レンズ保持治具及びレンズの保持方法
【課題】吸着力によるレンズの変形を起こすことなく、レンズを吸着固定することができるレンズ保持治具及びレンズの保持方法を提供することを目的とする。
【解決手段】レンズの下方にレンズの下面との間に空隙を有して配設され、その下面が外部装置に吸着固定される移載台と、レンズのコバ面と移載台を把持する把持部材と、を備えたレンズ保持治具とする。
【解決手段】レンズの下方にレンズの下面との間に空隙を有して配設され、その下面が外部装置に吸着固定される移載台と、レンズのコバ面と移載台を把持する把持部材と、を備えたレンズ保持治具とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを保持する治具、特にレンズを吸着保持するための保持治具及び保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凸面側と凹面側の研削、研磨加工を終えたフィニッシュトレンズに対して、その光学面上に機能性膜を形成することがある。こうした機能性膜の形成方法の一つとして、機能性膜の材料を含む溶液を回転するレンズ表面に塗布するスピンコート法がある。
【0003】
例えば下記特許文献1では、レンズ等の物体を回転させながら、該物体の上方及び下方の両方から液体を吐出し、さらに下方から液体を吐出するノズルを鉛直方向に対して傾けることが記載されている。
下記特許文献1によれば、下方向から液体を吐出する際、吐出ノズルを鉛直方向に対して傾けることにより、吐出された液体がノズルに再付着・汚染することによる外観欠点を防止できるとされている。
【0004】
また、下記特許文献2では、フレアやゴースト等を防ぐための黒色塗料を、レンズの外周面に自動で塗布することが記載されている。
下記特許文献2に記載の方法では、真空吸着手段を有した回転軸にレンズを保持する。そしてこの回転軸にレンズを保持したまま芯出しを行い、レンズを回転させながら塗布具をレンズに近接させることで黒色塗料を塗装している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−94519号公報
【特許文献2】特開1993−080206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、フィニッシュトレンズに機能性膜等の膜を成膜する場合には、回転するレンズに機能性膜材料を含んだ溶液を塗布することがある。このような場合、回転する回転台に対してレンズを固定する必要があり、例えば上述の特許文献2にも記載されているように、吸着によってレンズを固定する方法がある。
【0007】
図13は、吸着による固定方法の一例を示す断面図である。吸着台40の上面には、ゴム等によるOリング41を介して、フィニッシュトレンズ等のレンズ11が載置されている。
また、吸着台40には、その上面に貫通する吸引口42が設けられており、この吸引口42から吸引することによって、レンズ11を吸着台40に吸着固定する。
そして、吸着台40とともにレンズ11を回転させながら、機能性膜材料を含んだ溶液をレンズ11の表面に滴下することにより成膜を行うものである。
【0008】
ところが、近年、特に眼鏡用のプラスチックレンズにおいては高屈折率化が進んでいる。このため、レンズ凸面及び凹面の両面の加工を終えたフィニッシュトレンズにおいて、中心部の厚さがわずか数ミリ程度しかないものが増えてきている。
【0009】
このような中心部の薄いレンズに対して、図13に示すように吸着による固定を行う場合には、矢印A1に示す方向にレンズが受ける吸着力によってレンズが変形する可能性を考慮しなければならない。
また、変形した状態で吸着固定されたレンズに機能性膜材料を含む溶液を塗布し、硬化することで機能性膜を形成してしまうと、硬い機能性膜の剛性のために、レンズの変形が戻らなくなる。また、変形が戻ったとしても、機能性膜にひびが入ったり、剥がれたりする等の不具合が生じる可能性がある。
【0010】
そこで本発明は上記課題に鑑み、吸着力によるレンズの変形を起こすことなく、レンズを吸着固定することができるレンズ保持治具及びレンズの保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明によるレンズ保持治具は、レンズの下方に、このレンズの下面との間に空隙を有して配設され、その下面が外部装置に吸着固定される移載台と、レンズのコバ面と移載台を把持する把持部材と、を備える。
【0012】
また、本発明によるレンズの保持方法は、レンズ及び移載台を配設した芯出し治具を吸着台に載せる載置ステップと、芯出し治具を把持し、芯出し治具及び移載台の芯出しを行う第1の芯出しステップと、を含む。また、レンズを把持し、レンズの芯出しを行う第2の芯出しステップと、移載台を吸着台に吸着させ、芯出し治具を取り出すステップと、移載台の側面と、レンズのコバ面とをテープ部材によって少なくとも2箇所以上固定する貼り付けステップも含む。
【0013】
本発明のレンズ保持治具によれば、移載台が吸着固定され、吸着固定された移載台に対してレンズが把持部材により固定される。したがって、レンズは吸着による吸引力を受けずに固定される。
また、レンズの光学面が直接吸着され無いため、不規則な光学面を有するレンズであっても、その光学面の形状に関わらず安定して保持、固定することが可能である。
【0014】
また、固定されるレンズの下面と移載台上面との間には、空隙が設けられている。これにより、レンズは移載台には接触せず、コバ面が把持されることのみによって固定されるため、レンズの損傷や汚染を防止できる。
また、本発明によるレンズ保持具を用いてレンズの光学面に機能性膜材料を塗布した後、レンズをレンズ保持具に固定したまま紫外線や熱により硬化させたとしても、レンズと移載台との間に空隙を設けてあるため、レンズの急激な温度上昇が抑制される。このため、熱によるレンズの変形等も防止できる。
【0015】
また、粘着性を有するテープ部材によりレンズのコバ面と移載台とを把持する場合には、非常に簡易な構造によってレンズ保持具が構成される。このため、低コストかつ容易にレンズを固定できる。
【0016】
