説明

レジスト液回収方法

【課題】従来に比べて大幅にレジスト液の回収を効率化することができ、回収コストを低下してレジスト液のリサイクル率を高めることができる方法を提供する。
【解決手段】所定容量の専用容器であるペール缶10を用いてレジスト液供給施設からレジスト液使用施設へレジスト液を供給するとともに、このペール缶10を、前記レジスト液使用施設、例えばスピンコーター250で生じる使用済レジスト液252を回収するためのレジスト液回収容器としても使用する。これにより、ユーザー側での回収やリサイクルの設備負担が不要であり、既存のレジスト液供給システムをそのまま用いて回収ができるため、回収費用と労力を大幅に削減できる。ペール缶10としては、筒状に形成された合成樹脂製の内側容器と、この内側容器の外殻を構成する金属製の外側容器とを備えるペール缶を用いることで、製造コストを低下するとともに、内側容器と外側容器の分離解体を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済レジスト液の回収方法に関し、更に詳しくは、レジスト液を、レジスト塗布装置を備える使用施設に供給し、塗布後の使用済レジスト液を回収してリサイクルなどに利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶パネルなどの製造プロセスにおいては、基板上にレジスト液を塗布して露光現像するリソグラフィが行われる。近年の液晶パネル等の大型化に伴い、使用する基板も大型化が進んでいることからレジスト液の使用量も増大している。代表的な塗布方式にはスピンコート方式やダイコート(スリットコート)方式がある。
【0003】
基板へのレジスト液の塗布においては、実際の塗布量以上の過剰量のレジスト液が必要になることから、余剰の使用済レジスト液が常に発生する。特にスピンコートを用いる際には使用済レジスト液は無視できない量であるため、その有効利用として回収してリサイクル利用することが、経済的、環境的にも望まれる。
【0004】
このようなレジスト液の回収やリサイクルに関しては、下記の特許文献1、2のような回収装置が知られている。このシステムは、レジスト液塗布装置自体に回収、再生装置を付設し、粘度調整やフィルターろ過によりレジスト液のリサイクルを行うものである。
【0005】
また、この他に、複数のレジスト液塗布装置を備える施設内に、共通の大掛かりな回収ラインを設置して、複数の塗布装置からの使用済レジスト液をタンク等に一括回収し、これをレジストメーカーに返送して、レジストメーカー側でリサイクルすることも行われている。
【0006】
一方、半導体メーカーや液晶パネルメーカーなどのユーザーへのレジスト液の供給は、レジストメーカーから通常行われる。この場合、例えば、特許文献3に記載されているような所定容量の小型の専用容器が用いられている。この専用容器は、小型の剛性容器と、その内部に着脱可能なフレキシブル材料からなる内袋の二重構造になっている。このような専用容器は、そのままユーザーのラインに直結させることができ、且つ、取り扱いが手軽で、また、レジスト液への異物混入の危険性が少ないために主流となっている。この専用容器は、内袋にレジスト液が充填された状態でユーザーに納入され、ユーザーで塗布装置などのラインに直結して使用され、使用済み(内袋が空袋)になった後に、そのまま回収されてレジストメーカーなどに返却され、清掃等を施した後、再度レジスト液の充填を行う、いわゆる通い容器として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−34121号公報
【特許文献2】特開平11−245226号公報
【特許文献3】特開平6−100087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や2のようなレジスト液回収システムは、基本的にユーザー側でのリサイクルを念頭に置いたものである。この場合、リサイクルしたレジスト液の品質管理はユーザー側で行う必要があり、レジスト液に熟知していないユーザー側が上記の品質管理を安定的に行うことは困難である。
【0009】
