説明

レンジ検出装置

【課題】レンジを正確に検出するレンジ検出装置を提供する。
【解決手段】レンジ検出装置は、自動変速機のバルブボディに取り付けられている固定部36と、レンジの選択に応じて固定部36に沿って往復移動する可動部とを備えている。可動部には磁石が設けられている。磁石の磁極は可動部の往復移動方向に変化している。固定部36にはホール素子51〜53が設けられており、可動部が往復移動すると、ホール素子51〜53と向き合う磁石の磁極が変化する。ホール素子51〜53は、可動部の往復移動に伴う磁極の変化に応じた検出信号を出力する。また固定部36には、バルブボディ側に延びる棒状の位置決め部70が形成されている。位置決め部70はバルブボディに形成された凹部と嵌合する。これにより固定部36は、バルブボディに対し往復移動方向に位置決めされる。この位置決め部70は、ホール素子51〜53と往復移動方向に重複して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンジ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機に搭載されるレンジ検出装置は、シフトレバーに連動するスプールの変位を検出するインヒビタスイッチを備えている(例えば、特許文献1参照)。このようなレンジ検出装置では、スプールの変位に応じて変化するインヒビタスイッチの検出信号からシフトレバーの操作によって選択されたレンジを検出する。
一方、特許文献2には、所謂オイルパン内蔵型のインヒビタスイッチを備えるレンジ検出装置が開示されている。このようなレンジ検出装置では、オイルパン内にインヒビタスイッチを配置し、オイルパン内のスプールの変位を直接検出することにより、その変位の検出誤差を低減し、レンジの誤検出を防止しようとしている。
【0003】
しかしながら、オイルパン内蔵型のインヒビタスイッチは、オイルパン内の油(以下、「AT作動油」という。)に晒される。ここでAT作動油の温度は、一般に−40℃〜150℃の範囲で変化する。すなわち、オイルパン内蔵型のインヒビタスイッチの環境温度は広範に変化する。このような環境温度の変化によりインヒビタスイッチを構成する部材が伸縮すると、インヒビタスイッチによりスプールの変位を正確に検出することができない。その結果、レンジを誤検出する恐れがある。
【0004】
【特許文献1】DE20320742
【特許文献2】特開平11−108182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の問題を解決するためになされたものであって、レンジを正確に検出するレンジ検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1〜10に記載の発明では、自動変速機の取付部に固定部を取り付け、位置決め部により可動部の往復移動方向(以下、単に「往復移動方向」という。)に位置決めしている。そして、可動部を自動変速機のレンジの選択に応じて、固定部に沿って往復移動させる。この結果、固定部に設けた磁気検出素子は可動部に設けた磁石に対して往復移動方向に変位する。ここで、磁石は往復移動方向に変化する磁極を有している。そのため、磁気検出素子は、自動変速機のレンジの選択に伴って変化する磁極の変化に応じた検出信号を出力する。レンジ検出装置はこの検出信号からレンジを検出することができる。
【0007】
しかしながら、固定部は環境温度の変化により位置決め部を起点に往復移動方向に伸縮する。すると、磁気検出素子は、固定部の伸縮に伴い往復移動方向に変位する。この変位の大きさは、環境温度の温度差と、磁気検出素子と位置決め部との往復移動方向の距離と、固定部の熱膨張率とにより決まる。この結果、磁気検出素子の位置が磁石に対し往復移動方向にずれる。そして、磁気検出素子の磁石に対する往復移動方向への位置ずれ(以下、単に「磁気検出素子の位置ずれ」という。)が所定値(以下、位置許容公差という。)よりも大きくなると、正確なレンジを検出することができなくなる。
【0008】
