説明

レンズ鏡筒及び撮像装置

【課題】NDフィルタ等の羽根部材を回動端で停止させるためのストッパーを不要にしてストッパーへの当接音をなくすことができるレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】レンズ鏡筒は、回動動作により露光用の開口を開閉する羽根部材217と、羽根部材217を回動させるための回転駆動力を発生する駆動手段601と、駆動手段601と羽根部材217との間に配置され、駆動手段601の1方向の回転駆動力を羽根部材217の前記開口を閉じる位置と該開口から退避する位置への回動動作に変換する変換手段207a,217bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、デジタルカメラ用のシャッタ、絞り、NDフィルタ等の羽根部材を駆動するアクチュエータを備えるレンズ鏡筒及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラ用のシャッタ、絞り、NDフィルタ等の羽根部材を駆動するアクチュエータとして、例えば次に示すものがある(特許文献1)。
【0003】
このアクチュエータは、非磁性体からなる本体ケース内に、羽根部材を支持するロータが配置されている。ロータは、S極とN極とに着磁されて所定の角度を往復回動可能に本体ケースに支持されている。
【0004】
本体ケースの軸方向の一端側には、励磁用のコイルが配置され、また、本体ケースの外側面には、一対のヨーク片が本体ケースを間に挟むように配置されている。一対のヨーク片の端部は、本体ケースから軸方向の一端側に突設されてその突設端どうしが連結片により連結されており、該連結片は、コイル内に挿通配置されている。
【0005】
そして、コイルの非通電時には、羽根部材を支持するロータが磁気的吸引力により回動範囲の一端位置で停止し、コイルの通電時には、ロータが回動範囲の他端位置まで回転して停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−32969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1では、羽根部材を支持するロータの回動端にストッパーを配置して羽根部材を停止させるため、動画撮影が可能なデジタルカメラ等の撮像装置では、ロータがストッパーに当接する音が動画に記録されてしまう問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、羽根部材を回動端で停止させるためのストッパーを不要にしてストッパーへの当接音をなくすことができるレンズ鏡筒及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のレンズ鏡筒は、回動動作により露光用の開口を開閉する羽根部材と、前記羽根部材を回動させるための回転駆動力を発生する駆動手段と、前記駆動手段と前記羽根部材との間に配置され、該駆動手段の1方向の回転駆動力を前記羽根部材の前記開口を閉じる位置と該開口から退避する位置への回動動作に変換する変換手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の撮像装置は、レンズ鏡筒を備える撮像装置であって、前記レンズ鏡筒は、回動動作により露光用の開口を開閉する羽根部材と、前記羽根部材を回動させるための回転駆動力を発生する駆動手段と、前記駆動手段と前記羽根部材との間に配置され、該駆動手段の1方向の回転駆動力を前記羽根部材の前記開口を閉じる位置と該開口から退避する位置への回動動作に変換する変換手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、羽根部材を回動端で停止させるためのストッパーを不要にしてストッパーへの当接音をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態であるレンズ鏡筒の沈胴状態を示す断面図である。
【図2】図1に示すレンズ鏡筒の繰り出し状態を示す断面図である。
【図3】鏡筒カバーを外した状態でレンズ鏡筒を光軸方向から見た図である。
【図4】3群鏡筒の駆動例について説明するための斜視図である。
【図5】固定カム筒の内周側の展開図である。
【図6】移動カム筒の内周側の展開図である。
【図7】レンズ鏡筒の分解斜視図である。