また、把持部材は、レンズのコバ面と、レンズの上面側の光学面との稜線よりも下側に配設されることが望ましい。すなわち、レンズのコバ面を把持する把持部材をレンズの上面側の光学面よりも突出させないことにより、本発明によるレンズ保持治具を用いて固定されたレンズに対して、均一な成膜を行うことができる。
【0017】
また、固定されるレンズのコバ面は、少なくとも2箇所以上が露出され、露出されたコバ面は、レンズの下面側の光学面との稜線を含む構成とすることにより、レンズと移載台の間の上述の空隙は、把持部材の外側の外気に対して開放される。
【0018】
また、本発明のレンズの保持方法によれば、上述のレンズ保持具に対してレンズが固定される。したがって、吸着による吸引力を受けずにレンズを固定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吸引力を直接及ぼすことなくレンズを固定できる。このため、レンズを変形することなく、吸着固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るレンズ保持治具にレンズを固定した様子を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るレンズ保持治具にレンズを固定した様子を示す上面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るレンズ保持治具にレンズを固定した様子を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るレンズの保持方法を示すフローチャートである。
【図5】Aは芯出し治具にレンズ及び移載台を配設した様子を上方から見た斜視図であり、Bは下方から見た斜視図であり、Cはその断面図である。
【図6】Aは芯出し治具を上方から見た斜視図であり、Bは下方から見た斜視図である。
【図7】芯出し治具及び移載台の芯出しを行う様子を示す斜視図である。
【図8】レンズの芯出しを行う様子を示す斜視図である。
【図9】レンズ把持ハンドの構成を示す斜視図である。
【図10】レンズ把持ハンドがレンズを把持する様子を示す断面図である。
【図11】レンズ把持ハンドがレンズを上昇させる様子を示す斜視図である。
【図12】レンズ及び移載台に把持部材が貼り付けられた様子を示す斜視図である。
【図13】従来の方法によりレンズを吸着固定する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態に係るレンズ保持治具について、図1〜図12を基に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0022】
1.レンズ保持治具の構成
図1は、例えばフィニッシュトレンズ等のレンズ10が固定された本発明によるレンズ保持具100を下方から見た斜視図であり、図2は、その上面図である。また、図3は、図2におけるA−A’断面図である。
【0023】
本実施の形態によるレンズ保持治具100は、レンズ10の下方にレンズ10の下面との間に空隙を有して配設され、その下面が外部装置に吸着固定される移載台20と、レンズ10のコバ面と移載台20を把持する把持部材30と、を備える。
【0024】
移載台20は例えば樹脂等によって構成され、ここでは円盤形状とされている。この移載台20は、例えば図示しない吸着固定装置に備えられた吸着台40上に載置される。また、スピンコータとして用いる場合、この吸着固定装置は、例えば吸着台20を回転させるスピンドルモータ等の回転駆動機構と、吸着台20の回転数を制御する制御部と、レンズ表面に塗布する塗液を供給する供給ノズルを備えることによって構成される。
【0025】
また、図3に示すように、吸着台40上には例えばゴム材によるOリング41が配置されている。吸着台40に設けられた吸引口42より吸引を行うことにより、移載台20がOリング41を介して移載台20に固定される。
【0026】
フィニッシュトレンズ等のレンズ10は、移載台20の上方に配設される。そしてレンズ10のコバ面と移載台20とが把持部材30によって把持されることにより、レンズ10が移載台20に固定される。
この把持部材20には、例えば粘着性を有するテープ材を用いることができる。例えばテープ材をレンズ10のコバ面と移載台20の外周とに渡って貼り付けることにより、レンズ10が移載台20に固定される。
【0027】
本実施の形態においては、図1,2に示すように、把持部材30例えば2枚のテープ部材によって構成され、レンズ10と移載台20を固定している。
また、把持部材30はレンズ10や移載台20の外周全面を覆ってはおらず、レンズ10のコバ面10a,10bの2箇所が露出している。これにより、レンズ10と移載台20との間の空隙は、把持部材30外側の外気に解放されている。また、この箇所では、レンズ10の下面側の光学面とコバ面との稜線も露出している。
なお、移載台20の径がレンズ10の径と略等しいと、レンズ10のコバ面と移載台20の外周面とをテープ材により容易に固定可能となる。
【0028】
このように、本実施の形態では、レンズ10は、その下方に配設された移載台20を介して吸着台40に吸着固定される。したがって、レンズ10は吸着台40の吸引口42による吸引力を受けない。このため、厚さの薄いレンズであっても、変形させることなく確実に固定することが可能である。
また、レンズの光学面を直接吸着する場合には、その光学面が複雑な形状をしていると吸着が困難となる場合がある。しかし、本実施の形態では、移載台20を介して吸着固定するため、光学面の形状に関わらず、例えば累進屈折力レンズ等も容易に保持できる。
【0029】
また、レンズ10は、そのコバ面が把持されることのみによって固定される。このため、図3に示すように、レンズ10と移載台20の間には空隙が存在しており、レンズ10は移載台20に接触することなく移載台20の上方に配置される。したがって、レンズ10の光学面を傷つけることなく固定することが可能である。
【0030】
なお、図1に示すように、把持部材30の上端は、固定されるレンズ10の上面(ここでは凸面)とレンズ10のコバ面との稜線よりも下方に配設される。
