説明

レバースイッチ装置

【課題】温度、経年変化等に起因するセンサの特性変化の影響を排除できるようにしたレバースイッチ装置を提供する。
【解決手段】レバースイッチ装置は、レバーユニット本体、このレバーユニット本体にx軸、y軸方向に回動可能に設けられた操作レバー、その自由端に設けられたロータリーノブ及び操作レバーの端部に設けられたスイッチからなり、レバーユニット本体には検出機構が内蔵されている。検出機構は複数の磁気センサから構成されており、上記レバー及びノブの各操作方向及び各変化量に応じた出力電圧を出力する。この出力電圧に対し、車両制御装置は、検出機構から上記レバー及びノブが非操作時にあるときの出力電圧を所定のタイミングで取り込んで、これを補正値Vcとし、このVcを、それ以降に上記レバー及びノブを操作した際に検出機構から取り込んだ出力電圧に対する零レベルの基準値にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の手によって操作される操作レバー等の操作状態に応じた電圧を出力するセンサを備えたレバースイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、運転者の操作に応じてヘッドライトのオン/オフ、ターンシグナルランプのオン/オフ等を手動で制御するレバースイッチ装置がステアリングの近傍に設けられている。
【0003】
このようなレバースイッチ装置として、車両に固定されるレバーユニット本体と、このレバーユニット本体に片持ち支持されて車載装置の制御に供される操作レバーと、操作レバーの長手方向の中心軸を中心に回動可能にして操作レバーの先端部に設けられたロータリーノブと、操作レバーの回動及びロータリーノブの回動を検出するための検出部とを備えた無接点構造のレバースイッチ装置がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
上記検出部は、操作レバーの回動及びロータリーノブの回動に応じて回動する複数の磁石と、各磁石の磁界強度を検出すると共に検出された磁界強度に応じた電圧を出力する複数のホールセンサ(以下、センサという)からなる。運転者により操作レバーやロータリーノブが操作されると、その操作位置が複数のセンサから出力される電圧の値に基づいて検出され、その検出結果に基づいて車両のヘッドライト、ターンシグナルランプ等の点/消灯等の制御が可能になる。
【特許文献1】特開2000−208003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のレバースイッチ装置によると、センサが温度や経年変化のために特性が変化しやすい。また、センサの取り付け不良等によりオフセットが生じ、特性が変化する場合もある。特性変化が生じると、センサ出力が設定してある閾値を超えることができなくなり、或いは閾値を小さくしたのと同じ状態が生じる。この結果、操作レバーやロータリーノブを操作していないにもかかわらず、ヘッドライトやターンシグナルランプが点灯したり、動作すべき時に動作しない等の誤動作を招く可能性がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、温度、経年変化等に起因するセンサの特性変化の影響を排除できるようにしたレバースイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、以下のレバースイッチの出力補正方法を提供する。
[1]一端を2軸方向に回動可能な操作レバーと、前記操作レバーの前記一端に設けられて前記操作レバーとは異なる操作方法で操作される操作部と、前記操作レバー及び前記操作部の各操作方向及び各変化量に応じた電気信号を出力する検出機構と、人の手が前記操作部又は前記操作レバーの前記一端に接触または接近したことを検出するタッチセンサと、前記タッチセンサが検出信号を発生したときに前記操作レバー及び前記操作部の出力電圧を取り込み、この出力電圧を以降の前記操作レバー又は前記操作部の操作に対して前記検出機構から取り込んだ出力電圧に対する零レベルの基準設定に用いる演算部と、を備えることを特徴とするレバースイッチ装置。
【0008】
[2]前記操作部は、ロータリーノブまたは押しボタン式のスイッチであることを特徴とする上記[1]に記載のレバースイッチ装置であってもよい。
【0009】
