説明

レンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及び携帯端末装置

【課題】
レンズ支持体をレンズの光軸方向及び/又は光軸と直交する方向に向けてより適切に移動させることが可能なレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】長手方向に伸びていて外周側にコイルが配備される筒状のレンズ支持体と、レンズ支持体の径方向における外側に配備される環状のヨークと、ヨークの環状の周壁を構成する外側周壁の内側であって、コイルの前記径方向における外側に、コイルとの間に所定の間隔を空けて配備される第一のマグネットと、前記径方向においてコイルを間に挟んでコイルとの間に所定の間隔を空けて第一のマグネットに対向して配備される第二のマグネットとを備えている。第一のマグネットと第二のマグネットの対向面は互いに異なる磁極を有する。ヨークの外側周壁と内側周壁との間の環状鍔部に、第一のマグネットが配備されている位置に対応させて、前記長手方向に貫通する孔部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置に関し、特に、携帯電話機などの携帯端末装置に搭載されているオートフォーカスカメラのレンズを駆動するレンズ駆動装置、このレンズ駆動装置を搭載したオートフォーカスカメラ及び携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などに搭載されるオートフォーカスカメラのレンズ駆動装置としては、従来から多くの提案がされている(特許文献1)。従来のレンズ駆動装置としては、ヨークの内側にオートフォーカスカメラのレンズを支持する筒状のレンズ支持体が配置され、当該レンズ支持体の外周側に配備されるコイルと、前記ヨークの内周側に配備されるマグネットとが間隔を空けて対向する構造が一般的であった。
【0003】
この構造のレンズ駆動装置は、前記コイルを前記レンズ支持体の外周に固定し、前記マグネットによって磁場が生成されている下で前記コイルに流す電流を制御して、電磁力により、前記レンズ支持体をレンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向に移動させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−26619
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、携帯電話機や、オートフォーカスカメラの薄型化に伴い、レンズ駆動装置にもレンズの光軸方向(Z軸方向)の寸法に制限が加えられるようになっている。Z軸方向の寸法が制限された薄型のレンズ駆動装置の場合、レンズ支持体をレンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向に向けて適切に移動させるようにすることは従来以上に難しくなってきている。
【0006】
そこで、この発明は、携帯電話機などの携帯端末装置に搭載されているオートフォーカスカメラのレンズを駆動するレンズ駆動装置において、レンズ支持体をレンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向に向けてより適切に移動させることを可能にするレンズ駆動装置を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、
長手方向に伸びていて外周側にコイルが配備される筒状のレンズ支持体と、
前記レンズ支持体の径方向における外側に配備される環状のヨークと、
前記ヨークの環状の周壁を構成する外側周壁の内側であって、前記コイルの前記径方向における外側に、前記コイルとの間に所定の間隔を空けて配備される第一のマグネットと、
前記径方向において前記コイルを間に挟んで前記コイルとの間に所定の間隔を空けて前記第一のマグネットに対向して配備され、前記第一のマグネットに対向する外周側の面の磁極が、前記第一のマグネットの内周側の面の磁極と異なっている第二のマグネットとを備えている
ことを特徴とするレンズ駆動装置
である。
【0008】
請求項2記載の発明は、
前記ヨークは前記外側周壁の内側で前記外側周壁と対向する内側周壁と、前記外側周壁の一端から内側方向に向かって前記内側周壁の対応する一端にまで伸びる環状鍔部を備えており、
前記第一のマグネットは前記外側周壁の内周面に、前記第二のマグネットは前記内側周壁の外周面にそれぞれ配備され、
前記ヨークの前記環状鍔部が、前記環状鍔部を前記長手方向に貫通する孔部を備えている
ことを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置
である。
【0009】
請求項3記載の発明は、
前記第一のマグネットは、前記ヨークの周方向にそれぞれ所定の間隔を空けて4個配備されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載のレンズ駆動装置