例えばレンズ10に成膜を行う場合、吸着台40が接続された上述のスピンコータに本実施の形態によるレンズ保持治具100を用いてレンズ10固定する。レンズ10の上面とレンズ10のコバ面との稜線よりも上方に把持部材30が突出していると、スピンコーティングにおいては、把持部材30によって塗液の液溜まりが生じる。このため、レンズ10表面の周縁部にエッジビーズが形成されやすくなり、均一な膜厚での成膜が困難となる。
このため、本実施の形態において把持部材30は、レンズ10の上面とレンズ10のコバ面との稜線よりも下方に配設される。これにより液溜まりを形成することなく、均一な塗布成膜を行うことができる。
【0031】
また、レンズ10と移載台20との間の空隙は、上述のように開放されている。このため、例えば温度上昇により空隙内の気体が膨張しても、外に逃がすことができる。
したがって、例えばレンズ10上に塗布した塗液に対して、レンズ10をレンズ保持治具100から取り外すことなく、そのままレンズ保持治具100とともに加熱やUV照射等を行い、硬化して成膜できる。
このように、レンズ10をレンズ保持治具100から取り外さずにそのまま硬化できるので、例えばレンズ10の取り外し時に、レンズ10上に塗布された液体膜に接触し、膜の均一性を損ねたり、液体膜に異物が付着するのを防止できる。
【0032】
また、レンズ10をレンズ保持具100に保持させたまま塗液の加熱硬化を行うと、レンズ10は載置台20との間に空隙を有して配置されているので、レンズ10の急激な温度上昇が緩和される。
例えば、レンズをトレイ等に直接載置してオーブンに連続投入する場合、既に高温となっているオーブン内の網棚等から直に熱をうけることになる。また、UV硬化時には、レンズを透過した紫外線をトレイ等が全て受けることになり、高温となったトレイから直接レンズが熱を受ける。
しかし、本実施の形態の場合には、空隙によりレンズ10の温度上昇が緩和されるため、レンズの変形を抑制できる。
【0033】
なお、成膜後のレンズ10は、本実施の形態の場合、例えばテープ材による把持部材30を剥がすという簡単な作業によって、レンズ保持治具100から取り外すことができる。
【0034】
2.レンズの固定方法
次に、本発明によるレンズ保持治具100にレンズ10を固定する工程について、図4〜図12を参照し以下に説明する。
【0035】
図4は、本実施の形態によるレンズ保持治具100にレンズ10を保持、固定する方法を示すフローチャートである。
本実施の形態によるレンズの保持方法は、レンズ及び移載台を配設した芯出し治具を吸着台に載せる載置ステップ(ステップS1)と、芯出し治具を把持し、芯出し治具及び移載台の芯出しを行う第1の芯出しステップ(ステップS2)を含む。
また、次いでレンズを把持し、レンズの芯出しを行う第2の芯出しステップ(ステップS3)と、移載台を吸着台に吸着させ、芯出し治具を取り出すステップ(ステップS4)と、移載台の側面と、レンズのコバ面とをテープ部材によって少なくとも2箇所以上固定する貼り付けステップ(ステップS5)も含む。
【0036】
まず図5Aに示すように、レンズ10と移載台20を配設した芯出し治具50を図示しないレンズ固定装置に備えられた吸着台43上に載置する(ステップS1)。この吸着台43は、例えば図3Cにおいて示した吸着台40と同じ構成であってよい。なお、図5Bは、この様子を下方から見た斜視図であり、図5Cは図5BにおけるB−B’断面図である。
図5B,Cに示すように、芯出し治具50に配設された移載台20の下面は露出しており、移載台20の下面が吸着台43上に載置される。
【0037】
図6Aは、この芯出し治具50を上方から見た斜視図であり、図6Bは、芯出し治具50を下方から見た斜視図である。
芯出し治具50は、移載台20を配設するプレート部51と、プレート部51の上面より突出し、レンズ10を配設する一対の突出部53とによって構成される。
【0038】
プレート部51の下面には、その内周が移載台20の外周とほぼ一致する凹部52が設けられている。この凹部52に移載台20が嵌め込まれることによって、移載台20が芯出し治具50に対して位置決めされる。
本実施の形態において、凹部52はプレート部51を貫通しており、凹部52の壁面から内側に突出するフランジ部55が移載台20の上面に当接する。ただし、凹部52は必ずしも貫通している必要はない。
【0039】
プレート部51の上面に設けられた一対の突出部53は、例えば凹部52を介して対向する位置に配置されている。一対の突出部53の凹部52側の側面には、それぞれ切欠き部54が設けられており、この切欠き部54によって形成された段差にレンズ10の周端部が配設される。
【0040】
次に、図7に示すように、図示しないレンズ固定装置等に備えられた1対の芯出しハンド60を例えば下方より上昇させ、次いで芯出し治具50の側面を把持する。これにより、芯出し治具50が例えば吸着台43に対して芯出しされる。また、芯出し治具50の凹部52に固定された移載台20も、芯出し治具50が芯出しされることによって同様に、吸着台40に対して芯出しされる(ステップS2)。
この芯出しハンド60は、例えば3軸モータ等により、図中上下方向、及び前後左右方向に移動可能とされている。
【0041】
移載台20の芯出しが行われると、次に図8に示すように、図示しないレンズ固定装置に備えられた1対のレンズ把持ハンド61が例えば上方から下降する。次いで、レンズ把持ハンド61は、レンズ10のコバ面を把持することによってレンズ10を吸着台43に対して芯出しする(ステップS3)。
【0042】
ここで図9は、このレンズ把持ハンド61の斜視図であり、図10は、図8のC−C’断面図である。レンズ把持ハンド61は、例えば棒状に延伸した把持部62に、切欠き部63を設けることによって構成されている。
この切欠き部63の側面は、例えば凹面となっており、図10の外周辺61aに示すように、その断面は例えば円弧形状とされる。この円弧の径は、レンズ10の径よりも小さく設定されている。このため、1つのレンズ把持ハンド61は、レンズ10のコバ面に対して、図10に示すように2点で接触する。
【0043】
したがって、1対のレンズ把持ハンド61は、それぞれが対向する方向にレンズ10のコバ面を押圧し、4点においてレンズ10を把持する。これにより、レンズ10の芯出しが行われる。また、上述の芯出しハンド60も、このレンズ把持ハンド61と同様の構成であってよい。
なお、把持部62の上端から突出した接続部64が例えば図示しないレンズ固定装置のヘッド等に嵌め込まれる等によって、レンズ把持ハンド61はレンズ固定装置に接続される。
