説明

レゾルシノール誘導体を含有するメラニン生成抑制剤

【課題】皮膚のシミ、ソバカス等の予防または治療等に際し、細胞毒性が低くかつメラニン生成抑制効果の高いメラニン生成抑制剤を、工業的に効率よく提供すること。
【解決手段】下記一般式(I):


(式中、Rは炭素数1〜12の分岐を有していてもよいヒドロキシアルキル基を表す)で示されるレゾルシノール誘導体を含有することを特徴とするメラニン生成抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚のシミ、ソバカス等の予防または治療等に有効なメラニン生成抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
メラニンの生成機構は複雑で多岐にわたるが、概略としては、チロシンがチロシナーゼに酸化されることにより生成したドーパが、さらにチロシナーゼにより酸化されることによりドーパキノンが生成した後、数段階の反応を経てメラニンが生成するという経路が明らかになりつつある。この経路において、チロシナーゼはメラニン生成の重要な役割を果たしていることから、皮膚のシミ、ソバカス等の予防または治療を目的として、チロシナーゼの活性を阻害することにより、メラニン生成を抑制する物質が種々提案されている。具体的には、ビタミンC、ハイドロキノン、コウジ酸、チオール系化合物、動植物抽出物等が知られており、これらが配合された化粧料が開発され、商品化されている。
【0003】
一方、4−置換レゾルシノール類、特にアルキル置換レゾルシノール類は優れたチロシナーゼ阻害活性を持つことが知られている(特許文献1参照)。他の4−置換レゾルシノール類としては、アルキルカルボン酸置換型およびそれらのエステル類(特許文献2参照)、またはシス若しくはトランス−ウンベル酸およびそのエステル(特許文献3〜5参照)が提案されている。
【特許文献1】特開平5−004905号公報
【特許文献2】特開平7−316034号公報
【特許文献3】特開2000−226313号公報
【特許文献4】特開平5−105621号公報
【特許文献5】特開平9−143022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記ビタミンC、ハイドロキノンは極性が高いため、化粧料として配合するにはその高い極性を考慮する必要がある。またコウジ酸は発ガン性が疑われており安全性に問題がある。チオール系化合物は、化粧料への配合にあたっての安定性に問題がある。更に、動植物抽出物を有効成分とするチロシナーゼ活性阻害剤は、その入手性・供給性に問題があるものが多い。また、化学反応レベルではチロシナーゼ活性阻害能が十分であっても、細胞においてかかる機能が充分に発現しない場合もある他、細胞毒性が発現することもあり、商品化まで至っていないものも多い。
【0005】
また、4−ブチルレゾルシノールの様なアルキル置換型レゾルシノール類は、その活性と細胞毒性から使用にあたっては、配合量等の高度な制御が必要である。また、アルキルカルボン酸置換型レゾルシノールおよびそのエステル類は、チロシナーゼ活性を阻害することが報告されてはいるものの、細胞におけるメラニン生成抑制効果は報告されておらず、本発明者らの検討では、B16メラノーマ細胞において効果は見られないことが判明した(比較例参照)。また、シス−ウンベル酸は室温において不安定であり、トランス−ウンベル酸エステルに関しては、使用量が多く効果に関して不明確である上、トランス−ウンベル酸またはそのエステルの入手方法は収率が著しく低い化学合成による方法か、(カルベトキシメチレン)トリフェニルフォスフォラン等の入手性や廃棄物処理方法に問題のある原料を使う必要がある。
【0006】
本発明の目的は、皮膚のシミ、ソバカス等の予防または治療等に際し、細胞毒性が低く、かつメラニン生成抑制効果の高いメラニン生成抑制剤を、工業的に効率よく提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
〔1〕 下記一般式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは炭素数1〜12の分岐を有していてもよいヒドロキシアルキル基を表す)
で示されるレゾルシノール誘導体(以下、レゾルシノール誘導体(I)と称することがある)を含有することを特徴とするメラニン生成抑制剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、皮膚のシミ、ソバカス等の予防または治療等に際し、細胞毒性が低い、即ち、安全で、かつメラニン生成抑制効果の高いメラニン生成抑制剤を工業的に効率よく提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のメラニン生成抑制剤は、レゾルシノール誘導体(I)を含有することを特徴とする。かかる特徴を有することにより、本発明のメラニン生成抑制剤は、細胞においても実際に高いメラニン生成抑制作用を発揮し、かつ、細胞毒性が低いという優れた効果を奏する。さらに、本発明で使用されるレゾルシノール誘導体(I)は、高収率で調製され得ることから、本発明のメラニン生成抑制剤は、工業的に効率よく提供され得る。
【0012】
一般式(I)において、Rが表す炭素数1〜12の分岐を有していてもよいヒドロキシアルキル基としては、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシ−n−ブチル基、ヒドロキシイソブチル基、ヒドロキシ−n−ペンチル基、ヒドロキシヘキシル基等が挙げられる。中でも、原料の入手性の観点から、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシ−n−ブチル基、またはヒドロキシ−n−ペンチル基がより好ましい。
【0013】
これらの基を有するレゾルシノール誘導体(I)は、必要に応じて通常の合成法により製造され得るものである。例えば3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン−1−オール(以下、化合物1と称することがある)、4−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ブタン−1−オール(以下、化合物2と称することがある)、および5−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ペンタン−1−オール(以下、化合物3と称することがある)は、ウンベリフェロンを出発物質として用いて製造され得る。
