説明

レジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法

【課題】異物の混入が少なく、微細なパターンを形成することができるレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法は、フィルター(11)を備える流路(1)と、流路(1)の後部側に設けられたノズル(3)と、を有する充填装置(A)を用い、レジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物を容器(4)に充填するレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法であって、レジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物を流路(1)に通液してフィルター(11)でろ過する工程と、フィルター(11)の前後の差圧が0.3MPa以下で、ろ過後のレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物を、ノズル(3)から容器(4)に充填する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細加工等に使用されるレジスト組成物又は液浸露光における上層膜形成に使用される液浸用上層膜形成用組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野では、より高い集積度を得るために、より微細な加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。例えば、0.10μm以下のレベルでの微細加工を可能とするために、より波長の短い放射線の利用及び液浸露光が検討されている。この用途に適した樹脂組成物が数多く提案され、使用されている。例えば、レジスト形成用の感放射線性樹脂組成物を含むレジスト組成物及び多層レジストにおける上層膜を形成するための樹脂組成物を含む液浸用上層膜形成用組成物が使用されている。これらの組成物は通常、容器に充填されて製品化される。
【0003】
これらの組成物を使用する場合、形成されるレジストパターン表面にディフェクト(現像後のレジストパターンを上部から観察した際に検知される不具合全般のこと。)が生じることがある。ディフェクトの原因の1つとして、レジスト組成物等を含む溶液中に存在する微粒子等の固形状の異物が挙げられている。よって、ディフェクトの抑制のため、レジスト組成物及び液浸用上層膜形成用組成物において、異物の含有量を極力低減することが求められている。
【0004】
異物の含有量を低減する方法として、従来、レジスト組成物及び液浸用上層膜形成用組成物を容器に充填して製品化する際、孔径の小さなフィルターでこれらの組成物をろ過することが行われている。また、特許文献1には、フィルターが設置された閉鎖系内でレジスト組成物を循環させることにより、レジスト組成物中の微粒子の量を低減する方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−62667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のろ過工程では、容器に充填したレジスト組成物及び液浸用上層膜形成用組成物に含まれる異物量を十分に低減できているとは言えない。そこで、パターンの微細化を実現するために、更に異物量が低減されたレジスト組成物及び液浸用上層膜形成用組成物を製造できる方法が求められている。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、異物の混入が少なく、微細なパターンを形成することができるレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物(以下、「レジスト組成物等」と総称する。)の製造方法は、フィルターを備える流路と、該流路の後部側に設けられたノズルと、を有する充填装置を用い、レジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物を2以上の容器に充填するレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法であって、上記レジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物を上記流路に通液して上記フィルターでろ過する工程と、上記フィルターの前後の差圧が0.3MPa以下で、ろ過後の上記レジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物を、上記ノズルから上記容器に充填する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、異物の混入が少なく、ディフェクトの発生を抑制して微細なパターンを形成することができるレジスト組成物等を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、フィルターを備える流路と、該流路の後部側に設けられたノズルと、を有する充填装置を用い、レジスト組成物等を容器に充填する。尚、上記流路の「後部側」とは、上記流路のうち、上記フィルターと上記ノズルの間の部分を意味する。即ち、上記流路の「後部側」は、上記流路のうち、上記フィルターによりろ過された上記レジスト組成物等が通液する箇所である。