【0044】
また、このレンズ把持ハンド61は、例えば3軸モータ等により、図中上下方向、及び前後左右方向に移動可能とされている。
ここでは、2個のレンズ把持ハンドによってレンズの芯出しを行う例とされているが、例えば3個や4個等のレンズ把持ハンドによってレンズの芯出しを行ってもよい。
また、レンズ10のコバ面を芯出し治具50の段差54に嵌合させることにより、レンズ10の中心軸と芯出し治具50の凹部52に嵌め込まれた移載台20との中心軸とが一致するようにしてあってもよい。
【0045】
レンズ10の芯出しを終えると、吸着台43に対して芯出しされている移載台20を吸着台43に吸着させ、固定する。そして、移載台20を把持していた芯出しハンド60は、例えば下降する。また、図11に示すように、レンズ把持ハンド61は、レンズ10を把持したまま上昇し、レンズ10を上方に持ち上げる。そして、レンズ10が取り外された芯出し治具50を取り出す(ステップS4)。
【0046】
芯出し治具50を取り出すと、図12に示すように、レンズ把持ハンド61は下降し、吸着台43に対して芯出しされた状態を維持しながら、レンズ10を所望の高さに配設する。そして、レンズ10のコバ面と、移載台20の外周とに渡って、例えばテープ部材等による把持部材30を貼り付ける(ステップS5)。
これにより、レンズ10と移載台20とが、吸着台43に対して芯出しされた状態で吸着台43に固定される。
【0047】
例えばステップS5では、レンズ把持ハンド61を下降させることにより、レンズ10を降下させる。
そして、2次元レーザ変位計等を用いて、レンズ10の上面とコバ面との稜線の径方向の位置、及び高さを計測する。
この計測されたデータは、レンズ固定装置に備えられた例えばパーソナルコンピュータ等の制御部により処理され、このデータを基に、把持部材30をレンズ10のコバ面と移載台20の外周面とに渡って貼り付ける。なお、芯出しハンド60やレンズ把持ハンド61の動作、及び吸着台43における吸引の制御もこの制御部によって行われる。
レンズ10の上面よりも突出した把持部材30は、レンズ10の上面とコバ面との稜線における上述の計測データに基づいて、例えばカッターやCO2レーザ等を制御し、切断してもよい。
【0048】
ただし、図中短手方向に幅の定められた把持部材30を予め準備しておき、この把持部材30の幅に合わせて、把持部材30がレンズ10の上面より突出しないようにレンズ10を配設する高さを制御してもよい。この場合には、把持部材30を切断する工程を必要としないため好ましい。
また、所望とするレンズ10の配設高さに合わせて予め統一された幅の把持部材を準備し、貼り付けてもよい。
【0049】
なお、把持部材30は、レンズ把持ハンド61が把持しているレンズ10のコバ面、及びそのコバ面の下方に位置する移載台20の側面には貼り付けられない。したがって、レンズ10と移載台20との間の空隙は、レンズ把持ハンド61が把持している箇所において、外気に開放されている。
本実施の形態においては、2個のレンズ把持ハンド61によってレンズを把持しているため、レンズ10と移載台20との間の空隙は、2箇所において開放される。空隙において開放される箇所数は、用いるレンズ把持ハンドの個数に応じて適宜変更しても構わない。
【0050】
レンズ10と移載台20とが把持部材30によって固定されると、レンズ把持ハンド61はレンズ10を開放し、例えば上方に移動する。また、移載台20は、吸着台43への吸着から開放される。そして、レンズ保持治具100に固定されたレンズ10が取り出される。
なお、レンズ10をレンズ保持治具100に固定した後、吸着台40から取り外す場合には、必ずしもレンズ10と移載台20とが吸着台40に芯出しされている必要はなく、レンズ10と移載台20の中心が同一軸上にあればよい。
【0051】
また、本実施の形態においては、レンズ10と移載台20とが、吸着台43に対して芯出しされている。このため、吸着台43にレンズ10を吸着固定したまま、レンズ10に対してその他の処理を施すことも可能である。
【0052】
以上、本発明によるレンズ保持治具、及びレンズの保持方法の実施の形態について説明した。本発明は上記実施の形態にとらわれることなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、考えられる種々の形態を含むものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
10,11・・・レンズ,10a,10b・・・面、20・・・移載台、30・・・把持部材、40,43・・・吸着台、41・・・Oリング、42・・・吸引口、50・・・芯出し治具、51・・・プレート部、52・・・凹部、53・・・突出部、54,63・・・切欠き部、60・・・芯出しハンド、61・・・レンズ把持ハンド、61a・・・外周辺、62・・・把持部、64・・・接続部、100・・・レンズ保持治具
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを保持する治具、特にレンズを吸着保持するための保持治具及び保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凸面側と凹面側の研削、研磨加工を終えたフィニッシュトレンズに対して、その光学面上に機能性膜を形成することがある。こうした機能性膜の形成方法の一つとして、機能性膜の材料を含む溶液を回転するレンズ表面に塗布するスピンコート法がある。
【0003】
例えば下記特許文献1では、レンズ等の物体を回転させながら、該物体の上方及び下方の両方から液体を吐出し、さらに下方から液体を吐出するノズルを鉛直方向に対して傾けることが記載されている。
下記特許文献1によれば、下方向から液体を吐出する際、吐出ノズルを鉛直方向に対して傾けることにより、吐出された液体がノズルに再付着・汚染することによる外観欠点を防止できるとされている。
【0004】
また、下記特許文献2では、フレアやゴースト等を防ぐための黒色塗料を、レンズの外周面に自動で塗布することが記載されている。