また、複数の塗布装置からの使用済レジスト液をタンク等に一括回収し、これをレジスト液メーカーに返送する方法は、ユーザー側に回収設備を設置する必要があり、設備的な負担や管理的な負担が新たに発生する。
【0010】
また、特許文献3の専用容器は、あくまでレジスト液の供給専用容器であり、汲み出し終了後に使用済レジスト液を再充填することなどは全く想定されておらず、このままでは回収容器として使用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、従来、レジスト液の供給専用容器として用いられていたペール缶を、レジスト液の回収容器としても利用し、供給兼回収容器として使用することで、上記の問題点を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、所定容量の専用容器を用いてレジスト液供給施設からレジスト液使用施設へレジスト液を供給するとともに、この専用容器を、前記レジスト液使用施設における使用済レジスト液を回収するためのレジスト液回収容器としても使用するレジスト液回収方法であって、前記専用容器として、筒状に形成された合成樹脂製の内側容器と、この内側容器の外殻を構成する金属製の外側容器と、を備えるペール缶を用いるレジスト液回収方法である。
【0013】
本発明の特徴は、従来、レジスト液の供給専用容器として用いられていたペール缶を供給兼回収容器として使用するものである。この点、本発明は新たなレジスト液回収方法を提供するものであるとともに、従来の供給専用容器に新たな回収という用途を見出したものとも言える。
【0014】
本発明によれば、ペール缶を用いた既存のレジスト液供給システムをそのまま用いることができる。従って、ユーザー側では特段の回収設備やリサイクル設備を設ける必要がない。このためユーザー側における設備面の自由度が高い。具体的には、既存のレジスト液塗布装置のライン配置に起因してスペース的にレジスト液回収設備を設置できない場合などに本発明を効果的に用いることができる。
【0015】
また、既存のレジスト液供給システムをそのまま用いて回収ができるため、複数の塗布装置からの使用済レジスト液をタンク等に一括回収し、これをレジスト液メーカーに返送する従来の方法に比べて、回収費用と労力を大幅に削減できる。
【0016】
なお、本発明における、専用容器を「レジスト液回収容器としても使用する」の意味は、専用容器が、供給と回収とを兼用できる容器であれば足りることを意味する。このため、時間的に供給作業と回収作業が近いことは要求されない。すなわち、供給に使用された専用容器が、その後に回収容器として使用されれば本発明の範囲内である。また、レジスト液塗布装置単位で見て、供給容器の種類や容量が、回収容器と異なる容器を用いている場合であっても、その供給容器が、結果としてその後にレジスト液使用施設のどこかで回収容器として使用されればやはり本発明の範囲内である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、専用容器をペール缶とすることで、より低コストで効率よくレジスト液を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一例を示す工程図である。
【図2】本発明におけるペール缶の一実施形態を示す斜視外観図である。
【図3】ペール缶に接続するディスペンサの一実施形態を示す正面図であり、要部を断面で示している。
【図4】ペール缶にディスペンサが接続された状態図であり、ディスペンサは分解組立図となっている。
【図5】ペール缶の斜視外観図であり、天板取り外し式バンドタイプのレジスト液用ペール缶を示している。
【図6】ペール缶の斜視外観図であり、天板取り外し式ラグタイプのレジスト液用ペール缶を示している。
【図7】ペール缶の斜視外観図であり、天板の周縁、及び地板の周縁に損傷保護体を設け、胴体がテーパに形成されるT型のレジスト液用ペール缶を示している。
【図8】ペール缶の斜視外観図であり、天板の周縁、及び地板の周縁に損傷保護体を設け、胴体がストレートに形成されるS型のレジスト液用ペール缶を示している。
【図9】レジスト液回収システムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
<ペール缶>
