説明

レンズ駆動装置、光ピックアップ装置及びディスク装置

【課題】光記録媒体が記録再生時に対物レンズに衝突することを防止し挿入時にレンズプロテクタ部材に衝突することがないレンズ駆動装置の提供。
【解決手段】アクチュエータベースにサスペンションワイヤを介して設けられたレンズ保持部20と、レンズ保持部20に設けられ光記録媒体Dの記録面に対向配置される対物レンズとを有し、レンズ保持部20の対物レンズの周囲において光記録媒体Dが挿入される方向Inの上流側において光記録媒体Dを挿入する時にガイドする傾斜202Bが設けられ、レンズ保持部20に光記録媒体Dが対物レンズに衝突することを防止するレンズプロテクタ部材40が設けられる。レンズプロテクタ部材40は基台401から突出するとともに先端部が傾斜面とされた衝突緩衝材402を有し、傾斜202Bの最先端位置CTは衝突緩衝材402の最先端位置PTより低く、基台401と衝突緩衝材402との境界線Kより先端側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置、光ピックアップ装置及びこの光ピックアップ装置を備えたディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)あるいはBD(Blu-ray Disc)等のディスク状の光記録媒体に記録されている情報を記録したり、記録されている情報を再生したりする光ピックアップ装置を備えたディスク装置が知られている。
このディスク装置の従来例として、光記録媒体に光を集光する対物レンズと、この対物レンズを保持するレンズホルダと、このレンズホルダを保持するサスペンションワイヤと、前記レンズホルダの前記対物レンズの周りで少なくとも1つは前記光記録媒体挿入方向の上流側に設けられている突起物とを備えた光ピックアップアクチュエータと、前記光ピックアップアクチュエータを保護するピックアップカバーとを備え、前記光ピックアップアクチュエータの一部が前記ピックアップカバーから突出してレンズプロテクタを構成し、このレンズプロテクタの側面には、光記録媒体挿入時に、光記録媒体を上方に案内する傾斜を設け、この傾斜が、レンズプロテクタの最高位からピックアップカバーの最上位よりも下方まで伸びた光ディスク装置がある(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1で示される従来例では、ディスク状の光記録媒体を上方に案内する傾斜がレンズプロテクタの最高位からピックアップカバーの最上位よりも下方まで伸びた構成にしているため、ピックアップカバー上面を滑るように光記録媒体が挿入されても、光記録媒体外周端部は傾斜に接触し、傾斜を滑って光ピックアップアクチュエータを上下方向に押し下げることになる。従って、サスペンションワイヤの挫屈方向に力は生じず、サスペンションワイヤの変形を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4591589号(請求項1、段落[0008])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で示される従来例は、その課題を解決するために、光記録媒体を上方に案内する傾斜の上端がレンズプロテクタの最高位と一致する構成を採用しているため、ディスク状の光記録媒体の記録時又は再生時に、光記録媒体が外部からの要因、その他の要因によって、対物レンズに衝突する方向に動くと、傾斜の上端に光記録媒体が衝突することになり、光記録媒体自体に傷がつくことが1つの課題として挙げられる。
【0006】
この問題を解決するために、傾斜の上端位置をレンズプロテクタの最高位より低くすることが仮に想定できるとしても、レンズプロテクタの先端部の断面形状はフォーカス方向と平行な面とこれと直交する平面とが直角となる角部が形成されていることになるので、光記録媒体を挿入するためにピックアップカバーの平面に沿って摺動される光記録媒体の外周縁部が突起部の先端角部に衝突し、光記録媒体を破損させたり、サスペンションワイヤを塑性変形させたりしてしまうという不都合が1つの課題として考えられる。
【0007】