【0011】
上記充填装置の一態様を図1及び図2に示す。図1及び図2に示す充填装置(A)及び(A’)は、フィルター(11)を備える流路(1)と、流路(1)の一方の端部に連設されたタンク(2)と、流路(1)の後部側に設けられたノズル(3)と、を有する。図1に示す充填装置(A)は、流路(1)の後部側が途中で分岐して、ノズル(3)及びタンク(2)にそれぞれ連設している。
【0012】
上記フィルターは、上記レジスト組成物等をろ過することができる限り、その個数及び性質には特に限定はない。上記フィルターの個数は通常は1個であるが、2個以上でもよい。上記フィルターの材質として好ましくは、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ナイロン(NYLON)、及びPEとNYLONの複合膜である。上記の材質のフィルターであれば、上記レジスト組成物が上記フィルターに接触しても、フィルター成分の溶出を抑制することができるので好ましい。上記フィルターの孔径は、通常0.005μm〜1μm、好ましくは0.005μm〜0.1μmである。上記フィルターの孔径が上記範囲であると、要求される異物捕集能力を発揮すると共に、圧力損失が少なく、レジスト組成物等の生産性を高めることができるので好ましい。尚、上記フィルターの「孔径」とは、標準粒子(PSL)の除去率によって決定された平均孔径をいう。但し、30nm未満の孔径については、バブルポイント等により推定した値である。
【0013】
上記ノズルの本数には特に限定はない。通常、上記ノズルは2本以上、好ましくは2本〜30本、好ましくは2本〜10本である。上記ノズルの本数が上記範囲内であると、ノズル動作の段階的な制御が容易である。その結果、容易に上記フィルターの前後の差圧を本発明の範囲内に調整することができるので好ましい。また、上記ノズルは1本でもよい。例えば、図1に示す装置の場合、上記ノズルは1本とすることができる。後述のように、図1に示す装置では、上記レジスト組成物等が閉鎖系内で循環される。このような装置では、例えば、ノズル(3)から上記レジスト組成物等を容器(4)に充填した後、次の容器へ充填するまでの間、流路(1’)へ上記レジスト組成物等を通液させることができる。かかる構成を有することにより、ノズル(3)から容器(4)に上記レジスト組成物等を充填した後、次の容器(4)へ充填するまでの間、ノズル(3)を閉鎖しても、上記レジスト組成物等の流量の変動を抑えることができる。その結果、フィルター(11)の前後の差圧を本発明の範囲内とすることができる。
【0014】
本発明は、上記レジスト組成物等を上記流路に通液して上記フィルターでろ過する工程を備える。図1及び図2に示す充填装置(A)及び(A’)では、タンク(2)に充填されていた上記レジスト組成物等が、流路(1)に通液されてフィルター(11)でろ過される。上記レジスト組成物等を上記流路に通液する方法に特に限定はない。通常、上記レジスト組成物等は、上記流路に連設されたポンプを駆動することにより上記流路に通液される。このポンプの種類には特に限定はない。該ポンプとして具体的には、例えば、無脈動式ダイヤフラムポンプ、ロータリーポンプ、及びマイクロギアーポンプが挙げられる。
【0015】
上記レジスト組成物等の流速及び流量には特に限定はない。上記レジスト組成物等の流速及び流量は、必要に応じて適宜設定することができる。
【0016】
本発明では通常、図1及び図2に示すように、流路(1)に連接されたタンク(2)に上記レジスト組成物等を貯蔵し、次いで、貯蔵されている上記レジスト組成物等を流路(1)に通液する。しかし、本発明では、上記レジスト組成物等を上記流路に通液することができればよく、必ずしもタンク(2)に上記レジスト組成物等を貯蔵することは必須ではない。例えば、上記流路を上記レジスト組成物等の調製(重合反応等)に用いる反応器に連接することができる。この構成によれば、該反応器内で調製された上記レジスト組成物等を直接上記流路に通液することができ。
【0017】
本発明は、上記フィルターの前後の差圧が0.3MPa以下の条件で、ろ過後の上記レジスト組成物等を、上記ノズルから上記容器に充填する工程を備える。図1及び図2に示す充填装置(A)及び(A’)では、フィルター(11)でろ過された上記レジスト組成物等が、流路(1)を経てノズル(3)から容器(4)に充填される。
【0018】
本発明では、上記差圧は0.3MPa以下、好ましくは0.25MPa以下、より好ましくは0.2MPa以下、特に好ましくは0.1MPa以下である。上記差圧が0.3MPaを越えると、差圧の変動により、異物がフィルターを通過するおそれがあり、また、上記フィルターに過度の圧力が掛かり、上記フィルターが破損するおそれがあるので好ましくない。一方、上記差圧が上記範囲内であれば、異物がフィルターを通過することを抑制し、異物が少ないレジスト組成物等を製造することができる。