である。
【0010】
請求項4記載の発明は、
長手方向に伸びていて外周側にコイルが配備される筒状のレンズ支持体と、
前記レンズ支持体の径方向における外側に配備される環状のヨークであって、環状の周壁を構成する外側周壁と、当該外側周壁の一端から前記径方向における内側方向に向かって伸びる環状鍔部を備えているヨークと、
前記ヨークの外側周壁の内側であって、前記コイルの前記径方向における外側に、前記コイルとの間に所定の間隔を空けて配備される第一のマグネットとを備えていて、
前記ヨークの前記環状鍔部が、前記ヨークの外側周壁の内側に前記第一のマグネットが配備されている位置に対応する箇所に、前記環状鍔部を前記長手方向に貫通する孔部を備えている
ことを特徴とするレンズ駆動装置
である。
【0011】
請求項5記載の発明は、
請求項1乃至4のいずれか一項記載のレンズ駆動装置を備えているオートフォーカスカメラ
である。
【0012】
請求項6記載の発明は、
請求項5記載のオートフォーカスカメラが搭載されている携帯端末装置
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、携帯電話機などに搭載されているオートフォーカスカメラのレンズを駆動するレンズ駆動装置において、レンズ支持体をレンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向に向けてより適切に移動させることを可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例に係るレンズ駆動装置の分解斜視図。
【図2】(a)は本発明の第1実施例に係るレンズ駆動装置のヨークの一部切り欠き斜視図、(b)は図2(a)の断面模式図。
【図3】本発明の第2実施例に係るレンズ駆動装置のヨークの一部切り欠き斜視図。
【図4】本発明の第3実施例に係るレンズ駆動装置のヨークの一部切り欠き斜視図。
【図5】レンズ支持体を駆動する原理を示すと共にレンズ支持体をレンズの光軸方向(Z軸方向)に前後移動させる際にレンズ支持体が光軸(Z軸)から傾く現象を説明する説明図であり、(a)はレンズ駆動装置の概略断面を示す説明図、(b)は図5(a)に示すB部の拡大説明図、(c)はサブコイルに通電したときに発生する推力を説明するサブコイルの断面図。
【図6】(a)は図5におけるマグネットとコイルとの配置関係を説明する一部を省略した概略平面図、(b)は図6(a)中の一部拡大図。
【図7】(a)は第1実施例に係るレンズ駆動装置の他の例のヨークの一部切り欠き斜視図、(b)は第3実施例に係るレンズ駆動装置の他の例のヨークの一部切り欠き斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明者等は前記目的を達成するため、長手方向に伸びていて外周側にコイルが配備される筒状のレンズ支持体と、前記レンズ支持体の径方向における外側に配備される環状のヨークと、前記ヨークの環状の周壁を構成する外側周壁の内側であって、前記コイルの前記径方向における外側に、前記コイルとの間に所定の間隔を空けてマグネットが配備されている構造のレンズ駆動装置について、レンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向へのレンズ支持体の移動に関する検討を行った。
【0016】
この結果、コイルとの間に所定の間隔を空けて対向配備されるマグネットからの光軸と直交する方向の磁束密度の平行性、均一性を向上させることが、レンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向に向かうレンズ支持体の適切、確実な移動を達成する上で重要であることを見出した。
発明者等はこのような知見に基づいて本願発明を完成させたものである。
【0017】
図5(a)〜(c)、図6(a)、(b)は、本願発明者等が行った検討の内容を説明するものである。レンズ駆動装置100の概略断面が図5(a)に、このレンズ駆動装置におけるマグネットとコイルの配置関係を説明する一部を省略した概略平面図が図6(a)に表されている。
【0018】
レンズ駆動装置100は、レンズ支持体101と、レンズ支持体101の径方向における外側に配備される環状のヨーク108とを備えている。レンズ支持体101は、これに配備されるレンズ(不図示)の光軸方向に相当する長手方向(図5(a)における上下方向)に伸びる筒状である。
【0019】
図示の実施形態では、レンズ支持体101の外周側に配備されるコイルは、レンズ支持体101の外周面に巻回されるメインコイル102と、メインコイル102の径方向外側に配備されるサブコイル103とから構成されている。メインコイル102はレンズ支持体101の外周に固定的に取り付けられ、サブコイル103はメインコイル102を介してレンズ支持体101に固定的に取り付けられる。
【0020】