まず、本発明において供給兼回収容器となるペール缶(専用容器)10について説明する。図2において、ペール缶10は、合成樹脂製の内側容器1と金属製の外側容器2を備えている。内側容器1は、筒状に形成されている。外側容器2は、内側容器1の外殻を構成している。内側容器1は、レジスト液を注入可能に開口する口部11を有している。
【0021】
図2において、外側容器2は、天板21と胴体22と地板23を有している。天板21は、口部11が突出する穴2aを有している。胴体22は、内側容器1の外周を囲っている。地板23は、内側容器1の底面に当接している。
【0022】
図2に示された内側容器1は、上面の面積が底面の面積より大きい直円すい台状に形成されている。内側容器1は合成樹脂、好ましくはポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンで成形されている。
【0023】
図2において、外側容器2は、内側容器1を覆うべく金属板が製缶されており、内側容器1の外殻を構成している。外側容器2は、内側容器1の外周全てに亘り、必ずしも当接していない。図5又は図6において、内側容器1(図示せず)の外周を囲う胴体22には、輪帯22aが設けられており、外側容器2自体の力学的強度を増加させている。輪帯22aは、内側容器1と部分的に離反している。
【0024】
図2において、天板21には、同心円状に複数の輪帯21aが設けられおり、外側容器2自体の力学的強度を増加させている。輪帯21aは、内側容器1と部分的に当接している。又、穴2aの周囲に円環状の段差21bが設けられ、穴2aに引張り応力が集中して亀裂が生じないように補強されている(図3参照)。
【0025】
図2において、口部11の外周には雄ねじ11aが形成されている(図3参照)。口部11の開口をキャップ31で封止し、更に口部11を蓋32で螺合することにより、ペール缶10が密閉される。そして、レジスト液をこぼすことなく運搬できる。
【0026】
図2に示された外側容器2は、平板状の鋼板を円筒状に形成して胴体22を製作し、天板21及び地板23を巻締めにより胴体に固着する、いわゆる天板固着式のペール缶となっている。又、図2に示された外側容器2は、天板21に吊手24を備えている。そして、吊手24を回動自在に支持する取付金具24aは、天板21にスポット溶接で接合されている。吊手24は、天板21の略中心に配置されている。
【0027】
図5に示された外側容器2は、平板状の鋼板を円筒状に形成して胴体22を製作し、天板21がバンド2bにより胴体22に締め付けられている、いわゆる天板取り外し式バンドタイプのペール缶となっている。又、図5に示された外側容器2は、胴体22の天板21側に設けられた一対のイヤー25a・25bと、一対のイヤー25a・25bと回動可能に連結するつる状の取っ手25と、を備えている。そして、一対のイヤー25a・25bとなる取付金具は、胴体22の天板21側にスポット溶接で接合されている。
【0028】
図6に示された外側容器2は、天板21の周縁に複数の爪2cを有している。そして、平板状の鋼板を円筒状に形成して胴体22を製作し、天板21が複数の爪2cにより胴体22に締め付けられている、いわゆる天板取り外し式ラグタイプのペール缶となっている。又、図6に示された外側容器2は、胴体22の天板21側に設けられた一対のイヤー25a・25bと、一対のイヤー25a・25bと回動可能に連結するつる状の取っ手25と、を備えている。そして、一対のイヤー25a・25bとなる取付金具は、胴体22の天板21側にスポット溶接で接合されている。
【0029】
図2又は図7に示されるように、胴体22は、天板21側の面積が地板23側の面積より大きい直円すい台状に形成されてもよく、図8に示されるように、胴体22は、直円柱状に形成されてもよい(図5及び図6参照)。
【0030】
又、図7及び図8に示されるように、天板21の周縁と地板23の周縁と両方に、損傷保護体26を設けることにより、移送中のペール缶10の損傷を防止できる。例えば、損傷保護体26は、長手方向に溝を形成する屈曲自在な合成樹脂帯であり、前記溝を天板21の周縁と地板23の周縁に嵌合させて取り付ける。図7に示された円錐体のペール缶10であれば、天板21側のみに損傷保護体26を設けてもよい。円錐体のペール缶10を縦横に並設配置したときに、天板21の周囲の損傷を防止できる。
