説明

レーザパルス均等化システムおよび方法

システムおよび方法は、異なるパルス繰り返し周波数(PRF)でレーザパルス均等化を提供する。初めにレーザ媒質を第1ポンピングレベルからピークポンピングレベルへポンピングした後、コントローラはポンプ源にレーザ媒質のポンピングをパルス均等化ポンピング曲線に基づき継続させることができる。均等化ポンピング曲線は、異なるPRFにおいてレーザパルスパラメータをテストすることに基づき定めることができ、これによりパルスパラメータの最適な均等化結果を得ることができる。様々な均等化ポンピング曲線を評価するために用いる最適化指標には、異なるPRFの下におけるパルスエネルギーレベルの一貫性、ピークパワーレベル、および/またはレーザのパルス幅が含まれる。均等化ポンピング曲線は、ピークポンピングレベルから第1ポンピングレベルに降下する曲線であってもよい。均等化ポンピング曲線は、線形に減少する曲線、実質的に指数的に減少する曲線、パラメトリックに減少する曲線、またはその他任意種類の曲線であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パルス化レーザおよびパルス化レーザ加工システムに関する。特に、本開示は、最適パルス均等化ポンピング曲線を用いてレーザをポンピングすることにより、様々なパルス繰り返し周波数で放射されたレーザパルスを均等化することに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザは、広範な研究開発において広く用いられている。これには、分光法、バイオテクノロジー応用、様々な媒体および基板の検査、加工、微細加工を含む工業的作業が含まれる。これら応用の多くにおいて、パルス化レーザは、ランダム周波数、擬似ランダム周波数、および/または非定常周波数を有するパルス繰り返し周波数(PRF)の下で用いることができる。
【0003】
ある種のレーザアプリケーション、例えばシリコンウエハのフィルム切除加工は、重なり合ったレーザパルスを用いて抵抗薄膜を切除し、その抵抗値を所望の精度範囲内で変更する。このような加工は、レーザパルスを様々なPRFおよびパルス重なりの下で用いる。切除品質を高くするためには、レーザパルスのパルスエネルギー、パルス幅、パルスピークパワーは実質的に等しい必要がある。
【0004】
従来の典型的なレーザにおいて、レーザ媒質は光ポンプ源を用いてポンプされる場合がある。しかし、PRFを上げるとパルス毎のレーザエネルギーは低下し(例えば、パルス間のポンプ時間が減少するため)、一方でPRFを上げるとレーザパルス幅は増加する(例えば、ポンプ時間が減少した結果、レーザ媒質のレージングゲインが低下するため)。これらの課題は、特にQ−スイッチ固体レーザにおいて顕著である。
【0005】
上述のように、多くのレーザアプリケーションはレーザパルスを様々なPRFで用いる。アプリケーションによっては、異なるPRFの下で、実質的に一定なパルスエネルギーおよびパルス幅を維持することが望ましい。例えば、シリコン上の薄膜フィルムを切除する場合においては、レーザパルスエネルギーが適切でないと切除が不完全になり、レーザエネルギーが多すぎると不動態化構造または集積回路基板に許容できないダメージを与える可能性がある。
【0006】
レーザ動作を確実に許容可能なプロセスウインドウ(例えば、ピークパワー、パルスエネルギー、パルス幅についての規定のパルスパラメータ、その他のパラメータ)内に収めるため、様々なアプローチが取られてきた。例えば、本願出願人に特許されている米国特許第4,337,442号、発明の名称「FIRST LASER PULSE AMPLITUDE MODULATION」は、レーザポンピング電流を制御することによるレーザパルス振幅制御の方法を記述している。
【0007】
Sun等に発行され、本願出願人に特許されている米国特許第6,947,454号、発明の名称「LASER PULSE PICKING EMPLOYING CONTROLLED AOM LOADING」は、使用されていないレーザパルスを音響光学変調器(AOM)のようなパルスピッキング装置でブロックすることにより、安定化レーザパルスをランダム間隔で提供し、レーザ動作を一定PRFに維持する方法を記述している。
【0008】
