レンズ装置及び撮像装置
【課題】近赤外領域において波長が大きく変動する場合でも、フォーカスシフトの影響を抑制する。
【解決手段】レンズ装置は、変倍レンズ12aのポテンショメータ12cと、前群16aと後群16bとを有する結像レンズ部16と、第2の波長の近赤外線である場合に変倍レンズ12aの光軸位置に対する後群16bの光軸位置を示す第1の後群位置データと、第2の波長より短い各波長にそれぞれ対応する係数を示す係数データと、を記憶するメモリ27と、第3の波長の近赤外線が入射された場合に、第1の後群位置データに基づいて、ポテンショメータ12cから出力された信号の示す光軸位置に対する後群16bの光軸位置を読み出し、係数データに基づいて、第3の波長に対応する係数を読み出し、読み出した後群16bの光軸位置に読み出した係数を乗じることで光軸位置を算出し、算出した光軸位置に基づきモータ16dを制御するCPU28と、を備えている。
【解決手段】レンズ装置は、変倍レンズ12aのポテンショメータ12cと、前群16aと後群16bとを有する結像レンズ部16と、第2の波長の近赤外線である場合に変倍レンズ12aの光軸位置に対する後群16bの光軸位置を示す第1の後群位置データと、第2の波長より短い各波長にそれぞれ対応する係数を示す係数データと、を記憶するメモリ27と、第3の波長の近赤外線が入射された場合に、第1の後群位置データに基づいて、ポテンショメータ12cから出力された信号の示す光軸位置に対する後群16bの光軸位置を読み出し、係数データに基づいて、第3の波長に対応する係数を読み出し、読み出した後群16bの光軸位置に読み出した係数を乗じることで光軸位置を算出し、算出した光軸位置に基づきモータ16dを制御するCPU28と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光領域と近赤外領域での撮影に使用可能にしたレンズシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の技術では、同文献の図1に示すように、CPU16は、近赤外領域の撮影モードが選択された場合には、フォーカスレンズFL及びズームレンズZLの設定位置に基づいて、フォーカスレンズFLの各設定位置に対する被写体距離(ピントが合う被写体の距離)が可視光領域の撮影モード時と一致するようにトラッキングレンズTLの設定位置を補正する。
【0004】
これにより、特許文献1の技術は、トラッキングレンズの設定位置を補正して、フォーカスレンズの各設定位置に対応する被写体距離をいずれの波長領域での撮影においても一致させることにより、また、撮影可能な波長領域を拡大できる。
【0005】
また、光学長に変化を生じさせるテレビカメラ本体が使用される場合にも、結像位置のずれを解消させる撮影レンズが提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2の技術は、第1の波長領域の光での撮影時には、フランジバック調整用レンズTLをフランジバック調整された設定位置に移動させ、第2の波長領域の光での撮影時には、フランジバック調整用レンズTLを補正量記憶手段から読み出された補正量に基づいて移動させて、第2の波長領域の光での撮影時の結像位置が第1の波長領域の光での撮影時の結像位置に一致させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−262775号公報
【特許文献2】特開2006−162757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、高倍率・長焦点レンズを有するカメラでは、近赤外線領域において様々な波長の光が入射されると、焦点面が光軸方向に大きく移動する問題(フォーカスシフト)が発生する。
【0009】
この場合、イメージセンサ面を光軸方向に移動可能なカメラであっても、イメージセンサ面の移動量を十分確保できないため、フォーカスシフトの影響を避けることができない。
【0010】
また、特許文献1及び2の技術を用いたとしても、近赤外領域におけるフォーカスシフトによる焦点面の移動量(以下、「フォーカスシフト量」という。)が大きいため、その影響を十分抑制することができない。
【0011】
本発明は、このような実情を鑑みて提案されたものであり、近赤外領域において波長が大きく変動する場合でも、フォーカスシフトの影響を抑制することができるレンズ装置及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るレンズ装置は、光軸上に配置された変倍レンズと、前記光軸上に配置され、かつ、第1の波長である可視光領域において焦点位置の変動が抑制されるように、前記変倍レンズの光軸位置に連動して光軸上を移動する補正レンズと、を有するズームレンズと、前記変倍レンズの光軸位置に応じた信号を出力する位置信号出力手段と、前記光軸上に配置された光入射側のレンズである前群と、前記光軸上に配置された光出射側のレンズである後群と、を有し、前記ズームレンズからの光を、前記前群及び前記後群を介して撮像面に結像させる結像レンズ群と、前記後群の光軸位置を移動させる後群移動手段と、入射光が第2の波長の近赤外線である場合に前記第2の波長の光の焦点が前記撮像面又はその近傍に配置されるような前記変倍レンズの光軸位置に対する前記後群の光軸位置を示す第1の後群位置データと、前記第2の波長より短い波長の近赤外線に対して各波長にそれぞれ対応する1未満の係数を示す係数データと、を記憶する記憶手段と、前記第2の波長の近赤外線が入射された場合に、前記記憶手段に記憶された第1の後群位置データに基づいて、前記位置信号出力手段から出力された信号の示す光軸位置に対する前記後群の光軸位置を読み出し、前記後群を前記読み出した光軸位置に配置するように前記後群移動手段を制御し、前記第2の波長より短い第3の波長の近赤外線が入射された場合に、前記記憶手段に記憶された第1の後群位置データに基づいて、前記位置信号出力手段から出力された信号の示す光軸位置に対する前記後群の光軸位置を読み出し、前記記憶手段に記憶された係数データに基づいて、前記第3の波長に対応する係数を読み出し、読み出した前記後群の光軸位置に、読み出した係数を乗じることで、前記後群の光軸位置を算出し、前記後群を前記算出した光軸位置に配置するように前記後群移動手段を制御する制御手段と、を備えている。
【0013】
本発明に係る撮像装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレンズ装置と、前記レンズ装置を透過した被写体からの光に基づいて前記被写体を撮像し、前記被写体の画像を生成する撮像手段と、前記撮像手段により生成された画像に所定の信号処理を施す信号処理手段と、前記信号処理手段により信号処理された画像を出力する画像出力手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るレンズ装置は、近赤外光の波長が変動する場合であっても、フォーカスシフトを抑制することができる。
【0015】
本発明に係る撮像装置は、近赤外光の波長が変動する場合であっても、フォーカスシフトを抑制して高画質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】スタンダードモードで波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、変倍レンズの光軸位置CFGに対するFS量を示す図である。
【図3】図2のFS量を示すブラフである。
【図4】2Xモードで波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、変倍レンズの光軸位置CFGに対するFS量を示す図である。
【図5】図4のFS量を示すグラフである。
【図6】スタンダードモードで波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、フォーカスシフトが生じないような、変倍レンズの光軸位置CFGに対する後群の光軸位置(補正量)を示す図である。
【図7】図6の光軸位置(補正量)を示すグラフである。
【図8】2Xモードで波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、フォーカスシフトが生じないような、変倍レンズの光軸位置CFGに対する後群の光軸位置(補正量)を示す図である。
【図9】図8の光軸位置(補正量)を示すグラフである。
【図10】入射光の波長(1000〜1550nm)に対する対物レンズ11aの光軸位置(補正量)[mm]を示す図である。
【図11】2Xモードで波長が1500nmの場合において、変倍レンズの光軸位置に対するフォーカスシフトが抑制されるような後群の光軸位置(補正量)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。撮像装置は、高倍率・長焦点のものであり、可視光領域から近赤外光領域までの光に対応して被写体を撮像する。
【0019】
撮像装置は、具体的には、被写体からの光を入射してズームやフォーカスなどを制御するレンズ系10と、レンズ系10を介して入射された光に基づいて被写体の画像を生成する撮像系50と、を有している。
【0020】
[撮像装置の構成]
ここで、レンズ系10は、光軸上において、光の入射側(光伝搬方向の上流側)から順に、光が入射される対物レンズ部11と、ズーム倍率を調整するための変倍レンズ部12と、変倍レンズ部12に連動して光軸上を移動する補正レンズ13と、リレーレンズ14と、絞り15と、光を結像させる結像レンズ部16と、所定帯域の光を通過させるフィルタ17部と、を備えている。
【0021】