ヨーク108の環状の周壁を構成する外側周壁108aの内側に、コイル102、103との間に所定の間隔を空け、径方向におけるコイル102、103の外側にマグネット107が、コイル102、103に対向して配備されている。
【0021】
ヨーク108は、環状の周壁を構成する外側周壁108aと、外側周壁108aの一端(図5(b)における上端)から内側方向(図5(b)における左側方向)に向かって伸びる環状鍔部108bを備えている。図5図示の実施形態では、ヨーク108は、外側周壁108aの内側で外側周壁108aに対向する内側周壁108cをも備えている。そして、環状鍔部108bは、外側周壁108aの一端(図5(b)における上端)から内側方向(図5(b)における左側方向)に向かって内側周壁108cの対応する一端(図5(b)における上端)にまで伸びている。これによって、図示の実施形態におけるヨーク108は、図5(a)、(b)図示のように断面コ字形状になっている。
【0022】
図5(a)の下側から見た平面視では、図6(a)図示のように、図1〜図4図示の実施例に表されているヨーク22と同じく、ヨーク108は矩形状になっている。そして、ヨーク108の周方向にそれぞれ所定の間隔を空けて、すなわち、矩形の形状における4個の角部に対応する位置の外側周壁108aの内周面に、各1個、合計4個のマグネット107が配備されている。
【0023】
メインコイル102は、図1図示の実施例に表されているコイル18aと同じく、レンズ支持体101の周方向が巻線方向になっているコイルである。
サブコイル103は、メインコイル102より小型で、図1図示の実施例に表されているサブコイル18bと同じく、通電した際に図5(c)図示の方向に電流が流れる符号103aで示す部分と、符号103bで示す部分とを備えている環状の巻線構造になっている。
【0024】
環状の巻線構造からなるサブコイル103が、図1図示のように、レンズ支持体101の周方向に所定の間隔を空けて、マグネット107に対向するように、4箇所配備されている。マグネット107と、コイル(メインコイル102、サブコイル103)との間には所定の間隔が形成されている。
【0025】
図5(b)に示すように、マグネット107によって発生している磁場の下でメインコイル102に電流が流されると、メインコイル102が取り付けられたレンズ支持体101には、電磁力により、レンズ支持体101の長手方向である光軸方向(矢印111で示すZ軸方向)に推力が働く。
【0026】
また、図6(b)に示すように、レンズ支持体101の周方向に所定の間隔を空けて4箇所配備されているサブコイル103の所定の箇所のサブコイル103を選択し、選択した箇所のサブコイル103のみに通電する、あるいは、選択した箇所のサブコイル103への通電量を制御することにより、レンズ支持体101に対して、Z軸方向に直交するX軸方向、Y軸方向への推力が働く。即ち、図6(b)の紙面の奥から手前に向けて電流がサブコイル103を流れている場合、マグネット107から出てサブコイル103を横切る磁束密度には、図6(b)に矢印で示したように、紙面の左から右に向かう成分があるため、この場合には、フレミングの左手の法則により、矢印112で示す方向の推力が働く。
【0027】
このように、コイル102、103への通電により生ずる電磁力によってレンズ支持体101を、レンズ(不図示)の光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)に直交するX軸/Y軸方向に移動させ、オートフォーカス機能及び/又は手振れ補正機能が実行される。
【0028】
ここで、図5(b)において破線115bで示すように、マグネット107からの磁力線がコイル102、103へ、光軸と直交する方向に均一に向かうものだけであり、この均一に向かうものだけがメインコイル102、サブコイル103に影響するならば、サブコイル103に通電した際に、サブコイル103の符号103aで示す部分と、符号103bで示す部分とに生じる推力は大きさが同一で、互いに向きが反対になって互いに打ち消しあう。また、この場合、メインコイル102に通電することによって生じる電磁力にも図5(b)におけるメインコイル102の上側と、下側とで、相違や乱れは生じない。
【0029】
しかし、マグネット107からの磁力線には、図5(b)に破線115bで示すだけでなく、破線115aで示すように進行し、漏洩するものが存在すると考えられる。破線115aで示す方向へ磁力線が漏洩した場合、サブコイル103の符号103aで示す部分と、符号103bで示す部分とに影響する磁場の大きさがそれぞれ異なるものになる可能性がある。
【0030】
このようになると、図5(c)に符号120と121とで示すように、サブコイル103の符号103aで示す部分と、符号103bで示す部分とに生じる推力に相違が生じ、両者の合力が、矢印123で示す方向のものになる可能性がある。また、通電しているメインコイル102に対する磁場の影響が、図5(b)におけるメインコイル102の上側と、下側とで相違するものになるおそれがある。
【0031】