米国特許第5,226,051号、発明の名称「LASER PUMP CONTROL FOR OUTPUT POWER STABILIZATION」は、単純な「ステップ型」関数に基づき、ポンプダイオードを介して電流を提供することにより、パルスエネルギーを均等化しようと試みている。このアプローチでは、レーザ媒質は第1ポンプ期間の間は第1一定ポンプレベルでポンプされ、第2ポンプ期間の間は第1ポンプ期間に続いてより低い第2一定レベルでポンプされる。この技術は、PRFが比較的低いレーザアプリケーションにおいては動作する。しかし、2つの一定ポンピング電流のみを使用するので、パルス均等化は不十分である。そのため、この種のシステムは所望のパルス均等化を提供できず、より高いPRFで動作できない可能性がある。
【0009】
図1は、従来のレーザポンピングシステムのタイミング図を示す。同図には、トリガ信号101、電流源から供給されるポンピング電流信号120、レーザ媒質内に蓄えられているエネルギーに対応するグラフ140、およびレーザ出力パルス162、164を示すグラフ160が含まれる。
【0010】
トリガ信号101は、レーザパルス162、164を生成するレーザ共振器でQ−スイッチを動作させるために用いられる。Q−スイッチレーザパルス162、164を生成するため、レーザ媒質は電流または電力源によって駆動される光ポンプ源によってエネルギーを与えられる。ポンプ源は、例えばレーザダイオード、ダイオードバーまたはダイオードバースタック、その他当該分野で知られているポンプ源を備えることができる。レーザ媒質は、ネオジウム添加イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Nd:YAG)、ネオジウム添加イットリウム・フッ化リチウム(Nd:YLF)、ネオジウム添加イットリウム・バナデート(Nd:YVO)、その他の当該分野で用いられている固体レーザ媒質を含むが、これらに限られるものではない。
【0011】
トリガ信号101は方形波トリガ102、104を含み、方形波トリガ102、104は、立ち上がり(立ち下がり)エッジによって、Q−スイッチの動作とレーザパルス162、164の生成を開始する。ポンプコントローラは、トリガ信号102、104に応答し、電流駆動または電力駆動ポンプ源に、実質的に方形のポンピング電流信号120によって表されるステップ関数に基づき、レーザ媒質をポンプさせる。
【0012】
ポンピング電流信号120は、標準ポンプレベルlでポンプ期間tにわたってポンプ源に供給される。標準ポンプレベルlは、当該レーザアプリケーションが用いるPRF、パルスエネルギーレベル、パルス幅に基づいて定められる。ポンプ期間tの後、ポンプ源に供給されるポンピング電流信号120は、より低い維持ポンプレベルlまで急激にスイッチングされる。実施形態によっては、維持ポンプレベルlは、レーザ媒質内に蓄積されているエネルギーを所望のまたは均等化されたレベル(例えば、均等化されたレーザパルスを生成するために均等化されたエネルギー)に維持するように選択される。標準ポンプレベルlと維持ポンプレベルlはともに、実質的に一定または平坦である。
【0013】
グラフ140は、レーザ媒質内に蓄積されているエネルギー量を、ポンピング電流信号120およびトリガ信号101についての時間の関数として示す。ポンプ期間tの間、レーザ媒質内に蓄積されるエネルギーは、レーザ媒質がポンピング電流信号120を用いて標準レベルlでポンプされるにともなって増加する。この増加は、グラフ140の区間142に示されている。ポンプ期間tの後、ポンピング電流信号120は、維持ポンプレベルlまで急激に低下し、これによりレーザ媒質内に蓄積されているエネルギーはエネルギーレベル144で横這いになる。レーザ媒質内に蓄積されているエネルギーは、Q−スイッチがトリガ信号101に応じてレーザパルスを出力させるときに放出される(符号146に示す)。エネルギーレベル144は、特定のレーザ加工アプリケーションに応じて、結果として得られるレーザパルスが許容可能なパワーとパルス幅を有するように選択される。使用されるQ−スイッチは、アプリケーションとレーザの設計に応じて、電気光学Q−スイッチまたは音響光学Q−スイッチであってもよい。
【0014】
