説明

レーザブレードに潤滑コーティングを形成する方法およびそのようなレーザブレードならびにレーザブレードコーティングシステム

レーザブレードコーティングシステムおよびレーザブレード(38)の潤滑コーティングを形成する方法は、(a)所定の温度(T)でのレーザブレード(38)の提供と、(b)ポリマのコロイド分散(14)のタンクの提供と、(c)タンク(12)と流体連通したスプレーガン(22)の提供と、(f)ミスト(24)へコロイド分散(14)を噴霧するための第1ガス流の制御と、(g)ステップ(f)とは無関係な、ミスト(24)を形成するための第2ガス流を独立した制御と、(h)レーザブレード(38)へのミスト(24)の搬送と、(i)レーザブレード(38)上に付加されたポリマの焼結と、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザブレードに潤滑コーティングを形成する方法およびシステム、ならびにこれによって得られたレーザブレードに関する。
【0002】
特に、本発明はレーザブレードに潤滑コーティングを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
レーザブレードは非常に独特の切断器具であり、それは切断器具の間ではその非常に独特の機能によるものであって、皮膚から突出した毛を切断するものである。そのような切断動作は他の切断器具の動作とは極めて異なっており、レーザブレードが長期にわたっていくつかの固有の機能を備えるように設計されるように導かれている。
【0004】
例えば、特許文献1において、レーザブレードエッジに潤滑ポリマコーティングを施すことが提案されている。この文献において、昇華、電気泳動、スプレー、またはディッピングのような堆積方法が一般的な方法において挙げられている。それ以来、わずかな進歩がレーザブレードの潤滑コーティング堆積方法に関して公開された。しかしながら、いずれの堆積方法も、高出力を可能にする産業上利用可能な方法として、およびそのような潤滑コーティングの要求された特性を提供するものとして、コーティングの堆積に関して適切ではなく、堆積の間の複雑な形状の基板への良好な密着、シェービングの間の良好な潤滑効果、レーザブレードの寿命中の基板への良好な密着、およびシェービングの快適さの改良等の少なくとも1つを含んでいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許出願公開第1 299 519号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、それらの欠点を軽減することをとりわけ目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、レーザブレード上に潤滑コーティングを形成する方法が提供され、この方法は、
(a) 本体および本体からテーパ加工された切断エッジを備えた、少なくとも1つのレーザブレードを提供するステップと、
(b) ポリマのコロイド分散のタンクを提供するステップであって、コロイド分散は2重量%よりも少ないポリマ粒子を含んだものであるステップと、
(c) 前記タンクと流体連通したスプレーガンを提供するステップであって、スプレーガンはブレードスプレー領域に向けられた端部を備えたものであるステップと、
(d) レーザブレードを所定の温度でブレードスプレー領域に配置するステップと、
(e) タンクからスプレーガンの端部へ、且つブレードスプレー領域内に配置されたレーザブレードの方向に、コロイド分散を流すステップと、
(f) 第1ガス流を制御して、スプレーガンの端部とレーザブレードとの間に配置された拡散領域内のミストへとコロイド分散を噴霧するステップと、
(g) 第2ガス流を独立して制御し、ステップ(f)とは無関係にミストの特性を制御するステップと、
(h) 拡散領域からブレードスプレー領域内に配置されたレーザブレードへとミストを搬送するステップであって、レーザブレードは所定の温度となっており、水がミストから蒸発するステップと、
(i) レーザブレード上に付加されたポリマを焼結するステップと、
を含んでいる。
【0008】
ポリマの焼結は、堆積したポリマ粒子を所定の温度、溶融温度よりも高い温度に、レーザブレード上にフィルムを形成することが可能な特定の時間の間加熱することを意味している。
【0009】
出願人によって実施された内部テストは、この方法によって得られたレーザブレードが満足な性質を備えていることを示していた。
【0010】