【0014】
即ち、入手の容易なウンベリフェロンより数工程で得られる3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)プロピオン酸メチルを還元し、脱保護することにより3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン−1−オールが得られる。4−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ブタン−1−オールは、3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)プロピオン酸メチルを還元後、メタンスルホニル化し、次いでシアン化ナトリウムでニトリル化後、還元、脱保護することにより得ることができる。5−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ペンタン−1−オールは、3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)プロピオン酸メチルを還元後、メタンスルホニル化し、次いでマロン酸ジメチルと反応させ、加水分解・脱炭酸することで5−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)ペンタン酸とし、これを還元後脱保護することにより得ることができる。なお、かかる合成反応の経路を図1に示す。
【0015】
本発明のメラニン生成抑制剤におけるレゾルシノール誘導体(I)の含有量は、特に制限されず、剤型によって異なるが、メラニン生成抑制効果および保存安定性の観点から、0.001〜10質量%の範囲が好ましく、0.01〜5質量%の範囲がより好ましく、0.1〜1質量%の範囲がさらに好ましい。
【0016】
本発明のメラニン生成抑制剤には、本発明の効果を奏する範囲内で、用途に応じて他の任意成分を配合することができる。特に、従来公知の美白剤、保湿剤またはこれらの混合物を配合することにより、所望の効果を相乗的に向上させることも可能である。
【0017】
このような成分のうち、美白剤としては、例えば、アスコルビン酸、ハイドロキノン、チオール系化合物、フラボノイド類およびその誘導体、これらを含有する動植物の抽出物またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0018】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール;アミノ酸;乳酸ナトリウム;ピロリドンカルボン酸ナトリウム;ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、セラミド類、キトサン等の水溶性高分子物質;またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0019】
また、化粧料として一般に配合する油脂類、界面活性剤、アルコール類、防腐剤、殺菌剤、増粘剤、抗炎症剤、酸化防止剤、色素、香料、水溶性高分子、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、精製水等の他の成分を適宜配合することもできる。
【0020】
増粘剤としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウム、マルメロ種子抽出物、トラガントガム、デンプン等の天然高分子物質;メチルセルロース、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、可溶性デンプン、カチオン化セルロース等の半合成高分子物質;カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子物質;またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0021】
防腐剤としては、例えば、安息香酸塩、ソルビン酸塩、ジヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、2,2,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’−トリクロロカルバニド、塩化ベンザルコニウム、エタノール等が挙げられる。
【0022】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、没食子酸プロピル等が挙げられる。
【0023】
紫外線吸収剤としては、例えば、4−メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート、酸化チタン、カオリン、タルク等が挙げられる。
【0024】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、クエン酸塩、酒石酸、グルコン酸等が挙げられる。
【0025】
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、リン酸水素カリウム、炭酸カリウム、クエン酸等が挙げられる。
【0026】
本発明のメラニン生成抑制剤は、レゾルシノール誘導体(I)と前述の任意成分を常法により製剤化することにより得ることができる。本発明のメラニン生成抑制剤は、皮膚のシミ、ソバカス等の予防または治療等に有用であるため、例えば、医薬品、医薬部外品または化粧料として調製することができる。具体的には、本発明のメラニン生成抑制剤は、例えば、ローション、乳液、クリーム、パック剤、皮膚洗浄剤、ハップ剤、プラスター剤、ペースト剤、軟膏、エッセンス、ゲル剤、シャンプー、リンス、パウダー、ファンデーション、化粧水、洗顔料、浴用剤等の形態で調製され得る。
この際、前述の任意成分の他に、前記の各形態に従来使用されている成分を適宜選択して配合することができる。
【0027】
本発明において、メラニン生成抑制効果は、例えば、後述の実施例のように被検試料とともにメラノーマ細胞を培養し、該細胞のメラニン生成量を測定することにより評価できる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例等により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。また、特に明示が無い限り、以下の製造例における「%」は、「質量%」を表す。
【0029】
製造例1
【0030】
【化2】