グラフ160は、トリガ101、ポンピング電流信号120、蓄積エネルギーを表すグラフ140に関連する、レーザパルス162、164の出力を示す。レーザパルス162、164に対応する個々の時刻では、Q−スイッチはレーザ媒質にレーザパルスエネルギーを放射させる。これにより、蓄積エネルギーを表すグラフ140に示すように、レーザ媒質内に蓄積されているエネルギーはレーザパルス162、164としてレーザ媒質から放出される。レーザパルス162、164の出力に続いて、レーザ媒質は標準ポンプレベルlで改めてポンプ期間tにわたってレーザ媒質をポンプし、次に維持ポンプレベルlでポンプすることによって再びエネルギーを与えられる。
【0015】
ポンピング期間tの後に発射するレーザパルスについては、蓄積エネルギーは均等化されたレベルにあり、したがってレーザパルスは均等化される(例えば、PRFが1/tより小さい限りは)。レーザがポンピング期間tより短い間隔で発射される場合、レーザパルスが出力される時点で、レーザ媒質はエネルギーレベルを均等化するために十分なエネルギーを与えられていない。これにより、レーザパルスは実質的にパルスエネルギーが小さくなり、および/または意図したよりも長いパルス幅となる可能性がある。従来のレーザは、均等化されたレーザパルスを高PRFで提供することができない。これは、標準ポンプレベルlが実質的に一定であるという特性により、レーザ媒質が所望の蓄積エネルギーを蓄えるために用いられるポンプ期間tが長くなるからである。維持ポンプレベルlも実質的に一定値である。レーザ設計、使用物質、生産過程などの詳細部分が様々に異なることに起因して、所望PRF範囲内のパルス均等化効果が、十分ではない場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
レーザシステム内のピークパワー、エネルギーおよびレーザパルス幅を均等化するシステムおよび方法は、実際のテスト済みのレーザ性能に基づき、ポンピング電流または電力を制御する。1実施形態において、一連のレーザパルスを均等化する方法は、レーザが複数の異なるパルス繰り返し周波数で出力されたとき、パルス均等化ポンピング曲線を1以上の被観測レーザパルスパラメータに基づいて定めるステップを有する。パルス均等化ポンピング曲線は、異なるパルス繰り返し周波数における1以上のレーザパルスパラメータを実質的に均等化するように構成される。上記方法はまた、個々のターゲットを加工する一連のレーザパルスを生成するステップを有する。一連のレーザパルスのなかの個々のレーザパルスについて、上記方法は、ポンプ源を第1ポンピングレベルからピークポンピングレベルに駆動するステップ、パルス均等化曲線に基づきポンプ源をピークポンピングレベルから第1ポンピングレベルまで駆動するステップ、レーザを出力して実質的に均等化された1以上のレーザパルスパラメータを有する特定のレーザパルスを生成するステップ、を有する。
【0017】
他の実施形態において、周期的、ランダム、または擬似ランダムなパルス繰り返し周波数で出力される一連のレーザパルスを均等化するためのレーザは、レーザ媒質、レーザ媒質をポンプするためのポンプ源、ポンプ源と通信可能に連結されたポンプコントローラを備える。ポンプコントローラは、ポンプ源を、第1期間において第1ポンピングレベルからピークポンピングレベルに駆動し、第2期間においてパルス均等化ポンピング曲線に基づきピークポンピングレベルから第1ポンピングレベルに駆動するように構成されている。パルス均等化ポンピング曲線は、異なるパルス繰り返し周波数において1以上のレーザパルスパラメータを実質的に均等化するように構成されている。
【0018】
他の実施形態において、一連のレーザパルスを均等化する方法は、ポンプ源のピークポンピングレベルを定めるステップ、異なるパルス繰り返し周波数における1以上のレーザパルスパラメータを実質的に均等化するように構成されたパルス均等化ポンピング曲線を定めるステップ、第1期間においてポンプ源を第1ポンピングレベルからピークポンピングレベルに駆動するステップ、を有する。上記方法はまた、第2期間において選択されたパルス均等化ポンピング曲線に基づきポンプ源をピークポンピングレベルから第1ポンピングレベルに駆動するステップを有する。
【0019】
さらなる側面と利点は、添付する図面を参照する以下の実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来のレーザポンピングシステムのタイミング図を示す。図1には、トリガ信号、電流源から供給される2ステップの一定ポンピング電流信号、レーザ媒質内に蓄えられているエネルギーに対応するグラフ、およびレーザ出力パルスを示すグラフが含まれる。
