説明

レニウム錯体化合物及びこれを含有する有機電界発光素子

【課題】青色発光素子に有用な、新規の遷移金属錯体化合物を提供する。
【解決手段】下記式[1]で表されるレニウム錯体化合物。


(Aは任意の置換基。Cは炭素原子。AはCの置換基と結合して環を形成していてもよい。環Bは、窒素原子を含む5員環または6員環。mは1〜4。Qは、直接結合または任意の連結基。pは1または2。Xは配位子または対アニオン。rは1〜4。2×p+rはレニウムの配位数。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子などの発光素子に有用な発光性を有する新規レニウム錯体化合物に関する。本発明はまた、このようなレニウム錯体化合物を含有する有機電界発光素子用組成物及び有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光(EL)素子などの発光素子には蛍光性色素が数多く用いられてきた。
フラットパネル・ディスプレイ等の表示、蛍光灯や標識灯等の光源、さらには近赤外発光材料として応用するためには、素子の発光効率をさらに改善する必要があり、新たな発光材料の開発が求められている。
【0003】
新たな発光材料として遷移金属錯体化合物が、電気化学発光素子や有機電界発光素子などの燐光発光を利用する素子の発光物質として使用されている。遷移金属錯体化合物は、蛍光色素を用いた場合に比べて3倍以上の高効率化が期待出来るため、非常に注目を集めている。なかでもイリジウム錯体化合物は、燐光としては非常に短い発光寿命を有するため、幅広く研究されている。
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1に記載のようなイリジウム錯体化合物は、青色発光に関しては錯体としての安定性が低いという問題点がある。そのため、イリジウム錯体化合物を用いた青色素子は、未だ十分な性能を有するものがなく、さらなる改良が求められていた。
【0005】
なお、レニウム錯体化合物が発光性を有することは一般に知られているが、これまでに報告されているレニウム錯体化合物は緑色〜赤色に発光するものであり、青色発光を示すレニウム錯体化合物は提供されていなかった。例えば、特許文献2〜4に記載されるレニウム錯体化合物も赤色に発光するものである。
【特許文献1】国際公開WO2005/113704号公報
【特許文献2】特開2004−99548号公報
【特許文献3】特開2002−173674号公報
【特許文献4】特開2005−100741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、青色発光素子に有用な、新規の遷移金属錯体化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、下記式[1]で表されるレニウム錯体化合物が、青色発光することを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、下記式[1]で表されるレニウム錯体化合物、に存する。
【0009】
【化3】

(式[1]中、
は任意の置換基を表す。また、Cは置換基を有していてもよい炭素原子を表す。
はCの置換基と結合して環を形成していてもよい。該環は置換基を有していてもよい。
環Bは、ヘテロ原子として窒素原子を含む5員環または6員環の複素環を表す。環Bは置換基を有していてもよい。
mは環Bに含まれる該窒素原子の数を表す、1〜4の整数である。
は、直接結合または任意の連結基を表す。
pは、1または2である。
は配位子または対アニオンを表し、rはXの数を表す、1〜4の整数である。
一分子中に、A、Q、環B、Xがそれぞれ複数存在する場合は、Aどうし、AとCが結合して形成する環どうし、Qどうし、環Bどうし、及びXどうしはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
なお、2×p+rはレニウムの配位数である。)
【0010】
本発明の別の要旨は、上記レニウム錯体化合物を含有する有機電界発光素子用組成物、に存する。
【0011】
本発明のさらに別の要旨は、上記レニウム錯体化合物を含有する有機電界発光素子、に存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により提供される新規レニウム錯体化合物は、青色発光を示すことが可能であり、特に500nm以下、さらには490nm以下の最大発光波長を示すことが可能であることから、電気化学発光素子や有機電界発光素子の材料として用いることが出来る。本発明により得られる技術は、医療診断や、有機ELデバイス、照明用の光源、色素レーザー、電子写真、記録光源など、様々な用途展開が期待出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
【0014】
[レニウム錯体化合物]
本発明のレニウム錯体化合物は、下記式[1]で表され、青色発光を示すことが可能であり、特に500nm以下、さらには490nm以下の最大発光波長を示すことが可能なレニウム錯体化合物である。なお、この最大発光波長は分光光度計により測定された値である。
【0015】
【化4】

(式[1]中、
は任意の置換基を表す。また、Cは置換基を有していてもよい炭素原子を表す。
はCの置換基と結合して環を形成していてもよい。該環は置換基を有していてもよい。
環Bは、ヘテロ原子として窒素原子を含む5員環または6員環の複素環を表す。環Bは置換基を有していてもよい。
mは環Bに含まれる該窒素原子の数を表す、1〜4の整数である。
は、直接結合または任意の連結基を表す。
pは、1または2である。
は配位子または対アニオンを表し、rはXの数を表す、1〜4の整数である。
一分子中に、A、Q、環B、Xがそれぞれ複数存在する場合は、Aどうし、AとCが結合して形成する環どうし、Qどうし、環Bどうし、及びXどうしはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
なお、2×p+rはレニウムの配位数である。)
【0016】
{式[1]の説明}
〈A
は任意の置換基を表す。
具体的には、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、或いは置換基を有していてもよいチオ基が挙げられる。
【0017】
置換基を有していてもよいアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
【0018】
置換基を有していてもよいアリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜14のアリール基である。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などの、6員環の単環或いは2〜5縮合環由来の基が挙げられる。
【0019】
置換基を有していてもよいアルケニル基として、好ましくは炭素数2〜8、より好ましくは炭素数2〜4のアルケニル基である。例えば、ビニル、アリル、1−ブテニル基などが挙げられる。
【0020】
置換基を有していてもよいアミノ基として、好ましくは炭素数が0〜36、より好ましくは0〜20、特に好ましくは0〜12のアミノ基である。例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジベンジルアミノ、チエニルアミノ、ジチエニルアミノ、ピリジルアミノ、ジピリジルアミノ等が挙げられる。
【0021】
置換基を有していてもよいアルコキシ基として、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基である。例えばメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ等が挙げられる。
【0022】
置換基を有していてもよいチオ基として、好ましくはメチルチオ基、エチルチオ基が挙げられる。
【0023】
上記アルキル基、アリール基、アルケニル基、アミノ基、アルコキシ基、或いはチオ基が置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アミノ基、アルコキシ基及びハロゲン原子が好ましい。置換基としてのアルキル基、アルケニル基、アミノ基、アルコキシ基及びアリール基の具体例としては、上記Aとして例示した各基の具体例と同様である。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。置換基としてのアルキル基、アルケニル基、アミノ基、アルコキシ基およびアリール基もさらに置換基を有していてもよく、この場合の置換基としては上記Aとして例示されているようなアルキル基、アルケニル基、アミノ基、アルコキシ基及びアリール基が挙げられる。
【0024】
これらのうち、Aとして、最も好ましくは、メチル基、tert−ブチル基或いはフェニル基である。
【0025】
は炭素原子であるCの置換基と結合して環を形成していてもよい。形成する環として具体的には、5〜9員環が好ましく、中でも5員環や6員環が好ましい。具体的にはピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロール環などの5員環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環などの6員環が挙げられる。特に好ましくはピリジン環である。
【0026】
該環は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アミノ基、アルコキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。具体例としては、上記Aとして例示した具体例と同様である。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。該置換基はさらに置換基を有していてもよく、この場合の置換基としては上記Aとして例示されているようなアルキル基及びアリール基が挙げられる。
【0027】
の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アミノ基、アルコキシ基、チオ基及びハロゲン原子が挙げられる。これらの具体例としては、上記Aとして例示した基の具体例と同様である。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。Cの置換基はさらに置換基を有していてもよく、この場合の置換基としては上記Aとして例示されているようなアルキル基及びアリール基が挙げられる。
なお、Cが置換基を有さない場合は水素原子が結合する。
【0028】
〈環B
環Bは、ヘテロ原子として窒素原子を含む5員環または6員環の複素環を表す。
【0029】
窒素原子を含む5員環として、具体的にはピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロール環が挙げられる。また、窒素原子を含む6員環として、具体的にはピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が挙げられる。
特に、環Bは、5員環の芳香族複素環であることが好ましい。中でも、トリアゾール環が好ましい。
【0030】
この環Bは置換基を有していてもよい。該置換基としては、具体的には上記Aとして例示されているようなアルキル基及びアリール基が挙げられるが、特に好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0031】
〈m〉
mは環Bに含まれる窒素原子の数を表し、1〜4の整数である。mは2または3が好ましく、特に3が好ましい。
【0032】
〈Q
は、直接結合または任意の連結基を表す。
【0033】
連結基として、具体的には、置換基を有していてもよいアルキレン基、カルボニル基、置換基を有していてもよいイミノ基(−NR−:Rは置換基である。)、エーテル基が挙げられる。
【0034】
置換基を有していてもよいアルキレン基としては、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキレン基が挙げられる。
【0035】
置換基を有していてもよいイミノ基(−NR−:Rは置換基である。)としては、好ましくはイミノ基(−NH−)、または炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12の置換基Rで置換されたイミノ基である。
【0036】
上記アルキレン基およびイミノ基に導入される置換基としては、アルキル基などが挙げられる。
【0037】
としてより好ましくは、カルボニル基、メチレン基或いは直接結合であり、最も好ましくは直接結合である。
【0038】
〈p〉
pは1または2である。
【0039】
pが2で、式[1]中にA,Q,環Bが2個存在する場合、2個のA,Q,環Bはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
〈X
は配位子あるいは対アニオンを表す。
として具体的には、CO(カルボニル)配位子、CN(ニトリル)配位子、NC(イソニトリル)配位子、NO(ニトロシル)配位子、イソシアニド配位子、ホスフィン配位子、アルケン配位子、チオエーテル配位子、ピリジン配位子、ビピリジン配位子などが挙げられる。
また、対アニオンとしてはハロゲン原子由来のものが挙げられる。
としてはカルボニル配位子が最も好ましい。
【0041】
〈r〉
rはXの数を表し、1〜4の整数である。
が2〜4で、式[1]中にXが2〜4個存在する場合、これらのXは同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
なお、2×p+rがレニウムの配位数となる。従って、2×p+rは6である。
【0043】
{式[2]の説明}
式[1]で表される本発明のレニウム錯体化合物の中でも、特に下記式[2]で表される化合物が好ましい。
【0044】
【化5】