【図8】2群鏡筒をCCDホルダー側から見た分解斜視図である。
【図9】2群鏡筒を被写体側から見た分解斜視図である。
【図10】NDフィルタ駆動用のアームとロータとの取付構造を説明するための斜視図である。
【図11】NDフィルタの駆動例について説明するための説明図である。
【図12】NDフィルタ駆動用のアクチュエータを説明するための説明図である。
【図13】本発明の第2の実施形態であるレンズ鏡筒におけるNDフィルタ駆動用のアクチュエータを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態であるレンズ鏡筒の沈胴状態を示す断面図である。図2は、図1に示すレンズ鏡筒の繰り出し状態を示す断面図である。なお、本実施形態では、デジタルカメラ等の撮像装置に用いられるレンズ鏡筒を例に採る。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態のレンズ鏡筒は、1群レンズ101,102を保持する1群鏡筒201と、NDフィルタ及びシャッタ羽根を有する2群鏡筒202と、3群レンズ104を保持する3群鏡筒204とを備える。2群鏡筒202の内周側には、2群レンズ103を保持する2群レンズホルダー203が一体に設けられている。
【0016】
ここで、1群鏡筒201及び2群鏡筒202は変倍系のレンズ鏡筒を構成するレンズ群とされ、3群鏡筒204は被写体にピントを合わせるためのフォーカスレンズ群とされている。
【0017】
次に、変倍系レンズ鏡筒を構成する1群鏡筒201及び2群鏡筒202の駆動例について説明する。
【0018】
変倍系レンズ鏡筒は、鏡筒カバー305、ドライブリング304、固定カム筒303、移動カム筒302、直進ガイド筒301、1群鏡筒201、及び2群鏡筒202で構成されている。
【0019】
図3は、鏡筒カバー305を外した状態でレンズ鏡筒を光軸方向から見た図である。
【0020】
図3に示すように、ズームモータ401が駆動されると、ズームモータ401のモータ軸に取り付けられたピニオン402からギア403〜406を介してドライブリング304のギア歯304cへ駆動力が減速されて伝達され、ドライブリング304が回転する。
【0021】
ここで、ドライブリング304は、図1に示すように、内周側に配置された固定カム筒303と、外周側に配置された鏡筒カバー305とによって光軸方向の移動が規制された状態で回転する。また、ドライブリング304の内周側には、図7に示すように、光軸方向へ延びる直進キー溝304aが円周方向に互いに120°離間して3箇所形成されている。
【0022】
ドライブリング304は、固定カム筒303の外周部に嵌合された状態となっており、ドライブリング304にズームモータ401からの駆動力が伝達されても円周方向にガタツクことなく回転することが可能である。
【0023】
また、固定カム筒303は、CCDセンサ105のホルダー205に不図示のビス等により固定されているため、ドライブリング304と同様に、ズーム駆動時でも光軸方向へ移動することはない。
【0024】
図5は、固定カム筒303の内周側の展開図である。図5に示すように、固定カム筒303の内周側には、カム溝303a及び貫通カム303bがそれぞれ円周方向に互いに120°離間して3箇所ずつ形成されている。カム溝303a及び貫通カム303bは、同じ軌跡を有している。
【0025】
図1及び図2に戻って、固定カム筒303の内周側には、1群鏡筒201及び2群鏡筒202を光軸方向に駆動するための移動カム筒302が配置されている。
【0026】
図6は、移動カム筒302の内周側の展開図である。図6に示すように、移動カム筒302の内周側には、1群鏡筒201を光軸方向に駆動させる為のカム溝302aと2群鏡筒202を光軸方向に駆動させる為のカム溝302bがそれぞれ円周方向に互いに120°離間して3箇所ずつ形成されている。
【0027】
また、移動カム筒302の外周側には、図7に示すように、駆動ピン302d及びカムピン302cがそれぞれ円周方向に互いに120°離間して3箇所ずつ形成されている。
【0028】
駆動ピン302dは、固定カム筒303の貫通カム303bを通ってドライブリング304の内周に形成された直進キー溝304aに係合する。また、カムピン302cは、固定カム筒303のカム溝303bに係合することで、移動カム筒302が光軸方向へ移動することを可能とする。
【0029】