【図2】トリガ信号、ポンピング電流信号、レーザ媒質内に蓄えられているエネルギーに対応するグラフ、およびレーザ出力パルスを示すグラフの1実施形態に基づくタイミング図を示す。
【図3】1実施形態に基づくレーザシステム300のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここに開示する実施形態は、レーザポンピング電流または電力を、実際のテスト済みレーザシステム性能に基づき制御することにより、レーザシステムにおけるレーザパルスのピークパワー、パルスエネルギー、パルス幅を均等化する。1実施形態に基づくレーザポンピングの間、レーザポンピング制御システムは、最初にレーザ媒質を維持ポンピングレベルからピークポンピングレベルにポンプする。その後、コントローラはパルス均等化ポンピング曲線に基づきポンプ源にレーザ媒質をポンプさせる。パルス均等化ポンピング曲線は、実際のテスト済みのレーザシステム性能に基づき、選択および/または改善することができる。パルス均等化ポンピング曲線は、ピークポンピングレベルから維持ポンピングレベルまで降下してもよい。
【0022】
特定のレーザシステムのピークポンピングレベルは、レーザシステムのポンピング装置の動作定格、レーザシステムのレーザ媒質の特性、および特定のレーザ動作(例えば、パルスパワー、最大PRF、および/またはレーザ加工の間に用いられるパルス幅)に基づき定めることができる。さらに、または他の実施形態において、特定のレーザシステムのピークポンピングレベルは、テストによって定め、および/または改善することができる。ポンピング電流上昇レートは、ポンピング装置の定格値によって定めることができる。1実施形態において、維持ポンピングレベルは、ピークポンピングレベルの約20%から約90%の間の範囲とすることができる。
【0023】
最初にレーザ媒質を維持ポンピングレベルからピークポンピングレベルにポンピングした後、制御プログラムは、パルス均等化ポンピング曲線に基づきレーザ媒質のポンピングを継続する。パルス均等化ポンピング曲線は、レーザパラメータの実際のテストに基づき定め、および/または改善し、最適なパルス均等化結果を得ることができる。1実施形態において、パルス均等化ポンピング曲線は、レーザを所望のPRF上限で動作させ、レーザパルスピークパワー、パルスエネルギー、および/またはパルス幅を測定し、これら測定したパラメータが所望の値範囲に収まっているかを判定することによって定められる。1以上の測定したパラメータが所望の値範囲に収まっていない場合、レーザは所望の性能を発揮できない場合がある。この場合、レーザ動作はより低いPRFに変更され、ポンピング曲線の降下曲線は、レーザパルスピークパワー、パルスエネルギー、および/またはパルス幅が上限PRFにおいて測定されたものと実質的に同一となるように、ピーク値から調整される。この過程は、ポンピング電流均等化ポンピング曲線を完成するために必要になる最低PRFを含む、複数の異なるPRFについて繰り返される。パルス均等化ポンピング曲線は、特定のレーザ設計に依拠して、実質的に線形に減少する曲線(例えば、ピーク値から減少する)、実質的に指数的に減少する曲線、パラメトリックに減少する曲線、またはその他任意の曲線もしくは関数であってもよい。
【0024】
図2は、トリガ信号201、ポンピング電流信号220、レーザ媒質内に蓄えられているエネルギーに対応するグラフ240、およびレーザ出力パルス262、264を示すグラフ260の1実施形態に基づくタイミング図を示す。
【0025】
トリガ201は、レーザパルス262、264の生成を引き起こすために用いられる。トリガ201は、方形波トリガ信号202、204を含むことができる。方形波トリガ信号202、204は、レーザQスイッチ駆動回路を動作させ、対応するレーザパルス262、264をそれぞれ生成する。上述のように、トリガ201のトリガ信号202、204は、通常のPRFまたはランダムおよび/または擬似ランダムPRFで生成することができる。
【0026】
