0029】
上記の二官能性ユニットによってカップリングされるモノマーの数は、n=2〜20、好ましくはn=2〜15、より好ましくはn=2〜12であり、および非常に好ましくはn=3〜10である。キレーターユニットと様々な化学量論的比率で連結される、例えば、キトサン、デキストラン、またはポリリジンなどの、天然に存在するポリマーおよびそれらのフラグメントもまた、金属イオン負荷を増加させるために使用されることができる。
【0030】
シグナルユニットのモノマーまたはオリゴマーのキレーターユニットは、レクチン、そのフラグメントまたは誘導体に共有結合でカップリングされることができ、かつ同時に共有結合リンカーとして働く。
【0031】
レクチン、そのフラグメント、または誘導体へのシグナルユニットのカップリングは、その生物学的機能を損なうことなく、レクチンの適切な官能基の使用を通して行われる。必要ならば、この官能基は、天然型レクチンの修飾を通して導入されることができる。ビオチン化されたレクチンの使用もまた、アビジン化されたシグナルユニットをカップリングするために使用されることができる。好ましくは、シグナルユニットのカップリングは、レクチン中のリジンの遊離の窒素の機能を介して行われる。原理的には、標的位置へのシグナルユニットの信頼できる輸送、および標的位置におけるシグナルユニットの信頼できる配置を容易にするすべての既知のリンカー分子が、レクチンにシグナルユニットをカップリングするためのリンカーとして使用されることができる。シグナルユニットへのカップリングのための適切なリンカーは非毒性であり、レクチン、またはそのフラグメントもしくは誘導体の生物学的挙動および特異性を損なわないし、有意な程度までシグナルユニットの活性も損なわない。適切なリンカーは、カップリングのために意図される物質の型、およびレクチン上の反応性の官能基の型の依存性において選択されることができる。タンパク質上の種々の官能基への診断物質および治療物質のカップリングのための一連のリンカーがすでに当技術分野の状態において公知であり、必要に応じて、本発明に係る特別な結合体のために適合および使用可能である。
【0032】
レクチンリンカー結合体の合成のために、必要に応じて、レクチンの特別な結合点が、適切な一時的な結合リガンドによって保護され、これはうまく行ったカップリングの後で再度除去される。この点に関して、例えば、オリゴサッカリドまたはポリサッカリドの特異的結合を含むことができ、これは、うまく行ったカップリングの後に、例えば、アフィニティークロマトグラフィーを通して再度除去されることができる。この保護基は、例えば、キトビオースであり得る。
【0033】
本発明の特定の局面において、特別にあらかじめ準備されたレクチンが血管壁の内皮細胞の表面上で検出される。さらに、本発明に従って、二価の糖が使用され、これは、一方では内皮細胞上のレクチンに関して選択的結合親和性を有し、他方で本発明に係るレクチン結合体の標的化ユニットのレクチン、またはそのフラグメントもしくは誘導体に関して第2の親和性を有する。本発明では、二価の糖は、結合体化されたレクチンの特異的結合点への適用前に結合されることができるか、または別々に適用されることができるかのいずれかであり、その結果、糖は、内皮細胞上の特別にあらかじめ準備されたレクチン上に最初に結合し、次いで、結合体化されたレクチンによって検出および結合されるのみである。
【0034】
治療効果を得るために、標的化ユニット、すなわち、レクチン、またはそのフラグメントもしくは誘導体、あるいは標的化ユニットおよびシグナルユニットからの結合体が、活性物質が標的によって特徴付けられる標的位置において問題なく再度遊離され得るのと同じ様式で治療活性物質を提供される。
【0035】
治療活性物質は、好ましくは細胞毒性物質である。これは、例えば、シスプラチンまたはその適切な誘導体などの金属錯体であり得る。他の細胞増殖抑制剤として有効な物質、例えば、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗物質、ホルモン、または有糸分裂阻害剤もまた、活性物質として使用され得る。成長因子、毒素、組換えタンパク質、遺伝子トランスフェクションのためのベクターもまた、使用され得る。放射性核種の使用を伴って、放射活性粒子が、適切なキレート剤、例えば、DTPAまたはDFOなどによってレクチンにカップリングされる。本発明ではまた、レクチンのモルあたりのより高い金属イオン濃度が、より多くのオリゴマー形成またはポリマー形成されたキレーターユニットの使用を通して得られる。非金属放射性核種の場合において、放射活性元素が適切な基に取り込まれることができ、その結果、タンパク質にカップリングされることができる。
【0036】
放射性核種として、123I、125I、130I、131I、133I、135I、47Sc、72As、72Se、90Y、88Y、97Ru、100Pd、101mRh、119Sb、128Ba、197Hg、211At、212Bi、212Pd、109Pd、111In、67Ga、68Ga、67Cu、75Br、76Br、77Br、99mTc、11C、13N、15O、および18Fが使用され得る。特に好ましいものは125I、111In、99mTc、および18Fである。