いくつかの実施形態において、以下に定義された1つ以上の特徴も備えてもよい。
− ステップ(d)は、搬送経路に沿って入口ステーションからブレードスプレー領域を通って出口ステーションまで、レーザブレードを連続的に移動させるステップを含んでいる。
− ステップ(d)は、搬送方向に沿った搬送経路に沿って、レーザブレードを含んだレーザブレードのスタックを連続的に移動させるステップを含み、各レーザブレードの本体は搬送方向に直交した、平行な第1および第2側面を備え、レーザブレードの第1側面は、隣接したレーザブレードの第2側面に面している。
− ステップ(a)は、140℃〜180℃の間の温度においてレーザブレードを提供することを含んでいる。
− レーザブレードは、少なくともステップ(d)とステップ(h)との間において、130℃よりも高い温度となっている。
− ステップ(b)は、約45,000の分子量および/または0.2μmよりも小さい一次粒子サイズのポリマのコロイド分散のタンクを提供することを含んでいる。
− ステップ(c)は、コロイド分散の噴霧を制御するために形成されたエアキャップを備えたスプレーガンの端部を提供することを含んでいる。
− 以下のパラメータの少なくとも1つが以下の範囲で設定される。
− 第1ガス流の圧力が0bar〜6barの間。
− 第2ガス流の圧力が0bar〜6barの間。
− エアキャップ端部からレーザブレードの切断エッジまでの距離が5cm〜40cmの間。
− コロイド分散内のポリマの濃度が2重量%よりも小さい。
− 少なくともステップ(h)の間に、レーザブレードには静電界が付加されない。
【0011】
本発明は上述の工程によって得られたレーザブレードにも関係している。
【0012】
本発明はレーザブレードコーティングシステムにも関係しており、このシステムは、
(A) 本体および本体からテーパ加工された切断エッジを備えた少なくとも1つのレーザブレードと、
(B) ポリマのコロイド分散のタンクであって、前記コロイド分散は2重量%よりも少ないポリマ粒子を含んでいるタンクと、
(C) タンクと流体連通したスプレーガンであって、スプレーガンはブレードスプレー領域に向けられた端部を備えたスプレーガンと、
(D) レーザブレードがブレードスプレー領域において所定の温度で配置されるように、レーザブレードの温度を設定するために形成された温度設定システムと、
(E) タンクからスプレーガンの端部へ、且つレーザブレードの方向に、コロイド分散を流すために形成されたポンプと、
(F) 第1ガス流を制御して、スプレーガンの端部とレーザブレードとの間に配置された拡散領域内のミストへとコロイド分散を噴霧するために形成された第1制御システムと、
(G) 第2ガス流を独立して制御し、ミストを生成するために形成された第2制御システムであって、ミストはこれによって拡散領域からブレードへと搬送され、ブレードは所定の温度となっており、水がミストから蒸発するように形成された第2制御システムと、
(H) 付加されたポリマを焼結するために形成された焼結ステーションと、
を具備している。
【0013】
本発明の他の特性および利点は、以下に示された2つの実施形態からすぐに明確になるだろう。それらの実施形態は非限定的な例示であり、添付図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のレーザブレードコーティングシステムの概略図である。
【図2】シングルエッジレーザブレードとともに図1のレーザブレードコーティングシステムの一部の正面図を示している。
【図3】コロイド分散の粒子サイズ分布を示した図である。
【図4】図1のレーザブレードコーティングシステムのIV部の詳細を示した図である。
【図5A】別の実施形態によるレーザブレードコーティングシステムの概略図である。
【図5B】別の実施形態によるレーザブレードコーティングシステムの概略図である。
【図6】ダブルエッジレーザブレードとともに図1のレーザブレードコーティングシステムの一部の正面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
異なった図において、同一の参照符号は同様のまたは類似の要素を指定している。
【0016】
図1に示されたように、レーザブレードコーティングシステム10は、ポリマのコロイド分散14を含んだタンク12を具備している。
【0017】