(式[2]中、環B、C、m、p、X、Q及びrは、式[1]におけると同義である。
環Aは、ヘテロ原子として窒素原子を含む5員環または6員環の複素環を表す。環Aは置換基を有していてもよい。
nは、0〜3の整数を表す。
一分子中に、環Aが複数存在する場合、環Aどうしは同一であっても異なっていてもよい。)
【0045】
環Aとして具体的には、式[1]において、AがCの置換基と結合して形成していてもよい環として例示したものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0046】
また、環Aは置換基を有していてもよく、その置換基としては具体的には、式[1]においてAとCの置換基が結合して形成していてもよい環の置換基として例示したものが挙げられる。
【0047】
特に、式[2]において、環Aが、置換基を有していてもよい6員環の芳香族複素環で、環Bが、置換基を有していてもよい5員環の芳香族複素環であることが好ましい。さらには、環Aが、置換基を有していてもよいピリジン環で、環Bが、置換基を有していてもよいトリアゾール環であることが好ましい。
【0048】
{分子量}
本発明のレニウム錯体化合物の分子量は、通常300以上で、通常1500以下、好ましくは1000以下、より好ましくは900以下である。
レニウム錯体化合物の分子量がこの上限を超えると発光効率が減少する恐れがあり好ましくなく、下限を下回るとガラス転移温度が低くなり、デバイスの熱的安定性を悪くする恐れがあり好ましくない。
【0049】
{具体例}
以下に、本発明のレニウム錯体化合物の具体例を挙げるが、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。なお、下記具体例において、Meはメチル基、Buはブチル基を表す。
【0050】
【化6】

【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

【0055】
{合成方法}
本発明のレニウム錯体化合物の合成方法としては、レニウムのカルボニル錯体と配位子(即ち、A−N=C−Q−環Bで構成される化合物)とを、有機溶剤中、不活性ガス雰囲気下で反応させる方法が挙げられる。有機溶剤としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、アセトニトリル、アセトン等が使用される。反応温度は特に限定されるわけではないが、室温から150℃以下が好ましい。不活性ガスとしては窒素もしくはアルゴンが好ましい。
【0056】
また、レニウムのカルボニル錯体としてはReCl(CO)が好適である。
【0057】
なお、反応において、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウムなどの塩基を用いると、中性の錯体化合物を単離することができる。塩基を使用しない場合には、反応生成物を金属塩の錯体として単離することができる。
【0058】
[有機電界発光素子用組成物]
本発明の有機電界発光素子用組成物(以下単に「組成物」と称す場合がある。)は、前述の本発明のレニウム錯体化合物を含むものであり、通常、本発明のレニウム錯体化合物と溶剤とを含み、更に好ましくは電荷輸送材料を含むものである。また、レニウム錯体化合物と電荷輸送材料とを含み、溶剤を含まないものであってもよい。
【0059】
本発明の有機電界発光素子組成物中には、本発明のレニウム錯体化合物の1種のみが含まれていても良く、2種以上が含まれていてもよい。
【0060】
本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式製膜法により、有機電界発光素子の発光層等の層を好適に形成することができる。
【0061】
〈電荷輸送材料〉
有機電界発光素子組成物に含まれる電荷輸送材料としては、発光層のホスト材料として使用される化合物が好ましく用いられる。
【0062】
このホスト材料としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
(Ar)−Z (I)
【0063】
(I)式中、Arは、置換基を有していてもよい、任意の芳香族炭化水素基或いは芳香族複素環基を表す。qは1〜10の整数を表す。Zは、直接結合またはq価の連結基を表す。但し、q=1の場合、ZはArに結合する任意の置換基或いは水素原子を表す。q≧2の場合、一分子中に含まれる複数のArは、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0064】
上記Zが、q価の連結基である場合、任意の連結基が適用可能であり、単独で、もしくは同一或いは異なる基同士を組み合わせて使用することができる。また、上記Zが、置換基である場合も、任意の置換基が適用可能である。
【0065】
Zが置換基である場合の具体例としては、以下のものが挙げられ、連結基の場合は、これらがq価の基となる。
ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、中でも好ましくはフッ素原子)、
置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくは、炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル基などが挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアルケニル基(好ましくは、炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜4のアルケニル基であり、例えばビニル、アリル、1−ブテニル基などが挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアルキニル基(好ましくは、炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜4のアルキニル基であり、例えばエチニル、プロパルギル基などが挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアラルキル基(好ましくは、炭素数7〜15、更に好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基であり、例えばベンジル基などが挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアミノ基(好ましくは、炭素数が0〜36、より好ましくは0〜20、特に好ましくは0〜12のアミノ基であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジベンジルアミノ、チエニルアミノ、ジチエニルアミノ、ピリジルアミノ、ジピリジルアミノ等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えばフェノキシカルボニル等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいヘテロ環オキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜21、より好ましくは炭素数2〜15、特に好ましくは炭素数5〜11のヘテロ環オキシカルボニルアミノ基であり、例えばチエニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ、チオフェンスルホニルアミノ等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜10、より好ましくは6〜8、特に好ましくは炭素数6のアリールオキシ基であり、例えばフェノキシ等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数2〜8、特に好ましくは炭素数4〜5のヘテロ環オキシ基であり、例えばチエニルオキシ、ピリジルオキシ等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル、テノイル、ニコチノイル等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7のアリールオキシカルボニル基であり、例えばフェノキシカルボニルなどが挙げられる。)、
置換基を有していてもよいヘテロ環オキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数5〜6のヘテロ環オキシカルボニル基であり、例えばチエニルオキシカルボニル、ピリジルオキシカルボニル等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアシルオキシ基であり、例えばアセトキシ、エチルカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシ、ピバロイルオキシ、テノイルオキシ、ニコチノイルオキシ等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいスルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル、チエニルスルファモイル等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいカルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ブチルチオ等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいアリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜25、より好ましくは炭素数2〜19、特に好ましくは炭素数5〜11のヘテロ環チオ基であり、チエニルチオ、ピリジルチオ等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えばトシル、メシルなどが挙げられる。)、
置換基を有していてもよいスルフェニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフェニル基であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)、
置換基を有していてもよいリン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)、
ヒドロキシル基、
メルカプト基、
シアノ基、
スルホ基、
カルボキシル基、
ニトロ基、
ヒドロキサム酸基、
スルフィノ基、
ヒドラジノ基、
下記式で表される基、
【化11】