【0037】
好ましくは、活性物質が、レクチン、またはそのフラグメントもしくは誘導体に結合される。この活性物質のカップリングは、その生物学的な機能を損なうことなく、レクチンの適切な官能基を使用する共有結合リンカーを介して行われる。必要な場合、この官能基は、例えば、化学的方法または遺伝子操作方法を通して、天然型レクチンの修飾によって導入され得る。好ましくは、活性物質のカップリングは、レクチン中のリジンの遊離の窒素官能基を介して行われる。
【0038】
原理的には、標的位置への活性物質の信頼できる輸送、および標的位置における活性物質の信頼できる放出を容易にするすべての既知のリンカー分子が、レクチンに活性物質をカップリングするためのリンカーとして使用され得る。シグナルユニットまたは活性物質をカップリングのための適切なリンカーは非毒性であり、レクチン、またはそのフラグメントもしくは誘導体の生物学的挙動および特異性を損なわないし、有意な程度まで活性物質の活性も損なわない。金属イオンのカップリングのための好ましいリンカーは、すでに上記に言及している。
【0039】
他の適切なリンカーは、カップリングのために意図される物質の型、およびレクチン上の反応性の官能基の型の依存性において選択され得る。タンパク質上の種々の官能基への診断物質および治療物質のカップリングのための一連のリンカーがすでに当技術分野の状態において公知であり、必要に応じて、本発明に係る特別な結合体のために適合および使用可能である。
【0040】
本発明において必要な場合、レクチンの特別な結合点が、適切な一時的な結合リガンドによって保護され、これはうまく行ったカップリングの後で再度除去される。この点に関して、例えば、特異的な結合するオリゴサッカリドまたはポリサッカリドが含められることができ、これは、うまく行ったカップリングの後に、例えば、アフィニティークロマトグラフィーを通して再度除去されることができる。この保護基は、例えば、キトビオースであり得る。
【0041】
本発明に係るレクチン活性物質結合体を使用して、標的化ユニットのレクチン、フラグメント、または誘導体が好ましく形成され、その結果、病理学的に修飾された内皮細胞が、最初に、レクチンをそのグリコカリックスに結合させることができる。次いでレクチンは、細胞に受容されることができ、かつ再度、内皮の下の領域に放出されることができる。次いで、疾患の病巣への選択的かつ標的化された取り込みが可能である
【0042】
治療効果はまた、内皮細胞の選択的標識、続いて経細胞輸送を通して達成可能であり、その結果、高い活性物質の蓄積または濃度が、血管壁の内皮の下の側で得られる。次いで、高い蓄積は、疾患を有する組織の方向での希釈による活性物質の受動輸送を単純化する。
【0043】
好ましくは、治療される組織における病態生理学的条件は、炎症性疾患または腫瘍疾患である。
【0044】
好ましい態様において、少なくとも1つのシグナルユニットおよび少なくとも1つの活性物質は同じレクチンにカップリングされる。1つのおよび同じレクチンへのシグナルユニットおよび活性物質の共通のカップリングにより、患者体内の活性物質の蓄積の診断的追跡が可能である。
【0045】
本発明の特定の局面において、結合体は、標的化ユニット、すなわち、レクチン、またはそのフラグメントもしくは誘導体、および治療活性物質の組み合わせのみからなり得る。この態様のために、上記に言及されたすべての活性物質との、上記に言及されたすべてのレクチン、またはそれらのフラグメントおよび誘導体の組み合わせが可能である。この点に関して、特に好ましいものは、人体からのレクチン、および特にLOX-1、白血球、およびマクロファージレセプター、エラスチン/ラミニン−結合タンパク質、CD11b/CD18b、MBL、トロンボモジュリン、ビトロネクチン、およびEpCAMである。
【0046】
レクチンまたはそのフラグメントもしくは誘導体と、レクチンにカップリングされたそれぞれのシグナルユニットまたはそれぞれのカップリングされた活性物質との間のモル比は、経験的に決定可能な範囲内におけるそれぞれのレクチン結合体の特定の課題の最適な実行のために変動され得る。これらの型の最適化実験は、いかなる場合でも、当技術分野における平均的な当業者の能力の範囲内にある。
【0047】
レクチン、シグナルユニット、および任意に活性物質は、別々の合成方法において形成されることができ、必要に応じて合わせられることができる。このモジュラー構造に起因して、本発明に係る結合体の特性のバリエーション、例えば、レクチン特異性の変化が容易に可能である。
【0048】
特定の態様において、本発明に係るレクチン結合体は、ポリマーキャリアの表面に固定化され得るか、またはポリマーキャリア中に封入され得る。このようなポリマーキャリアの特定の例は、ポリスチレンもしくはキトサンベースのナノ粒子もしくはマイクロ粒子、BSA/PLA(ポリ乳酸)マイクロ粒子、またはラテックス粒子(例えば、ポリスチレン由来)である。本発明のポリマーキャリアのサイズは、血管中の正常な血流がレクチン結合体の存在によって妨害されないように選択される。