ポンプコントローラは、グラフ220に基づいてポンプ源を駆動する。ポンプコントローラは初めに、第1期間tの間、ポンプ源にレーザ媒質を第1ポンピングレベルまたは維持ポンピングレベルlから第2ポンピングレベルまたはピークポンピングレベルlまでポンプさせることができる。上述のように、ピークポンピングレベルlとポンピング電流上昇レートは、ポンプ源の動作定格(例えば、ポンプ源が供給することができる最大電流または電力)、レーザ媒質の特性(例えば、レーザ媒質が損傷または過熱することなく受け取ることのできる電流または電力の量)、および/または特定のレーザ動作に基づいていてもよい。さらに、または他の実施形態において、レーザシステム、ポンピング装置、レーザ媒質、およびポンピングコントローラの実際のテスト、並びに所望の性能要件によって、ピークポンピングレベルlを定め、および/または改善することができる。
【0027】
ピークポンピングレベルlに到達した後、コントローラはパルス均等化ポンピング曲線224に基づきポンプ源を駆動することができる。パルス均等化ポンピング曲線224は、第2期間tの間、ピークポンピングレベルlから維持ポンピングレベルlに降下してもよい。図1に示すように、第2期間tは、レーザ動作PRFによっては、実質的に第1期間tより大きいか、または同等であってもよい。
【0028】
パルス均等化ポンピング曲線224は、ピークポンピングレベルlから維持ポンピングレベルlに降下する曲線(図1のポンピング電流信号120に示す急激な非連続ステップ関数とは対照的に)であってもよい。パルス均等化ポンピング曲線224を用いてレーザ媒質をポンプ源でポンピングすることにより、ポンプ源および/またはレーザ媒質に対する損傷リスクを減じることができる。また、パルス均等化ポンピング曲線224はテスト済みレーザ性能に基づき定められるので、改善された、または理想的なレーザパルス均等化を提供することができる。パルス均等化ポンピング曲線224を用いることにより、レーザシステムをより高いPRFで、パルスを十分に均等化させた上で、動作させることもできる。
【0029】
パルス均等化ポンピング曲線224は、線形に減少する曲線であってもよいし、実質的に指数的に減少する曲線(例えば図2に示すように)であってもよいし、パラメトリックに減少する曲線であってもよいし、その他種類の曲線であってもよい。様々な曲線形状を、ポンプ源の特性、レーザ媒質、特定のレーザ動作に基づいて選択することができる。上述のように、様々な曲線形状および/またはパルス均等化ポンピング曲線224の勾配パラメータは、レーザシステムの実際のテストに基づき評価し、および/または比較することができる。パルス均等化ポンピング曲線224は、ピークポンピングレベルlから維持ポンピングレベルlに降下してもよい。パルス均等化ポンピング曲線224は、ピークポンピングレベルlと第1維持レベルlの間で単調降下してもよいし、しなくてもよい。図2には示していないが、実施形態によっては、パルス均等化ポンピング曲線224は維持ポンピングレベルlよりも下に降下し続けてもよい。
【0030】
上述のように、維持ポンピングレベルlからピークポンピングレベルlへの上昇は、第1期間tにおいて発生する。パルス均等化ポンピング曲線224は、第2期間tにおいて、ピークポンピングレベルlから維持ポンピングレベルlへ降下する。PRFによっては、第2期間tは実質的に第1期間tよりも長くてもよい。パルス均等化ポンピング曲線224は、均等化されたレーザパルスを、約0Hz〜約1/(第1期間t)Hzの範囲のPRFで提供するように構成されている。1実施形態においては、パルス均等化ポンピング曲線224は、均等化されたレーザパルスを約20kHzのPRFで提供する。しかし当業者は、特定のレーザによっては、その他多数の最大PRF値も可能であることを理解するであろう。
【0031】
図2は、パルス均等化ポンピング曲線224がピークポンピングレベルlに到達した後即座に降下する様子を示しているが、パルス均等化ポンピング曲線224は、維持ポンピングレベルlまで降下する前に、ある程度の期間ピークポンピングレベルlに留まることもできる。パルス均等化ポンピング曲線224がピークポンピングレベルlに留まる時間は、特定のレーザ動作のために用いられる所望のレーザパルスエネルギーレベルに依拠する。
【0032】
グラフ240は、レーザシステムのレーザ媒質内に蓄積されるエネルギー量を、時間の関数として示す。ポンプ源が電流または電力をピークポンピングレベルlで供給するのにともない、レーザ媒質内に蓄積されるエネルギーは増加する。この増加は、グラフ240の区間242で示されている。その後、ポンプ源がパルス均等化ポンピング曲線224に基づき駆動されるのにともない、蓄積エネルギー240は実質的に一定のレベル244に到達し、維持される。蓄積エネルギー244は、許容範囲内のピークパワー、パルスエネルギー、および/またはパルス幅を有する、個々のレーザパルス262、264の生成に対応する。パルス均等化ポンピング曲線224は、レーザ媒質内に蓄積されているエネルギーを、レーザパルス262、264がそれぞれ出力されるまで、実質的に一定のパルスエネルギーレベル244に維持させることができる。レーザパルス262、264が出力されると、レーザ媒質内に蓄積されているエネルギーは、グラフ240の区間246に示すように急激に消費される。