本発明は、光記録媒体が記録再生時に対物レンズに衝突することを防止することができるとともに光記録媒体が挿入時にレンズプロテクタ部材に衝突しても、サスペンションワイヤの変形を防ぎつつ、滑らかに送り込まれるレンズ駆動装置、光ピックアップ装置及びディスク装置を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレンズ駆動装置は、ベース部材と、このベース部材に線状弾性部材を介して設けられたレンズ保持部と、このレンズ保持部に設けられ光記録媒体の記録面に対向配置される対物レンズとを有するレンズ駆動装置であって、前記レンズ保持部の前記対物レンズの周囲において少なくとも前記光記録媒体が挿入される方向の上流側において前記光記録媒体を挿入する時にガイドする傾斜が設けられ、前記レンズ保持部に前記光記録媒体が前記対物レンズに衝突することを防止するレンズプロテクタ部材が設けられ、前記レンズプロテクタ部材は、前記レンズ保持部に設けられた基台と、この基台から突出して設けられるとともに先端部が傾斜面とされた衝突緩衝材とを有し、前記傾斜は、その最先端位置が前記衝突緩衝材の最先端位置より低く、かつ、前記基台と前記衝突緩衝材との境界線より前記衝突緩衝材の先端側に位置することを特徴とする。
【0009】
本発明の光ピックアップ装置は、前述の構成のレンズ駆動装置と、このレンズ駆動装置を保護するとともに前記光記録媒体が摺動する摺動面が形成されるカバー部材とを備え、前記傾斜は、その最基端位置が前記カバー部材の摺動面の位置より前記衝突緩衝材の先端に向かう方向とは反対側に位置することを特徴とする。
【0010】
本発明のディスク装置は、前述の構成の光ピックアップ装置を備えたディスク装置であって、前記光記録媒体の挿通口が形成された筐体を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスク装置の全体構成を示す図。
【図2】レンズ駆動装置の全体構成を示す斜視図。
【図3】レンズ駆動装置の側面図。
【図4】レンズ駆動装置の要部を示す一部を破断した側面図。
【図5】レンズ駆動装置の動作を説明する側面図。
【図6】レンズ駆動装置の動作を説明する側面図。
【図7】(A)〜(C)は本発明の変形例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[ディスク装置の構成]
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態で用いられる光記録媒体は、情報の読み出しあるいは記録のみでもよい。さらに、ディスク状記録媒体としては、光ディスクに限らず、磁気ディスク、光磁気ディスクなどのいずれのディスク状記録媒体を対象とすることができる。また、例えば、携帯型のパーソナルコンピュータなどの電気機器に装着されるいわゆる薄型のスロットインタイプで例示するが、例えばゲーム機や映像データの録画などの記録や再生のための処理をする再生装置などの単体の構成としてもよい。
【0013】
図1は、本実施形態に係るディスク装置の概略構成を示す平面図である。
図1において、ディスク装置は、例えば、携帯型のパーソナルコンピュータ等の電気機器に装着されるいわゆる薄型のスロットインタイプのディスク装置である。このディスク装置は、着脱可能に装着される円板状の光記録媒体Dの一面に設けられた記録面に記録された情報を読み出す情報処理である読取処理や記録面へ各種情報を記録する情報処理である記録処理をする。
【0014】
ディスク装置は、例えば金属製で内部空間を有する略箱形状の筐体100と、この筐体100の内部に設けられる、いわゆるトラバースメカと称されるディスク処理部200と、光記録媒体Dを搬送する搬送手段300と、図示しない制御回路部とを備えて構成され、筐体100の正面には光記録媒体Dを挿入排出するための挿通口100Aが形成されている。搬送手段300は、光記録媒体Dを移動させるアーム301と、このアーム301を駆動するアーム駆動機構302とを有する。
ディスク処理部200は、例えば、金属板にて略板状に形成され一端が揺動自在に筐体100に支持された台座部210を有する。この台座部210には、周縁近傍である長手方向の一端側に位置して、ディスク回転駆動手段220が配設されている。