[3]前記演算部は、前記基準設定の補正がなされた出力電圧に対し、閾値を設定することを特徴とする上記[1]に記載のレバースイッチ装置であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のレバースイッチ装置によれば、温度、経年変化等に起因するセンサの特性変化の影響を排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係るレバースイッチ装置を適用した車両の車室内を示す図である。図1に示すように、車両100の運転席には、ステアリング120が設置されており、そのステアリングコラム130にはレバースイッチ装置1が設置されている。
【0012】
(レバースイッチ装置の構成)
図2は、本発明の実施の形態に係るレバースイッチ装置を示す斜視図である。レバースイッチ装置1は、図1に示したステアリングコラム130に固定されるレバーユニット本体10と、このレバーユニット本体10に片持ち支持されてヘッドライト、各種ランプ等の車載装置のスイッチング操作に供される操作レバー11とを備えて構成されている。
【0013】
レバーユニット本体10は、上下に2分割できる構造であり、箱形に形成されたアッパケース110と、アッパケース110に下側から取り付けられるロアケース111とからなる。
【0014】
操作レバー11は、運転者による操作力が付与されることにより、レバーユニット本体10に支持された部分を基端として図2のx1,x2方向及びy1,y2方向に回動するように構成されている。そして、操作レバー11がx1,x2方向へ回動すると、この回動に対応して左右のターンシグナルランプの制御が行え、操作レバー11がy1,y2方向へ回動すると、これに対応してヘッドライトのパッシング(ハイビームとロービームの切り換え)行えるようになっている。
【0015】
更に、操作レバー11は、その先端部に、ロータリーノブ(操作部)12と、プッシュボタン式のスイッチ(操作部)13と、ロータリーノブ12の内部または操作レバー11の先端部に設けられた静電容量方式のタッチセンサ14とを備えている。また、操作レバー11には、後述する検出機構20が下端部(基端)に設けられている。
【0016】
ロータリーノブ12は、例えば、スモールライトの点灯、スモールライトとヘッドライトの同時点灯等を行うためのスイッチであり、操作レバー11の長手方向の中心軸mを中心にして図2に示すa1,a2方向へ回動できると共に複数箇所に停止位置(スイッチ位置)を有している。
【0017】
スイッチ13は、可動部が図2に示すz方向(操作レバー11の軸方向)に動く押しボタン型のスイッチであり、例えば、ウォッシャー液をヘッドランプに噴射させるために設けられている。このスイッチ13は、操作レバー11の長手方向の中心軸mに合わせ、かつ、ロータリーノブ12から突出するようにして操作レバー11の先端部に取り付けられている。
【0018】
タッチセンサ14は、導電体による平板状の電極(図示せず)であり、この電極が信号処理回路(図示せず)を介して後述する制御系に接続されており、人の手が電極に接近したときに電極とアース(車両100のボディ)との間の静電容量が増えることを利用してスイッチ動作をさせる構成になっている。従って、電極は、アースから電気的に絶縁された状態にして、かつ、人の手の接近によって静電容量が変化し易い位置に設けられている。なお、タッチセンサ14は、静電容量方式以外の構成のセンサ、例えば、人の手の表面に光を照射し、その反射光を検出する光センサであってもよい。
【0019】
(検出機構の構成)
図3は、本発明の実施の形態に係るレバースイッチ装置の操作レバーに設けられた検出機構を示し、(a)は全体を示す斜視図、(b)は(a)に示す第1の磁石の外観図、(c)は(a)に示す第2の磁石の外観図、図4は、図3(a)の検出機構を正面から見た図である。
【0020】
検出機構20は、操作レバー11の中立位置からの傾き状態及びスイッチ13の操作状態に応じて変位する第1の磁石21と、第1の磁石21に対して所定の空間をもって配設された基板22と、第1の磁石21に対面すると共に所定の空間が生じるようにして基板22の一方の面(図3(a)の上面)に十字形に取り付けられた4つのGMR(巨大磁気抵抗効果)センサ23A〜23Dと、基板22の他方の面(図3(a)の下面)に取り付けられたMR(磁気抵抗効果)センサ24と、MRセンサ24に対向させて設置されると共にロータリーノブ12の回転軸(図示せず)と共に回転する第2の磁石25とを備えて構成されている。
【0021】
第1の磁石21は、図3(b)に示すように、上側がS極、下側(基板22側)がN極の円柱状の永久磁石である。この第1の磁石21は、操作レバー11のx軸方向、あるいはy軸方向への操作に伴って、操作レバー11の回転軸と共にx軸或いはy軸方向へ回動し、且つ、スイッチ13の押し操作に伴ってz方向への移動が可能なようにしてレバーユニット本体10に取り付けられている。
【0022】
