説明

レバー式コネクタ

【課題】コネクタ及び成形金型の構造の複雑化を招くことなく、レバーのガタつきを防止することができるレバー式コネクタを提供すること。
【解決手段】嵌合操作レバー51が嵌合完了位置に移動したときに、嵌合操作レバー51の回転操作部52に係合して嵌合操作レバー51を嵌合完了位置にロックするロック部61は、ハウジング本体41の外周面上から到達位置側に延出した弾性アーム部62と、弾性アーム部62に一体形成されて回転操作部52との係合により回転操作部52の移動を規制する係合部63と、を備え、弾性アーム部62は、係合部63に回転操作部52が係合したとき弾性アーム部62が撓み変形して、係合部63と前記回転操作部52とが圧接状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバー式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図9及び図10は、従来のレバー式コネクタを示したものである。
このレバー式コネクタ1は、下記特許文献1に開示されたものである。
このレバー式コネクタ1は、相手のコネクタハウジング2(図10参照)に嵌合接続させるハウジング本体3と、このハウジング本体3の両外側面に回動可能に取り付けられる嵌合操作レバー5と、ハウジング本体3に一体形成されたロック部7とを備えている。
【0003】
嵌合操作レバー5は、ハウジング本体3の幅方向(図9の矢印X1方向)に延在する回転操作部11と、この回転操作部11の両端から延出する一対のレバー本体12と、を備える。一対のレバー本体12は、ハウジング本体3の両外側面に突設されたレバー結合ピン14との嵌合により、ハウジング本体3の両側面に回動可能に連結される。この嵌合操作レバー5は、嵌合開始位置(図9に示した位置)から嵌合完了位置(図10に示した位置)まで、回動操作可能である。
【0004】
レバー本体12には、相手のコネクタハウジング2の両外側面に突設された連結用ボス16が進入可能なカム溝17が切り欠き形成されている。カム溝17は、嵌合操作レバー5が図9に示した嵌合開始位置にあるとき、該カム溝17の始端に連結用ボス16が進入し、更に、嵌合操作レバー5が図10に示した嵌合完了位置に回動操作されると、嵌合操作レバー5の回動に伴って、連結用ボス16をカム溝17の終端に引き込むように、形成されている。
【0005】
ロック部7は、ハウジング本体3の後端側上面に突設されている。このロック部7は、回転操作部11の中央部に形成された係合部18に係合する係止部7aを有している。ロック部7は、嵌合操作レバー5が嵌合完了位置に移動したときに、回転操作部11の係合部18を係止部7aにより係止して、嵌合操作レバー5を嵌合完了位置にロックする。
【0006】
特許文献1のレバー式コネクタ1の場合、ロック部7は嵌合操作レバー5を完全に固定するものではなく、嵌合操作レバー5の多少のガタつきは許容する。そこで、外部振動の影響で嵌合操作レバー5がガタ付くことを防止するために、ガタつき防止構造として、ガタ防止用隆起部19と、ガタ防止用筒部20とを装備している。
【0007】
ガタ防止用隆起部19は、回転操作部11において、係合部18の両側の平坦部に隆起形成されている。このガタ防止用隆起部19は、回転操作部11がロック部7に係止された際に、ロック部7の対向面に突き当たることで、ガタつきを防止する。
【0008】
ガタ防止用筒部20は、レバー本体12のレバー結合ピン14に嵌合する筒状部分で、レバー結合ピン14との接触長を増やすことで、ガタつきを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−36927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1のレバー式コネクタ1の場合は、嵌合操作レバー5のガタつきを防止するために、ロック構造とは別に、ガタ防止用隆起部19やガタ防止用筒部20などの専用のガタつき防止構造を装備していて、コネクタ及び成形金型の構造の複雑化を招くという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、コネクタ及び成形金型の構造の複雑化を招くことなく、レバーのガタつきを防止することができるレバー式コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1) 相手のコネクタハウジングに嵌合接続させるハウジング本体と、