【0031】
温度計、磁気回転子および還流冷却管を備えた500ml三口フラスコに、ウンベリフェロン20.0g(123mmol)、テトラヒドロフラン200ml、メタノール200ml、および10%パラジウムカーボン1.0gを加え、攪拌下に系内を水素置換した。この混合液を30℃に加熱した後、水素雰囲気下に6時間反応させた。反応液を冷却し、パラジウムカーボンを濾過して分離した。
【0032】
続いて、得られた濾液を温度計、磁気回転子および還流冷却管を備えた500ml三口フラスコに移し、p−トルエンスルホン酸・一水和物0.19g(1mmol)を加え、窒素下、還流させながら2時間攪拌した。この反応混合液を室温まで冷却した後、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液を0.3ml添加した。この反応混合液を減圧下に濃縮して残渣25.55gを得た。
【0033】
続いて、温度計、磁気回転子、滴下漏斗および還流冷却管を備えた500ml三口フラスコに、上記操作で得られた残渣25.55g、アセトン300mlおよび炭酸カリウム34.00g(246mmol)を加え、窒素下、アセトンが還流するまで加熱攪拌した。これに臭化ベンジル46.39g(270mmol)を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、還流下にさらに5時間攪拌した。この反応混合液を室温まで冷却した後、副生した塩を濾過により除去し、濾液からアセトンを減圧下に留去した。得られた残渣にトルエン200mlおよび水200mlを添加し、有機層と水層を分離した。有機層からトルエンを減圧下に留去し、得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=20/1)を用いて精製し、目的物である3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)プロピオン酸メチル45.2g(96mmol、ウンベリフェロン基準の収率:78%)を得た。
【0034】
製造例2
【0035】
【化3】

【0036】
温度計、磁気回転子および滴下漏斗を装備した内容積300mlの三口フラスコに、窒素下、水素化アルミニウムリチウム0.94g(25.0mmol)を加え、溶媒としてテトラヒドロフラン100mlを加えた。この溶液を0℃に冷却し、内温を10℃以下に保ちながら3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)プロピオン酸メチル17.10g(45.5mmol)を滴下した。滴下終了後、室温でさらに1時間攪拌した。この反応液にイソプロパノール8mlを添加して、過剰の水素化アルミニウムリチウムを分解した後、10%硫酸水溶液100mlに内温を10〜20℃の範囲に保ちながら滴下し、続いてトルエン100mlを加えた。この混合物から有機層を分離し、水層をトルエン50mlで抽出し、抽出液を先の有機層と合わせて水50mlで洗浄した。この有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒等の低沸成分を減圧下に留去し、3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)プロパン−1−オール15.06g(43.2mmol、収率:95%)を得た。
【0037】
製造例3
【0038】
【化4】

【0039】
温度計、磁気回転子および還流冷却管を備えた100ml三口フラスコに、製造例2記載の方法で得られた3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)プロパン−1−オール4.40g(12.6mmol)、テトラヒドロフラン50mlおよび10%パラジウムカーボン0.2gを加えて、系内を水素置換し、室温で10時間攪拌した。この反応混合物からパラジウムカーボンを濾過して除去し、濾液を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)を用いて精製することにより、目的物である3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン−1−オール(化合物1)1.80g(10.7mmol、収率:85%)を得た。
【0040】
製造例4
【0041】
【化5】

【0042】
温度計、滴下漏斗、磁気回転子および還流冷却管を備えた500ml三口フラスコに、製造例2記載の方法で得られた3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)プロパン−1−オール15.24g(43.8mmol)、トリエチルアミン8.86g(87.6mmol)およびトルエン200mlを加え、系内を窒素置換した。この混合液を0℃に冷却した後、内温を5℃以下に維持しながら、塩化メタンスルホニル6.02g(52.6mmol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、内温5℃以下でさらに1時間攪拌した。この反応混合物に水200mlを加え、水層を除去した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒等の低沸成分を減圧下に留去し、3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)−1−メタンスルホニルオキシプロパン18.28g(42.9mmol、収率:98%)を得た。
【0043】
製造例5
【0044】
【化6】