次に、変倍系レンズ鏡筒の動作例について説明する。
【0030】
ズームモータ401が駆動されると、ズームモータ401のモータ軸に取り付けられたピニオン402からギア403〜406を介してドライブリング304のギア歯304cへ駆動力が減速されて伝達され、ドライブリング304が回転する。
【0031】
このとき、ドライブリング304の直進キー溝304aに移動カム筒302の駆動ピン302dが係合しているため、移動カム筒302は、ドライブリング304と共に回転する。
【0032】
移動カム筒302が回転すると、駆動ピン302dは、移動カム筒302の外側に配置された固定カム筒303の貫通カム303bに沿って回転する。この回転に伴い、移動カム筒302のカムピン302cが固定カム筒303のカム溝303bに係合しながら光軸方向に移動する。
【0033】
また、移動カム筒302が回転することにより、1群鏡筒201及び2群鏡筒202も光軸方向に移動する。
【0034】
まず、1群鏡筒201について説明すると、1群鏡筒201の外周部には、ピン201a(図7)が円周方向に互いに120°離間して3箇所設けられており、ピン201aは、回転する移動カム筒302のカム溝302aに係合する。これにより、1群鏡筒201は光軸方向へ移動する。
【0035】
また、1群鏡筒201の内周側には、直進ガイド筒301(図7)が配置され、この直進ガイド筒301によって、1群鏡筒201は、移動カム筒302と共に回転することなく、光軸方向に直進移動する。
【0036】
次に、2群鏡筒201について説明すると、2群鏡筒202の外周部には、ピン202a(図7)が円周方向に互いに120°離間して3箇所設けられており、ピン202aは、回転する移動カム筒302のカム溝302bに係合する。これにより、2群鏡筒202は光軸方向へ移動する。
【0037】
また、2群鏡筒202の外周側には、直進ガイド筒301(図7)が配置され、この直進ガイド筒301によって、2群鏡筒202は、移動カム筒302と共に回転することなく、光軸方向に直進移動する。
【0038】
次に、図4を参照して、3群鏡筒204の駆動例について説明する。
【0039】
図4において、ステッピングモータ501は、CCDホルダー205に取り付けられ、ステッピングモータ501の駆動により、光軸と平行な軸線を有するリードスクリュー502が回転する。リードスクリュー502には、3群鏡筒204に取り付けられたナット503が螺合されている。
【0040】
従って、リードスクリュー502が回転することにより、3群鏡筒204が光軸方向に沿って移動する。3群鏡筒204が光軸方向に沿って移動する際には、3群鏡筒204は、CCDホルダー205に取り付けられたガイドバー504によって同方向にガイドされる。
【0041】
また、3群鏡筒204とCCDホルダー205との間には、3群鏡筒204をCCDホルダー205側に付勢する引っ張りバネ505が取り付けられており、これにより、3群鏡筒204が光軸方向に沿って移動する際にがたつきが発生しないようにしている。
【0042】
また、CCDホルダー205には、3群鏡筒204の光軸方向の基準位置を検出するフォトインタラプタ506が設けられている。
【0043】
不図示の制御部は、カメラの電源ON時にフォトインタラプタ506から3群鏡筒204の位置情報を取得する。
【0044】
そして、制御部は、取得した3群鏡筒204の位置をリセット位置(沈胴位置)として、パルス数をカウントしながらステッピングモータ501の駆動を制御して3群鏡筒204を光軸方向に移動させ、これにより、被写体に対する合焦動作を行う。
【0045】
次に、図8及び図9を参照して、2群鏡筒202について説明する。図8は、2群鏡筒202をCCDホルダー205側から見た分解斜視図である。図9は、2群鏡筒202を被写体側から見た分解斜視図である。
【0046】
図8に示すように、2群鏡筒202のCCDホルダー205側には、シャッタ羽根214,215、仕切り板216、NDフィルタ217、及び2群カバー218がCCDホルダー205側に向けて順番に配置される。
【0047】
また、2群鏡筒202には、NDフィルタ217を回動させるための回転駆動力を発生するステッピングモータ等のアクチュエータ207(図9)のアーム207aが配置される。
【0048】
更に、2群鏡筒202には、シャッタ羽根214,215を回動させるための回転駆動力を発生するステッピングモータ等のアクチュエータ208(図9)のアーム208aが配置される。