処理の主な到達点は、PTFE粒子をレーザブレードのエッジに供給して、(これ以降に詳細に記載された)以下の焼結行程の後に、レーザブレードのエッジに潤滑コーティングの均一なフィルムを形成することを可能にすることであるので、コロイド分散14はポリマ、好適にポリ四フッ化エチレン(PTFE)を含み、2重量%よりも少ないポリマ粒子を含んでいる。
【0018】
図2によりよく示されているように、レーザブレード38は本体39と、この本体から徐々に細くなった切断エッジ39Aと、を備え、レーザブレードコーティングシステム10は切断エッジ39Aのコーティングが可能である。より詳細には、コーティングシステム10は2つのテーパ側部41と、各切断エッジ39Aを形成し、それらを接続した先端40(切断エッジ39の切断自由端)と、をコーティングすることが可能である。
【0019】
一例として、コロイド分散14はKrytox(登録商標)の製品LW 1200から得られ、その製品は1999年から知られたものであり、約45,000の分子量および/または0.2μm、より好適には0.2μmよりも小さい一次粒子サイズのポリマを約20重量%含んでいる。コロイド分散は脱イオン化水によってさらに希釈され、最終的に2重量%よりも薄いポリマ濃度となる。
【0020】
コロイド分散14内の粒子サイズ分布を示した図3に示されたように、粒径は0.1μmよりも大きい。(粒子の50%がそのサイズ以下の)径分布の中央値に対応したD(v,0.5)値は、0.184μmに等しい。さらに、D(v,0.1)値に示されたように、粒子の10%は0.137μm以下の径であり、D(v,0.9)値に示されたように、90%の粒子は0.257μm以下の径である。
【0021】
タンク12内に設けられた撹拌器16のおかげで、分散の均質な分配を備えるために、コロイド分散14は好適に定常的に緩やかに撹拌されている。
【0022】
タンク12は、ポンプに接続された空気源18にパイプ19を介して接続されており、空気源はタンク12内を加圧して、コロイド分散はこれによってタンク12に接続されたパイプ20内において加圧流となる。コロイド分散14は好適に低圧流Fとともに加圧され、例えば流れFは2MPa〜20MPaの間の圧力である。空気圧制御器14Aは、タンク12内に供給される空気圧を制御し且つパイプ20内のコロイド分散14の流れを調節するために、パイプ19に設けられることが可能である。
【0023】
さらに、スプレーガン22はタンク12と流体連通状態にあり、より具体的には、パイプ20は一端においてタンク12に接続され、他端においてスプレーガン22に接続されている。スプレーガン22は好適に「低圧スプレーガン」であり、空気圧および流体圧を使用して、これ以降に詳述されたコーティングの噴霧化を達成している。スプレーガン22はブレードスプレー領域25に向けられた端部22Bを備えている。
【0024】
図1に示され且つ図4の詳細図に最もよく見られているように、第1ガス流、より具体的には噴霧化空気A1は、スプレーガン22に供給されて流体出口22Aにある加圧されたコロイド分散14を霧状にする。言い換えると、加圧されたコロイド分散14は一種のミスト24内にある極めて細かい粒子に縮小される。ミスト24は分散領域24´内の流体出口22Aから伸び、分散領域はスプレーガンの端部22Bと、ブレードスプレー領域25内に配置されたレーザブレードと、の間に配置されている。
【0025】
噴霧化空気A1は分離したポンプによって、またはパイプ28によってスプレーガン22に接続された同一の空気源18から生成され得る。例えば、噴霧化空気A1の圧力は6barよりも小さく(含む)、好適に0.5bar〜3.0barの間である。
【0026】
パイプ28に設けられた空気制御器26を具備した第1制御システムは、噴霧化空気A1がパイプ28内を循環することを制御し、これによってきり上に処理し、より具体的には噴霧化処理することに順応している。
【0027】
図1に示されたように、空気制御器26はスプレーガン22と空気源18との間に接続されている。第1制御システムはスプレーガン22に設けられたエアキャップ21をさらに具備しており、図4に最もよく示されている。エアキャップ21の選択にしたがって、霧状化処理は異なった特性(ミスト内の粒子のサイズおよび分配等)を備える。
【0028】
エアキャップ21を通じて循環する第2ガス流A2は、ミスト24の特性を制御するためにさらに生成される。より具体的には、形状および/またはエアキャップ21に設けられた穴21Aにしたがって、噴霧化される材料(噴霧化空気A1とともに加圧されたコロイド分散14の噴霧化後に得られた微細粒子)の形状および分配は、ミスト24内において異なっている。