このディスク回転駆動手段220は、図示しないスピンドルモータと、このスピンドルモータの出力軸に一体的に設けられたターンテーブル230とを備えている。スピンドルモータは、制御回路部に制御可能に接続され、制御回路部から供給される電力により駆動する。
【0015】
ターンテーブル230は、筐体100の内部の略中心部に設けられるとともに光記録媒体Dを回転駆動する駆動部である。
台座部210には本実施形態にかかる光ピックアップ装置240が台座部210に設けられた一対のガイドシャフト250の間に架橋する状態に配設されており、この光ピックアップ装置240は、レンズ駆動装置1と、このレンズ駆動装置1を保護する光記録媒体Dが摺動する摺動面2Aが形成されるカバー部材2を備えている。台座部210は光ピックアップ装置240をターンテーブル230に対して近接離隔させる駆動機構260を備えている。カバー部材2は光ピックアップ装置240に取り付けられている。
【0016】
[光ピックアップ装置の構成]
図2は本実施形態のレンズ駆動装置1の全体構成を示す斜視図であり、図3は、その側面図である。
図2及び図3において、レンズ駆動装置1は、ベース部材としてのアクチュエータベース10と、2つの対物レンズL1,L2が設けられた合成樹脂製のレンズ保持部20と、このレンズ保持部20とアクチュエータベース10とを接続する線状弾性部材としてのサスペンションワイヤ30と、レンズ保持部20に設けられ光記録媒体Dが対物レンズL1,L2に衝突することを防止するレンズプロテクタ部材40と、レンズ保持部20をトラッキング方向Tとフォーカス方向Fとに移動させる動作部50とを有する。
【0017】
アクチュエータベース10は、図示しないピックアップ支持体に取付けられている。このピックアップ支持体を通してレンズ駆動装置1は、図示しない駆動機構に接続され、駆動機構の制御によりレンズ駆動装置1を光記録媒体Dの面に沿ってトラッキング方向Tへ移動させる。また、ピックアップ支持体には、図示しないBD用レーザ光源と、CD−DVD用レーザ光源とが取り付けられている。そして、このBD用レーザ光源から出射された405nmのBD用レーザ光は、光学系により構成される光路を通って対物レンズL1の下方に至る。また、CD−DVD用レーザ光源から出射された780nmのCD用レーザ光または650nmのDVD用レーザ光は、対物レンズL2の下方に至る。各対物レンズL1,L2の下方には立ち上げミラー(図示せず)が配置されており、各レーザ光は立ち上げミラーにより上方へ進路変更されて各対物レンズL1,L2を下から上へと通過する。これらの対物レンズL1,L2の上方には光記録媒体Dが配置され、各対物レンズL1,L2は各レーザ光を記録媒体の情報記録面に集光する。
【0018】
アクチュエータベース10は、ベース本体11と、このベース本体11の両側にそれぞれ設けられるダンピング材料12とを備え、ベース本体11には、サスペンションワイヤ30の一端部が設けられている。
サスペンションワイヤ30は2本の線材が1対となって構成されており、2対のサスペンションワイヤ30は、その一端部がベース本体11に係止されている。
全てのサスペンションワイヤ30は、それぞれフォーカス方向Fと直交する平面内でトラッキング方向Tと直交する方向に延びて配置されている。
【0019】
レンズ保持部20は、対物レンズL1,L2が設けられフォーカス方向Fと直交する平面内でトラッキング方向Tと直交する方向と長手方向が平行な平面長方形状のホルダ本体20Aと、このホルダ本体20Aの一端側両側面にそれぞれ基端が固定された固定アーム部20Bとを備え、これらの固定アーム部20Bにはサスペンションワイヤ30の他端部がそれぞれ係止されている。
対物レンズL1,L2は、ホルダ本体20Aの長手方向に沿って並んで配置され、これらのうち対物レンズL1は光記録媒体Dが挿入される方向Inの上流側に配置され、対物レンズL2は光記録媒体Dが挿入される方向Inの下流側に配置されている。
【0020】