対物レンズ部11は、光軸上を移動可能な対物レンズ11aと、対物レンズ11aの光軸上の位置(以下「光軸位置」という。)に応じた信号を出力するポテンショメータ11cと、対物レンズ11aを光軸方向に移動させるモータ11dと、モータ11dを駆動させる駆動回路11eと、を備えている。
【0022】
変倍レンズ部12は、ワイド(Wide)からテレ(Tele)まで、焦点距離をf=12.5〜775mm(結像レンズ部16がスタンダードモードの場合)の範囲で調整できる。なお、この焦点距離の調整範囲は一例に過ぎず、この範囲に限定されるものではない。
【0023】
ここで、変倍レンズ部12は、光軸上を移動可能な変倍レンズ12aと、変倍レンズ12aの光軸位置に応じた信号を出力するポテンショメータ12cと、変倍レンズ12aを光軸方向に移動させるモータ12dと、モータ12dを駆動させる駆動回路12eと、を備えている。また、補正レンズ13は、可視光域のフォーカスシフトが抑制されるように、変倍レンズ12aの光軸位置に連動して光軸上を移動する。そして、変倍レンズ部12と補正レンズ13が一般にいう4群ズームレンズに対応する。但し、ズームレンズの構成はこれに限定されるものではない。
【0024】
結像レンズ部16は、光入射側に設けられた凸レンズである前群16aと、光出射側(前群16aよりも光伝搬方向側)に設けられた凹レンズである後群16bと、後群16bの位置に応じた信号を出力するポテンショメータ16cと、後群16bを光軸方向に移動させるモータ16dと、モータ16dを駆動させる駆動回路16eと、を備えている。
【0025】
なお、結像レンズ部16は、基準の光学倍率で設計された設計基準モード、すなわち「スタンダードモード」であり、レンズ系10から着脱可能に構成されている。さらに本実施形態では、この結像レンズ部16と同様に構成され、かつ、光学倍率が異なる(例えばスタンダードモードの2倍で設計された「2Xモード」である)結像レンズ部16Xも用意されている。よって、ユーザは、結像レンズ部16に代えて、結像レンズ部16Xをレンズ系10に装着することもできる。
【0026】
このため、ユーザは、変倍レンズ12aの光軸位置を変えることでワイド(Wide)からテレ(Tele)まで光学倍率を調整でき、更に、スタンダードモードの結像レンズ部16を2Xモードの結像レンズ部16Xに交換すれば、変倍レンズ12aの位置によって調整された倍率を2倍に変更できる。
【0027】
フィルタ部17は、950nm及びその近傍帯域の光を透過するバンドパスフィルタ17aと,880nm及びその近傍帯域の光を透過するバンドパスフィルタ17b,850nm及びその近傍帯域の光を透過するバンドパスフィルタ17cと、バンドパスフィルタ17a,17b,17cのいずれか1つを光軸上に配置させるためのモータ17dと、モータ17dを駆動させる駆動回路17eと、各バンドパスフィルタの位置に応じた信号を出力するポテンショメータ17fと、を備えている。
【0028】
なお、結像レンズ部16の焦点距離は本実施形態で挙げた例に限定されず、その他の焦点距離fであってもよい。例えば、“2/3”対応用としての等倍代替用として、f=17〜1065mmも可能である。
【0029】
さらに、レンズ系10は、ユーザにより撮影条件に応じた操作が行われる操作部26と、第1後群位置データ及び係数データが予め記憶されているメモリ27と、各ポテンショメータからの信号を常時モニタすると共に、各レンズ及び各バンドパスフィルタに対応する各駆動回路を制御する中央処理演算ユニット(CPU)28と、を備えている。なお、ユーザは、操作部26を操作することで、メモリ27に記憶されているデータを書き換えることが可能である。
【0030】
一方、撮像系50は、レンズ系10を介して入射された被写体からの光に基づいて当該被写体の画像を生成するCCDイメージセンサ51と、生成された画像をアナログ信号からディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル(A/D)変換器52と、ディジタル信号に変換された画像に対してホワイトバランス調整、ガンマ補正等の所定の信号処理を行う信号処理回路53と、信号処理済みの画像を出力する出力部54と、を備えている。
【0031】
[フォーカスシフト]
ところで、近赤外光域で光学倍率を変更するために変倍レンズ12aの光軸位置が変動すると、焦点面が変動するフォーカスシフトが発生してしまい、ピントの合わない画像が発生してしまう。
【0032】
図2は、波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、変倍レンズ12aの光軸位置CFGに対するフォーカスシフト(FS)量[mm]を示す図である。ここでは、スタンダードモードの結像レンズ部16が使用されている。
【0033】
光軸位置CFG(=1〜21)は、スタンダードモードとなる変倍レンズ12aの光軸位置(基点)を1とした場合の光軸位置を表している。なお、図2に示すように、CFG=1は焦点距離f=12.50mm(光学倍率1.0倍)、CFG=2はf=15.09mm(光学倍率1.2倍)、CFG=3はf=20.11mm(光学倍率1.6倍)、・・・、CFG=21はf=782.17mm(光学倍率62.6倍)である。
【0034】
図3は、図2のFS量を示すブラフである。同図に示すように、950nm、880nm、850nmのすべての波長において、変倍レンズ12aの光軸位置を示すCFG=1〜7ではFS量はほぼ一定であるが、CFG=7〜21ではFS量は指数関数的に増大する。また、波長が950nm、880nm、850nmと小さくなるに従って、FS量は小さくなる。
【0035】
図4は、波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、変倍レンズ12aの光軸位置CFGに対するFS量[mm]を示す図である。ここでは、2Xモードの結像レンズ部16Xが使用されている。
【0036】
図5は、図4のFS量を示すグラフである。この場合も、同図に示すように、950nm、880nm、850nmのすべての波長において、変倍レンズ12aの光軸位置を示すCFG=1〜7ではFS量はほぼ一定であるが、CFG=7〜21ではFS量は指数関数的に増大する。また、波長が950nm、880nm、850nmへと小さくなるに従って、FS量は小さくなる。
【0037】
図2から図5によれば、撮像装置の入射光が近赤外線の場合、ズーム倍率が所定値まではFS量はほぼ一定であるが、ズーム倍率が所定値を超えるとFS量は指数関数的に増大する。また、入射光の波長が小さくなるに従ってFS量は小さくなる。
【0038】
したがって、入射光が近赤外線であって、かつ、ズーム倍率が所定値を超える場合、入射光の波長が変化するとFS量が大きく変化することが分かる。また、入射光の波長が小さくなるに従ってFS量が小さくなる割合は、波長に依存し、波長毎にそれぞれ異なる値になる。但し、FS量が小さくなる割合は、同一波長であれば、ズーム倍率がどのような値であっても、ほぼ一定になる。
【0039】
つまり、近赤外線の基準波長(例えば950nm)において変倍レンズ12aの光軸位置(ズーム倍率)に対するFS量の関係が分かれば、基準波長より短い波長(例えば880nm、850nm)については上記の関係に所定の割合(係数)を乗じるだけで変倍レンズ12aの光軸位置に対するFS量の関係が求められる。
【0040】
本実施形態では、このような性質のフォーカスシフトの影響を抑制するために、結像レンズ部16の後群16bの光軸位置が補正される。なお、前群16aでなく後群16bの光軸位置が補正される理由は、(1)前群16aは後群16bに比べて焦点距離が長いため、その光軸位置を調整するのが容易でなく、(2)FS量を抑制するための前群16aの補正量は、後群16bに比べて大きくなり(例えば約3倍になる)、補正量を確保するための大きなスペースが必要になるからである。そこで、結像レンズ部16の後群16bの光軸移動で補正するために、次に示す第1後群位置データが用いられる。
【0041】
[第1後群位置データ:スタンダードモードの結像レンズ部16を用いた場合]
図6は、波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、フォーカスシフトが生じない(焦点位置が撮像面又はその近傍にある)ような、変倍レンズ12aの光軸位置CFGに対する後群16bの光軸位置(補正量)を示す図である((B),(C),(D))。ここでは、スタンダードモードの結像レンズ部16が使用されている。
【0042】
また、参考として、波長950nmのFS量も示されている。更に、図6には、(B)に対する(C)の割合(E)、(B)に対する(D)の割合(F)なども示されているが、これらについては後述する。
【0043】
図7は、図6の光軸位置(補正量)を示すグラフである。同図に示すように、950nm、880nm、850nmのすべての波長において、変倍レンズ12aの光軸位置を示すCFG=1〜7では補正量はほぼ一定であるが、CFG=7〜21では補正量は指数関数的に増大する。また、変倍レンズ12aの光軸位置がどのような値であっても、波長が950nm、880nm、850nmと小さくなるに従って、補正量はほぼ固有の比率で小さくなる。
【0044】
また、入射光の波長が小さくなるに従って補正量が小さくなる割合は、波長に依存しており、波長毎にそれぞれ異なる値になる。但し、補正量が小さくなる割合は、同一波長であれば、ズーム倍率がどのような値であっても、ほぼ固有の比率になる。
【0045】
そこで、本実施形態では、メモリ27に記憶された第1後群位置データは、後群16bの光軸位置(補正量)を決定するデータであり、図6及び図7に示すような、波長が950nmの場合の変倍レンズ12aの光軸位置に対する後群16bの光軸位置の関係を示している。
【0046】