【0033】
初めにポンプ源を駆動してレーザ媒質をピーク値lでポンピングすることにより、およびその後のパルス均等化ポンピング曲線224に基づき、従来のシステムよりも速く一貫的にレーザ媒質にエネルギーを与えることができる。そのため、レーザシステムは同様のパルス262、264(例えば、特定の仕様範囲に準じたパルス)を従来のシステムよりも高いPRFで出力することができる。例えば、再び図1を参照して、レーザ媒質が許容可能なパワーレベルに到達するために要する時間は、ポンピング期間tとして示されている。説明のため、このポンピング期間tを図2のグラフ240上に複写している。図2に示すように、レーザ物質をチャージするためのエネルギー付与期間tは、従来システムにおいてレーザ物質をチャージするために用いられるポンピング期間tよりも実質的に短い。そのため、本明細書で開示するようにポンプされたレーザは、均等化されたパルス出力をもって、単純な非連続方形波(図1のポンピング電流信号120に示す)を用いてポンプされる従来のレーザよりも高いPRFで動作することができる。また、パルス均等化ポンピング曲線224はレーザシステムの実際のテストに基づいて定められるので、レーザは、所望のPRF範囲内で、より高い精度をもって均等化されたレーザパルスを提供することができる可能性が高まる。
【0034】
図3は、1実施形態に基づくレーザシステム300のブロック図である。レーザシステム300は、熱交換器312内に包まれたレーザ媒質310、レーザ出力314を制御するQ−スイッチ330、レーザ媒質310をポンプするポンプ源322(レーザのその他の構成要素は示していない)、ポンプ源322を駆動する電流または電力源320、トリガ340、メモリ352を有し、および/または接続されたコントローラ350を備える。
【0035】
上述のように、レーザ媒質310は、Nd:YAGロッド、またはその他任意の当該分野で知られているレーザ媒質を備えていてもよい。レーザ媒質310は、熱交換器312によって取り付けられ、および/または封入される。熱交換器312は、パッシブ冷却および/またはアクティブ冷却を提供する(例えば、冷却液を循環させ、または熱電冷却によって)。
【0036】
電流および/または電力源320は、ポンプ源322を駆動する。ポンプ源322は、レーザ媒質310にエネルギーを与える。ポンプ源322は、レーザダイオード、ダイオードバーもしくはダイオードバースタック、またはその他任意の当該分野で知られているポンピング機構を備えていてもよい。
【0037】
Q−スイッチ330は、レーザ共振器(図示せず)内に挿入されている。Q−スイッチ330は、例えば、音響光学もしくは電気光学スイッチまたはその他任意の当該分野で知られているスイッチング機構を備えていてもよい。Q−スイッチ330は、出力314を介したレーザ媒質310のレーザパルス出力を制御する。
【0038】
トリガ340は、1以上の制御信号を生成し、レーザシステム300に1以上のレーザパルスを出力させることができる。そのため、トリガ340は、Q−スイッチ330とポンピングコントローラ350に通信可能に連結されている。トリガ340は、Q−スイッチ330にレーザパルスを出力314から出力させるための1以上の信号を生成する。また、トリガ340はポンピングコントローラ350と通信可能に連結されており、レーザパルス出力を準備している際に、コントローラ350にレーザ媒質310へエネルギーを供給させる。コントローラ350は、パルスが出力されるまで、パルス均等化ポンピング曲線に基づき、電流/電力源320に、ポンプ源322を第1ポンピングレベルまたは維持ポンピングレベルから第2ポンピングレベルまたはピークポンピングレベルへ駆動させ、ポンプ源322をピークポンピングレベルから維持ポンピングレベルに駆動させる。パルスが出力されると、その過程は繰り返される(例えば、コントローラ350は、パルス均等化ポンピング曲線に基づき、電流/電力源320に、連続的にポンプ源322をピークポンピングレベルへ駆動させ、または維持ポンピングレベルで駆動する)。