下記特許文献2に記載の方法では、真空吸着手段を有した回転軸にレンズを保持する。そしてこの回転軸にレンズを保持したまま芯出しを行い、レンズを回転させながら塗布具をレンズに近接させることで黒色塗料を塗装している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−94519号公報
【特許文献2】特開1993−080206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、フィニッシュトレンズに機能性膜等の膜を成膜する場合には、回転するレンズに機能性膜材料を含んだ溶液を塗布することがある。このような場合、回転する回転台に対してレンズを固定する必要があり、例えば上述の特許文献2にも記載されているように、吸着によってレンズを固定する方法がある。
【0007】
図13は、吸着による固定方法の一例を示す断面図である。吸着台40の上面には、ゴム等によるOリング41を介して、フィニッシュトレンズ等のレンズ11が載置されている。
また、吸着台40には、その上面に貫通する吸引口42が設けられており、この吸引口42から吸引することによって、レンズ11を吸着台40に吸着固定する。
そして、吸着台40とともにレンズ11を回転させながら、機能性膜材料を含んだ溶液をレンズ11の表面に滴下することにより成膜を行うものである。
【0008】
ところが、近年、特に眼鏡用のプラスチックレンズにおいては高屈折率化が進んでいる。このため、レンズ凸面及び凹面の両面の加工を終えたフィニッシュトレンズにおいて、中心部の厚さがわずか数ミリ程度しかないものが増えてきている。
【0009】
このような中心部の薄いレンズに対して、図13に示すように吸着による固定を行う場合には、矢印A1に示す方向にレンズが受ける吸着力によってレンズが変形する可能性を考慮しなければならない。
また、変形した状態で吸着固定されたレンズに機能性膜材料を含む溶液を塗布し、硬化することで機能性膜を形成してしまうと、硬い機能性膜の剛性のために、レンズの変形が戻らなくなる。また、変形が戻ったとしても、機能性膜にひびが入ったり、剥がれたりする等の不具合が生じる可能性がある。
【0010】
そこで本発明は上記課題に鑑み、吸着力によるレンズの変形を起こすことなく、レンズを吸着固定することができるレンズ保持治具及びレンズの保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明によるレンズ保持治具は、レンズの下方に、このレンズの下面との間に空隙を有して配設され、その下面が外部装置に吸着固定される移載台と、レンズのコバ面と移載台を把持する把持部材と、を備える。
【0012】
また、本発明によるレンズの保持方法は、レンズ及び移載台を配設した芯出し治具を吸着台に載せる載置ステップと、芯出し治具を把持し、芯出し治具及び移載台の芯出しを行う第1の芯出しステップと、を含む。また、レンズを把持し、レンズの芯出しを行う第2の芯出しステップと、移載台を吸着台に吸着させ、芯出し治具を取り出すステップと、移載台の側面と、レンズのコバ面とをテープ部材によって少なくとも2箇所以上固定する貼り付けステップも含む。
【0013】
本発明のレンズ保持治具によれば、移載台が吸着固定され、吸着固定された移載台に対してレンズが把持部材により固定される。したがって、レンズは吸着による吸引力を受けずに固定される。
また、レンズの光学面が直接吸着され無いため、不規則な光学面を有するレンズであっても、その光学面の形状に関わらず安定して保持、固定することが可能である。
【0014】
また、固定されるレンズの下面と移載台上面との間には、空隙が設けられている。これにより、レンズは移載台には接触せず、コバ面が把持されることのみによって固定されるため、レンズの損傷や汚染を防止できる。
また、本発明によるレンズ保持具を用いてレンズの光学面に機能性膜材料を塗布した後、レンズをレンズ保持具に固定したまま紫外線や熱により硬化させたとしても、レンズと移載台との間に空隙を設けてあるため、レンズの急激な温度上昇が抑制される。このため、熱によるレンズの変形等も防止できる。
【0015】
また、粘着性を有するテープ部材によりレンズのコバ面と移載台とを把持する場合には、非常に簡易な構造によってレンズ保持具が構成される。このため、低コストかつ容易にレンズを固定できる。
【0016】
また、把持部材は、レンズのコバ面と、レンズの上面側の光学面との稜線よりも下側に配設されることが望ましい。すなわち、レンズのコバ面を把持する把持部材をレンズの上面側の光学面よりも突出させないことにより、本発明によるレンズ保持治具を用いて固定されたレンズに対して、均一な成膜を行うことができる。
【0017】
また、固定されるレンズのコバ面は、少なくとも2箇所以上が露出され、露出されたコバ面は、レンズの下面側の光学面との稜線を含む構成とすることにより、レンズと移載台の間の上述の空隙は、把持部材の外側の外気に対して開放される。
【0018】
また、本発明のレンズの保持方法によれば、上述のレンズ保持具に対してレンズが固定される。したがって、吸着による吸引力を受けずにレンズを固定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吸引力を直接及ぼすことなくレンズを固定できる。このため、レンズを変形することなく、吸着固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るレンズ保持治具にレンズを固定した様子を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るレンズ保持治具にレンズを固定した様子を示す上面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るレンズ保持治具にレンズを固定した様子を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るレンズの保持方法を示すフローチャートである。
【図5】Aは芯出し治具にレンズ及び移載台を配設した様子を上方から見た斜視図であり、Bは下方から見た斜視図であり、Cはその断面図である。
【図6】Aは芯出し治具を上方から見た斜視図であり、Bは下方から見た斜視図である。
【図7】芯出し治具及び移載台の芯出しを行う様子を示す斜視図である。
【図8】レンズの芯出しを行う様子を示す斜視図である。