すなわち、この第1後群位置データは、入射光の波長が950nmの場合において、変倍レンズ12aの光軸位置(ズーム倍率)に応じて、自動的に調整すべき後群16bの光軸位置(基準位置に対する補正量)を表している。なお、基準位置とは、補正レンズ13の制御だけでフォーカスシフトの影響がほとんどない場合における後群16bの光軸位置をいう。
【0047】
これにより、入射光の波長が950nmの場合は、この第1後群位置データだけで後群16bの光軸位置が自動的に補正される。しかし、入射光の波長が880nm、850nmの場合、後群16bの光軸位置を自動的に補正するためには、この第1後群位置データに加えて後述する係数データが必要になる。
【0048】
[係数データ]
上記の図6には、変倍レンズ12aの光軸位置毎に、波長が950nmの場合の後群16bの光軸位置(B)に対して、波長が880nmの場合の後群16bの光軸位置(C)の割合((E)=(C)/(B))が示されている。図6によると、(E)の最小値は0.716、最大値は0.783、平均値は0.752である。
【0049】
更に、図6には、変倍レンズ12aの光軸位置毎に、波長が950nmの場合の後群16bの光軸位置(B)に対して、波長が850nmの場合の後群16bの光軸位置(D)の割合((F)=(D)/(B))が示されている。図6によると、(F)の最小値は0.613、最大値は0.695、平均値は0.655である。
【0050】
メモリ27に記憶されている係数データは、入射光が880nmの場合に第1後群位置データの値に乗じるべき係数と、入射光が850nmの場合に第1後群位置データの値に乗じるべき係数と、を示すものであり、上述した計算値を考慮して決定される。例えば、本実施形態では、係数データは、880nmの場合は「0.75」、850nmの場合は「0.66」である。但し、係数データは、これに限定されるのではなく、880nmに対して0.72〜0.78の範囲内であればよく、850nmに対して0.61〜0.70の範囲内であればよい。
【0051】
[第1後群位置データ:2Xモードの結像レンズ部16Xを用いた場合]
上述した図6及び図7はスタンダードモードの結像レンズ部16が用いられた場合を示しているが、本実施形態では2Xモードの結像レンズ部16Xを用いている。この場合、図6は次の図8に示すようになり、図7は次の図9に示すようになる。
【0052】
図8は、波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、フォーカスシフトが抑制される(焦点位置が撮像面又はその近傍にある)ような、変倍レンズ12aの光軸位置CFGに対する後群16bの光軸位置(補正量)を示す図である((B),(C),(D))。ここでは、2Xモードの結像レンズ部16Xが使用されている。更に、図8には、(B)に対する(C)の割合(E)、(B)に対する(D)の割合(F)なども示されているが、これらについては後述する。
【0053】
図9は、図8の光軸位置(補正量)を示すグラフである。この場合も図7と同様に、950nm、880nm、850nmのすべての波長において、変倍レンズ12aの光軸位置を示すCFG=1〜7では補正量はほぼ一定であるが、CFG=7〜21では補正量は指数関数的に増大する。また、変倍レンズ12aの光軸位置がどのような値であっても、波長が950nm、880nm、850nmと波長が短くなるに従って、補正量はほぼ固有の比率で小さくなる。
【0054】
また、入射光の波長が短くなるに従って補正量が小さくなる割合は、波長に依存し、波長毎にそれぞれ異なる値になる。但し、補正量が小さくなる割合は、同一波長であれば、ズーム倍率がどのような値であっても、ほぼ固有の比率になる。
【0055】
そこで、本実施形態では、メモリ27に記憶された第1後群位置データは、図8及び図9に示すような、後群16bの光軸位置(補正量)を決定するためのデータであり、波長が950nmの場合の変倍レンズ12aの光軸位置に対する後群16bの光軸位置の関係を示している。
【0056】
これにより、結像レンズ部16Xが使用される場合であっても、入射光の波長が950nmの場合は、この第1後群位置データだけで後群16bの光軸位置が自動的に補正される。しかし、入射光の波長が880nm、850nmの場合、後群16bの光軸位置を自動的に補正するためには、この第1後群位置データに加えて後述する係数データが必要になる。
【0057】
[係数データ]
上記の図8には、変倍レンズ12aの光軸位置毎に、波長が950nmの場合の後群16bの光軸位置(B)に対して、波長が880nmの場合の後群16bの光軸位置(C)の割合((E)=(C)/(B))が示されている。図8によると、(E)の最小値は0.699、最大値は0.776、平均値は0.746である。
【0058】
更に、図8には、変倍レンズ12aの光軸位置毎に、波長が950nmの場合の後群16bの光軸位置(B)に対して、波長が850nmの場合の後群16bの光軸位置(D)の割合((F)=(D)/(B))が示されている。図8によると、(F)の最小値は0.559、最大値は0.684、平均値は0.636である。
【0059】
メモリ27に記憶されている係数データは、例えば本実施形態では、880nmの場合は「0.75」、850nmの場合は「0.64」である。但し、係数データは、これに限定されるのではなく、880nmに対して0.70〜0.78の範囲内であればよく、850nmに対して0.56〜0.68の範囲内であればよい。
【0060】
以上のように構成された撮像装置において、被写体に可視光が照射されている場合、撮像装置のCPU28は、変倍レンズ12aの光軸位置に連動して補正レンズ13の光軸位置を制御して、焦点位置の変動(フォーカスシフト)を抑制している。
【0061】
しかし、被写体に近赤外光が照射されている場合、CPU28は、変倍レンズ12aの光軸位置に連動して補正レンズ13の光軸位置を制御するだけではフォーカスシフトを抑制することができないので、近赤外光の波長に応じて次の制御を実行する。以下では、スタンダードモードの結像レンズ部16が用いられ、これに対応する第1後群位置データ及び係数データが使用される例について説明する。
【0062】
[波長950nmの光源が使用される場合]
ユーザは、波長950nmの光源を使用する場合、操作部26に対して、その光源の波長情報(950nm)を入力する。CPU28は、光源の波長情報950nmが操作部26を介して入力されると、波長950nm及びその近傍の光を透過するバンドパスフィルタ17aを使用するように、駆動回路17eを介して、モータ17dを制御する。
【0063】
そして、光源から波長950nmの赤外光が出力されると、被写体にこの赤外光が照射され、被写体で反射された波長950nmの赤外光が撮像装置に入射される。
【0064】
CPU28は、ポテンショメータ12cからの信号に基づいて、常時、変倍レンズ12aの光軸位置を監視している。そして、CPU28は、メモリ27に記憶されている第1後群位置データを参照して、変倍レンズ12aの光軸位置に対応する後群16bの光軸位置を読み出し、駆動回路16e及びモータ16dを介して、後群16bの光軸位置を上記の読み出した位置になるように制御する。
【0065】
この結果、撮像装置は、950nmの光源が使用された場合、メモリ27に記憶されている第1後群位置データに基づいて後群16bの位置を自動的に調整することによって、フォーカスシフトの影響が生じないようにして、被写体を撮像することができる。
【0066】
[波長850nmの光源が使用される場合]
ユーザは、波長850nmの光源を使用する場合、操作部26に対して、その光源の波長情報(850nm)を入力する。CPU28は、光源の波長情報850nmが操作部26を介して入力されると、波長850nm及びその近傍の光を透過するバンドパスフィルタ17cを使用するように、駆動回路17eを介して、モータ17dを制御する。
【0067】
そして、光源から波長850nmの赤外光が出力されると、被写体にこの赤外光が照射され、被写体で反射された波長850nmの赤外光が撮像装置に入射される。
【0068】
CPU28は、ポテンショメータ12cからの信号に基づいて、常時、変倍レンズ12aの光軸位置を監視している。そして、CPU28は、メモリ27に記憶されている第1後群位置データを参照して、変倍レンズ12aの光軸位置に対応する後群16bの光軸位置を読み出し、更に、メモリ27に記憶されている係数データを参照して、波長850nmの場合に対応する係数0.66を読み出す。
【0069】
つぎに、CPU28は、読み出した後群16bの光軸位置に係数0.66を乗じることで、波長850nmの場合における後群16bの光軸位置を算出する。CPU28は、駆動回路16e及びモータ16dを介して、後群16bの光軸位置を上記の算出した位置になるように制御する。
【0070】
この結果、撮像装置は、850nmの光源が使用された場合、メモリ27に記憶されている第1後群位置データに基づいて後群16bの光軸位置(補正量)を読み出すと共に、係数データに基づいて波長850nmに対応する係数0.66を読み出す。そして、撮像装置は、読み出した補正量に読み出した係数を乗じて、この乗算値に従って後群16bの位置を自動的に補正する。これにより、撮像装置は、近赤外光の波長が変更された場合でも、後群16bの位置を自動的に補正することで、フォーカスシフトの影響を受けることなく、被写体を撮像することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、波長850nmの光源が使用された場合について説明したが、波長880nmの光源が使用される場合でも、CPU28は、メモリ27に記憶された第1後群位置データ及び波長880nmに対応する係数データを使用することで、フォーカスシフトの影響が生じないように、後群16bの光軸位置を制御することができる。