これらの結果、レンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)に直交するX軸/Y軸方向における所定の方向にレンズ支持体101を所定量移動させるべくメインコイル102、サブコイル103に対する通電制御を行っても、予定した通りの正確な方向への正確な移動を実現することが困難になることが考えられる。
【0032】
そこで、マグネット107からの光軸と直交する方向の磁束密度の平行性、均一性を向上させ、漏洩磁場が形成されることによる影響をより少なくすることが、レンズ支持体101をレンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向に向けて適切に移動させる上で重要になる。
【0033】
光軸方向(Z軸方向)における寸法に制限が加えられ、Z軸方向の寸法が制限された薄型のレンズ駆動装置の場合には、より一層、このことが重要になると考えられる。
【0034】
そこで、この発明では、図5、図6に図示したような構造のレンズ駆動装置100において、図5に図示されているマグネット107を第一のマグネットとし、径方向においてコイル102、103を間に挟んでコイル102、103との間に所定の間隔を空けてマグネット107に対向して第二のマグネットを配備する構造を採用した。そして、第一のマグネットとなるマグネット107の内周側の面の磁極と、マグネット107に対向する第二のマグネットの外周側の面の磁極とが互いに異なるようにしたのである。
【0035】
これによって、コイル102、103を間に挟んで対向する第一のマグネットと第二のマグネットとの間で磁力線が吸引されるので、マグネットからの光軸と直交する方向の磁束密度の平行性、均一性を向上させ、漏洩磁場が形成される領域を小さくできる。
【0036】
このような構造を採用することにより、コイル102、103を間に挟んで径方向に対向する第一のマグネットと、第二のマグネットとの間で磁束密度の平行性、均一性を向上させ、コイル102、103への通電制御により、レンズ支持体101をレンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向において、予定した通りの正確な方向へ、予定した通り正確に移動させることを可能にできる。
【0037】
また、この発明では、環状の周壁を構成する外側周壁108aと、外側周壁108aの一端から内側方向に向かって伸びる環状鍔部108bとを備えているヨーク108に孔部を形成する構造を採用した。この孔部は、環状鍔部108bの、ヨーク108の外側周壁108aの内側にマグネット107が配備されている位置に対応する箇所に形成されている。そして、環状鍔部108bを、レンズ支持体101に配備されるレンズの光軸方向に相当するレンズ支持体101の長手方向に貫通するものである。
【0038】
ヨーク108の環状鍔部108bに形成される孔部、すなわち、空間部の磁気抵抗は、磁性体であるヨーク108よりも大きい。そこで、前記のようにヨーク108の環状鍔部108bを光軸方向に貫通する孔部をマグネット107が配備されている位置に対応させて形成することにより、ヨーク108の外側周壁108aの内側に配備されているマグネット107からの光軸と直交する方向の磁束密度の平行性、均一性を向上させ、漏洩磁場が形成される領域を小さくしたものである。
【0039】
このような構造を採用することにより、図5(b)に破線115bで示す磁束密度の平行性、均一性を向上させ、コイル102、103への通電制御により、レンズ支持体101をレンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向において、予定した通りの正確な方向へ、予定した通り正確に移動させることを可能にできる。
【0040】
なお、このように、ヨーク108の環状鍔部108bを光軸方向に貫通する孔部をヨーク108が備えている構造は、前述したように、第一のマグネットと第二のマグネットとが間にコイル102、103を挟んで対向配置されている構造のものに追加して設けられてもよく、あるいは第二のマグネットが採用されていない、第一のマグネット単独の構造のものに設けられてもよい。
【0041】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明するが、本発明は、上述した実施形態や、以下の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
【実施例1】
【0042】
図1、図2図示の本発明のレンズ駆動装置11は、図5で説明したレンズ駆動装置100と同じく、レンズ支持体17と、レンズ支持体17の径方向における外側に配備される環状のヨーク22とを備えている。レンズ支持体17は、これに配備されるレンズ(不図示)の光軸方向に相当する長手方向に伸びる筒状である。
【0043】