【0049】
このような方法において、高濃度の所望のエフェクターユニットが標的化位置において達成可能である。
【0050】
本発明に係る、およびシグナルユニットにカップリングされた結合体は、特定の標的、例えば、血管内皮細胞上の、または任意に下に位置する組織上の、特徴的な糖質構造または特別に準備したレクチンの検出のための、種々の画像に基づく診断方法、好ましくはMRI(「核共鳴画像化/磁気共鳴画像化」)において使用され得る。さらなる局面において、MRIのための内皮標識はまた、より低く選択的に作用するレクチンを通して行われることができ、その結果、全体の血管内皮が、レクチンシグナルユニット結合体によって完全に標識され、従って、所定の体積の原子中における血管の体積の決定を通して血管の完全な画像化を容易にする。
【0051】
以下の非限定的な実施例において、本発明のいくつかの好ましい態様がより詳細に記載される。
【0052】
実施例
実施例1
LES-DTPA-Gd(物質1)の合成
a)ニトリロ酢酸ガドリネート、三ナトリウム塩(Gd(NTA)2Na3)の製造:
Gd2O3 + 6HCl = 2GdCl3 + 3H2O
GdCl3 + 2Na3NTA = Gd(NTA)2NA3 + 3NaCl
2.10gのGd2O3(5.8mmol)を、0.046g HCl(37%、1.27mmol)に懸濁し、沸点まで加熱する。完全な溶解のために、沸騰している溶液が透明になるまで、さらにHCl(37%)を滴下して加える。GdCl3溶液を60mlに希釈し、次いで6.38gのNa3NTA(23.2mmol)を40℃で加える。この溶液を100mlにし、pH値を、3MのNaOHを加えることによってpH=6に調整する。
【0053】
b)DTPABA(ジエチレントリアミノ五酢酸二無水物)の結合体化
10mgのLEA(1.41×10-4mmol)を、エッペンドルフチューブ中で0.22mlのリン酸緩衝液(0.1M、pH 7.4)に溶解する。11.2mgのDTPABA(0.031mmol、220倍過剰)を0.028mlのDMSOに懸濁し、次いで、4分割してタンパク質溶液に加える。それぞれを添加中、pH値を、3MのNaOHを加えることによってpH 8.5に調整する。最後に添加した後、溶液を室温で1時間静置し、10分毎に振盪する。
【0054】
c)Gd(III)の錯体形成
未結合のDTPABAを除去するために、反応溶液を、FPLC(Fast Protein Liquid Chromatography)を使用して、クエン酸緩衝液(0.1M;pH 6.5)を用いるゲル濾過を通して分離する。共有結合したDTPAを有するタンパク質画分を単離する。3mlの得られたタンパク質溶液に0.030mlのGd(NTA)2溶液(a)に記載の生成物)を補充し、4℃で24時間攪拌する。次いで、この溶液を凍結乾燥し、0.5mlの蒸留水中に溶解し、かつ再度FPLCを用いて精製し、未結合のGd(NTA)2および遊離のH3NTAを分離する。
生成物の特性:
MWレクチン71,000g/mol;この結合体はAASおよびタンパク質測定を使用して特徴付けされる。
【0055】
実施例2
キトサンナノ粒子中にカプセル化されたLEA-DTPA-Gd
ビス(エチルヘキシル)スルホスクシネートナトリウム(0.03〜0.1M)を、40mlのn-ヘキサン中に溶解する。この溶液に、100μlの0.1%キトサン酢酸溶液、200μl LEA-DTPA-Gd溶液(異なる濃度)、10μlのアンモニア溶液、および10μlの0.01〜1.0%グルタルアルデヒド溶液を、室温で絶え間なく攪拌しながら加える。この反応溶液は均一かつ透明になる。この方法で、キトサンナノ粒子が、カプセル化されたLEA-DTPA-Gd結合体とともに形成する。次の合成段階において、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、超音波バス中で、乾燥残渣を5mlのtris-Cl緩衝液(pH=7.4)中に再懸濁する。次いで、1mlの30% CaCl2溶液を滴下して加える。アクチベーターは、カルシウムジエチルヘキシル−スルホスクシネート[Ca(DEHSS)2]の形態で沈殿する。この沈殿を4℃および5000rpmで30分間遠心分離する。ペレットを廃棄し、ナノ粒子を含む残渣を単離し、2回、各2時間、60000rpmで遠心分離する。この単離されたペレット(ナノ粒子を有する)を5mlのtris-Cl緩衝液(pH=7.4)中に懸濁し、4℃に保持する。
【0056】
このようにして製造された造影剤を、AAC、FACS、SEMによって特徴付けする。
【0057】
実施例3
異なる条件下でのラテックス-LEA-DTRA-Gdの合成
I)調製されたLEA-DTPA-Gd結合体を使用する、物質3.1、3.2、3.3の製造