【0072】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置は、波長950nmの場合について変倍レンズ12aの光軸位置に対する後群16bの光軸位置の関係を示す第1後群位置データを予め用意しておけば、波長880、850nmの場合の係数データを用いるだけで、入射光の波長が880、850nmの場合であっても、後群16bの光軸位置を精度よく調整することができ、その結果、フォーカスシフトを抑制することができる。
【0073】
[第2の実施形態]
つぎに、第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一の回路・部位には同一の符号を付し、主に相違する点について説明する。
【0074】
第1の実施形態では、近赤外線の波長が950nm以下の場合について説明したが、波長が950nmを超えると、フォーカスシフト量が更に増大してしまう。この場合、撮像装置のCPU28が、後群16bの光軸位置を制御しても、フォーカスシフト量の影響を抑制できない。
【0075】
そこで、第2の実施形態では、波長が950nmを超える場合、CPU28は、後群16bの光軸位置を制御するだけでなく、更に対物レンズ11aの光軸位置を制御することによって、フォーカスシフトの影響を抑制している。この場合、メモリ27には、詳しくは後述するデータが記憶されている。なお、本実施形態では、波長950nmを超える例として、入射光の波長が1500nmである場合を例に挙げて説明する。
【0076】
図10は、入射光の波長(1000〜1550nm)に対する対物レンズ11aの光軸位置(補正量)[mm]を示す図である。ここでは、正の補正量は、対物レンズ11aが光軸上を光入射側へ移動する向きである。図10の特性については、波長をx[nm]、補正量をy[mm]とすると、次の近似式で表される。
【0077】
y=0.558(x/1000)−0.443
但し、上記の近似式は一例に過ぎず、光学系10を構成するレンズが異なれば近似式が異なるのは言うまでもない。
【0078】
図11は、波長が1500nmの場合において、変倍レンズ12aの光軸位置に対するフォーカスシフトが抑制される(焦点位置が撮像面又はその近傍にある)ような後群16bの光軸位置(補正量)を示す図である。ここでは、2Xモードの結像レンズ部16Xが使用されている。
【0079】
ここで、図10及び図11に示す特性は次のようにして求められる。まず、ユーザは、波長x[nm]を固定(例えばx=1500[nm]に設定)した状態において、対物レンズ11aの光軸位置(補正量)y[mm]を0〜0.5[mm]の範囲内で所定数(例えば0.01)毎に設定して、それぞれの場合の図11に示す特性を求める。次に、図11に示す特性の最大値と最小値の差が最も小さくなる場合のyを求める。
【0080】
このとき求められた対物レンズ11aの光軸位置(補正量)yと、最大値と最小値の差が最も小さくなる場合の図11の特性は、入射光の波長がx[nm]の場合に好適なものである。
【0081】
そして、xを1000〜1550[nm]まで例えば0.05ずつ設定する毎に、上記のようにy及び図11に示す特性を求める。その結果、図10の特性が求められると共に、各波長の場合において変倍レンズ12aの光軸位置に対するフォーカスシフトが生じないような後群16bの光軸位置(補正量)が求められる。
【0082】
なお、本実施形態では、メモリ27には、図10に示すデータ(以下「対物レンズ位置データ」という。)と、図11に示すデータ(以下「第2後群位置データ」という)とが記憶されている。そして、CPU28により以下に示すような制御が実行される。
【0083】
[波長1500nmの光源が使用される場合]
ユーザは、波長1500nmの光源を使用する場合、操作部26に対して、その光源の波長情報(1500nm)を入力する。CPU28は、光源の波長情報1500nmが操作部26を介して入力されると、波長1500nm及びその近傍の光を透過するバンドパスフィルタ(図示省略)を使用するように、駆動回路17eを介して、モータ17dを制御する。
【0084】
そして、光源から波長1500nmの赤外光が出力されると、被写体にこの赤外光が照射され、被写体で反射された波長1500nmの赤外光が撮像装置に入射される。
【0085】
CPU28は、ポテンショメータ11cからの信号に基づいて、常時、対物レンズ11aの光軸位置を監視している。そして、CPU28は、メモリ27に記憶されている対物レンズ位置データを参照して、入射光の波長1500nmに対応する対物レンズ11aの光軸位置を読み出し、駆動回路11e及びモータ11dを介して、対物レンズ11aの光軸位置を上記の読み出した位置になるように制御する。
【0086】
CPU28は、さらに、メモリ27に記憶されている第2後群位置データを参照して、変倍レンズ12aの光軸位置に対応する後群16bの光軸位置を読み出し、駆動回路16e及びモータ16dを介して、後群16bの光軸位置を上記の読み出した位置になるように制御する。
【0087】
この結果、撮像装置は、波長1500nmの光源が使用された場合でも、メモリ27に記憶されている対物レンズ位置データに基づいて対物レンズ11aの光軸位置を制御すると共に、第2後群位置データに基づいて後群16bの光軸位置を制御することによって、フォーカスシフトの影響が生じないようにして、被写体を撮像することができる。
【0088】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で設計変更されたものにも適用可能である。例えば、第1の実施形態では、近赤外線の例として、波長が950、880、850nmの場合を例に挙げたが、近赤外線であれば他の波長であってもよい。第2の実施形態では、950nmより長波長の例として1500nmを例に挙げたが、950nmより長波長の近赤外線であれば他の波長であってもよい。
【0089】
また、CPU28は、2Xモードの結像レンズ部16Xが使用されている場合、これに対応する位置データ及び係数データをメモリ27から読み出して、上述した例と同様に処理を実行すればよい。
【0090】
さらに、上述した実施形態では、光源は、近赤外光を出力できる光源であればよく、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0091】
12 変倍レンズ部
16 結像レンズ部
17 フィルタ部
26 操作部
27 メモリ
28 CPU
51 CCDイメージセンサ
53 信号処理部
54 出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光領域と近赤外領域での撮影に使用可能にしたレンズシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の技術では、同文献の図1に示すように、CPU16は、近赤外領域の撮影モードが選択された場合には、フォーカスレンズFL及びズームレンズZLの設定位置に基づいて、フォーカスレンズFLの各設定位置に対する被写体距離(ピントが合う被写体の距離)が可視光領域の撮影モード時と一致するようにトラッキングレンズTLの設定位置を補正する。
【0004】
これにより、特許文献1の技術は、トラッキングレンズの設定位置を補正して、フォーカスレンズの各設定位置に対応する被写体距離をいずれの波長領域での撮影においても一致させることにより、また、撮影可能な波長領域を拡大できる。
【0005】
また、光学長に変化を生じさせるテレビカメラ本体が使用される場合にも、結像位置のずれを解消させる撮影レンズが提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2の技術は、第1の波長領域の光での撮影時には、フランジバック調整用レンズTLをフランジバック調整された設定位置に移動させ、第2の波長領域の光での撮影時には、フランジバック調整用レンズTLを補正量記憶手段から読み出された補正量に基づいて移動させて、第2の波長領域の光での撮影時の結像位置が第1の波長領域の光での撮影時の結像位置に一致させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−262775号公報
【特許文献2】特開2006−162757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、高倍率・長焦点レンズを有するカメラでは、近赤外線領域において様々な波長の光が入射されると、焦点面が光軸方向に大きく移動する問題(フォーカスシフト)が発生する。
【0009】
この場合、イメージセンサ面を光軸方向に移動可能なカメラであっても、イメージセンサ面の移動量を十分確保できないため、フォーカスシフトの影響を避けることができない。
【0010】
また、特許文献1及び2の技術を用いたとしても、近赤外領域におけるフォーカスシフトによる焦点面の移動量(以下、「フォーカスシフト量」という。)が大きいため、その影響を十分抑制することができない。
【0011】