レンズ駆動装置11の外装は、フレーム13及びベース15とで構成される筺体として形成されている。この筺体は、レンズ支持体17の長手方向である光軸方向(Z軸方向)において被写体側に位置するフレーム13と、フレーム13に対向する位置のベース15とが嵌合しているもので、その中央に円筒状の開口部24が形成されている略直方体形状の箱体である。
【0044】
レンズ支持体17を所定位置に支持するために、レンズ支持体17の長手方向である光軸方向(Z軸方向)における被写体側、すなわち受光側に前側スプリング24が配備され、これに対向するレンズ支持体17の結像側に後側スプリング(不図示)が配備される。
【0045】
レンズ支持体17の径方向内周側にレンズ(不図示)が固定されて保持される。図1の分解斜視図で概略構成を示しているレンズ駆動装置11を符号12で示すように組み立てたときに、レンズ支持体17に保持されているレンズ(不図示)が筺体の中央の開口部に臨むようになる。
【0046】
図示の実施形態では、レンズ支持体17の外周側に配備されるコイル18は、レンズ支持体17の外周面に巻回されるメインコイル18aと、メインコイル18aの径方向外側に配備されるサブコイル18bとから構成されている。メインコイル18aはレンズ支持体17の外周に固定的に取り付けられ、サブコイル18bはメインコイル18aを介してレンズ支持体17に固定的に取り付けられる。
【0047】
ヨーク22の環状の周壁を構成する外側周壁22aの内側に、コイル18a、18bとの間に所定の間隔を空け、径方向におけるコイル18a、18bの外側に第一のマグネット20が、コイル18a、18bに対向して配備されている。
【0048】
ヨーク22は、環状の周壁を構成する外側周壁22aと、外側周壁22aの一端(図2(b)における上端)から内側方向(図2(b)における右側方向)に向かって伸びる環状鍔部22cを備えている。図1、図2図示の実施形態では、ヨーク22は、外側周壁22aの内側で外側周壁22aに対向する内側周壁22bをも備えている。そして、環状鍔部22cは、外側周壁22aの一端(図2(b)における上端)から内側方向(図2(b)における右側方向)に向かって内側周壁22bの対応する一端(図2(b)における上端)にまで伸びている。これによって、図示の実施形態におけるヨーク22は、図2(a)、(b)図示のように断面コ字形状になっている。
【0049】
図1、図2図示のように、上側から見た平面視では、ヨーク22は矩形状で、ヨーク22の周方向にそれぞれ所定の間隔を空けて、すなわち、矩形の形状における4個の角部に対応する位置の外側周壁22aの内周面に、各1個、合計4個の第一のマグネット20が配備されている。図示の実施形態では、第一のマグネット20の外周面をヨーク22の外側周壁22aの内周面に当接させている。
【0050】
メインコイル18aは、レンズ支持体17の周方向が巻線方向になっているコイルである。サブコイル18bは、メインコイル18aより小型で、通電した際に図5(c)図示の方向に電流が流れる環状の巻線構造になっている。
【0051】
この環状の巻線構造からなるサブコイル18bが、レンズ支持体17の周方向に所定の間隔を空けて、第一のマグネット20に対向するように、4箇所配備されている。第一のマグネット20と、サブコイル18bとの間には所定の間隔が形成されている。
【0052】
この実施例のレンズ駆動装置11では、図2図示のように、径方向においてコイル18a、18bを間に挟んでこれらとの間に所定の間隔を設けて第一のマグネット20に対向して第二のマグネット21が配備されている。図示の実施形態では、第二のマグネット21の内周面をヨーク22の内側周壁22bの外周面に当接させている。
【0053】
また、図2(b)図示のように、第二のマグネット21の第一のマグネット20に対向する外周側の面の磁極を、第一のマグネット20の内周側の面の磁極と異ならせている。第一のマグネット20及び第二のマグネット21による磁場の下でメインコイル18aに通電して発生する電磁力によって、メインコイル18aが固定されているレンズ支持体17は、レンズ支持体17の長手方向である光軸方向(Z軸方向)の推力が働き、前後方向に移動する。
【0054】
また、レンズ支持体17の周方向に各90度の間隔を空けて4箇所配備されているサブコイル18bの所定の箇所のサブコイル18bを選択し、選択した箇所のサブコイル18bのみに通電する、あるいは、選択した箇所のサブコイル18bへの通電量を制御することにより、レンズ支持体17は、X軸方向あるいはY軸方向への推力が働き、X軸方向あるいはY軸方向へ移動する。
【0055】
上述したように、コイル18a、18bを間に挟んで径方向に第一のマグネット20と第二のマグネット21とが対向しており、しかも、対向面の互いの磁極が異なっているので、第一のマグネット20と第二のマグネット21との間において符号27で示すように磁力線が吸引される。これによって、コイル18a、18bを間に挟んで径方向に対向する第一のマグネット20と、第二のマグネット21との間で磁束密度の平行性、均一性を向上させることができる。特に、第一のマグネット20から、ヨーク22の環状鍔部22c側に斜めに向かう漏洩磁場を低減させることができる。なお、図2(b)では、磁力線(矢印27)を明瞭に示すために、メインコイル18a及びサブコイル18bは鎖線で示している。