(Rは任意の置換基であり、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アリール基の何れかである。Rは水素原子または任意の置換基であり、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アリール基の何れかである。)、
下記式で表される基、
【化12】

(R、Rは各々独立に水素原子または任意の置換基であり、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アリール基の何れかを表す)、
置換基を有していてもよいシリル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)、
置換基を有していてもよいボリル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のジメシチルボリル基などが挙げられる)、
置換基を有していてもよいホスフィノ基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のジフェニルホスフィノ基などが挙げられる)、
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などの、6員環の単環或いは2〜5縮合環由来の基が挙げられる)、
置換基を有していてもよい、5または6員環の単環または2〜3縮合環から成る芳香族複素環基(へテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜19、より好ましくは炭素数3〜13の芳香族複素環基である。例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5または6員環の単環または2〜4縮合環由来の基が挙げられる。)
【0066】
中でも、Zは、電気的酸化還元耐久性を向上させる観点および耐熱性を向上させる観点から、芳香族炭化水素基或いは芳香族複素環基であることが好ましい。
【0067】
なお、上記各基は、上記のように置換基を有していても良く、他の基と縮合していてもよい。また、上記各基が有する置換基が2つ以上ある場合には、それらは同一でも異なっていてもよく、また可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0068】
該置換基として好ましくは、アルキル基、芳香族炭化水素基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子、アリールアミノ基、アルキルアミノ基、芳香族複素環基であり、より好ましくはアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基であり、さらに好ましくはアルキル基、芳香族炭化水素基である。なお、これらの置換基の好ましい例示としては、上記Zとして記載のものと同様である。
【0069】
上記Zの分子量は、その置換基も含めて(Arは除いて)1000以下のものが好ましく、更に好ましくは500以下である。好ましい分子量の範囲とすることにより、蒸着法を用いた製膜の際、気化温度を上げすぎることがなく、また、湿式法を用いた製膜の際、溶媒に対する溶解性を損なうことがなく、また、広いHOMO−LUMOのギャップを得ることができる。
【0070】
前記式(I)において、Arは、置換基を有していてもよい、任意の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
【0071】
該芳香族炭化水素基としては、好ましくは炭素数6〜30、更に好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などの6員環の単環或いは2〜5縮合環由来の基が挙げられる。
【0072】
該芳香族複素環基としては、好ましくは、炭素数1〜29、更に好ましくは炭素数3〜19の芳香族複素環基である。例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環、テトラゾール環、イミダゾピリジン環などの5または6員環の単環或いは2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
【0073】
Arとしては、電気的酸化還元耐久性及び広いHOMO−LUMOのバンドギャップの点から、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環、カルバゾール環由来の基が好ましい。
【0074】
中でも、より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、トリアジン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環、カルバゾール環由来の基であり、特に好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環、カルバゾール環由来の基である。
【0075】
Arとしては、最も好ましくは、ピリジン環(中でも、2,4,6−位が任意の置換基(好ましくは芳香族炭化水素基或いは芳香族複素環基)によって置換されているものが好ましい)、カルバゾール環(中でも、置換基として電子供与性基(アルキル基、アミノ基、アルコキシ基など)を持たないことが電気的還元耐久性を低下させないため好ましい)である。
【0076】
前記式(I)において、Arで表される芳香族炭化水素基または芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、上記Zが有し得る置換基として挙げたものを同様に適用できる。
【0077】
Arの分子量は、その置換基も含めて(Zは除いて)1000以下のものが好ましく、更に好ましくは500以下である。好ましい分子量の範囲とすることにより、蒸着法を用いた製膜の際、気化温度を上げすぎることがなく、また、湿式法を用いた製膜の際、溶媒に対する溶解性を損なうことがなく、また、広いHOMO−LUMOのギャップを得ることができる。
【0078】
q=1の時の、ArおよびZの、それぞれの好ましい具体例を以下(R−1〜R−88)に示す。
【0079】
【化13】

【0080】
【化14】

【0081】
【化15】

【0082】
上記各構造式中、LおよびLは、水素原子、或いは、上記Zが有しうる置換基として挙げた各基に代表される任意の置換基を表す。なお、上記構造式中、Zは、LおよびL以外にも任意の置換基を有していてもよい。
【0083】
前記式(I)において、qが2以上の時の、ArおよびZの、それぞれの好ましい具体例を以下(Z−1〜Z−184)に示す。
【0084】
【化16】