そこで、請求項1〜10に記載の発明では、磁気検出素子を中心とする可動部の往復移動幅の範囲内に位置決め部を配置する。ここで、一般的な位置許容公差は±0.5mm程度であり、磁気検出素子の固定部への取付公差は±0.2mm程度である。そうすると、固定部の伸縮による磁気検出素子の位置ずれは、±0.3mm以下に抑える必要がある。一方、一般的な固定部は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂の射出成形により形成されている。このように形成された固定部の流れ方向の熱膨張率は、2.5×10-5/℃、流れ方向に対する直交方向の熱膨張率は、4.5×10-5/℃である。そして、レンジ検出装置がオイルパン内に設置されたと仮定すると、上述したように環境温度は−40℃〜150℃の範囲で変化する。その結果、このような条件において磁気検出素子と位置決め部との往復移動方向の距離は、以下に説明するように±35mm以下である必要がある。例えば、磁気検出素子と位置決め部との往復移動方向の距離が±35mmであるとき、固定部の伸縮による磁気検出素子の位置ずれは次のとおりである。すなわち、固定部の往復移動方向が射出成形時の流れ方向であるとき、固定部の伸縮による磁気検出素子の位置ずれは±0.166mmであり、固定部の往復移動方向が射出成形時の流れ方向に対する直交方向であるとき、固定部の伸縮による磁気検出素子の位置ずれは±0.299mmである。このように磁気検出素子と位置決め部との往復移動方向の距離を±35mm以下に設定することにより、固定部の伸縮による磁気検出素子の変位を±0.3mmの範囲内に抑えることができる。一般的な可動部の往復移動幅は70mm以下であるため、上述したように磁気検出素子を中心とする可動部の往復移動幅の範囲内に位置決め部を配置することにより、正確なレンジを検出することができる。
【0009】
請求項3、4に記載の発明では、位置決め部が磁気検出素子と往復移動方向に重複して配置されている。すなわち、磁気検出素子と位置決め部との往復移動方向の距離が殆ど0であるため、環境温度が変化したとしても磁気検出素子は往復移動方向に殆ど変位しない。このように固定部の伸縮による磁気検出素子の位置ずれを低減することができるため、正確なレンジを検出することができる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、例えば磁石の往復移動方向に変化する磁極のパターンを複数の磁石で互いに異ならせ、複数の磁気検出素子でそれらの磁極の変化を検出させることにより、多数のレンジを検出することができる。このように複数の磁気検出素子および磁石を備えるレンジ検出装置においても、請求項4に記載の発明によると、次のように正確なレンジを検出することができる。すなわち、請求項4に記載の発明では、複数の磁気検出素子が往復移動方向の直交方向に配列されている。その結果、位置決め部が全ての磁気検出素子と往復移動方向に重複して配置される。これにより、全ての磁気検出素子の位置ずれを低減することができるため、正確なレンジを検出することができる。
【0011】
請求項7、8に記載の発明では、取付部の凹部に棒状の位置決め部を嵌合させることにより、固定部を取付部に対し往復移動方向に位置決めすることができる。このような位置決め部は容易に形成することができる。
請求項8に記載の発明では、凹部を取付部の固定部と向き合う取付面と、取付面と隣り合い取付面に対して垂直な端面(以下、非取付面という。)とに連続して開口させている。ここで取付部の取付面は、取付部に固定部を取り付ける際に固定部に覆われる。したがって、凹部の取付面の開口と位置決め部とを目視しながら、凹部に位置決め部を位置合わせすることができない。しかしながら、上述したように凹部は非取付面にも開口しているため、凹部の非取付面の開口と位置決め部とを目視しながら、凹部に位置決め部を位置合わせすることができる。したがって、取付部に固定部を容易に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図2に示す自動変速機は、油圧制御装置1とレンジ検出装置2とを備えている。
1.油圧制御装置の構成
油圧制御装置1は、バルブボディ12に形成されたスプール孔12aとスプール孔12aに嵌入されるスプール14とからなるマニュアルバルブ10等の複数のバルブや、複数の流路等で構成される油圧回路を有している。スプール孔12aには、その一端側から他端側に向けて順に図示しないDレンジ圧ポート、ライン圧ポート、Rレンジ圧ポート、ドレン圧ポートが形成されている。各ポートがスプール14の移動位置に応じて開閉することにより、自動変速機のレンジが切り換わる。