ホルダ本体20Aのトラッキング方向Tと直交する方向であって光記録媒体Dが挿入される方向Inの上流側の一端面にはコイル取付部201が一体形成され、対物レンズL1の周囲においてコイル取付部201に近接して突起部202が2箇所一体に形成されている。
これらの突起部202は、それぞれ基端がコイル取付部201に接続された2つの立上片部202Aから構成され、これらの立上片部202Aのうち1つは光記録媒体Dが挿入される方向Inに沿って形成されている。
立上片部202Aには、光記録媒体Dを挿入する時にガイドする傾斜202Bが設けられ、この傾斜202Bの最先端位置に連続して頂面部202Cが設けられている。この頂面部202Cは隣り合う立上片部202Aを接続するように形成されている。
動作部50は、コイル取付部201に設けられたコイル500及びこのコイル500と対向配置されベース本体11に固定された図示しない磁石を有する駆動ユニットと、ホルダ本体20Aのコイル取付部201が設けられた側面とは反対側の側面に固定された図示しないコイル及びこのコイルに対向配置される磁石(図示せず)を有する駆動ユニットとを備えて構成される。
【0021】
レンズプロテクタ部材40は、ホルダ本体20Aの平面上の四隅にそれぞれ配置されている。これらのレンズプロテクタ部材40のうち、トラッキング方向Tと直交する方向であって光記録媒体Dが挿入される方向Inの上流側に配置される2つのレンズプロテクタ部材40は、ホルダ本体20Aの長手方向に沿った線分において、突起部202と対物レンズL1の中心との間に配置されている。
4つのレンズプロテクタ部材40は、それぞれホルダ本体20Aに突出して一体形成された厚肉円板状の基台401と、この基台401から光記録媒体Dが設置される場所に向けて突出して設けられる衝突緩衝材402とを有する。
衝突緩衝材402は、液状樹脂を基台401の上に硬化させて形成されたものであり、かつ、その先端部は光記録媒体Dが配置される位置に向けて突出する湾曲形状(曲面)とされている。これらの衝突緩衝材402の最先端位置は、それぞれ同じ位置が好ましい。
衝突緩衝材402は、塗布時には液体であるが、塗布して硬化した後にあっては弾性を有し所定形状を保持する材料、例えば、シリコーンゴム等から構成される。
【0022】
図4には、レンズ駆動装置の要部が拡大して示されている。
図4において、突起部202に形成された傾斜202Bの最先端位置CTは衝突緩衝材402の最先端位置PTより低く、かつ、基台401と衝突緩衝材402との境界線Kより衝突緩衝材402の先端側に位置するものであり、傾斜202Bの最基端位置CBはカバー部材2の摺動面2Aの位置より衝突緩衝材402の先端に向かう方向とは反対側に位置する。
ホルダ本体20Aには、基台401に塗布した液状樹脂が基台401の外周縁から流出した際に溜める溝200Aが基台401と突起部202との間に形成されている。この溝200Aは、図4では、所定幅と深さを有する断面矩形状であり、略直線状の平面形状とされている。なお、本実施形態では、溝200Aの断面形状は、矩形状に限定されるものではなく、U字状であってもよい。さらに、平面形状も基台401の周囲に沿った円弧状であってもよい。
溝200Aの基台401を挟んで反対側には溝200Bがホルダ本体20Aに形成され、この溝200Bは溝200Aと同じように液状樹脂が基台401の外周縁から流出した際に溜めるものである。
【0023】
次に、本実施形態のディスク装置の作用について、図5及び図6に基づいて説明する。図5及び図6はそれぞれレンズ駆動装置1の動作を説明する側面図である。
まず、ディスク装置に給電されていない状態では、光ピックアップ装置240はターンテーブル230から最も離れた位置にある。そして、ディスク装置をONして光記録媒体Dをディスク装置の挿通口100Aから内部に挿入すると、光記録媒体Dはターンテーブル230に向かって移動する。
この際、光記録媒体Dは、カバー部材2の摺動面2Aに沿って挿入方向に移動し、その外周縁が傾斜202Bに当接する。すると、図5に示される通り、ホルダ本体20Aがサスペンションワイヤ30の弾性力に抗して押し下げられ、光記録媒体Dが傾斜202Bを滑らかに移動して突起部202を乗り越えることになる。
【0024】