前記ハウジング本体の幅方向に延在する回転操作部の両端から延出するレバー本体が前記ハウジング本体の両外側面に回動可能に連結されて嵌合開始位置から嵌合完了位置まで回動操作可能な嵌合操作レバーと、
前記ハウジング本体に突設されて前記嵌合操作レバーが嵌合完了位置に移動したときに前記回転操作部と係合して前記嵌合操作レバーを固定するロック部と、
を備え、
前記嵌合操作レバーを前記嵌合開始位置から嵌合完了位置まで回動させる操作で、前記ハウジング本体と相手のコネクタハウジングとを嵌合接続可能なレバー式コネクタであって、
前記ロック部は、前記嵌合操作レバーが前記嵌合完了位置に移動したときに前記回転操作部が到達する到達位置から離れた前記ハウジング本体の外周面上から立ち上がって前記到達位置側に延出した弾性アーム部と、前記弾性アーム部に一体形成されて前記到達位置に移動した前記回転操作部と係合して該回転操作部の移動を規制する係合部と、を備え、
且つ、前記弾性アーム部は、前記係合部に前記回転操作部が係合したときに撓み変形して前記係合部と前記回転操作部とが圧接状態となるように、初期形状が設定されていることを特徴とするレバー式コネクタ。
【0013】
上記(1)の構成によれば、ハウジング本体に対して相手のコネクタハウジングを嵌合開始位置に位置合わせして、嵌合操作レバーを嵌合開始位置から嵌合完了位置まで回動させると、ハウジング相互の嵌合が完了する。そして、嵌合完了位置に移動した嵌合操作レバーは、回転操作部がロック部の係合部に係合して、ロックされる。
【0014】
そして、嵌合操作レバーの回転操作部がロック部の係合部に係合するとき、係合部を支持している弾性アーム部が撓み変形して、係合部と回転操作部とが圧接状態になる。
【0015】
そのため、回転操作部がロック部にロックされた状態では、嵌合操作レバーのガタつきが防止され、ロック部とは別に、ガタつき防止構造を設ける必要がなくなる。
【0016】
従って、コネクタ及び成形金型の構造の複雑化を招くことなく、レバーのガタつきを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるレバー式コネクタによれば、嵌合操作レバーが嵌合完了位置に移動して、嵌合操作レバーの回転操作部がロック部の係合部にロックされるとき、係合部を支持している弾性アーム部が撓み変形して、係合部と回転操作部とが圧接状態になる。
【0018】
そのため、回転操作部がロック部にロックされた状態では、嵌合操作レバーのガタつきが防止され、ロック部とは別に、ガタつき防止構造を設ける必要がなくなる。
【0019】
従って、コネクタ及び成形金型の構造の複雑化を招くことなく、レバーのガタつきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態のレバー式コネクタにおいて、嵌合操作レバーが嵌合開始位置にある状態の縦断面図である。
【図2】図1の嵌合操作レバーが嵌合完了位置に移動したときに、嵌合操作レバーの回転操作部をロックするロック部の拡大図である。
【図3】図1のレバー式コネクタにおいて、嵌合操作レバーが嵌合完了位置に移動して、嵌合操作レバーがロック部にロックされた状態の縦断面図である。
【図4】図1に示したロック部の初期形状の説明図である。
【図5】ロック部の係合部が嵌合操作レバーの回転操作部に係合したときに、係合部と回転操作部とが圧接状態にはならない従来設計によるロック部を備えたレバー式コネクタの縦断面図である。
【図6】図5に示したレバー式コネクタの回転操作レバーがハウジング本体上のロック部によりロックされた状態の縦断面図である。
【図7】図6のB部の拡大図である。
【図8】図3に示したロック部と回転操作部との圧接状態の説明図である。
【図9】従来のレバー式コネクタの斜視図である。
