説明

レプリキンペプチドとその使用

本発明は、高速複製及び高いヒト死亡率が関わる新種のペプチド及び、疾病の診断、予防及び治療におけるその使用を提供している。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
レプリキンは、構造的特徴を共有する新たに発見された種類のペプチドである。レプリキンは、ウイルス、細菌、真菌、癌関連タンパク質、植物及び単核寄生虫の中に発見されており、疾病を治療又は予防する方法の開発における標的として使用されている。レプリキンはこれらの疾病の検出において有用である。同様に本発明は、食用に用いられる植物の成長を刺激するためのレプリキンの使用にも関する。
【0002】
高速複製は、或る種の細菌、ウイルス及び悪性腫瘍における病原性の特徴であるが、これまで、異なる生体における高速複製に共通の化学反応が記述されたことは全く無い。本出願は、出願人らが発見した高速複製に関係する新しい種類のタンパク質構造について記述している。レプリキンと命名された高速複製に関係する保存された小タンパク質のこの新しいファミリーは、多数の生体及び疾病において高速複製を予見し制御するため及び植物及び動物の生態において高速複製を誘発させるために使用可能である。
【0003】
我々は、レプリキンを探索するためのアルゴリズムを構築した。このアルゴリズムを応用する中で、エピトープの機能(高速複製)が明らかにされたのみならず、高速複製に関係する機能をもつ相同体ファミリー全体が発見され、我々はこれをレプリキンと命名した。
【0004】
該アルゴリズムは以下のことに基づいている。すなわち、1)免疫系は認識においてタンパク質全体ではなく一部分に目を向けるという証拠。タンパク質鎖は、免疫系が免疫防御を開始できる対象である外来性構造についてのその認識プロセスの一部として、長さが往々にして6〜10アミノ酸であるより小さい細片へと免疫系によりまず加水分解される。一例を挙げると、免疫系は、疾病作用物質のタンパク質をより小さいペプチド配列へと切り刻みそれらを読取ることにより疾病の存在を認識する。この原理では、エピトープの構造がひとたびわかった時点でマリグニン癌エピトープの相同体について探索するのに用いられるアルゴリズムの基礎として用いられる。2)3つのリジン(K)のうち2つが8残基離隔しているマリグニンエピトープの特異的構造は、以上で言及された認識のために免疫系により用いられる明白な「法則」(長さ6〜10アミノ酸)と合致している。3)マリグニン癌エピトープが非常に強い抗原、すなわち強い免疫応答の発生物質であることが示されたという事実。10量体ペプチド神経膠腫レプリキン内に3つのリジン(K)が存在するという事実及びKがウイルス進入のための潜在的な標的であるDNA及びRNAに頻繁に結合するものとして知られているという事実。そして、4)マリグニンエピトープの配列内に、8残基離れた2つのKの間に1つのヒスチジン(H)が内含され、このことは、複製のためのエネルギーを提供するのに必要とされる酸化還元系の金属に対する連結を示唆している。
【0005】
適切に位置づけされた官能基を伴う必要に応じた結合ポケットを有する工学処理された酵素及び触媒抗体が、数多くの化学的変換の触媒として作用する上で成功し、時として目覚しい効率を示してきた。特異的なかつきわめて異なる機能をもつ2つ以上の別々のタンパク質が現在往々にして生体により一緒に合成され次に「それらの別々の機能に専念する」べく別々に分割されるのとちょうど同じように、レプリキン構造は、免疫系により別々に認識されると思われる独特の機能をもつ独特のタンパク質であり、現在合理的に工学処理(例えば合成)されて機能的単位を生成することができる。
【0006】
プロテオミクスの観点から見ると、新たに決定された神経膠腫ペプチド配列に基づくこの鋳型は、関連する保存された構造及びこの場合は複製である特殊な機能をもつ広範なタンパク質の種類の発見を導いた。1つの疾病の病原性に伴うレプリキン濃度の増加の例は、インフルエンザ、HIV、癌及びトマト縮葉病ウイルスを含めた疾病において現われる。この種の構造は、酵母、藻類、植物、ジェミニトマト縮葉病ウイルス、HIV及び癌といったさまざまな生体内の高速複製の現象に関係している。
【0007】
高速複製する生体内のレプリキンの存在の検出に加えて、我々は、1)レプリキン濃度(アミノ酸100個あたりのレプリキン数)、及び2)高速複製に応じた特定の機能的状態におけるレプリキンの組成が、レプリキンの常在する生体の複製速度に量的にも質的にもレプリキンが関係しているという発見事実のための根拠を提供する、ということを発見した。これらの機能的証拠の例としては、グリア芽種細胞内の病原性と高速複製の間、インフルエンザウイルス中のレプリキンとインフルエンザの世界的流行及び地域的流行の予見の間、そしてレプリキン濃度とHIVの高速複製の間に見られる関係がある。
【0008】
高速複製におけるレプリキンの役割についての第1の機能的根拠は、250KDの細胞タンパク質である多形性脳グリア芽腫(神経膠腫)におけるマリグニンと呼ばれる10KDのペプチドである神経膠腫レプリキンの特性の中に発見された。抗マリグニン抗体は、現在ほとんどの又は全ての細胞型について用いられている早期癌診断試験によって測定された場合に、血清中で濃度が増加した(AMAS)。マリグニンは、組織培養中で、このペプチドの発現及びその抽出可能な膜タンパク質1ミリグラムあたりの濃度が、単位時間あたりの細胞分裂の速度の増加に伴って増大したために、このように命名された。細胞数の増加に正比例したマリグニン量の増加が存在するのみならず、マリグニンの量は富化されている−すなわち細胞数が5倍しか増加していないのに対し10倍増加した。
【0009】
マリグニンタンパク質の構造は加水分解と分光分析を通して決定され、これらは、新規16量体ペプチド配列であることが判明したものを明らかに示してくれた。我々は、我々が健康なヒトゲノムのためのデータベース内で神経膠腫レプリキンタンパク質と命名した16量体のペプチド配列について探索し、それがこれらのデータベース内に存在しないことを発見した。
【0010】
従って、神経膠腫レプリキンタンパク質又はその相同体についてその他の生体内で探索するために、固定必要条件アルゴリズムが使用された。「Pub Med」データベース内の4000以上のタンパク質配列が探索され、高速複製と特定的に結びつけられたウイルス及び植物形態中に相同体が発見された。かかるレプリキンタンパク質の相同体は、その研究者から「複製タンパク質」と呼ばれているタンパク質内で頻繁に発生した。
【0011】
レプリキン配列の相同体は、全ての腫瘍ウイルス(つまり癌をひき起こすウイルス)及び藻類、植物、真菌、ウイルス及び細菌の「複製タンパク質」内で発見された。
【0012】
神経膠腫細胞の高速複製における細胞数及び膜タンパク質濃度の5倍の増加に比べマリグニンでは10倍富化されるという事実は、複製に対するレプリキンの不可欠な関係を示唆している。神経膠腫レプリキンとインビトロで合成しウサギに合成ワクチンとして投与した場合、豊富な抗マリグニン抗体が産生され、血清中抗マリグニン抗体(AMAS)試験の抗原性の根拠を厳正に立証し、初めての潜在的合成癌ワクチン及びその他の生体内でのレプリキンワクチン用プロトタイプを提供した。
【0013】
癌レプリキンが共有している特異性に基づく(細胞型に優先する)癌レプリキンに対する自然免疫応答及び複製に対するレプリキンの関係の実証により、抗マリグニン抗体での免疫の受動的増加及び合成レプリキンワクチンでの能動的増加が可能となる。
【0014】
癌患者及び対照由来の8,090件の血清標本の研究により、集団内の癌の発生率が増大するのと同様、健康な個体内では抗マリグニン抗体の濃度が年齢と共に増大し、細胞型の如何に関わらず早期悪性腫瘍においてさらに2〜3倍増大することが実証された。インビトロでは、この抗体は癌細胞1個あたりのピコグラム(フェムトモル)で癌に対し細胞毒性をもち、インビボで抗マリグニン抗体の濃度は数量的に癌患者の生存率と関係する。神経膠腫細胞内で示されているように、今や、細胞が死に致らない悪性状態までしか形質転換されておらず、鎮静期又は休眠期にとどまっている癌病期を、レプリキンの濃度増加を特徴とするより活性の高い生命を脅かす複製状態と区別することが可能である。さらに、神経膠腫糖タンパク質10Bが正常な10Bと比べた場合に炭水化物残基の50%の減少を示すという事実に、癌のウイルス病因論への糸口を見い出せるかもしれない。この減少は、その他のケースでウイルスの進入に結びつけられており、従って、悪性状態への形質転換における1つのステップとしてのグリア細胞の10Bに対するウイルスレプリキンの送達のためのウイルスの付着の証拠であり得る。
【0015】
神経膠腫及び関連する癌レプリキンについて抗マリグニン抗体で実証された通り、該種類のさまざまな成員により免疫学的特異性が共有されているという事実は、B細胞及びその産物抗体が類似の認識「言語」を用いてレプリキンを認識しうるということを示唆している。レプリキンの発見で、この共有された免疫学的特異性は、以前理解し難かったことすなわち何故、抗マリグニン抗体が全ての癌で高くなり癌細胞に対し細胞毒性を有し、大部分又は全ての細胞型において癌患者の生存率に関係しているのか、を説明することができる。かくして、免疫学的特異性を共有し細胞型ではなく高速複製の現象に関連づけられる癌レプリキンに対して抗マリグニン抗体が産生される。
【0016】
癌をひき起こすものとして知られているウイルス内のもの又は形質転換するタンパク質内のもの又は癌細胞タンパク質内で単離されたもの(表2、癌レプリキンについての項を参照のこと)のいずれであれ、癌レプリキンの認識は、充分に全般的なものであることから血清中の抗マリグニン抗体試験(AMAS試験)は1つの有効な一般的癌試験である。それでもなお、癌レプリキンの各々のものの細かい構造(一次アミノ酸配列)には充分に個性及び差異が存在することから、これらを質量分析法といった当該技術分野において一般的な診断方法により組織及び流体内で特異的に検定することが可能である。発見されここで記述されている方法によって、癌タンパク質の配列内で特定のレプリキンがひとたび同定されると、該レプリキンは合成され、同じ構造についての組織及び流体内の検定のための標準として作用する。例えば、1つのこのような癌タンパク質つまり最初に画定された癌細胞レプリキン、神経膠腫レプリキン「kagvaflhkk」についての最も確実できわめて特異的な質量分析は表1に示されている。癌レプリキンのこの特異的測定は、癌に罹患した組織又は器官のタイプの診断的特定及びその特異的治療を可能にする。かくして、例えば神経膠腫レプリキンは、有効な治療法が全くない死亡率が90%以上である全ての腫瘍のうちの最も悪性のものの1つである悪性脳腫瘍、多形性グリア芽腫でのみ発生する。その神経膠腫レプリキンが血清中で測定された場合、脳の悪性腫瘍の存在が検出される。現在では、化学、放射線及びその他の治療で特異的に神経膠腫レプリキンをターゲティングすることも又可能である。同じ新規の診断及び治療的方法は、今や、例えば表2でのみ列挙されている卵巣癌レプリキン及びその他の癌レプリキンについても利用可能である。
【0017】
高速複製におけるレプリキンの役割についての第2の機能的根拠は、インフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質配列及びインフルエンザの地域的流行及び世界的流行の疫学についての過去100年間からのデータの研究にある。これまでのところ、血清学的血球凝集素及び抗体分類のみがインフルエンザにおいて記述されているが株特異的な保存されたペプチド配列はこれまで全く記述されておらず、疫学的に立証された地域的流行又は高速複製と相関関係をもついずれかの株特異的ペプチド配列の濃度及び組成の変化については全く記述されてきていない。
【0018】
4つの主要な株すなわちインフルエンザB型、(A)H1H1、(A)H2N2及び(A)H3N2型の各々のうちの1つにおける株特異的インフルエンザレプリキンの濃度の4倍〜10倍の増加が発見され、レプリキン濃度のこのような増加は1902年から2001年まで各株によって特異的にひき起こされたインフルエンザの地域的流行に関連づけされた。その後これらの濃度増加は、その消滅から1年〜最高64年後の少なくとも1つの特異的レプリキン組成の再出現に加えて新しい株特異的なレプリキン組成の新興に起因するものであることが示された。以前は、来たるインフルエンザの流行期においてどの株が優位を占めるかを予想できるようにする、又はワクチンのための全ウイルス株の年間混合物を考案できるようにする株特異的化学構造は全く知られていなかった。H3N2の歴史上最大である最近の急激なH3N2レプリキン濃度の増加(1997年〜2000年)及び1968年における高死亡率のH3N2の世界的流行及び1975年及び1977年の2つの高死亡率の世界的流行において最後に見られたものの20〜25年間不在であった特異的レプリキン組成の再出現は、共に来たる地域的流行の警告であるかもしれない。
【0019】
合成レプリキンは新しいワクチンである。同一の構造が100年間持続し得るか又はこれが1〜64年の不在の再出現の後に再出現し得るようにするレプリキン構造のこの高い保存率が観察されたことは、インフルエンザタンパク質におけるアミノ酸の無作為置換に起因する病原性の変化であると以前考えられてきたことが、レプリキンの組織立った保存プロセスに起因する変化である確率がより高いということを表わしている。事実、各アミノ酸の無作為置換が発生した場合、(84は当然のこととして)1年間平均長のインフルエンザレプリキン配列が保存されることに対する確率は、およそ227対1であると計算される。
【0020】
レプリキンの有意な保存はインフルエンザウイルスに独特のものではなく、例えばそれは、口蹄病ウイルスO型及びHIV内ならびに小麦内にも存在する。より最近では、レプリキンの有意な保存は、コロナウイルスヌクレオカプシドタンパク質内に存在している。
【0021】
高速複製におけるレプリキンの役割についての第3の機能的根拠は、HIV内の高速複製に関係することが示されたレプリキン濃度の増加である。早期感染において優勢であるHIVの緩慢に成長する低力価株(NS1、「Bru」)中のレプリキン濃度は、後期HIV感染において優勢であるHIVの急速に成長する高力価株(SI、「Lai」)の6分の1であることがわかった。
【0022】
その他の例が、高速複製に対するレプリキンの関係について示される。例えば、トマトの収穫を壊滅させるトマト縮葉病ジェミニウイルスにおいては、DNAに結合することが示されてきた「複製タンパク質」の最初の161個のアミノ酸は5つのレプリキンを含有している。
【0023】
高速複製に関し伝説的に有名であるマラリアにおいては、1つのトリパノゾームから何万個の割合で肝臓からトリパノゾームが放出される。その中には100個のアミノ酸につき最高111の重複レプリキンの濃度で、多数の新規でほぼ「火炎状の」レプリキン構造が発見される。
【0024】
インフルエンザの地域的流行におけるレプリキン濃度の増加は、悪性神経膠腫細胞の高速複製中の神経膠腫レプリキンの濃度増加に機能的に匹敵し、HIV内及び多様なその他の生体範囲内の高速複製に匹敵する。かくしてレプリキンは、異なる生体内での高速複製と結びつけられその構造的基礎の一部であると思われる。
【0025】
従ってレプリキンの濃度及び組成は、各生物学的集団の生存及び優性にとって中枢的なものである複製プロセスを検出し制御する新しい方法を提供する。高速複製に関係づけされるこれらの新しいタンパク質の発見は、1)レプリキンの質的及び量的決定による病原体の検出、2)未変性レプリキンをターゲティングすること及びワクチンとして合成レプリキンを使用することによる、高速複製が主要な要因である広範囲の疾病の制御及び 3)藻類及び植物食品の成長を助長するためのレプリキンの使用、の新たな機会を提供する。
【0026】
検出及び治療が困難であることが判明しており、しかもそのための有効なワクチンが全く存在していない著しい数の疾病及び病原体が存在する。かくして、各障害について、これらの疾病及び病原体を検出、治療又は予防する有効な方法を提供することになる標的を開発する必要性が存在している。
【0027】
発明の要約
本発明は、レプリキン配列を含むヌクレオチド又はアミノ酸配列を同定するための方法を提供している。該方法は、本書では3点認識方法と呼ばれている。「3点認識」方法を用いることにより、新しい種類のペプチドを構成する(1)第2のリジン残基から6〜10個のアミノ酸残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;(2)少なくとも1つのヒスチジン残基、及び(3)少なくとも6%のリジン残基(レプリキン)、を含む7〜約50個のアミノ酸を含むペプチドが、複製、形質転換又は酸化還元機能をもつ藻類、酵母、真菌、アメーバ、細菌、植物及びウイルスタンパク質内で明らかにされた。
【0028】
該発明の1つの態様においては、レプリキン配列を含む単離又は合成されたペプチドが提供されている。該ペプチドは、(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基、(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び(3)少なくとも6%のリジン残基、を含む7〜約50個のアミノ酸を含む。
【0029】
本発明は同様に、身体試料又は環境試料中の汚染性生体の存在を検出するための方法において、
(1)該身体試料又は環境試料から核酸を単離する段階;
(2)レプリキン構造の存在について核酸をスクリーニングする段階;及び
(3)汚染性生体の存在とレプリキン構造の存在を相関させる段階、
を含んで成る方法をも提供する。
【0030】
該発明のもう1つの態様においては、少なくとも1つのレプリキンペプチドを含む組成物の1投薬量を有効量だけ対象に対し投与する段階を含んで成る、レプリキン配列に特異的に結合する抗体を産生するべく対象の免疫系を刺激するためのプロセスが提供されている。1つの実施形態は、新規株が新興した場合に生体内の該新興株内に存在する少なくとも1つのペプチドを含んで成る。
【0031】
本発明は同様に、本書で定義されているような、レプリキンに対し特異的に結合する抗体ならびにレプリキンに特異的に結合する複数の抗体を含有する抗体カクテルをも提供する。該発明の1実施形態においては、レプリキンに特異的に結合する単数又は複数の抗体及び薬学的に受容可能な担体を含む組成物が提供されている。
【0032】
該発明の1つの態様においては、ウイルスレプリキン配列を含む、その他のタンパク質から単離又は分離された状態の組換え型又は合成ペプチド、又はその他の方法が提供されている。該ウイルスレプリキンペプチドは、(1)第2のリジン残基から6〜10個のアミノ酸残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び(3)少なくとも6%のリジン残基、を含む7〜約50個のアミノ酸を含む(ウイルスレプリキン)。
【0033】
本発明は同様に、ウイルスレプリキン配列を含むなかんづく、ヌクレオカプシドタンパク質から単離又は分離された状態の、組換え型又は合成ペプチド又はその他の方法をも提供している。該ウイルスヌクレオカプシドレプリキンペプチドは、(1)第2のリジン残基から6〜10個のアミノ酸残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び(3)少なくとも6%のリジン残基、
を含む7〜約50個のアミノ酸を含む。
【0034】
本発明は同様に、身体試料又は環境試料中の汚染性ウイルスの存在を検出するための方法において、
(1)該身体試料又は環境試料から核酸を単離する段階;
(2)ウイルスレプリキン構造の存在について核酸をスクリーニングする段階;及び
(3)汚染性ウイルスの存在とウイルスレプリキン構造の存在及びその濃度及び組成を相関する段階、
を含んで成る方法をも提供する。
【0035】
該発明のもう1つの態様においては、少なくとも1つのレプリキンペプチドを含む組成物の1投薬量を有効量だけ対象に対し投与する段階を含んで成る、ウイルスレプリキン配列に特異的に結合する抗体を産生するべく対象の免疫系を刺激するためのプロセスが提供されている。1つの実施形態は、新規株が新興した場合にウイルスの該新興株内に存在する少なくとも1つのペプチドを含んで成る。
【0036】
本発明は同様に、本書で定義されているような、ウイルスレプリキンに対し特異的に結合する抗体ならびにウイルスレプリキンに特異的に結合する複数の抗体を含有する抗体カクテルをも提供する。該発明の1実施形態においては、ウイルスレプリキンに特異的に結合する単数又は複数の抗体及び薬学的に受容可能な担体を含む組成物が提供されている。
【0037】
本発明は同様に、(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び(3)少なくとも6%のリジン残基、を含む7〜約50個のアミノ酸を有する単離されたウイルスペプチドを単数又は複数含む治療用組成物をも提供している。
【0038】
該発明のもう1つの態様においては、ウイルスレプリキンmRNA配列に相補的なアンチセンス核酸分子において、前記レプリキンmRNA配列が;
(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;
(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び
(3)少なくとも6%のリジン残基、
を含む7〜約50個のアミノ酸を表わしている、アンチセンス核酸分子が提供されている。
【0039】
本発明のさらにもう1つの態様においては、ウイルスに対する抗体を産生するべく対象の免疫系を刺激する方法において、(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び(3)少なくとも6%のリジン残基、を含む7〜約50個のアミノ酸を有する少なくとも1つのウイルスレプリキンを有効量投与する段階を含んで成る方法、が提供されている。
