説明

レンズ異物検出装置及びレンズ異物検出方法

【課題】被検レンズが曲率半径の小さい形状であっても、1回の撮像によって被検レンズの全体について異物の検出を可能とする手段を提供する。
【解決手段】本発明に係るレンズ異物検出装置10は、被検レンズLを挟んで光軸方向一方側に配置され、平行でコヒーレントなレーザ光束を被検レンズLに照射するレーザ照射機構12と、被検レンズLを挟んで光軸方向他方側に配置され、被検レンズLを透過したレーザ光束を受光して被検レンズLの画像15を取得する撮像機構13と、被検レンズLの画像中における干渉縞17の存否に基づいて、被検レンズLにおける異物16の付着の有無を判定する制御部141と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの清浄度を検査するためにレンズに付着した異物を検出するレンズ異物検出装置及びレンズ異物検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンズの清浄度を検査する手段として、レンズに付着した異物を検出することが可能なレンズ異物検出装置が従来用いられている。図5は、従来例に係るレンズ異物検出装置50の構成を示す模式図である。レンズ異物検出装置は、検査対象である被検レンズLを保持するレンズ保持機構51と、その下方に設けられたバックシート52と、被検レンズLの上方に設けられた光照射機構53と、更にその上方に設けられた撮像機構54と、この撮像機構54と電気的に接続されたパーソナルコンピュータ55とを備えるものである。
【0003】
ここで光照射機構53は、図5に示すように、レンズ保持機構51の上方に設けられて複数のLEDランプ(不図示)を有する第一ランプユニット531及び第二ランプユニット532と、これらの調光を行う照明コントローラ533とを有している。
【0004】
このように構成されるレンズ異物検出装置によれば、第一ランプユニット531及び第二ランプユニット532から被検レンズLに対して光が照射され、この光は被検レンズLで反射される。そして撮像機構54が、カメラレンズを介してこの反射光を受光することにより、被検レンズLの表面の画像を取得する。そして、この画像に基づいて、パーソナルコンピュータ55に設けられた異物判定部が、被検レンズLにおける異物の付着の有無を判定するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−288121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のレンズ異物検出装置では、被検レンズLが曲率半径の小さい形状である場合、撮像機構54の被写体深度の関係から、撮像機構54による1回の撮像では被検レンズLに付着した異物を検出することができないという問題がある。
【0007】
すなわち、被検レンズLが曲率半径の小さい形状である場合、カメラレンズの倍率を被検レンズLの側に対して高めるほど、被検レンズLにはカメラレンズの被写界深度から外れて焦点が合わなくなる箇所が増加する。従って、被検レンズLの全体について付着した異物を検出するためには、被検レンズLの場所によって焦点を合わせ直すことにより、複数回の撮像動作を行う必要がある。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、被検レンズが曲率半径の小さい形状であっても、1回の撮像によって被検レンズの全体について異物の検出を可能とする手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係るレンズ異物検出装置は、検査対象である被検レンズに付着した異物を検出するレンズ異物検出装置であって、前記被検レンズを挟んで光軸方向一方側に配置され、平行でコヒーレントなレーザ光束を前記被検レンズに照射するレーザ照射機構と、前記被検レンズを挟んで光軸方向他方側に配置され、前記被検レンズを透過したレーザ光束を受光して前記被検レンズの画像を取得する撮像機構と、前記被検レンズの画像中における干渉縞の存否に基づいて、前記被検レンズにおける異物の付着の有無を判定する異物判定部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るレンズ異物検出装置は、前記レーザ照射機構が、レーザ光束を発する光源と、前記光源を前記被検レンズに対して近接または離間するように移動させる光源駆動手