本発明は、このような実情を鑑みて提案されたものであり、近赤外領域において波長が大きく変動する場合でも、フォーカスシフトの影響を抑制することができるレンズ装置及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るレンズ装置は、光軸上に配置された変倍レンズと、前記光軸上に配置され、かつ、第1の波長である可視光領域において焦点位置の変動が抑制されるように、前記変倍レンズの光軸位置に連動して光軸上を移動する補正レンズと、を有するズームレンズと、前記変倍レンズの光軸位置に応じた信号を出力する位置信号出力手段と、前記光軸上に配置された光入射側のレンズである前群と、前記光軸上に配置された光出射側のレンズである後群と、を有し、前記ズームレンズからの光を、前記前群及び前記後群を介して撮像面に結像させる結像レンズ群と、前記後群の光軸位置を移動させる後群移動手段と、入射光が第2の波長の近赤外線である場合に前記第2の波長の光の焦点が前記撮像面又はその近傍に配置されるような前記変倍レンズの光軸位置に対する前記後群の光軸位置を示す第1の後群位置データと、前記第2の波長より短い波長の近赤外線に対して各波長にそれぞれ対応する1未満の係数を示す係数データと、を記憶する記憶手段と、前記第2の波長の近赤外線が入射された場合に、前記記憶手段に記憶された第1の後群位置データに基づいて、前記位置信号出力手段から出力された信号の示す光軸位置に対する前記後群の光軸位置を読み出し、前記後群を前記読み出した光軸位置に配置するように前記後群移動手段を制御し、前記第2の波長より短い第3の波長の近赤外線が入射された場合に、前記記憶手段に記憶された第1の後群位置データに基づいて、前記位置信号出力手段から出力された信号の示す光軸位置に対する前記後群の光軸位置を読み出し、前記記憶手段に記憶された係数データに基づいて、前記第3の波長に対応する係数を読み出し、読み出した前記後群の光軸位置に、読み出した係数を乗じることで、前記後群の光軸位置を算出し、前記後群を前記算出した光軸位置に配置するように前記後群移動手段を制御する制御手段と、を備えている。
【0013】
本発明に係る撮像装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレンズ装置と、前記レンズ装置を透過した被写体からの光に基づいて前記被写体を撮像し、前記被写体の画像を生成する撮像手段と、前記撮像手段により生成された画像に所定の信号処理を施す信号処理手段と、前記信号処理手段により信号処理された画像を出力する画像出力手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るレンズ装置は、近赤外光の波長が変動する場合であっても、フォーカスシフトを抑制することができる。
【0015】
本発明に係る撮像装置は、近赤外光の波長が変動する場合であっても、フォーカスシフトを抑制して高画質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】スタンダードモードで波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、変倍レンズの光軸位置CFGに対するFS量を示す図である。
【図3】図2のFS量を示すブラフである。
【図4】2Xモードで波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、変倍レンズの光軸位置CFGに対するFS量を示す図である。
【図5】図4のFS量を示すグラフである。
【図6】スタンダードモードで波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、フォーカスシフトが生じないような、変倍レンズの光軸位置CFGに対する後群の光軸位置(補正量)を示す図である。
【図7】図6の光軸位置(補正量)を示すグラフである。
【図8】2Xモードで波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、フォーカスシフトが生じないような、変倍レンズの光軸位置CFGに対する後群の光軸位置(補正量)を示す図である。
【図9】図8の光軸位置(補正量)を示すグラフである。
【図10】入射光の波長(1000〜1550nm)に対する対物レンズ11aの光軸位置(補正量)[mm]を示す図である。
【図11】2Xモードで波長が1500nmの場合において、変倍レンズの光軸位置に対するフォーカスシフトが抑制されるような後群の光軸位置(補正量)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。撮像装置は、高倍率・長焦点のものであり、可視光領域から近赤外光領域までの光に対応して被写体を撮像する。
【0019】
撮像装置は、具体的には、被写体からの光を入射してズームやフォーカスなどを制御するレンズ系10と、レンズ系10を介して入射された光に基づいて被写体の画像を生成する撮像系50と、を有している。
【0020】
[撮像装置の構成]
ここで、レンズ系10は、光軸上において、光の入射側(光伝搬方向の上流側)から順に、光が入射される対物レンズ部11と、ズーム倍率を調整するための変倍レンズ部12と、変倍レンズ部12に連動して光軸上を移動する補正レンズ13と、リレーレンズ14と、絞り15と、光を結像させる結像レンズ部16と、所定帯域の光を通過させるフィルタ17部と、を備えている。
【0021】
対物レンズ部11は、光軸上を移動可能な対物レンズ11aと、対物レンズ11aの光軸上の位置(以下「光軸位置」という。)に応じた信号を出力するポテンショメータ11cと、対物レンズ11aを光軸方向に移動させるモータ11dと、モータ11dを駆動させる駆動回路11eと、を備えている。
【0022】
変倍レンズ部12は、ワイド(Wide)からテレ(Tele)まで、焦点距離をf=12.5〜775mm(結像レンズ部16がスタンダードモードの場合)の範囲で調整できる。なお、この焦点距離の調整範囲は一例に過ぎず、この範囲に限定されるものではない。
【0023】
ここで、変倍レンズ部12は、光軸上を移動可能な変倍レンズ12aと、変倍レンズ12aの光軸位置に応じた信号を出力するポテンショメータ12cと、変倍レンズ12aを光軸方向に移動させるモータ12dと、モータ12dを駆動させる駆動回路12eと、を備えている。また、補正レンズ13は、可視光域のフォーカスシフトが抑制されるように、変倍レンズ12aの光軸位置に連動して光軸上を移動する。そして、変倍レンズ部12と補正レンズ13が一般にいう4群ズームレンズに対応する。但し、ズームレンズの構成はこれに限定されるものではない。
【0024】
結像レンズ部16は、光入射側に設けられた凸レンズである前群16aと、光出射側(前群16aよりも光伝搬方向側)に設けられた凹レンズである後群16bと、後群16bの位置に応じた信号を出力するポテンショメータ16cと、後群16bを光軸方向に移動させるモータ16dと、モータ16dを駆動させる駆動回路16eと、を備えている。
【0025】
なお、結像レンズ部16は、基準の光学倍率で設計された設計基準モード、すなわち「スタンダードモード」であり、レンズ系10から着脱可能に構成されている。さらに本実施形態では、この結像レンズ部16と同様に構成され、かつ、光学倍率が異なる(例えばスタンダードモードの2倍で設計された「2Xモード」である)結像レンズ部16Xも用意されている。よって、ユーザは、結像レンズ部16に代えて、結像レンズ部16Xをレンズ系10に装着することもできる。
【0026】
このため、ユーザは、変倍レンズ12aの光軸位置を変えることでワイド(Wide)からテレ(Tele)まで光学倍率を調整でき、更に、スタンダードモードの結像レンズ部16を2Xモードの結像レンズ部16Xに交換すれば、変倍レンズ12aの位置によって調整された倍率を2倍に変更できる。
【0027】
フィルタ部17は、950nm及びその近傍帯域の光を透過するバンドパスフィルタ17aと,880nm及びその近傍帯域の光を透過するバンドパスフィルタ17b,850nm及びその近傍帯域の光を透過するバンドパスフィルタ17cと、バンドパスフィルタ17a,17b,17cのいずれか1つを光軸上に配置させるためのモータ17dと、モータ17dを駆動させる駆動回路17eと、各バンドパスフィルタの位置に応じた信号を出力するポテンショメータ17fと、を備えている。
【0028】
なお、結像レンズ部16の焦点距離は本実施形態で挙げた例に限定されず、その他の焦点距離fであってもよい。例えば、“2/3”対応用としての等倍代替用として、f=17〜1065mmも可能である。
【0029】
さらに、レンズ系10は、ユーザにより撮影条件に応じた操作が行われる操作部26と、第1後群位置データ及び係数データが予め記憶されているメモリ27と、各ポテンショメータからの信号を常時モニタすると共に、各レンズ及び各バンドパスフィルタに対応する各駆動回路を制御する中央処理演算ユニット(CPU)28と、を備えている。なお、ユーザは、操作部26を操作することで、メモリ27に記憶されているデータを書き換えることが可能である。
【0030】
一方、撮像系50は、レンズ系10を介して入射された被写体からの光に基づいて当該被写体の画像を生成するCCDイメージセンサ51と、生成された画像をアナログ信号からディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル(A/D)変換器52と、ディジタル信号に変換された画像に対してホワイトバランス調整、ガンマ補正等の所定の信号処理を行う信号処理回路53と、信号処理済みの画像を出力する出力部54と、を備えている。
【0031】
[フォーカスシフト]
ところで、近赤外光域で光学倍率を変更するために変倍レンズ12aの光軸位置が変動すると、焦点面が変動するフォーカスシフトが発生してしまい、ピントの合わない画像が発生してしまう。
【0032】
図2は、波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、変倍レンズ12aの光軸位置CFGに対するフォーカスシフト(FS)量[mm]を示す図である。ここでは、スタンダードモードの結像レンズ部16が使用されている。
【0033】
光軸位置CFG(=1〜21)は、スタンダードモードとなる変倍レンズ12aの光軸位置(基点)を1とした場合の光軸位置を表している。なお、図2に示すように、CFG=1は焦点距離f=12.50mm(光学倍率1.0倍)、CFG=2はf=15.09mm(光学倍率1.2倍)、CFG=3はf=20.11mm(光学倍率1.6倍)、・・・、CFG=21はf=782.17mm(光学倍率62.6倍)である。