基板22は、第1の基板22a、第2の基板22b及び磁気シールド部材22cからなる3層構造を有し、操作レバー11の固定側の端部に取り付けられている。
【0023】
第1の基板22aは、第1の磁石21に対向する側に設けられ、第2の基板22bは、第2の磁石25に対向する側に設けられている。また、磁気シールド部材22cは、電磁鋼板等からなり、第1の磁石21から発せられる磁場と第2の磁石25から発せられる磁場との干渉の抑制を目的として、第1の基板22aと第2の基板22bとの間に設けられている。
【0024】
GMRセンサ23A〜23Dは、第1の磁石21の磁界の強さに応じた電圧を出力するもので、操作レバー11が中立位置にあるときの第1の磁石21の位置を中心として、GMRセンサ23A,23Bがx軸方向に沿って点対称に配置され、また、GMRセンサ23C,23Dがy軸方向に沿って点対称に配置されている。
【0025】
MRセンサ24は、第2の磁石25の磁界の向きに応じた電圧を出力すると共に、GMRセンサ23A〜23Dの十字形の中心部に位置するように配設されている。
【0026】
第2の磁石25は、図3(c)に示すように、z軸方向にS極、N極の順に磁極を有する部分と、同じくz軸方向にN極、S極の順に磁極を有する部分とが2枚重ねに接合され、全体が1つの円柱状の永久磁石になっている。そして、第2の磁石25は、MRセンサ24に対して空隙が生じるように配設されている。
【0027】
(車両制御装置の構成)
図5は、本発明の実施の形態に係るレバースイッチ装置が備える車両制御装置の接続図である。この車両制御装置(演算部)400は、基板22に実装されたLSI、1チップCPU等であるが、例えば、車両100の全体を制御するECU(電子制御ユニット)に車両制御装置400の機能を持たせることもできる。
【0028】
車両制御装置400には、上記したタッチセンサ14、GMRセンサ23A〜23D及びMRセンサ24が接続されると共に、ヘッドライト410、スモールライト411、フォグランプ412、車両左側のターンシグナルランプ413、車両右側のターンシグナルランプ414及びディマースイッチ415が接続されている。なお、車両制御装置400は、プログラム、データ、処理結果等を保存するメモリ401を有している。
【0029】
車両制御装置400は、GMRセンサ23A〜23D及びMRセンサ24のそれぞれの出力電圧Vx1,Vx2,Vy1,Vy2,Vaに基づいて、メモリ401に格納されたプログラムに従ってヘッドライト410、スモールライト411、フォグランプ412、車両左側のターンシグナルランプ413、車両右側のターンシグナルランプ414及びディマースイッチ415をオン/オフ制御する回路構成になっている。
【0030】
(検出機構のセンサの特性変化)
図6は、検出機構のセンサの特性が温度や経年変化により変化した様子を示す図である。なお、図6において、縦軸は出力電圧、横軸は第1,第2の磁石21,25とこれらに対応するセンサとの間の距離dである。
【0031】
検出機構20のGMRセンサ23A〜23D及びMRセンサ24は、図6に示す特性aのように、操作レバー11やロータリーノブ12を操作していないときの出力電圧が、零レベルにあることが望ましい。しかし、温度、経年変化、オフセット等により、図6に示す特性b,cのように、零レベルが縦軸のマイナス側やプラス側に移動し、特性bでは−v1の出力電圧が発生し、特性cでは+v2の出力電圧が発生している。
【0032】
この出力電圧(−v1),(+v2)が予め設定した閾値を超えるレベルであった場合、実際には、操作レバー11やロータリーノブ12を操作していないにも関わらず、車両制御装置400がGMRセンサ23A〜23DやMRセンサ24に閾値以上の出力電圧が生じたと判定し、ヘッドライト410、スモールライト411、フォグランプ412、車両左側のターンシグナルランプ413、車両右側のターンシグナルランプ414、及びディマースイッチ415を制御してしまう可能性がある。このような誤制御は、交通事故の原因になる可能性がある。また、特性aが特性b,cのようになると、GMRセンサ23A〜23DやMRセンサ24の出力電圧が、+側または−側のいずれかに偏るため、動作不良の原因になる。
【0033】
そのため、GMRセンサ23A〜23D及びMRセンサ24は、特性aの状態を長時間にわたって維持されることが望ましい。しかし、GMRセンサ23A〜23D及びMRセンサ24を、温度や経年変化の影響を受けないようにすることは難しい。特に、車両100は屋外で使用される自動車であるため、温度差が大きくなり、影響を回避することはできない。そこで、本実施の形態では、温度や経年変化の影響を容認し、車両制御装置400によって、特性b,cが現実の特性であっても、特性aのように補正する処理を行い、温度や経年変化の影響を低減できるようにしている。以下、本発明の実施の形態に係るレバースイッチ装置1の動作について説明する。