さらに、光記録媒体Dが移動し続けると、その外周縁がレンズプロテクタ部材40の衝突緩衝材402の曲面に当接する。すると、図6に示される通り、ホルダ本体20Aがサスペンションワイヤ30の弾性力に抗してさらに押し下げられ、光記録媒体Dは衝突緩衝材402の曲面に沿って滑らかに移動し、衝突緩衝材402の頂部を乗り越えることになる。そして、光記録媒体Dは挿入され続けて所定位置にセットされ、記録面が対物レンズL1,L2に対向することになる。
このように、所定位置に光記録媒体Dがセットされたら、レンズ駆動装置1によって、記録又は再生の操作が実行されるが、外部からの要因や、その他の要因によって、対物レンズL1,L2に衝突する方向に光記録媒体Dが動いても、光記録媒体Dが弾性を有する衝突緩衝材402の先端部分に当たることになる。
【0025】
[ディスク装置の作用効果]
以上の本実施形態によれば、以下の作用効果が期待できる。
(1)レンズ保持部20の対物レンズL1,L2の周囲であって光記録媒体Dが挿入される方向の上流側において、光記録媒体Dを挿入する時にガイドする傾斜202Bが設けられ、レンズ保持部20に光記録媒体Dが対物レンズL1,L2に衝突することを防止するレンズプロテクタ部材40が設けられ、レンズプロテクタ部材40は、レンズ保持部20に設けられた基台401と、この基台401から突出して設けられるとともに先端部が曲面とされた衝突緩衝材402とを有し、傾斜202Bは、その最先端位置CTが衝突緩衝材402の最先端位置PTより低く、かつ、基台401と衝突緩衝材402との境界線Kより衝突緩衝材402の先端側に位置するようにした。そのため、光記録媒体Dは、その挿入時に衝突緩衝材402の先端部側面に当接しても、その先端部が曲面とされており、かつ、サスペンションワイヤ30の弾性力に抗してレンズ保持部20が変位することによって、光記録媒体Dが衝突緩衝材402の曲面に沿って滑らかに移動することになり、光記録媒体Dが衝突緩衝材402に衝突してサスペンションワイヤ30が変形することがなく、衝突緩衝材402が基台401から剥がれたりすることがなく、光記録媒体Dの円滑な挿入が行える。傾斜202Bの最先端位置CTが衝突緩衝材402の最先端位置PTより低いから、光記録媒体Dが外部からの要因や、その他の要因によって、対物レンズL1,L2に衝突する方向に動いても、傾斜202Bの先端に衝突する前に、衝突緩衝材402の先端部分に当たることになるので、光記録媒体D自体に傷がつくことがない。
【0026】
(2)衝突緩衝材402は、液状樹脂を基台401の上に硬化させて形成されるから、先端部に曲面を有する衝突緩衝材402を容易に基台401の上に形成することができる。つまり、基台401の上から液状樹脂を塗布する(垂らす)ことにより、先端部が曲面とされる衝突緩衝材402を簡単に成形することができ、そのため、レンズ駆動装置1を安価に製造することができる。
【0027】
(3)レンズ保持部40のホルダ本体20Aには液状樹脂が基台401の外周縁から流出した際に溜める溝200Aが基台401と傾斜202Bが形成された突起部202との間に形成されているから、衝突緩衝材402を形成する際に、液状樹脂が基台401の周辺から流れ出されても、この流れ出された液状樹脂を溝200Aで収納することができる。そのため、突起部202の傾斜側に液状樹脂が流れ出ることが阻止されるので、傾斜202Bに液状樹脂が誤って塗布されることの不具合、例えば、光記録媒体Dの傾斜202Bに沿ったガイドが邪魔されるという不具合を回避できる。
【0028】
(4)光ピックアップ装置240を、レンズ駆動装置1と、このレンズ駆動装置1を保護するとともに光記録媒体Dが摺動する摺動面2Aが形成されるカバー部材2とを備えて構成したから、前述の効果を奏することができる光ピックアップ装置240を提供することができる。
【0029】
(5)突起部202に形成された傾斜202Bを、その最基端位置CBがカバー部材2の摺動面2Aの位置より衝突緩衝材402の先端に向かう方向とは反対側に位置する構成としたから、光記録媒体Dがカバー部材2の摺動面2Aに沿って摺動して突起部202に当接する場合、必ず、傾斜202Bに当接するので、光記録媒体Dが傾斜202Bに沿って滑らかにガイドされる。そのため、光記録媒体Dの挿入操作を円滑に行うことができる。