【0085】
【化17】

【0086】
【化18】

【0087】
【化19】

【0088】
前記一般式(I)で表されるホスト材料を例示するならば、次のようなものが挙げられる。
【0089】
カルバゾール系化合物(トリアリールアミン系化合物を含む):
特開昭63−235946号公報、特開平2−285357号公報、特開平2−261889号公報、特開平3−230584号公報、特開平3−232856号公報、特開平5−263073号公報、特開平6−312979号公報、特開平7−053950号公報、特開平8−003547号公報、特開平9−157643号公報、特開平9−268283号公報、特開平9−165573号公報、特開平9−249876号公報、特開平9−310066号公報、特開平10−041069号公報、特開平10−168447号公報、EP特許第847228号公報、特開平10−208880号公報、特開平10−226785号公報、特開平10−312073号公報、特開平10−316658号公報、特開平10−330361号公報、特開平11−144866号公報、特開平11−144867号公報、特開平11−144873号公報、特開平11−149987号公報、特開平11−167990号公報、特開平11−233260号公報、特開平11−241062号公報、WO00/70655号公報、米国特許第6562982号明細書、特開2003−040844号公報、特開2001−313179号公報、特開2001−257076号公報、特願2003−202925号、特願2003−204940号、特願2003−299512号などに記載のホスト材料
フェニルアントラセン誘導体:
特開2000−344691号公報などに記載のホスト材料
縮環アリーレンのスターバースト型化合物:
特開2001−192651号公報、特開2002−324677号公報などに記載のホスト材料
縮環型イミダゾール系化合物:
Appl.Phys.Lett.,78巻,1622項,2001,特開2001−335776号公報、特開2002−338579号公報、特開2002−319491号公報、特開2002−367785号公報、特開2002−367786号公報などに記載のホスト材料
アゼピン系化合物:
特開2002−235075号公報などに記載のホスト材料
縮環型トリアゾール系化合物:
特開2002−356489号公報などに記載のホスト材料
プロペラ型アリーレン系化合物:
特開2003−027048号公報などに記載のホスト材料
モノトリアリールアミン型化合物:
特開2002−175883号公報、特開2002−249765号公報、特開2002−324676号公報などに記載のホスト材料
アリールベンジジン系化合物:
特開2002−329577号公報などに記載のホスト材料
トリアリール硼素化合物:
特開2003−031367号公報、特開2003−031368号公報などに記載のホスト材料
インドール系化合物:
特開2002−305084号公報、特開2003−008866号公報、特開2002−015871号公報などに記載のホスト材料
インドリジン系化合物:
特開2000−311787号公報などに記載のホスト材料
ピレン系化合物:
特開2001−118682号公報などに記載のホスト材料
ジベンゾオキサゾール(またはジベンゾチアゾール)系化合物:
特開2002−231453号公報などに記載のホスト材料
ビピリジル系化合物:
特開2003−123983号公報などに記載のホスト材料
ピリジン系化合物:
特開2005−276801号公報、特開2005−268199号公報などに記載のホスト材料
【0090】
これらのうち、素子としての優れた発光特性の点から、好ましくは、カルバゾール系化合物(トリアリールアミン系化合物を含む)、縮環アリーレンのスターバースト型化合物、縮環型イミダゾール系化合物、プロペラ型アリーレン系化合物、モノトリアリールアミン型化合物、インドール系化合物、インドリジン系化合物、ビピリジル系化合物、ピリジン系化合物である。
更に、素子としての駆動寿命の点から、カルバゾール系化合物或いはフェニルピリジン系化合物が好ましい。
【0091】
ホスト材料としてとりわけ好ましい化合物の具体例を以下に示す。
【0092】
【化20】

【0093】
【化21】

【0094】
ホスト材料としては、上記例示化合物のうち、中でも、H−A1〜A6、A8〜A11、A14〜A18、A20〜A25が好ましく、H−A1、A3、A4、A6、A8〜A10、A15〜A18、A20〜A25が特に好ましい。
【0095】
本発明の有機電界発光素子組成物中には、上記ホスト材料の1種のみが含まれていても良く、2種以上が含まれていても良い。
【0096】
〈溶剤〉
本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる溶剤としては、溶質であるレニウム錯体化合物等が良好に溶解する溶剤であれば特に限定されない。
【0097】
例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル;シクロヘキサノン、シクロオクタノン等の脂環を有するケトン;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン;メチルエチルケトン、シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環を有するアルコール;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル等が利用できる。
【0098】
これらのうち、水の溶解度が低い点、容易には変質しない点で、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素が好ましい。
【0099】
有機電界発光素子には、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、組成物中の水分の存在は、乾燥後の膜中に水分が残留し、素子の特性を低下させる可能性が考えられ好ましくない。
【0100】
組成物中の水分量を低減する方法としては、例えば、窒素ガスシール、乾燥剤の使用、溶剤を予め脱水する、水の溶解度が低い溶剤を使用する等が挙げられる。なかでも、水の溶解度が低い溶剤を使用する場合は、湿式製膜工程中に、溶液膜が大気中の水分を吸収して白化する現象を防ぐことができるため好ましい。この様な観点からは、本実施の形態が適用される組成物は、例えば、25℃における水の溶解度が1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下である溶剤を、組成物中10重量%以上含有することが好ましい。
【0101】
また、湿式製膜時における組成物からの溶剤蒸発による、製膜安定性の低下を低減するためには、溶剤としては、沸点が100℃以上、好ましくは沸点が150℃以上、より好ましくは沸点が200℃以上の溶剤を用いることが効果的である。また、より均一な膜を得るためには、製膜直後の液膜から溶剤が適当な速度で蒸発することが必要で、このためには通常沸点80℃以上、好ましくは沸点100℃以上、より好ましくは沸点120℃以上で、通常沸点270℃未満、好ましくは沸点250℃未満、より好ましくは沸点230℃未満の溶剤を用いることが効果的である。
【0102】
上述の条件、即ち溶質の溶解性、蒸発速度、水の溶解度の条件を満足する溶剤を単独で用いてもよいが、すべての条件を満たす溶剤が選定できない場合は、2種類以上の溶剤を混合して用いることもできる。
【0103】
〈その他の成分〉
本発明の組成物中には、前述した溶剤および発光材料以外にも、必要に応じて、各種の他の溶剤を含んでいてもよい。このような他の溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0104】
また、本発明の組成物中にはレベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0105】
また、2層以上の層を湿式製膜法により積層する際に、これらの層が相溶することを防ぐため、製膜後に硬化させて不溶化させる目的で光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂を含有させておくこともできる。
【0106】
〈組成〉
本発明の有機電界発光素子組成物中のレニウム錯体化合物、電荷輸送材料および必要に応じて添加可能な成分(レベリング剤など)などの固形分濃度は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、最も好ましくは1重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、最も好ましくは20重量%以下である。この濃度が下限を下回ると、製膜に際して厚膜を形成するのが困難となり、上限を超えると、薄膜を形成するのが困難となる恐れがある。
【0107】
また、本発明の組成物において、レニウム錯体化合物/電荷輸送材料の重量混合比は、通常、0.1/99.9以上であり、より好ましくは0.5/99.5以上であり、更に好ましくは1/99以上であり、最も好ましくは2/98以上で、通常、50/50以下であり、より好ましくは40/60以下であり、更に好ましくは30/70以下であり、最も好ましくは20/80以下である。この比が下限を下回ったり、上限を超えたりすると、著しく発光効率が低下する恐れがある。
【0108】
〈調製方法〉
本発明の組成物は、レニウム錯体化合物、電荷輸送材料および必要に応じて添加可能なレベリング剤や消泡剤等の各種添加剤よりなる溶質を、適当な溶剤に溶解させることにより調製される。溶解工程に要する時間を短縮するため、および組成物中の溶質濃度を均一に保つため、通常、液を撹拌しながら溶質を溶解させる。溶解工程は常温で行ってもよいが、溶解速度が遅い場合は加熱して溶解させることもできる。溶解工程終了後、必要に応じて、フィルタリング等の濾過工程を経由してもよい。
【0109】
〈水分量、その他の物性等〉
本発明の組成物を用いて湿式製膜法により層形成して有機電界発光素子を製造する場合、用いる組成物に水分が存在すると、形成された膜に水分が混入して膜の均一性が損なわれるため、本発明の組成物中の水分含有量はできるだけ少ない方が好ましい。また一般に、有機電界発光素子は、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、組成物中に水分が存在した場合、乾燥後の膜中に水分が残留し、素子の特性を低下させる可能性が考えられ好ましくない。
【0110】
具体的には、本発明の組成物中に含まれる水分量は、通常1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下である。
【0111】
組成物中の水分濃度の測定方法としては、日本工業規格「化学製品の水分測定法」(JIS K0068:2001)に記載の方法が好ましく、例えば、カールフィッシャー試薬法(JIS K0211−1348)等により分析することができる。
【0112】
本発明の組成物は、湿式製膜プロセスでの安定性、例えば、インクジェット製膜法におけるノズルからの吐出安定性を高めるためには、常温で均一な液状であることが好ましい。常温で均一な液状とは、組成物が均一相からなる液体であり、かつ組成物中に粒径0.1μm以上の粒子成分を含有しないことをいう。
【0113】
本発明の組成物の粘度については、極端に低粘度の場合は、例えば製膜工程における過度の液膜流動による塗面不均一、インクジェット製膜におけるノズル吐出不良等が起こりやすくなり、極端に高粘度の場合は、インクジェット製膜におけるノズル目詰まり等が起こりやすくなる。このため、本発明の組成物の25℃における粘度は、通常2mPa・s以上、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上であり、通常1000mPa・s以下、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下である。
【0114】
また、本発明の組成物の表面張力が高い場合は、基板に対する濡れ性が低下する、液膜のレベリング性が悪く、乾燥時の製膜面の乱れが起こりやすくなる等の問題が発生するため、本発明の組成物の20℃における表面張力は、通常50mN/m未満、好ましくは40mN/m未満である。
【0115】
更に、本発明の組成物の蒸気圧が高い場合は、溶剤の蒸発による溶質濃度の変化等の問題が起こりやすくなる。このため、本発明の組成物の25℃における蒸気圧は、通常50mmHg以下、好ましくは10mmHg以下、より好ましくは1mmHg以下である。
【0116】
本発明の組成物は、紫外線の透過を防ぐことのできる容器、例えば、褐色ガラス瓶等に充填し、密栓して保管することが好ましい。保管温度は、通常−30℃以上、好ましくは0℃以上で、通常35℃以下、好ましくは25℃以下である。
【0117】
[有機電界発光素子]
【0118】
以下、本発明の有機電界発光素子について、図面を参照しながら説明する。
本発明の有機電界発光素子は前記本発明のレニウム錯体化合物を含有する。通常レニウム錯体化合物は、陽極及び陰極の間に狭持される有機層に含有され、好ましくは発光層に含有される。
図1は本発明に用いられる一般的な有機電界発光素子の構造例を模式的に示す断面図であり、1は基板、2は陽極、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、8は陰極を各々表す。
【0119】
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0120】
基板1上には陽極2が設けられるが、陽極2は正孔輸送層への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/またはスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などの場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。陽極2は異なる物質で積層して形成することも可能である。
【0121】
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合、厚みは、通常5〜1000nm、好ましくは10〜500nm程度である。不透明でよい場合、陽極2は基板1と同一でもよい。また、さらには上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0122】
陽極2の上には正孔輸送層4が設けられる。正孔輸送層の材料に要求される条件としては、陽極からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。また、発光層5に接するために発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させないことが求められる。上記の一般的要求以外に、車載表示用の応用を考えた場合、素子にはさらに耐熱性が要求される。従って、ガラス転移温度(Tg)として85℃以上の値を有する材料が望ましい。
【0123】
このような正孔輸送材料としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth.Metals,91巻、209頁、1997年)等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、各々、混合して用いてもよい。
【0124】
上記の化合物以外に、正孔輸送層4の材料として、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年)等の高分子材料が挙げられる。
【0125】
正孔輸送層4は塗布法(湿式製膜法)または真空蒸着法等により形成することができる。
【0126】
塗布法の場合は、正孔輸送材料の1種または2種以上と、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤とを溶剤に溶解して塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により陽極2上に塗布し、乾燥して正孔輸送層4を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、通常、正孔輸送層4内の含有量で50重量%以下が好ましい。
【0127】
真空蒸着法の場合には、正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた、陽極が形成された基板1上に正孔輸送層4を形成させる。
【0128】
正孔輸送層4の膜厚は、通常5〜300nm、好ましくは10〜100nmである。この様に薄い膜を一様に形成するためには、一般に真空蒸着法がよく用いられる。
【0129】
正孔を効率よく発光層5に注入することができるという点で、陽極2と発光層5との間には、このような正孔輸送層4を有することが好ましい。
【0130】
正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。
発光層5は、本発明のレニウム錯体化合物及び電荷輸送材料を通常含有し、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入されて正孔輸送層4を移動する正孔と、陰極8から注入されて正孔阻止層6を移動する電子との再結合により励起されて、強い発光を示す。該電荷輸送材料としては前記本発明の組成物に含有する電荷輸送材料として例示したものが使用できる。なお、発光層5は、前述の本発明の有機電界発光素子組成物により形成されることが好ましいが、本発明の性能を損なわない範囲で、前述の有機電界発光素子以外のホスト材料など、他成分を含んでいてもよい。
【0131】
発光層5の膜厚は、通常10nm以上、好ましくは20nm以上で、通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
発光層5は正孔輸送層4と同様の方法にて薄膜形成される。
【0132】
正孔阻止層6は発光層5の上に積層されるが、正孔輸送層4から移動してくる正孔を陰極8に到達するのを阻止する役割と、陰極8から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いことが必要とされる。正孔阻止層6は正孔と電子を発光層5内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。
【0133】
このような条件を満たす正孔阻止材料として、好ましくは、下記一般式(VII)で表わされる混合配位子錯体が挙げられる。
【0134】
【化22】