【0019】
フィルターでろ過する従来の方法では、容器への充填時にフィルターを通過する液量が変化するために、フィルターの入口の圧力と出口の圧力との差(差圧)が変動する。そして、この差圧の変動により異物がフィルターを通過するため、最先端分野で要求されるレベル以下にまでディフェクトの発生を抑制するのは困難であった。本発明では、上記構成により、フィルター入口と出口との差圧の変動を抑え、この差圧に起因して異物がフィルターを通過することを抑制することができる。その結果、本発明では、異物が少なく、ディフェクトの発生を抑制することができるレジスト組成物等を製造することができる。
【0020】
本発明において、上記フィルターの前後の「差圧」は、以下のように定義される。上記流路の上記フィルターから前部側及び後部側へ2m以内の箇所に圧力計を設置し、上記フィルターの前部側の圧力(P1)及び上記フィルターの後部側の圧力(P2)を測定する。そして、上記P1の最大値(P1max)と、上記P2の最小値(P2min)との差(P1max−P2min)を、上記「差圧」とする。上記フィルターが2以上ある場合、本発明では、ノズル(3)に最も近い上記フィルターにおいて、上記「差圧」が上記要件を満たしていればよい。尚、上記フィルターの「前部側」は、上記流路のうち、ろ過前のレジスト組成物等が通液する部分を意味し、上記フィルターの「後部側」は、上記流路のうち、ろ過後のレジスト組成物等が通液する部分を意味する。
【0021】
本発明では、充填開始から全ての容器への充填終了までの間、上記差圧が上記範囲内であることが好ましい。即ち、「P1max」及び「P2min」は通常、充填開始から全ての容器への充填終了までの間のP1の最大値及びP2の最小値である。しかし、本発明の作用効果を阻害しない限り、充填開始から全ての容器への充填終了までの間、上記差圧が上記範囲内でなくてもよい。例えば、本発明の上記「P1max」及び「P2min」は、充填開始10秒後から全ての容器への充填終了前10秒までの間のP1の最大値及びP2の最小値とすることができる。
【0022】
本発明において、上記差圧の調節方法には特に限定はない。上記のように、上記差圧は上記容器への充填時に上記フィルターを通過する液量が変化することに起因すると考えられる。そして、一の上記ノズルによる充填が完了し、次の容器への充填をするまでの間、上記ノズルを閉鎖すると、上記フィルターを通過する液量が変化するのが通常である。よって、上記差圧の調節方法として、例えば、全ての上記容器にろ過後の上記レジスト組成物等を充填する間、上記ノズルの少なくとも1つで充填を行う方法が挙げられる。図1に基づいて説明すると、ノズル(3A)での充填が完了する前にノズル(3B)での充填を開始し、ノズル(3B)での充填が完了する前にノズル(3C)での充填を開始し、ノズル(3C)での充填が完了する前にノズル(3D)での充填を開始する。そうすると、4本の容器(4)にろ過後の上記レジスト組成物等を充填する間、上記ノズルの少なくとも1つで充填が行われていることから、上記フィルターを通過する液量の変化を抑制することができる。この方法によれば、必ずしも複雑な設備及び操作を必要とせず、異物がフィルターを通過することを容易に抑制し、異物が少なく、ディフェクトの発生を抑制することができるレジスト組成物等を製造することができる。
【0023】
上記差圧の他の調節方法としては、例えば、一の上記ノズルによる充填が完了する前に、他の上記ノズルによる充填を開始する方法が挙げられる。図1に基づいて説明すると、ノズル(3A)での充填が完了する前にノズル(3B)での充填を開始する。そうすると、ノズル(3A)での充填が完了してノズル(3A)を閉鎖しても、ノズル(3B)での充填が行われていることから、上記フィルターを通過する液量の変化を抑制することができる。この方法によれば、必ずしも複雑な設備及び操作を必要とせず、異物がフィルターを通過することを容易に抑制することができる。
【0024】
本発明では、上記ノズルの少なくとも1つが充填を行っている間、充填が終了した上記ノズルを再度充填に用いることができる。図1に基づいて説明すると、例えば、ノズル(3A)での充填が完了する前にノズル(3B)での充填を開始し、次いで、ノズル(3B)での充填が完了する前に、再度ノズル(3A)での充填を行うことができる。よって、上記ノズルの本数が充填すべき上記容器の本数よりも少ない場合でも、段階的に且つ連続して2以上の上記容器に充填することができるので好ましい。
【0025】