【0034】
(レバースイッチ装置の動作及び補正処理)
図7は、本発明の実施の形態に係るレバースイッチ装置を示すフローチャートである。図7に示す処理は、図5に示す車両制御装置400によって実行される。まず、車両制御装置400は、ステアリングコラム130に設けられているキースイッチ(図示せず)が「ACC」、「ON」、「START」等のポジションにあって、図5に示す制御系に電源供給が行われている状態か否かを判定する(S71)。
【0035】
車両制御装置400は、電源供給が行われていることを判定すると(S71:Yes)、タッチセンサ14が検知信号を出力している(=タッチセンサON)か否か、即ち、運転者の手がロータリーノブ12に触れ、或いはタッチセンサ14の感知範囲内に接近したか否かを判定する(S72)。
【0036】
車両制御装置400は、タッチセンサ14がONの場合(S72:Yes)、GMRセンサ23A〜23D及びMRセンサ24の初期状態又は未操作状態における各出力電圧を取り込み(S73)、これを車両制御装置400のメモリ401に補正値Vcとして保存する(S74)。各出力電圧を取り込みの際、運転者の手がロータリーノブ12に触れた直後に回動操作が行われる可能性があるが、その時点では、操作レバー11、ロータリーノブ12及びスイッチ13の初期状態又は未操作状態における出力電圧の取り込みは終了している。
【0037】
その後、運転者がレバースイッチ装置1、ロータリーノブ12又はスイッチ13を操作すると、GMRセンサ23A〜23D、MRセンサ24及びスイッチ13の1つ以上から出力電圧が発生し、これが車両制御装置400に取り込まれる(S75)。なお、ステップS75で検出機構20からの出力電圧が無かったとき、処理は、ステップS72に戻され、以降の処理が再度実行される。
【0038】
車両制御装置400は、ステップS75で取り込んだ出力電圧に対し、ステップS74でメモリ401に保存した補正値Vcをメモリ401から読み出して加減算する(S76)。図6の場合、補正値Vcは、特性bでは+v1(V)であり、特性cでは−v2(V)である。補正値Vcに基づく処理により、図6に示す特性b,cは、特性aと同等になる。この補正値Vcは、GMRセンサ23A〜23D、MRセンサ24で個別に設定されるので、全体では5種となる。これらの補正値Vcは、タッチセンサ14がONになる毎に更新され、これに伴ってメモリ401の補正値データが更新される。
【0039】
ステップS75で取り込んだ出力電圧Vx1,Vx2,Vy1,Vy2,Vaに対し、ステップS76による補正後の出力電圧は、(Vx1±Vc)、(Vx2±Vc)、(Vy1±Vc)、(Vy2±Vc)、(Va±Vc)となり、各出力電圧は、補正値Vcによって零レベルの基準設定がなされたことになる。これらについては、以後、(Vx1±Vc)をVx01、(Vx2±Vc)をVx02、(Vy1±Vc)をVy01、(Vy2±Vc)をVy02、(Va±Vc)をVacとする。
【0040】
更に、車両制御装置400は、外来ノイズ等の影響を排除するため、上記補正後の出力電圧に閾値Vsを設定する(S76)。後述するように、実際には、GMRセンサ23A,23Bの差分値Vxd(=Vx01−Vx02)、GMRセンサ23C,23Dの差分値Vyd(=Vy01−Vy02)に基づいて車両制御装置400が制御を実行するので、閾値Vsは、差分値Vxd,Vydに対してVs、Vsが設定される。また、MRセンサ24の補正後の出力電圧Vacに対しては、閾値Vsが設定される。
【0041】
ステップS76の補正処理が完了すると、車両制御装置400は、ステップS76で補正した出力電圧、(Vxd>Vs)、(Vyd>Vs)、(Vac>Vs)に基づいて、ヘッドライト410、スモールライト411、フォグランプ412、車両左側のターンシグナルランプ413、車両右側のターンシグナルランプ414及びディマースイッチ415の点/消灯制御を実行する(S77)。
【0042】
一方、ステップS72においてタッチセンサ14が検知信号を出力していない状態(=タッチセンサOFF)であった場合(S72:No)、車両制御装置400は、GMRセンサ23A〜23D及びMRセンサ24の各出力電圧を取り込み(S75)、ステップS74でメモリ401に保存した前回の補正値Vcをメモリ401から読み出し、この補正値VcをステップS75で取り込んだ出力電圧に加減算する(S76)。この後、車両制御装置400は、ステップS76で求めた出力電圧に基づいて、ステップS77の処理を上記した様にして実行する。