【0056】
このように、漏洩磁場を低減させ、磁束密度の平行性、均一性を向上させることができるので、コイル18a、18bへの通電制御により、レンズ支持体17をレンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向において、予定した通りの正確な方向へ、予定した通り正確に移動させることができる。
【0057】
特に、携帯電話機や、オートフォーカスカメラの薄型化に伴い、レンズ駆動装置11の光軸方向(Z軸方向)への寸法に制限が加えられ、第一のマグネット20の図2(b)に上下方向で示される光軸方向の寸法が小さくなった場合には、対向する第一のマグネット20と第二のマグネット21との間では、符号27で示すように光軸と直交する方向の磁束密度の平行性、均一性が一層向上する。
【0058】
これによって、レンズ駆動装置11の光軸方向(Z軸方向)への寸法に制限が加えられた場合であっても、レンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向において、レンズ支持体17を予定した通りの正確な方向へ、予定した通り正確に移動させることができる。
【0059】
なお、上述したように、第一のマグネット20は、通電されたコイル18(メインコイル18a及びサブコイル18b)に推力を与えるための磁場を形成するものであるのに対し、第二のマグネット21は、第一のマグネット20の磁力線をコイル側18(メインコイル18a及びサブコイル18b)に引き寄せる役割のものである。そのため、第二のマグネット21は、第一のマグネット20のように大きな磁場の発生を必要とせず、第一のマグネット20よりも小さくすることができる(図2(a)、(b))。
【0060】
この実施例のレンズ駆動装置11が採用されているオートフォーカスカメラ(不図示)、さらに当該オートフォーカスカメラを搭載した携帯電話等の携帯端末装置(不図示)によれば、第一のマグネット20に対向して第二のマグネット21が配備されることにより、漏洩磁場により生じるレンズ支持体17への不均等な推力の発生と、レンズ支持体17の傾きの発生とが抑制され、オートフォーカス及び/又は手振れ補正の機能を十分に発揮することができる。
【実施例2】
【0061】
図3を参照して他の実施例を説明する。なお、実施例1(図1、図2)において説明した構造部材と同一の名称及び構造のものは、同一の符号を付して説明を省略する。また、実施例1において説明したものと同一のものの説明は適宜省略し、実施例1とは異なる点を中心に説明する。
【0062】
図3図示の本実施例のレンズ駆動装置では、実施例1と異なり、ヨーク22に第二のマグネット21(図2参照)を採用していない。その一方、ヨーク22の環状鍔部22cに、レンズ支持体17に配備されるレンズ(不図示)の光軸方向に相当するレンズ支持体17の長手方向に貫通する孔部23が形成されている。
【0063】
環状鍔部22cに形成される孔部23、すなわち、空間部の磁気抵抗は、磁性体であるヨーク22よりも大きい。そこで、ヨーク22の環状鍔部22cを光軸方向に貫通する孔部23を形成することにより、第一のマグネット20から、ヨーク22の環状鍔部22c側に斜めに向かう漏洩磁場を低減させるものである。これによって、第一のマグネット20から径方向内側のコイル18a、18b側に向かう磁束密度の平行性、均一性を向上させ、漏洩磁場が形成される領域を小さくしたものである。これによって、コイル18a、18bへの通電制御により、レンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向において、レンズ支持体17を予定した通りの正確な方向へ、予定した通り正確に移動させることができる。
【0064】
孔部23はこのような目的で形成するものであるので、ヨーク22の外側周壁22aの内周面に第一のマグネット20が配備されている位置に対応する位置の環状鍔部22cに形成しておく。すなわち、孔部23は、ヨーク22の環状鍔部22c側に斜めに向かう漏洩磁場を低減させる目的から、第一のマグネット20の内周面に相当する位置と内側周壁22bとの間に設けることが望ましい。また、前記の目的から、孔部23は第一のマグネット20の周方向の幅と同程度の大きさとすることが望ましい。図示の実施形態では、平面視で矩形形状の環状鍔部22cの周方向に90度ずつ間隔を空けて4個の孔部23が形成されている。
【0065】
なお、図3において、孔部23と内側周壁22bとの間に環状鍔部22cを設けてあるが、この孔部23と内側周壁22bとの間の環状鍔部22cは無くても構わない。
【実施例3】
【0066】
図4を参照してさらに他の実施例を説明する。なお、実施例1(図1、図2)、実施例2(図3)において説明した構造部材と同一の名称及び構造のものは、同一の符号を付して説明を省略する。また、実施例1、2において説明したものと同一のものの説明は適宜省略し、実施例1、2とは異なる点を中心に説明する。