【0040】
もう1つの態様においては、予防又は治療用ウイルスワクチンに内含するためのウイルスを選択する方法において、
(1)前記ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株を得る段階;
(2)ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列を、レプリキン配列の存在及び濃度について分析する段階;
(3)該ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列内のレプリキン配列の濃度を、少なくとも1つのより早い時期に各々の株のアミノ酸配列内で観察されたレプリキン配列の濃度と比較して、少なくとも2つの時期についてのレプリキンの濃度を提供する段階であって、前記少なくとも1つのより早い時期が段階(1)より前約6ヵ月〜約3年以内である段階;
(4)該少なくとも2つの時期の間にレプリキン配列の濃度が最高の増加を示すウイルスの株を同定する段階;及び
(5)ウイルスワクチン内に内含するためのペプチドとして段階(4)で同定されたウイルスペプチドの株内に存在する少なくとも1つのレプリキン配列を選択する段階、
を含んで成る方法が提供されている。
【0041】
本発明は同様に、
(1)新興株として1つのウイルスの株を同定する段階;
(2)ウイルスワクチン製造のためのペプチド鋳型として新興株内に存在する少なくとも1つのレプリキン配列を選択する段階;
(3)段階(2)の中で選択された少なくとも1つのレプリキン配列のアミノ酸配列を有するペプチドを合成する段階;及び
(4)薬学的に受容可能な担体及び/又はアジュバントと治療上有効な量の段階(3)のペプチドを組合せる段階
を含む予防又は治療用ウイルスワクチンの製造方法をも提供している。
【0042】
もう1つの態様において、該発明は、診断、予防又は治療を目的として1つのウイルスの新興株を同定する方法において、
(1)該ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株を得る段階;
(2)ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列を、レプリキン配列の存在及び濃度について分析する段階;
(3)該ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列内のレプリキン配列の濃度を、少なくとも1つのより早い時期に各々の株のアミノ酸配列内で観察されたレプリキン配列の濃度と比較して、少なくとも2つの時期についてのレプリキンの濃度を提供する段階であって、前記少なくとも1つのより早い時期が段階(1)より前約6ヵ月〜約3年以内である段階;及び
(4)該少なくとも2つの時期の間にレプリキン配列の濃度が最高の増加を示すウイルスの株を同定する段階、
を含んで成る方法に向けられている。
【0043】
該発明のさらにもう1つの態様においては、ウイルスの新興株のタンパク質内に存在する少なくとも1つの単離されたレプリキン及び薬学的に受容可能な担体及び/又はアジュバントを含む予防用又は治療用ウイルスワクチンが提供されている。
【0044】
同じく本発明により提供されているのは、ウイルスの新興株のタンパク質内に存在する少なくとも1つの単離されたレプリキン及び薬学的に受容可能な担体及び/又はアジュバントを含む予防用又は治療用ウイルスワクチンを、必要としている患者に対し投与する段階を含んで成る、ウイルス感染を予防又は治療する方法である。
【0045】
インフルエンザ
インフルエンザは、地球規模の重要性をもつ急性呼吸器疾患である。ワクチン接種を通してインフルエンザウイルスの発生を制御しようとする国際的な努力にもかかわらず、インフルエンザ感染は、罹患及び死亡の重要な原因であり続けている。歴史全体を通して、世界中のインフルエンザの地域的流行及び世界的流行が不規則で予測不可能な間隔で発生してきており、将来においてもそれが発生し続けるものと予想されている。世界的流行及び地域的流行の両方のインフルエンザが及ぼす影響は、罹患率、死亡率及び経済的コストに関して実質的なものである。
【0046】
インフルエンザワクチンは、今なおインフルエンザウイルスに対する最も有効な防御であるが、ウイルスの突然変異能力及び非ヒト宿主レゼルボアの利用可能性を理由として、インフルエンザは新興又は再興感染であり続けるものと予想されている。地球規模でのインフルエンザサーベイランスは、インフルエンザウイルスがインフルエンザの流行期中に1つの国の内部で及び複数の国及び大陸の間で変動する可能性があると指摘している。抗原不連続変異及び抗原連続変異を監視する上で、ウイルス学的サーベイランスが重要である。地域的流行の影響を査定する上では疾病サーベイランスも同様に重要である。両方のタイプの情報が、ワクチン組成及び抗ウイルス薬の適正な使用の根拠を提供している。しかしながら、これまでのところ、増大する数の新興インフルエンザウイルス株の年に一度の事後の血液学的分類しか存在しておらず、近づきつつあるインフルエンザの地域的流行又は世界的流行を標示するものとしてのウイルスの特異的化学構造は全く同定されていない。現在、一定の与えられた年における活性、不活性又は優勢としてのインフルエンザウイルスの年一回の分類のための唯一の根拠は、ウイルス血球凝集素及びノイラミニダーゼタンパク質の活性である。本出願以前には、地域的流行又は世界的流行の量的警告のために又はより有効でかつ安全なワクチンを設計するために使用できるインフルエンザウイルスの化学構造は全く同定されたことがない。
【0047】
インフルエンザワクチンの年一回の投与及びワクチンを投与できる期間が短かいことを理由として、ワクチン接種率を改善することに向けた戦略は決定的な重要性をもつ。
【0048】
該発明の1つの態様においては、レプリキン配列を含有する単離又は合成されたインフルエンザウイルスペプチドが提供されている。該インフルエンザレプリキンウイルスペプチドは、(1)第2のリジン残基から6〜10個のアミノ酸残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び(3)少なくとも6%のリジン残基、を含む7〜約50個のアミノ酸を含む(インフルエンザレプリキン)。
【0049】
該発明のもう1つの態様においては、少なくとも1つのインフルエンザウイルスレプリキンペプチドを含む組成物の1投薬量を有効量だけ対象に対し投与する段階を含んで成る、インフルエンザウイルスレプリキン配列に特異的に結合する抗体を産生するべく対象の免疫系を刺激するためのプロセスが提供されている。1つの好ましい実施形態においては、該組成物は、インフルエンザウイルスの新興株内に存在する少なくとも1つのペプチドを含んで成る。
【0050】
本発明は同様に、本書で定義されているような、インフルエンザウイルスレプリキンに対し特異的に結合する抗体ならびにインフルエンザウイルスレプリキンに特異的に結合する複数の抗体を含有する抗体カクテルをも提供する。該発明の1実施形態においては、インフルエンザレプリキンに特異的に結合する単数又は複数の抗体及び薬学的に受容可能な担体を含む組成物が提供されている。
【0051】
本発明は同様に、
(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;
(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び
(3)少なくとも6%のリジン残基、
を含む7〜約50個のアミノ酸を有する単離されたインフルエンザウイルスペプチドを単数又は複数含む治療用組成物をも提供している。
【0052】
該発明のもう1つの態様においては、インフルエンザウイルス血球凝集素レプリキンmRNA配列に相補的なアンチセンス核酸分子において、前記レプリキンmRNA配列が(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;
(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び
(3)少なくとも6%のリジン残基、
を含む7〜約50個のアミノ酸を表わしている、アンチセンス核酸分子が提供されている。
【0053】
本発明のさらにもう1つの態様においては、インフルエンザウイルスに対する抗体を産生するべく対象の免疫系を刺激する方法において、(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び(3)少なくとも6%のリジン残基、を含む7〜約50個のアミノ酸を有する少なくとも1つのインフルエンザウイルスレプリキンを有効量投与する段階を含んで成る方法、が提供されている。
【0054】
もう1つの態様においては、予防又は治療用インフルエンザウイルスワクチンに内含するためのインフルエンザウイルスを選択する方法において、
(1)インフルエンザウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株を得る段階;
(2)インフルエンザウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株の血球凝集素アミノ酸配列を、レプリキン配列の存在及び濃度について分析する段階;
(3)インフルエンザウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株の血球凝集素アミノ酸配列内のレプリキン配列の濃度を、少なくとも1つのより早い時期に各々の株の血球凝集素アミノ酸配列内で観察されたレプリキン配列の濃度と比較して、少なくとも2つの時期についてのレプリキンの濃度を提供する段階であって、前記少なくとも1つのより早い時期が段階(1)より前約6ヵ月〜約3年以内である段階;及び
(4)該少なくとも2つの時期の間にレプリキン配列の濃度が最高の増加を示すインフルエンザウイルスの株を同定する段階、
(5)インフルエンザウイルスワクチン内に内含するためのペプチドとして段階(4)で同定されたインフルエンザウイルスペプチドの株内に存在する少なくとも1つのレプリキン配列を選択する段階、
を含んで成る方法が提供されている。
【0055】
本発明は同様に、
(1)新興株として1つのウイルスの株を同定する段階;
(2)ウイルスワクチン製造のためのペプチド鋳型として新興株内に存在する少なくとも1つのレプリキン配列を選択する段階;
(3)段階(2)の中で選択された少なくとも1つのレプリキン配列のアミノ酸配列を有するペプチドを合成する段階;及び
(4)薬学的に受容可能な担体及び/又はアジュバントと治療上有効な量の段階(3)のペプチドを組合せる段階
を含む予防又は治療用インフルエンザウイルスワクチンの製造方法をも提供している。
【0056】
もう1つの態様において、該発明は、診断、予防又は治療を目的としてインフルエンザウイルスの新興株を同定する方法において、
(1)インフルエンザウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株を得る段階;
(2)インフルエンザウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株の血球凝集素アミノ酸配列を、レプリキン配列の存在及び濃度(100個のアミノ酸あたりのレプリキン配列数)について分析する段階;
(3)インフルエンザウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株の血球凝集素アミノ酸配列内のレプリキン配列の濃度を、少なくとも1つのより早い時期に各々の株の血球凝集素アミノ酸配列内で観察されたレプリキン配列の濃度と比較して、少なくとも2つの時期についてのレプリキンの濃度を提供する段階であって、前記少なくとも1つのより早い時期が段階(1)より前約6ヵ月〜約3年以内である段階;及び
(4)該少なくとも2つの時期の間にレプリキン配列の濃度が最高の増加を示すインフルエンザウイルスの株を同定する段階、
を含んで成る方法に向けられている。
【0057】
該発明のさらにもう1つの態様においては、インフルエンザウイルスの新興株の血球凝集素タンパク質内に存在する少なくとも1つの単離されたレプリキン及び薬学的に受容可能な担体及び/又はアジュバントを含む予防用又は治療用インフルエンザウイルスワクチンが提供されている。
【0058】
同じく本発明により提供されているのは、インフルエンザウイルスの新興株の血球凝集素タンパク質内に存在する少なくとも1つの単離されたレプリキン及び薬学的に受容可能な担体及び/又はアジュバントを含む予防用又は治療用インフルエンザウイルスワクチンを、必要としている患者に対し投与する段階を含んで成る、ウイルス感染を予防又は治療する方法である。
トリパノゾーマ
【0059】
該発明の1つの態様においては、レプリキン配列を含む単離又は合成されたトリパノゾーマペプチドが提供されている。該トリパノゾーマペプチドは、(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基、(2)少なくとも1つのヒスチジン残基及び、(3)少なくとも6%のリジン残基、を含む7〜約50個のアミノ酸を含む。(トリパノゾーマレプリキン)。
【0060】
マラリア
有効なワクチンが全く存在せず、治療が困難であることがわかっている1つのトリパノゾーマ障害はマラリアである。マラリアは多数の死者を出し、熱帯地方における肉体的かつ経済的な苦難である。マラリアは、主として治療に対し極めて耐性が強いことがわかっている熱帯性マラリア原虫によってひき起こされ、今までのところ、マラリアのためのワクチンは手に入れにくいものであり続けている。従って、有効なマラリアワクチン及び該疾病を治療又は予防する方法に対する必要性が存在している。本出願は、かかるワクチン及び治療及び予防方法のための根拠を提供する。レプリキンウイルスワクチン及びレプリキンインフルエンザウイルスワクチンの生産及びそれによる治療のための上述の方法は全て、レプリキンマラリアワクチンの生産及びそれによる治療に適用可能である。
【0061】
本発明においては、マラリアを防止又は治療するためのワクチン及び方法が提供されている。該マラリアワクチンは、少なくとも1つの単離された熱帯性マラリア原虫レプリキンを含む。本発明は同様に、少なくとも1つの単離された熱帯性マラリア原虫レプリキンを含む予防又は治療用ワクチンを有効量だけ患者に投与する段階を含む、マラリアを治療又は予防するための方法をも提供している。
【0062】
同じく本発明により提供されているのは、熱帯性マラリア原虫のマラリア抗原中に存在する単数又は複数のレプリキンに特異的に結合する抗体を含む抗体、抗体カクテル及び組成物である。
【0063】
マラリアについてそうであったように本発明に基づいて治療され得るトリパノゾーマのもう1つの例、梅毒トレポネーマ(梅毒)のレプリキンは、梅毒の検出、予防、治療のために使用可能である。
【0064】
細菌
該発明の1つの態様においては、レプリキン配列(細菌レプリキン)を含む単離又は合成された細菌ペプチドが提供されている。該細菌ペプチドは、(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基、(2)少なくとも1つのヒスチジン残基及び、(3)少なくとも6%のリジン残基、を含む7〜約50個のアミノ酸を含む(細菌レプリキン)。細菌配列リスト及び情報を含む(ただしこれらに制限されるわけではない)2003年3月26日付けの米国出願第10/105,232号明細書の全体が参考として内含されている。
【0065】
本発明は同様に、身体試料又は環境試料中の汚染性細菌生体の存在を検出するための方法において、
(1)該身体試料又は環境試料由来の核酸を単離する段階;
(2)レプリキン構造の存在について核酸をスクリーニングする段階;及び
(3)汚染性生体の存在とレプリキン構造の存在を相関させる段階、
を含んで成る方法をも提供する。
【0066】
該発明のもう1つの態様においては、少なくとも1つの細菌レプリキンペプチドを含む組成物の1投薬量を有効量だけ対象に対し投与する段階を含んで成る、レプリキン配列に特異的に結合する抗体を産生するべく対象の免疫系を刺激するためのプロセスが提供されている。1つの実施形態は、新規株が新興した場合に細菌生体内の該新興株内に存在する少なくとも1つの細菌ペプチドを含んで成る。
【0067】
本発明は同様に、本書で定義されているような、細菌レプリキンに対し特異的に結合する抗体ならびに細菌レプリキンに特異的に結合する複数の抗体を含有する抗体カクテルをも提供する。該発明の1実施形態においては、細菌レプリキンに特異的に結合する単数又は複数の抗体及び薬学的に受容可能な担体を含む組成物が提供されている。
【0068】
本発明は同様に、
(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;
(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;
(3)少なくとも6%のリジン残基;及び
(4)薬学的に受容可能な担体、
を含む7〜約50個のアミノ酸を有する単離された細菌ペプチドを単数又は複数含む治療用組成物をも提供している。
【0069】
該発明のもう1つの態様においては、細菌レプリキンmRNA配列に相補的なアンチセンス核酸分子において、前記レプリキンmRNA配列が(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;
(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び
(3)少なくとも6%のリジン残基、
を含む7〜約50個のアミノ酸を表わしている、アンチセンス核酸分子が提供されている。
【0070】
本発明のさらにもう1つの態様においては、細菌に対する抗体を産生するべく対象の免疫系を刺激する方法において、
(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;
(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び
(3)少なくとも6%のリジン残基、
を含む7〜約50個のアミノ酸を有する少なくとも1つの細菌レプリキンを有効量投与する段階を含んで成る方法、が提供されている。
【0071】
もう1つの態様においては、予防又は治療用細菌ワクチンに内含するための細菌レプリキンを選択する方法において、
(1)該細菌の複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株を得る段階;
(2)細菌の複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列を、細菌レプリキン配列の存在及び濃度について分析する段階;
(3)該細菌の複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列内の細菌レプリキン配列の濃度を、少なくとも1つのより早い時期に各々の株のアミノ酸配列内で観察された細菌レプリキン配列の濃度と比較して、少なくとも2つの時期についての細菌レプリキンの濃度を提供する段階であって、前記少なくとも1つのより早い時期が段階(1)より前約6ヵ月〜約3年以内であるか又は急速に突然変異する細菌においてはさらに早いものである段階;
(4)該少なくとも2つの時期の間の細菌レプリキン配列の濃度が最高の増加を示す細菌の株を同定する段階;
(5)細菌ワクチン内に内含するためのペプチドとして段階(4)で同定された細菌ペプチドの株内に存在する少なくとも1つのレプリキン配列を選択する段階、
を含んで成る方法が提供されている。
【0072】
本発明は同様に、
(1)新興株として1つの細菌の株を同定する段階;
(2)細菌ワクチン製造のためのペプチド鋳型として新興株内に存在する少なくとも1つの細菌レプリキン配列を選択する段階;
(3)段階(2)の中で選択された少なくとも1つのレプリキン配列のアミノ酸配列を有するペプチドを合成する段階;及び
(4)薬学的に受容可能な担体及び/又はアジュバントと治療上有効な量の段階(3)のペプチドを組合せる段階、
を含む予防又は治療用細菌ワクチンの製造方法をも提供している。
【0073】
もう1つの態様において、該発明は、診断、予防又は治療を目的として1つの細菌の新興株を同定する方法において、
(1)該細菌の複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株を得る段階;
(2)細菌の複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列を、細菌レプリキン配列の存在及び濃度(100個のアミノ酸あたりのレプリキン配列数)について分析する段階;
(3)該細菌の複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列内の細菌レプリキン配列の濃度を、少なくとも1つのより早い時期に各々の株のアミノ酸配列内で観察された細菌レプリキン配列の濃度と比較して、少なくとも2つの時期についての細菌レプリキンの濃度を提供する段階であって、前記少なくとも1つのより早い時期が段階(1)より前約6ヵ月〜約3年以内である段階;及び
(4)該少なくとも2つの時期の間の細菌レプリキン配列の濃度が最高の増加を示す細菌の株を同定する段階、
を含んで成る方法に向けられている。
【0074】
該発明のさらにもう1つの態様においては、細菌の新興株のタンパク質内に存在する少なくとも1つの単離された細菌レプリキン及び薬学的に受容可能な担体及び/又はアジュバントを含む予防用又は治療用細菌ワクチンが提供されている。
【0075】
マイコバクテリウムに分類された細菌の2つの重要な亜種は、その30−sリボソームタンパク質がC末端レプリキンをもつライ菌(ハンセン病)及びそのATPアーゼが3つのレプリキンを有する結核菌(結核)である。
ライ菌(ハンセン病)の30sリボソームタンパク質s6中のレプリキンは;
【化1】