2mgのポリスチレンCOOH(400nm)、2mg EDC[=1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩]および0.73mg LEA-DTPA-Gd結合体(実施例1を参照されたい)(LEA-DTPA-Gd:EDC=1:1000)を、0.4mlの3回蒸留水中に溶解する(または物質3.3についてはリン酸緩衝液中に溶解する;LEA-DTPA-Gd:EDC=1:100)。この反応混合液を室温で18時間インキュベートする。次いで、この溶液を遠心分離し、ポリスチレンLEA-DTPA-Gd結合体を含む残渣をFPLCを使用して精製する。物質3.1および3.3の場合においては、FPLC精製の前に遠心分離を行わない。
【0058】
II)LEAとのポリマーの反応の前の結合体の製造(物質3.4)
ラテックス懸濁物中のアクチベーターおよびイオン不純物を遠心分離(3×10分間、4000rpm、PBS中)によって分離する。36.0mgのラテックス粒子を4mlのPBS中に再懸濁する。35.0mgのEDC[1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩]の添加後、反応混合液を室温で3.5時間攪拌する。洗浄によるアクチベーターの除去後(3分間、4000rpmで1回遠心分離)、10mgのLEAを加え、室温で一晩インキュベートする。次いで、反応混合液を、4000rpmで1回遠心分離し、遊離のレクチンを分離する。次いで、ポリマーを1mlのPBS中に再懸濁し、4℃に保持する。DTPABAとの結合体化を、次の作業工程のように実行する。これは、実施例1の工程b)およびc)と類似して行われる。実施例1c)に従ってガドリニウム(III)を負荷することは、2×0.0030mlのGd(NTA)2溶液を用いて行う。
【0059】
実施例4
PLA-LEA-ガドリニウム結合体の合成
a)BSA/PLAマイクロ粒子(直径約2μm)の合成
260mgのポリ-(D,L-乳酸)を5mlジクロロメタンに溶解し、80mlのBSA溶液(25%重量/体積)中で、Ultra Turrax T25を使用して2400rpmで3分間乳化する。得られたエマルジョンを室温で一晩攪拌する。固体のマイクロ粒子が形成し、これを遠心分離(3300×g、15分間)によって収集し、3回蒸留水で6回洗浄する。次いで、この懸濁物を4℃に保持する。マイクロ粒子濃度を、凍結乾燥後に1.5mlの懸濁物の秤量によって測定する。
【0060】
b)結合体の製造
BSA/PLA-LEA-Gd(物質4.1)の合成
原理:レクチンは、BSA/PLAマイクロ粒子に共有結合で結合する。このマイクロ粒子を、最初にグルタルアルデヒド(25%水溶液)で活性化し、次いで第2の工程のようにLEAとのインキュベーションを実行する。
【0061】
50mgのBSA/PLAマイクロ粒子を、PBS(10mM、pH=7.4)中での遠心分離(3300×g、10分間)によって洗浄する。ペレットを、1mlのPBS中でのボルテックスの間に再懸濁する。次いで、1mlの25%グルタルアルデヒド水溶液を加え、この混合物を6時間振盪して、アミノ基を活性化する。未反応のグルタルアルデヒドを分離するために、このBSA/PLA懸濁物を遠心分離して、PBS(10mM、pH 7.4)で4回洗浄する。次いで、PBS中の0.25mgのLEAを1mlのBSA/PLA懸濁物に加える。この反応溶液を室温で一晩インキュベートする。次いで、LEAマイクロ粒子結合体を遠心分離し、1mlのPBS中に再度懸濁し、かつ4℃で保存する。
【0062】
結合したレクチンの量は差分法(difference method)を用いて見い出される(調製物中のレクチン/結合体化後の上清中のレクチン)。タンパク質の測定はアミドブラック法に従って行われる。
【0063】
DTPAとの結合体化
0.007mlのDMSO中の3.5mgのDTPABA(0.009mmol、220倍過剰)を、0.5mlのマイクロ粒子懸濁物に加える。pH値を、3M NaOHを加えることによって8.5に調整する。この懸濁物を、室温に1時間静置し、10分毎に振盪する。
【0064】
Gd(III)の錯体形成
反応混合液を4000rpmで3分間遠心分離する。ペレットを廃棄し、マイクロ粒子を含む上清を、クエン酸緩衝液(0.1M;pH 6.5)を使用するFPLCを用いて分離する。共有結合したDTPAを有するBSA/PLA-LEA画分を単離する。3mlの得られた溶液に3×0.030mlのGd(NTA)2溶液を補充し、4℃で24時間攪拌する。次いで、この溶液を凍結乾燥し、0.5mlの蒸留水中に溶解し、かつ再度FPLCを用いて精製し、未結合のGd(NTA)2および遊離のH3NTAを分離する。
【0065】
BSA-Gd/PLA-LEA-Gd(物質4.2)の合成
最初に、この化合物のために必要とされるBSA-DTPABA-Gd結合体を以下のように製造する。
【0066】
20mgのBSA(0.3×10-3mmol)を、エッペンドルフチューブ中で、0.44mlのHEPES緩衝液(0.1M;pH=8.8)中に溶解する。23.6mgのDTPABA(0.066mmol、220倍過剰)を0.059mlのDMSO中に懸濁し、次いで、3分割してタンパク質溶液に加える。添加中は、pH値を、3MのNaOHを加えることによってpH=8.5に調整する。最後に添加した後、攪拌をさらに室温で2時間実行する。