【0049】
NDフィルタ駆動用のアーム207aは、図10に示すように、円筒状のロータ601の中空部に略同軸に接着固定されたフランジ付軸部207bのフランジ外周側に軸方向に突出形成されている。
【0050】
そして、NDフィルタ駆動用のアーム207aは、ロータ601の回転に伴って、ロータ601の回転中心から偏心した位置でロータ601の外周に沿って回転する。
【0051】
シャッタ羽根214,215は、回動動作により露光用の開口を開閉するもので、それぞれ支持孔214a,215a及び長孔214b,215bを有する。
【0052】
シャッタ羽根214,215の支持孔214a,215aは、それぞれ2群鏡筒202の支持軸202b,202aに回動可能に支持され、長孔214b,215bには、シャッタ羽根駆動用のアーム208aが挿入される。
【0053】
NDフィルタ217は、回動動作により露光用の開口を開閉するもので、支持孔217a及び長孔217bを有する。
【0054】
支持孔217aは、2群鏡筒202の支持軸202cに回動可能に支持され、長孔217bには、NDフィルタ駆動用のアーム207aが挿入される。
【0055】
そして、シャッタ羽根駆動用のアクチュエータ208及びNDフィルタ駆動用のアクチュエータ207を駆動することにより、シャッタ羽根214,215及びNDフィルタ217が露光用の開口を開閉する方向に回動する。
【0056】
一方、2群鏡筒202の被写体側には、図9に示すように、2群レンズホルダー203、センサホルダー210及び押さえ板206が配置される。
【0057】
2群レンズホルダー203は、被写体のブレを補正する防振機能を有し、2群鏡筒202に配置された3箇所のボール209上に載置された状態で引っ張りバネ212によりCCDホルダー205側に付勢されることで、2群鏡筒202に保持される。
【0058】
そして、2群レンズホルダー203は、2群鏡筒202のボール209上を一定の範囲で被写体のブレ量に応じて光軸と直交する方向に移動可能とされている。
【0059】
また、2群レンズホルダー203には、2つのマグネット213が設けられ、それぞれのマグネット213は、2群鏡筒202に設けられた2つのコイル211と光軸方向に対向する位置に配置される。2群レンズホルダーの周囲には、センサホルダー210が配置される。
【0060】
センサホルダー210は、不図示の2つのホール素子を備え、2つのホール素子は、2群レンズホルダー203の2つのマグネット213と光軸方向に対向する位置に配置される。
【0061】
また、センサホルダー210には、アクチュエータ207,208、及びホール素子と外部とを電気的に接続するフレキシブルプリント基板(以下、FPCと呼ぶ)306が設けられている。
【0062】
そして、センサホルダー210及び2群レンズホルダー203は、押さえ板203によって2群鏡筒202に押された状態で該2群鏡筒202と一体化される。
【0063】
次に、図7を参照して、FPC306と外部のFPCとの接続例について説明する。
【0064】
図7に示すように、2群鏡筒202の外周側に配置される固定カム筒303の側面には、FPC306が挿通可能な挿通穴303eが形成されている。
【0065】
また、固定カム筒303の外周側に配置されるドライブリング304には、FPC306が挿通可能なスリット304bが形成され、鏡筒カバー305の側面には、FPC306が挿通可能な挿通穴305aが形成されている。
【0066】
固定カム筒303、ドライブリング304及び鏡筒カバー305が組み込まれた状態においては、挿通穴303e、スリット304b及び挿通穴305aは重なるように配置される。
【0067】
なお、ドライブリング304は回転するが、FPC306が取り付けられたセンサホルダー210は回転しないので、ドライブリング304のスリット304bは、円周方向に延びる長穴形状とされている。
【0068】
図1に戻って、レンズ鏡筒の沈胴状態では、センサホルダー210のFPC306は、2群鏡筒202と直進ガイド筒301と間を光軸方向に通った後、直進ガイド筒301の底面とCCDホルダー205との間を光軸と直交する方向に通る。
【0069】
その後、FPC306は、移動カム筒302と固定カム筒303の内周側に形成されたガイド溝303c(図5)との間を光軸方向に通る。
【0070】