【0031】
本発明におけるペール缶10は、内側容器1が窒素などの圧縮流体で加圧されて、レジスト液が排出される。外側容器2は、内側容器1に加わる内圧に対して、内側容器1の変形を防止するように剛性を有している。剛性を有しているとは、外側容器2が剛性を有する金属板で形成されていることを含んでよく、内側容器1が膨張などで変形しないように、外側容器2が力学的構造を備えていることを含むことができる。例えば、図2に示されたペール缶10は、定格容量が20リットルのペール缶であり、耐力が0.5kgf/cmとなっている。
【0032】
本発明におけるペール缶は、外側容器が薄肉の鋼板で成形加工されたペール缶となっており、厚肉の鋼板が成形加工されたキャニスター缶と比較して軽量である。また、製造が容易であり、廉価に製造できるというメリットがある。また、本発明におけるペール缶は、液出しチューブ付きカップリングを内蔵して運搬される構成となっておらず、ディスペンサ側に液出しチューブを備える構成となっているので、容器の製造原価を引き下げることも可能である。また、液出しチューブの洗浄の手間や、外側容器へのバッグの詰め替えの手間が省け、複式格納型のレジスト液用容器と比較して、総合的には経済的であるというメリットがある。
【0033】
更に、金属缶の内壁が合成樹脂フィルムでコーティングされておらず、合成樹脂から成る内側容器を金属製の外側容器が外殻を構成している。このような二重構造のペール缶は、金属と合成樹脂とが容易に分離及び解体でき、資源の再利用に役立つことができる。
【0034】
<レジスト液充填工程S10>
以下、上記のペール缶10を用いた本発明の一例について、図1に示す工程図に沿って説明する。まず、レジストメーカーなどが有するレジスト液供給施設100内で製造されるレジスト液は、レジスト液充填工程S10によってペール缶10にレジスト液が充填される。なお、レジスト液供給施設100は、専用容器への充填が可能であればよく、必ずしもレジスト液製造設備を必要としない。すなわち、レジスト液供給施設100は、レジスト液をユーザーに供給するための中継基地をも含む概念である。
【0035】
まず、図2の状態において、内側容器1は、好ましくはあらかじめ口部11から窒素又は圧縮空気を導入することによって膨張される。次に、口部11には、レジスト液を充填するための充填用チューブ(図示せず)が挿入され、この充填用チューブを介してレジスト液が所定量充填される。これにより、コンタミネーションなく密封系でレジスト液の充填が可能となる。この際、後述するディスペンサ40を用いてもよい。
【0036】
その後、口部11の開口をキャップ31で封止し、更に口部11を蓋32で螺合することにより、ペール缶10が密閉される。そして、レジスト液をこぼすことなく運搬できる。
【0037】
<レジスト液供給工程S20>
次に、ペール缶10は、レジスト液供給施設100から、ユーザー側のレジスト液使用施設200へ搬送される。このレジスト液使用施設200には、スピンコーターやスリットコーターなどの、一又は複数のレジスト液塗布装置があり、それぞれのレジスト液塗布装置に対して、ペール缶10がディスペンサを介して実質的な密閉系で供給配管に接続され、レジスト液の供給作業が行われる。供給継手は密閉系を維持できれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0038】
具体的には、図3又は図4に示すように、外周に雄ねじ11aを設ける口部11を利用して、ディスペンサ40を着脱容易に取り付けることができる。ディスペンサ40は、円筒状のプラグ本体41と、内側容器の内部に圧縮流体を通気可能な通気手段42と、液出しパイプ43と、を備えている。
【0039】