【図10】図9のコネクタが相手コネクタハウジングに嵌合完了した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るレバー式コネクタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1〜図4は本発明に係るレバー式コネクタの一実施形態を示したもので、図1は本発明の一実施形態のレバー式コネクタにおいて、嵌合操作レバーが嵌合開始位置にある状態の縦断面図、図2は図1の嵌合操作レバーが嵌合完了位置に移動したときに、嵌合操作レバーの回転操作部をロックするロック部の拡大図、図3は図1のレバー式コネクタにおいて、嵌合操作レバーが嵌合完了位置に移動して、嵌合操作レバーがロック部にロックされた状態の縦断面図、図4は図1に示したロック部の初期形状の説明図である。
【0023】
この一実施形態のレバー式コネクタ31は、不図示の相手のコネクタハウジングに嵌合接続させるハウジング本体41と、該ハウジング本体41に回動可能に取り付けられる嵌合操作レバー51と、前記ハウジング本体41に一体形成されるロック部61と、を備える。
【0024】
ハウジング本体41は、樹脂成形品で、両外側面に、嵌合操作レバー51を回動自在に連結するレバー結合ピン42が装備されている。また、図示はしていないが、相手のコネクタハウジング内の接続端子に接続する接続端子を収容している。
【0025】
嵌合操作レバー51は、ハウジング本体41の幅方向(図1では、紙面に直交する方向)に延在する回転操作部52と、この回転操作部52の両端から互いに平行に延出する一対のレバー本体53と、を備える。嵌合操作レバー51は、レバー本体53がハウジング本体41の両外側面のレバー結合ピン42に回動可能に連結されて、嵌合開始位置(図1に示した位置)から嵌合完了位置(図2に示した位置)まで回動操作可能である。
【0026】
図1に示した矢印Rは、嵌合操作レバー51を嵌合開始位置から嵌合完了位置に移動させるときの回動方向である。
【0027】
図示はしていないが、嵌合操作レバー51の一対のレバー本体53には、相手のコネクタハウジングの両外側面に突設された連結用ボスが進入可能なカム溝が切り欠き形成されている。前記カム溝は、嵌合操作レバー51が図1に示した嵌合開始位置にあるとき、前記カム溝の始端に前記連結用ボスが進入し、更に、嵌合操作レバー51が図2及び図3に示した嵌合完了位置に回動操作されると、嵌合操作レバー51の回動に伴って、前記連結用ボスを前記カム溝の終端に引き込むように、形成されている。
【0028】
従って、嵌合操作レバー51を図1に示した嵌合開始位置から図2に示した嵌合完了位置まで回動させる操作で、ハウジング本体41と相手のコネクタハウジングとを嵌合接続することが可能である。
【0029】
ロック部61は、ハウジング本体41の上面41aに突設されている。このロック部61は、嵌合操作レバー51が嵌合完了位置に移動したときに、図2及び図3に示すように、嵌合操作レバー51の回転操作部52と係合して、嵌合操作レバー51を固定する。
【0030】
本実施形態の場合、ロック部61は、弾性アーム部62と、係合部63と、を備える。
【0031】
弾性アーム部62は、嵌合操作レバー51が嵌合完了位置(図2の状態)に移動したときに回転操作部52が到達する到達位置T1(図2参照)からハウジング前端側に離れたハウジング本体41の外周面上の位置T2から立ち上がって、到達位置T1側に延出している。
【0032】
係合部63は、弾性アーム部62に一体形成されている。この係合部63は、到達位置T1に移動した回転操作部52と係合して、回転操作部52の移動を規制する。
【0033】
本実施形態の場合、弾性アーム部62は、係合部63に回転操作部52が係合したときに撓み変形して、係合部63と回転操作部52とが圧接状態となるように、初期形状、及び寸法が設定されている。
【0034】
具体的には、係合部63に回転操作部52が係合したときに弾性アーム部62に撓み変形を生じさせるために、図4に示すように、回転操作部52が降下して来る方向(図4では、矢印Y1方向)に、寸法L1のオーバーラップ量が発生するように、弾性アーム部62の高さ位置を設定している。更に、弾性アーム部62は、図1に示すように、上方に凸のアーチ形状に成形している。
【0035】
従来の一般的なコネクタ設計では、図5及び図6に示すように、ハウジング本体41の上面41aに一体形成するレバー結合ピン42は、上面41aに平行な直線形状にする。また、図4に示したようなオーバーラップ量は確保しない。
【0036】