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るレンズ異物検出装置は、前記撮像機構が、前記被検レンズの画像を取得するカメラと、該カメラを前記被検レンズに対して近接または離間するように移動させるカメラ駆動手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るレンズ異物検出方法は、検査対象である被検レンズに付着した異物を検出するレンズ異物検出方法であって、平行でコヒーレントなレーザ光束を前記被検レンズに照射する工程と、前記被検レンズを透過したレーザ光束を受光して前記被検レンズの画像を取得する工程と、前記被検レンズの画像中における干渉縞の存否に基づいて、前記被検レンズにおける異物の付着の有無を判定する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るレンズ異物検出装置及びレンズ異物検出方法によれば、被検レンズが曲率半径の小さい形状であっても、1回の撮像によって被検レンズに付着した異物を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るレンズ異物検出装置の構成を示す模式図である。
【図2】パーソナルコンピュータの表示部に表示される被検レンズの画像を示す模式図である。
【図3】レーザ光束を照射しない状態でCCDカメラにて取得した被検レンズの画像を示す模式図である。
【図4】CCDカメラにて実際に取得した被検レンズの画像データであって、(a)及び(b)はレーザ光束を照射しない状態で取得した画像であって、(c)はレーザ光束を照射した状態で取得した画像である。
【図5】従来例に係るレンズ異物検出装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の実施形態に係るレンズ異物検出装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るレンズ異物検出装置10の構成を示す模式図である。
【0016】
レンズ異物検出装置10は、図1に示すように、検査対象である被検レンズLを保持するレンズ保持機構11と、この被検レンズLの光軸方向下方に配置されたレーザ照射機構12と、被検レンズLの光軸方向上方に配置された撮像機構13と、撮像機構13に対して電気的に接続されたパーソナルコンピュータ14と、を備えるものである。
【0017】
レンズ保持機構11は、固定設置されて被検レンズLを移動不能に保持するものである。このレンズ保持機構11は、図1に示すように、被検レンズLを、その表面Laを上方にすなわち撮像機構13の側に向けるとともに、その裏面Lbを下方にすなわちレーザ照射機構12の側に向けた状態で保持している。
【0018】
レーザ照射機構12は、被検レンズLに対してレーザ光束を照射するためのものである。このレーザ照射機構12は、図1に示すように、平行でコヒーレントなレーザ光束を発する半導体レーザ121(光源)と、半導体レーザ121に対して電気的に接続されてその出力を調整可能なレーザドライバ122と、半導体レーザ121を被検レンズLに対して近接または離間するように移動可能に支持するレーザ駆動手段123(光源駆動手段)とを有している。尚、本明細書において「コヒーレント」とは、2つの波の振幅位相に一定の関係があって干渉縞を形成し得ることを意味する。
【0019】
撮像機構13は、図1に示すように、被検レンズLの画像を取得するCCDカメラ131と、このCCDカメラ131を被検レンズLに対して近接または離間するように移動可能に支持するカメラ駆動手段132とを有している。ここで、CCDカメラ131は、レーザ光束を透過可能なガラス131aと、受光したレーザ光束を電気信号に変換する電荷結合素子131b(Charge Coupled Device)とを備えるものである。
【0020】
パーソナルコンピュータ14は、図1に示すように、CCDカメラ131の感度を調整するとともに、CCDカメラ131から入力された画像に基づいて被検レンズLへの異物の付着の有無を判定する制御部141(異物判定部)と、CCDカメラ131から入力された画像を表示する表示部142とを有している。
【0021】