(式中、R16〜R21は、各々独立に、水素原子または任意の置換基を表す。Mはアルミニウム、ガリウム、インジウムから選ばれる金属原子を表す。Lは以下に示す一般式(VIIa)、(VIIb)、(VIIc)のいずれかで表される。
【0135】
【化23】

(式中、Ar11〜Ar15は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Zはシリコンまたはゲルマニウムを表す。)
【0136】
前記一般式(VII)において、R16〜R21は水素原子または任意の置換基を表すが、好ましくは水素原子;塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ベンジル基等のアラルキル基;ビニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;シアノ基;アミノ基;アシル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基;カルボキシル基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基などのジアラルキルアミノ基;トリフルオロメチル基等のα−ハロアルキル基;水酸基;置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;置換基を有していてもよいチエニル基、ピリジル基等の芳香族複素環基を表す。
【0137】
前記芳香族炭化水素基および芳香族複素環基が有しうる置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。
【0138】
16〜R21としてより好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基が挙げられる。また、R19としては、シアノ基が特に好ましい。
【0139】
上記式(VIIa)、(VIIb)、(VIIc)中、Ar11〜Ar15として、具体的には、置換基を有していてもよいフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基またはチエニル基、ピリジル基等の芳香族複素環基が挙げられる。
【0140】
前記一般式(VII)で表わされる化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
【0141】
【化24】

【0142】
【化25】

【0143】
正孔阻止材料としては、前記一般式(VII)の混合配位子錯体の他に、以下の構造式で示される1,2,4−トリアゾール環残基を少なくとも1個有する化合物を用いることもできる。
【0144】
【化26】

【0145】
上記構造式で表わされる1,2,4−トリアゾール環残基を少なくとも1個有する化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。以下において、Etはエチル基、Buはブチル基である。
【0146】
【化27】

【0147】
正孔阻止材料として、さらに、以下の構造式で示されるフェナントロリン環を少なくとも1個有する化合物を用いることもできる。
【0148】
【化28】

【0149】
上記構造式で表わされるフェナントロリン環を少なくとも1個有する化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0150】
【化29】

【0151】
さらに正孔阻止材料として、以下の構造式で示される2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も用いることができる。
【0152】
【化30】

(式中、R41、R42およびR43は、各々独立に、水素原子または任意の置換基を表す。連結基Lはt価の連結基を表し、ピリジン環と連結基Lはピリジン環の2〜6位のいずれか1つと直接結合している。tは1〜8の整数である。)
【0153】
上記一般式で表わされる2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0154】
【化31】