【0045】
温度計、磁気回転子および還流冷却管を備えた500ml三口フラスコに、製造例4記載の方法で得られた3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)−1−メタンスルホニルオキシプロパン46.01g(108mmol)、シアン化ナトリウム6.60g(135mmol)およびジメチルスルホキシド400mlを加え、系内を窒素置換した。この混合物を100℃に加熱して1時間攪拌した後、室温まで冷却した。この反応液をトルエン800mlと水800mlの混合液中に添加し、有機層を分液して減圧下に濃縮し、目的物である4−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)ブチロニトリルを含む残渣34.0gを得た。
【0046】
続いて、温度計、磁気回転子および還流冷却管を備えた500ml三口フラスコに、上記操作にて得られた残渣34.0g、水酸化カリウム15.15g(270mmol)およびエチレングリコール300mlを加え、系内を窒素置換した。この混合物を200℃に加熱して2時間攪拌した後、室温まで冷却した。この反応液を酢酸エチル800mlと水500mlの混合液中に添加し攪拌後、有機層と水層を分液した。水層を酢酸エチル300mlで抽出し、抽出液を先の有機層と合わせて水500mlで3回洗浄した。この有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮することで、褐色固体30.4gを得た。この固体をトルエン200mlから再結晶することにより、目的物である4−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)ブタン酸27.4g(72.8mmol、3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)−1−メタンスルホニルオキシプロパン基準の収率:67%)を得た。
【0047】
製造例6
【0048】
【化7】

【0049】
温度計、磁気回転子および滴下漏斗を装備した内容積300mlの三口フラスコに水素化アルミニウムリチウム1.21g(31.9mmol)を加え、溶媒としてテトラヒドロフラン200mlを加えて系内を窒素置換した。この溶液を0℃に冷却し、製造例5記載の方法で得られた4−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)ブタン酸10.0g(26.6mmol)を内温を10℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後、室温でさらに1時間攪拌した後、イソプロパノール8mlを添加して過剰の水素化アルミニウムリチウムを分解した。この反応液を10%硫酸水溶液100mlに内温を10〜20℃の範囲に保ちながら滴下し、続いてトルエン200mlを加えた。この混合物から有機層を分液し、水層をトルエン50mlで抽出し、抽出液を先の有機層と合わせて水100mlで洗浄した。この有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)を用いて精製し、目的物である4−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)ブタン−1−オール8.50g(23.5mmol、収率:88%)を得た。
【0050】
製造例7
【0051】
【化8】

【0052】
3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)プロパン−1−オール4.40g(12.6mmol)を製造例6記載の方法で得られた4−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)ブタン−1−オール4.57g(12.6mmol)に変えた以外は製造例3と同様にして反応を行い、目的物である4−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ブタン−1−オール(化合物2)1.88g(10.3mmol、収率:82%)を得た。以下に、H−NMRスペクトルデータを示す。
【0053】
H−NMR(270MHz、DMSO−d、TMS)δ:8.97(s,1H)、8.89(s,1H)、6.76(d,1H,J=7.9Hz)、6.24(d,1H,3.0Hz)、6.10(dd,1H,J=3.0,7.9Hz)、4.32(t,1H,J=6.0Hz)、3.37(dd,2H,J=6.9,11.9Hz)、2.37(t,2H,J=6.9Hz)、1.48−1.40(m,4H)
【0054】
製造例8
【0055】
【化9】