次に、本実施形態に係るレンズ異物検出装置10を使用して被検レンズLの清浄度を検査する手順、及びその作用効果について説明する。レンズ異物検出装置10の使用者は、図1に示すように、まず被検レンズLをレンズ保持機構11にセットする。次に使用者は、レーザ駆動手段123を操作して、半導体レーザ121を被検レンズLのいわゆる後焦点位置F1へと移動させるとともに、カメラ駆動手段132を操作して、CCDカメラ131を被検レンズLのいわゆる前焦点位置へと移動させる。そして使用者は、パーソナルコンピュータ14の表示部142を目視しながら、被検レンズLの画像中に干渉縞が発生するように、レーザドライバ122を操作することで半導体レーザ121の出力を調整するとともに、パーソナルコンピュータ14を操作することでCCDカメラ131の感度を調整する。
【0022】
尚、半導体レーザ121及びCCDカメラ131の位置は、後焦点位置F1及び前焦点位置F2にそれぞれ限定されず、被検レンズLの撮像範囲等に応じて、後焦点位置F1及び前焦点位置F2を基準として適宜調整すればよい。特に、前焦点位置F2は、取得画像が所望の画像になる様に可変されるものである。
【0023】
ここで、図2は、パーソナルコンピュータ14の表示部142に表示される被検レンズLの画像15を示す模式図である。被検レンズLに異物が付着している場合、図2(a)に示すように、画像15中には光回折パターンにより異物16を中心とした干渉縞17が発生する。そして、パーソナルコンピュータ14の制御部141が、画像処理を行って干渉縞17を検出することにより、被検レンズLに付着した異物16の個数や大きさを判定する。
【0024】
ところで、図3は、レーザ光束を照射しない状態でCCDカメラ131にて取得した被検レンズLの画像18を示す模式図である。図1において被検レンズLの表面Laを上方から撮像した場合、図3(a)に示すように、取得した画像18中には表面Laの位置Xに付着した異物16が表示される。また、図1において被検レンズLの裏面Lbを上方から撮像した場合、図3(b)に示すように、取得した画像18中には裏面Lbの位置Yに付着した異物16が表示される。この図3を図2(a)と比較すると、図2(a)では表面Laの位置Xと裏面Lbの位置Yに対応する位置に、それぞれ干渉縞17が発生している。このことから、被検レンズLにレーザ光束を照射して撮像することにより、被検レンズLの表面Laに付着した異物16と裏面Lbに付着した異物16の両方を検出できることが分かる。
【0025】
一方、被検レンズLに異物16が付着してない場合、図2(b)に示すように、画像18中に干渉縞17は発生しない。これにより、パーソナルコンピュータ14の制御部141が、被検レンズLは清浄な状態であると判定する。
【0026】
このように、本実施形態に係るレンズ異物検出装置10によれば、平行でコヒーレントなレーザ光束を被検レンズLに対して照射し、異物16の付着した箇所にて干渉縞17を発生させることにより、カメラレンズを持たないCCDカメラ131を使用した異物16の検出が可能となる。従って、カメラレンズの被写界深度に影響を受けることなく、曲率半径の小さい被検レンズLであっても、1回の撮像によって被検レンズLの全体について異物16の検出が可能となる。
【0027】
また、レーザ駆動手段123によって半導体レーザ121から被検レンズLまでの距離を適宜調節することにより、被検レンズのうちレーザ照射機構12側の面及び撮像機構13側の面の両方に干渉縞を生じさせることにより、被検レンズの両方の面について異物の付着の有無を検出することができる。
【0028】
さらに、カメラ駆動手段132によってCCDカメラ131から被検レンズLまでの距離を適宜調節することにより、撮像機構13によって被検レンズL全体の画像を取得することができる。
【0029】
これらがあいまって、本実施形態に係るレンズ異物検出装置10によれば、1回の撮像によって被検レンズLの表面Laと裏面Lbの両方について異物16の検出を行うことができる。
【0030】
また、本実施形態に係るレンズ異物検出装置10は、図5に示した従来のレンズ異物検出装置50と比較して構成要素が少なく、またその光源としての半導体レーザ121は、図5に示す第一ランプユニット531や第二ランプユニット532の光源としてのLEDランプと比較して小さいものである。従って、本実施形態に係るレンズ異物検出装置10によれば、従来のレンズ異物検出装置50と比較して装置全体としての小型化を図ることができる。
【実施例】
【0031】