【0067】
未結合のDTPABAを除去するために、反応溶液を、FPLC(Fast Protein Liquid Chromatography)を使用して、クエン酸緩衝液(0.1M;pH 6.5)を用いるゲル濾過を通して分離する。共有結合したDTPAを有するタンパク質画分を単離する。3mlの得られたタンパク質溶液に0.056mlのGd(NTA)2溶液(0.016mmol)を補充し、4℃で24時間攪拌する。次いで、この溶液を凍結乾燥し、0.5mlの蒸留水中に溶解し、かつ再度FPLCを用いて精製し、未結合のGd(NTA)2および遊離のH3NTAを分離する。
【0068】
50mgのBSA-DTPA-Gd/PLAマイクロ粒子を、PBS(10mM、pH=7.4)中での遠心分離(3300×g、10分間)によって洗浄する。ペレットを、1mlのPBS中でのボルテックスの間に再懸濁する。次いで、1mlの25%グルタルアルデヒド水溶液を加え、この混合物を6時間振盪して、アミノ基を活性化する。未反応のグルタルアルデヒドを分離するために、このBSA-DTPA-Gd/PLA懸濁物を遠心分離して、PBS(10mM、pH 7.4)で4回洗浄する。次いで、0.25mgのLEAを1mlのBSA-DTPA-Gd/PLA懸濁物に加える。この反応溶液を室温で一晩インキュベートする。次いで、LEA-BSA-DTPA-Gdマイクロ粒子結合体を遠心分離し、0.5mlのPBS中に再度懸濁し、かつ4℃で保存する。
【0069】
DTPAとの結合体化
0.007mlのDMSO中の3.5mgのDTPABA(0.009mmol、220倍過剰)を、マイクロ粒子懸濁物(0.5ml)に加える。pH値を、3M NaOHを加えることによって8.5に調整する。この懸濁物を、室温に1時間静置し、10分毎に振盪する。
【0070】
Gd(III)の錯体形成
反応混合液を4000rpmで3分間遠心分離する。ペレットを廃棄し、マイクロ粒子を含む上清を、クエン酸緩衝液(0.1M;pH 6.5)を使用するFPLCを用いて分離する。共有結合したDTPAを有するBSA/PLA-LEA画分を単離する。3mlの得られた溶液に3×0.030mlのGd(NTA)2溶液を補充し、4℃で24時間攪拌する。次いで、この溶液を凍結乾燥し、0.5mlの蒸留水中に溶解し、かつ再度FPLCを用いて精製し、未結合のGd(NTA)2および遊離のH3NTAを分離する。
【0071】
結合したレクチンの量は差分法を用いて見い出される(調製物中のレクチン/結合体化後の上清中のレクチン)。タンパク質の測定はアミドブラック法に従って行われる。
【0072】
実施例5
ポリマーキャリアの表面上へのレクチン結合体の固定化
キャリアとして、キレート化合物DTPABAの重縮合物を、各々の場合において、[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン]、エチレンジアミン、ヘキサメチルエチレンジアミン、およびエチレングリコールを用いて製造する。この重縮合物の鎖長はn=5〜9単位の間である。
【0073】
I.重縮合化:
0.7146g DTPABA(2mmol)を、不活性ガスのための開口部を備えた100mlの丸形フラスコ中で、10mlのDMSO(無水)中に溶解する。0.3264gのビシンまたは二官能性試薬(2mmol)を加え、この混合物を72時間、N2下で攪拌する。重縮合物を10倍量のアセトン中で沈殿させ、濾過し、かつアセトンで洗浄する。この生成物を水に溶解し、再度アセトン(10倍量)で沈殿させ、濾過し、かつ洗浄する。次いで、これを、一定の重量が得られるまで、真空下、40℃で乾燥させる。
【0074】
II.LEA(Lycopersicon esculentum凝集素)との重縮合物の結合体化
10mgのLEA(1.41×10-4mmol)を、エッペンドルフチューブ中で0.50mlのリン酸緩衝液(0.1M;pH 7.4)中に溶解し、次いで、10mgの重縮合物を加える。pH値を、3M NaOHを加えることによって8.5に調整する。次いで、この溶液を室温に1時間静置し、10分毎に振盪する。
【0075】
III.ガドリウムとの重縮合物の錯体形成
未結合物質を除去するために、反応溶液を、FPLC(Fast Protein Liquid Chromatography)を使用して、クエン酸緩衝液(0.1M;pH 6.5)を用いるゲル濾過を通して分離する。共有結合した重縮合物を有するタンパク質画分を単離する。3mlの得られたタンパク質溶液に、各場合において120μlのGd(NTA)2溶液(0.016mmol)を補充し、4℃で24時間攪拌する。次いで、この溶液を凍結乾燥し、蒸留水中に溶解し、かつ再度FPLCを用いて精製し、未結合のGd(NTA)2および遊離のH3NTAを分離する。
【0076】
すべての化合物は、1H-、13C-NMR、質量分析法、AAS、またはタンパク質測定を使用して特徴付けする。
【0077】
実施例6
MRI診断法における使用
a)緩和の測定