【0056】
温度計、磁気回転子、滴下漏斗および還流冷却器を装備した内容積200mlの三口フラスコに、60%水素化ナトリウム2.08g(52.1mmol)を加え、溶媒としてテトラヒドロフラン100mlを加えて系内を窒素置換した。これにマロン酸ジメチル5.68g(54.6mmol)を、内温が20℃以下に保たれるように滴下した。滴下終了後、室温にてさらに30分攪拌し、次いで製造例4記載の方法で得られた3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)−1−メタンスルホニルオキシプロパン19.96g(49.6mmol)をテトラヒドロフラン40mlに溶解させた溶液を、内温が20℃以下に保たれるようにして滴下した後、20時間還流した。反応液を室温まで冷却した後、10%硫酸水溶液25mlを添加し、次いでトルエン300mlを添加した。混合物から有機層を分離し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒等の低沸成分を減圧下に留去し、残渣24.6gを得た。
【0057】
続いて、温度計、磁気回転子、滴下漏斗および還流冷却器を装備した内容積300mlの三口フラスコに、水50mlおよび水酸化ナトリウム6.0g(150mmol)を加えて系内を窒素置換した。これに上記操作で得られた残渣24.6gをテトラヒドロフラン100mlに溶解させた溶液を滴下漏斗を用いて30分かけて滴下した。滴下終了後、内温60℃にて3時間攪拌し、反応液を室温まで冷却後、トルエン100mlと水100mlを添加し、有機層を除去した。水層からテトラヒドロフランを減圧下に留去し、残渣87.0gを得た。
【0058】
続いて、温度計、磁気回転子、滴下漏斗および還流冷却器を装備した内容積300mlの三口フラスコに、10%硫酸水溶液100mlを加えた。これに上記操作で得られた残渣87.0gを30分かけて滴下した。滴下終了後、水還流下で20時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却後、塩化メチレン100mlで3回抽出した。抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に留去し、黄褐色固体14.1gを得た。これをトルエン50mlで再結晶することにより、目的物である5−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)ペンタン酸11.0g(28.3mmol、3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)−1−メタンスルホニルオキシプロパン基準の収率:57%)を得た。
【0059】
製造例9
【0060】
【化10】

【0061】
4−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)ブタン酸10.00g(26.6mmol)を製造例8記載の方法で得られた5−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)ペンタン酸10.39g(26.6mmol)に変えた以外は製造例6と同様にして反応を行い、目的物である5−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)ペンタン−1−オール9.00g(23.9mmol、収率:90%)を得た。
【0062】
製造例10
【0063】
【化11】

【0064】
3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)プロパン−1−オール4.40g(12.6mmol)を製造例9記載の方法で得られた5−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)ペンタン−1−オール4.74g(12.6mmol)に変えた以外は製造例3と同様にして反応を行い、目的物である5−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ペンタン−1−オール(化合物3)2.08g(10.6mmol、収率:84%)を得た。以下に、H−NMRスペクトルデータを示す。
【0065】
H−NMR(270MHz、DMSO−d、TMS)δ:8.97(s,1H)、8.89(s,1H)、6.76(d,1H,J=7.9Hz)、6.24(d,1H,3.0Hz)、6.10(dd,1H,J=3.0,7.9Hz)、4.32(t,1H,J=5.0Hz)、3.36(dd,2H,J=6.9,11.9Hz)、2.37(t,2H,J=6.9Hz)、1.50−1.23(m,6H)
【0066】
製造例11
【0067】
【化12】

【0068】
温度計、磁気回転子および還流冷却管を備えた100ml三口フラスコに、水酸化ナトリウム2.72g(69.3mmol)、水20g、テトラヒドロフラン30g、および製造例1記載の方法で得られた3−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)プロピオン酸メチル8g(23.1mmol)を加え、攪拌しながら40℃で1時間反応させ、その後さらに30分還流した。反応混合物を室温に冷却後、トルエン30mlおよび水30mlを加え30分間攪拌した。これを分液して水層を取得し、8質量%硫酸水溶液30mlを添加して内液を酸性とした後にトルエン50mlで3回抽出した。抽出液を合わせて減圧下に濃縮し、残渣にテトラヒドロフラン100mlおよび10%パラジウムカーボン0.8gを加えて、室温・大気圧条件下で24時間かけて水素添加した。パラジウムカーボンを濾過した後、濾液を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することで3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸2.72gを得た(14.9mmol、収率:65%)
【0069】
製造例12
【0070】
【化13】