【0043】
車両制御装置400は、ステップS77の制御を実行した後、或いは制御を実行中であっても所定時間毎に電源OFFの有無を判定し(S78)、電源OFFが判定された場合(S78:Yes)、全ての処理を終了する。また、電源ONの継続が判定された場合(S78:No)、処理はステップS72に戻され、以降の処理が上記した様にして実行される。
【0044】
(操作レバーの操作及び検出機構の動作)
次に、操作レバー11の操作及びこの操作に対応した検出機構20の動作を説明する。まず、運転者によって、操作レバー11に対し、中立位置から図2に示すx1方向又はx2方向に操作力が付与されることにより所定角度まで回動すると、操作レバー11はその位置で保持される。このとき、第1の磁石21は、操作レバー11の回動に応じてGMRセンサ23A,23Bとの間の距離が変化し、これに伴ってGMRセンサ23A,23Bの出力電圧Vx1,Vx2の大きさが変化する。また、GMRセンサ23A,23Bの出力電圧Vx1,Vx2は、スイッチ13の操作に伴う第1の磁石21のz1,z2方向の位置変化に対しても変化する。
【0045】
GMRセンサ23Aの出力電圧Vx1は、第1の磁石21がGMRセンサ23Aに接近するほどGMRセンサ23Aで検出される磁界強度が大きくなり、従って出力電圧Vx1が大きくなる。また、GMRセンサ23Bの出力電圧Vx2は、第1の磁石21が近づくほどGMRセンサ23Bで検出される磁界強度が小さくなり、従って出力電圧Vx2が小さくなる。すなわち、GMRセンサ23A,23Bの出力電圧Vx1,Vx2は、増減の傾向が互いに正反対の性質を有している。
【0046】
そこで、車両制御装置400は、GMRセンサ23A,23Bの補正値Vcで補正された出力電圧Vx01,Vx02の差分値Vxd(=Vx01−Vx02)を算出し、出力電圧Vx01,Vx02の増減分が共に反映される値、すなわちGMRセンサ23A,23Bの一方のみで得られる出力電圧よりも変化量の大きい値、換言すれば検出レンジの広い値を得るようにしている。そして、この出力電圧の差分値Vxdに基づいて第1の磁石21のx1,x2方向の位置、換言すれば操作レバー11の中心軸mのx1,x2方向の位置を検出している。
【0047】
次に、操作レバー11が、運転者によって中立位置から図2に示すy1方向に回動された場合、その方向の所定の位置まで回動するが、操作レバー11への操作力が除かれると、中立位置へ自動復帰する。一方、操作レバー11が中立位置からy2方向に回動された場合、操作レバー11はその位置で保持される。すなわち、操作レバー11のy1,y2方向への位置に応じて第1の磁石21とGMRセンサ23C,23Dとの間の距離が変化し、これに伴ってGMRセンサ23C,23Dの出力電圧Vy1,Vy2の大きさが変化する。
【0048】
そこで、車両制御装置400は、上記したx1,x2方向の処理と同様に、操作レバー11のy1,y2方向の位置検出値を補正値VcによりステップS76で補正した出力電圧Vy01,Vy02の差分値Vyd(=Vy01−Vy02)を算出し、出力電圧Vy01,Vy02の増減分が共に反映される値、即ち、GMRセンサ23C,23Dの一方のみで得られる出力電圧よりも変化量の大きい値、換言すれば検出レンジの広い値を得るようにしている。
【0049】
(ロータリーノブによる検出機構の動作)
次に、運転者によって、ロータリーノブ12がa1方向に回転された場合、所定位置まで回転させると、その位置で保持される。この位置から更にロータリーノブ12がa1方向に段階的に回動されると、ロータリーノブ12は第2,第3の位置で保持される。逆に、ロータリーノブ12をa2方向に回転すると、第3、第2、第1の順で各位置で保持される。このようなロータリーノブ12の回転に従って第2の磁石25が回動し、これに伴ってMRセンサ24の出力電圧Vaが変化する。MRセンサ24の出力電圧Vaは、ロータリーノブ12の初期位置からの回転角が増えるほど大きくなる。従って、出力電圧Vaの変化からロータリーノブ12の回転に応じたスイッチ出力を得ることができる。
【0050】
(実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)検出機構20のGMRセンサ23A〜23D、MRセンサ24の出力電圧をタッチセンサ14が検知したタイミング(タッチセンサON)で取り込み、その出力電圧の状態から出力特性を補正するようにしたため、温度、経年変化等による特性変化の影響を排除することができる。特に、温度差が顕著な自動車に設置された場合でも、影響を受けることがないので、信頼性を向上させることができる。