【0029】
ここで再度、第2ガス流A2は分離したポンプによって、またはパイプ30によってスプレーガン22に接続された同一の空気源18から生成され得る。例えば、第2ガス流の圧力は6barよりも小さく(含む)、好適に0.2bar〜1.5barの間に含まれる。
【0030】

さらに、第2ガス流A2を独立して制御することに順応した第2制御システム32がパイプ30に設けられている。
【0031】
スプレーパターンの形状も、エアキャップ21に設けられた穴21A共同して、供給されたこの第2ガス流A2によって制御されている。
【0032】
したがって、同一の空気源18が使用された場合でさえ、パターン形状および噴霧化は、分離した圧力制御器を備えた空気供給源を備えており、スプレーの品質は各制御システムを備えた空気源の圧力を規制するように制御されることが可能である。コーティングされる材料にしたがって、オペレータは各制御器において空気圧を設定し、タンク12内の圧力はスプレーガン22の開放によってスプレーを初期化する。ガントリガ23は、スプレーガン22を制御するためにさらに設けられることが可能である。
【0033】
したがって、ミスト24は拡散領域24´からブレードスプレー領域25へ搬送され、レーザブレードは後に詳述する所定の温度となっており、コロイド溶液に初期的に含まれた水がミスト24から蒸発する。レーザブレードのエッジのカバーを保証するために、スプレーガン22の端部に対応したエアキャップ端部22Bとレーザブレード38の切断端部39Aとの間の距離D22は、先端および選択されたエアキャップに依存している。例えば、距離D22は5cm〜40cmの間とすることが可能である。より具体的には、距離D22は、エアキャップ端部22Bからレーザブレード38の先端40まで17cm〜22cmとするのがよい。
【0034】
第1制御システム26および第2制御システム32は共通の(類似した)空気制御器とすることが可能であるか、またはスプレー工程の制御を改良するために、高精度デジタル制御器26´,32´とすることが可能である。さらに、ポンプおよび空気圧制御器14Aの代わりに、ギアポンプ34も、加圧コロイド分散14の流れの制御を改良するためにパイプ20に接続され、それは図5Aに示されている。パイプ20に接続されたそのようなギアポンプ34には、図5Bに示されたように、補完的にポンプおよび空気圧制御器14Aも設け、スプレーセッションの間、流れの濃度信頼性を改良することが可能である。
【0035】
レーザブレード上への加圧コロイド分散14の堆積を改良するために、1つまたは複数の吸引ポイントが搬送経路Pに沿って、特にガン22の正面のコンベア36の反対側に設けられる。
【0036】
レーザブレードコーティングシステム10におけるPTFE蓄積を回避するために、パイプシステムのクリーニング工程が実行され得る。この点において、コロイド分散14は純イソプロピルアルコールに置き換えられ、スプレーの同一のステップが実行される。これは、スプレーセッションの間のシステムにおけるPTFE蓄積を回避するために必要である。スプレーモードにおいて、オペレータは各制御器において空気圧およびタンク12内の圧力を固定し、ガントリガ23でスプレーガン22を開放することにより、スプレーを初期化する。イソプロピルアルコールを収容した、第2タンクを備えた分離したシステムが設けられ得る。
【0037】
レーザブレードコーティングシステム10は、搬送経路Pに沿って入口ステーションE1からブレードスプレー領域25を通って出口ステーションE2まで、レーザブレード38を連続的に移動するためのコンベア36を具備している。
【0038】
図1、2、5および6を参照すると、レーザブレード38は搬送方向Dに沿った搬送経路Pに沿って移動するスタック42に載置されることが可能であり、各レーザブレード38の本体39は搬送方向に直交して伸びた第1側面38Aと第2側面38Bとを備え、レーザブレード38iの第1側面38Aは隣接したレーザブレード38iiの第2側面38Bに面している。
【0039】
スプレーガン22の正面に到達したとき、切断エッジ39A、より詳細には先端40を1つのブレードの本体39に接続した2つの各テーパ側部41は、略同時にコーティングされる。同じ処理が1つのスタックに含まれたすべてのブレードに実行される。
【0040】
ブレード38が図6に示されたようなダブルエッジの場合、第2レーザブレードコーティングシステム10が、搬送経路Pに沿って各ブレードの2つの側部をコーティングするために設けられ得る。この場合、第2スプレーガン22はコンベアの反対側に配置される。第2スプレーガンは第1スプレーガンの直接対向して配置されるか、または第1スプレーガンと千鳥に配置され得る。