結核菌のATPアーゼ中のレプリキンは:
【化2】

大腸菌のB−Dガラクトシダーゼ中のレプリキン:
【化3】

アグロバクテリウム・ツメファシエンス中のレプリキン:
【化4】

【0076】
同じく本発明により提供されているのは、細菌の新興株のタンパク質内に存在する少なくとも1つの単離された細菌レプリキン及び薬学的に受容可能な担体及び/又はアジュバントを含む予防用又は治療用ワクチンを、必要としている患者に対し投与する段階を含んで成る、ウイルス感染を予防又は治療する方法である。
【0077】
真菌
該発明の1つの態様においては、レプリキン配列を含む単離又は合成された真菌ペプチドが提供されている。真菌レプリキンペプチドは、(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基、(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び(3)少なくとも6%のリジン残基、を含む7〜約50個のアミノ酸を含む(真菌レプリキン)。
【0078】
細菌レプリキンワクチンの生産及びそれを用いた治療について上述した方法はすべて、真菌レプリキンワクチンの生産及びそれを用いた治療に対しても適用可能である。
【0079】
該発明のもう1つの態様においては、少なくとも1つの真菌レプリキンペプチドを含む組成物の1投薬量を有効量だけ対象に対し投与する段階を含んで成る、真菌レプリキン配列に特異的に結合する抗体を産生するべく対象の免疫系を刺激するためのプロセスが提供されている。
【0080】
本発明は同様に、本書で定義されているような、真菌レプリキンに対し特異的に結合する抗体ならびに真菌レプリキンに特異的に結合する複数の抗体を含有する抗体カクテルをも提供する。該発明の1実施形態においては、真菌レプリキンに特異的に結合する単数又は複数の抗体及び薬学的に受容可能な担体を含む組成物が提供されている。
【0081】
本発明は同様に、
(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;
(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び
(3)少なくとも6%のリジン残基、
を含む7〜約50個のアミノ酸を有する単離された真菌ペプチドを単数又は複数含む治療用組成物をも提供している。
【0082】
該発明のもう1つの態様においては、真菌レプリキンmRNA配列に相補的なアンチセンス核酸分子において、前記レプリキンmRNA配列が(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;
(2)少なくとも1つのヒスチジン残基及び
(3)少なくとも6%のリジン残基、
を含む7〜約50個のアミノ酸を表わしている、アンチセンス核酸分子が提供されている。
【0083】
該発明のもう1つの態様においては、少なくとも1つのレプリキンペプチドを含む組成物の1投薬量を有効量だけ対象に対し投与する段階を含んで成る、真菌レプリキン配列に特異的に結合する抗体を産生するべく対象の免疫系を刺激するためのプロセスが提供されている。
【0084】
複製の増強
該発明のもう1つの態様においては、少なくとも1つのレプリキン構造を伴う生体内で複製機能をもつ酵素又はその他のタンパク質をコードする遺伝子を形質転換する段階を含む、1つの生体の複製速度を増大させる方法が提供されている。
【0085】
定義
本書で使用されている通り、「ペプチド」又は「タンパク質」という語は、1つのアミノ酸のカルボキシル基がもう一方のアミノ酸のアミノ基と一体化されている2つ以上のアミノ酸の化合物を意味する。ペプチドという語は同様に、このような化合物をコードするアミノ酸配列を表わすためにも用いられる。本書で使用されている「単離された」又は「合成された」ペプチド又はその生物学的に活性な部分というのは、自ら由来する細胞又は組織供給源からの細胞材料又はその他の汚染性ペプチドを実質的に含まない、又は任意の方法により化学的に合成された時点で化学的前駆物質又はその他の化学物質を実質的に含まない、又は組換え型遺伝子技術によって合成された時点で汚染性ペプチドを実質的に含まないペプチドを意味する。
【0086】
本書で使用するレプリキンペプチド又はレプリキンタンパク質は、
(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基、
(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び
(3)少なくとも6%のリジン残基、
を含む7〜約50個のアミノ酸を有するアミノ酸配列である。
同様にして、レプリキン配列はかかるペプチド又はタンパク質をコードするアミノ酸配列である。
【0087】
本書で使用する通り、本書で用いる「新興株」という語は、かかる生体のその他の株内のレプリキンの濃度に比べてそのタンパク質配列のうちの単数又は複数のものの中のレプリキン配列の増大した漸増的濃度を有するものとして同定されたウイルス、細菌、真菌又はその他の生体の株を意味する。レプリキンの増加又は漸増的濃度は、例えばインフルエンザウイルス内では、少なくとも約6ヵ月の期間にわたって、又好ましくは少なくとも約1年の期間にわたって、最も好ましくは少なくとも約3年以上の期間にわたって、起こるが、細菌及びその他の生体については、はるかに短かい期間であり得る。
【0088】
本書で使用する「突然変異」という語は、アミノ酸の置換によってひき起こされる生体のこの構造及び特性の変化を意味する。これとは対照的に、本書で使用される「保存」という語は、置換が欠如していることに起因する特定のアミノ酸の保存を意味する。
【0089】
発明の詳細な説明
本書でレプリキンと呼ばれている高速複製現象に関係する小ペプチドの新しいファミリーの同定は、試料中の病原体の検出及びワクチン開発を含めた療法の開発のための標的を提供する。一般に、このペプチドファミリーの知識及び同定は、レプリキンを抱くあらゆる生体のための有効な療法及びワクチンの開発を可能にする。このペプチドファミリーの同定は同様に、ウイルスの検出及びウイルスワクチン開発をも提供する。
【0090】
例えば、このペプチドファミリーの同定は、インフルエンザウイルスの検出を提供し、インフルエンザ治療のための新しい標的を提供する。このペプチドファミリーの同定は同様に、例えば、マラリアの検出を提供し、マラリアワクチン開発のための新しい標的を提供する。このペプチドファミリーの同定により提供されるさらなる例としては、感染病レプリキン、癌免疫レプリキン及び構造タンパク質レプリキンの検出が含まれる。
【0091】
高速複製は、或る種の細菌、ウイルス及び悪性腫瘍における病原性の特徴であるが、これまで、異なる生体における高速複製に共通の化学反応が記述されたことは全く無い。我々は、高速複製に関係する保存された小タンパク質配列ファミリーを発見し、これをレプリキンと命名した。このようなレプリキンは、有効な検出方法及び療法を開発するための新しい標的を提供する。最初に発見されたレプリキンは、マリグニンと呼ばれる多形性脳グリア芽腫(神経膠腫)細胞タンパク質の中で同定された神経膠腫レプリキンであった。
【0092】
マリグニンの加水分解及び質量分析は、神経膠腫レプリキンを含有する新規16量体ペプチド配列を明らかにした。このレプリキンは正常な健康なヒトゲノムのためのデータベース内には発見されず、従って体外の何らかの供給源から誘導されるように思われた。
【0093】
我々は、神経膠腫レプリキン又はその相同体について探索するためのアルゴリズムを考案した。相同体は4000以上のタンパク質配列内で一般的でなかったが、驚くべきことに、全ての腫瘍ウイルス内及び藻類、植物、真菌、ウイルス及び細菌の複製タンパク質内で発見された。
【0094】
我々は、1)レプリキン濃度(100個のアミノ酸あたりのレプリキンの数)及びレプリキン組成の両方が、高速複製の機能的現象と相関関係をもつことを識別した。これらの関係は、レプリキンが複製速度に量的ならびに質的に関係するという決定のための機能的根拠を提供する。
【0095】
高速複製に対するレプリキンの役割についての最初の機能的根拠は、神経膠腫複製に見られる。神経膠腫マリグニンが神経膠腫細胞の高速複製における細胞数及び膜タンパク質濃度の5倍の増加に比べ10倍富化されるという事実は、複製に対するレプリキンの不可欠な関係を示唆している。神経膠腫レプリキンとインビトロで合成しウサギに合成ワクチンとして投与した場合、豊富な抗マリグニン抗体が産生される。このことは、血清中抗マリグニン抗体(AMAS)試験の抗原性の根拠を厳正に立証し、初めての潜在的合成癌ワクチン及びその他の生体内でのレプリキンワクチン用プロトタイプを提供する。癌レプリキンと高速複製の共有の特異性に基づく、細胞型に優先する癌レプリキンに対するこの自然免疫応答及び複製に対するレプリキンのこの自然免疫関係の実証により、抗マリグニン抗体での免疫の受動的増加及び合成レプリキンワクチンでの能動的増加がいまや可能である。
【0096】
患者における抗AG抗体の存在と生存率の関係は、癌患者由来の8,090件の血清標本の研究の中で示された。集団内の癌の発生率が増大するのと同様、抗マリグニン抗体の濃度が年齢と共に増大し、細胞型の如何に関わらず早期悪性腫瘍においてさらに2〜3倍増大することが実証された。インビトロでは、該抗マリグニン抗体は癌細胞1個あたりのピコグラム(フェムトモル)で癌に対し細胞毒性をもち、インビボで抗マリグニン抗体の濃度は数量的に癌患者の生存率と関係する。神経膠腫細胞内で示されているように、今や、細胞が死に致らない悪性状態までしか形質転換されておらず、鎮静期又は休眠期にとどまっている癌病期を、レプリキンの濃度増加を特徴とするより活性の高い生命を脅かす複製状態と区別することが可能である。さらに、神経膠腫糖タンパク質10Bが正常な10Bと比べた場合に炭水化物残基の50%の減少を示すという事実に、癌のウイルス病因論への糸口を見い出せるかもしれない。この減少は、その他のケースでウイルスの進入に結びつけられており、従って、悪性状態への形質転換における1つのステップとしてのグリア細胞の10Bに対するウイルスレプリキンの送達のためのウイルスの付着の証拠であり得る。
【0097】
過去100年にわたるインフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質配列及びインフルエンザ疫学に関する我々の研究は、高速複製に対するレプリキンの関係についての第2の機能的根拠を提供した。これまでのところ、血清学的血球凝集素及び抗体分類のみがインフルエンザにおいて記述されているが株特異的な保存されたペプチド配列はこれまで全く記述されていない。さらに疫学的に立証された地域的流行又は高速複製と相関関係をもついずれかの株特異的ペプチド配列の濃度及び組成の変化については全く記述されてきていない。4つの主要な株すなわちインフルエンザB型、(A)H1H1、(A)H2N2及び(A)H3N2型の各々のうちの1つにおける株特異的インフルエンザレプリキンの濃度の4倍〜10倍の増加が、1902年から2001年まで各株によって特異的にひき起こされたインフルエンザの地域的流行に関係することが示されている。
【0098】
我々はその後、これらの濃度増加が、その消滅から1年〜最高64年後の少なくとも1つの特異的レプリキン組成の再出現に加えて新しい株特異的なレプリキン組成の新興に起因するものであることを示した。以前は、来たるインフルエンザの流行期において優位を占めと思われる株を予想できるようにする、又はワクチンのための全ウイルス株の年間混合物を考案できるようにする株特異的化学構造は全く知られていなかった。H3N2の歴史上最大である最近の急激なH3N2レプリキン濃度の増加(1997年〜2000年)及び1968年の高死亡率のH3N2の世界的流行及び1975年及び1977年の2つの高死亡率の世界的流行において最後に見られたものの20〜25年間不在であった特異的レプリキン組成の再出現は、共に来たる地域的流行の警告であるかもしれない。同一の構造が100年間持続し得るか又はこれが1〜64年の不在の後に再出現し得るようにするレプリキン構造のこの高い保存率が観察されたことは、インフルエンザタンパク質におけるアミノ酸の無作為置換に起因する変化であると以前考えられてきたことが、レプリキンの組織立った保存プロセスに起因する変化である確率がより高いということを表わしている。
【0099】
レプリキンの保存はインフルエンザウイルスに独特のものではなく、例えばそれは、口蹄病ウイルス、O型及びHIVtatならびに小麦内でも観察された。
【0100】
高速複製におけるレプリキンの役割についての第3の機能的根拠は、HIV内の高速複製の増加に見られる。レプリキン濃度はHIV内の高速複製に関係することが示された。我々は、早期感染において優勢であるHIVの緩慢に成長する低力価株(NS1、「Bru」)中のレプリキン濃度が、(後期HIV感染において優勢である)HIVの急速に成長する高力価株(SI、「Lai」)の6分の1であることを発見した。
【0101】
さらなる例が、高速複製に対するレプリキンの関係を実証している。例えば、トマトの収穫を壊滅させるトマト縮葉病ジェミニウイルスの「複製タンパク質」においては、DNAに結合することが示されてきた配列である最初の161個のアミノ酸は5つのレプリキンを含有していることが示された。1つのトリパノゾームから何万個の割合で肝臓からトリパノゾームが放出される場合の、高速複製に関し伝説的に有名であるマラリアにおいては、100個のアミノ酸につき最高36の重複レプリキンの濃度で、多数の新規でほぼ「火炎状の」レプリキン構造が発見された。
【0102】
いずれかの構造の保存は、その構造が、攻撃、破壊するか又は刺激するべき安定した不変の標的を提供するか否かにとってきわめて重要である。構造が何らかの形で生体の基本的生存メカニズムに結びつけられる場合、その構造は保存される傾向にある。変動する構造は、不変の標的を提供し、これは、以前の構造に対して特異的に生成されかくして修飾された形態に対しては効力のない抗体といったようなアタッカーを回避するための優れた戦略である。この戦略は、インフルエンザウイルスなどに用いられ、かくして先行ワクチンが現在発病率の高いウイルスに対し全く効力がなくなる可能性がある。
【0103】
治療のための安定した標的としてのレプリキン
細菌及びHIVは両方共、レプリキン及び非レプリキンの両方のアミノ酸を有する。HIVにおいては、例えば、非レプリキンアミノ酸の突然変異、すなわち置換に起因して薬物耐性が最近9%〜13%増加した。(本書で論述されているHIVのTATタンパク質の詳細な分析を参照のこと)。細菌において、「耐性株」の発生は、類似のメカニズムに起因している。しかしながら、我々は、レプリキン構造が非レプリキンアミノ酸と同程度に突然変異又は変化しないことを発見した(同様に、本書で論述されているレプリキンの口蹄病ウイルス保存の論述も参照のこと;さらに、本書で論述されているコロナウイルスレプリキンの保存についての論述も参照のこと)。レプリキン構造は、非レプリキン構造と異なり、保存され、かくして治療のための新しい恒常な標的を提供する。
【0104】
生存機能に過度に緊密に関係している或る種の構造は恒常的に変化し得ないように思われる。レプリキン構造の基本的構成要素が複製に必要とされる確率の高いエネルギー源及び酸化還元酵素内の金属基に頻繁に結合するものとして知られているヒスチジン(h)であることを理由として、又、このヒスチジン構造が恒常にとどまることから、この構造はなお一層魅力ある破壊又は刺激用標的であり続けている。
【0105】
プロテオミクスの観点から見ると、新たに決定された神経膠腫ペプチド配列に基づいて自ら鋳型を構成したことで、発明人らは、関連する保存された構造及びこの場合は複製である特殊な機能をもつ広範なタンパク質の種類を発見するに至った。1つの疾病の病原性に伴うレプリキン濃度の増加の例としては、インフルエンザ、HIV、癌及びトマト縮葉病ウイルスがある。この新たに認められた種の構造は、酵母、藻類、植物、ジェミニトマト縮葉病ウイルス、HIV及び癌といったさまざまな生体内の高速複製の現象に関係している。
【0106】
レプリキンの濃度及び組成は、各々の生物学的集団の生存率及び優性にとって中枢的なものである複製プロセスを検出し制御する新しい定量的方法を提供する。神経膠腫及び関連する癌レプリキンのための抗マリグニン抗体で実証されたように、該種類の多様な成員による免疫学的特異性の共有は、B細胞及びその産物抗体が類似の認識言語を用いてレプリキンを認識できるということを示唆している。
【0107】
癌レプリキンのペプチド配列又はレプリキンすなわち神経膠腫ペプチドkagvaflhkkの相同体を含有するものとしてのペプチド配列の例は、肺、脳、肝臓、軟組織、唾液腺、鼻咽頭、食道、胃、結腸、直腸、胆のう、乳房、前立腺、子宮、子宮頸管、膀胱、眼、黒色腫形態、リンパ腫、白血病及び腎臓などの癌において発見され得るがただしこれらに制限されるわけではない。
【0108】
レプリキンは、1)レプリキンの質的及び量的決定による病原体の検出、2)未変性レプリキンをターゲティングすること及びワクチンとして合成レプリキンを使用することによる、高速複製が主要な要因である広範囲の疾病の治療及び制御;及び3)藻類及び植物食品の増強された成長速度の助長を提供する。
【0109】
同定すべき最初のレプリキン配列は、多形性グリア芽腫(神経膠腫)細胞の高速嫌気性複製中に10倍に富化されることが実証された脳癌タンパク質、マリグニンの中に発見される癌細胞レプリキンであった。(図2)。マリグニンは、多形成グリア芽腫(神経膠腫)細胞の膜からインビボ及びインビトロで単離された250KDaの糖タンパク質10Bの10KDa部分である。マリグニンの加水分解及び質量分析は、本書で神経膠腫レプリキンと呼ばれ、より短かいペプチドkagvaflhkk(配列番号1)を含む16量体ペプチド配列ykagvaflhkkndide(配列番号4)(両方共正常なヒトゲノム内では見かけ上不在である)を明らかにした。
【表1】

【0110】
16量体神経膠腫レプリキンが合成ワクチンとしてウサギの体内に注射された時点で、豊富な抗マリグニン抗体が産生された。(Bogoch et al., 癌の検出と予防。26(付録1):402(2002))。インビボでの血清中の抗マリグニン抗体の濃度は癌患者の生存率と量的に関係することが示された(Bogoch et al. 生物学的流体のペプチド、31:739−747(1984)。インビトロ抗マリグニン抗体は、がん細胞1個あたりピコグラム(フェムトモル)の濃度で癌細胞に対し細胞毒性をもつことが示されてきた(Bogoch et al., 癌の検出と予防。26(付録1):402(2002)。
【0111】
発明人らにより実施された研究は、神経膠腫レプリキンが正常な健康なヒトゲノム内では表現されないことを示した。その結果、さまざまな生体の公示済み配列の分析によってレプリキン配列の起源及び考えられる相同体についての探索が着手された。
【0112】
鋳型として16量体神経膠腫レプリキン配列を使用し、複数の異なる生体のタンパク質のアミノ酸配列を視覚的に走査するべく認識プロテオーム系を構築することによって、新しい種類のペプチド、レプリキンが同定された。本発明は、レプリキン配列を内含するヌクレオチド又はアミノ酸配列を同定するための方法を提供する。該方法は、本書では3点認識方法と呼ばれている。3点認識方法は、(1)第2のリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基、(2)少なくとも1つのヒスチジン残基及び(3)少なくとも6%のリジン残基、を含む7〜約50個のアミノ酸のペプチド(レプリキン)を含む。これらのペプチド又はタンパク質は、複製、形質転換又は酸化還元機能を有する藻類、酵母、真菌、アメーバ、細菌、植物、ウイルス及び癌タンパク質を含む種の中で新しい種類のペプチドを構成する。レプリキンペプチドは、より大きい「複製」及び「形質転換」タンパク質(その研究者によりこのように呼称されている、表2参照)及び癌細胞タンパク質の中に集中していることが発見されてきた。マリグニン16量体ペプチドと同一であることがわかった配列は無い。
さまざまな生体内のレプリキンの例−プロトタイプ:神経膠腫レプリキン*kagvaflhkk(配列番号1)
【表2】

【表3】

【0113】
レプリキンとして又はレプリキンを含有するものすなわち神経膠腫ペプチドkagvaflhkkの相同体としてのアミノ酸配列の同定には、以下の3つの必要条件が満たされる必要性がある。3点認識システムに従うと、配列は、7〜約50残基のアミノ酸配列の内部に次の3つの要素すなわち、(1)もう1つのリジン残基から6〜10個の残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基;(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び
(3)少なくとも6%のリジン残基の組成物を有している。
【0114】
レプリキンを含有するタンパク質配列について国立医学図書館キーワード「PubMed」記述子を用いてデータベースが探索された。4000以上のタンパク質配列が相同体について視覚的に検査された。PubMed分類されたタンパク質の各グループ内の個々のタンパク質すべての配列が、上述の3つの必要条件を満たすペプチドについて視覚的に走査された。相同体のまれな発生が、「ウイルスペプチド」全体の中(1.5%)(N=953)及び「脳ペプチド」及び「神経ペプチド」といった悪性形質転換又は複製に関連するものとして指定されていないその他のペプチドの中(合わせて8.5%)(N=845)で観察された。ただし、驚くべきことに、相同体は、細菌、藻類及びウイルス内での複製における立証済みの機能をもつものとして同定された大きな「複製タンパク質」の中ではるかに高い頻度で同定された。さらに一層驚くべきことは、レプリキン相同体が、「腫瘍ウイルス」の100%(N=250)、「癌タンパク質」の97%(N=401)、そして「形質転換ウイルス」の85%(N=248)の中で発生したという発見事実であった。これらの結果は、細胞型の如何に関わらず癌の病因論には共有の特性が存在することを示唆しており、又、発癌すなわち、休眠中であれ形質転換された状態からより病原性の高い活発に複製している状態までの細胞の転換、におけるウイルスの役割を示唆している。
【0115】
3点認識方法によって画定される通りのkagvaflhkkといったアミノ酸配列の相同体が、アデノウイルス、レンチウイルス、a−ウイルス、レトロウイルス、アンデノ関連ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、脳炎ウイルス、インフルエンザウイルス、トウモロコシ条斑ウイルス、ヘルペスウイルス、ウシヘルペスウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、口蹄病ウイルス、天然痘ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、神経芽細胞腫RASウイルス腫瘍遺伝子、ポリオーマウイルス、シンドビス、ヒト乳頭腫ウイルス、骨髄単球性腫瘍ウイルス、マウス急性白血病、T細胞リンパ栄養ウイルス及びトマト縮葉病ウイルスといったような(ただしこれらに制限されるわけではない)ウイルス又はウイルスペプチドの中で発見された。
【0116】
さらに、アミノ酸配列kagbafhkkの相同体は、宿主細胞の細胞質中で複製する外被ウイルスファミリの成員である既知の種類のコロナウイルスの中に存在する。さらに、アミノ酸配列kagvatlhkkの相同体は、重症急性呼吸器症候群つまりSARSの原因である最近同定された種類のコロナウイルスの中に存在する。レプリキンは、SARSコロナウイルスのヌクレオカプシド全タンパク質配列の中に位置特定される。さらに、レプリキンの場所は、コロナウイルスの種類のその他の成員の中に存在し、より特定的には、これらのコロナウイルス由来のヌクレオカプシドタンパク質配列内にも存在する。
【0117】
レプリキンは、Acetobacter、Achromobacter、Actinomyces、Aerobacter、Alcaligenes、Arthrobacter、Azotobacter、Bacillus、Brevibacterium、Chainia、Clostridium、Corynebacterium、Erwinia、Escheria、Lebsiella、Lactobacillus、Haemophilus、Flavobacterium、Methylomonas、Micrococcus、Mycobacterium、Micronomspora、Mycoplasma、Neisseria、Nocardia、Proteus、Pseudomonas、Rhizobium、Salmonella、Serratia、Staphylococcus、Streptocossus、Streptomyces、Streptosporangium、Streptovirticillium、Vibrio peptide及びXanthomasといった細菌(ただしこれらに制限されるわけではない)の中に存在する。
【0118】
レプリキンは、Penicillium、Diseula、Ophiostoma novoulim、Mycophycophta、Phytophthora infestans、Absidia、Aspergillus、Candida、Cephalosporium、Fusarium、Hansenula、Mucor、Paecilomyces、Pichia、Rhizopus、Torulopsis、Trichoderma及びErysipheといった真菌(ただしこれらに制限されるわけではない)の中に存在する。
【0119】
レプリキンは、Saccharomyces、Cryptococcusneoformasを含むCryptococcus、Schizo saccharomyces、及びOryzaといった酵母(ただしこれらに制限されるわけではない)の中に存在する。
【0120】
レプリキンは、Caldophera、Isolepisprolifera、Chondrus、Gracilaria、Gelidium、Caulerpa、Laurencia、Cladophexa、Sargassum、Penicillos、Halimeda、Laminaria、Fucus、Ascophyllum、Undari、Rhodymenia、Macrocystis、Eucheuma、Ahnfeltia及びPteroclasiaといった藻類(ただしこれらに制限されるわけではない)の中に存在する。
【0121】
レプリキンは、Entamoeba(Entamoeba invadensを含む)、Amoebidae、Acanthamoeba及びNaegleriaといったアメーバ(ただしこれらに制限されるわけではない)の中に存在する。
【0122】
レプリキンは、シロイヌナズナ、小麦、イネ及びトウモロコシといった植物(ただしこれらに制限されるわけではない)の中に存在する。
【0123】
補助的明細事項
レプリキンのサブタイプを分類できるようにするため、基本的「3点認識」必要条件に対して(a)癌細胞タンパク質(例えば形質転換タンパク質P21B(K−RAS 2B)肺、表2、配列番号89)内の隣接するジ−及びポリリジン及びTOLL様レセプタ内のその他の隣接するジアミノ酸の共通の出現といったような構造的根拠に基づく、又は(b)例えば表2に見られるようなATPアーゼ、チロシンキナーゼ又は酸化還元活性を示す機能的根拠に基づく付加的な又は「補助的明細事項」を付加することができる。
【0124】
機能的誘導体
本書で記述されているレプリキンの「機能的誘導体」は、レプリキンに特異的な抗体との免疫学的交叉活性の少なくとも一部分を保持するレプリキンのフラグメント、変異体、類似体又は化学的誘導体である。レプリキンペプチドのフラグメントは、分子のあらゆるサブセットを意味する。変異体ペプチドは、例えば当該技術分野において周知の方法を用いて直接的化学合成によって作ることができる。レプリキンの類似体とは、全タンパク質又はそのフラグメントのいずれかに実質的に類似した非天然タンパク質を意味する。レプリキンの化学的誘導体は、通常ペプチド又はペプチドフラグメントの一部でない付加的な化学的部分を含有している。
【0125】
図2に見られるように、細胞複製速度が上昇する嫌気性呼吸の間、マリグニンが富化される。すなわち、マリグニンは、細胞数及び合計膜タンパク質の増大に正比例して増加することがわかっているだけでなく、休止時の3%から始まって合計膜タンパク質の30%に達して、濃度が10倍も富化される。神経膠腫 細胞複製に伴うレプリキン濃度の顕著な増加のこの明白な実証は、さまざまな生体内で3点認識法で同定されたレプリキンの存在を提示し、これと一貫性のあるものである。例えば、レプリキンは、「Saccharomyces cerevisiae複製結合タンパク質」(配列番号2)(hsikrelgiifdk);「トウモロコシ条斑ウイルスの複製関連タンパク質A」(配列番号8)(kyivcareahk)及び(配列番号9)(kekkpskdeimrdiish);「Staphylococcus aureusの複製関連タンパク質」(配列番号10)(kkektthnk);「ウシヘルペスウイルス4のDNA複製タンパク質」(配列番号11)(hkinitngqk);及び「Mealigridヘルペスウイルス1複製結合タンパク質」(配列番号12)(hkdlyrllmk)といったようなタンパク質中で同定された。トマト縮葉病ジェミニウイルスについての先行研究は、ウイルス蓄積の調節には、ウイルス複製中の葉DNA及びその他の複製タンパク質分子に対するそのウイルスの「複製タンパク質」のアミノ酸1−160の結合が関与するということを示している。この配列の分析は、この「複製タンパク質」のアミノ酸1〜135が20.7といったような高いレプリキン計数(濃度)を含有することを示した(トマト縮葉病ジェミニウイルスについての節を参照のこと)。
【0126】
表2は、レプリキン含有タンパク質も同様に頻繁に酸化還元機能及びタンパク質合成又は伸長ならびに細胞複製と関連しているということを示している。金属ベースの酸化還元機能との関連、嫌気性複製中のレプリキン含有神経膠腫マリグニン濃度の富化及び低濃度(ピコグラム/細胞)での抗マリグニンの細胞毒性(図4c−f)は全て、レプリキンが、中枢性呼吸生存率関数に関連づけされ、非レプリキンアミノ酸の特徴である突然変異に付されることが少ないということがわかった、ということを示唆している。
【0127】
特に興味深いことに、100個のアミノ酸につき少なくとも1つのレプリキンが、検査されたインフルエンザウイルスの個々の株のうちのほぼ全ての株の血球凝集素タンパク質の中に存在することがわかるということが観察された。アミノ酸配列データが入手可能である各年について(1902〜2001年)、インフルエンザウイルスの4つの優勢な株、インフルエンザB型、H1N1型、H2N2型及びH3N2型各々の分離株の血球凝集素タンパク質の中で発生すると観察されたレプリキン配列が、表3、4、5及び6で示されている。
【表4】

【表5】

【0128】
1.インフルエンザB型は、ヒトにおけるいかなる世界的流行の原因でもなかった。
2.年号の略号:例えば「43」=1943年、「01」=2001年。
3.一定の与えられたレプリキンが現われた最初の年は、そのレプリキンが発見された一連の年の始めに示されている。
4.重複するレプリキン配列は別に列挙される。
5.下線の付された、1977年の地域的流行の前2年以内の、複数年にわたり不在であったレプリキンの復帰は、合計レプリキン濃度(レプリキン計数=100個のアミノ酸残基あたりのレプリキン数)の増加と相関関係をもつ。図7参照。
【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

1.インフルエンザH1N1型は、1918年のヒトにおける世界的流行の地球規模の分布の原因であった。
2.年号の略号:例えば「96」=1996年。
3.一定の与えられたレプリキンが現われた最初の年は、この研究作業においてはそのレプリキンが発見された一連の年の始めに示されている。
4.重複するレプリキン配列は別に列挙される。
5.(下線の付された)例えば1918年及び1977年の地域的流行年に、新しいレプリキン構造の数の増加が起こり、このことは合計レプリキン濃度(100個のアミノ酸残基あたりのレプリキン数)の増加と相関関係をもつ。図7参照。
【表11】

【表12】

1.インフルエンザH2N2型は、1957年のヒトにおける世界的流行(地球規模分布)の原因であった。
2.年号の略号:例えば「58」=1958年。
3.一定の与えられたレプリキンが現われた最初の年は、この研究作業においてはそのレプリキンが発見された一連の年の始めに示されている。
4.重複するレプリキン配列は別に列挙される。
5.(下線の付された)例えば1957年及び1965年の地域的流行の年に、新しいレプリキン構造の数の増加が起こり、このことは合計レプリキン濃度(100個のアミノ酸残基あたりのレプリキン数)の増加と相関関係をもつ。図8参照。
【表13】