図3又は図4において、プラグ本体41は、中央部が開口されたシールリング41aを遊動自在に内装しており、プラグ本体41を口部11に締結することにより口部11を密封できる。通気手段42は、エルボ形(L字形)の継手42aと、プラグ本体41の外部から口部に向かって貫通する開口42bと、を含んでいる。継手42aを開口42bに接続して、内側容器1の内部に圧縮流体を通気できる。液出しパイプ43は、一端が内側容器1の底面に到達し、他端がプラグ本体41から突出し、プラグ本体41に密封可能に装着される。そして、通気手段42から内側容器1の内部に窒素などの圧縮流体を加圧することにより、液出しパイプ43からレジスト液を分配できる。これにより、コンタミネーションなく密封系でレジスト液の充填が可能となる。なお、図示しない他の通気手段として、内側容器1と外側容器2との間に圧縮流体を送ることによりレジスト液の分配を容易にしてもよい。
【0040】
このようにして、レジスト液の使用時、すなわちレジスト液を汲み出す際には、口部11から液出しパイプ43を通じて汲み出すことができる。これにより、内側容器1内のレジスト液は汲み出されてほぼ空の状態の使用済容器となる。
【0041】
<レジスト液回収工程S30>
本発明の特徴は、上記のレジスト液を汲み出した後のペール缶10(使用済容器)をそのままレジストメーカーに返送せず、再度、レジスト液回収工程にて使用することにある。すなわち、使用済容器を、後にレジスト液回収工程S30にて回収容器として用いる。後の間隔は、使用済容器の数やレジスト塗布装置の運転状況により適宜設定される。すなわち、図1においては便宜的にレジスト液供給工程S20に続きレジスト液回収工程S30を説明したが、実際のレジスト液塗布装置においては、S20とS30は同時並行的に進んでおり、過去のレジスト液供給工程S20で発生した使用済容器が、現在のレジスト液回収工程S30で使用される。以下回収作業について説明する。
【0042】
図9に示すレジスト液回収システムの一例は、レジスト塗布装置の一例であるスピンコーター250と、スピンコーター250の回転部の周囲に設けられた回収用パン251で発生する使用済レジスト液252を回収するための回収配管253と、回収配管253中に設けられた回収ポンプ254と、回収配管253の先端に接続された、上記の使用済容器であるペール缶10と、回収配管253の途中から分岐する切替バルブ259と、この切替バルブ259から回収配管253と分岐して伸びる配管255と、この配管255の先端に接続される洗浄液回収タンク256とから構成されている。
【0043】
まず、使用済容器であるペール缶10の口部11に、例えば上記のディスペンサ40を介してレジスト液を回収するための回収用チューブ(図示せず)が装着される。この回収用チューブを介して回収配管253が密閉系で接続される。
【0044】
スピンコーター250を運転すると、基板257上の塗布部258よりレジスト液が塗布される。このレジスト液は遠心力により周囲に拡散し、回収用パン251には余剰の使用済レジスト液252が貯留される。ここで、回収ポンプ254を動作させることにより、回収配管253を介してペール缶10に使用済レジスト液252が回収される。すなわち、ペール缶10の内側容器1内には使用済レジスト液252が再充填されることになる。
【0045】
なお、上記のように、回収作業開始時の内側容器1内は、レジスト液供給工程S20で汲み出し工程を経たことによってシュリンクする場合があり、再充填のみでの袋の容量復元が不十分である場合がある。このため、このときの充填可能容量(回収可能容量)は、内側容器1をあらかじめ窒素や空気で膨らませたレジスト液供給工程S20に比べると少なくなる。しかしながら、レジスト液は実際に塗布された分、回収できる使用済レジスト液の量は少なくなっているので、塗布装置に供給したレジスト量に見合う分の使用済レジスト液を同じ容量の専用容器で十分回収できる。
【0046】
なお、切替バルブ259と洗浄液回収タンク256は、シンナーなどで回収配管253を洗浄するためのものであり、所定の洗浄作業が行われる間は洗浄液回収タンク256側に回収液を送る。これにより、ペール缶10へのレジスト液以外のコンタミネーションを効果的に防止できる。
【0047】
所定量の回収を終えた後、ペール缶10から回収用チューブとディスペンサ40を外し、口部11の開口をキャップ31で封止し、更に口部11を蓋32で螺合することにより、容器10が密閉される。これをレジストメーカーなどのレジスト液供給施設100に返送する。これにより、ペール缶10は、供給兼回収容器として機能し回収効率の向上に寄与する。なお、上記のレジスト液回収工程S30は、レジスト液供給工程S20と同様にレジスト液塗布装置単位で行われることが好ましい。