その後、FPC306は、固定カム筒303の挿通穴303e、ドライブリング304のスリット304b、鏡筒カバー305の挿通穴305aを通って外部に導き出され、外部のFPCに設けられたコネクタに接続される。なお、レンズ鏡筒の沈胴状態において、FPC306は、収納スペースが足りない為、収納できない部分は固定カム筒303の逃がし穴303d(図5)を介して外側に逃がしている。
【0071】
図2に戻って、レンズ鏡筒の繰り出し状態(TELE状態)では、センサホルダー210のFPC306は、2群鏡筒202と直進ガイド筒301と間を光軸方向に通る。
【0072】
その後、FPC306は、固定カム筒303の挿通穴303e、ドライブリング304のスリット304b、鏡筒カバー305の挿通穴305aを通って外部に導き出され、外部のFPCに設けられたコネクタに接続される。
【0073】
この状態では、FPC306の長さは過不足がないように設定されている為、FPC306を固定カム筒303の逃がし穴303dから外部に逃がすことなく、外部に導くことができる。
【0074】
次に、図11を参照して、NDフィルタ217の駆動例について説明する。
【0075】
上述したように、NDフィルタ217は、支持孔217a及び長孔217bを有し、支持孔217aが2群鏡筒202の支持軸202cに回動可能に支持され、長孔217bには、NDフィルタ駆動用のアーム207aが挿入される。NDフィルタ217は、通常、図11の実線で示すように、露光用の開口から退避した位置に配置される。
【0076】
そして、コイル211に通電を開始すると、NDフィルタ駆動用のアクチュエータ207が駆動されて、ロータ601がアーム207aとともに反時計回り方向に180°回転する。
【0077】
これにより、NDフィルタ217が2群鏡筒202の支持軸202cを回動支点として露光用の開口を閉じる側に回動し、図11の二点鎖線に示す露光用の開口の閉じ位置で停止する。
【0078】
このとき、NDフィルタ217は、コイル211への通電を切断しても露光用の開口を閉じる位置が磁気的に安定する位置であるため、露光用の開口を閉じる位置で停止して、保持される。
【0079】
また、NDフィルタ217を露光用の開口から退避させる際には、再びNDフィルタ駆動用のアクチュエータ207を駆動し、ロータ601をアーム207aとともに更に反時計回り方向に180°回転させる。
【0080】
これにより、NDフィルタ217が2群鏡筒202の支持軸202cを回動支点として露光用の開口を閉じる位置から退避する側に回動し、図11の実線に示す位置で停止して露光用の開口が開放される。
【0081】
このとき、コイル211への通電が切断された状態となり、NDフィルタ217は磁気的に安定する位置に保持されているため、露光用の開口から退避した位置で保持される。
【0082】
このように、NDフィルタ駆動用のアクチュエータ207のロータ601は1方向に回転するが、180°回転するごとにNDフィルタ217が露光用の開口を閉じる位置と開放する位置との間を往復回動する動作に変換される。
【0083】
そして、NDフィルタ217は、露光用の開口から退避した位置と露光用の開口を閉じた位置とで磁気的安定した位置で停止、保持される。
【0084】
また、図11に示すように、NDフィルタ駆動用のアーム207aは、NDフィルタ217が露光用の開口を閉じる位置に配置されるとき、NDフィルタ217の回動支軸とロータ601の回転中心とを結ぶ線の一側(図では上側)に配置される。
【0085】
また、NDフィルタ駆動用のアーム207aは、NDフィルタ217が露光用の開口から退避する位置に配置されるとき、NDフィルタ217の回動支軸とロータ601の回転中心とを結ぶ線の他側(図では下側)に配置される。
【0086】
次に、図12を参照して、NDフィルタ駆動用のアクチュエータ207について更に詳述する。
【0087】
NDフィルタ駆動用のアクチュエータ207は、図12に示すように、ロータ601と、磁路を形成するヨーク600と、励磁用のコイル211とを備える。
【0088】
ロータ601は、略円柱形状の着磁部601aと、該着磁部601aの軸方向端面の回転中心から偏心した位置で軸方向に突出してNDフィルタ217の長孔217bに挿入されるアーム207aとを有する。ロータ601の着磁部601aは、回転中心を通る面により二分される一方の半円柱体がN極に着磁され、他方の半円柱体がS極に着磁されており、それぞれの磁極中心で磁力が最も大きく、両磁極の境界部分で磁力が最も小さくなっている。