【0039】
コントローラ350は、メモリ装置352を備え、および/または通信可能に連結されていてもよい。メモリ装置352は、特定のレーザに関連付けられた、維持ポンピングレベル、ピークポンピングレベル、パルス均等化ポンピング曲線を記憶する。コントローラ350は、これら値をメモリ装置352から読み取り、パルス均等化動作に用いるように構成することができる。
【0040】
当業者にとって、上記実施形態の詳細部分について、本発明の趣旨から逸脱することなく多くの変更をなし得ることが理解されよう。したがって本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的、ランダム、または擬似ランダムなパルス繰り返し周波数で出力される一連のレーザパルスを、ポンプ源によってエネルギーを与えられるレーザ媒質を備えるレーザによって均等化する方法であって、
前記レーザが複数の異なるパルス繰り返し周波数で出力されたときの1以上の被観察レーザパルスパラメータに基づきパルス均等化ポンピング曲線を定めるステップであって、前記パルス均等化ポンピング曲線は、前記異なるパルス繰り返し周波数において1以上の前記レーザパルスパラメータを実質的に均等化するように構成されている、ステップと、
一連のレーザパルスを生成するステップと、
を有し、
各前記一連のレーザパルスは、
前記ポンプ源を第1ポンピングレベルからピークポンピングレベルへ駆動するステップと、
前記パルス均等化ポンピング曲線に基づき、前記ポンプ源を前記ピークポンピングレベルから前記第1ポンピングレベルへ駆動するステップと、
前記レーザを出力して実質的に均等化された1以上の前記レーザパルスパラメータを有する特定のレーザパルスを生成するステップと、
によって生成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記1以上のレーザパルスパラメータは、レーザパルスピークパワー、レーザパルスエネルギー、レーザパルス幅を含むグループから選択されている、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポンプ源は、第1期間において、前記第1ポンピングレベルから前記ピークピンピングレベルに駆動され、
前記ポンプ源は、第2期間において、選択された前記パルス均等化ポンピング曲線に基づき、前記ピークポンピングレベルから前記第1ポンピングレベルに駆動され、
前記第2期間は、実質的に前記第1期間より長い、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記異なるパルス繰り返し周波数は、約0Hzと約1/(前記第1期間)Hzの間の範囲内にあり、その全体にわたって前記パルス均等化ポンピング曲線が1以上の前記レーザパルスパラメータを実質的に均等化するように構成されている、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記パルス均等化ポンピング曲線は、前記第1ポンピングレベルに降下する前に第3期間にわたって前記ピークポンピングレベルを維持し、前記第3期間は所望のレーザパルスエネルギーレベルに基づいている、
請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記パルス均等化ポンピング曲線は、前記ピークポンピングレベルから前記第1ポンピングレベルへ線形に減少する曲線である、
請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記パルス均等化ポンピング曲線は、前記ピークポンピングレベルから前記第1ポンピングレベルへ実質的に指数的に減少する曲線である、
請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記パルス均等化ポンピング曲線は、前記ピークポンピングレベルから前記第1ポンピングレベルへパラメトリックに減少する曲線である、
請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ピークポンピングレベルは、前記ポンプ源の動作定格に基づいている、
請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記第1ポンピングレベルは、前記ピークポンピングレベルの約20%と約90%の間の範囲内にある、