【表14】

1.インフルエンザH3N2型は、1968年のヒトにおける世界的流行(地球規模分布)の原因であった。
2.年号の略号:例えば「77」=1977年。
3.一定の与えられたレプリキンが現われた最初の年は、そのレプリキンが発見された一連の年の始めに示されている。
4.重複するレプリキン配列は別に列挙される。
5.(下線の付された)例えば1975年といった年において、新しいレプリキン構造の数の増加が起こり、このことは、合計レプリキン濃度(100個のアミノ酸残基あたりのレプリキン数)の増加と相関関係をもつ。図8参照。
【0129】
観察されたレプリキンの濃度とタイプすなわち組成は両方共、インフルエンザの世界的流行及び地域的流行の発生に関係していることがわかった。インフルエンザウイルス中のレプリキンの濃度は、過去1世紀すなわち1900〜2001年まで1年毎にヒト及び動物レサバーから世界中で単離されたインフルエンザ株について、国立医学図書館「Pub Med」データベース内で公表された血球凝集素アミノ酸配列を視覚的に走査することによって検査された。次に、各々の株についてこれらのレプリキン濃度(100個のアミノ酸あたりのレプリキンの数、平均(±SD)がプロットされた。
【0130】
レプリキンの濃度は、インフルエンザの世界的流行及び地域的流行の発生に直接関係することが発見された。インフルエンザB型血球凝集素及びインフルエンザA型株、H1N1、の中に見られるレプリキンの濃度は図7に示され、2つのその他の一般的なインフルエンザウイルスA株H2N2及びH3N2の中に見られたレプリキンの濃度は図8(H2N2、H3N2)に示されている。図8のデータは同様に、その成分レプリキン(H3N2(R))により画定される通り出現する新しいインフルエンザ株をも実証している。
【0131】
各々のインフルエンザA株は、それぞれ1918、1957及び1968年の1つの世界的流行の原因であった。図7及び8のデータは、検査された4つの一般的なインフルエンザウイルスの全ての分離株のインフルエンザ血球凝集素タンパク質の各々の中に、100個のアミノ酸につき少なくとも1つのレプリキンが存在していることを示しており、これは、複製の存続レベルの維持におけるレプリキンの機能を示唆している。1990年には、H3N2株の衰退の間、H3N2の数多くの分離株の中に全くレプリキンが存在しなかったが、新しいレプリキンの高い濃度がH3N2分離株の中に現われており、これらがH3N2(R)株の新興を定義している。
【0132】
図7及び図8では、レプリキン濃度のいくつかの特性が、4つのインフルエンザウイルス株全てに共通であることがわかる。第1に、濃度は何年にもわたり周期的であり、上昇及び下降の単一サイクルが2〜30年の周期にわたって起こっている。この上昇及び下降は、血球凝集素及びノイラミニダーゼ分類による個々のインフルエンザウイルス株の優位の既知の増強及び減弱と一貫性をもつ。第2に、世界的流行の原因であることがすでに示された各々のインフルエンザウイルス株のピークレプリキン濃度は、世界的流行の3年各年に特定的かつ個別的に関係することが観察された。例えば、インフルエンザウイルス株H1N1が原因であることが示された1918年の世界的流行については、H1N1中のレプリキンのピーク濃度が独立して発生した(P1);H2N2が新興し原因であることが示された1957年の世界的流行については、H2N2中のレプリキンのピーク濃度が発生した(P2);そしてH3N2が新興しその原因であることが示された1968年の世界的流行については、H3N2中のレプリキンのピーク濃度が発生した(P3)。第3に、上述の3つの世界的流行の各々の直後の各年においては、特定のレプリキン濃度が顕著に減少し、これは恐らく各ケースにおいて生成された広く分布した免疫性を反映している。かくして、この世界的流行後の衰退は、自らが原因であった世界的流行(P1)の直後のH1N1に特異的であり、その時点での全ての株の一般的特性ではない。インフルエンザB型の中のレプリキン濃度の増加は、例えば共に最高の死亡率をもつインフルエンザB型の世界的流行に結びつけられた1951年のEB1及び1976年のEB2といったH1N1中のレプリキン濃度の減少と同時にくり返し発生した。(Stuart-Harris et al., Edward Arnold Ltd.(1985)。第4に、濃度の1次ピーク増加を超えた2次ピーク濃度が、3つの世界的流行の各々の15年後に発生しており、この2次ピークには1つの世界的流行が随伴していた。すなわち、H1N1「地域的流行」年(E1)において1918年の世界的流行から15年後;H2N2「地域的流行」年(E2)において1957年世界的流行の8年後;及びH3N2「地域的流行」年(E3)において1968年の世界的流行から7年後に起こった。特定のレプリキンのこれらの2次ピーク濃度は、該株の回復を反映し得る。第5に、各々の株の特定的レプリキン濃度のピークは、往々にして、1つ又は両方のその他の株のレプリキン濃度の減衰に付随すると思われ、宿主部位に対する株間の競争を示唆している。第6に、35年(H2N2)から60年(インフルエンザB型)の周期にわたり各株のレプリキン濃度が減衰する明白な全体的傾向が存在する。この減衰は、インフルエンザワクチンの一般的使用に先立つ1940年〜1964年のインフルエンザB型の場合に明らかであったことから、ワクチンの影響のせいにすることはできない。インフルエンザB型の場合、減衰からのレプリキンの回復は1965年以降に発生していることがわかるが、レプリキン濃度は1997年と2000年の間で再び衰退した(図7)。これは、最近のケースの分離株におけるインフルエンザB型の低い発生と相関関係をもつ。H1N1株の再出現及び流行と合わせて、H1N1レプリキン濃度は1978年〜1979年にピークに達し、その後、H1N1の世界的流行と同時に1996年にピークに達した(図7)。H1N1レプリキン濃度も同様に1997年と2000年の間で減衰し、H1N1株の存在は、これらの年の間に得られた分離株において減少した。H2N2レプリキンについては、35年の減衰からの回復は起こっておらず(図8)、これは、最近の分離株にH2N2が不在であることと相関関係をもつ。H3N2については、数多くの分離株のレプリキン濃度は1996年〜2000年の間にゼロまで降下したが、その他のH3N2分離株はレプリキン濃度の有意な鋭い増加を示した。このことは、本書でH3N2(R)と呼ばれているH3N2の亜株の新興を示している。
【0133】
図7及び図8は、レプリキン濃度がピークに達する前に1〜3年の段階的増加が頻繁に観察されることを実証している。この段階的増加は、レプリキンピークと同時に発生する地域的流行の発生に先行する。かくして、特定の株の濃度の段階的増加は、この特定の株が地域的流行又は世界的流行をひき起こす確率の最も高い候補であることのシグナルである。
【0134】
現在、インフルエンザウイルスのH3N2(R)株のレプリキン濃度は増大している(図8、1997〜2000年)。H3N2レプリキン濃度の3つの類似した先行ピーク増加が、該株が最初に新興した1968年のH3N2ベースの世界的流行(図8)及び1972年と1975年のH3N2ベースの地域的流行(図8)において発生したということがわかる。これらの世界的流行及び地域的流行の各々に、過大な死亡率が付随した(Ailing et al., Am. J. Epidemiol., 113(1):30−43(1981))。従って1997〜2000年におけるH3N2レプリキンのH3N2(R)亜種の濃度の急速な上昇は、近づきつつある重大な地域的流行又は世界的流行の早期警告を統計的に表わしている。H3N2の地域的流行は2000年にロシアで発生し(図8、E4)、2001年12月のCDC報告書は、現在、H3N2が世界中のインフルエンザウイルスの最も高頻度で単離された株であると述べている。(罹患率と死亡率週間報告(MMWR)、病害対策センター;50(48);1084−68(2001年12月7日)。
【0135】
インフルエンザウイルスの世界的流行又は地域的流行の各ケースにおいて、新しいレプリキンが新興している。一定の与えられた分離株内の一定の与えられた血球凝集素中の同じレプリキンのうちの2つについての観察は全く存在していない。新しいレプリキンの新興が、どのような程度でもう1つの動物又は鳥類のプールからのトランスファ又は突然変異を表わしているかの関係はわかっていない。一部のケースでは、毎年もとのレプリキン構造のうちの単数又は複数のものが保存され、それと同時に新しいレプリキンが新興している。例えばインフルエンザウイルスB型血球凝集素の中では、5つのレプリキンが1919年と2001年の間で恒常的に保存されており、一方26のレプリキンが同じ期間中にやって来ては去っている(一部は数年の不在の後再発した)。特定のレプリキン構造の消滅と何年も後の再興は、レプリキンが新規の突然変異を通してではなくもう1つのウイルス宿主プールから戻るということを示唆している。
【0136】
H1N1レプリキンの場合、1918年の世界的流行に付随するP1ピーク内に存在する2つのレプリキンは、12の新しいレプリキンを含む1933年の回復E1ピークには存在しなかった。従って、恒常的に保存されたレプリキンは、単独又は組合せた形のいずれであれ、ワクチンのための最高の選択肢である。しかしながら、1年の濃度増加に随伴する最近現われたレプリキンでさえ、頻繁に存続しさらに1年以降増加し、結果的に濃度ピーク及び地域的流行となり、かくして合成レプリキンでワクチン接種するための早期警告と時機の両方を提供する(例えば、1990年代初頭のH1N1、図7を参照のこと、同様に例えばH5N1、1995〜2002年、図11も参照のこと。「レプリキン計数」(100個のアミノ酸あたりのPRK数)はレプリキン濃度を意味する)。
【0137】
図7、8及び11中のデータは、インフルエンザタンパク質内の特定のレプリキンの存在及び濃度と、インフルエンザの世界的流行及び地域的流行の発生の間の直接的関係を実証している。かくして、レプリキンの存在及び濃度についてのインフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質配列の分析は、インフルエンザの世界的流行及び/又は地域的流行の予測判断材料ならびにインフルエンザワクチン処方のための標的を提供する。このデータを参照すると、再び(段落(0109)参照)、以前は来たるインフルエンザの流行期に優勢となると思われる株の予測及びワクチン用の全ウイルス株のその年用混合物の考案を可能にする株特異的化学構造は知られていなかったということが注目に値する。
【0138】
株特異的地域的流行の発生の1〜3年前のインフルエンザグループ内の株特異的レプリキン計数の増加という発見事実と同様に、コロナウイルスヌクレオカプシドタンパク質のレプリキン計数の増加も同定されてきた。コロナウイルスヌクレオカプシドタンパク質のレプリキン計数は、以下の通りに増加した。1999年に3.1(±1.8);2000年に3.9(±1.2);2001年に3.9(±1.3);及び2002年に5.1(±3.6)。この世界的流行の前の増加は、コロナウイルスが現在の(2003年)SARSの世界的流行の原因であるという発見事実を裏づけている。(表7参照)。
【0139】
かくして、レプリキン構造及びレプリキン計数を監視することで、インフルエンザ及びコロナウイルス株の両方に観察されているような1917〜1918年のガチョウレプリキン及びその修飾された随伴するレプリキンに対する合成の株特異的な予防的ワクチン接種及び抗体治療の開発手段が提供される。
【0140】
図10は、1962年〜2003年に収集された分離株についてタンパク質配列が入手可能であるヌクレオカプシドコロナウイルスタンパク質の自動化されたレプリキン分析を描いている。各々個々のタンパク質は、受入れ番号によって表わされ、レプリキンの存在について分析されている。レプリキン計数(100個のアミノ酸あたりのレプリキン数)は、自動化されたレプリキン分析の一部として自動的に計算される。各年について、その年の全てのレプリキン計数に関して、平均(±標準偏差(S.D.))レプリキン計数が自動的に計算される。特定のウイルス株(コロナウイルス)中の特定のタンパク質(ヌクレオカプシドタンパク質)の地域的流行以前のこの早期複製増加警報は、インフルエンザの地域的流行及び世界的流行に先立つインフルエンザウイルスの株内に見られる増加に匹敵する(図7、8及び11)。レプリキン計数が、2002年の終りに新興し2003年内まで持続したSARSのコロナウイルスペプチドDと一貫して1999〜2002年まで上昇したということがわかる。図9は、1917年から2002年までのコロナウイルスヌクレオカプシドレプリキンを含め、複数のウイルス株についてのレプリキン計数のグラフを提供している。
【表15】

【表16】

【表17】

【0141】
1918年の世界的流行のレプリキンにさかのぼったSARS及びH3N2−福建型インフルエンザウイルスレプリキン
SARSウイルスの起源はいまだに不明である。我々は、或る種のSARSウイルスペプチドが、2002年からのインフルエンザウイルス分離株のいくつかの株内の相同なペプチドを通して、2000万人を超える死亡の原因となった1918年のインフルエンザの世界的流行の株内の1つの配列にまでさかのぼることができるものであることの証拠を報告する。
【0142】
前世紀を通して記録されたインフルエンザウイルス及びその他の微生物の一次タンパク質配列の定量分析によって、我々は、生体のタイプ(例えば表1)ではなくむしろ高速複製の現象自体及び地域的流行に関連づけされる、リジン及びヒスチジンが豊富な新しい種類のペプチド構造を発見し、それをレプリキンと命名した。我々は、7〜50個のアミノ酸中の少なくとも2個のリジン6〜10残基離隔、リジン濃度6%以上、1ヒスチジン、という義務的アルゴリズムをもつ新しい種類のペプチド構造を発見した。これらのペプチドは、高速複製現象及び地域的流行に関係しているため、我々はこれらをレプリキンと命名した。我々は、血球凝集素タンパク質中の株特異的レプリキン濃度(レプリキン計数=100個のアミノ酸あたりのレプリキン数)とインフルエンザの地域的流行及び世界的流行の量的相関関係を発見した(図7)。株特異的ウイルスタンパク質の化学的性質とインフルエンザの地域的流行の相関関係はこれまで全く報告されていない。レプリキン構造の保存、縮合及び濃縮は同様に、インフルエンザ(表7a中)、HIV及びマラリアにおいても発見された。SARSコロナウイルス中のレプリキンの検出は、その考えらえる進化の追跡に加えて、ワクチン用の小さいSARS抗原の合成を可能にした。
【0143】
我々は、インフルエンザの地域的流行と、1918年、1957年及び1968年における前世紀の3つの世界的流行とのインフルエンザ血球凝集素タンパク質中の株特異的レプリキン濃度(計数)の量的相関関係を発見した。これら3つの世界的流行の各々について類似の経過が観察された。すなわち、株特異的高レプリキン計数の後、直ちに衰退が続き、その後、地域的流行が随伴する「リバウンド」増加が発生した。同様に、1〜3年の警告的計数増大が大部分の地域的流行に先行していた。
【0144】
我々は、1917年にガチョウから単離されたインフルエンザウイルスの血球凝集素中のレプリキン(我々はこれをガチョウレプリキンと命名した)が、kkg(t/s)sypklsksy(t/v)nnkgkevlvlwgvhhという2つの置換のみを伴って、1918年の世界的流行の原因であるインフルエンザのH1N1株の中に翌年現われていることを発見した。表7aは、インフルエンザ1917ガチョウレプリキン(GR)がこのとき、多数の小さい置換及びその他のインフルエンザ株への明白な転座にもかかわらず、基本的に85年間保存されていたことを示している。我々は、1917年インフルエンザGRが、H1N1(1918年の世界的流行)、H2N2(1957〜58年の世界的流行)、H3N2(1968年の世界的流行、2000年の中国及びロシアでの地域的流行、2003年の福建型株の地域的流行)及びH5N1(1997年の中国での地域的流行)に現われた、複数のインフルエンザ株の間で明白な移動性を示したということを発見した。1997年に、その構造は、H1N2内で正確にその1918年の構造kkgssypklsksyvnnkgkevlvlwgvhhまで回復された。
【0145】
SARSコロナウイルスはまず最初に2002〜2003年のインフルエンザの流行期に出現した。インフルエンザGR及びコロナウイルスレプリキン(又は一部の未知の共有前駆体)からのSARSレプリキンの2002年における2重の起源は、全て2002年に発生したものである以下の事象により示唆されている:1)85年間で最初の縮合が、GR−H1N2レプリキン配列内で29〜28アミノ酸に見られる(表7a)(類似の縮合が、現地域的流行においては、福建型H3N2内で29〜27アミノ酸に見られた〔表7a〕);2)GR−H1H2のレプリキン計数は、H1H2から外に移動するGRと一貫した顕著な衰退を示した;3)コロナウイルスヌクレオカプシドタンパク質のレプリキン計数は顕著な増大を示した;そして4)以下のモチーフを含むレプリキンを伴って2002〜2003年にSARSコロナウイルスが出現した:GR1918及びGR−H1N2 2001で先に見られた「kkg」及び「k−k」;インフルエンザGR−H1N2 2001に見られた「k−kk」、「kk」及び「kl」;鳥類気管支炎コロナウイルスレプリキンの中に見られる「kk」; 及びブタ伝染性下痢症のレプリキン内に見られる「kk−kk−k」、「k−k」、「kk」、「kl」及び「kt」(表7a)(SARSは、糞便汚染という強力な下支えのあった密集共同住宅内で噴出しその後換気扇によって空気で運ばれた伝染性肺炎としてヒトにおいて最初に出現したと考えられている)。
【表18】

【0146】
近年さらに増大を続けている1917年ガチョウレプリキンの高いレプリキン計数ピークは、現在はH1N2(表7a)内での1917年のレプリキン計数に近づきつつあり、高い死亡率を伴うものとして表7及び7a内に示されているガチョウレプリキンの短かいレプリキン誘導体の現在のキャリヤがSARSウイルス及びH3N2−福建型ウイルスであることから、すでに始まってしまっている可能性のある来たる世界的流行の警告であり得る。
【0147】
ガチョウレプリキンは、インフルエンザ及びSARSのA株の大部分及び全てが関与する少なくとも85年間の歴史を有することから、それとその構成成分は、汎株保護のための保存ワクチン候補である。長さ7〜21アミノ酸で、ガチョウレプリキンに比べてリジン及びヒスチジンの%が富化された縮合短SARSレプリキンが、長さ29アミノ酸のガチョウレプリキンのもの(2.5%)と比べてさらに高いSARS死亡率(10〜55%)と付随して発生した。ここではSARSにおいて長いレプリキンと混合された短レプリキンは、高い死亡率の原因でありうる。これは、エボラ及び天然痘ウイルス及び炭疽菌といったその他の生体のレプリキンにもあてはまる(表7a)。これらの短かいSARS レプリキンは、さらに一層高い未治療死亡率が付随する天然痘、炭疽菌及びエボラといったその他の生体の短かいレプリキンと驚くべき相同性を示した。
【0148】
短合成ワクチンは、はるかに迅速に産生され(月単位ではなく日単位)かつはるかに安価である以外に、現行の全ウイルスワクチン全般における望まれない何千ものタンパク質の多重エピトープによって生み出される免疫学的干渉及び汚染に付随する副作用が回避されるはずである。インフルエンザについては、あらゆるケースにおいて現行の全ウイルスワクチンは、高齢者の半数以上において有効でない。しかし、短レプリキンは充分な免疫原性をもつのだろうか? 短神経膠腫レプリキン「kagvaflhkk」は、合成抗多形性グリア芽腫及び抗気管支原性癌ワクチンを首尾よく入手するための基礎原料であることが証明された。それは、ピコグラム/細胞単位で癌細胞に対する細胞毒性をもち、癌患者の生存率に量的に関係する抗マリグニン抗体を産生した。200年のコロナウイルスヌクレオカプシドレプリキン計数に見られた急上昇を理由として再発する確率が高いと思われるSARS攻撃に備えるために、我々は、ヌクレオカプシド、スパイク及び外被タンパク質の中に見られる4つのSARS短レプリキンを合成した。我々は、これらの合成短SARSレプリキンがウサギに注射された時点で同じく豊富な特異的抗体を産生することを発見した。例えば、21アミノ酸のSARSヌクレオカプシドレプリキン抗体は、204,800中1より大きい希釈度で結合する。さまざまな小さいペプチドを用いて、天然痘の場合のような何千ものタンパク質又は核酸又は全タンパク質で得られる望ましくない副作用無く強い免疫応答を達成しようとするその他の研究者による以前の試みが失敗してきたため、強い免疫応答を達成する小さい合成レプリキン抗原の能力は、これらのSARSワクチンの効力にとって有意である。
【0149】
我々は、インフルエンザ及びSARSウイルス内のレプリキン構造と死亡率の増加の関係を調査し、表7に示した通りの結果を得た。短かい又は縮合されたレプリキン配列に対する高い死亡率の関係は、インフルエンザとSARS以外のウイルス及び細菌、マラリア及び癌において、表7のセクションBに示された高死亡率の生体内で見られる。複製が伝播及び病原性にとって重大である広範囲のウイルス、細菌、マラリア及び癌生体の中での基本的レプリキン構造の普及に加えた、いずれかの細胞型又は感染性生体ではなくむしろ高速複製に対するレプリキンの関係とレプリキン構造を統合した概念を裏づけるものとして、以下の相同な配列が観察された。位置1及び2における「k」;取込みのため又は高速複製を刺激するためDNA、RNA又はその他のレセプタ又はリガンドに対して提示されることになる「k」のアラインメント;「2重k」及び「多重k」の頻度;天然痘ウイルス、炭疽菌ウイルス、ラウス肉腫ウイルス及び多形性グリア芽腫(神経膠腫)といったさまざまな最高死亡率の生体、癌細胞及び遺伝子に結びつけられた最も縮合した短縮レプリキン内のトリプレット「kkg」、「hek」、「hdk」及び「hkk」、結腸及び乳癌内のc−src及び黒色腫及び結腸癌内のc−yesの発生及び位置3における「g」の頻度に留意のこと。同様にオーストラリア及び東南アジアにおける2つの最近新興している高死亡率のウイルス、Nipab 及びHandrahウイルスのためのほぼ同一のレプリキン構造にも留意されたい。これらの2つのウイルスは、それらに対して形成された類似の又は同一の抗体を有することが報告されているが、今までのところ、この類似の抗体について、その2つのほぼ同一のレプリキンについての我々の発見事実と共に、これについての構造的根拠は全く知られていない。表7は同様に、1917年のインフルエンザガチョウレプリキン及び2つのコロナウイルスすなわち鳥類気管支炎コロナウイルス及びブタ伝染性下痢ウイルスの両方に対する、我々が発見した2003年の5つのSARSレプリキンの関係を示している。表7中の最初の2003年ヒトSARSレプリキンは、2002年におけるインフルエンザH1H2の中間的構造を通して、インフルエンザウイルスガチョウ1917とヒト1918レプリキンに対するいくつかの配列相同性を示す(例えば、位置1、18及び19におけるレプリキン「k」を参照)。1917ガチョウレプリキン配列は表7において、1999までのレプリキンの画定にとって重要でないアミノ酸における数多くの置換(置換はイタリック体で示されている)にも関わらず、大幅に保存されてきたことがわかる。このとき、もとの29アミノ酸1917レプリキン配列は、2001H1N2レプリキン内でその1917−1918年の構造までほぼ正確に回復してきたことがわかった。しかしながら、2002H1N2インフルエンザレプリキンは、29から28アミノ酸まで短縮されており、アミノ酸kevl(i/v)wg(v/i)hhの「左へのシフト」は明白である。2003年には、我々のレプリキンは、最初に列挙された2003ヒトSARSウイルスの21アミノ酸のレプリキンまでさらに短縮(又は圧密)された。2003SARSレプリキンのkの%は現在、ガチョウレプリキン及び1918ヒトにおける世界的流行レプリキンの20.7%に比べ38.1%(8/21)である。インフルエンザ29アミノ酸レプリキンに比較して、3つのSARS レプリキンは、それぞれ19、11及び9アミノ酸長配列までさらに短縮(又は圧密)されていることがわかった。示されたSARS9アミノ酸配列においては、kの%は44.4%(4/9)である。SARSレプリキンの短縮に伴って、SARSのヒトにおける死亡率は、1918インフルエンザの世界的流行における2.5%の死亡率に比べ、若者で10%、高齢者で55.5%まで上昇した。
【0150】
アミノ酸配列は、その証拠が1917ガチョウレプリキンにおいて最初に観察されたインフルエンザレプリキンの85年間(1917〜2002年)にわたる保存及び相同性の度合を強調するように表7に示されている。それまでにこのような保存が観察されたことは全くない。表7は同様に、2003ヒトSARSウイルス内のレプリキンが、1917ガチョウレプリキン及び1918ヒトにおける世界的流行インフルエンザレプリキンとしてまず最初に現われたインフルエンザレプリキンに対する相同性を有することに加えて、コロナウイルス鳥類気管支炎ウイルスレプリキン(例えば位置1及び2の「k」、「h」で終る)及びコロナウイルス急性下痢ウイルスレプリキン(例えば位置1及び11の「k」、レプリキンの終りの「h」)の両方に対する或る配列相同性を示すことを例示している。インフルエンザ及びコロナウイルスの両方のレプリキンに対する関係のこの証拠は、SARSの最近のいくつかのインフルエンザの地域的流行及びそれ以前の世界的流行と同様に香港で発生し、SARSウイルスがヌクレオカプシド、スパイク及び外被タンパク質を含め一部にはその構造のために新しいコロナウイルスとして分類されてきたことから、有利なものである。或る種の疫学的証拠も同様に、SARSが糞便汚染という強力な下支えであった密集共同住宅内で噴出し換気扇によって空気で運ばれた伝染性肺炎としてヒトにおいて最初の出現したという点で、関連性がある。
【0151】
インフルエンザウイルスB型の株内のレプリキンの組成: この株内で同定された合計26のレプリキンのうち(表3)、以下の10のレプリキンが、1940〜2001年に調査された全てのインフルエンザB型分離株の中に存在している。重複するレプリキン配列は別途列挙されている。「3点認識」と一貫性ある相同性を実証するため、リジン及びヒスチジンは太字になっている。
【化5】