種々の物質の一連の希釈を、リン酸緩衝化塩化ナトリウム溶液(PBS、pH=7.4)において作製した;その濃度は、10-6Mから1.0Mの間であった。PBSを標準として使用した。溶解した試験物質を、30〜100nMのアリコートとしてエッペンドルフプラスチックチューブ中に満たし、MRI測定のために検出器コイル中に配置した。高分子の場合には、分析データが既知であるキャリアに基づいて、およびキャリアとガドリウムの間のモル比の考慮によって、モル濃度を計算した。Gd-DTPAまたはより小さなポリマーなどの低分子については、対応する物質の絶対的な分子量に基づいてモル濃度を決定した。ナノ粒子の場合には、全体の体積中のナノ粒子の完全な表面を参照した、ナノ粒子懸濁物の濃度およびガドリニウムの絶対量を、溶液中の濃度の計算のための基礎として使用した。
【0078】
PBS中で測定されたシグナルゲインを、段階的に希釈された一連の濃度のGd-DTPA化合物において得られた値と比較して、緩和を計算した。
【0079】
結果
物質1(LEA-DTPA-Gd):MRIデータ:SE(スピンエコー)=1×10-3において950%、1×10-5においてSEなし。
【0080】
濃度/効果曲線(図1)から、本発明に係る化合物は、オムニスキャン(omniscan)およびマグネビスト(magnevist)よりも低い濃度でシグナルの増加を引き起こすことが観察され得る。
【0081】
MRI画像:1×10-4Mを用いると、マウスにおける肝静脈の弱い画像である(スピンエコーおよびフラッシュ3D技術)。
【0082】
物質2:MRIデータ:SE(スピンエコー)=1×10-4において110%、1×10-5においてSEなし。スピンエコー技術を使用するマウスの肝静脈のMRI画像。
【0083】
物質3.4:MRI画像、図2および3を参照されたい。
【0084】
b)静脈の表示
ヒト静脈を、拡張蛇行静脈の手術的治療の間に取り出した。これらを、すぐに、PBSで緩衝化した2.5%グルタルアルデヒド中に配置した。この溶液中での4℃、18〜24時間の固定後、この静脈をPBS中に移し、+4℃で6週間まで保存した。この操作の間、静脈は裏返しにされ、このことは、生理学的条件下での天然の配向とは対照的に、内皮が外側に配置されていることを意味する。
【0085】
MRIにおける試験の直前に、静脈を、2cm長のフラグメントに切断し、4℃で、2時間から1週間までの間、0.15M塩化アンモニウム溶液中に配置し、次いで、少なくとも1時間の間、0.1% HSA、0.1mMのカルシウムイオン、および0.1mMのマグネシウムイオンを有するPBS(PBS含有物)中で保存した。次いで、この静脈をPBS含有物中に1時間配置し、これは10mg/mlのラテックス-400-LEA-Gd(物質3.4)を含んだ。対照として、添加物の添加を伴わないPBS含有物中に配置された1つの静脈を使用した。
【0086】
静脈セグメントを、PBS含有物中、または物質3.4を有するPBS含有物中に配置しながら、MRI測定を実行した。次いで、静脈を、すすぎのために5mlのPBS含有物中に配置し、2分間振盪させ、次いで静脈を再度PBS含有物ですすぎ、かつMRIで再度試験した。
【0087】
MRI測定を、スピンエコー周波数を使用して、次いで、FLASH-3Dシークエンスを使用して実行した。
【0088】
定量的データが画像から抽出され得るように、データをデジタル画像の形態で記録した。
【0089】
図2において、ヒト大伏在静脈においてラテックス-LEA結合体3.4を使用するMRI測定の結果を見ることができる。これらは、大伏在静脈の内皮上への本発明に係る結合体の沈着を明確に示す。
【0090】
c)マウスの潅流
各マウスを、ケタミンおよびキシラジン(Rompun)で麻酔し、次いで小さなベンフロンを1つの頸動脈および1つの頸静脈に導入した。次いで、このマウスをファルコンチューブ内に導入し、これは、空気の侵入を確実にするために一方の末端が開いており、かつこのファルコンチューブはMRIユニットの検出器コイル内に配置されていた。試験物質を用いる灌流の前に、MRI測定をマウスの種々の器官(脳、腸、肝臓、腎臓、および肺)で実行した。60秒間以内の0.2mlの試験物質の灌流を、MRIを使用して直接追跡した。MRI測定後、マウスを、1.0mlから2.5mlの間の種々の体積のL15を用いる灌流によって、頸静脈中をすすいだ。マウスを、すぐに再度検出器に配置し、MRI測定を再度実行した。
【0091】
ラテックス結合体3.4の使用の例として、マウス肝臓の4つのMRI画像を図3Aから3Dに図示する。これらの画像から、本発明に係る化合物の使用に起因する、肝臓中の血管の間のコントラストを明確に見ることができる。また、マウスの血管系の完全なすすぎにも関わらず、造影剤が血管中に残存する(図3Cおよび3D)。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】オムニスキャン(omniscan)[アクア[5,8-ビス(カルボキシメチル)-11-[2-(メチルアミノ)-2-オキソ-エチル]-3-オキソ-2,5,8,11-テトラアザトリデカン-13-オアト-(3-)-N5,N8,N11,O3,O5,O8,O11,O13]-ガドリウム水和物およびマグネビスト(magnevist)[1-デスオキシ-1-(メチルアミノ)-D-グルシトール-ジヒドロゲン-N,N-ビス[2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]-グリシナト-(5-)-]ガドリネート(2--)(2:1)]との比較における化合物1(LEA-DTPA-Gd)の濃度/効果曲線である;シグナルの相対的変化はPBSのシグナル値を参照する。