【0013】
2.レンジ検出装置の構成
本発明の第1実施形態によるレンジ検出装置2は、ディテント機構20、インヒビタスイッチ30等で構成されている。
ディテント機構20は、ディテントプレート22、コントロールロッド24、ディテントレバー26、出力軸28を有している。コントロールロッド24は、ディテントプレート22からその板面に対し略垂直に延びている。そしてコントロールロッド24のディテントプレート22と反対側の端部は、ディテントレバー26と接合されている。ディテントレバー26は、コントロールロッド24の軸方向に対し略垂直に延びている。そして、ディテントレバー26のコントロールロッド24と反対側の端部は、図示しないリンク機構を介してシフトレバーに接続されている。この結果、ディテントプレート22は、コントロールロッド24を回転軸としてシフトレバーの操作に応じて回動する。
【0014】
出力軸28は、ディテントプレート22からその板面に対し略垂直に延びている。そして、出力軸28のディテントプレート22と反対側の端部は、スプール14の溝14aと係合されている。この結果、ディテントプレート22の回転運動はスプール14の直線運動に変換され、スプール14はシフトレバーの操作に応じてその軸方向に往復移動する。
ディテントプレート22の外縁には、ディテントプレート22の回転方向に複数の溝22aが形成されている。これらの溝22aの配置は、シフトレバーを各レンジに設定した状態において複数の溝22aのいずれかと図示しないローラとが係合するように設定されている。これにより、シフトレバーの非操作時におけるディテントプレート22の回動が防止される。
【0015】
インヒビタスイッチ30は、所謂オイルパン内蔵型のインヒビタスイッチであり、スプール14のバルブボディ12に対する軸方向の変位を検出する。インヒビタスイッチ30は、可動部32、磁石41〜43(図4参照)、固定部36、ホール素子51〜53等から構成されている。
可動部32は、スライダ33、入力軸34等からなる。入力軸34は、スライダ33からその板面に対し略垂直に延びている。そして、入力軸34のスライダ33と反対側の端部は、スプール14の溝14bと係合している。
【0016】
この結果、可動部32は、シフトレバーの操作に応じてスプール14とともに往復移動する。そして、可動部32は各レンジに応じた位置に移動する。例えば、Pレンジが設定された状態では、可動部32は図3(a)に示す位置に移動する。Rレンジが設定された状態では、可動部32は図3(b)に示す位置に移動する。Nレンジが設定された状態では、可動部32は図3(c)に示す位置に移動する。Dレンジが設定された状態では、可動部32は図3(d)に示す位置に移動する。また、上述したようにシフトレバーの非操作時にディテントプレート22の回動が防止されるので、可動部32は各レンジに応じた位置で定位する。
【0017】
磁石41〜43は、図4に示すように可動部32のスライダ33に設けられている。磁石41〜43の磁極は、可動部32の往復移動方向にそれぞれ変化し、それらの変化のパターンは互いに異なっている。図4におけるP、R、N、Dは、各レンジが設定された状態における磁石41〜43とホール素子51〜53との位置関係を示している。例えばPは、Pレンジが設定された状態において磁石41〜43とホール素子51〜53とが向き合う位置を示している。
【0018】
図2に示す固定部36は、取付部としてのバルブボディ12に取り付けられる。固定部36は、図1に示すようにベース37、案内レール38等からなる。案内レール38は、ベース37に設けられ、可動部32を往復移動可能に保持する。この結果、可動部32はベース37の板面に沿って往復移動する。
【0019】
ホール素子51〜53は、固定部36のベース37に設けられ、往復移動方向に対する直交方向に配列されている。ホール素子51〜53は、それぞれ磁石41〜43の向かい合う磁極に応じた検出信号を出力する。図5に示すようにホール素子51〜53は、それぞれ検出回路60に接続されている。検出回路60は、例えばA/D変換回路62、電子制御装置(以下「ECU」という。)64等で構成される。A/D変換回路62は、ホール素子51〜53のアナログ出力をディジタルに変換する。そしてECU64は、ディジタル変換後のホール素子51〜53の出力信号から上述した磁極のパターンを検出することによりレンジを検出する。詳細は後述する。