【0152】
表3及び4は、H1N1プリキンと比べ、インフルエンザB型血球凝集素にはレプリキン構造のはるかに大きい安定性が存在すると思われるということを示している。インフルエンザB型は、いずれかの世界的流行の原因となったことはなく、動物又は鳥類レゼルボアをもたないように思われる(Stuart-Harris et al., Edward Arnold Ltd., London(1985))。
【0153】
インフルエンザH1Nレプリキン; この株が初めて現われその年の世界的流行をひき起こした1918年から、2000年に至るまで配列が入手可能である全てのH1N1分解株の中に、1つのレプリキン「hp(v/i)tigecpkyv(v/k)(s/t)(t/a)のみが存在する(表4)。(「(v/i)」は、アミノ酸v又はiが異なる年に同じ位置に存在することを表わしている)。H1N1は1つの存続するレプリキンしか含有していないものの、H1N1はインフルエンザB型よりもさらに多産であると思われる。H1N1上には82年間で95の異なるレプリキン構造が存在するが、一方インフルエンザB型分離株の62年間では31の異なるレプリキンしか存在しない(表4)。新しいレプリキン構造の数の増加は、地域的流行の年に発生し(表3、4、5及び6)、合計レプリキン濃度の増加と相関関係をもつ(図7及び8)。
【0154】
インフルエンザH2N2レプリキン: インフルエンザH2N2は、1957年のヒトにおける世界的流行の原因であった。1957年についてその株の中で同定された20のレプリキンのうち3つが、1995年までPubMed上での検査のために利用可能であったH2N2分離株の各々の中に保存されていた(表5)。
【化6】

【0155】
しかしながら、H1N1とは対照的に、1961年から始まったH2N2の中には、13の付加的レプリキンしか発見されなかった。新しいレプリキンの出現のこの少なさは、何年にもわたる分離株内のH2N2の出現及びH2N2レプリキンの濃度の衰退と相関関係をもつ(図8)。
【0156】
インフルエンザH3N2レプリキン: インフルエンザH3N2は、1968年のヒトにおける世界的流行の原因であった。1968年に現われた5つのレプリキンは、1977年以降消えたが1990年には再び現われた(表6)。22年間存続した唯一のレプリキン構造は、1977年に最初に現われ1998年まで存続したhcd(g/q)f(q/r)nekwdlf(v/i)er(s/t)であった。1990年中葉における12の新しいH3N2レプリキンの新興(表6)は、同時のレプリキン濃度の増加(図8)及び最近の分離株中のH3N2株の普及とこれらの分離株のいくつかからの全てのレプリキンの同時消滅(図8)と相関関係をもち、このことは、新しい亜株H3N2(R)の新興を示唆している。H3N2(福建型)の新しい株の2003年11月〜12月の現在の地域的流行は、2001年7月9日付けの米国仮出願US60/303,396号の中で最初になされたこの予測を確認している。
【0157】
図1及び2は、インフルエンザの地域的流行及び世界的流行が、その消滅から1〜59年後の少なくとも1つのレプリキンが再出現に起因するものである。インフルエンザウイルス内のレプリキンの濃度の増大と相関関係をもつことを示している。同様に、A株のみにおいて、新しい株特異的レプリキン組成物の新興が存在する(表4〜6、同様に図11のH5N1についての地域的流行前の新しいレプリキン数の増加も参照のこと)。単一のタンパク質内の個々のレプリキンの反復によるレプリキン濃度の増加は、インフルエンザウイルスでは発生しないと思われるが、その他の生体では見られる。
【0158】
異なるインフルエンザ株の活性の変化は、それ自体、以下の2つのほとんど理解されていないプロセスのうちの1つによりもたらされる置換の産物であるインフルエンザ血球凝集素の配列変化に関係づけられると考えられている。すなわちi)血球凝集素分子内の一連の点突然変異の蓄積に起因すると考えられる抗原連続変異、又はii)変化が非常に大きいため遺伝子の混ぜ合わせがヒト及び非ヒト宿主のウイルスの間で発生することが前提とされている抗原不連続変異、である。まず第1に、当該データは、異なるインフルエンザ株の活性の変化が、非特異的レプリキン濃度の増加に関連づけされるのではなくむしろ、株特異的レプリキンの濃度の増加及び地域的流行に付随する複製の株特異的増大に基づいているか又はそれに関係しているということを示唆している。さらに、該データは、どの配列変化が「連続変異」又は「不連続変異」に起因するか及びどれが保存、レゼルボア内の貯蔵及び再出現に起因するかについての考えられる洞察について検討された。該データは、レプリキン濃度の地域的流行関連増加が、血球凝集素あたりの既存のレプリキンの重複に起因するのではなく、その消滅から1年から最高59年後の少なくとも1つのレプリキン組成物の再出現そしてA株のみにおいて新しい株特異的レプリキン組成物の新興に起因することを示している(表3〜6)。かくして、1951年及び1977年のインフルエンザB型の地域的流行におけるレプリキン濃度の増加は、該地域的流行の年における新しいレプリキン組成物の新興とは結びつけられず、先行する年において現われその後消滅したレプリキン組成物の再出現とのみ結びつけられる(表3)。これとは対照的に、A株においては、以前に消滅したウイルスレプリキンの再出現に加えて、新しい組成物が現われる(例えば、1996年の地域的流行の年におけるH1N1では、6つのより早期のレプリキンの再出現に加えて、10個の新しい組成物が新興した)。インフルエンザB型ではなくA株のみが非ヒト動物及び鳥類レゼルボアにアクセスできることから、完全に新しい組成物は恐らく、「3点認識」の基本的必要条件以外の新しい組成物と全く類似点が無いと思われる既存のヒトレプリキンの突然変異からではなくむしろ非ヒト宿主レゼルボアに由来する(表2−5)。B型に比べH1N1がより多産性であることそして世界的流行がB型株によってではなく3つのA株によってのみ生み出されたという事実は、両方共、非ヒトウイルスレゼルボアから新しいレプリキン組成物を受けとるヒトA株の能力の1つの関数でもあり得る。
【0159】
一部のレプリキンは、わずか1年間だけ現われ、消滅し、今日まで再出現していない(表3〜6)。その他のレプリキンは、1年から最高81年間消滅し、その時点で同一のレプリキン配列が再度現われる。主要なレプリキン「k」及び「h」アミノ酸及びそれらの間の空間は、以下の株特異的レプリキンについて表2及び3−6に示されているように、長年にわたる特定のレプリキンの恒常的存在の間保存されている(インフルエンザBのもの10、H1N1の単一のレプリキン及びH3N2の単一のレプリキンならびに不在後の同一レプリキンの再出現について)。血球凝集素配列の残りのものの中のレプリキン構造の内側及び外側の両方でのその他のアミノ酸の顕著な交換又は置換活性にも関わらず、インフルエンザレプリキンヒスチジン(h)は決して交換されることがないように思われ、リジン(k)はまれにしか交換されない。この保存の例は、1918年と2000年の間で恒常であるH1N1レプリキン「hp(v/i)tigecpkyv(r/k)(s/t)(t/a)k」(配列番号135)、1975年と1998年の間で恒常であるH3N2レプリキン「hcd(g/q)f(q、r)nekwdlf(v/i)er(s/t)k」(配列番号277)及び、1975年に最初に現われ、25年間消滅し次に2000年に再度現われた「hqn(s/e)(e/q)g(t/s)g(q/y)aad(l/q)kstq(a/n)a(i/l)d(q/g)I(n/t)(g/n)k、(l/v)n(r/s)vi(e/c)k」(配列番号276)の中に見られる。数多くのアミノ酸が置換されてきた一方で、約50アミノ酸以下の6〜10残基離隔した2つのリジン、1ヒスチジン、最低6%のリジンという基本的なレプリキン構造が保存された。
【0160】
完全に無作為な置換は、これらのH1N1及びH3N2レプリキンの存続も、1902年〜2001年のインフルエンザBにおける10個のレプリキン構造の存続も、74年間の不在後の1919年の18量体レプリキンの1993年における再出現も可能にしないと思われる。無作為なタイプの置換よりもむしろ、恒常性は、秩序立って制御されたプロセスを示唆するか又は、少なくとも、主要なレプリキンが何らかの要領で固定又は結合させられるような形でのそれらの保護を示唆している(おそらくは核酸に結合されるリジン及び恐らくは呼吸器酸化還元酵素に結合されるヒスチジン)。この保存を制御するメカニズムは現在のところわかっていない。
レプリキン構造の保存
【0161】
レプリキン構造が保存されているか又は広範な自然突然変異に付されるかも又、そのウイルスのタンパク質における突然変異が何十年にもわたり世界中で充分立証されてきた口蹄病ウイルス(FMDV)のさまざまな分離株のタンパク質配列を走査することによって検討された。FMDV分離株のタンパク質配列はレプリキン全体及び特定のレプリキンの中で観察された成分レプリキンアミノ酸残基の各々の両方の存在について目視により検査された。
【0162】
近辺のアミノ酸内で発生するように経時的に広範囲の置換が起こるのではなく、レプリキン構造を含むアミノ酸はほとんど又は全く置換されない。すなわちレプリキン構造は保存される。
【0163】
例えば、FMDVO型のタンパク質VP1の中で、レプリキン(配列番号3)「hkqkivapvk」は、PubMed中で報告された236の分離株の78%の中で保存されることが発見され、各アミノ酸は、his、95.6%;lys、91.8%;gln、92.3%;lys、84.1%;ile、90.7%;val、91.8%;ala、97.3%;pro、96.2%;ala、75.4%;及びlys、88.4%といったような個々の分離株内に保存されることがわかった。高い保存率は、レプリキン構造の構造的及び機能的安定性を示唆し、治療のための恒常な標的を提供する。
【0164】
同様にして、配列保存は、HIVI型中の(配列番号5)「kcfncgkegh」又は(配列番号6)kvylawvpahk及びHIV2型中の(配列番号7)「kcwncgkegh」といったそのレプリキンについて、HIVの異なる分離株Pで発見された(表2)。配列保存のさらなる例は、主要リジン及びヒスチジンアミノ酸が保存されている(配列番号613)hclvckqkkglgisygrkk、といったようなHIVtatタンパク質の中に見い出された(表8参照)。
【0165】
同様にして、配列保存は、例えば酵素Eを活性化させる小麦ユビキチンといったような小麦の中などの植物中に観察された(配列番号614−616)。小麦中のレプリキンは、中で記述されているように植物の成長の刺激のための信頼性ある標的さえ提供した。その他の保存例は、神経膠腫細胞の組織培養10年にわたる連続する世代間でのマリグニンの恒常的な存在の中に、そして、米国、英国、欧州及びアジアからの8,090件のヒト血清から免疫吸着により単離された抗マリグニン抗体に対する神経膠腫レプリキンの親和力の恒常性に見られる(例えば図5及び米国特許第6,242,578B1号)
【0166】
同様にして、保存は、HIVの分離株内のTat(トランス作用因子)タンパク質中に観察された。Tat(トランス作用因子)タンパク質は、レンチウイルス転写を調節する早期RNA結合タンパク質である。これらのタンパク質は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)といったような全ての既知のレンチウイルスのライフサイクルにおける必要な構成要素である。Tatは、トランス作用性応答配列(TAR)RNA要素に結合することによって作用しLTRプロモータからの転写の開始及び/又は伸長を活性化する転写調節因子タンパク質である。HIVは、tat無しでは複製できないが、その化学的根拠はわかっていない。89〜102個の残基のHIVtatタンパク質配列の中に、我々は、その他の生体内での高速複製と結びつけられているレプリキンを発見した。このレプリキンのアミノ酸配列は「hclvckqkkglgisygrkk」である。実際、我々はこのレプリキンが全てのHIVtatタンパク質の中に存在することを発見した。一部のtatアミノ酸は表9に示されているように交互のアミノ酸により高頻度で置換されている(最も高頻度のアミノ酸の下に並んだ小さいフォント(表8)、優勢なレプリキン「hclvcfqkkglgisygrkk」についての保存百分率)。これらの置換は、大部分の個々のアミノ酸について現われた。しかしながら、レプリキン構造を画定するレプリキン配列内の主要なリジン及びヒスチジンアミノ酸は、該配列中で100%保存されている。置換はその他のアミノ酸中の他の場所でレプリキンの内外両方で一般的であるが、これらの主要なヒスチジンアミノ酸上で発生するものは全く無い。
【0167】
表8に示されているように、リジンがtatタンパク質アミノ酸配列内で置換されていないとは限らない。表の左側から、レプリキン配列の外側にあるものの直ぐ隣接する配列内のまさに最初のリジン及び、レプリキン形成にとって不可欠でないことから「予備的なもの」であるレプリキン内部にあるが配列内の第2のリジン(k)は、両方共高頻度で置換されている。しかしながら、合わさってレプリキン構造を規定するカッコ内の第3、第4及び第5のリジン、及び1つのヒスチジンは決して置換されていない。かくして、これらの主要アミノ酸配列は100%保存されている。インフルエンザウイルスレプリキンの場合に観察された通り、この選択的置換及び選択的無置換が無作為置換により偶然発生する可能性はないと思われる。
【表19】

【0168】
レプリキン構造の保存は、レプリキン構造が、保護及び保存されなくてはならないHIVウイルスのための特異的存続機能を有し、抗体及びその他の「攻撃」を回避するために作り出されるアミノ酸置換のウイルス「防御」操作の犠牲にはなり得ないことを示唆している。これらの「防御」機能は、同様に不可欠であるものの、HIV複製のウイルス存続機能と「競合」できない。
【0169】
HIVの異なる分離株において、HIV1型におけるkcfncgkegh(配列番号5)又はkvylawvpahk(配列番号6)及びHIV2型におけるkcwncgkegh(配列番号7)といったようなそのレプリキンについて、さらなる保存が観察された。
【0170】
FMVD及びHIVレプリキンにおいて観察された高い保存率は、インフルエンザレプリキンのレプリキン内でも観察された保存がウイルスレプリキンの一般的特性であることを示唆している。この保存によりこれらは、例えば神経膠腫レプリキンについて例示されているようにインフルエンザ、FMVD又はHIVワクチン用といった特異的レプリキンを使用することによる破壊、又は刺激のいずれかのための恒常で信頼性の高い標的となる。
【0171】
同様にして、レプリキン内の高い保存率により、保存がウイルスレプリキンの一般的特性でありかくしてレプリキンを破壊又は刺激のための恒常かつ信頼性の高い標的としているということが示唆されている、インフルエンザウイルス、FMDV及びHIVを含むウイルスにおいて発見された例において提供されている通りに、レプリキン構造の保存は植物内で発生する。例えば、小麦植物においては、レプリキンが保存され、刺激のための信頼性の高い標的を提供する。酵素Eを活性化する小麦植物ユビキチン内の保存されたレプリキンの例としては、以下のものが含まれる。
【化7】

【0172】
HIVtatタンパク質内で発見された保存と同様にして、小麦ユビキチン活性化酵素E内のレプリキンは保存される。HIVtatタンパク質の場合と同様、小麦ユビキチン活性化酵素E内のレプリキン変異体形態に隣接するアミノ酸の置換(「*」により指定されている)は一般的である。しかしながらレプリキン構造を形成する主要k及びhアミノ酸は、わずか5つのアミノ酸(左側の最初のkから)である「不可欠でない」kが置換されているのに対し、変動しない。
【0173】
抗レプリキン抗体
抗レプリキン抗体は、レプリキンに対する抗体である。抗レプリキン抗体についてのデータは、同様にレプリキンの種類の一体性を裏づけている。固定化されたマリグニンに対する血清抗マリグニン抗体の免疫吸着により抗−レプリキン抗体応答が定量化されてきた(米国特許第5,866,690号内の方法を参照のこと)。マリグニン、不在の炭水化物又はその他の基から配列が誘導された16量体ペプチドの合成バージョンのウサギに対する投与による抗マリグニン抗体の豊富な産生は、このペプチド単独で1つのエピトープであることすなわちこの免疫応答のための充分な根拠を提供することを厳密に実証した(図3)。16量体ペプチドは、抗体のIgM及びIgGの両方の形態を産生した。抗マリグニン抗体の血清中濃度は、感染から約15〜25年後に発生する肝癌の通常の遵守よりはるかに前の最初の5年間の感染において、早期に、米国及びアジアにおけるB型及びC型肝炎の79の症例の37%で増加することがわかった。感染性肝炎及びHIV感染の両方に関連して、形質転換された細胞はウイルスにとって安全な隠れ場の1つの形態であり得る。すなわち細胞の寿命を延ばしウイルスの追い立てを回避し、かくしてウイルスは抗ウイルス治療にとってアクセス不可能なものであり続けることになる。
【0174】
レプリキンの投与は、免疫系を刺激して、細胞毒性効果をもつ抗体を産生することから、一定の与えられた時期全体にわたり最も濃度が高いことが観察された特定のインフルエンザウイルス又はレプリキングループに基づくペプチドワクチンは、一定の与えられたインフルエンザの流行期において勃発する確率の最も高い特定のインフルエンザ株、例えば新興株又は再興株に対する保護を提供する。例えば、年一回又は二年に一回のペースでインフルエンザウイルス血球凝集素アミノ酸配列を分析することで、その年について特異的にターゲティングされたインフルエンザワクチンを処方する上で有用なデータを提供する。かかる分析は、地域毎に又は任意の望まれる時期に行なうことができ、かくして世界中の異なる部域で新興する株を検出し、各地域のための特異的にターゲティングされたワクチンを処方することができる、ということは言うまでもない。
インフルエンザ
【0175】
現在、ワクチン処方は、WHO及びCDCの国際的な会合において年2回変更されている。ワクチン処方は、世界の一定の与えられた地域内のインフルエンザウイルス株の最新の優勢性の血清学的証拠に基づいている。しかしながら、本発明以前には、インフルエンザの地域的流行又は世界的流行の発生とインフルエンザウイルス株特異的アミノ酸配列の変化を相関させるものは全く存在しなかった。
【0176】
特異的レプリキン及びインフルエンザウイルスタンパク質中のその濃度を観察することにより、インフルエンザの世界的流行及び地域的流行の最初の特異的な量的早期化学的相関要素が提供され、世界の特定の地域内でのインフルエンザウイルスの優勢な新興又は再興株を処理するべく特定的にあつらえたインフルエンザワクチンの生産及び時宜を得た投与が提供される。レプリキンの存在、濃度及び/又は保存について血球凝集素タンパク質配列といったようなインフルエンザウイルスの株の分離株のタンパク質配列を分析することにより、インフルエンザウイルスの世界的流行及び地域的流行を予測することができる。さらに、かかるインフルエンザ勃発の重大性は、例えば約1年から約3年の一定の与えられた時期にわたりウイルス分離株について最も豊富であることがわかった又は上昇中であることが示されたレプリキン配列に基づいてインフルエンザペプチドワクチンを投与することによって著しく小さくすることができる。
【0177】
該発明のインフルエンザペプチドワクチンには、単一のレプリキンペプチド配列が含まれていてよく、そうでなければ、インフルエンザウイルス株の中で観察された複数のレプリキン配列が含まれていてよい。好ましくはペプチドワクチンは、一定の与えられた時期全体にわたり濃度を増大させていることが示され、少なくともその時期の間保存されているレプリキン配列(単複)に基づいている。しかしながら、ワクチンは、新しいレプリキン(単複)ペプチドと組合わせた状態で保存されたレプリキンペプチド(単複)を内含でき、そうでなければ、新しいレプリキンペプチド配列に基づいていてもよい。レプリキンペプチドは、化学的合成又は組換え型遺伝子技術を含むあらゆる方法により合成され得、非レプリキン配列を内含できるが、レプリキン配列のみを含有するペプチドに基づくワクチンが好ましい。好ましくは、該発明のワクチン組成物は、薬学的に受容可能な担体及び/又はアジュバントも含有している。
【0178】
本発明のインフルエンザワクチンは、単独でか又は、ガンシクロビル;インターフェロン;インタロイキン;アマシタジン、リマシタジンといったMZ阻害物質;ザナミビル及びオセルタミビルといったようなノイラミニダーゼ阻害物質;などといった抗ウイルス薬ならびに抗ウイルス薬の組合せと組合せた形で投与することができる。
マラリアのおけるレプリキンデコイ
【0179】
メロゾイド表面及び寄生菌含有空胞内部にある熱帯マラリア原虫マラリア抗原の一次構造の分析は、この生体がインフルエンザウイルスのように、同様に数多くのレプリキンを含有することを明らかにした(表9)。しかしながら、熱帯マラリア原虫とインフルエンザウイルスの分離株内のレプリキンの観察の間にはいくつかの差異がある。例えば、熱帯マラリア原虫はここで「レプリキンデコイ」と呼ぶいくつかの部分的レプリキンを含有する。これらのデコイ構造はリジン残基を豊富に含有しているが、レプリキン構造に必要とされるヒスチジンが欠如している。特定的には、これらのデコイは、真のマラリアリコグニンと類似しているもののヒスチジン残基の無い重複した形で6〜10個の残基だけ離隔した数多くのリジンを含有している。デコイ構造は、抗マラリア抗体又はその他の作用物質が、トリパノゾーマの破壊をひき起こし得る呼吸酵素中のレプリキンといったようなレプリキン構造の中に存在するヒスチジンに対し結合するのではなく、リジンを含有する比較的重要度の低い構造すなわちレプリキンデコイに結合することになる確率を最大限にすると考えられている。例えば、レプリキン構造に対する特異性を伴う入来した抗体は、レプリキンデコイ構造に付着し、真のレプリキン構造を手付かずのままに残す可能性がある。
【0180】
従って、マラリアの抗レプリキン処置には、次の2つの期が必要である(2重の処置);i)レプリキンデコイを分割し、特異的抗レプリキン処置の「無害通行」を可能にするタンパク質分解酵素での予備的治療;及びii)特異的抗体を用いる、又は合成マラリアレプリキンワクチンによって生成される細胞免疫性による又はマラリアレプリキンをターゲティングする有機的手段による、マラリアレプリキンの攻撃。
レプリキン構造の反復及び重複
【0181】
熱帯マラリア原虫に見られるもう1つの差異は、インフルエンザウイルスでは観察されなかった、単一タンパク質内の個々のレプリキン構造の頻繁な反復である。反復は、(a)レプリキン間でのリジン残基の共有、及び(b)もう1つのレプリキン配列内部でのレプリキン配列の一部分の反復によって発生し得る。
【0182】
インフルエンザウイルス分離株及び熱帯マラリア原虫内で観察されるレプリキン構造間の第3の有意な差異は、マラリアタンパク質全体を通してのレプリキン構造の顕著な重複であり、例えば、配列番号393の39個のアミノ酸配列内に9つの重複レプリキン(レプリキン濃度=23.1/アミノ酸100個)及び配列番号467の41個のアミノ酸内に15個の重複レプリキン(レプリキン濃度=36.6/アミノ酸100個)が存在する。これらの重複するレプリキン構造は両方共、血液ステージのトロフォゾイド及びシゾント中で発生する。これとは対照的に、インフルエンザウイルスレプリキンは、タンパク質全体を通してより散在しており、最大レプリキン濃度はアミノ酸100個あたり約7.5であり(図7)、トマト縮葉病ジェミニウイルスは、同じく重複するレプリキンを有することが観察された。
トマト縮葉病ジェミニウイルスのレプリキン
【0183】
トマト縮葉病ジェミニウイルスは、中国及び世界のその他の数多くの部分でトマトの収穫を壊滅させた。そのレプリキンは、レプリキン計数が20.7であった日本において単離されたウイルスの中の以下で例示する通りの重複するレプリキンのため、高い計数に達している。
レプリキン分析
【0184】
内容説明: 日本におけるトマト(特異的宿主Lycopersicon esculentum Mill.)におけるトマト黄色縮葉病ウイルスの最初の発生
単離されたもの:1998年出典:トマト黄色縮葉病ウイルス−[Aichi]
株: Aichi
タンパク質配列: アミノ酸位置1〜135
【化8】