【図9】レンズ把持ハンドの構成を示す斜視図である。
【図10】レンズ把持ハンドがレンズを把持する様子を示す断面図である。
【図11】レンズ把持ハンドがレンズを上昇させる様子を示す斜視図である。
【図12】レンズ及び移載台に把持部材が貼り付けられた様子を示す斜視図である。
【図13】従来の方法によりレンズを吸着固定する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態に係るレンズ保持治具について、図1〜図12を基に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0022】
1.レンズ保持治具の構成
図1は、例えばフィニッシュトレンズ等のレンズ10が固定された本発明によるレンズ保持具100を下方から見た斜視図であり、図2は、その上面図である。また、図3は、図2におけるA−A’断面図である。
【0023】
本実施の形態によるレンズ保持治具100は、レンズ10の下方にレンズ10の下面との間に空隙を有して配設され、その下面が外部装置に吸着固定される移載台20と、レンズ10のコバ面と移載台20を把持する把持部材30と、を備える。
【0024】
移載台20は例えば樹脂等によって構成され、ここでは円盤形状とされている。この移載台20は、例えば図示しない吸着固定装置に備えられた吸着台40上に載置される。また、スピンコータとして用いる場合、この吸着固定装置は、例えば吸着台20を回転させるスピンドルモータ等の回転駆動機構と、吸着台20の回転数を制御する制御部と、レンズ表面に塗布する塗液を供給する供給ノズルを備えることによって構成される。
【0025】
また、図3に示すように、吸着台40上には例えばゴム材によるOリング41が配置されている。吸着台40に設けられた吸引口42より吸引を行うことにより、移載台20がOリング41を介して移載台20に固定される。
【0026】
フィニッシュトレンズ等のレンズ10は、移載台20の上方に配設される。そしてレンズ10のコバ面と移載台20とが把持部材30によって把持されることにより、レンズ10が移載台20に固定される。
この把持部材20には、例えば粘着性を有するテープ材を用いることができる。例えばテープ材をレンズ10のコバ面と移載台20の外周とに渡って貼り付けることにより、レンズ10が移載台20に固定される。
【0027】
本実施の形態においては、図1,2に示すように、把持部材30例えば2枚のテープ部材によって構成され、レンズ10と移載台20を固定している。
また、把持部材30はレンズ10や移載台20の外周全面を覆ってはおらず、レンズ10のコバ面10a,10bの2箇所が露出している。これにより、レンズ10と移載台20との間の空隙は、把持部材30外側の外気に解放されている。また、この箇所では、レンズ10の下面側の光学面とコバ面との稜線も露出している。
なお、移載台20の径がレンズ10の径と略等しいと、レンズ10のコバ面と移載台20の外周面とをテープ材により容易に固定可能となる。
【0028】
このように、本実施の形態では、レンズ10は、その下方に配設された移載台20を介して吸着台40に吸着固定される。したがって、レンズ10は吸着台40の吸引口42による吸引力を受けない。このため、厚さの薄いレンズであっても、変形させることなく確実に固定することが可能である。
また、レンズの光学面を直接吸着する場合には、その光学面が複雑な形状をしていると吸着が困難となる場合がある。しかし、本実施の形態では、移載台20を介して吸着固定するため、光学面の形状に関わらず、例えば累進屈折力レンズ等も容易に保持できる。
【0029】
また、レンズ10は、そのコバ面が把持されることのみによって固定される。このため、図3に示すように、レンズ10と移載台20の間には空隙が存在しており、レンズ10は移載台20に接触することなく移載台20の上方に配置される。したがって、レンズ10の光学面を傷つけることなく固定することが可能である。
【0030】
なお、図1に示すように、把持部材30の上端は、固定されるレンズ10の上面(ここでは凸面)とレンズ10のコバ面との稜線よりも下方に配設される。
例えばレンズ10に成膜を行う場合、吸着台40が接続された上述のスピンコータに本実施の形態によるレンズ保持治具100を用いてレンズ10固定する。レンズ10の上面とレンズ10のコバ面との稜線よりも上方に把持部材30が突出していると、スピンコーティングにおいては、把持部材30によって塗液の液溜まりが生じる。このため、レンズ10表面の周縁部にエッジビーズが形成されやすくなり、均一な膜厚での成膜が困難となる。
このため、本実施の形態において把持部材30は、レンズ10の上面とレンズ10のコバ面との稜線よりも下方に配設される。これにより液溜まりを形成することなく、均一な塗布成膜を行うことができる。
【0031】
また、レンズ10と移載台20との間の空隙は、上述のように開放されている。このため、例えば温度上昇により空隙内の気体が膨張しても、外に逃がすことができる。
したがって、例えばレンズ10上に塗布した塗液に対して、レンズ10をレンズ保持治具100から取り外すことなく、そのままレンズ保持治具100とともに加熱やUV照射等を行い、硬化して成膜できる。
このように、レンズ10をレンズ保持治具100から取り外さずにそのまま硬化できるので、例えばレンズ10の取り外し時に、レンズ10上に塗布された液体膜に接触し、膜の均一性を損ねたり、液体膜に異物が付着するのを防止できる。
【0032】
また、レンズ10をレンズ保持具100に保持させたまま塗液の加熱硬化を行うと、レンズ10は載置台20との間に空隙を有して配置されているので、レンズ10の急激な温度上昇が緩和される。
例えば、レンズをトレイ等に直接載置してオーブンに連続投入する場合、既に高温となっているオーブン内の網棚等から直に熱をうけることになる。また、UV硬化時には、レンズを透過した紫外線をトレイ等が全て受けることになり、高温となったトレイから直接レンズが熱を受ける。
しかし、本実施の形態の場合には、空隙によりレンズ10の温度上昇が緩和されるため、レンズの変形を抑制できる。
【0033】
なお、成膜後のレンズ10は、本実施の形態の場合、例えばテープ材による把持部材30を剥がすという簡単な作業によって、レンズ保持治具100から取り外すことができる。