本発明では、上記ノズルから段階的に且つ連続して上記レジスト組成物等を上記容器に充填することができる。ここで、「段階的に且つ連続して」とは、一のノズルで充填を開始し、その充填が完了する前に次のノズルでの充填を行うという過程を、全ての容器への充填が完了するまで繰り返すことを意味する。「段階的に且つ連続して」として具体的には、例えば、図1に基づいて説明すると、ノズル(3A)での充填が完了する前にノズル(3B)での充填を開始し、ノズル(3B)での充填が完了する前にノズル(3C)での充填を開始し、ノズル(3C)での充填が完了する前にノズル(3D)での充填を開始することが挙げられる。ここで、ノズル(3D)での充填が完了する前に、ノズル(3A)での充填が終了している場合、ノズル(3D)での充填が完了する前に、ノズル(3A)で再度充填を行えば、ノズルの本数以上の容器へ「段階的に且つ連続して」充填することができる。一方、図1に示す装置を用いて充填を行い、その充填が終わってから次の容器への充填を開始するまでの間、ノズル(3)を閉鎖すると共に、流路(1’)からタンク(2)への充填が行うという方法は、「段階的に且つ連続して」には含まれない。
【0026】
上記容器の容量には特に限定はない。上記容器の容量は通常0.01〜300L、好ましくは0.5〜40Lである。上記容量が上記範囲であると、要求される充填精度を容易に確保することができるので好ましい。
【0027】
上記充填の条件には特に限定はない。上記充填の条件は、必要に応じて適宜変更することができる。容器一本あたりの充填速度は通常3〜1800秒、好ましくは10〜600秒である。上記充填速度が上記範囲内であると、要求される充填精度を容易に確保することができ、また、充填中に容器内に空気中の異物が混入することを抑制することができるので好ましい。
【0028】
本発明は、一般的な充填方法全てに適用することができる。例えば、本発明では、上記フィルターで1回ろ過した上記レジスト組成物等を上記容器に充填することができる(図1参照)。また、本発明では、上記フィルターでろ過した上記レジスト組成物等を、再度上記フィルターでろ過してから上記容器に充填してもよい。例えば、図1に示す充填装置(A)では、フィルター(11)でろ過した上記レジスト組成物等の一部をタンク(2)に戻すことにより、上記レジスト組成物等を閉鎖系内で循環させつつ、容器(4)に充填することができる。かかる構成とすることにより、上記レジスト組成物等に含まれる異物を更に除去することができるので好ましい。また、タンク(2)へ通液することにより、上記レジスト組成物等の流量の変動を抑えることができ、その結果、上記差圧を本発明の範囲内とすることができるので好ましい。
【0029】
本発明により製造される上記レジスト組成物及び上記液浸用上層膜形成用組成物の種類及び組成には特に限定はない。上記レジスト組成物では通常、有機溶剤中に感光性成分が溶解して含まれている。また、上記レジスト組成物は、上記感光性成分以外に必要な他の成分を含んでいてもよい。該感光性成分は、感光性のバインダー樹脂(例えば、ノボラック樹脂及びアルキル置換ポリスルホン)でもよく、その他の感光性化合物でもよい。上記感光性成分がその他の感光性化合物であれば、バインダー樹脂は非感光性のバインダー樹脂でもよい。また、上記レジスト組成物は、ポジ型及びネガ型のいずれでもよい。
【0030】
上記レジスト組成物として具体的には、例えば、[1]感光性のバインダー樹脂であるノボラック樹脂又はアルキル置換ポリスルホンを含む電子線用フォトレジスト組成物、[2]ノボラック樹脂及びo−キノンジアジド化合物を含むg線又はi線用ポジ型フォトレジスト組成物、[3]ノボラック樹脂及びアジド化合物を含むg線又はi線用ネガ型フォトレジスト組成物、[4]酸解離性保護基を有するヒドロキシスチレン(p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、及びp−ヒドロキシ−α−メチルスチレン等)単位を含む樹脂又は酸解離性保護基を有するエチレン性二重結合を有するカルボン酸((メタ)アクリル酸等)単位を含む樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤とを含むエキシマレーザー用ポジ型フォトレジスト組成物、並びに[5]ノボラック系、ポリビニルフェノール系、又は(メタ)アクリル系のアルカリ可溶性樹脂と、酸発生剤と、架橋剤とを含有するネガ型フォトレジスト組成物が挙げられる。
【0031】
上記液浸用上層膜形成用組成物は、通常、液浸露光において、レジスト膜を液浸用液体から保護するための樹脂成分を溶剤中に含む。該樹脂成分としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する単量体を重合して得られる樹脂が挙げられる。該樹脂成分としてより具体的には、例えば、半導体基板等の基板に対する密着性を高めるための極性基を有する繰り返し単位(1)を含む樹脂が挙げられる。該樹脂は、必要に応じて、溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調節するための非極性の置換基を有する繰り返し単位(2)を含んでいてもよい。
【0032】