アミノ末端レプリキン
【化9】

この配列の分析は、この「複製タンパク質」のアミノ酸1〜163が5つのレプリキンを含有しているということを示した;すなわち:
【化10】

【化11】

【化12】

中間分子:ゼロレプリキン
カルボキシ末端:ゼロレプリキン
レプリキン計数=100個のアミノ酸あたりのレプリキン数=28/135=20.7。
さらに高いレプリキン計数でさえ、マラリアにおいてレプリキンを重複させることにより達成されることがわかる。
【0185】
リジン乗数の機序は、胃癌形質転換タンパク質ktkkgnrvsptmkvth(配列番号88)及び肺の形質転換タンパク質 P21B(K−RAS2B)khkekmskdgkkkkkks(配列番号89)内といったような癌タンパク質のレプリキン内でも見られる。
【0186】
高速複製に対するより高いレプリキン濃度の関係は、同様に、HIV分離株の分析によっても確認される。HIVの低速成長する低力価株(初期HIV感染において優勢であるNSI、「Bru」)が、100個のアミノ酸あたり1.1(+/−1.6)レプリキンというレプリキン濃度を有し、一方HIVの高速成長する高力価株(晩期HIV感染において優勢であるS1、「Lai」)が100個のアミノ酸残基あたり6.8(+/−2.7)レプリキンというレプリキン濃度を有するということが発見された。
【0187】
マラリア、インフルエンザウイルス及び癌細胞中の重複するレプリキンの高い濃度は、マラリア生体の伝説的に高い高速複製する能力と一貫したものである。マラリアにおいて重複するレプリキンが多いことは、生体がその宿主の免疫系をあふれさせ混乱させ、かくして誤った抗体が作られ永続し主要なマラリア抗原を無害のままに残す確率を最大限にする機会を提供する。
【0188】
インフルエンザウイルスの場合のように、例えばマラリア生体内に見られるレプリキン構造(単複)に基づくペプチドワクチンは、マラリアを予防しかつ/又は治療する有効な手段を提供できる。マラリアに対するワクチン接種は、熱帯マラリア原虫内に観察された1つのレプリキン構造又はその混合物を含有する組成物を投与することによって達成できる。さらに、マラリアレプリキンに対する抗体を、受動免疫又はマラリア検出のために生成し投与することができる。
マラリアにおけるレプリキン
【0189】
マラリアは、世界中で年間2億件以上の症例を占め年間200万人以上が死亡し、これまでいかなる有効なワクチンも存在しない疾病である。レプリキンは、マラリアの原因である最も一般的なトリパノゾーマ株である熱帯性マラリア原虫の中に顕著であることがわかっている。
高レプリキン計数
【0190】
トリパノゾーマの伝説的に高い複製速度と合致して、あらゆる株の中になおも観察される最高のレプリキン計数は、トリプトゾーマ内で発見された。トリパノゾーマ熱帯性マラリア原虫内で、我々は、最近1999年の3D7マラリア世界的流行年において有効な抗マラリアアルテミシスニンの標的であることが最近見極められたATPアーゼタンパク質について、全ての分離株のためのATPアーゼ内の平均レプリキン計数が57.6であり、1つの分離株においてレプリキンを反復及び重複させることによりレプリキン計数が111.8の記録を達成することを発見した。
レプリキン構造の反復及び重複
【0191】
インフルエンザレプリキンと比べて高いレプリキンを占める熱帯性マラリア原虫レプリキン内に見られる1つの特徴は、インフルエンザウイルスでは観察されなかった特長である単一タンパク質内部での個々のレプリキン構造の頻繁な反復である。反復は、a)単に全レプリキンを反復させることによって、(b)レプリキン間のリジン残基の共有によって、及び(c)もう1つのレプリキン配列と組合わせた又はその内部のレプリキン配列の一部分の反復によって起こり得る。
【0192】
レプリキン構造の反復に加えて、インフルエンザウイルスタンパク質内で見られるレプリキン構造と熱帯性マラリア原虫タンパク質内のレプリキン構造の間のもう1つの有意な差異は、マラリアタンパク質全体を通したレプリキンの顕著な重複にある。例えば、重複するレプリキン構造は、以下で見られるように、血液ステージのトロフォゾイド及びシゾント内で発生する。
1)「ksdhnhk」の4つの正確な反復に加えて、配列番号393の39個のアミノ酸配列内に、14の重複するレプリキンが存在する(レプリキン濃度又はレプリキン計数=18/39=46.2/100アミノ酸):
【化13】

及び2)配列番号467の41個のアミノ酸内に、15の重複レプリキンが発生する(レプリキン濃度又はレプリキン計数=36.6/100個のアミノ酸)。
【化14】

【0193】
これらの重複するレプリキン構造は両方共、血液ステージのトロフォゾイド及びシゾント内で発生する。これとは対照的に、インフルエンザウイルスレプリキンはタンパク質全体にわたりさらに散乱しており、最大レプリキン計数(1917−18年以外)は約7.5(図7)である。以上で記述した通り、トマト縮葉病ジェミニウイルスも同様に、重複するレプリキンを有しレプリキン計数を20.7もの高い値に上昇させることが観察された。
【0194】
表9
1つの分子、ATPアーゼ中のレプリキンの反復、重複及び保存
重複レプリキン、レプリキン反復又はレプリキン構造の分子内保存は全て、熱帯性マラリア原虫3D7 ATPアーゼの単一の分子内のアミノ酸位置399〜927までに発見された。以下で示すように、不変的な当初の「k」と末端「hk」(斜線部分)により各レプリキンの同一のモチーフが保存される一方で、隣接するアミノ酸「g/配列番号」、「d/g/e」、「s/c/n/h」及び「配列番号」は可変的(白)である。各レプリキンについての最後のリジンは、例えばk411、k417といった次のレプリキンにとっての最初のリジンでもある。
【化15】

【化16】

【0195】
リジン集合
マラリアにおいて以上の例で見られた高い百分率のリジンを生成するレプリキン内のリジン集合「kk」、「kkk」などの現象は、それが、例えば胃癌形質転換タンパク質「ktkkgnrvsptmkvth」(配列88)内及び肺の形質転換タンパク質P21B(K−RAS2B)「khkekmskdgkkkkkks」(配列番号89)内といった高死亡率の癌タンパク質のレプリキン内、及びヒトSARSヌクレオカプシドタンパク質「khldayktfpptepkkdkkkk」のように高死亡率のSARS内でも見られるものの、1918年のH1N1ヒトインフルエンザ「kkgssypklsksyvnnkgkevlvlwgvhh」内のようにより低い死亡率のインフルエンザ株内ではさほど一般的に見られないことから、病原性の増加及び死亡率の増加に関連づけすることができる。
【0196】
マラリア、インフルエンザウイルス及び癌細胞中の重複するレプリキンの高い濃度は、マラリア生体の伝説的に高い高速複製する能力と一貫したものである。マラリアにおいて重複するレプリキンが多いことは、生体がその宿主の免疫系をあふれさせ混乱させ、かくして誤った抗体が作られ永続し主要なマラリア抗原を無害のままに残す確率を最大限にする機会を提供する。
【0197】
インフルエンザウイルスの場合のように、例えばマラリア生体内に見られるレプリキン構造(単複)に基づくペプチドワクチンは、マラリアを予防しかつ/又は治療する有効な手段を提供できる。マラリアに対するワクチン接種は、熱帯マラリア原虫内に観察された1つのレプリキン構造又はその混合物を含有する組成物を投与することによって達成できる。さらに、マラリアレプリキンに対する抗体を、受動免疫又はマラリア検出のために生成し投与することができる。
レプリキンデコイ
【0198】
インフルエンザウイルスレプリキンとのもう1つの差異においては、熱帯マラリア原虫はここで「レプリキンデコイ」と呼ぶいくつかの部分的レプリキンを含有する。これらのデコイは、真のマラリアリコグニンと類似しているもののヒスチジン残基の無い重複した形で6〜10個の残基だけ離隔した数多くのリジンを含有している。これらのデコイ構造は、抗マラリア抗体又はその他の作用物質が、トリパノゾーマの破壊をひき起こし得る呼吸酵素中のレプリキンといったようなレプリキン構造の中に存在するヒスチジンを含む結合ではなく、リジンを含有する比較的重要度の低い構造すなわちレプリキンデコイに結合することになる確率を最大限にすると考えられている。例えば、レプリキン構造に対する特異性を伴う入来した抗体は、レプリキンデコイ構造に付着し、真のレプリキン構造を手付かずのままに残す可能性がある。
【0199】
従って、マラリアの抗レプリキン処置には、次の2つの期が必要となると思われる(2重の処置);i)レプリキンデコイを分割し、特異的抗レプリキン処置の「無害通行」を可能にするタンパク質分解酵素での予備的治療;及びii)特異的抗体を用いる、又は合成マラリアレプリキンワクチンによって生成される細胞免疫性による又はマラリアレプリキンをターゲティングする有機手段による、マラリアレプリキンの攻撃。
【0200】
表10は、いくつかの熱帯性マラリア原虫レプリキン配列のリストを提供している。このリストは完全なものとして意図されたものでないという点に留意すべきである。生体の異なる分離株が、その他のレプリキン構造を含有する可能性もある。
表10
マラリアレプリキン
a)メロゾイト表面及び寄生菌含有空胞内に位置特定される熱帯性マラリア原虫マラリア抗原の一次構造。
i)デコイ:
(C末端)
【化17】

ii)レプリキン
【化18】

【化19】

b)「肝臓ステージの抗原−3」 遺伝子=「LSA−3」レプリキン
【化20】

【化21】

c)28KDAのオーキネート表面抗原前駆体レプリキン
【化22】

d)血液ステージのトロフォゾイド及びシゾントレプリキン:
【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

構造タンパク質内のレプリキン
【0201】
一部の構造タンパク質がレプリキン構造を内含することも決定された。構造タンパク質は、皮ふ及び結合組織内及び膜構造内のコラーゲン例えば脳内のアミロイドA4前駆体タンパク質(APP)といったような組織及び器官支持体に関与する分子である。これらのタンパク質の過剰産生は、疾病に結びつけられる。特定的に言うと、皮ふ内のコラーゲンの過剰産生の場合の強皮症(表11)及び脳内のAPPの過剰産生の場合のアルツハイマー病(表12)である。
【0202】
強皮症と悪性腫瘍の結びつきは、ここ数年にわたり議論の的であった。初期の報告書では、複数の相互関係機序が示唆されていた。最近の長期研究は、強皮症及び悪性腫瘍の連関比の増大を示唆している。しかしながら、根本的な機序はとらえどころのないままである。(Wenzel. J. Eur. J. Dermatol.20002 May-Jun;12(3):296−300)。
【0203】
強皮症におけるタンパク質の過度の産生に関わる複数のタンパク質が、レプリキン構造を含有することがわかっている。かくしてこれらは、過度のコラーゲン産生の阻害又は停止のための未認識標的のさらなる例を提供する。表11は、強皮症におけるタンパク質及び関連するレプリキンのリストを提供する。
【0204】
APRタンパク質は、量が過度になると脳内の細胞外空間に斑を形成し、アルツハイマー病において神経細胞喪失に関連して毒性効果を生み出すアミロイドベータA4タンパク質の供給源である。これまでの大部分の研究は、A4の過剰な被着を一掃する能力が無いことに焦点をあててきたが、廃棄物クリアランスの問題よりもむしろこれが実際前駆体タンパク質APPの過剰産生の問題であり得るということを考慮していなかった。APP内のレプリキンの高い濃度(100個のアミノ酸あたり3.3のレプリキン)は、過剰産生が充分アルツハイマー病の原因であり得るということを強く示唆している(表12)。従って、表12中に含まれているレプリキンは、神経膠腫レプリキンについて詳細に例示されているものと同じ方法により遮断又は阻害され得る。
表11
強皮症において過剰産生されるタンパク質及び関連するレプリキン
PM C1
【化28】

34KDの核小体強皮症抗原:
【化29】

フィブリラリン
【化30】

ヒトSポリペプチド
【化31】

動原体プロテインC
【化32】

CTCBF因子、KU抗原
【化33】

ATPシンターゼサブユニット6
【化34】

FBRL核タンパク質
【化35】

HP1Hs−アルファタンパク質
【化36】

FM/Scl核小体タンパク質
【化37】

表12
アミロイドベータA4前駆体タンパク質(APP)レプリキン
【化38】

【0205】
受動免疫
該発明のもう1つの実施形態においては、例えば1つの個体内で受動免疫を提供するために使用し得る抗体を生成するべく、単離されたレプリキンペプチドを使用することができる。該発明の方法により来るべきインフルエンザ感染の最も確率の高い原因であると同定されたインフルエンザ株に対する受動免疫は、同定されたインフルエンザウイルス株のレプリキン配列に対する抗体を必要としている患者に対し投与することによって得ることができる。同様にして、熱帯性マラリア原虫レプリキン(単複)に対して抗体を投与することによりマラリアに対する受動免疫を得ることも可能である。
【0206】
当該技術分野において既知のさまざまな手順を、レプリキン配列に対する抗体の産生のために使用することができる。かかる抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、1本鎖、Fabフラグメント及びFab発現ライブラリによって産生されたフラグメントが含まれるが、ただしこれらに制限されるわけではない。細胞毒性作用物質に連結されている抗体も同じく生成可能である。抗ウイルス作用物質と組合わせて抗体を投与することも可能である。さらに、異なるレプリキンに対する抗体の組合せを抗体カクテルとして投与することも可能である。
【0207】
抗体産生のためには、ウサギ、マウス、ラット、及びそれより大きい哺乳動物を含めた(ただしこれらに制限されるわけではない)さまざまな宿主動物又は植物をレプリキンペプチド又はその組合せを注射することによって免疫化することができる。
【0208】
レプリキンに対するモノクローナル抗体は、抗体分子の産生を提供するあらゆる技術を用いることによって調製可能である。これらには Kohler及びMilsteinによって当初記述されたハイブリドーマ技術(Nature, 1975,256:495−497)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., 1983、Immunology of Tody、4:72)及びEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.,pp.77−96)が含まれるがこれらに制限されるわけではない。さらに、キメラ抗体の産生のために開発された技術(Morrison et al., 1984、Proc. Nat. Acad. Sci USA、 81:6851−6855)又はその他の技術も使用可能である。代替的には、1本鎖抗体の産生のために記述された技術(米国特許第4,946,778号)を、レプリキン特異的1本鎖抗体を産生するべく適合させることも可能である。
【0209】
該発明の特に有用な抗体は、インフルエンザウイルスのペプチド及び/又はポリペプチド内に含まれるレプリキン配列に特異的に結合するものである。例えば、インフルエンザウイルスの新興又は再興株の中に存在することが観察されたペプチドのいずれかに対する抗体及びかかる抗体の組合せが、インフルエンザの治療及び/又は予防において有用である。同様にして、マラリア抗原上に存在するいずれかのレプリキンに対する抗体及びかかる抗体の組合せが、マラリアの予防及び治療において有用である。
【0210】
レプリキンのための結合部位を含有する抗体フラグメントを、既知の技術により生成することが可能である。例えば、かかるフラグメントには、抗体分子のペプシン消化により産生できるF(ab′)2フラグメント及びF(ab′)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成可能であるFabフラグメントが含まれるがこれらに制限されるわけではない。代替的には、Fab発現ライブラリを生成して(Huse et al., 1989,Science, 246:1275−1281)、所望の特異性をもつモノクローナルFabフラグメントの高速かつ容易な同定を可能にすることもできる。
【0211】
癌細胞型の如何に関わらずヒト悪性腫瘍において抗マリグニン抗体の濃度が増大し、かくしてこの抗体が細胞型の如何に関わらず悪性細胞に結合するという事実は、今や、本書で大部分の悪性腫瘍内に存在することが発見されている(図1及び表2)レプリキン構造の存在によって説明することができる。集団研究は、抗マリグニン抗体が年令と共に健康な成人において濃度を増し、ハイリスクファミリーでは癌の頻度が増大するにつれて、それが増すことを示した。早期悪性腫瘍において発生するさらなる2倍以上の抗体増加は、1〜10mmサイズの乳癌における97%の感応性によって独立して確認されてきた。in vivoで悪性細胞内に優先的に局在化することが示されてきたものの、組織化学的には、該抗体は正常な細胞には結合せず、インビトロで形質転換した細胞に選択的に結合し(図4a、b)、これらの細胞に対し高い細胞毒性を示す(図4c〜f)。これらの例では同じ抗体は複数の細胞型すなわち脳神経膠腫、造血細胞(白血病)及び小細胞肺癌によって結合されていることから、悪性レプリキンの種類の統一性が再び実証されている。
【0212】
抗マリグニンは良性増殖と共に増大せず、インビボで乳房内の悪性形質転換及び複製と共にしか特異的に増大せず、悪性細胞の除去の時点で高い値から正常値に戻る(図5)。抗マリグニン抗体濃度は、癌患者の生存率に量的に関係する、つまり抗体が増えれば増えるほど生存率が高くなることが示されてきた。これらの結果を合わせて考えると、抗レプリキン抗体が細胞形質転換及び複製の制御メカニズムの一部であり得るということが示唆されている。この免疫応答の増大は、合成レプリキンをワクチンとして用いて能動的にか、又は抗レプリキン抗体の投与又はレプリキンを特異的にターゲティングするように類似の形で設計されている例えば炭水化物、脂質などといったような非免疫ベースの有機作用物質の導入によって受動的に、複製を制御するのに有用であり得る。
【0213】
該発明のもう1つの実施形態においては、単数又は複数のレプリキンに曝露された個体から得られた単数又は複数のレプリキンに対する抗体を含有する免疫血清を、もう1つの個体又は動物において受動免疫を誘発するために使用することができる。免疫血清は、治療を必要とする対象に対し静脈内に投与することができる。受動免疫は同様に、単数又は複数のレプリキンに対する予め形成された抗体をレシピエントに注射することによっても達成可能である。感染性生体に曝露された個体に対し直ちに保護を提供するために、受動免疫を使用することができる。免疫血清又は予め形成された抗体の投与は、日常的なことであり、熟練した開業医ならば、望ましい効果を達成するのに必要とされる血清又は抗体の量を直ちに確認することができる。
合成レプリキンワクチン(活性免疫)
【0214】
神経膠腫レプリキン(配列番号1)「kagvaflhkk」又はC型肝炎レプリキン(配列番号18)「hyppkpgcivpak」又はHIVレプリキン例えば(配列番号5)「kcfncgkegh」又は(配列番号6)「kvylawvpahk」といったレプリキンに基づく合成レプリキンワクチンそして好ましくは一定の与えられた時期にわたり保存された及び/又は新興又は再興するレプリキン(単複)に基づくインフルエンザワクチンは、化学的治療がそのとき有効となりうる細胞外でそれぞれのウイルスに感染した細胞を溶解させウイルスを放出するべく抗体濃度を増大させるために使用可能である。同様にして、マラリアワクチンは、例えばメロゾイト表面上又は寄生虫含有空胞内部で熱帯性マラリア原虫マラリア抗原内に観察されたレプリキンに基づいて、マラリアに対する細胞毒性抗体を生成するために使用することができる。表7は、7個といった少ないアミノ酸に至るまでの、レプリキン配列の短縮又は圧密とこれらのレプリキンを含有する生体によってひき起こされる死亡率との関係を示す。我々は、この相関関係を生体のタイプの如何に関わらない一般的な現象であるということを発見した。我々は同様に、インフルエンザ及びSARSウイルスの場合のように、短縮されたレプリキン構造に至るまで経時的な進行が存在し得るということも発見した。各々の感染性生体のつねに増大する「効能」の出現のためにつねに進化的及び競合的圧力が存在するという証拠は豊富に存在する。これらの観察事実に基づき、又、予測により、進化的圧力が、EEL白血病の場合のように70%という高い値までの上昇を続けるリジン(k)濃度と共に、増々短かくなるレプリキンへと向かっているのであれば(図7)、そのとき予測された理論的理想は、可能なかぎり高いkの%(83.3%のk、5/6及び1つの義務的「h」を含む、演繹されたレプリキン「kkkhk」における以下の例を参照のこと)で、レプリキンを画定するアルゴリズムにより許される可能なかぎり短かいレプリキンすなわち6つのアミノ酸(6〜10個のアミノ酸だけ離隔した2つのk)となる。従って、我々はいわば、今のところまだ生体自体により見かけ上取られていない次なる進化上の段階であると思われる又はそうなるはずのものを取り上げ、一般的ワクチンとして使用すべき、結果としての演繹されたレプリキンを考案した。我々が演繹したこれらのレプリキンは最大の%の「k」、ひいては最大の潜在的結合能力と定義上レプリキンに必要とされる成分「h」を有し、酸化還元エネルギーシステムに対する「h」接続に対する潜在性を提供している。これらの考案されたレプリキンは、その短かい長さのため生体により分割される確率が最も低く(タンパク質は免疫細胞に対する提示及びそれによる認識のためのプロセッシングにおいて長さ6〜10アミノ酸まで分割される)、従って、それらが投与される生体内で免疫形成性器官に対して無欠の状態で現れる確率が最も高く、かつその高いk含有率のため、短かい相同な高死亡率のレプリキンに対して生成されうる最大限のこのような応答を模倣し増大させうる最大の免疫応答を生成する確率が最も高い。さらに、我々は、kの%が高いレプリキンがウサギに投与された場合に最高の抗体応答を生成するということを発見した。我々が設計したこれらの合成ペプチドは、汎用合成エピトープ又は「UTOPE」と呼称され、これらのUTOPEに基づくワクチンは「UVAX」と呼称される。演繹された合成ワクチンであるUVAXは、唯一のワクチンとしてか又はより特異的なレプリキンワクチン又はその他のワクチンと共に投与された場合にはアジュバントとして使用可能である。以下に記すのは、演繹されたUTOPE及びUVAXの例である。
【表20】