【0034】
図3は、図2のFS量を示すブラフである。同図に示すように、950nm、880nm、850nmのすべての波長において、変倍レンズ12aの光軸位置を示すCFG=1〜7ではFS量はほぼ一定であるが、CFG=7〜21ではFS量は指数関数的に増大する。また、波長が950nm、880nm、850nmと小さくなるに従って、FS量は小さくなる。
【0035】
図4は、波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、変倍レンズ12aの光軸位置CFGに対するFS量[mm]を示す図である。ここでは、2Xモードの結像レンズ部16Xが使用されている。
【0036】
図5は、図4のFS量を示すグラフである。この場合も、同図に示すように、950nm、880nm、850nmのすべての波長において、変倍レンズ12aの光軸位置を示すCFG=1〜7ではFS量はほぼ一定であるが、CFG=7〜21ではFS量は指数関数的に増大する。また、波長が950nm、880nm、850nmへと小さくなるに従って、FS量は小さくなる。
【0037】
図2から図5によれば、撮像装置の入射光が近赤外線の場合、ズーム倍率が所定値まではFS量はほぼ一定であるが、ズーム倍率が所定値を超えるとFS量は指数関数的に増大する。また、入射光の波長が小さくなるに従ってFS量は小さくなる。
【0038】
したがって、入射光が近赤外線であって、かつ、ズーム倍率が所定値を超える場合、入射光の波長が変化するとFS量が大きく変化することが分かる。また、入射光の波長が小さくなるに従ってFS量が小さくなる割合は、波長に依存し、波長毎にそれぞれ異なる値になる。但し、FS量が小さくなる割合は、同一波長であれば、ズーム倍率がどのような値であっても、ほぼ一定になる。
【0039】
つまり、近赤外線の基準波長(例えば950nm)において変倍レンズ12aの光軸位置(ズーム倍率)に対するFS量の関係が分かれば、基準波長より短い波長(例えば880nm、850nm)については上記の関係に所定の割合(係数)を乗じるだけで変倍レンズ12aの光軸位置に対するFS量の関係が求められる。
【0040】
本実施形態では、このような性質のフォーカスシフトの影響を抑制するために、結像レンズ部16の後群16bの光軸位置が補正される。なお、前群16aでなく後群16bの光軸位置が補正される理由は、(1)前群16aは後群16bに比べて焦点距離が長いため、その光軸位置を調整するのが容易でなく、(2)FS量を抑制するための前群16aの補正量は、後群16bに比べて大きくなり(例えば約3倍になる)、補正量を確保するための大きなスペースが必要になるからである。そこで、結像レンズ部16の後群16bの光軸移動で補正するために、次に示す第1後群位置データが用いられる。
【0041】
[第1後群位置データ:スタンダードモードの結像レンズ部16を用いた場合]
図6は、波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、フォーカスシフトが生じない(焦点位置が撮像面又はその近傍にある)ような、変倍レンズ12aの光軸位置CFGに対する後群16bの光軸位置(補正量)を示す図である((B),(C),(D))。ここでは、スタンダードモードの結像レンズ部16が使用されている。
【0042】
また、参考として、波長950nmのFS量も示されている。更に、図6には、(B)に対する(C)の割合(E)、(B)に対する(D)の割合(F)なども示されているが、これらについては後述する。
【0043】
図7は、図6の光軸位置(補正量)を示すグラフである。同図に示すように、950nm、880nm、850nmのすべての波長において、変倍レンズ12aの光軸位置を示すCFG=1〜7では補正量はほぼ一定であるが、CFG=7〜21では補正量は指数関数的に増大する。また、変倍レンズ12aの光軸位置がどのような値であっても、波長が950nm、880nm、850nmと小さくなるに従って、補正量はほぼ固有の比率で小さくなる。
【0044】
また、入射光の波長が小さくなるに従って補正量が小さくなる割合は、波長に依存しており、波長毎にそれぞれ異なる値になる。但し、補正量が小さくなる割合は、同一波長であれば、ズーム倍率がどのような値であっても、ほぼ固有の比率になる。
【0045】
そこで、本実施形態では、メモリ27に記憶された第1後群位置データは、後群16bの光軸位置(補正量)を決定するデータであり、図6及び図7に示すような、波長が950nmの場合の変倍レンズ12aの光軸位置に対する後群16bの光軸位置の関係を示している。
【0046】
すなわち、この第1後群位置データは、入射光の波長が950nmの場合において、変倍レンズ12aの光軸位置(ズーム倍率)に応じて、自動的に調整すべき後群16bの光軸位置(基準位置に対する補正量)を表している。なお、基準位置とは、補正レンズ13の制御だけでフォーカスシフトの影響がほとんどない場合における後群16bの光軸位置をいう。
【0047】
これにより、入射光の波長が950nmの場合は、この第1後群位置データだけで後群16bの光軸位置が自動的に補正される。しかし、入射光の波長が880nm、850nmの場合、後群16bの光軸位置を自動的に補正するためには、この第1後群位置データに加えて後述する係数データが必要になる。
【0048】
[係数データ]
上記の図6には、変倍レンズ12aの光軸位置毎に、波長が950nmの場合の後群16bの光軸位置(B)に対して、波長が880nmの場合の後群16bの光軸位置(C)の割合((E)=(C)/(B))が示されている。図6によると、(E)の最小値は0.716、最大値は0.783、平均値は0.752である。
【0049】
更に、図6には、変倍レンズ12aの光軸位置毎に、波長が950nmの場合の後群16bの光軸位置(B)に対して、波長が850nmの場合の後群16bの光軸位置(D)の割合((F)=(D)/(B))が示されている。図6によると、(F)の最小値は0.613、最大値は0.695、平均値は0.655である。
【0050】
メモリ27に記憶されている係数データは、入射光が880nmの場合に第1後群位置データの値に乗じるべき係数と、入射光が850nmの場合に第1後群位置データの値に乗じるべき係数と、を示すものであり、上述した計算値を考慮して決定される。例えば、本実施形態では、係数データは、880nmの場合は「0.75」、850nmの場合は「0.66」である。但し、係数データは、これに限定されるのではなく、880nmに対して0.72〜0.78の範囲内であればよく、850nmに対して0.61〜0.70の範囲内であればよい。
【0051】
[第1後群位置データ:2Xモードの結像レンズ部16Xを用いた場合]
上述した図6及び図7はスタンダードモードの結像レンズ部16が用いられた場合を示しているが、本実施形態では2Xモードの結像レンズ部16Xを用いている。この場合、図6は次の図8に示すようになり、図7は次の図9に示すようになる。
【0052】
図8は、波長が950nm、880nm、850nmのそれぞれの場合において、フォーカスシフトが抑制される(焦点位置が撮像面又はその近傍にある)ような、変倍レンズ12aの光軸位置CFGに対する後群16bの光軸位置(補正量)を示す図である((B),(C),(D))。ここでは、2Xモードの結像レンズ部16Xが使用されている。更に、図8には、(B)に対する(C)の割合(E)、(B)に対する(D)の割合(F)なども示されているが、これらについては後述する。
【0053】
図9は、図8の光軸位置(補正量)を示すグラフである。この場合も図7と同様に、950nm、880nm、850nmのすべての波長において、変倍レンズ12aの光軸位置を示すCFG=1〜7では補正量はほぼ一定であるが、CFG=7〜21では補正量は指数関数的に増大する。また、変倍レンズ12aの光軸位置がどのような値であっても、波長が950nm、880nm、850nmと波長が短くなるに従って、補正量はほぼ固有の比率で小さくなる。
【0054】
また、入射光の波長が短くなるに従って補正量が小さくなる割合は、波長に依存し、波長毎にそれぞれ異なる値になる。但し、補正量が小さくなる割合は、同一波長であれば、ズーム倍率がどのような値であっても、ほぼ固有の比率になる。
【0055】
そこで、本実施形態では、メモリ27に記憶された第1後群位置データは、図8及び図9に示すような、後群16bの光軸位置(補正量)を決定するためのデータであり、波長が950nmの場合の変倍レンズ12aの光軸位置に対する後群16bの光軸位置の関係を示している。
【0056】
これにより、結像レンズ部16Xが使用される場合であっても、入射光の波長が950nmの場合は、この第1後群位置データだけで後群16bの光軸位置が自動的に補正される。しかし、入射光の波長が880nm、850nmの場合、後群16bの光軸位置を自動的に補正するためには、この第1後群位置データに加えて後述する係数データが必要になる。
【0057】
[係数データ]
上記の図8には、変倍レンズ12aの光軸位置毎に、波長が950nmの場合の後群16bの光軸位置(B)に対して、波長が880nmの場合の後群16bの光軸位置(C)の割合((E)=(C)/(B))が示されている。図8によると、(E)の最小値は0.699、最大値は0.776、平均値は0.746である。
【0058】
更に、図8には、変倍レンズ12aの光軸位置毎に、波長が950nmの場合の後群16bの光軸位置(B)に対して、波長が850nmの場合の後群16bの光軸位置(D)の割合((F)=(D)/(B))が示されている。図8によると、(F)の最小値は0.559、最大値は0.684、平均値は0.636である。
【0059】