【0041】
スプレー後のレーザブレード上の水の蒸発およびPTFE粒子の供給を可能にするために、レーザブレード38は入口ステーションE1に入る前に予熱される。したがって、温度設定システムはレーザブレードの温度を設定するために適合され、レーザブレードは予熱された温度でブレードスプレー領域に配置される。より詳細には、温度設定システムは好適に入口ステーションE1近傍に設けられた加熱手段44を具備し、これは搬送経路Pに沿って、特にブレードスプレー領域25内において加熱手段44から出た後の加熱されたレーザブレード38を維持するためである。加熱されたときにレーザブレードが酸化されることを防止するために、加熱は還元ガス、例えば窒素の下でも実行され得る。
【0042】
ミスト24内に含まれた水を蒸発することを保証するために、レーザブレード38は入口ステーションE1において好適に140℃〜180℃の間の温度とされており、レーザブレードは搬送経路Pに沿って130℃よりも高い温度とされている。より詳細には、レーザブレードはブレードスプレー領域25において145℃〜150℃の間の予熱温度Tとされている。したがって、コンベア36の速度によって、レーザブレード38は好適に130℃〜180℃の間、より詳細には160℃〜165℃の間に予熱される。
【0043】
ミスト24内に含まれたPTFEをコーティングされた後、レーザブレードは付加されたポリマを焼結するために形成された焼結ステーション46へとさらに搬送される。焼結ステーションは好適に直線加熱炉46であり、PTFEの焼結を可能にしている。レーザブレード38へのPTFE粒子の焼結は、本発明の方法の最終ステップである。温度プロファイルは、PTFEの正確な焼結とシェービングにおける最良の性能の達成との両方のためにカスタマイズされている。この焼結ステップは窒素雰囲気下で好適に実行され、あらゆる腐食現象を回避している。
【0044】
スプレーを実行した後、スタック42は定速供給のコンベアに載置される。スタック42は炉46の出口において加熱され、且つ最終的に収集される。予熱およびスプレーステップが継続している間、焼結ステップは実効されない。実際に、スプレーと焼結との間の短い時間はスプレー後のスタック42を冷却するために充てられ得るが、焼結もスプレーから連続して実行され得る。この先の段階において、温度プロファイルは予熱、加熱および焼結の間に、特にブレードの寸法が1つのシリーズから別のシリーズに変化する場合に、良好な結果を得るために実行されなければならない。
【0045】
さらに、レーザブレード38上で計測された温度プロファイルは、ブレード重量の差によって変化し得る。原則的にPTFEが約325℃において溶融するので、レーザブレードは325℃よりも高く、例えば約365℃に加熱される。
【0046】
各ステップの間、特に拡散領域24´からブレードスプレー領域25に配置されたレーザブレード38へのミスとの搬送の間、レーザブレード38には静電界が付加されない。
【0047】
上述の通りのレーザブレードコーティングシステム10とともに、本発明によるレーザブレードへの潤滑コーティングを形成する方法は以下のステップを含んでいる。
− レーザブレード38iの第1面38Aが隣接したレーザブレード38iiの第2面38Bに面するようにレーザブレード38をスタック42内に載置し、それらを加熱手段44内において140℃〜180℃の間の温度に予熱するステップ。
− 搬送方向Dに沿って、入口ステーションE1からブレードスプレー領域25を通って出口ステーションE2まで搬送経路Pに沿ってスタック42を連続的に移動させ、スタック42がブレードスプレー領域25に到達したときに、ブレードの温度が130℃よりも高い所定の温度Tとなるステップ。
− タンク12からスプレーガン22の端部22Bまで、およびブレードスプレー領域25内に載置されたレーザブレード38の方向にコロイド分散14を流すステップ。
− 第1ガス流を0bar〜6barの圧力の間で制御して、スプレーガン22の端部22Bとレーザブレード38との間に配置された拡散領域24´内のミスト24にコロイド分散14を噴霧するステップ。
− 第2ガス流を0bar〜6barの圧力の間で独立して制御して、ミスト24を形成するステップ。
− エアキャップ21を最終的に適合させて、コロイド分散14の噴霧を制御するステップ。