請求項1記載の方法。
【請求項11】
周期的、ランダム、または擬似ランダムなパルス繰り返し周波数で出力される一連のレーザパルスを均等化するレーザシステムであって、
レーザ媒質と、
前記レーザ媒質をポンプするポンプ源と、
前記ポンプ源に通信可能に連結されているポンプコントローラと、
を備え、
前記ポンプコントローラは、
第1期間において、前記ポンプ源を第1ポンピングレベルからピークポンピングレベルへ駆動し、第2期間において、パルス均等化ポンピング曲線に基づき、前記ピークポンピングレベルから前記第1ポンピングレベルへ駆動するように構成されており、
前記パルス均等化ポンピング曲線は、
異なるパルス繰り返し周波数において1以上のレーザパルスパラメータを実質的に均等化するように構成されている
ことを特徴とするレーザシステム。
【請求項12】
前記第2期間は、実質的に前記第1期間より長い、
請求項11記載のレーザシステム。
【請求項13】
前記所定のパルス均等化は、前記レーザシステムが複数の異なるパルス繰り返し周波数で駆動されたときの1以上の被観察レーザパルスパラメータに基づいており、
前記パルス均等化ポンピング曲線は、前記異なるパルス繰り返し周波数における1以上の前記レーザパルスパラメータを実質的に均等化するように構成されている、
請求項11記載のレーザシステム。
【請求項14】
前記1以上のレーザパルスパラメータは、レーザパルスピークパワー、レーザパルスエネルギー、レーザパルス幅を含むグループから選択されている、
請求項13記載のレーザシステム。
【請求項15】
前記パルス均等化ポンピング曲線は、線形に減少する曲線である、
請求項11記載のレーザシステム。
【請求項16】
前記パルス均等化ポンピング曲線は、実質的に指数的に減少する曲線である、
請求項11記載のレーザシステム。
【請求項17】
前記パルス均等化ポンピング曲線は、パラメトリックに減少する曲線である、
請求項11記載のレーザシステム。
【請求項18】
前記ポンプ源は、1位上のレーザダイオード、ダイオードバー、ダイオードバースタックを含むグループから選択されている、
請求項11記載のレーザシステム。
【請求項19】
前記レーザ媒質は、ネオジウム添加イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Nd:YAG)、ネオジウム添加イットリウム・フッ化リチウム(Nd:YLF)、ネオジウム添加イットリウム・バナデート(Nd:YVO)を含むグループから選択されている、
請求項11記載のレーザシステム。
【請求項20】
前記ポンプ源の前記ピークポンピングレベルは、前記ポンプ源の動作定格に基づいている、
請求項11記載のレーザシステム。
【請求項21】
周期的、ランダム、または擬似ランダムなパルス繰り返し周波数で出力される一連のレーザパルスを、ポンプ源に連結されたレーザ媒質を備えるレーザシステムによって均等化する方法であって、
前記ポンプ源のピークポンピングレベルを判定するステップと、
異なるパルス繰り返し周波数における1以上のレーザパルスを実質的に均等化するように構成されたパルス均等化ポンピング曲線を定めるステップと、
第1期間において、前記ポンプ源を第1ポンピングレベルから前記ピークポンピングレベルへ駆動するステップと、
第2期間において、前記選択されたパルス均等化ポンピング曲線に基づき、前記ポンプ源を前記ピークポンピングレベルから前記第1ポンピングレベルへ駆動するステップと、
を有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−515870(P2011−515870A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501937(P2011−501937)
【出願日】平成21年3月20日(2009.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/037824
【国際公開番号】WO2009/120603
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(593141632)エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド (161)
【Fターム(参考)】