【0089】
ヨーク600は、ロータ601の外周側に互いに対向配置された断面円弧形状の第1磁極部602及び第2磁極部603を有する。第1磁極部602及び第2磁極部603には、それぞれロータ601の外周面に向けて突出する第1境界側磁極片602a及び第2境界側磁極片603aが設けられる。第1境界側磁極片602a及び第2境界側磁極片603aは、ロータ601の回転中心に対して点対称となるように配置される。
【0090】
次に、NDフィルタ駆動用のアクチュエータ207の駆動例について説明する。
【0091】
まず、コイル211が非通電の状態では、ロータ601は、図12(a)に示すように、磁気的に安定した位置で停止している。このとき、第1境界側磁極片602aと第2境界側磁極片603aがロータ601の一方の磁極中心を引き付けており、ロータ601は磁気的に安定した位置で停止している。
【0092】
この状態で、図12(b)に示すように、コイル211が矢印方向に通電されると、第1磁極部602にS極が発生し、第2磁極部603にN極が発生する。これにより、ロータ601に吸引力と反発力が生じ、ロータ601が反時計回り方向に回転する。
【0093】
続いて、コイル211への通電を切断して非通電状態になると、ロータ601は、磁気的安定位置に引き寄せられる為、第1境界側磁極片207a及び第2境界側磁極片602aに向かって更に反時計回り方向に回転し、図12(c)の状態となって停止する。
【0094】
図12(b)及び図12(c)では、ロータ601の磁気的安定位置が異なる為、図12(c)に示すように、ロータ601の回転位置は、2点鎖線から実線へと所定の角度ずれることになる。ここでの角度ずれは、図では約30°に設定されているが、90°未満であればよい。ロータ601は、図12(a)の状態から図12(c)の状態になるまで、180°回転する。
【0095】
図12(c)に示すように、ロータ601が停止している状態で、図12(d)に示すように、コイル211が矢印方向(図12(b)と逆方向)に通電されると、第1磁極部602にN極が発生し、第2磁極部603にS極が発生する。これにより、ロータ601に吸引力と反発力が生じ、更に反時計回り方向に回転する。
【0096】
続いて、コイル211への通電を切断して非通電状態になると、ロータ601は、磁気的安定位置に引き寄せられる為、第1境界側磁極片207a及び第2境界側磁極片602aに向かって更に反時計回り方向に回転し、図12(a)の状態となって停止する。
【0097】
図12(d)及び図12(a)では、ロータ601の磁気的安定位置が異なる為、図12(a)に示すように、ロータ601の回転位置は、2点鎖線から実線へと所定の角度ずれることになる。ここでの角度ずれは、図では約30°に設定されているが、90°未満であればよい。
【0098】
ここで、図12(a)の状態では、NDフィルタ217は、露光用の開口から退避した位置に配置される。このとき、NDフィルタ217は、コイル211への通電は切断されていてもロータ601が磁気的安定位置に配置されているため、露光用の開口から退避した位置で停止、保持される。
【0099】
また、コイル211へ通電を開始し、ロータ601の回転位置が図12(b)から図12(c)の状態となった場合には、NDフィルタ217は露光用の開口を閉じる位置に配置される。このとき、NDフィルタ217は、コイル211への通電は切断されているが、ロータ601が磁気的安定位置に配置されているため、露光用の開口を閉じた位置で停止、保持される。
【0100】
このように、本実施形態では、NDフィルタ217の回動端、即ち、露光用の開口を閉じる位置と開放する位置とでロータ601の回転を停止させるためのストッパーが不要になる。このため、ロータ601のストッパーへの当接音をなくすことができるとともに、低コスト化及び小型化を実現することができる。
【0101】
また、NDフィルタ217は、長孔217bの長手方向に支持孔217aが配置されているので、アクチュエータ207の磁気安定位置がばらついても位置が大きくずれることなく停止、保持される。また、長孔217bの長手方向に支持孔217aが配置されることで、衝撃などでNDフィルタ217が不用意に動いてしまうことも防止でき、更に、NDフィルタ217の動き始めに若干トルクが足りなくても正常に駆動することが可能となる。