そのため、従来の一般的なコネクタ設計でロック部61を設計した場合には、嵌合操作レバー51が嵌合完了位置に到達して、回転操作部52が係合部63によりロックされるとき、ロック部61の弾性アーム部62は、撓み変形することない。そのため、図7に示すように、垂直方向(図7の上下方向)にL2、水平方向(図の左右方向)にW2のクリアランスが発生するおそれがあり、これらのクリアランスが、嵌合操作レバー51のガタつきの要因となるおそれがある。
【0037】
しかし、本実施形態の場合では、回転操作部52が係合部63によりロックされるときは、図8に示すように、弾性アーム部62の撓み変形の復元作用によって、回転操作部52には、係合部63から水平方向及び垂直方向の押圧力P1,P2が作用し、係合部63と回転操作部52とが圧接状態となり、水平方向及び垂直方向のいずれにも、クリアランスが生じない。
【0038】
以上に説明した一実施形態のレバー式コネクタ31では、ハウジング本体41に対して相手のコネクタハウジングを嵌合開始位置に位置合わせして、嵌合操作レバー51を嵌合開始位置から嵌合完了位置まで回動させると、ハウジング相互の嵌合が完了する。そして、嵌合完了位置に移動した嵌合操作レバー51は、回転操作部52がロック部61の係合部63に係合して、ロックされる。
【0039】
そして、嵌合操作レバー51の回転操作部52がロック部61の係合部63に係合するとき、係合部63を支持している弾性アーム部62が撓み変形して、係合部63と回転操作部52とが圧接状態になる。
【0040】
そのため、回転操作部52がロック部61にロックされた状態では、嵌合操作レバー51のガタつきが防止され、ロック部61とは別に、ガタつき防止構造を設ける必要がなくなる。
【0041】
従って、コネクタ及び成形金型の構造の複雑化を招くことなく、レバーのガタつきを防止することができる。
【0042】
なお、本発明のレバー式コネクタ31は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。また、ハウジング本体41に装備するロック部61や嵌合操作レバー51の形状、寸法、形態、配置箇所等は、本発明の目的を達成できるものであれば、任意であり、前述した各実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0043】
31 レバー式コネクタ
41 ハウジング本体
42 レバー結合ピン
51 嵌合操作レバー
52 回転操作部
53 レバー本体
61 ロック部
62 弾性アーム部
63 係合部
L1 オーバーラップ量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手のコネクタハウジングに嵌合接続させるハウジング本体と、
前記ハウジング本体の幅方向に延在する回転操作部の両端から延出するレバー本体が前記ハウジング本体の両外側面に回動可能に連結されて嵌合開始位置から嵌合完了位置まで回動操作可能な嵌合操作レバーと、
前記ハウジング本体に突設されて前記嵌合操作レバーが嵌合完了位置に移動したときに前記回転操作部と係合して前記嵌合操作レバーを固定するロック部と、
を備え、
前記嵌合操作レバーを前記嵌合開始位置から嵌合完了位置まで回動させる操作で、前記ハウジング本体と相手のコネクタハウジングとを嵌合接続可能なレバー式コネクタであって、
前記ロック部は、前記嵌合操作レバーが前記嵌合完了位置に移動したときに前記回転操作部が到達する到達位置から離れた前記ハウジング本体の外周面上から立ち上がって前記到達位置側に延出した弾性アーム部と、前記弾性アーム部に一体形成されて前記到達位置に移動した前記回転操作部と係合して該回転操作部の移動を規制する係合部と、を備え、
且つ、前記弾性アーム部は、前記係合部に前記回転操作部が係合したときに撓み変形して前記係合部と前記回転操作部とが圧接状態となるように、初期形状が設定されていることを特徴とするレバー式コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−69415(P2012−69415A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214082(P2010−214082)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】