【0155】
これらの化合物は正孔阻止層6中に、1種を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0156】
正孔阻止層6の膜厚は、通常0.3〜100nm、好ましくは0.5〜50nmである。
正孔阻止層6も正孔輸送層4と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
【0157】
陰極8は、正孔阻止層6を介して発光層5に電子を注入する役割を果たす。陰極8として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。さらに、陰極8と発光層5または後述の電子輸送層7の界面にLiF、MgF、LiO等の極薄絶縁膜(膜厚0.1〜5nm程度)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Appl.Phys.Lett.,70巻,152頁,1997年;特開平10−74586号公報;IEEETrans.Electron.Devices,44巻,1245頁,1997年)。
【0158】
陰極8の膜厚は通常、陽極2と同様である。
【0159】
低仕事関数金属からなる陰極を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増大させる。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
【0160】
素子の発光効率をさらに向上させることを目的として、正孔阻止層6と陰極8の間に電子輸送層7を設けてもよい(図2参照)。電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極8から注入された電子を効率よく正孔阻止層6の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
【0161】
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−または5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5,645,948号)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0162】
また、フェナントロリン誘導体や金属錯体にアルカリ金属をドープしたり、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン化合物、フェナントロリン誘導体等の電子輸送性が高く分子量の小さい有機物をドープするなどして電子輸送能を高めた電子輸送層を形成することもできる。
【0163】
電子輸送層7の膜厚は、通常5〜200nm、好ましくは10〜100nmである。
【0164】
電子輸送層7は、正孔輸送層4と同様にして塗布法或いは真空蒸着法により正孔阻止層6上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
【0165】
本発明では、陰極8から発光層5に電子を効率よく注入し、また発光層5内における正孔と電子の再結合を容易にするために、陰極8と発光層5との間に、正孔阻止層6および/または電子輸送層7を有することが好ましい。
【0166】
正孔注入の効率をさらに向上させ、かつ、有機層全体の陽極2への付着力を改善させる目的で、正孔輸送層4と陽極2との間に正孔注入層3を挿入することも行われている(図3参照)。
正孔注入層3を挿入することで、初期の素子の駆動電圧が下がると同時に、素子を定電流で連続駆動した時の電圧上昇も抑制される効果がある。
【0167】
正孔注入層3に用いられる材料に要求される条件としては、陽極2とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定、すなわち、融点及びガラス転移温度が高いことが挙げられ、融点としては300℃以上、ガラス転移温度としては100℃以上が要求される。さらに、イオン化ポテンシャルが低く、陽極2からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。
【0168】
この目的のために、これまでに銅フタロシアニン等のタロシアニン化合物(特開昭63−295695号公報)、ポリアニリン(Appl.Phys.Lett.,64巻、1245頁,1994年)、ポリチオフェン(Optical Materials,9巻、125頁、1998年)等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜(Synth.Met.,91巻、73頁、1997年)や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物(J.Phys.D,29巻、2750頁、1996年)が報告されている。また、芳香族ジアミン含有ポリエーテルにDDQ等の電子受容性基をドーピングする等して正孔注入を容易にすることもできる。
【0169】
正孔注入層3の場合も、正孔輸送層4と同様にして薄膜形成可能であるが、無機物の場合には、さらに、スパッタ法や電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法が用いられる。
【0170】
以上の様にして形成される正孔注入層3の膜厚は、通常3〜100nm、好ましくは5〜50nmである。
【0171】
なお、図1とは逆の構造、すなわち、基板1上に陰極8、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。同様に、図2および図3に示した前記各層構成とは逆の構造に積層することも可能である。
【0172】
本発明は、有機電界発光素子が、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
【実施例】
【0173】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0174】
[実施例1]
本発明のレニウム錯体化合物[1−1]の合成(塩基存在下でのReCl(CO)と1当量の配位子[Lig−1]との反応(スキーム1))
【化32】

【0175】
[Lig−1](648mg、3.03mmol)、乾燥させたKCO(2.06g、14.9mmol)、およびReCl(CO)(1.08g、2.99mmol)を二口ナスフラスコに入れ、乾燥THF(36mL)を加えた。この混合物を窒素雰囲気下で3時間還流させた。放冷後、減圧濾過にてKCOを除去した後、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、溶媒を除去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム:メタノール=20:1(v/v))によって精製した後、クロロホルム−ヘキサン混合溶媒系で再沈殿させることによって、本発明のレニウム錯体化合物[1−1]を白色の固体として得た(収量590mg,1.15mmol;収率38%)。
1H NMR;d(ppm)7.50(ddd,J=1.5,5.7and7.7Hz,1H),8.14(dt,J=1.5and7.7Hz,1H),8.33(t
d,J=1.5and7.7Hz,1H),8.84(td,J=1.5and5.7Hz,1H)
DEI-MS m/z 512[M+].
【0176】
本発明のレニウム錯体化合物[1−1]のX線結晶構造解析を行った。単結晶は、塩化メチレンを良溶媒、ヘキサンを貧溶媒とした拡散法による再結晶から得た。結果を、表1に示す。
【0177】
【表1】

【0178】
本発明のレニウム錯体化合物[1−1]を25℃の条件下、クロロホルム中で電子吸収スペクトル及び発光スペクトルを測定した結果を図4および図5に示す。この結果から、本発明のレニウム錯体化合物[1−1]は青色発光を示し、有機電界発光素子などの発光素子(発光部材)として使用可能であることがわかった。
【0179】
[実施例2]
本発明のレニウム錯体化合物[1−2]の合成(塩基存在下でのReCl(CO)と2当量の配位子[Lig−1]との反応(スキーム2))
【化33】

【0180】
[Lig−1](108mg、0.504mmol)、乾燥させたKCO(346mg、2.50mmol)、およびReCl(CO)(90.2mg,0.249mmol)を二口ナスフラスコに入れ、乾燥THF(6mL)を加えた。この混合物を窒素雰囲気下で4時間還流させた。放冷後、減圧濾過にてKCOを除去した後、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、溶媒を除去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:メタノール=1:2(v/v))によって精製した後、クロロホルム−ヘキサン混合溶媒系で再沈殿させることによって、本発明のレニウム錯体化合物[1−2]を白色の固体として得た(収量108mg;収率61%)。
1H NMR;d(ppm)7.24(m,1H),7.46(ddd,J=1.5,5.9 and 7.8Hz,1H),7.73(dt,J=1.5
and 7.8Hz,1H),8.00(dt,J=1.5 and 7.8Hz,1H),8.08-8.10(m,2H),8.38(m,1H),9.03
(m,1H)
DEI-MS m/z 708[M+].
【0181】
本発明のレニウム錯体化合物[1−2]を25℃の条件下、クロロホルム中で電子吸収スペクトル及び発光スペクトルを測定した結果を図6および図7に示す。この結果から、本発明のレニウム錯体化合物[1−2]は青色発光を示し、有機電界発光素子などの発光素子(発光部材)をして使用可能であることがわかった。
【0182】
[実施例3]
本発明のレニウム錯体化合物[1−3]の合成(塩基存在下でのReCl(CO)と1当量の配位子[Lig−3]との反応(スキーム3))
【化34】