【0102】
(第2の実施形態)
次に、図13を参照して、本発明の第2の実施形態であるレンズ鏡筒について説明する。なお、本実施形態では、上記第1の実施形態に対して、NDフィルタ駆動用のアクチュエータが相違するだけであるため、相違点についてのみ説明し、また、上記第1の実施形態と重複する部分については、符号を流用して説明する。
【0103】
本実施形態のレンズ鏡筒におけるNDフィルタ駆動用のアクチュエータは、図13に示すように、ロータ601と、ヨーク700と、励磁用のコイル211とを備える。
【0104】
ロータ601は、略円柱形状の着磁部601aと、該着磁部601aの軸方向端面の回転中心から偏心した位置で軸方向に突出してNDフィルタ217の長孔217bに挿入されるアーム207aとを有する。ロータ601の着磁部601aは、回転中心を通る面により二分される一方の半円柱体がN極に着磁され、他方の半円柱体がS極に着磁されており、それぞれの磁極中心で磁力が最も大きく、両磁極の境界部分で磁力が最も小さくなっている。
【0105】
ヨーク700は、ロータ601の外周側に互いに対向配置されて磁路を形成する断面円弧形状の第1磁極部701及び第2磁極部702を有する。第1磁極部701の円弧端には、コイル211への通電では磁路を形成しない第1ダミーヨーク703が配置され、第2磁極部702の円弧端には、コイル211への通電では磁路を形成しない第2ダミーヨーク704が配置される。第1ダミーヨーク703及び第2ダミーヨーク704は、ロータ601の回転中心に対して点対称となるように配置される。
【0106】
次に、NDフィルタ駆動用のアクチュエータの駆動例について説明する。
【0107】
まず、コイル211が非通電の状態では、ロータ601は、図13(a)に示すように磁気的に安定した位置で停止している。このとき、第1ダミーヨーク703と第2ダミーヨーク704がロータ601の一方の磁極中心を引き付けており、ロータ601は、磁気的に安定した位置で停止している。
【0108】
この状態で、図13(b)に示すように、コイル211が矢印方向に通電されると、第1磁極部701にS極が発生し、第2磁極部702にN極が発生する。これにより、ロータ601に吸引力と反発力が生じ、ロータ601が反時計回り方向に回転する。
【0109】
続いて、コイル211への通電を切断して非通電状態になると、ロータ601は、磁気的安定位置に引き寄せられる為、第1ダミーヨーク703及び第2ダミーヨーク704に向かって更に反時計回り方向に回転し、図13(c)の状態となって停止する。
【0110】
図13(b)及び図13(c)では、ロータ601の磁気的安定位置が異なる為、図13(c)に示すように、ロータ601の回転位置は、2点鎖線から実線へと所定の角度ずれることになる。ここでの角度ずれは、図では約30°に設定されているが、90°未満であればよい。ロータ601は、図13(a)の状態から図13(c)の状態になるまで、180°回転する。
【0111】
図13(c)に示すように、ロータ601が停止している状態で、図13(d)に示すように、コイル211が矢印方向(図13(b)と逆方向)に通電されると、第1磁極部701にN極が発生し、第2磁極部702にS極が発生する。これにより、ロータ601に吸引力と反発力が生じ、更に反時計回り方向に回転する。
【0112】
続いて、コイル211への通電を切断して非通電状態になると、ロータ601は、磁気的安定位置に引き寄せられる為、第1ダミーヨーク703及び第2ダミーヨーク704に向かって更に反時計回り方向に回転し、図13(a)の状態となって停止する。
【0113】
図13(d)及び図13(a)では、ロータ601の磁気的安定位置が異なる為、図13(a)に示すように、ロータ601の回転位置は、2点鎖線から実線へと所定の角度ずれることになる。ここでの角度ずれは、図では約30°に設定されているが、90°未満であればよい。
【0114】
ここで、図13(a)の状態では、NDフィルタ217は、露光用の開口から退避した位置に配置される。このとき、NDフィルタ217は、コイル211への通電は切断されていてもロータ601が磁気的安定位置に配置されているため、露光用の開口から退避した位置で停止、保持される。
【0115】