【0071】
製造例5記載の方法で得た4−(2,4−ジベンジルオキシフェニル)ブタン酸7.52g(20mmol)に、テトラヒドロフラン100mlおよび10%パラジウムカーボン0.8gを加え、室温・大気圧条件下で24時間かけて水素添加した。パラジウムカーボンを濾過した後、濾液を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することで、4−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ブタン酸3.10gを得た(15.8mmol、収率:79%)。
【0072】
実施例1〜5および対照例1
B16メラノーマ細胞を用いたメラニン生成抑制効果の評価
B16メラノーマ細胞をEMEM(Eagle's minimum essential medium、Nissui Pharmaceutical Co.製)中、1.0×10cells/mlの濃度に調節した後、24ウェルプレートに1mlずつ播種し、37℃、5%CO下で24時間培養した。次いで、培地を、各濃度に調整した試料のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液2μlを998μlのEMEMに添加して得た培地に交換し、48時間同条件で培養し、再度前記の試料を含むEMEMによる培地交換を行い24時間培養した。培地を除去後、1N 水酸化ナトリウム水溶液1mlで細胞を溶解し、プレートリーダーで405nmの吸光度を測定し、コントロールとして、試料を添加しないDMSO溶液を添加した場合を100%としたときの相対値でメラニン生成量を比較した。
【0073】
生存細胞(B16メラノーマ細胞)数の評価
B16メラノーマ細胞をEMEM中、1.0×10cells/mlの濃度に調節した後、24ウェルプレートに1mlずつ播種し、37℃、5%CO下で24時間培養した。次いで、培地を、各濃度に調整した試料のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液2μlを998μlのEMEMに添加して得た培地に交換し、48時間同条件で培養し、再度前記の試料を含むEMEMによる培地交換を行い、24時間培養した。その後、培地に5mg/mlのMTT(3−[4,5−ジメチルチアゾ−2−リル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウム ブロミド)−PBS(phosphate buffered saline)溶液を各ウェルにつき50μl添加して4時間培養後、培地を除去し、MTT溶解液(濃塩酸340μl/イソプロパノール100ml)を1ml加え、10分間超音波処理した。生成物が完全に溶解したことを確認した後、該溶解液について、630nmを対照波長とし、570nmの吸光度を測定(570nmの吸光度−630nmの吸光度)し、試料無添加の場合の値(コントロール)を100%としたときの相対値を生存細胞数の相対値として評価した。
【0074】
上記評価は、試料として、製造例3により得られた3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン−1−オール(化合物1;実施例1および2)、製造例7により得られた4−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ブタン−1−オール(化合物2;実施例3および4)、製造例10により得られた5−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ペンタン−1−オール(化合物3;実施例5)のそれぞれ所定濃度の溶液の他、対照例として既にメラニン生成抑制剤として実用化されているアルブチン(arbutin)の所定濃度の溶液を用いて行い、メラニン生成量および生存細胞数を比較した。結果を図2に示す。
【0075】
この結果、化合物1〜3はいずれもメラニン生成を有意に抑制し、アルブチンと同等またはそれ以上のメラニン生成抑制効果を有すること、また、MTTの吸光度の値より、細胞への毒性が認められないことがわかった。
【0076】
比較例1〜5および対照例
試料として、製造例11により得られた3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸(化合物4、比較例1、2)、製造例12により得られた4−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ブタン酸(化合物5、比較例3、4)を、比較化合物として、4−ヘキシルレゾルシノール(化合物A、比較例5)を用いる以外は実施例1〜5と同じ操作を行い、B16メラノーマ細胞のメラニン生成量および生存細胞数を評価した。結果を図3に示す。
【0077】
この結果、式(I)のRがカルボン酸である化合物4および5の場合、本発明で使用されるヒドロキシアルキルレゾルシノールと同一濃度ではメラニン抑制効果は見出されなかった。また、4−ヘキシルレゾルシノールはメラニン生成抑制効果が高いものの、細胞数も減少してしまうことから、細胞毒性も強いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の、特定のレゾルシノール誘導体を含有するメラニン生成抑制剤は、皮膚のシミ、ソバカス等の予防または治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、ウンベリフェロンを出発物質とした3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン−1−オール、4−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ブタン−1−オール、および5−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ペンタン−1−オールの合成反応経路を示す。
【図2】図2は、0.2mMまたは0.4mMの化合物1、2、3および0.4mMのアルブチンを培地中0.2%(v/v)添加して、B16メラノーマ細胞を培養した場合のメラニン生成量および生存細胞数の評価の結果を示す図である。評価結果は、試料無添加の場合(図中の「control」)の値を100%としたときの相対値で示される。
【図3】図3は、0.1mMの化合物A、0.2mMまたは0.4mMの化合物4、5、および0.4mMのアルブチンを培地中0.2%(v/v)添加して、B16メラノーマ細胞を培養した場合のメラニン生成量および生存細胞数の評価の結果を示す図である。評価結果は、試料無添加の場合(図中の「control」)の値を100%としたときの相対値で示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜12の分岐を有していてもよいヒドロキシアルキル基を表す)
で示されるレゾルシノール誘導体を含有することを特徴とするメラニン生成抑制剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−186445(P2007−186445A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5063(P2006−5063)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】