【0020】
位置決め部70は、図1に示すようにベース37の可動部32と反対側の板面からバルブボディ12側に延びる棒状である。ここで、位置決め部70は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂の射出成形により固定部36と一体的に形成することができる。このように固定部36及び位置決め部70を射出成形により製造する場合において、位置決め部70をベース37に対して垂直な棒状とすることにより型割が容易となる。
【0021】
図2に示すバルブボディ12の凹部80は、バルブボディ12の固定部36と向き合う取付面82と、取付面82に対して垂直な端面84とに連続して開口している。取付面82は、端面84と往復移動方向に対する直交方向に隣り合っている。凹部80に位置決め部70を嵌合させることにより、固定部36をバルブボディ12に対し往復移動方向に位置決めすることができる。この状態において、固定部36の通孔36aに露出するボディ12のねじ穴12bにボルトを締結することにより、固定部36はバルブボディ12に取り付けられる。
【0022】
ここで、上述したようにバルブボディ12に固定部36を取り付けるとき(図2に示す矢印90参照)、取付面82は固定部36に覆われる。そのため、凹部80の取付面82の開口と位置決め部70とを目視しながら、凹部80に位置決め部70を位置合わせることができない。しかしながら、上述したように凹部80は端面84にも開口しているため、凹部80の端面84の開口と位置決め部70とを目視しながら、凹部80に位置決め部70を位置合わせすることができる。したがって、バルブボディ12に固定部36を容易に取り付けることができる。
【0023】
3.レンジ検出装置の作動
運転者がシフトレバーを操作すると、ディテントプレート22はシフトレバーの操作に応じて回動する。すると、マニュアルバルブ10のスプール14はディテントプレート22に駆動されてバルブボディ12に対して往復移動し、インヒビタスイッチ30の可動部32はスプール14とともに往復移動する。そして、可動部32はレンジに応じた位置に変位する。この結果、検出回路60(図5参照)において検出される磁極のパターンは、図6に示すように各レンジに応じて変化する。図6において、P、R、N、Dは各レンジを示し、S1〜S3はそれぞれホール素子51〜53の検出信号の信号レベルを示している。そして「H」はホール素子51〜53の検出信号がハイレベル、「L」はホール素子51〜53の検出信号がローレベルであることを示している。
【0024】
検出回路60は、この磁極のパターンに基づいてレンジを検出する。例えば、ホール素子51の検出信号がハイレベル、ホール素子51の検出信号がローレベル、ホール素子51の検出信号がローレベルであるとき、検出回路60はPレンジを検出する。また、ホール素子51〜53の検出信号が全てハイレベルであるとき、検出回路60はDレンジを検出する。
このようにレンジ検出装置2は、シフトレバーに連動するスプール14のバルブボディ12に対する変位を可動部32の固定部36に対する変位に変換し、インヒビタスイッチ30によりその変位を検出することにより、シフトレバーの操作によって選択されたレンジを検出する。
【0025】
しかしながら、オイルパン内蔵型のインヒビタスイッチ30は、上述したようにオイルパン内のAT作動油に晒されている。そのため、インヒビタスイッチ30の固定部36は、AT作動油の温度変化に応じて位置決め部70を起点に往復移動方向に伸縮する。したがって、仮に図7に示す比較例のように、ホール素子51〜53が位置決め部70に対し往復移動方向に離間して配置されていると、ホール素子51〜53は固定部36の伸縮に伴って位置決め部70に対し往復移動方向に変位する。この変位の大きさΔDは、固定部36の熱膨張率をα、熱膨張前及び熱膨張後のAT作動油の温度差をΔT、熱膨張前のホール素子51〜53と位置決め部70との往復移動方向の距離をDとすると、次式(1)で示される。
ΔD=α×ΔT×D ・・・(1)
【0026】
この結果、ホール素子51〜53の位置は、磁石41〜43に対し往復移動方向にずれる。そして、ホール素子51〜53の磁石41〜43に対する往復移動方向への位置ずれ(以下、単に「ホール素子の位置ずれ」という。)が所定値よりも大きくなると、正確なレンジを検出することができなくなる。