【0067】
図4図示のレンズ駆動装置は、実施例1、実施例2のレンズ駆動装置の構造を組み合わせたものである。すなわち、コイル18a、18bを間に挟んで径方向に第一のマグネット20を第二のマグネット21とを、対向面の磁極を互いに相違させて対向配置し、更に、ヨーク22の外側周壁22aの内周面に第一のマグネット20が配備されている位置に対応する位置の環状鍔部22cにここを光軸方向に貫通する孔部23を形成したものである。
【0068】
実施例1、2で説明したメカニズムが相乗されることにより、漏洩磁場の形成をより小さな領域に抑え、第一のマグネット20から径方向内側のコイル18a、18b側に向かう磁束密度の平行性、均一性をより一層向上させることができる。
【0069】
これにより、コイル18a、18bへ通電制御した際に、レンズの光軸方向(Z軸方向)及び/又は光軸(Z軸)と直交するX軸/Y軸方向において、レンズ支持体17を予定した通りのより正確な方向へ、予定した通りにより正確に移動させることができる。
【0070】
なお、内側周壁22bは無くても構わない。例えば、図7(a)、図7(b)に示すように、内側周壁22bを設けずに、環状鍔部22cの最内周部に第二のマグネット21を配置しても良い。このような構成にすると、図2や図4のように内側周壁22bがある構成に比べて、マグネット21はより内周側に配置することができる。すると、それに伴いコイル18や第一のマグネット20、外側周壁22aもより内周側に配置することができるので、レンズ駆動装置11を小型にすることができる。
【符号の説明】
【0071】
11 レンズ駆動装置
13 フレーム
15 ベース
17 レンズ支持体
18 コイル
18a メインコイル
18b サブコイル
20 第一のマグネット
21 第二のマグネット
22 ヨーク
23 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に伸びていて外周側にコイルが配備される筒状のレンズ支持体と、
前記レンズ支持体の径方向における外側に配備される環状のヨークと、
前記ヨークの環状の周壁を構成する外側周壁の内側であって、前記コイルの前記径方向における外側に、前記コイルとの間に所定の間隔を空けて配備される第一のマグネットと、
前記径方向において前記コイルを間に挟んで前記コイルとの間に所定の間隔を空けて前記第一のマグネットに対向して配備され、前記第一のマグネットに対向する外周側の面の磁極が、前記第一のマグネットの内周側の面の磁極と異なっている第二のマグネットとを備えている
ことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記ヨークは前記外側周壁の内側で前記外側周壁と対向する内側周壁と、前記外側周壁の一端から内側方向に向かって前記内側周壁の対応する一端にまで伸びる環状鍔部を備えており、
前記第一のマグネットは前記外側周壁の内周面に、前記第二のマグネットは前記内側周壁の外周面にそれぞれ配備され、
前記ヨークの前記環状鍔部が、前記環状鍔部を前記長手方向に貫通する孔部を備えている
ことを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記第一のマグネットは、前記ヨークの周方向にそれぞれ所定の間隔を空けて4個配備されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
長手方向に伸びていて外周側にコイルが配備される筒状のレンズ支持体と、
前記レンズ支持体の径方向における外側に配備される環状のヨークであって、環状の周壁を構成する外側周壁と、当該外側周壁の一端から前記径方向における内側方向に向かって伸びる環状鍔部を備えているヨークと、
前記ヨークの外側周壁の内側であって、前記コイルの前記径方向における外側に、前記コイルとの間に所定の間隔を空けて配備される第一のマグネットとを備えていて、
前記ヨークの前記環状鍔部が、前記ヨークの外側周壁の内側に前記第一のマグネットが配備されている位置に対応する箇所に、前記環状鍔部を前記長手方向に貫通する孔部を備えている
ことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載のレンズ駆動装置を備えているオートフォーカスカメラ。
【請求項6】
請求項5記載のオートフォーカスカメラが搭載されている携帯端末装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−33186(P2013−33186A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211540(P2011−211540)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000131348)シコー株式会社 (168)
【Fターム(参考)】