図4は、CCDカメラ131にて実際に取得した被検レンズLの画像データであって、(a)及び(b)はレーザ光束を照射しない状態で取得した画像19及び画像20であって、(c)はレーザ光束を照射した状態で取得した画像21である。図1において被検レンズLの裏面Lbを上方から撮像した場合、図4(a)に示すように、取得した画像19中には表面Laの位置d,e,fに付着した異物がそれぞれ表示される。また、図1において被検レンズLの裏面Lbを上方から撮像した場合、図4(b)に示すように、取得した画像20中には裏面Lbの位置a,b,cに付着した異物がそれぞれ表示される。一方、レーザ光束を照射した場合、図4(c)に示すように、表面Laの位置d,e,fに相当する位置、及び裏面Lbの位置a,b,cに相当する位置に、それぞれ干渉縞が発生している。このことから、被検レンズLにレーザ光束を照射して撮像することにより、被検レンズLの表面Laに付着した異物と裏面Lbに付着した異物の両方を検出することができることが分かる。
【0032】
尚、本実施形態では、レンズ異物検出装置10を構成するレーザ照射機構12と撮像機構13を、被検レンズLを挟んで光軸方向上方及び光軸方向下方にそれぞれ配置した。しかし、レーザ照射機構12と撮像機構13の配置は本実施形態に限定されず、例えば、光軸を水平方向に向けるようにして被検レンズLを配置する場合には、被検レンズLを挟んで水平方向一方側にレーザ照射機構12を、水平方向他方側に撮像機構13をそれぞれ配置してもよい。
【0033】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 レンズ異物検出装置
11 レンズ保持機構
12 レーザ照射機構
121 半導体レーザ(光源)
122 レーザドライバ
123 レーザ駆動手段(光源駆動手段)
13 撮像機構
131 CCDカメラ
131a ガラス
131b 電荷結合素子
132 カメラ駆動手段
14 パーソナルコンピュータ
141 制御部(異物判定部)
142 表示部
15 画像
16 異物
17 干渉縞
18 画像
19 画像
20 画像
21 画像
50 レンズ異物検出装置
51 レンズ保持機構
52 バックシート
53 光照射機構
531 第一ランプユニット
532 第二ランプユニット
533 照明コントローラ
54 撮像機構
55 パーソナルコンピュータ
a 位置
b 位置
c 位置
d 位置
e 位置
f 位置
F1 後焦点位置
F2 前焦点位置
L 被検レンズ
La 表面
Lb 裏面
X 位置
Y 位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象である被検レンズに付着した異物を検出するレンズ異物検出装置であって、
前記被検レンズを挟んで光軸方向一方側に配置され、平行でコヒーレントなレーザ光束を前記被検レンズに照射するレーザ照射機構と、
前記被検レンズを挟んで光軸方向他方側に配置され、前記被検レンズを透過したレーザ光束を受光して前記被検レンズの画像を取得する撮像機構と、
前記被検レンズの画像中における干渉縞の存否に基づいて、前記被検レンズにおける異物の付着の有無を判定する異物判定部と、
を備えることを特徴とするレンズ異物検出装置。
【請求項2】
前記レーザ照射機構が、
レーザ光束を発する光源と、
前記光源を前記被検レンズに対して近接または離間するように移動させる光源駆動手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のレンズ異物検出装置。
【請求項3】
前記撮像機構が、
前記被検レンズの画像を取得するカメラと、
該カメラを前記被検レンズに対して近接または離間するように移動させるカメラ駆動手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ異物検出装置。
【請求項4】
検査対象である被検レンズに付着した異物を検出するレンズ異物検出方法であって、
平行でコヒーレントなレーザ光束を前記被検レンズに照射する工程と、
前記被検レンズを透過したレーザ光束を受光して前記被検レンズの画像を取得する工程と、
前記被検レンズの画像中における干渉縞の存否に基づいて、前記被検レンズにおける異物の付着の有無を判定する工程と、
を備えることを特徴とするレンズ異物検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−242266(P2012−242266A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113353(P2011−113353)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】