【0027】
そこで、第1実施形態によるインヒビタスイッチ30では、上述したように位置決め部70をホール素子51〜53と往復移動方向に重複して配置することにより、ホール素子51〜53と位置決め部70との往復移動方向の距離Dを0としている。これにより固定部36が熱膨張したとしても、図8に示すようにホール素子51〜53は位置決め部70に対し往復移動方向に変位しない。このようにホール素子51〜53の位置ずれを低減することにより、レンジを正確に検出することができる。
【0028】
(第2実施形態)
第1実施形態では、位置決め部70をホール素子51〜53と往復移動方向に重複して配置した。しかしながら、一般的なインヒビタスイッチでは、上述したようにホール素子と位置決め部と往復移動方向の距離を±35mmの範囲内に設定することにより、固定部の伸縮によるホール素子の位置決め部に対する往復移動方向への変位をレンジの誤検出を防止できる程度に抑制することができる。
【0029】
ここで、一般的な可動部の往復移動幅は70mm以下である。したがって、図9に示す本発明の第2実施形態によるインヒビタスイッチのように、固定部36のホール素子51〜53を中心とする可動部32の往復移動幅Wの範囲内に位置決め部70を配置することにより、正確なレンジを検出することができる。本発明の第2実施形態によるレンジ検出装置の構成要素は、インヒビタスイッチを除き、第1実施形態の対応する構成要素と実質的に同一である。
【0030】
(第3実施形態)
上記複数の実施形態では、インヒビタスイッチ30の可動部32をシフトレバーの操作に応じて直線往復移動させた。しかしながら、以下に示すように可動部をシフトレバーの操作に応じて回転往復移動させてもよい。
本発明の第3実施形態によるレンジ検出装置の構成要素は、インヒビタスイッチを除き、第1実施形態又は第2実施形態によるレンジ検出装置の対応する構成要素と実質的に同一である。本発明の第3実施形態では、図10に示すようにディテントプレート22に磁石341〜343を設ける。これによりディテント機構のディテントプレート22がインヒビタスイッチの可動部として機能する。磁石341〜343は、それぞれコントロールロッド24を中心とする円弧状である。円弧状の磁石341〜343の径は、図示しないホール素子の配置に応じて互いに異なっている。また、磁石341〜343の磁極は、ディテントプレート22の回動方向にそれぞれ変化し、それらの変化のパターンは互いに異なっている。
このように本願発明は、可動部が直線往復移動するインヒビタスイッチに限らず、可動部が回転往復移動するインヒビタスイッチにも適用可能である。
【0031】
(他の実施形態)
上記複数の実施形態では、オイルパン内蔵型のインヒビタスイッチ30について説明した。しかしながら、本発明はオイルパン外に設置されるインヒビタスイッチにも適用可能である。
また上記複数の実施形態では、取付部としてのバルブボディ12に固定部36を取り付けた。しかしながら、変速機ケースに固定部36を取り付けてもよいし、オイルパンに固定部36を取り付けてもよい。すなわち、取付部は変速機ケースでもよいし、オイルパンでもよい。
【0032】
また上記複数の実施形態では、棒状の位置決め部70を例示したが、位置決め部は取付部に固定部36を往復移動方向に位置決め可能な限りどのような形状であってもよい。例えば位置決め部は、板状でもよいしブロック状でもよい。また位置決め部は屈曲させてもよい。
また上記複数の実施形態では、取付部と嵌合する凹部80を取付面82と端面84とに連続して開口させた。しかし、凹部は取付部の形状に応じて一つの端面に開口させてもよい。例えば棒状の位置決め部70と嵌合する凹部を取付面82のみに開口させてもよい。
【0033】
また上記複数の実施形態では、3個のホール素子51〜53及び3個の磁石41〜43をインヒビタスイッチに用いた。しかしながら、ホール素子および磁石の個数はレンジ数に応じて設定可能な設計事項である。したがって、レンジ検出装置は、1個又は2個のホール素子を備えてもよいし、4個以上のホール素子を備えてもよい。また、レンジ検出装置は、1個又は2個の磁石を備えてもよいし、4個以上の磁石を備えてもよい。