【0030】
(6)前述の構成の光ピックアップ装置240と、光記録媒体Dの挿通口100Aが形成された筐体100とを備えてディスク装置を構成したから、前述の効果を奏することができるディスク装置を提供できる。
【0031】
(7)1つの突起部202にそれぞれ形成された2つの立上片部202Aのうち1つを光記録媒体Dが挿入される方向Inに沿って形成したから、挿入操作される光記録媒体Dの外周縁が確実に少なくとも1つの傾斜202Bに当接することになり、光記録媒体Dの挿入操作を円滑に行うことができる。
【0032】
(8)ホルダ本体20Aの四隅のうち2つの隅部に突起部202を設け、これらの突起部202にそれぞれ向きの異なる傾斜202Bが設けられた立上片部202Aを形成したから、光記録媒体Dが挿入される方向Inが異なっても、複数の傾斜202Bのうち少なくとも1つに光記録媒体Dの外周縁が当接することになるので、レンズ駆動装置1の筐体100に対する配置位置の変化に対応することができる。
【0033】
[変形例]
なお、本発明は前述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、ホルダ本体20Aには液状樹脂が基台401の外周縁から流出した際に溜める溝200Aが基台401と傾斜202Bが形成された突起部202との間に形成された構成としたが。本発明では、図7(A)に示される通り、この溝を省略し、基台401と突起部202とを隙間なく形成するものでもよい。仮に、溝200Aを設ける場合であっても、前記実施形態の平面直線状に限定されるものではない。本発明では、溝200Aをホルダ本体20Aのレンズプロテクタ部材40の周囲に環状に形成するものでもよい。
【0034】
さらに、前記実施形態では、衝突緩衝材402の先端形状を曲面としたが、本発明では、傾斜面を先端形状が有するものであれば、いかなる形状でもよく、例えば、図7(B)に示される通り、衝突緩衝材402を円錐台形状としてもよい。
また、前記実施形態では、レンズプロテクタ部材40の基台401をホルダ本体20Aに一体に突出して形成した構成としたが、本発明では、図7(C)に示される通り、基台401をホルダ本体20Aの一部とし、ホルダ本体20Aに直接、衝突緩衝材402を設けるものでもよい。
そして、液状樹脂を基台401の上に硬化して形成したが、本発明では、合成樹脂等から所定形状とされた弾性部材を予め用意し、この弾性部材を基台401に接着剤で接着固定する構成であってもよい。
【0035】
本発明では、1つの突起部202に1つの立上片部202Aを形成するものでもよく、突起部202自体も1つであってもよい。
また、本発明を各レンズL1,L2のうち一方のみを有するレンズ駆動装置に適用してもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【0036】
[実施形態の作用効果]
前述の通り、本実施形態のレンズ駆動装置1は、アクチュエータベース10と、このアクチュエータベース10にサスペンションワイヤ30を介して設けられたレンズ保持部20と、このレンズ保持部20に設けられ光記録媒体Dの記録面に対向配置される対物レンズL1,L2とを有するレンズ駆動装置であって、レンズ保持部20の対物レンズL1,L2の周囲において少なくとも光記録媒体Dが挿入される方向の上流側において光記録媒体Dを挿入する時にガイドする傾斜202Bが設けられ、レンズ保持部20に光記録媒体Dが対物レンズL1,L2に衝突することを防止するレンズプロテクタ部材40が設けられ、レンズプロテクタ部材40は、レンズ保持部20に設けられた基台401と、この基台401から突出して設けられるとともに先端部が傾斜面とされた衝突緩衝材402とを有し、傾斜202Bは、その最先端位置CTが衝突緩衝材402の最先端位置PTより低く、かつ、基台401と衝突緩衝材402との境界線Kより衝突緩衝材402の先端側に位置するようにした。