上記極性基としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル基等)、及びヒドロキシフルオロアルキル基が挙げられる。上記極性基としては、ラクトン構造を含む置換基が好ましい。該ラクトン構造を含む置換基としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、1,3−シクロヘキサンカルボラクトン、2,6−ノルボルナンカルボラクトン、4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、及びメバロン酸δ−ラクトンが挙げられる。
【0033】
上記繰り返し単位(1)を与える単量体としては、例えば、極性基としてフェノール性水酸基、カルボキシル基やヒドロキシフルオロアルキル基を有する化合物が挙げられる。上記単量体として具体的には、例えば、ヒドロキシスチレン類(p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、及びp−ヒドロキシ−α−メチルスチレン等)、エチレン性二重結合を有するカルボン酸類、及びヒドロキシフルオロアルキル基を有する重合性化合物、並びにこれらに更に極性基が置換した単量体が挙げられる。また、上記単量体としてその他に、例えば、ノルボルネン環及びテトラシクロドデセン環等の脂環構造に極性基が結合した単量体が挙げられる。
【0034】
上記繰り返し単位(2)を与える単量体としては、例えば、[1]エチレン性二重結合を有する芳香族化合物(スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデン等の)、[2]エチレン性二重結合を有するカルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメチルアクリル酸、ノルボルネンカルボン酸、2−トリフルオロメチルノルボルネンカルボン酸、及びカルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメタクリレート等)に酸安定性非極性基が置換したエステル化合物、並びに[3]エチレン性二重結合を有する脂環式炭化水素化合物(ノルボルネン及びテトラシクロドデセン等)が挙げられる。尚、上記酸安定性非極性置換基の例としては、メチル基、エチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、2−アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基が挙げられる。
【0035】
本発明により製造される上記レジスト組成物等は、従来の方法により得られるレジスト組成物等と比べて、異物数が十分に低減されている。例えば、上記レジスト組成物等に含まれる異物数として好ましくは1000個以下/10ml、更に好ましくは500個以下/10ml、特に好ましくは200個以下/10mlとすることができる。上記異物数が上記範囲であると、ディフェクトの発生を十分抑制することができ、微細なパターンを形成することができるので好ましい。尚、上記異物数は、液中オンラインパーティクルカウンター(例えば、リオン製「Ks−41」)により常温常圧下にて測定される粒子径0.2μm以上の異物数をいう。
【実施例】
【0036】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例に何ら制約されない。
【0037】
[1]充填装置
本実施例で用いた充填装置を図1に示す。充填装置Aは、フィルター(11)及びポンプ(6)を備える流路(1)と、流路(1)の一方の端部に連設されたタンク(2)と、流路(1)の後部側に設けられた4本の充填ノズル(3A)〜(3D)と、を有する。レジスト組成物は、ポンプ(6)を駆動することにより、タンク(2)から上記流路(1)に通液され、フィルター(11)でろ過され、充填ノズル(3A)〜(3D)で容器(4)に充填される。フィルター(11)は、PP製(孔径;0.02μm、ろ布面積;4.4m)である。また、フィルター(11)の前後から20cmの箇所に圧力計(5A,5B)を設置している。
【0038】
[2]実施例1
タンク(2)内にレジスト組成物32Lを装填した。該レジスト組成物は、ヒドロキシスチレン、tert−ブトキシカルボニルヒドロキシスチレンの共重合体、及び酸発生剤(トリフェニルスルホニウムトリフレート)を含有するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液である。ロータリーポンプ(ジャブスコ製)を用いて、該レジスト組成物を送液し、フィルター(11)に通液させた後、充填ノズル(3A)〜(3D)から、8本の4L容器(4)に上記レジスト組成物を充填した。充填は、流速0.1L/秒で行った。また、充填開始10秒後から充填終了10秒前までの圧力を圧力計(5A,5B)で測定したところ、充填中のフィルター(11)の前後の差圧は0.1MPaであった。
【0039】
1本目の容器(4)の充填開始時間を起点とした場合、各容器の充填時間と用いた充填ノズルは以下の通りである。
1本目;0〜40秒(充填ノズル(3A))
2本目;13〜53秒(充填ノズル(3B))
3本目;26〜66秒(充填ノズル(3C))
4本目;39〜79秒(充填ノズル(3D))