メモリ27に記憶されている係数データは、例えば本実施形態では、880nmの場合は「0.75」、850nmの場合は「0.64」である。但し、係数データは、これに限定されるのではなく、880nmに対して0.70〜0.78の範囲内であればよく、850nmに対して0.56〜0.68の範囲内であればよい。
【0060】
以上のように構成された撮像装置において、被写体に可視光が照射されている場合、撮像装置のCPU28は、変倍レンズ12aの光軸位置に連動して補正レンズ13の光軸位置を制御して、焦点位置の変動(フォーカスシフト)を抑制している。
【0061】
しかし、被写体に近赤外光が照射されている場合、CPU28は、変倍レンズ12aの光軸位置に連動して補正レンズ13の光軸位置を制御するだけではフォーカスシフトを抑制することができないので、近赤外光の波長に応じて次の制御を実行する。以下では、スタンダードモードの結像レンズ部16が用いられ、これに対応する第1後群位置データ及び係数データが使用される例について説明する。
【0062】
[波長950nmの光源が使用される場合]
ユーザは、波長950nmの光源を使用する場合、操作部26に対して、その光源の波長情報(950nm)を入力する。CPU28は、光源の波長情報950nmが操作部26を介して入力されると、波長950nm及びその近傍の光を透過するバンドパスフィルタ17aを使用するように、駆動回路17eを介して、モータ17dを制御する。
【0063】
そして、光源から波長950nmの赤外光が出力されると、被写体にこの赤外光が照射され、被写体で反射された波長950nmの赤外光が撮像装置に入射される。
【0064】
CPU28は、ポテンショメータ12cからの信号に基づいて、常時、変倍レンズ12aの光軸位置を監視している。そして、CPU28は、メモリ27に記憶されている第1後群位置データを参照して、変倍レンズ12aの光軸位置に対応する後群16bの光軸位置を読み出し、駆動回路16e及びモータ16dを介して、後群16bの光軸位置を上記の読み出した位置になるように制御する。
【0065】
この結果、撮像装置は、950nmの光源が使用された場合、メモリ27に記憶されている第1後群位置データに基づいて後群16bの位置を自動的に調整することによって、フォーカスシフトの影響が生じないようにして、被写体を撮像することができる。
【0066】
[波長850nmの光源が使用される場合]
ユーザは、波長850nmの光源を使用する場合、操作部26に対して、その光源の波長情報(850nm)を入力する。CPU28は、光源の波長情報850nmが操作部26を介して入力されると、波長850nm及びその近傍の光を透過するバンドパスフィルタ17cを使用するように、駆動回路17eを介して、モータ17dを制御する。
【0067】
そして、光源から波長850nmの赤外光が出力されると、被写体にこの赤外光が照射され、被写体で反射された波長850nmの赤外光が撮像装置に入射される。
【0068】
CPU28は、ポテンショメータ12cからの信号に基づいて、常時、変倍レンズ12aの光軸位置を監視している。そして、CPU28は、メモリ27に記憶されている第1後群位置データを参照して、変倍レンズ12aの光軸位置に対応する後群16bの光軸位置を読み出し、更に、メモリ27に記憶されている係数データを参照して、波長850nmの場合に対応する係数0.66を読み出す。
【0069】
つぎに、CPU28は、読み出した後群16bの光軸位置に係数0.66を乗じることで、波長850nmの場合における後群16bの光軸位置を算出する。CPU28は、駆動回路16e及びモータ16dを介して、後群16bの光軸位置を上記の算出した位置になるように制御する。
【0070】
この結果、撮像装置は、850nmの光源が使用された場合、メモリ27に記憶されている第1後群位置データに基づいて後群16bの光軸位置(補正量)を読み出すと共に、係数データに基づいて波長850nmに対応する係数0.66を読み出す。そして、撮像装置は、読み出した補正量に読み出した係数を乗じて、この乗算値に従って後群16bの位置を自動的に補正する。これにより、撮像装置は、近赤外光の波長が変更された場合でも、後群16bの位置を自動的に補正することで、フォーカスシフトの影響を受けることなく、被写体を撮像することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、波長850nmの光源が使用された場合について説明したが、波長880nmの光源が使用される場合でも、CPU28は、メモリ27に記憶された第1後群位置データ及び波長880nmに対応する係数データを使用することで、フォーカスシフトの影響が生じないように、後群16bの光軸位置を制御することができる。
【0072】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置は、波長950nmの場合について変倍レンズ12aの光軸位置に対する後群16bの光軸位置の関係を示す第1後群位置データを予め用意しておけば、波長880、850nmの場合の係数データを用いるだけで、入射光の波長が880、850nmの場合であっても、後群16bの光軸位置を精度よく調整することができ、その結果、フォーカスシフトを抑制することができる。
【0073】
[第2の実施形態]
つぎに、第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一の回路・部位には同一の符号を付し、主に相違する点について説明する。
【0074】
第1の実施形態では、近赤外線の波長が950nm以下の場合について説明したが、波長が950nmを超えると、フォーカスシフト量が更に増大してしまう。この場合、撮像装置のCPU28が、後群16bの光軸位置を制御しても、フォーカスシフト量の影響を抑制できない。
【0075】
そこで、第2の実施形態では、波長が950nmを超える場合、CPU28は、後群16bの光軸位置を制御するだけでなく、更に対物レンズ11aの光軸位置を制御することによって、フォーカスシフトの影響を抑制している。この場合、メモリ27には、詳しくは後述するデータが記憶されている。なお、本実施形態では、波長950nmを超える例として、入射光の波長が1500nmである場合を例に挙げて説明する。
【0076】
図10は、入射光の波長(1000〜1550nm)に対する対物レンズ11aの光軸位置(補正量)[mm]を示す図である。ここでは、正の補正量は、対物レンズ11aが光軸上を光入射側へ移動する向きである。図10の特性については、波長をx[nm]、補正量をy[mm]とすると、次の近似式で表される。
【0077】
y=0.558(x/1000)−0.443
但し、上記の近似式は一例に過ぎず、光学系10を構成するレンズが異なれば近似式が異なるのは言うまでもない。
【0078】
図11は、波長が1500nmの場合において、変倍レンズ12aの光軸位置に対するフォーカスシフトが抑制される(焦点位置が撮像面又はその近傍にある)ような後群16bの光軸位置(補正量)を示す図である。ここでは、2Xモードの結像レンズ部16Xが使用されている。
【0079】
ここで、図10及び図11に示す特性は次のようにして求められる。まず、ユーザは、波長x[nm]を固定(例えばx=1500[nm]に設定)した状態において、対物レンズ11aの光軸位置(補正量)y[mm]を0〜0.5[mm]の範囲内で所定数(例えば0.01)毎に設定して、それぞれの場合の図11に示す特性を求める。次に、図11に示す特性の最大値と最小値の差が最も小さくなる場合のyを求める。
【0080】
このとき求められた対物レンズ11aの光軸位置(補正量)yと、最大値と最小値の差が最も小さくなる場合の図11の特性は、入射光の波長がx[nm]の場合に好適なものである。
【0081】
そして、xを1000〜1550[nm]まで例えば0.05ずつ設定する毎に、上記のようにy及び図11に示す特性を求める。その結果、図10の特性が求められると共に、各波長の場合において変倍レンズ12aの光軸位置に対するフォーカスシフトが生じないような後群16bの光軸位置(補正量)が求められる。
【0082】
なお、本実施形態では、メモリ27には、図10に示すデータ(以下「対物レンズ位置データ」という。)と、図11に示すデータ(以下「第2後群位置データ」という)とが記憶されている。そして、CPU28により以下に示すような制御が実行される。
【0083】
[波長1500nmの光源が使用される場合]
ユーザは、波長1500nmの光源を使用する場合、操作部26に対して、その光源の波長情報(1500nm)を入力する。CPU28は、光源の波長情報1500nmが操作部26を介して入力されると、波長1500nm及びその近傍の光を透過するバンドパスフィルタ(図示省略)を使用するように、駆動回路17eを介して、モータ17dを制御する。
【0084】
そして、光源から波長1500nmの赤外光が出力されると、被写体にこの赤外光が照射され、被写体で反射された波長1500nmの赤外光が撮像装置に入射される。
【0085】
CPU28は、ポテンショメータ11cからの信号に基づいて、常時、対物レンズ11aの光軸位置を監視している。そして、CPU28は、メモリ27に記憶されている対物レンズ位置データを参照して、入射光の波長1500nmに対応する対物レンズ11aの光軸位置を読み出し、駆動回路11e及びモータ11dを介して、対物レンズ11aの光軸位置を上記の読み出した位置になるように制御する。
【0086】
CPU28は、さらに、メモリ27に記憶されている第2後群位置データを参照して、変倍レンズ12aの光軸位置に対応する後群16bの光軸位置を読み出し、駆動回路16e及びモータ16dを介して、後群16bの光軸位置を上記の読み出した位置になるように制御する。
【0087】