【0034】
2.レンズの固定方法
次に、本発明によるレンズ保持治具100にレンズ10を固定する工程について、図4〜図12を参照し以下に説明する。
【0035】
図4は、本実施の形態によるレンズ保持治具100にレンズ10を保持、固定する方法を示すフローチャートである。
本実施の形態によるレンズの保持方法は、レンズ及び移載台を配設した芯出し治具を吸着台に載せる載置ステップ(ステップS1)と、芯出し治具を把持し、芯出し治具及び移載台の芯出しを行う第1の芯出しステップ(ステップS2)を含む。
また、次いでレンズを把持し、レンズの芯出しを行う第2の芯出しステップ(ステップS3)と、移載台を吸着台に吸着させ、芯出し治具を取り出すステップ(ステップS4)と、移載台の側面と、レンズのコバ面とをテープ部材によって少なくとも2箇所以上固定する貼り付けステップ(ステップS5)も含む。
【0036】
まず図5Aに示すように、レンズ10と移載台20を配設した芯出し治具50を図示しないレンズ固定装置に備えられた吸着台43上に載置する(ステップS1)。この吸着台43は、例えば図3Cにおいて示した吸着台40と同じ構成であってよい。なお、図5Bは、この様子を下方から見た斜視図であり、図5Cは図5BにおけるB−B’断面図である。
図5B,Cに示すように、芯出し治具50に配設された移載台20の下面は露出しており、移載台20の下面が吸着台43上に載置される。
【0037】
図6Aは、この芯出し治具50を上方から見た斜視図であり、図6Bは、芯出し治具50を下方から見た斜視図である。
芯出し治具50は、移載台20を配設するプレート部51と、プレート部51の上面より突出し、レンズ10を配設する一対の突出部53とによって構成される。
【0038】
プレート部51の下面には、その内周が移載台20の外周とほぼ一致する凹部52が設けられている。この凹部52に移載台20が嵌め込まれることによって、移載台20が芯出し治具50に対して位置決めされる。
本実施の形態において、凹部52はプレート部51を貫通しており、凹部52の壁面から内側に突出するフランジ部55が移載台20の上面に当接する。ただし、凹部52は必ずしも貫通している必要はない。
【0039】
プレート部51の上面に設けられた一対の突出部53は、例えば凹部52を介して対向する位置に配置されている。一対の突出部53の凹部52側の側面には、それぞれ切欠き部54が設けられており、この切欠き部54によって形成された段差にレンズ10の周端部が配設される。
【0040】
次に、図7に示すように、図示しないレンズ固定装置等に備えられた1対の芯出しハンド60を例えば下方より上昇させ、次いで芯出し治具50の側面を把持する。これにより、芯出し治具50が例えば吸着台43に対して芯出しされる。また、芯出し治具50の凹部52に固定された移載台20も、芯出し治具50が芯出しされることによって同様に、吸着台40に対して芯出しされる(ステップS2)。
この芯出しハンド60は、例えば3軸モータ等により、図中上下方向、及び前後左右方向に移動可能とされている。
【0041】
移載台20の芯出しが行われると、次に図8に示すように、図示しないレンズ固定装置に備えられた1対のレンズ把持ハンド61が例えば上方から下降する。次いで、レンズ把持ハンド61は、レンズ10のコバ面を把持することによってレンズ10を吸着台43に対して芯出しする(ステップS3)。
【0042】
ここで図9は、このレンズ把持ハンド61の斜視図であり、図10は、図8のC−C’断面図である。レンズ把持ハンド61は、例えば棒状に延伸した把持部62に、切欠き部63を設けることによって構成されている。
この切欠き部63の側面は、例えば凹面となっており、図10の外周辺61aに示すように、その断面は例えば円弧形状とされる。この円弧の径は、レンズ10の径よりも小さく設定されている。このため、1つのレンズ把持ハンド61は、レンズ10のコバ面に対して、図10に示すように2点で接触する。
【0043】
したがって、1対のレンズ把持ハンド61は、それぞれが対向する方向にレンズ10のコバ面を押圧し、4点においてレンズ10を把持する。これにより、レンズ10の芯出しが行われる。また、上述の芯出しハンド60も、このレンズ把持ハンド61と同様の構成であってよい。
なお、把持部62の上端から突出した接続部64が例えば図示しないレンズ固定装置のヘッド等に嵌め込まれる等によって、レンズ把持ハンド61はレンズ固定装置に接続される。
【0044】
また、このレンズ把持ハンド61は、例えば3軸モータ等により、図中上下方向、及び前後左右方向に移動可能とされている。
ここでは、2個のレンズ把持ハンドによってレンズの芯出しを行う例とされているが、例えば3個や4個等のレンズ把持ハンドによってレンズの芯出しを行ってもよい。
また、レンズ10のコバ面を芯出し治具50の段差54に嵌合させることにより、レンズ10の中心軸と芯出し治具50の凹部52に嵌め込まれた移載台20との中心軸とが一致するようにしてあってもよい。
【0045】
レンズ10の芯出しを終えると、吸着台43に対して芯出しされている移載台20を吸着台43に吸着させ、固定する。そして、移載台20を把持していた芯出しハンド60は、例えば下降する。また、図11に示すように、レンズ把持ハンド61は、レンズ10を把持したまま上昇し、レンズ10を上方に持ち上げる。そして、レンズ10が取り外された芯出し治具50を取り出す(ステップS4)。
【0046】
芯出し治具50を取り出すと、図12に示すように、レンズ把持ハンド61は下降し、吸着台43に対して芯出しされた状態を維持しながら、レンズ10を所望の高さに配設する。そして、レンズ10のコバ面と、移載台20の外周とに渡って、例えばテープ部材等による把持部材30を貼り付ける(ステップS5)。
これにより、レンズ10と移載台20とが、吸着台43に対して芯出しされた状態で吸着台43に固定される。
【0047】
例えばステップS5では、レンズ把持ハンド61を下降させることにより、レンズ10を降下させる。
そして、2次元レーザ変位計等を用いて、レンズ10の上面とコバ面との稜線の径方向の位置、及び高さを計測する。
この計測されたデータは、レンズ固定装置に備えられた例えばパーソナルコンピュータ等の制御部により処理され、このデータを基に、把持部材30をレンズ10のコバ面と移載台20の外周面とに渡って貼り付ける。なお、芯出しハンド60やレンズ把持ハンド61の動作、及び吸着台43における吸引の制御もこの制御部によって行われる。