また上記複数の実施形態では、磁気検出素子としてホール素子51〜53を例示したが、磁気検出素子は磁気抵抗素子などでもよい。
このように本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態の固定部および位置決め部の上面図、(B)は正面図、(C)は背面図。
【図2】本発明の第1実施形態によるレンジ検出装置を示す斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態の可動部の往復移動を説明するための図。
【図4】本発明の第1実施形態の磁石を示す平面図。
【図5】本発明の第1実施形態の検出回路を示す回路図。
【図6】ホール素子の検出信号の信号レベルとレンジとの関係を示す図。
【図7】(A)は比較例の固定部および位置決め部の上面図、(B)は固定部が熱膨張により往復移動方向に伸張したときの上面図。
【図8】(A)は本発明の第1実施形態の固定部および位置決め部を示す上面図、(B)は固定部が熱膨張により往復移動方向に伸張したときの上面図。
【図9】本発明の第2実施形態の固定部および位置決め部を示す上面図。
【図10】本発明の第3実施形態の可動部を示す斜視図。
【符号の説明】
【0035】
2:レンジ検出装置、12:バルブボディ(取付部)、22:ディテントプレート、32:可動部、36:固定部、41〜43、341〜343:磁石、51:ホール素子(磁気検出素子)、70:位置決め部、80:凹部、82:取付面、84:端面、W:往復移動幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機の取付部に取り付けられている固定部と、
前記自動変速機のレンジの選択に応じて、前記固定部に沿って往復移動する可動部と、
前記可動部に設けられ、前記可動部の往復移動方向に磁極が変化する磁石と、
前記固定部に設けられ、前記可動部の往復移動に伴う前記磁極の変化を検出する磁気検出素子と、
前記固定部に設けられ、前記固定部を前記取付部に対し前記往復移動方向に位置決めする位置決め部と、
を備え、
前記位置決め部は、前記磁気検出素子を中心とする前記可動部の往復移動幅の範囲内に配置されている、
ことを特徴とするレンジ検出装置。
【請求項2】
前記可動部の前記往復移動幅が70mmである、請求項1に記載のレンジ検出装置。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記磁気検出素子と前記往復移動方向に重複して配置されている、請求項1又は2に記載のレンジ検出装置。
【請求項4】
前記磁石は、前記往復移動方向に対する直交方向に複数配列され、
複数の前記磁石の前記磁極の変化をそれぞれ検出する複数の前記磁気検出素子が前記直交方向に配列されている、
請求項3に記載のレンジ検出装置。
【請求項5】
前記可動部は、前記自動変速機のレンジの選択に応じて直線往復移動する、請求項1から4のいずれか一項に記載のレンジ検出装置。
【請求項6】
前記可動部は、前記自動変速機のレンジの選択に応じて回転往復移動する、請求項1から4のいずれか一項に記載のレンジ検出装置。
【請求項7】
前記位置決め部は前記固定部から前記取付部側に延びる棒状であり、
前記取付部は前記位置決め部と嵌合する凹部を有している、
請求項1から6のいずれか一項に記載のレンジ検出装置。
【請求項8】
前記凹部は、前記取付部の前記固定部と向き合う取付面と、前記取付面と隣り合い前記取付面に対して垂直な端面とに連続して開口している、請求項7に記載のレンジ検出装置。
【請求項9】
前記磁気検出素子はホール素子である、請求項1から8のいずれか一項に記載のレンジ検出装置。
【請求項10】
前記固定部および前記可動部は、前記自動変速機のオイルパン内に設置されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のレンジ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−121786(P2008−121786A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306444(P2006−306444)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】