【0183】
<4−tert−ブチルピリジン−1−オキシドの合成>
ハイドロタルサイト(Mg10Al2(OH)24CO3,100 mg,0.313mmol)、4−tert−ブチルピリジン(1.08g,8.00mmol)、ベンゾニトリル(1.65g,16.0mmol)および30重量%過酸化水素水(4mL)の混合物にメタノール(20mL)を加え、60℃にて19時間攪拌した。固体を濾過によって除去し、濾液に二酸化マンガンを加えて余剰の過酸化水素を分解させた。得られた混合物を飽和食塩水(10mL)に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(20mL×4回)。有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過後、濾液の溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;EtOAc/CH3OH=9/1(v/v))で精製し、4−tert−ブチルピリジン−1−オキシドを得た(収量559mg,3.70mmol;収率46%)。
1H NMR(CDCl3) δ1.32(s,9H),7.26(d,J=7.3Hz,2H)8.15(d,J=7.3Hz,2H);
MALDI-TOF MS m/z 151(M+).
【0184】
<4−tert−ブチル−2−シアノピリジンの合成>
4−tert−ブチルピリジン−1−オキシド(775mg,5.11mmol)およびトリメチルシランカルボニトリル(659mg,6.13mmol)を塩化メチレン(5mL)に加え、室温下5分間攪拌した。そこへN,N−ジメチルカルバモイルクロリド(0.565ml,6.13mmol)を塩化メチレン(1mL)に溶解させた溶液を10分かけて加え、室温下16時間攪拌した。10重量%炭酸カリウム水溶液を加えた後、さらに10分間攪拌し、有機相を分液漏斗で分離した。水相を塩化メチレンで抽出し(10ml×4回)、先の有機相と合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム)で精製し、4−tert−ブチル−2−シアノピリジンを無色の液体として得た(収量654mg,4.09mmol;収率80%)。
1H NMR(CDCl3) δ1.24(s,9H)7.42(dd,J=2.0and4.9Hz,1H)7.60(d,J=2.0Hz,1H)8.51(d,J=4.9Hz,1H);
MALDI-TOF MS m/z 161([M+1]+).
【0185】
<4−tert−ブチルピリジン−2−カルボキシアミジン塩酸塩>
4−tert−ブチル−2−シアノピリジン(833mg,5.40mmol)をメタノール(5mL)に溶解させ、そこへナトリウムメトキシド(42.1mg,1.50mmol)を加えた後、窒素雰囲気下室温にて反応混合物を18時間攪拌した。塩化アンモニウム(315mg,6.00mmol)を加えた後、窒素雰囲気下70℃にて反応混合物を6時間攪拌した。濾過によって沈殿物を除去し、濾液の溶媒をロータリーエバポレーターにて留去した。残渣をエタノールに溶解させ、80℃にて1時間攪拌した。放冷後、不溶物を濾別した後、濾液をロータリーエバポレーターによって濃縮することによって4−tert−ブチルピリジン−2−カルボキシアミジン塩酸塩を白色固体として得た(収量1.08g,5.08mmol;収率94%)。
1H NMR(DMSO-d6) δ1.33(s,9H)7.76(dd,J=1.8and5.5Hz,1H)8.42(s,1H)8.71(dJ=5.5Hz1H),8.89(brs,4H).
【0186】
<5−(4−tert−ブチルピリジル)−3−トリフルオロメチル−[1,2,4]−トリアゾールの合成>
トリフルオロ酢酸エチル(299mg,2.08mmol)とヒドラジン1水和物(0.100ml,2.08mmol)を乾燥THF(5mL)に加え、混合物を40℃にて3時間攪拌した。そこへ4−tert−ブチルピリジン−2−カルボキシアミジン塩酸塩(389mg,2.21mmol)と水酸化ナトリウム(97mg,2.20mmol)を加え、反応混合物を40℃にて7時間攪拌した。放冷後、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(25ml)に注ぎ、塩化メチレンで抽出した(10mL×5回)。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;CHCl/CHOH=20/1(v/v))で精製することによって5−(4−tert−ブチルピリジル)−3−トリフルオロメチル−[1,2,4]−トリアゾール(配位子[Lig−3])を得た(387mg,1.44mmol,72%)。
1H NMR(CDCl3) δ1.43(s,9H)7.45(d,J=3.9Hz,1H)8.29(s1H)8.69(d,J=6.3Hz1H);
MALDI-TOF MS(negativemode) m/z 270 (M-);
Anal. Calcd for C12H13N4F3: C,53.33; H,4.85; N,20.73.
Found: C,53.42; H,4.50; N,20.73.
【0187】
<レニウム錯体化合物[1−3]の合成>
配位子[Lig−3]である5−(4−tert−ブチルピリジル)−3−トリフルオロメチル−[1,2,4]−トリアゾール(50.3mg,0.186mmol)、炭酸カリウム(87.8g,0.658mmol)およびクロロペンタカルボニルレニウムReCl(CO)(68.8mg,0.190mmol)を乾燥THF(4mL)に加え、その混合物を窒素雰囲気下55℃にて1時間攪拌した。放冷後、不溶物を濾過にて除去し、ロータリーエバポレーターで濾液の溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;CHCl/CHOH=60/1(v/v))で精製した後、クロロホルム−ヘキサンから再結晶することによって本発明のレニウム錯体化合物[1−3]を得た(41.8mg,0.0736mmol,収率40%)。
1H NMR(CDCl3) δ1.43(s,9H)7.46(dd,J=2.0and5.5Hz,1H)8.29(d,J=2.0Hz,1H)8.70(d,J=5.5Hz,1H);
MALDI-TOF MS m/z 539([M-CO]+);
Anal. Calcd for C16H12N4O4F3Re: C,33.86; H,2.17; N,9.87.
Found: C,34.25; H,2.28; N,10.24.
【0188】
本発明のレニウム錯体化合物[1−3]を25℃の条件下、クロロホルム中で電子吸収スペクトル及び発光スペクトルを測定した結果を図8および図9に示す。この結果から、本発明のレニウム錯体化合物[1−3]は青色発光を示し、有機電界発光素子などの発光素子(発光部材)として使用可能であることがわかった。
【0189】
[実施例4]
本発明のレニウム錯体化合物[1−4]の合成(塩基存在下でのReCl(CO)と1当量の配位子[Lig−4]との反応(スキーム2))
【化35】