【0048】
<組成確認工程S40>
再充填されたペール缶10は、レジスト液供給施設100に返送され、受け入れ段階で組成確認工程S40が行われる。この工程は、複数の異なるレジスト液使用施設200から送られてくる種々のレジストのコンタミネーションを避けるために、専用容器毎にレジストの組成、種類などを確認する工程である。確認方法は特に限定されないが、一例としては、赤外又は近赤外分光法を用いて濃度や種類を測定する方法が挙げられる。
【0049】
<リサイクル工程S50>
その後、レジスト液供給工程S20と同様の方法により、使用済レジスト液が汲み出され、リサイクル工程S50においてレジスト液はリサイクルされる。リサイクルの方法は従来公知のものが用いることができ特に限定されない。なお、汲み出し終了後のペール缶10からは、内側容器1が取り外されて破棄される。外側容器2はこの段階で廃棄してもよく、新しい内側容器1を装着して再使用してもよい。
【0050】
以上説明したように、本発明によれば、ペール缶を用いて軽量かつ廉価にレジスト液の回収を行なうことができ、回収コストを低下してレジスト液のリサイクル率を高めることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 内側容器
2 外側容器
2a 穴
10 ペール缶(専用容器)
11 口部
21 天板
22 胴体
23 地板
100 レジスト液供給施設
200 レジスト液使用施設
250 スピンコーター
S10 レジスト液充填工程
S20 レジスト液供給工程
S30 レジスト液回収工程
S40 組成確認工程
S50 リサイクル工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定容量の専用容器を用いてレジスト液供給施設からレジスト液使用施設へレジスト液を供給するとともに、
この専用容器を、前記レジスト液使用施設における使用済レジスト液を回収するためのレジスト液回収容器としても使用するレジスト液回収方法であって、
前記専用容器として、筒状に形成された合成樹脂製の内側容器と、この内側容器の外殻を構成する金属製の外側容器と、を備えるペール缶を用いるレジスト液回収方法。
【請求項2】
前記内側容器は、レジスト液を注入可能に開口する口部を有し、
前記外側容器は、前記口部が突出する穴を有する天板と、前記内側容器の外周を囲う胴体と、前記内側容器の底面に当接する地板と、を有し、
前記外側容器は、前記内側容器に加わる内圧に対して、当該内側容器の変形を防止するように剛性を有している請求項1記載のレジスト液回収方法。
【請求項3】
前記天板及び前記地板は、巻締めにより前記胴体に固着されている請求項1又は2に記載のレジスト液回収方法。
【請求項4】
前記天板は、バンドにより前記胴体に締め付けられている請求項1又は2に記載のレジスト液回収方法。
【請求項5】
前記回収後に前記使用済レジスト液をリサイクルする請求項1から4のいずれかに記載のレジスト液回収方法。
【請求項6】
前記レジスト液使用施設はレジスト液塗布装置を備える施設であり、前記レジスト液塗布装置への前記レジスト液の供給作業、及び前記レジスト液塗布装置からの前記使用済レジスト液の回収作業を実質的な密封系で行う請求項1から5のいずれかに記載のレジスト液回収方法。
【請求項7】
前記供給作業及び回収作業を、前記レジスト液塗布装置単位で行う請求項6に記載のレジスト液回収方法。
【請求項8】
前記供給作業においては、前記レジスト液が充填された内側容器から前記レジスト液塗布装置へ前記レジスト液を供給し、
前記回収作業においては、実質的に空である前記供給作業後の内側容器へ、前記使用済レジスト液を再充填する請求項6又は7に記載のレジスト液回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−256746(P2010−256746A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108790(P2009−108790)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】