5本目;52〜92秒(充填ノズル(3A))
6本目;65〜105秒(充填ノズル(3B))
7本目;78〜118秒(充填ノズル(3C))
8本目;91〜131秒(充填ノズル(3D))
【0040】
充填後、レジスト組成物(10ml)中の異物数(粒子径0.2μm以上の粒子数)を、液中パーティクルカウンター(リオン製、「Ks−41型」)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
[3]比較例1
ポンプ(6)をダイヤフラムポンプ(イワキ製)とし、充填ノズル(3A)〜(3D)を4本ずつ同時に稼動させることで、フィルター(11)の前後の差圧を0.31MPaとした他は、実施例1と同様の方法により、レジスト組成物を容器(4)に充填し、レジスト組成物中の異物数を測定した。その結果を表1に示す。
【0042】
1本目の容器(4)の充填開始時間を起点とした場合、各容器の充填時間と用いた充填ノズルは以下の通りである。
1本目;0〜40秒(充填ノズル(3A))
2本目;0〜40秒(充填ノズル(3B))
3本目;0〜40秒(充填ノズル(3C))
4本目;0〜40秒(充填ノズル(3D))
5本目;60〜100秒(充填ノズル(3A))
6本目;60〜100秒(充填ノズル(3B))
7本目;60〜100秒(充填ノズル(3C))
8本目;60〜100秒(充填ノズル(3D))
【0043】
【表1】

【0044】
[4]実施例の結果
フィルター前後の差圧が0.3MPaを超える比較例1では、レジスト組成物中の異物数が平均で1000個/10ml以上であった。一方、フィルター前後の差圧が0.1MPaである実施例1では、レジスト組成物中の異物数が平均で約106個/10mlであった。この結果から、上記フィルターの前後の差圧を本願発明の範囲内とすることにより、異物数の少ないレジスト組成物が得られることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施例で使用した充填装置の配置図である。
【図2】本発明で使用する充填装置の一態様を示す配置図である。
【符号の説明】
【0046】
A,A’;充填装置、1,1’;流路、11;フィルター、2;タンク、3,3A〜3D;ノズル、4;容器、5A,5B;圧力計、6;ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターを備える流路と、該流路の後部側に設けられたノズルと、を有する充填装置を用い、レジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物を2以上の容器に充填するレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法であって、
上記レジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物を上記流路に通液して上記フィルターでろ過する工程と、
上記フィルターの前後の差圧が0.3MPa以下で、ろ過後の上記レジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物を、上記ノズルから上記容器に充填する工程と、を備えるレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法。
【請求項2】
上記ノズルの本数が2以上である請求項1記載のレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法。
【請求項3】
一の上記ノズルによる充填が完了する前に、他の上記ノズルによる充填を開始する請求項2記載のレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法。
【請求項4】
上記ノズルから段階的に且つ連続して上記容器に充填する請求項2又は3記載のレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法。
【請求項5】
全ての上記容器にろ過後の上記レジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物を充填する間、上記ノズルの少なくとも1つで充填が行われている請求項2乃至4のいずれかに記載のレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法。
【請求項6】
上記ノズルの少なくとも1つが充填を行っている間、充填が終了した上記ノズルを再度充填に用いる請求項2乃至5のいずれかに記載のレジスト組成物又は液浸用上層膜形成用組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−251532(P2009−251532A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102861(P2008−102861)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】