また、コイル211へ通電を開始し、ロータ601の回転位置が図13(b)から図13(c)の状態となった場合には、NDフィルタ217は露光用の開口を閉じる位置に配置される。このとき、NDフィルタ217は、コイル211への通電は切断されているが、ロータ601が磁気的安定位置に配置されているため、露光用の開口を閉じた位置で停止、保持される。その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態と同様である。
【0116】
なお、本発明の構成は、上記各実施形態に例示したものに限定されるものではなく、材質、形状、寸法、形態、数、配置箇所等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0117】
例えば、上記各実施形態では、羽根部材としてNDフィルタを例示したが、シャッタや絞り等の羽根部材に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0118】
101 1群レンズ
102 1群レンズ
103 2群レンズ
104 3群レンズ
105 CCDセンサ
201 1群鏡筒
203 2群レンズホルダー
204 3群鏡筒
207 NDフィルタ駆動用アクチュエータ
207a アーム
211 コイル
217 NDフィルタ
301 直進ガイド筒
302 移動カム筒
303 固定カム筒
304 ドライブリング
305 鏡筒カバー
601 ロータ
602 第1磁極部
602a 第1境界側磁極片
603 第2磁極部
603a 第2境界側磁極片
701 第1磁極部
702 第2磁極部
703 第1ダミーヨーク
704 第2ダミーヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動動作により露光用の開口を開閉する羽根部材と、
前記羽根部材を回動させるための回転駆動力を発生する駆動手段と、
前記駆動手段と前記羽根部材との間に配置され、該駆動手段の1方向の回転駆動力を前記羽根部材の前記開口を閉じる位置と該開口から退避する位置への回動動作に変換する変換手段と、を備えることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記駆動手段は、N極とS極とが着磁されたロータと、該ロータの軸方向端面の回転中心から偏心した位置で軸方向に突出するアームと、励磁用のコイルと、前記ロータの外周面に対向するように配置され、前記コイルが通電されることにより互いに異なる磁極を発生する第1磁極部及び第2磁極部とを備え、
前記羽根部材は、前記アームが挿入されるとともに、長手方向に該羽根部材の回動支軸が配置される長孔を備え、
前記アーム及び前記長孔により前記変換手段が構成される、ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記アームは、前記羽根部材が前記開口を閉じる位置に配置されるとき、前記回動支軸と前記ロータの回転中心とを結ぶ線の一側に配置され、前記羽根部材が前記開口から退避する位置に配置されるとき、前記回動支軸と前記ロータの回転中心とを結ぶ線の他側に配置される、ことを特徴とする請求項2記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記コイルへの通電が切断されている状態において、前記羽根部材の前記開口を閉じる位置と該開口から退避する位置とで前記ロータを磁気的安定位置に保持する保持手段を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記コイルへの通電が切断されている状態での前記ロータの磁気的安定位置と前記コイルが通電されている状態での前記ロータの磁気的安定位置とが所定の角度ずれている、ことを特徴とする請求項4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記角度ずれが、90°未満である、ことを特徴とする、請求項5に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
レンズ鏡筒を備える撮像装置であって、
前記レンズ鏡筒として、請求項1〜6のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒を用いる、ことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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