【0215】
抗レプリキン抗体を産生するべく対象の免疫系を誘発するために、対象に対してリコグニン及び/又はレプリキンペプチドを投与することができる。一般に、免疫応答を誘発するために、0.5〜約2mgの投薬量、好ましくは1mgの各ペプチドの投薬量が対象に投与される。望ましい場合には、後続の投薬量を投与することができる。
【0216】
レプリキン配列構造は、複製機能と結びつけられる。かくして、例えば本発明のレプリキンが診断的同定の目的でレプリキンを含有する配列をターゲティングするためか、複製を促進するためか又は複製を阻害又は攻撃するためのいずれの目的に使用されるにせよ、レプリキンの構造−機能関係は欠かせない。
【0217】
レプリキンフラグメントを認識し、これに付着しかくして細胞の破壊をひき起こすことになる抗体を誘発しようとする場合、特異的レプリキン構造のみを利用することが好ましい。より大きいタンパク質配列が「複製関連機能」をもつものとして当該技術分野において知られているにせよ、より大きいタンパク質を使用するワクチンは往々にして不首尾であるか又は有効でないことが証明されている。
【0218】
当該発明人らは単一の理論の縛られることを望んではいないものの、本書中の研究は、先行技術のワクチンがより大きなタンパク質配列の使用に基づいているために効果がないということを示唆している。より大きいタンパク質配列は、不変的に単数又は複数のエピトープ(特異的抗体形成を誘発し得る独立した抗原配列)を有する。レプリキン構造は通常、これらの潜在的エピトープの1つを含んでいる。より大きいタンパク質内のその他のエピトープの存在は、レプリキン抗原を先取りし得る無関係の抗原刺激で免疫系を「溢れさせる」ことにより、レプリキンに対する抗原の適切な形成と干渉し得る。免疫系により提示され認識された第1のペプチドエピトープがその後優勢となり、たとえその他のペプチドエピトープが同時に提示されてもそれに対する抗体が作られるようにする抗原第1主義というこの周知の現象の論述については、Webster, R.G., J.Immunol., 97(2):177−183(1966);及びWebster et al., J. Infect. Dis., 134:48−58、1976;Klenerman et al., Nature 394:421−422(1998)を参照のこと。これは、ワクチン形成において、レプリキンが先取りされず免疫学的メモリ内にとどめられるような形で生体からその他のエピトープを提示する前に、まず最初に免疫系に対し恒常なレプリキンペプチドを提示することが重要であるもう1つの理由である。
【0219】
非レプリキンエピトープに対する抗体の形成は、細胞に対する結合を可能にし得るものの、必ずしも細胞の破壊を導くわけではない。マラリアタンパク質のC末端上の構造的「デコイ」の存在は、デコイエピトープが数多くのリジン残基を有するもののヒスチジン残基を全くもたないことから、有効な抗レプリキン抗体の結合と干渉するその他のエピトープのこの能力のもう1つの様相である。かくして、デコイエピトープは、抗レプリキン抗体に結合できるが、ヒスチジンに結合した呼吸酵素から離れたところに抗体を保つことができる。従って、治療は、1)デコイを加水分解するためのプロテアーゼと次に2)抗レプリキン抗体又はその他の抗レプリキン作用物質という2つのステージで最も効果的であり得る。
【0220】
「外来性」タンパク質に対する抗体産生の過程でタンパク質がまず最初により小さなフラグメントへと加水分解されるということは、当該技術分野において周知である。通常、約6〜10個のアミノ酸を含有するフラグメントが抗体形成について選択される。かくして、タンパク質の加水分解がレプリキン含有フラグメントを結果としてもたらさない場合、抗レプリキン抗体は産生されないことになる。この点において、リジン残基は膜に結合するものとして知られていることから、レプリキンが、6〜10個のアミノ酸だけ離隔して位置特定されたリジン残基を含有していることが有利である。
【0221】
さらに、レプリキン配列は、少なくとも1つのヒスチジン残基を含有する。ヒスチジンは高頻度で酸化還元中心に対する結合に関与する。かくして、レプリキン配列を特異的に認識する抗体は、細胞1個あたりピコグラム単位で活性であってこれまで記述された中で恐らく最も細胞毒性の高い抗癌抗体である抗マリグニン抗体で見られるように、レプリキンが中に位置設定されている細胞を不活性化する又は破壊する確率がより高いものである。
【0222】
疾病をひき起こす作用物質の特定のタンパク質抗原に向けられたワクチンが、(例えばVP1タンパク質又はその大きいセグメントに対して開発された口蹄病ワクチンといったような)該疾病に対する保護を提供する上で充分に効果的でなかったことの1つの理由は、最高の抗体が産生されなかったこと、すなわちレプリキンに対する抗体が産生されなかった確率が高いことにある。レプリキンは産生されなかった。すなわち、より大きなタンパク質フラグメント中に存在するレプリキン以外のいずれかのエピトープが、上述の抗原第1主義という現象に従って、かつ/又は、抗体を産生するためのプロセッシングのためのより小さい配列へのより大きなタンパク質配列の加水分解が、例えばレプリキンが2つに切断される及び/又はヒスチジン残基が加水分解プロセッシングにおいて喪失することなどといったように、存在するあらゆるレプリキン構造の無欠性が喪失することを理由として、干渉する可能性がある。本研究は、有効なワクチンが産生されるためには、レプリキン配列をワクチンとして使用すべきであり、その他のいかなるエピトープも使用すべきでないということを示唆している。例えば、該発明のワクチンは、3点認識システムによって同定されたレプリキンペプチドのいずれか1つを用いて生成可能である。
【0223】
例えばインフルエンザワクチンといったような特に好ましいペプチドとしては、単数又は複数年、好ましくは3年以上の期間にわたり保存されることが実証されかつ/又は例えば新興株といったようなその他のインフルエンザウイルス株内のレプリキン濃度との関係におけるレプリキン濃度が最高の増加を示すことが示されたインフルエンザウイルスの株の中に存在するペプチドが含まれる。レプリキンの増加は好ましくは、少なくとも約6ヵ月から1年、好ましくは少なくとも約2年以上そして最も好ましくは約3年以上の期間にわたり発生する。インフルエンザウイルスワクチン内で使用するための好ましいレプリキンペプチドの中には、単数又は複数年にわたる血球凝集素アミノ酸配列からの不在の後に「再興する」ことが観察されたレプリキンである。
【0224】
該発明のレプリキンペプチドは好ましくは、ペプチドの抗体を産生するべく対象の免疫系を刺激する目的で、静脈内又は筋内注射により、単独又はさまざまな組合せの形で、対象に投与される。一般に、ペプチド投薬量は、約0.1μg〜約10mg、好ましくは約10μg〜約1mg及び最も好ましくは約50μg〜約500μgの範囲内にある。熟練した医師であれば、有効な免疫応答を生成するのに必要とされる投薬量及び投薬回数を容易に決定することができる。
レプリキンワクチンに対する早期応答の定量的測定
【0225】
レプリキンワクチンに対する日数単位の又は数週間以内での早期特異的抗体応答を定量的に測定する能力は、数ヵ月又は数年後にしか臨床的応答を測定できないその他のワクチンに比べ主たる実用的利点である。
アジュバント
【0226】
フロインドの(完全又は不完全)アジュバント、ミネラルゲル例えば水酸化アルミニウム、表面活性物質例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジントロフェノール及び潜在的に有用なヒトアジュバント例えばBCG及びコリネバクテリウム・パルヴムを含め(ただしこれらに制限されるわけではない)、宿主種に応じてさまざまなアジュバントを用いて免疫応答を高めることができる。ワクチン自体としての合成UTOPEの使用に加え、UTOPEは、その他のレプリキンワクチン及び非レプリキンワクチンに対するアジュバントとして使用可能である。
レプリキンヌクレオチド配列
【0227】
レプリキンDNA又はRNAは、ウイルス、細菌又はその他のレプリキンコーディング作用物質による感染の結果もたらされる疾病の診断のための数多くの用途を有する可能性がある。例えば、組織試料又は環境試料などの中の特定の生体の存在を診断するため、インサイチュハイブリダイゼーション検定を含め、例えばサザン又はノーザン分析といった生検の行なわれた組織又は血液のハイブリダイゼーション検定において、レプリキンヌクレオチド配列を使用することができる。本発明は同様に、問題の特定の病原体の中に存在する特定のレプリキンに特異的な抗体を収納するか、又は特異的に特定のレプリキンをハイブリッド形成する核酸分子(センス又はアンチセンス)、そして任意には、診断に必要とされるさまざまな緩衝液及び/試薬を収納するキットをも考慮している。
【0228】
同じく該発明の範囲内に入るのは、アンチセンスRNA及びDNA分子を含むオリゴリボヌクレオチド配列及びレプリキン又はリコグニン含有mRNAの翻訳を阻害するように機能するリボザイムである。アンチセンスRNA及びDNA分子及びリボザイムの両方共、当該技術分野において既知のあらゆる方法により調製することができる。対象への送達のためにはアンチセンス分子を多種多様なベクター内に取込むことができる。熟練した医師であれば、最良の送達経路を容易に決定することができるが、一般的には、静脈内又は筋内送達が日常的である。投薬量も容易に確認できる。
【0229】
特に好ましいアンチセンス核酸分子は、(1)第2のリジン残基から6〜10残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン;(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び(3)少なくとも6%のリジン残基を含む7〜50個のアミノ酸を含む例えばインフルエンザウイルスポリペプチドをコードするmRNAの中に含まれるレプリキン配列に相補的なものである。より好ましいのは、遺伝子のコーディングストランド内に存在するレプリキン又はインフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質をコードするmRNAに対し相補的であり、6ヵ月から単数又は複数年の期間にわたり保存されることが実証されているレプリキンをコードするヌクレオチド配列に相補的であり、かつ/又はその他のインフルエンザウイルス株内でのレプリキン濃度に比べてレプリキン濃度が増大したことが示されたインフルエンザウイルスの1つの株内に存在するアンチセンス核酸分子である。レプリキン濃度の増加は、好ましくは少なくとも6ヵ月、好ましくは約1年、最も好ましくは約2年又は3年以上の期間にわたって発生する。
【0230】
同様にして、mRNAに相補的なアンチセンス核酸分子は、(1)第2のリジン残基から6〜10残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン;(2)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び(3)少なくとも6%のリジン残基を含む7〜50個のアミノ酸のレプリキン配列を含む細菌レプリキンをコードするmRNAに対し相補的なものである。より好ましいのは、遺伝子のコーディングストランド又は細菌のタンパク質をコードするmRNAに相補的なアンチセンス核酸分子である。
診断上の利用分野
【0231】
珪藻プランクトン、口蹄病ウイルス、トマト縮葉病ジェミニウイルス、B型及びC型肝炎、HIV、インフルエンザウイルス及び悪性細胞といったような生体のためには、同定された成分レプリキンがワクチンとして有用であり、同様に診断目的で有用にこれを標的することもできる。例えば、輸液のために収集された血液を、汚染生体に特異的であることが示されたレプリキンの存在についてスクリーニングすることによって、HIVといったような生体の汚染についてスクリーニングすることができる。同様に、特定の病原性生体に特異的なレプリキン構造についてのスクリーニングは、身体組織内又は環境内での生体の診断的検出を導く。
レプリキン成長刺激
【0232】
該発明のもう1つの実施形態においては、細胞、組織又は器官の複製速度を増大させるために、レプリキン構造が使用される。複製速度及び収量を増大させるため前記細胞、組織又は器官について当該技術分野で既知の細胞分裂に対する適切な刺激を伴って又は伴わずに、より急速に複製することが望まれているその他の細胞、組織又は器官のための特異的レプリキン構造を付加することによって複製速度を増大させるための方法が利用可能である。これは、例えば当該技術分野において既知の方法により、少なくとも1つのレプリキン構造を伴う生体内の複製機能をもつタンパク質又は酵素についてコードする又はそれと結びつけられた遺伝子を修飾又は形質転換することによって達成可能である。
【0233】
該発明のもう1つの態様においては、生体の複製を増大させるためにレプリキン構造が用いられる。本発明は、例えばインフルエンザウイルスにおいて、地域的流行に付随する複製の増大は、レプリキンの濃度増加と結びつけられる。該増加は、1)前年に存在したもののその後1年以上にわたり消滅した特定のレプリキン構造の再出現;及び/又は2)新しいレプリキン組成物の出現に起因する。さらにマラリアレプリキンにおいては、単一のタンパク質内での同じレプリキンの反復が起こる。さらに、生体の成長を刺激するため又は生体の複製を増大させるために、UTOPEを使用することができる。
【0234】
かくして本発明は、生体の複製を増大させるための方法及び組成物を提供する。同様にして、任意の生体の複製を阻害するために異なる生体のレプリキンをターゲティングできるような形で、任意の生体の複製を増大させるためにレプリキンを使用することが可能である。例えば、世界の大規模な人口に食料供給をするためにきわめて重要であるイネ、トウモロコシ及び小麦の生産を、例えば任意の特定のイネの株の濃度(100個のアミノ酸残基あたりのレプリキンの数)を増大させることによって改善させることができる。
【0235】
一例として、イネのオリザ・サティバ株においては、未成熟の種子から単離されたカタラーゼが、タンパク質の491のアミノ酸配列内に以下の異なるレプリキンを含有することが観察された:
【0236】
【化39】

かくして、当該技術分野において周知の組換え型遺伝子クローング技術を使用することにより、食用作物植物といったような生体内のレプリキン構造の濃度を増大させることができ、これが生体の複製の増加を促進することになる。例えば、当該技術分野において周知の方法によりオリザ・サティバカタラーゼ遺伝子内に以上で同定されたレプリキンのような付加的なレプリキン配列を挿入することのよって、この生体の複製が促進されることになる。
【0237】
同様にして、オリザ・サティバ(ジャポニカ品種群)のN分離株−L高速複製タンパク質においては、以下のレプリキンが発見された:
【化40】

【0238】
さらに、アスパラギン酸プロテアーゼオリザシン1前駆体タンパク質については、以下のレプリキンが発見された:
【化41】

【0239】
同様にして、オリザ・サティバ(インディカ品種群)のMADS−ボックスタンパク質FDRMADS3においては、以下のレプリキンが発見された。
【化42】

【0240】
同様にして、LONI MAIZE(ATP−結合酸化還元関連加水分解酵素;セリンプロテアーゼ;多重遺伝子族;ミトコンドリア)内には、以下のレプリキンが発見された:
【化43】

【0241】
同様にして、葉緑体前駆体であるグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼAについては、以下のレプリキンが発見される。
【化44】

【0242】
発見されたサビ菌耐性様タンパク質RP1−4(トウモロコシ(Zea Mays))の例には、以下のレプリキンが含まれている:
【化45】

【0243】
以上で論述した通り、小麦ユビキチン活性化酵素E(配列番号614−616)内のレプリキンは保存される。このレプリキン構造の保存は、植物の成長の刺激のための信頼性ある標的を提供する。
【0244】
酸化還元酵素に対するレプリキンの密な関係は同様に、小麦内のこの構造の中でも明確に示されている。かくして、この小麦ユビキチン活性化酵素Eは、まず最初にATPでそのカルボキシ末端グリシン残基をアデニル化し、その後この残基をE1内のシステイン残基の側鎖に連結させて(配列番号614)、ユビキチン−E1チオールエステルと遊離AMPを生成することによってユビキチンを活性化する。
【0245】
小麦レプリキンと酸化還元酵素の関係のさらなる例は、同様に、パン中国春撒き小麦葉緑体Triticum Aestivmから単離したPSAB小麦タンパク質、光化学系IP700クロロフィルAアポタンパク質A2(PsaB)(PSI−B)の中にも発見された。このタンパク質は以下のように機能する。すなわち、PsaA及びPsaBは、光化学系I(PSI)の一次電子供与体ならびに電子受容体A0、A1及びFXを結合させる。PSIはプラストシアニン/シトクロムc6−フェレドキシンオキシドシダクターゼとして機能する。共同因子p700はクロロフィルA2量体であり、A0はクロロフィルAであり、A1はフィロキノンであり、FXは4Fe−4S鉄−硫黄中心である。サブユニットApsアミノ酸/Sヘテロ2量体は、P700クロロフィル特殊対及びそれ以降の電子受容体を結合させる。より高等な植物及び藻類のPSI反応中心は、1つの少なくとも11のサブユニットで構成されている。これは、葉緑体チラコイド膜の膜内在性タンパク質である。「h」が結合する4Fe−4S鉄−硫黄「中心」は決定的に重要な意味をもち、従ってレプリキン構造内の「h」に意義が生まれてくる。細菌レプリキンの次に、これらの小麦レプリキン及び植物レプリキンは、複製及び複製に必要とされるエネルギー源の重要性を最も根源的に進化面で例示するものである。この基本的関係は、藻類、ウイルスレプリキン、細菌、癌細胞及び明らかに全ての生体を通して複製に関して伝わる。
【0246】
レプリキンのさらなる例は、小麦の成長にとって決定的に重要であるPSAB小麦タンパク質の中に発見された。これらには以下のものが含まれる:
【化46】

【0247】
酸化還元に対する小麦レプリキンの関係のさらな例は、以下のものを含むPSAA−WHEAT光化学系I9700クロロフィルAアポタンパク質A1内で提供される。
【化47】