そのため、傾斜202Bの最先端位置CTが基台401と衝突緩衝材402との境界線Kより衝突緩衝材402の先端側に位置するため、光記録媒体Dは、その挿入時に衝突緩衝材402の先端部側面に当接しても、その先端部が曲面とされており、かつ、サスペンションワイヤ30の弾性力に抗してレンズ保持部20が変位することによって、光記録媒体Dが衝突緩衝材402の曲面に沿って滑らかに移動することになり、光記録媒体Dが衝突緩衝材402に衝突してサスペンションワイヤ30が変形することがなく、衝突緩衝材402が基台401から剥がれたりすることがなく、光記録媒体Dの円滑な挿入が行える。傾斜202Bの最先端位置CTが衝突緩衝材402の最先端位置PTより低いから、光記録媒体Dが外部からの要因や、その他の要因によって、対物レンズL1,L2に衝突する方向に動いても、傾斜202Bの先端に衝突する前に、衝突緩衝材402の先端部分に当たることになるので、光記録媒体D自体に傷がつくことがない。
【符号の説明】
【0037】
1…レンズ駆動装置、2…カバー部材、2A…摺動面、10…アクチュエータベース(ベース部材)、20…レンズ保持部、30…サスペンションワイヤ(線状弾性部材)、40…レンズプロテクタ部材、100…筐体、100A…挿通口、200A…溝、202…突起部、202A…立上片部、202B…傾斜、240…光ピックアップ装置、401…基台、402…衝突緩衝材、CB…最基端位置、CT…最先端位置、D…光記録媒体、K…境界線、L1,L2…対物レンズ、PT…最先端位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、このベース部材に線状弾性部材を介して設けられたレンズ保持部と、このレンズ保持部に設けられ光記録媒体の記録面に対向配置される対物レンズとを有するレンズ駆動装置であって、
前記レンズ保持部の前記対物レンズの周囲において少なくとも前記光記録媒体が挿入される方向の上流側において前記光記録媒体を挿入する時にガイドする傾斜が設けられ、前記レンズ保持部に前記光記録媒体が前記対物レンズに衝突することを防止するレンズプロテクタ部材が設けられ、
前記レンズプロテクタ部材は、前記レンズ保持部に設けられた基台と、この基台から突出して設けられるとともに先端部が傾斜面とされた衝突緩衝材とを有し、
前記傾斜は、その最先端位置が前記衝突緩衝材の最先端位置より低く、かつ、前記基台と前記衝突緩衝材との境界線より前記衝突緩衝材の先端側に位置する
ことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ駆動装置において、
前記衝突緩衝材は、液状樹脂を前記基台の上に硬化させて形成され、かつ、その先端部が曲面とされる
ことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレンズ駆動装置において、
前記レンズ保持部には前記液状樹脂が前記基台の外周縁から流出した際に溜める溝が少なくとも前記基台と前記傾斜面が設けられた突起部との間に形成されている
ことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のレンズ駆動装置と、このレンズ駆動装置を保護するとともに前記光記録媒体が摺動する摺動面が形成されるカバー部材とを備え、
前記傾斜は、その最基端位置が前記カバー部材の摺動面の位置より前記衝突緩衝材の先端に向かう方向とは反対側に位置する
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光ピックアップ装置を備えたディスク装置であって、前記光記録媒体の挿通口が形成された筐体を有する
ことを特徴とするディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−20679(P2013−20679A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154703(P2011−154703)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(510130675)パイオニアデジタルデザインアンドマニュファクチャリング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】