【図2】造影剤としてラテックスLEA結合体3.4を、およびスピンエコー技術を使用する、ヒト大伏在静脈におけるMRI画像である。静脈(対照)、造影剤なし、静脈はネガティブコントラストで認識されることができ;静脈(1週間)、造影剤あり、静脈は小管の右端において平面図で観察されることができ;静脈(新鮮)、造影剤あり、静脈横断面上の平面図;PBSはネガティブ対照;マグネビストはポジティブ対照である。
【図3】造影剤としてラテックスLEA結合体3.4を使用するマウスの肝臓血管のMRI画像である。図3Aは、造影剤を使用しない、ネガティブコントラストにおけるマウスの肝臓血管である。図3Bは、造影剤として物質3.4を使用、マウスの肝臓血管は白色であり、造影剤は血管中に配置されている(濃度5.75mg/ml)。図3Cは、マウス中の造影剤を1mlのPBSですすぎ、血管はなおわずかに白色に着色している。図3Dは、造影剤を4mlのPBSですすぎ、肝臓血管はなお白色であり、造影剤を含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内皮細胞の表面上のレセプターに特異的に結合する少なくとも1つの標的化ユニット、およびリンカーによって前記標的化ユニットにカップリングされ、かつ少なくとも1つのシグナルユニット、および任意に少なくとも1つの治療活性物質を含む少なくとも1つのエフェクターユニットを含む結合体であって、標的化ユニットがレクチンまたはそのフラグメントもしくは誘導体を含み、ここで、レクチンがL-セレクチンではなくかつシグナルユニットがランタニドイオンを含むことを特徴とする、結合体。
【請求項2】
標的化ユニットが病態生理学的なプロセスによって修飾された内皮細胞のグリコカリックスの特徴的な糖質構造に結合することを特徴とする、請求項1に記載の結合体。
【請求項3】
標的化ユニットが内皮細胞の表面上の特異的レクチンに結合することを特徴とする、請求項1に記載の結合体。
【請求項4】
標的化ユニットがウイルス、細菌、植物、動物、またはヒトの起源のレクチンであることを特徴とする、請求項1に記載の結合体。
【請求項5】
内皮細胞の表面上の特異的レクチンに対して選択的結合親和性を有する二価の糖が、レクチン、そのフラグメント、または誘導体に結合することを特徴とする、請求項3に記載の結合体。
【請求項6】
標的化ユニットが炎症性疾患のための内皮マーカーに結合することを特徴とする、請求項2に記載の結合体。
【請求項7】
標的化ユニットがVCAMPGP1、クラス1MHC抗原、ICAM-1、VCAM-1、ELAM-1、E-セレクチン、P-セレクチン、またはVLA-4に結合することを特徴とする、請求項6に記載の結合体。
【請求項8】
標的化ユニットが腫瘍細胞に特徴的な内皮マーカーに結合することを特徴とする、請求項2に記載の結合体。
【請求項9】
標的化ユニットが細胞表面分子4Ff2、EndoGlyx-1、エンドグリン、またはエンドシアリンに結合することを特徴とする、請求項8に記載の結合体。
【請求項10】
標的化ユニットが一価であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項11】
レクチンがLEA、UEA-1などのフコース特異的レクチン、MBLもしくはConAなどのマンノース結合レクチン、GSA-1B4などのガラクトシド-結合レクチン、LFAなどのシアル酸結合レクチンであるか、またはレクチンがLOX-1、トロンボモジュリン、エンドシアリン、エンドグリクス、もしくはガレクチン-1などの人体のレクチンであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項12】
ランタニドイオンがガドリニウムイオンまたはユーロピウムイオンであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項13】
エフェクターユニットが、細胞毒性物質および細胞増殖抑制物質から選択される治療活性物質を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項14】
治療活性物質が放射性核種、金属錯体、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗物質、ホルモン、成長因子、有糸分裂阻害剤、毒素、組換えタンパク質、または遺伝子トランスフェクションのためのベクターから選択されることを特徴とする、請求項13に記載の結合体。
【請求項15】
エフェクターユニットがキレート形成分子を含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項16】