− エアキャップ端部22Bからレーザブレード38の切断エッジ40までの距離を、5cm〜40cmの間で最終的に適合させるステップ。
− ミスト24を拡散領域24´からブレードスプレー領域25内に配置されたレーザブレード38へと搬送するステップであって、レーザブレード38は130℃よりも高い所定の温度Tとなり、最後のミストが高温のレーザブレード38に接触したときに、コロイド分散14内に初期的に含まれたほとんどすべての水がミスト24から蒸発するステップ。
− レーザブレード38上に付加されたポリマを溶融、より詳細には焼結するステップ。
【0048】
予熱、スプレー、および再加熱のこれらのステップの後、得られたレーザブレード38にはその切断エッジ39A(両方のテーパ側部41および先端40を含む)に潤滑コーティングが設けられる。
【符号の説明】
【0049】
10 ・・・レーザブレードコーティングシステム、 12 ・・・タンク、 14 ・・・コロイド分散、 16 ・・・撹拌器、 18 ・・・空気源、 19,20,28,30 ・・・パイプ、 21 ・・・エアキャップ、 22 ・・・スプレーガン、 23 ・・・ガントリガ、 24 ・・・ミスト、 25 ・・・ブレードスプレー領域、 26 ・・・空気制御器(第1制御システム)、 32 ・・・第2制御システム、 34 ・・・ギアポンプ、 36 ・・・コンベア、 38 ・・・レーザブレード、 39 ・・・本体、 39A ・・・切断エッジ、 40 ・・・先端、 41 ・・・テーパ側部、 42 ・・・スタック、 44 ・・・加熱手段、 46 ・・・焼結ステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザブレード(38)に潤滑コーティングを形成するための方法であって、該方法は、
(a) 本体(39)および該本体(39)からテーパ加工された切断エッジ(39A)を備えた少なくとも1つのレーザブレード(38)を提供するステップと、
(b) ポリマのコロイド分散(14)のタンク(12)を提供するステップであって、前記コロイド分散(14)は2重量%よりも少ないポリマ粒子を含んだものであるステップと、
(c) 前記タンク(12)と流体連通したスプレーガン(22)を提供するステップであって、前記スプレーガン(22)はブレードスプレー領域(25)に向けられた端部(22B)を備えたものであるステップと、
(d) 前記レーザブレード(38)を所定の温度(T)で前記ブレードスプレー領域(25)に配置するステップと、
(e) 前記タンク(12)から前記スプレーガン(22)の端部(22B)へ、且つ前記ブレードスプレー領域(25)内に配置された前記レーザブレード(38)の方向に、前記コロイド分散(14)を流すステップと、
(f) 第1ガス流を制御して、前記スプレーガン(22)の端部(22B)と前記レーザブレード(38)との間に配置された拡散領域(24´)内のミスト(24)内へと前記コロイド分散(14)を噴霧するステップと、
(g) 第2ガス流を独立して制御し、前記ステップ(f)とは無関係に前記ミスト(24)の特性を制御するステップと、
(h) 前記拡散領域(24´)から前記ブレードスプレー領域(25)内に配置されたレーザブレード(38)へと前記ミスト(24)を搬送するステップであって、前記レーザブレード(38)は所定の温度となっており、水が前記ミストから蒸発するステップと、
(i) 前記レーザブレード(38)上に付加された前記ポリマを焼結するステップと、
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップ(d)は、搬送経路(P)に沿って入口ステーション(E1)から前記ブレードスプレー領域(25)を通って出口ステーション(E2)まで、前記レーザブレード(38)を連続的に移動させるステップを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(d)は、搬送方向(D)に沿った前記搬送経路(P)に沿って、前記レーザブレード(38)を含んだレーザブレード(38)のスタック(42)を連続的に移動させるステップを含み、前記各レーザブレード(38)の本体(39)は前記搬送方向(D)に直交した、平行な第1および第2側面(38A,38B)を備え、レーザブレード(38i)の第1側面は、隣接したレーザブレード(38ii)の第2側面に面していることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)は、140℃〜180℃