RPLを同定するためのコンピュータソフトウェア
【0248】
本発明は同様に、アミノ酸又は核酸配列内のレプリキン配列を同定するための方法をも提供する。4000配列以上の視覚的走査が、当該3点認識方法を開発する上で実施された。しかしながら、ヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列を含むデータバンクも同様に、3点認識必要条件を満たす配列の存在についてコンピュータにより走査可能である。
【0249】
該発明のもう1つの実施形態に従うと、本書で記述されている3点認識方法をコンピュータによって実施することができる。図6は、本発明の前述の実施形態で使用するために利用可能なコンピュータのブロック図である。コンピュータは、プロセッサ、入出力デバイス及び上述の実施形態の3点認識方法を表わすメモリ記憶用実行可能プログラム命令を内含し得る。メモリはスタティックメモリ、揮発性メモリ及び/又は非揮発性メモリを内含し得る。スタティックメモリは慣習的に、磁気的又は電気的又は光学的記憶媒体上に提供された読取り専用メモリー(「ROM」)であり得る。揮発性メモリは、慣習的には、ランダムアクセスメモリー(「RAM」)であり得、プロセッサ内部のキャッシュとして組込まれることもできるし、又別の集積回路としてプロセッサから外部的に提供することもできる。非揮発性メモリは電気的、磁気的又は光学的記憶媒体であり得る。
【0250】
プロテオミクスの観点から見ると、新しい神経膠腫ペプチド配列に基づく「3点認識」鋳型の構造は、関連する構造及び機能をもつ生物学全体にわたるタンパク質の種類の同定を直接導いた。3点認識方法の作業は、「キーワード」探索の使用による同定に似ているが、標準的な配列相同性探索又はアミノ酸のヌクレオチド仕様の場合のようにキーワード「hagvaflhkk」(配列番号1)の正確なスペリングを使用する代りに、「3点認識」パラメータにより限界決定されたキーワードの抽象化が用いられる。この限界決定された抽象化は、単一の比較的短かいアミノ酸配列から誘導されるものの、同じ仕様により定義される構造をもつタンパク質の1つの種類の同定を導く。この場合では形質転換及び複製である特定の機能は同様に、構造に加えて、露呈された種類の成員が共有するものとなるという事実は、これらの構造及び機能が関連性をもつということを示唆している。かくして、この新たに同定された短かいペプチド配列から、これまで記述されたことのない分子認識「言語」が公式化された。さらに、癌レプリキンについてここで実証されてきたような該種類のさまざまな成員による免疫学的特異性の共有は、B細胞及びその産物抗体が類似の認識言語を用いてレプリキンを認識するということを示唆している。
3点認識方法のその他の使用
【0251】
「3点認識」は特定のタンパク質の種類を特定するプロテオミクス方法であるため、その他のペプチドのために3つ以上の異なる認識点を使用することがその他のタンパク質の種類に関する有用な情報を提供するはずである。さらに、「3点認識」方法はその他のレコグニン例えば生体のリポ多糖類のTOLL「生得的」認識に適用可能である。その他の共有結合により連結されたアミノ酸、ヌクレオチド、炭水化物、脂質又はそれらの組合せを内含するその他の有用な共有結合により連結された有機分子の化合物を同定するために、該3点認識方法を修正することも可能である。該発明のこの実施形態においては、3つ以上の所望の構造的特性を含むサブ配列について、配列がスクリーニングされる。共有結合により連結されたアミノ酸、脂質又は炭水化物から成る化合物をスクリーニングする場合、約50の共有結合によって連結された単位のサブ配列は、(1)第1のアミノ酸、炭水化物又は脂質残基のうちの第2のものから7〜10残基のところにある少なくとも1つの第1のアミノ酸、炭水化物又は脂質残基;(2)コードする少なくとも1つの第2のアミノ酸、脂質又は炭水化物残基; 及び(3)第1のアミノ酸、炭水化物又は脂質残基の少なくとも6%、を含有すべきである。ヌクレオチド配列をスクリーニングする場合、約21〜約150個のヌクレオチドのサブ配列は、(1)第1のアミノ酸残基をコードする第2のコドンから18〜30ヌクレオチド以内のところにある第1のアミノ酸をコードする少なくとも1つのコドン;(2)少なくとも1つの第2のアミノ酸残基を含有すべきであり、(3)前記第1のアミノ酸残基の少なくとも6%をコードする。
【0252】
本発明のいくつかの実施形態が本書に特定的に例示され記述される。ただし、本発明の修正及び変形形態が上述の教示により包括され、該発明の精神及び意図された範囲から逸脱することなく添付のクレームの視野の中に入るということがわかるだろう。
例1
レプリキンの抽出、単離及び同定のためのプロセス及びレプリキン含有生体をターゲティング、標識又は破壊するためのレプリキンの使用
a)藻類
【0253】
以下の藻類を、バミューダ水域サイトから収集し、同日に抽出するか又は−20℃で冷凍して翌日に抽出した。藻類を低温室(0〜5℃)内でWaringブレンダーの中で15分間中性緩衝液中、例えばpH7の0.005Mのリン酸緩衝溶液(「リン酸緩衝液」)100cc中の1グラムのアリコートの中で均質化させ、3000rpmで遠心分離に付し、浸透気化により上清を凝縮させ、低温下でリン酸緩衝液に対し透析して約15mlの体積を生成した。この抽出物溶液の体積を書きとめ、タンパク質分析のためにアリコートを取り、残りを分留して1〜4のPK範囲をもつタンパク質留分を得た。
【0254】
好ましい分留方法は、以下のとおりのクロマトグラフィである。すなわち、抽出物溶液を、0.005Mのリン酸緩衝液で平衡化しておいたDEAEセルロース(Cellex−D)カラム上で、低温室(4℃)内で分留する。以下の溶液を用いて、段階的溶出用溶媒変更を行なう:
溶液1−1〜4.04gのNaH2PO4及び0.5gのNaH2PO4を15リットルの精製水中で溶解させる(0.005モル、pH7);
溶液2−8.57gのNaH2PO4を2480mlの精製水内で溶解させる;
溶液3−17.1gのNaH2PO4を2480mlの精製水中で溶解させる(0.05モル、pH4.7);
溶液4−59.65gのNaH2PO4を2470mlの精製水中で溶解させる(0.175モル);
溶液5−101.6gのNaH2PO4を2455mlの精製水中で溶解させる(pH4.3;
溶液6−340.2gのNaH2PO4を2465mlの精製水中で溶解させる(1.0モル、pX−i4.1;
溶液7−283.63gの80%リン酸(H3PO4)を2460mlの精製水中で作り上げる(1.0モル、pH10)
【0255】
6〜10mlの体積中の抽出物溶液を、カラム上に移して、溶液1を上に積層させ、溶液1の300ml入りタンクをとり付け、カラム上に重力により滴下させた。溶離液の3mlのアリコートを収集し、溶液1で除去されるべきタンパク質全てがカラムから除去されてしまうまでOD280でのタンパク質含有量について分析した。次にカラムに溶液2を適用し、各溶液で除去できるタンパク質の全てがカラムから除去されるまで、溶液3、4、5、6及び7が連続して続いた。溶液7からの溶離液を組合せ、リン酸緩衝液に対して透析し、ダイアリザンド(Dialysand)と透析物の両方のタンパク質含有率を決定し、両方をゲル電気泳動によって分析した。溶液7中には、3000〜25,000ダルトンの間の分子量のペプチド又はタンパク質の1本又は2本のバンドが得られる。例えば、上述の通りの抽出及び処置の後、藻類Caulerpa mexicana、 Laurencia obtura、 Cladophexa prolifera、 Sargassum natans、 Caulerpa verticillata、 Halimeda tuna、 及び Penicillos capitatusはすべて、溶液7溶離液中でいかなる汚染物質もないこの分子量領域内で鋭いペプチドバンドを実証した。これらの溶液7のタンパク質又はその溶離されたバンドは加水分解され、アミノ酸組成が決定される。6%以上のリジン組成をもつ、このようにして得られたペプチドはレプリキン前駆体である。これらのレプリキンペプチド前駆体を、その後アミノ酸配列について判定し、米国特許第6.242,578B1号に詳述されているように加水分解及び質量分析によりレプリキンを決定する。「3点認識」方法によって定義された基準を満たすものは、レプリキンとして同定される。酵素、細菌、及びあらゆる植物レプリキンを得るためにこの手順を利用することも可能である。
b)ウイルス
【0256】
藻類についてa)で上述されたものと同じ抽出及びカラムクロマトグラフィ分離方法を用いて、ウイルス感染細胞中のレプリキンを単離し同定する。
c)腫瘍細胞インビボ及びインビトロ組織培養
【0257】
藻類についてa)で上述されたものと同じ抽出及びカラムクロマトグラフィ分離方法を用いて、ウイルス感染細胞中のレプリキンを単離し同定する。例えば、各々a)で上述した通りに処理された悪性脳腫瘍から単離したアストロシチンのレプリキン前駆体、組織培養中のグリア芽腫腫瘍細胞から単離したマリグニン(Aglyco10B)、組織培養中のMCF7哺乳動物癌細胞及び組織培養中のP3Jリンパ腫細胞は、それぞれ9.1%、6.7%、6.7%及び6.5%のリジン含有量をもつレプリキン前駆体を生成した。米国特許第6,242,578B1号例10で記述されているようなAglyco10Bの加水分解及び質量分析は、アミノ酸配列、ykagvaflhkkndiide、16量体レプリキンを産生した。
例2:
【0258】
レプリキンの診断用途の例として、米国特許第6,242,578B1号の図2、3、4及び7に示されているように診断目的で血清中に存在するその対応する抗体を捕捉しその量を定量化するための抗原としてAglyco10B又は16量体レプリキンを使用することができる。
【0259】
標識、栄養又は破壊目的でレプリキンに付着させるべき作用物質の産生の一例として、16量体レプリキンに対する特異的抗体を産生するためのウサギの体内への16量体レプリキンの注射が、米国特許第6,242,578B1号の例6及び図9A及び9B内に示されている。
【0260】
レプリキンを標識するための作用物質の使用の一例として、このレプリキンを含有する特異的細胞を標識するための16量体レプリキンに対する抗体の使用は、米国特許第6,242,578B1号の図5及び例6中に示されている。
【0261】
レプリキンを破壊するための作用物質の使用の一例として、このレプリキンを含有する特定の細胞を阻害又は破壊するための16量体レプリキンに対する抗体の使用は、米国特許第6,242,578B1号の図6中に示されている。
例3
【0262】
レプリキンの存在及び濃度についてのインフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質又はノイラミニダーゼタンパク質の分離株の配列データの分析を、本書で記述する3点認識システムに基づくコンピュータプログラムの使用を通してか又は配列の視覚的走査によって実施する。インフルエンザウイルスの分離株が得られ、インフルエンザ血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼタンパク質のアミノ酸配列は、血球凝集素又はノイラミダーゼ遺伝子を配列決定しそこからタンパク質配列を誘導することといった任意の既知の方法により得られる。各分離株内の新しいレプリキンの存在、レプリキンの経時的保存及びレプリキンの濃度について、配列を走査する。約6ヵ月〜約3年前といったより早い時点で分離株から得たアミノ酸配列に対するレプリキン配列及び濃度の比較は、来たるインフルエンザの流行期においてインフルエンザの原因となる確率が最も高く季節的インフルエンザペプチドワクチン又は核酸ベースのワクチンのための基礎原料を形成する株の新興を予測するために用いられるデータを提供する。約6ヵ月〜約3年以上の期間にわたるインフルエンザウイルスの一定の与えられた株内のレプリキンの濃度の増大とくにその段階的増加は、将来におけるインフルエンザの地域的流行又は世界的流行の確率の高い原因としての株の新興の予測判断材料である。
【0263】
新興株内で観察されるレプリキンに基づくペプチドワクチン又は核酸ベースのワクチンが生成される。新興する株は、該時期中に血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ配列内のレプリキン配列の濃度が最高の増加を示すインフルエンザウイルスの株として同定される。好ましくは、ペプチド又は核酸ワクチンは、新興株内に保存されていることが観察されているあらゆるレプリキン配列に基づくか又はこれを内含している。保存されたレプリキンは好ましくは、約2年そして好ましくはそれ以上の間血球凝集素又はノイラミニダーゼタンパク質配列内に存在するレプリキン配列である。ワクチンには、新興株内で同定されたレプリキン配列の任意の組合せが内含され得る。
【0264】
ワクチン産生のためには、有効なワクチンにとって有用なものとして同定されたレプリキンペプチド(単複)は、クローニング、宿主細胞内での発現及びそれからの精製を含む分子生物学技術及び化学合成を含むあらゆる方法によって合成される。ペプチドは好ましくは、それに対する治療用抗体反応を誘発するように決定された量で薬学的に受容可能な担体と混和される。一般に、投薬量は約0.1μg〜約10mgである。
【0265】
インフルエンザワクチンは好ましくは「流行期」の開始より前に、それを必要とする患者に投与される。インフルエンザ流行期は一般に、10月後半に発生し、4月後半まで続く。しかしながら、該ワクチンは、その年の間いつでも投与可能である。好ましくは、インフルエンザワクチンは一年に一回投与され、インフルエンザウイルスの新興株内に存在することが観察され好ましくは保存されているレプリキン配列に基づいている。インフルエンザワクチン内に内含させるためのもう1つの好ましいレプリキンは、単数又は複数年不在であった後インフルエンザの株内に再興したことが実証されたレプリキンである。
例4
【0266】
レプリキンの存在及び濃度についてのコロナウイルスヌクレオカプシド又はスパイク又は外皮又はその他のタンパク質の分離株の配列データの分析を、本書で記述する3点認識システムに基づくコンピュータプログラムの使用を通してか又は配列の視覚的走査によって実施する。コロナウイルスの分離株が得られ、コロナウイルスタンパク質のアミノ酸配列は、タンパク質の遺伝子を配列決定しそこからタンパク質配列を誘導することといった当該技術分野において既知の方法により得られる。各分離株内の新しいレプリキンの存在、レプリキンの経時的保存及びレプリキンの濃度について、配列を走査する。約6ヵ月〜約3年前といったより早い時点で分離株から得たアミノ酸配列に対するレプリキン配列及び濃度の比較は、世界的流行の勃発の原因となる確率が最も高くコロナウイルスペプチドワクチン又は核酸ベースのワクチンのための基礎原料を形成する株の新興を予測するために用いられるデータを提供する。約6ヵ月〜約3年以上の期間にわたるコロナウイルスの一定の与えられた種類又は株内のレプリキンの濃度の増大とくにその段階的増加は、将来におけるSARSなどの地域的流行又は世界的流行の確率の高い原因としての株の新興の予測判断材料である。
【0267】
コロナウイルスの新興株内で観察されるレプリキンに基づくペプチドワクチン又は核酸ベースのワクチンが生成される。新興する株は、該時期中にヌクレオカプシド配列内のレプリキン配列の濃度が最高の増加を示すコロナウイルスの株として同定される。好ましくは、ペプチド又は核酸ワクチンは、株内に保存されていることが観察されているあらゆるレプリキン配列に基づくか又はこれを内含している。保存されたレプリキンは好ましくは、約2年そして好ましくはそれ以上の間ヌクレオカプシドタンパク質配列内に存在するレプリキン配列である。ワクチンには、新興株内で同定されたレプリキン配列の任意の組合せが内含され得る。
【0268】
ワクチン産生のためには、有効なワクチンにとって有用なものとして同定されたレプリキンペプチド(単複)は、クローニング、宿主細胞内での発現及びそれからの精製を含む分子生物学技術及び化学合成を含むあらゆる方法によって合成される。ペプチドは好ましくは、それに対する治療用抗体反応を誘発するように決定された量で薬学的に受容可能な担体と混和される。一般に、投薬量は約0.1μg〜約10mgである。
【0269】
コロナウイルスワクチンは、その年の任意の時点で患者に投与することができる。好ましくは、コロナウイルスワクチンは一度投与され、コロナウイルスの該種類の中に存在することが観察され、かつ好ましくはその中に保存されているレプリキン配列に基づいている。
例5
【0270】
レプリキンの存在及び濃度についての熱帯性マラリア原虫抗原の分離株の配列データの分析を、本書で記述する3点認識方法に基づくコンピュータプログラムの使用を通してか又は配列の視覚的走査によって実施する。熱帯性マラリア原虫の分離株が得られ、該タンパク質のアミノ酸配列は、遺伝子を配列決定しそこからタンパク質配列を誘導することといった任意の既知の方法により得られる。各分離株内のレプリキンの存在、レプリキンの経時的保存及びレプリキンの濃度について、配列を走査する。この情報は、抗マラリアワクチン又は核酸ベースのワクチンのための基礎原料を形成するために用いられるデータを提供する。
【0271】
マラリアを引き起こす抗体内で観察されるレプリキンに基づくペプチドワクチン又は核酸ベースのワクチンが生成される。好ましくは、ペプチド又は核酸ワクチンは、生体の表面抗原上に存在することが観察されているあらゆるレプリキン配列に基づくか又はこれを内含している。ワクチンには、マラリアを引き起こす株内で同定されたレプリキン配列の任意の組合せが内含され得る。
【0272】
ワクチン産生のためには、有効なワクチンにとって有用なものとして同定されたレプリキンペプチド(単複)は、クローニング、宿主細胞内での発現及びそれからの精製を含む分子生物学技術及び化学合成を含むあらゆる方法によって合成される。ペプチドは好ましくは、それに対する治療用抗体反応を誘発するように決定された量で薬学的に受容可能な担体と混和される。一般に、投薬量は約0.1μg〜約10mgである。
【0273】
このとき、マラリアワクチンは、その年の間の任意の時点でそれを必要としている患者に対し、特に熱帯環境への旅行の前に投与される。
【0274】
もう1つの実施形態は、レプリキン含有生体のヌクレオチド配列に相補的である、ウイルス、トリパノゾーマ、細菌、真菌、藻類、アメーバ及び植物を含む(ただしこれらに制限されるわけではない)生体内のレプリキンのための生体をコードするmRNA又は遺伝子のコーディングストランドと相補的なアンチセンス核酸分子を内含している。
【図面の簡単な説明】
【0275】
【図1】さまざまな生体内のレプリキンの発生頻度を描く棒グラフである。
【0276】
【図2】グリア芽腫細胞の嫌気性複製中の合計膜タンパク質1ミリグラムあたりのマリグニンの百分率を描いたグラフである。
【0277】
【図3】リコグニン16量体に対する被曝に応答して生成された抗マリグニン抗体の量を示す棒グラフである。
【0278】
【図4】図4Aは、常光及び蛍光灯で撮った血液塗抹標本の写真である。図4Bは、2つの白血病細胞の存在を例示する常光及び蛍光灯で撮った血液塗抹標本の写真である。図4Cは、抗マリグニン抗体の存在下での神経膠腫細胞のち密層の写真である。図4D及び図4Eは、抗マリグニン抗体の添加から30分及び45分の時点で撮った図4Cの細胞層の写真である。図4Fは、抗マリグニン抗体によるインビトロでの小細胞肺癌腫細胞の成長阻害を示す棒グラフである。
【0279】
【図5】外科手術前後の良性又は悪性乳腺疾患を患う患者の血清中に存在する抗マリグニン抗体の量のプロットである。
【0280】
【図6】レプリキン配列を同定する3点認識方法を実施するためにコンピュータが使用される本発明の1実施形態を描く箱図表である。
【0281】
【図7】1940年から2001年までの年毎のペースでのインフルエンザB型及びインフルエンザA型株、H1N1の血球凝集素中に観察されたレプリキンの濃度を示すグラフである。
【0282】
【図8】1950年〜2001年までの年毎のペースでのインフルエンザA型株、H2N2及びH3N2、ならびにその構成要素レプリキンによって画定された新興株の血球凝集素中で観察されたレプリキン濃度のグラフである。
【0283】
【図9】特定のレプリキン株についての一年あたりのレプリキン計数を描くグラフである。
【0284】
【図10】ヌクレオカプシドコロナウイルス分離株についての一年あたりの平均レプリキン計数を描いた図表である。
【0285】
【図11】H5N1血球凝集素についての一年あたりのレプリキン計数を描いた図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)第2のリジン残基から6〜10残基のところに位置設定された少なくとも1つのリジン残基、
(2)少なくとも1つのヒスチジン残基及び
(3)少なくとも6%のリジン残基、
を含む7〜約50個のアミノ酸を含む単離された又は合成されたコロナウイルスペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドアミノ酸配列が7〜25個のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の単離又は合成ペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドアミノ酸配列が7〜16個のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の単離又は合成ペプチド。
【請求項4】
前記コロナウイルスペプチドが配列番号712のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
配列番号712のアミノ酸配列を有するコロナウイルスペプチドを認識する抗体。
【請求項6】
前記コロナウイルスペプチドが配列番号717のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
配列番号717のアミノ酸配列を有するコロナウイルスペプチドを認識する抗体。
【請求項8】
前記コロナウイルスペプチドが配列番号718のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
配列番号718のアミノ酸配列を有するコロナウイルスペプチドを認識する抗体。
【請求項10】
前記コロナウイルスペプチドが配列番号719のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項11】
配列番号719のアミノ酸配列を有するコロナウイルスペプチドを認識する抗体。
【請求項12】
前記コロナウイルスペプチドが配列番号720のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項13】
配列番号720のアミノ酸配列を有するコロナウイルスペプチドを認識する抗体。
【請求項14】
ヌクレオカプシド中に存在する少なくとも1つの単離レプリキン又はスパイク又は外被タンパク質又はコロナウイルスの新興株のその他のタンパク質及び薬学的に受容可能な担体を含んで成るコロナウイルスワクチン。
【請求項15】
ワクチンが単離レプリキンを複数含む、請求項14に記載のコロナウイルス。
【請求項16】
少なくとも1つの単離レプリキンが配列番号712のアミノ酸配列を有する、請求項14に記載のワクチン。
【請求項17】
少なくとも1つの単離レプリキンが配列番号717のアミノ酸配列を有する、請求項14に記載のワクチン。
【請求項18】
少なくとも1つの単離レプリキンが配列番号718のアミノ酸配列を有する、請求項14に記載のワクチン。
【請求項19】
少なくとも1つの単離レプリキンが配列番号719のアミノ酸配列を有する、請求項14に記載のワクチン。
【請求項20】
少なくとも1つの単離レプリキンが配列番号720のアミノ酸配列を有する、請求項14に記載のワクチン。
【請求項21】
ヌクレオカプシド中に存在する少なくとも1つの単離レプリキン又はスパイク又は外被タンパク質又はコロナウイルスの新興株のその他のタンパク質及び薬学的に受容可能な担体を含んで成るコロナウイルスワクチンを患者に投与する段階を含んで成る、SARSの予防又は治療方法。
【請求項22】
前記コロナウイルスがSARSコロナウイルスである、請求項1に記載の単離又は合成ペプチド。
【請求項23】
(1)1つのヒスチジンを除く全てのリジン;
(2)第2のリジン残基から7〜10残基のところにある少なくとも1つのリジン;
(3)少なくとも1つのヒスチジン残基;及び
(4)少なくとも6%のリジン残基
を含む、約7〜10アミノ酸という長さの合成レプリキンペプチド。
【請求項24】
汎用合成エピトープ(UTOPE)及び薬学的に受容可能な担体を含む組成物を投与する段階を含んで成る、受動免疫を提供する方法。
【請求項25】
汎用合成エピトープ(UTOPE)、アジュバント及び薬学的に受容可能な担体を含む組成物を投与する段階を含んで成る、受動免疫を提供する方法。
【請求項26】
UTOPEを投与する段階を含むSARSに対する免疫応答を誘発する方法。
【請求項27】
請求項23に記載の合成レプリキンペプチドを投与する段階を含むSARSに対する免疫応答を誘発する方法。
【請求項28】
請求項14に記載のワクチンを投与する段階を含むSARSに対する免疫応答の誘発方法。
【請求項29】
UTOPEを投与する段階を含んで成る、SARSの治療方法。
【請求項30】
UTOPEをコードする合成ペプチド。
【請求項31】
前記UTOPEが配列番号732、配列番号733、配列番号734、配列番号735、配列番号736、配列番号737、配列番号738、配列番号739、配列番号740、配列番号741又は配列番号742から成るグループの中から選択された配列の1つによってコードされている、請求項30に記載のUTOPEをコードする合成ペプチド。
【請求項32】
少なくとも1つの請求項31に記載のUTOPE及び薬学的に受容可能な担体を含む抗−レプリキンワクチン(UVAX)。
【請求項33】
前記UTOPEが、配列番号732、配列番号733、配列番号734、配列番号735、配列番号736、配列番号737、配列番号738、配列番号739、配列番号740、配列番号741又は配列番号742から成るグループの中から選択された配列の1つによりコードされている、UTOPEに特異的な抗UTOPE抗体。
【請求項34】
前記UTOPEが配列番号732によりコードされる、UTOPEに特異的な抗体。
【請求項35】
前記UTOPEが配列番号733によりコードされる、UTOPEに特異的な抗体。
【請求項36】
前記UTOPEが配列番号734によりコードされる、UTOPEに特異的な抗体。
【請求項37】
前記UTOPEが配列番号735によりコードされる、UTOPEに特異的な抗体。
【請求項38】
前記UTOPEが配列番号736によりコードされる、UTOPEに特異的な抗体。
【請求項39】
前記UTOPEが配列番号737によりコードされる、UTOPEに特異的な抗体。
【請求項40】
前記UTOPEが配列番号738によりコードされる、UTOPEに特異的な抗体。
【請求項41】
前記UTOPEが配列番号740によりコードされる、UTOPEに特異的な抗体。
【請求項42】
前記UTOPEが配列番号741によりコードされる、UTOPEに特異的な抗体。
【請求項43】
前記UTOPEが配列番号742によりコードされる、UTOPEに特異的な抗体。
【請求項44】
該UTOPEが配列番号732のアミノ酸配列を有する請求項30に記載のペプチド。
【請求項45】
前記UTOPEが配列番号733のアミノ酸配列を有する請求項30に記載のペプチド。
【請求項46】
前記UTOPEが配列番号734のアミノ酸配列を有する請求項30に記載のペプチド。
【請求項47】
前記UTOPEが配列番号735のアミノ酸配列を有する請求項30に記載のペプチド。
【請求項48】
前記UTOPEが配列番号736のアミノ酸配列を有する請求項30に記載のペプチド。
【請求項49】
前記UTOPEが配列番号737のアミノ酸配列を有する請求項30に記載のペプチド。
【請求項50】
前記UTOPEが配列番号738のアミノ酸配列を有する請求項30に記載のペプチド。
【請求項51】
前記UTOPEが配列番号739のアミノ酸配列を有する請求項30に記載のペプチド。
【請求項52】
前記UTOPEが配列番号740のアミノ酸配列を有する請求項30に記載のペプチド。
【請求項53】
前記UTOPEが配列番号741のアミノ酸配列を有する請求項30に記載のペプチド。
【請求項54】
前記UTOPEが配列番号742のアミノ酸配列を有する請求項30に記載のペプチド。
【請求項55】
診断、予防又は治療を目的として1つのウイルスの新興株を同定する方法において、
(1)該ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株を得る段階;
(2)ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株の個々のタンパク質のアミノ酸配列を、レプリキン配列の存在及び濃度(アミノ酸100個あたりのレプリキン配列数)について分析する段階;
(3)該ウイルスの個々のタンパク質の複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株の個々のタンパク質のアミノ酸配列内のレプリキン配列の濃度を、少なくとも1つのより早い時期にその個々のタンパク質の各々の株のアミノ酸配列内で観察されたレプリキン配列の濃度と比較して、少なくとも2つの時期についてのレプリキンの濃度を提供する段階であって、前記少なくとも1つのより早い時期が段階(1)より前約6ヵ月〜約3年以内である段階;及び
(4)該少なくとも2つの時期の間にレプリキン配列の濃度が最高の増加を示すウイルスの株を同定する段階、
を含んで成る方法。
【請求項56】
前記ウイルスの新興株が、インフルエンザウイルス、SARS及びコロナウイルスから成るグループの中から選択されている、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
診断、予防又は治療を目的として1つのウイルスの新興株を同定する方法において、
(1)該ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株を得る段階;
(2)ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株の個々のタンパク質のアミノ酸配列を、レプリキン配列の存在及び濃度について分析する段階;
(3)該ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株の個々のタンパク質のアミノ酸配列内のレプリキン配列の濃度を、少なくとも1つのより早い時期に各々の株のアミノ酸配列内で観察されたレプリキン配列の濃度と比較して、少なくとも2つの時期についてのレプリキンの濃度を提供する段階であって、前記少なくとも1つのより早い時期が段階(1)より前約6ヵ月〜約3年以内である段階;及び
(4)該少なくとも2つの時期の間の個々のタンパク質のレプリキン配列の濃度が最高の増加を示すウイルスの株を同定する段階、
を含んで成る方法。
【請求項58】
前記ウイルスの新興株が、インフルエンザウイルス、SARS及びコロナウイルスから成るグループの中から選択されている、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
診断、予防又は治療を目的としてインフルエンザウイルスの新興株を同定する方法において、
(1)該インフルエンザウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株を得る段階;
(2)ウイルスの複数の株のうちの各株の血球凝集素の個々のタンパク質のいずれかのものの少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列をレプリキン配列の存在及び濃度について分析する段階;
(3)インフルエンザウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株の血球凝集素アミノ酸配列中のウイルスの複数の株のうちの各株の血球凝集素の個々のタンパク質のいずれかのもののレプリキン配列の濃度を、少なくとも1つのより早い時期に株の同じタンパク質の各々のものの血球凝集素アミノ酸配列内で観察された同じ個々のタンパク質のいずれかのもののレプリキン配列の濃度と比較して、少なくとも2つの時期についてのレプリキンの濃度を提供する段階であって、前記少なくとも1つのより早い時期が段階(1)より前約6ヵ月〜約3年以内である段階;及び
(4)該少なくとも2つの時期の間の個々のタンパク質のうちのいずれかのもののレプリキン配列の濃度が最高の増加を示すインフルエンザウイルスの株及びタンパク質を同定する段階;
を含んで成る方法。
【請求項60】
診断、予防又は治療を目的としてインフルエンザウイルスの新興株を同定する方法において、
(1)該インフルエンザウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株を得る段階;
(2)ウイルスの複数の株のうちの各株の血球凝集素のタンパク質の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列をレプリキン配列の存在及び濃度について分析する段階;
(3)インフルエンザウイルスの複数の株のうちの各菌の少なくとも1つの分離株の血球凝集素アミノ酸配列中のウイルスの複数の株のうちの各株の血球凝集素のレプリキン配列の濃度を、少なくとも1つのより早い時期に各々の株の血球凝集素アミノ酸配列内で観察された血球凝集素タンパク質のレプリキン配列の濃度と比較して、少なくとも2つの時期についてのレプリキンの濃度を提供する段階であって、前記少なくとも1つのより早い時期が段階(1)より前約6ヵ月〜約3年以内である段階;及び
(4)該少なくとも2つの時期の間の血液凝集素タンパク質のレプリキン配列の濃度が最高の増加を示すインフルエンザウイルスの株を同定する段階;
を含んで成る方法。
【請求項61】
新規レプリキンの数の比較を含み、これによって新規レプリキン、すなわち前年にはその正確な構造が存在していなかったものの数が計数され、この新規レプリキンの数はウイルス新興に先立って及びその間に増大する、請求項55〜60に記載の方法。
【請求項62】
診断、予防又は治療を目的として1つのウイルスの非新興株又は休眠状態のウイルス株を同定する方法において、
(1)該ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株を得る段階;
(2)ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列を、レプリキン配列の存在及び濃度について分析する段階;
(3)該ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列内のレプリキン配列の濃度を、少なくとも1つのより早い時期に各株のアミノ酸配列内で観察されたレプリキン配列の濃度と比較して、少なくとも2つの時期についてのレプリキンの濃度を提供する段階であって、前記少なくとも1つのより早い時期が段階(1)より前約6ヵ月〜約3年以内である段階;及び
(4)該少なくとも2つの時期の間にレプリキン配列の濃度が最低の増加を示すウイルスの株を同定する段階、
を含んで成る方法。
【請求項63】
診断、予防又は治療を目的として1つのウイルスの新興株を同定する方法において、
(1)該ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株を得る段階;
(2)ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列を、レプリキン配列の存在及び濃度について分析する段階;
(3)レプリキン計数つまり100アミノ酸長の配列あたりのレプリキンの数を決定する段階;
(4)該ウイルスの複数の株のうちの各株の少なくとも1つの分離株のアミノ酸配列内のレプリキン計数を、少なくとも1つのより早い時期に各々の株のアミノ酸配列内で観察されたレプリキン計数と比較して、少なくとも2つの時期についてのレプリキンの計数を提供する段階であって、前記少なくとも1つのより早い時期が段階(1)より前約6ヵ月〜約3年以内である段階;及び
(5)該少なくとも2つの時期の間にレプリキン計数が最高の増加を示すウイルスの株を同定する段階、
を含んで成る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−526222(P2007−526222A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515241(P2006−515241)
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/017936
【国際公開番号】WO2005/010032
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(501141781)
【出願人】(501141792)
【Fターム(参考)】