キレート形成分子がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N,N,N四酢酸(DOTA)、またはデファロキサミン(DFO)であることを特徴とする、請求項15に記載の結合体。
【請求項17】
エフェクターユニットが二官能性架橋分子によって互いにカップリングされる数個のキレート形成分子を含むことを特徴とする、請求項16に記載の結合体。
【請求項18】
二官能性架橋分子が、ジオール、例えばエチレングリコール、1,3-プロピレングリコールもしくはN,N,-ビス-(2-ヒドロキシエチルグリシン)、またはジアミン、例えばエチレンジアミン、1,3-プロピレンジアミンもしくは1,6-ヘキサメチレンジアミンから選択されることを特徴とする、請求項17に記載の結合体。
【請求項19】
キレーターユニットが、キトサン、デキストラン、またはポリリジンなどの天然に存在するポリマーまたはそれらのフラグメントにカップリングされることを特徴とする、請求項16に記載の結合体。
【請求項20】
結合体がポリマーキャリアの表面上に固定化されるか、またはポリマーキャリア内に封入されることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項21】
ポリマーキャリアがポリスチレンもしくはキトサンベースのナノ粒子もしくはマイクロ粒子であるか、またはこれがBSA/PLAマイクロ粒子もしくはラテックス粒子であることを特徴とする、請求項20に記載の結合体。
【請求項22】
LEA-DTPABA-Gd結合体またはLEA-DTPA-Gd結合体であることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の結合体、および任意に、さらに治療活性物質、シグナル生成構成成分、生理学的に受容可能なキャリア、および補助物質を含む組成物。
【請求項24】
画像化法における、請求項1〜22のいずれか1項に記載の結合体、または請求項23に記載の組成物の使用。
【請求項25】
画像化法がMRIであることを特徴とする、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
治療方法における、請求項1〜22のいずれか1項に記載の結合体、または請求項23に記載の組成物の使用。
【請求項27】
治療方法における、請求項1〜22のいずれか1項に記載の結合体、または請求項23に記載の組成物の使用であって、患者体内の活性物質の蓄積が同時に追跡される結合体の使用。
【請求項28】
以下を特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載の結合体の製造:
a)ランタニド元素の錯体塩の水溶液が製造されること、
b)所望のレクチン、そのフラグメント、または誘導体がキレート形成分子と結合体化され、かつ未結合のキレート形成分子が除去されること、ならびに
c)結合体化されたレクチンがランタニド塩溶液と反応され、キレート形成分子を介して結合体にランタニドイオンを結合させること、
d)任意に、治療活性物質がレクチンまたは工程c)に記載の結合体に結合されること。
【請求項29】
ランタニド元素の錯体塩がニトリロ酢酸ガドリネート三ナトリウム塩(Gd(NTA)2Na3)であり、レクチンがLEAであり、かつキレート形成分子がEDTA、DTPA、DTPABA、およびDFOからなる群より選択されることを特徴とする、請求項28に記載の製造。
【請求項30】
内皮細胞の表面上のレセプターに特異的に結合する少なくとも1つの標的化ユニット、およびリンカーによって前記標的化ユニットにカップリングされ、かつ少なくとも1つの治療活性物質を含む少なくとも1つのエフェクターユニットを含む結合体であって、標的化ユニットがレクチンまたはそのフラグメントもしくは誘導体を含み、ここで、レクチンがピーナツレクチン、オレンジピールのレクチン抽出物、マクルラ・ポミフェーラ(Maclura pomifera)レクチン、ドリコス(Dolichos biflorus)凝集素、またはダイズ凝集素ではないことを特徴とする、結合体。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公表番号】特表2006−527182(P2006−527182A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508288(P2006−508288)
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006141
【国際公開番号】WO2004/108747
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(502180266)ファウスタス フォースシュングス シー. トランスレイショナル キャンサー リサーチ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】