の間の温度において前記レーザブレードを提供することを含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザブレード(38)は、少なくともステップ(d)とステップ(h)との間において、130℃よりも高い温度となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)は、約45,000の分子量および/または0.2μmよりも小さい一次粒子サイズのポリマのコロイド分散(14)のタンクを提供することを含んでいることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(c)は、前記コロイド分散(14)の噴霧を制御するために形成されたエアキャップ(21)を備えた前記スプレーガン(22)の端部(22B)を提供することを含んでいることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
以下のパラメータの少なくとも1つが以下の範囲で設定される方法であって、前記パラメータおよびその範囲は、
− 前記第1ガス流の圧力が0bar〜6barの間、
− 前記第2ガス流の圧力が0bar〜6barの間、
− エアキャップ端部(22B)から前記レーザブレード(38)の切断エッジまでの距離(D22)が5cm〜40cmの間、および
− 前記コロイド分散(14)内のポリマの濃度が2重量%よりも小さい、
であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも前記ステップ(h)の間に、前記レーザブレード(38)には静電界が付加されないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の行程によって得られたレーザブレード。
【請求項11】
レーザブレードコーティングシステムであって、該システムは、
(A) 本体(39)および該本体(39)からテーパ加工された切断エッジ(39A)を備えた少なくとも1つのレーザブレード(38)と、
(B) ポリマのコロイド分散(14)のタンク(12)であって、前記コロイド分散(14)は2重量%よりも少ないポリマ粒子を含んでいるタンク(12)と、
(C) 前記タンク(12)と流体連通したスプレーガン(22)であって、前記スプレーガン(22)はブレードスプレー領域(25)に向けられた端部(22B)を備えたスプレーガン(22)と、
(D) 前記レーザブレード(38)が前記ブレードスプレー領域(25)において所定の温度(T)で配置されるように、前記レーザブレード(38)の温度を設定するために形成された温度設定システム(44)と、
(E) 前記タンク(12)から前記スプレーガン(22)の端部(22B)へ、且つ前記レーザブレード(38)の方向に、前記コロイド分散(14)を流すために形成された空気源(18)と、
(F) 第1ガス流を制御して、前記スプレーガン(22)の端部(22B)と前記レーザブレード(38)との間に配置された拡散領域(24´)内のミスト(24)へと前記コロイド分散(14)を噴霧するために形成された第1制御システム(26;26´)と、
(G) 第2ガス流を独立して制御し、前記ミスト(24)を生成するために形成された第2制御システム(32;32´)であって、前記ミスト(24)はこれによって前記拡散領域(24´)から前記ブレードスプレー領域(25)内に配置されたレーザブレード(38)へと搬送され、前記レーザブレード(38)は所定の温度となっており、水が前記ミストから蒸発するように形成された第2制御システム(32;32´)と、
(H) 付加されたポリマを焼結するために形成された焼結ステーション(46)と、
を具備していることを特徴とするレーザブレードコーティングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−508131(P2013−508131A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534550(P2012−534550)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063936
【国際公開番号】WO2011/047727
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(507020417)ビック・バイオレクス・エス・エー (16)
【Fターム(参考)】