(2)検出機構20をGMRセンサ23A〜23Dと第1の磁石21と組み合わせ、MRセンサ24と第2の磁石25との組み合わせにして出力を生成しているため、レバースイッチ装置1の無接点化が図れる結果、導通不良は生じず、塵・埃や汚れの影響を受け難くなるため、レバースイッチ装置1の信頼性を向上させることができる。
(3)GMRセンサ23A〜23D、MRセンサ24の補正は、車両制御装置400がソフトウェアにより行えるため、レバースイッチ装置1のコストアップを防止することができる。
【0051】
また、検出機構20を構成するセンサは、GMRセンサ23A〜23D及びMRセンサ24であるとしたが、他のセンサ、例えば、ホールセンサ(ホール素子)であってもよい。また、図6に示した特性は、一例にすぎず、センサの種類、センサ数、検出回路の構成等に応じて異なる場合があるが、本発明は、温度、経年変化等により、特性が変化するセンサに広く適用可能である。
【0052】
また、本発明は操作時にレバーが元の位置に自動復帰されるレバーにおいても適用が可能である。
【0053】
更に、上記ステップS73〜S76に示した補正処理は、ソフトウェアによらず、専用の処理回路(例えば、LSI)を構築し、ハードウェア的に行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るレバースイッチ装置を適用した車両の車室内を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るレバースイッチ装置を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係るレバースイッチ装置の操作レバーに設けられた検出機構を示し、(a)は全体を示す斜視図、(b)は(a)に示す第1の磁石の外観図、(c)は(a)に示す第2の磁石の外観図である。
【図4】図4は、図3(a)の検出機構を正面から見た図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係るレバースイッチ装置が備える車両制御装置の接続図である。
【図6】図6は、検出機構のセンサの特性が温度や経年変化により変化した様子を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係るレバースイッチ装置を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 レバースイッチ装置、10 レバーユニット本体、11 操作レバー、12 ロータリーノブ、13 スイッチ、14 タッチセンサ、20 検出機構、21 第1の磁石、22 基板、22a 第1の基板、22b 第2の基板、22c 磁気シールド部材、23A〜23D GMRセンサ、24 MRセンサ、25 第2の磁石、100 車両、110 アッパケース、111 ロアケース、120 ステアリング、130 ステアリングコラム、400 車両制御装置、401 メモリ、410 ヘッドライト、411 スモールライト、412 フォグランプ、413,414 ターンシグナルランプ、415 ディマースイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を2軸方向に回動可能な操作レバーと、
前記操作レバーの前記一端に設けられて前記操作レバーとは異なる操作方法で操作される操作部と、
前記操作レバー及び前記操作部の各操作方向及び各変化量に応じた電気信号を出力する検出機構と、
人の手が前記操作部又は前記操作レバーの前記一端に接触または接近したことを検出するタッチセンサと、
前記タッチセンサが検出信号を発生したときに前記操作レバー及び前記操作部の出力電圧を取り込み、この出力電圧を以降の前記操作レバー又は前記操作部の操作に対して前記検出機構から取り込んだ出力電圧に対する零レベルの基準設定に用いる演算部と、
を備えることを特徴とするレバースイッチ装置。
【請求項2】
前記操作部は、ロータリーノブまたは押しボタン式のスイッチであることを特徴とする請求項1に記載のレバースイッチ装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記基準設定の補正がなされた出力電圧に対し、閾値を設定することを特徴とする請求項1に記載のレバースイッチ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−15880(P2010−15880A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175885(P2008−175885)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】