この結果、撮像装置は、波長1500nmの光源が使用された場合でも、メモリ27に記憶されている対物レンズ位置データに基づいて対物レンズ11aの光軸位置を制御すると共に、第2後群位置データに基づいて後群16bの光軸位置を制御することによって、フォーカスシフトの影響が生じないようにして、被写体を撮像することができる。
【0088】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で設計変更されたものにも適用可能である。例えば、第1の実施形態では、近赤外線の例として、波長が950、880、850nmの場合を例に挙げたが、近赤外線であれば他の波長であってもよい。第2の実施形態では、950nmより長波長の例として1500nmを例に挙げたが、950nmより長波長の近赤外線であれば他の波長であってもよい。
【0089】
また、CPU28は、2Xモードの結像レンズ部16Xが使用されている場合、これに対応する位置データ及び係数データをメモリ27から読み出して、上述した例と同様に処理を実行すればよい。
【0090】
さらに、上述した実施形態では、光源は、近赤外光を出力できる光源であればよく、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0091】
12 変倍レンズ部
16 結像レンズ部
17 フィルタ部
26 操作部
27 メモリ
28 CPU
51 CCDイメージセンサ
53 信号処理部
54 出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸上に配置された変倍レンズと、前記光軸上に配置され、かつ、第1の波長である可視光領域において焦点位置の変動が抑制されるように、前記変倍レンズの光軸位置に連動して光軸上を移動する補正レンズと、を有するズームレンズと、
前記変倍レンズの光軸位置に応じた信号を出力する位置信号出力手段と、
前記光軸上に配置された光入射側のレンズである前群と、前記光軸上に配置された光出射側のレンズである後群と、を有し、前記ズームレンズからの光を、前記前群及び前記後群を介して撮像面に結像させる結像レンズ群と、
前記後群の光軸位置を移動させる後群移動手段と、
入射光が第2の波長の近赤外線である場合に前記第2の波長の光の焦点が前記撮像面又はその近傍に配置されるような前記変倍レンズの光軸位置に対する前記後群の光軸位置を示す第1の後群位置データと、前記第2の波長より短い波長の近赤外線に対して各波長にそれぞれ対応する1未満の係数を示す係数データと、を記憶する記憶手段と、
前記第2の波長の近赤外線が入射された場合に、前記記憶手段に記憶された第1の後群位置データに基づいて、前記位置信号出力手段から出力された信号の示す光軸位置に対する前記後群の光軸位置を読み出し、前記後群を前記読み出した光軸位置に配置するように前記後群移動手段を制御し、前記第2の波長より短い第3の波長の近赤外線が入射された場合に、前記記憶手段に記憶された第1の後群位置データに基づいて、前記位置信号出力手段から出力された信号の示す光軸位置に対する前記後群の光軸位置を読み出し、前記記憶手段に記憶された係数データに基づいて、前記第3の波長に対応する係数を読み出し、読み出した前記後群の光軸位置に、読み出した係数を乗じることで、前記後群の光軸位置を算出し、前記後群を前記算出した光軸位置に配置するように前記後群移動手段を制御する制御手段と、
を備えたレンズ装置。
【請求項2】
前記第1の後群位置データは、前記変倍レンズの光軸位置が所定値を超える前に比べて所定値を超えた方が、前記変倍レンズの光軸位置に対する前記後群の光軸位置の増加する割合が大きくなる特性を有する
請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記光軸上に前記ズームレンズよりも光入射側の配置された対物レンズと、
前記対物レンズの光軸位置を移動させる対物レンズ移動手段と、を更に備え、
前記記憶手段は、更に、入射光が前記第2の波長より長い波長の近赤外線である場合に入射光の各波長に対する前記対物レンズの光軸位置を示す対物レンズ位置データと、入射光が前記第2の波長より長い第4の波長の近赤外線である場合に前記第4の波長の光の焦点が撮像面又はその近傍に配置されるような前記変倍レンズの光軸位置に対する前記後群の光軸位置を示す第2の後群位置データと、を記憶し、
前記制御手段は、前記第2の波長より長い前記第4の波長の近赤外線が入射された場合に、前記記憶手段に記憶された前記対物レンズ位置データに基づいて、前記第4の波長に対する前記対物レンズの光軸位置を読み出し、前記対物レンズを前記読み出した光軸位置に配置するように前記対物レンズ移動手段を制御し、前記第2の後群位置データに基づいて、前記位置信号出力手段から出力された信号の示す光軸位置に対する前記後群の光軸位置を読み出し、前記後群を前記読み出した光軸位置に配置するように前記後群移動手段を制御する
請求項1又は請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置を透過した被写体からの光に基づいて前記被写体を撮像し、前記被写体の画像を生成する撮像手段と、
前記撮像手段により生成された画像に所定の信号処理を施す信号処理手段と、
前記信号処理手段により信号処理された画像を出力する画像出力手段と、
を備えた撮像装置。
【請求項1】
光軸上に配置された変倍レンズと、前記光軸上に配置され、かつ、第1の波長である可視光領域において焦点位置の変動が抑制されるように、前記変倍レンズの光軸位置に連動して光軸上を移動する補正レンズと、を有するズームレンズと、
前記変倍レンズの光軸位置に応じた信号を出力する位置信号出力手段と、
前記光軸上に配置された光入射側のレンズである前群と、前記光軸上に配置された光出射側のレンズである後群と、を有し、前記ズームレンズからの光を、前記前群及び前記後群を介して撮像面に結像させる結像レンズ群と、
前記後群の光軸位置を移動させる後群移動手段と、
入射光が第2の波長の近赤外線である場合に前記第2の波長の光の焦点が前記撮像面又はその近傍に配置されるような前記変倍レンズの光軸位置に対する前記後群の光軸位置を示す第1の後群位置データと、前記第2の波長より短い波長の近赤外線に対して各波長にそれぞれ対応する1未満の係数を示す係数データと、を記憶する記憶手段と、
前記第2の波長の近赤外線が入射された場合に、前記記憶手段に記憶された第1の後群位置データに基づいて、前記位置信号出力手段から出力された信号の示す光軸位置に対する前記後群の光軸位置を読み出し、前記後群を前記読み出した光軸位置に配置するように前記後群移動手段を制御し、前記第2の波長より短い第3の波長の近赤外線が入射された場合に、前記記憶手段に記憶された第1の後群位置データに基づいて、前記位置信号出力手段から出力された信号の示す光軸位置に対する前記後群の光軸位置を読み出し、前記記憶手段に記憶された係数データに基づいて、前記第3の波長に対応する係数を読み出し、読み出した前記後群の光軸位置に、読み出した係数を乗じることで、前記後群の光軸位置を算出し、前記後群を前記算出した光軸位置に配置するように前記後群移動手段を制御する制御手段と、
を備えたレンズ装置。
【請求項2】
前記第1の後群位置データは、前記変倍レンズの光軸位置が所定値を超える前に比べて所定値を超えた方が、前記変倍レンズの光軸位置に対する前記後群の光軸位置の増加する割合が大きくなる特性を有する
請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記光軸上に前記ズームレンズよりも光入射側の配置された対物レンズと、
前記対物レンズの光軸位置を移動させる対物レンズ移動手段と、を更に備え、
前記記憶手段は、更に、入射光が前記第2の波長より長い波長の近赤外線である場合に入射光の各波長に対する前記対物レンズの光軸位置を示す対物レンズ位置データと、入射光が前記第2の波長より長い第4の波長の近赤外線である場合に前記第4の波長の光の焦点が撮像面又はその近傍に配置されるような前記変倍レンズの光軸位置に対する前記後群の光軸位置を示す第2の後群位置データと、を記憶し、
前記制御手段は、前記第2の波長より長い前記第4の波長の近赤外線が入射された場合に、前記記憶手段に記憶された前記対物レンズ位置データに基づいて、前記第4の波長に対する前記対物レンズの光軸位置を読み出し、前記対物レンズを前記読み出した光軸位置に配置するように前記対物レンズ移動手段を制御し、前記第2の後群位置データに基づいて、前記位置信号出力手段から出力された信号の示す光軸位置に対する前記後群の光軸位置を読み出し、前記後群を前記読み出した光軸位置に配置するように前記後群移動手段を制御する
請求項1又は請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置を透過した被写体からの光に基づいて前記被写体を撮像し、前記被写体の画像を生成する撮像手段と、
前記撮像手段により生成された画像に所定の信号処理を施す信号処理手段と、
前記信号処理手段により信号処理された画像を出力する画像出力手段と、
を備えた撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−32689(P2012−32689A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173347(P2010−173347)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(301014661)株式会社コーヤル (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(301014661)株式会社コーヤル (1)
【Fターム(参考)】
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