【0190】
<3−ブトキシ−2−シアノピリジンの合成>
2−シアノ−3−ヒドロキシピリジン(1.01g,8.32mmol)、炭酸カリウム(1.82g,12.4mmol)および1−ヨードブタン(1.04mL,9.15mmol)を二口フラスコに入れ、そこへ2−ブタノン(10mL)を加えた。この混合物を90℃にて18時間攪拌し、放冷後、濾過した。濾液をロータリーエバポレーターによって濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム)で精製することによって3−ブトキシ−2−シアノピリジンを淡黄色の液体として得た(収量1.39g,7.89mmol;収率95%)。
1H NMR(CDCl3); δ(ppm)1.00(t,J=7.0Hz,1H),1.56(sext,J=7.0Hz,1H),1.86(quint,J=7.0Hz,1H),4.11(t,J=7.0Hz,1H),7.32(dd,J=1.5and8.6Hz,1H),7.45(dd,J=4.6and8.6Hz,1H),8.27(dd,J=1.5and4.6Hz,1H):
MALDI-TOF MS m/z 176 (M+).
【0191】
<3−ブトキシ−ピリジン−2−カルボキシアミジン塩酸塩の合成>
3−ブトキシ−2−シアノピリジン(534mg,3.03mmol)をメタノール(10mL)に溶解させ、そこへナトリウムメトキシド(25.0mg,0.469mmol)を加えた後、窒素雰囲気下室温にて反応混合物を21時間攪拌した。塩化アンモニウム(180mg,3.30mmol)を加えた後、窒素雰囲気下70℃にて反応混合物を6時間攪拌した。濾過によって沈殿物を除去し、濾液をロータリーエバポレーターにて留去した。残渣をエタノールに溶解させ、不溶物を濾別した後、濾液をロータリーエバポレーターによって濃縮することによって3−ブトキシ-ピリジン−2−カルボキシアミジン塩酸塩を白色固体として得た(収量980mg,4.26mmol;収率84%)。
1H NMR(DMSO-d6) δ0.907(t,J=7.2Hz,3H),1.41(sext,J=7.2Hz2H),1.68(quint,J=7.2Hz2H),4.10(t,J=7.2Hz2H),7.45(brs,3H),7.66(m,1H)7.77(m,1H)8.27(d,J=4.0Hz,1H).
【0192】
<5−(3−ブトキシピリジル)−3−トリフルオロメチル−[1,2,4]−トリアゾールの合成>
トリフルオロ酢酸エチル(609mg,4.27mmol)とヒドラジン1水和物(0.210ml,4.27mmol)を乾燥THF(3mL)に加え、混合物を45℃にて1時間攪拌した。そこへ3−ブトキシ-ピリジン−2−カルボキシアミジン塩酸塩(1.07mg,4.65mmol)と水酸化ナトリウム(191mg,4.70mmol)を加え、反応混合物を45℃にて3時間攪拌した。放冷後、不溶物を濾過にて除去し、濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;CHCl/CHOH=20/1(v/v))で精製した後、クロロホルム-ヘキサンから再結晶することによって、5−(3−ブトキシピリジル)−3−トリフルオロメチル−[1,2,4]−トリアゾール(配位子[Lig−4])を得た(99.3mg,0.347mmol,8%)。
1H NMR(CDCl3) δ1.03(t,J=7.3Hz,3H)1.54(sext,J=7.3Hz,2H)1.94(quintJ=7.3Hz2H)4.27(tJ=7.3Hz,2H)7.42-7.49(m,2H)8.49(ddJ=1.8Hzand4.0Hz1H)11.9(brs,1H);
MALDI-TOF MS m/z 286 (M+);
Anal. Calcd for C12H13N4OF3: C,50.35; H,4.58; N,19.57.
Found: C,49.95; H,4.58; N,19.57.
【0193】
<レニウム錯体化合物[1−4]の合成>
配位子[Lig−4]である5−(3−ブトキシピリジル)−3−トリフルオロメチル−[1,2,4]−トリアゾール(60.1mg,0.210mmol)、炭酸カリウム(100g,0.747mmol)およびクロロペンタカルボニルレニウムReCl(CO)(75.8mg,0.210mmol)を乾燥THF(4mL)に加え、その混合物を窒素雰囲気下55℃にて2時間攪拌した。放冷後、不溶物を濾過にて除去し、ロータリーエバポレーターで濾液の溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;CHCl/CHOH=20/1(v/v))で精製した後、クロロホルム−ヘキサンから再結晶することによって本発明のレニウム錯体化合物[1−4]を得た(53.1mg,0.0910mmol,収率43%)。
1H NMR(CDCl3) δ1.03(t,J=6.8Hz,3H)1.67(sext,J=6.8Hz,2H)1.97(quint,J=6.8Hz,2H)4.24(t,J=6.8Hz,2H)7.37(dd,J=5.9and8.3Hz,1H)7.61(d,J=8.3Hz,1H)8.46(d,J=5.9Hz,1H);
TOF MS m/z 583 (M+);
Anal. Calcd for C16H12N4O5F3Re: C,32.93; H,2.07; N,9.60.
Found: C,33.00; H,2.06; N,9.97.
【0194】
本発明のレニウム錯体化合物[1−4]を25℃の条件下、クロロホルム中で電子吸収スペクトル及び発光スペクトルを測定した結果を図10および図11に示す。この結果から、本発明のレニウム錯体化合物[1−4]は青色発光を示し、有機電界発光素子などの発光素子(発光部材)として使用可能であることがわかった。
【0195】
[実施例5]
図1に示す構造(但し、正孔阻止層は有さない)を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。ITO透明電極付きガラス基板(ジオマテック社製)に、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)をスピンコート法により60nm成膜し、正孔輸送層を形成した。80℃で1時間、真空乾燥した後、正孔輸送層上に、ポリビニルカルバゾール(PVCz)68.9重量%、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)29.4重量%および上記レニウム錯体化合物[1−1](1.7重量%)のトルエン溶液を、スピンコート法により120nm成膜して発光層を形成し、再度80℃で1時間加熱乾燥を行った。最後にAg電極を真空蒸着法により100nm成膜し、有機電界発光素子を作製した。この素子は、27.7Vで2.9cd/mの青色発光を得た。
【0196】
[実施例6]
レニウム錯体化合物[1−1]に代えて、レニウム錯体化合物[1−4]を使用した以外は、実施例5と同様にして有機電界発光素子を作製した。この素子は、26.9Vで7.3cd/mの青色発光を得た。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】本発明の有機電界発光素子の一例を示した模式的断面図である。
【図2】本発明の有機電界発光素子の別の例を示した模式断面図である。
【図3】本発明の有機電界発光素子の別の例を示した模式断面図である。
【図4】実施例1で合成した本発明のレニウム錯体化合物[1−1]の電子吸収スペクトルのチャートである。
【図5】実施例1で合成した本発明のレニウム錯体化合物[1−1]の発光スペクトルのチャートである。
【図6】実施例2で合成した本発明のレニウム錯体化合物[1−2]の電子吸収スペクトルのチャートである。
【図7】実施例2で合成した本発明のレニウム錯体化合物[1−2]の発光スペクトルのチャートである。
【図8】実施例3で合成した本発明のレニウム錯体化合物[1−3]の電子吸収スペクトルのチャートである。
【図9】実施例3で合成した本発明のレニウム錯体化合物[1−3]の発光スペクトルのチャートである。
【図10】実施例4で合成した本発明のレニウム錯体化合物[1−4]の電子吸収スペクトルのチャートである。
【図11】実施例4で合成した本発明のレニウム錯体化合物[1−4]の発光スペクトルのチャートである。
【符号の説明】
【0198】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[1]で表される、レニウム錯体化合物。
【化1】

(式[1]中、
は任意の置換基を表す。また、Cは置換基を有していてもよい炭素原子を表す。
はCの置換基と結合して環を形成していてもよい。該環は置換基を有していてもよい。
環Bは、ヘテロ原子として窒素原子を含む5員環または6員環の複素環を表す。環Bは置換基を有していてもよい。
mは環Bに含まれる該窒素原子の数を表す、1〜4の整数である。
は、直接結合または任意の連結基を表す。
pは、1または2である。
は配位子または対アニオンを表し、rはXの数を表す、1〜4の整数である。
一分子中に、A、Q、環B、Xがそれぞれ複数存在する場合は、Aどうし、AとCが結合して形成する環どうし、Qどうし、環Bどうし、及びXどうしはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
なお、2×p+rはレニウムの配位数である。)
【請求項2】
前記式[1]が、下記式[2]で表される、請求項1に記載のレニウム錯体化合物。
【化2】

(式[2]中、環B、C、m、p、X、Q及びrは、式[1]におけると同義である。
環Aは、ヘテロ原子として窒素原子を含む5員環または6員環の複素環を表す。環Aは置換基を有していてもよい。
nは、0〜3の整数を表す。
一分子中に、環Aが複数存在する場合、環Aどうしは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
環Aが、置換基を有していてもよい6員環の芳香族複素環であり、環Bが、置換基を有していていもよい5員環の芳香族複素環である、請求項2に記載のレニウム錯体化合物。
【請求項4】
環Aが、置換基を有していてもよいピリジン環であり、環Bが、置換基を有していてもよいトリアゾール環である、請求項3に記載のレニウム錯体化合物。
【請求項5】
がカルボニル配位子である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレニウム錯体化合物。
【請求項6】
最大発光波長が500nm以下である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のレニウム錯体化合物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のレニウム錯体化合物を含有する、有機電界発光素子用組成物。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のレニウム錯体化合物を含有する、有機電界発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−231008(P2007−231008A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22885(P2007−22885)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】