レンズ10の上面よりも突出した把持部材30は、レンズ10の上面とコバ面との稜線における上述の計測データに基づいて、例えばカッターやCO2レーザ等を制御し、切断してもよい。
【0048】
ただし、図中短手方向に幅の定められた把持部材30を予め準備しておき、この把持部材30の幅に合わせて、把持部材30がレンズ10の上面より突出しないようにレンズ10を配設する高さを制御してもよい。この場合には、把持部材30を切断する工程を必要としないため好ましい。
また、所望とするレンズ10の配設高さに合わせて予め統一された幅の把持部材を準備し、貼り付けてもよい。
【0049】
なお、把持部材30は、レンズ把持ハンド61が把持しているレンズ10のコバ面、及びそのコバ面の下方に位置する移載台20の側面には貼り付けられない。したがって、レンズ10と移載台20との間の空隙は、レンズ把持ハンド61が把持している箇所において、外気に開放されている。
本実施の形態においては、2個のレンズ把持ハンド61によってレンズを把持しているため、レンズ10と移載台20との間の空隙は、2箇所において開放される。空隙において開放される箇所数は、用いるレンズ把持ハンドの個数に応じて適宜変更しても構わない。
【0050】
レンズ10と移載台20とが把持部材30によって固定されると、レンズ把持ハンド61はレンズ10を開放し、例えば上方に移動する。また、移載台20は、吸着台43への吸着から開放される。そして、レンズ保持治具100に固定されたレンズ10が取り出される。
なお、レンズ10をレンズ保持治具100に固定した後、吸着台40から取り外す場合には、必ずしもレンズ10と移載台20とが吸着台40に芯出しされている必要はなく、レンズ10と移載台20の中心が同一軸上にあればよい。
【0051】
また、本実施の形態においては、レンズ10と移載台20とが、吸着台43に対して芯出しされている。このため、吸着台43にレンズ10を吸着固定したまま、レンズ10に対してその他の処理を施すことも可能である。
【0052】
以上、本発明によるレンズ保持治具、及びレンズの保持方法の実施の形態について説明した。本発明は上記実施の形態にとらわれることなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、考えられる種々の形態を含むものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
10,11・・・レンズ,10a,10b・・・面、20・・・移載台、30・・・把持部材、40,43・・・吸着台、41・・・Oリング、42・・・吸引口、50・・・芯出し治具、51・・・プレート部、52・・・凹部、53・・・突出部、54,63・・・切欠き部、60・・・芯出しハンド、61・・・レンズ把持ハンド、61a・・・外周辺、62・・・把持部、64・・・接続部、100・・・レンズ保持治具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズの下方に前記レンズの下面との間に空隙を有して配設され、その下面が外部装置に吸着固定される移載台と、
前記レンズのコバ面と前記移載台を把持した把持部材と、
を備えた
レンズ保持治具。
【請求項2】
前記把持部材は、粘着性を有するテープ材である請求項1に記載のレンズ保持治具。
【請求項3】
前記把持部材は、前記レンズのコバ面と、前記レンズの上面側の光学面との稜線よりも下側に配設される請求項2に記載のレンズ保持治具。
【請求項4】
前記コバ面は、少なくとも2箇所以上が露出され、露出された前記コバ面は、前記レンズの下面側の光学面との稜線を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズの保持治具。
【請求項5】
レンズ及び移載台を配設した芯出し治具を吸着台に載せる載置ステップと、
前記芯出し治具を把持し、前記芯出し治具及び移載台の芯出しを行う第1の芯出しステップと、
前記レンズを把持し、前記レンズの芯出しを行う第2の芯出しステップと、
前記移載台を前記吸着台に吸着させ、前記芯出し治具を取り出すステップと、
前記移載台の側面と、前記レンズのコバ面とをテープ部材によって少なくとも2箇所以上固定する貼り付けステップと、
を含む
レンズの保持方法。
【請求項1】
レンズの下方に前記レンズの下面との間に空隙を有して配設され、その下面が外部装置に吸着固定される移載台と、
前記レンズのコバ面と前記移載台を把持した把持部材と、
を備えた
レンズ保持治具。
【請求項2】
前記把持部材は、粘着性を有するテープ材である請求項1に記載のレンズ保持治具。
【請求項3】
前記把持部材は、前記レンズのコバ面と、前記レンズの上面側の光学面との稜線よりも下側に配設される請求項2に記載のレンズ保持治具。
【請求項4】
前記コバ面は、少なくとも2箇所以上が露出され、露出された前記コバ面は、前記レンズの下面側の光学面との稜線を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズの保持治具。
【請求項5】
レンズ及び移載台を配設した芯出し治具を吸着台に載せる載置ステップと、
前記芯出し治具を把持し、前記芯出し治具及び移載台の芯出しを行う第1の芯出しステップと、
前記レンズを把持し、前記レンズの芯出しを行う第2の芯出しステップと、
前記移載台を前記吸着台に吸着させ、前記芯出し治具を取り出すステップと、
前記移載台の側面と、前記レンズのコバ面とをテープ部材によって少なくとも2箇所以上固定する貼り付けステップと、
を含む
レンズの保持方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−24744(P2012−24744A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168669(P2010−168669)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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