説明

レーザプロジェクタ装置及びそれを備えた携帯電話端末

【課題】侵入物体が有るかどうかを監視するための専用光源を不要とし、装置の小型化、低消費電力化を可能とするレーザプロジェクタ装置を提供する。
【解決手段】画像信号に応じてレーザ光を走査することにより画像を投射する走査部106と、投射された画像を含む領域の光量を検知する受光部107と、レーザ光の一部205を受光する投射側受光部110と、前記投射側受光部110からの出力信号の交流成分Xと受光部からの出力信号の交流成分Yとを信号処理する監視制御部108と、を備え、監視制御部108は交流成分Xと交流成分Yとの相関に差異が発生した後、走査部106から出射されるレーザ光の出力を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源にレーザを用いて画像の表示を行う投射型画像表示装置(レーザプロジェクタ装置)及びそれを備えた携帯電話端末に関する。
【背景技術】
【0002】
投射型画像表示装置として、一般にいわゆるプロジェクタが知られている。このプロジェクタの中には、映像信号による変調のしやすさ、色再現性の良さ、明るさを十分確保できる等の利点から、光源にレーザ光を用いて、レーザビームを走査することにより画像を表示する方法がある。
【0003】
レーザプロジェクタは主に、光源である半導体レーザ、透過型液晶式・反射型液晶式・ライトスイッチ式等のライトバルブ、及びMEMS等の走査部より構成され、上記部品の小型化に伴い、小型のレーザプロジェクタの開発が進められている。
【0004】
しかしながら、レーザ光は非常に小さい発光点から発光し、かつ発散角が小さいコヒーレントな平行光であるため、その光を直接覗き込むと目の網膜上に小さな点として集中し、そのレーザ光の出力が大きいと目の網膜を痛めてしまう可能性がある。このため、レーザ光の照射領域に、侵入物体が有るかどうかを監視し、安全対策をとることが必要となる。
【0005】
そのような対策の一つとして、レーザ光の照射領域に、侵入物体が有るかどうかを監視するために、映像用の光源とは別に、主に赤外光等の監視用の専用光源を設け、その反射光を監視する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図9に従来のレーザプロジェクタ装置の概略構成ブロック図を示す。
【0007】
なお、図中点線は情報の流れを、太実線はレーザ光の光路を、細実線は監視光及びその反射光を示す。また、レーザ光は本来RGBの3色分が必要であるが、簡略のため1つに略している。
【0008】
まず、画像情報101が制御部102に入力され、制御部102はレーザ光源103を駆動、ライトバルブ105を画像に合わせて操作、走査部106の駆動を開始する。
【0009】
レーザ光源103で発振したレーザ光201は、照明光学系104を通過し整形された後、ライトバルブ105に入射、画像情報101に応じて通過又は一部遮断される。ライトバルブ105を通過したレーザ光202は、走査部106へ入射し、所望の画像となるよう走査される。走査され投射されたレーザ光203は、スクリーン112で乱反射し、画像として認識される。
【0010】
なお、RGBのレーザ光源103の出力を、画像情報101に合わせて調整することにより、ライトバルブ105がない構成とすることも可能である。
【0011】
一方、上記レーザ光源103から走査部106の光学系とは、別に設置された発光部111より、主に赤外光等の人体に安全な監視用の光207が、投射されたレーザ光203と概ね同じ方向に、ある一定の出力で投射される。人体に安全な監視用の光207は、スクリーン112により反射し、受光部107に導かれる。
【0012】
受光部107の検知光出力は、監視制御部108で、単純に検知光出力の増減の有無が判断され、これにより、レーザ光203の照射領域に侵入物体が有るかどうかが判断される。侵入物体があった場合、監視制御部108から制御部102へ情報が送られ、レーザ光源103の通電停止や、ライトバルブ105の操作により、レーザ光203の出力の低減、又は、レーザ光203の光路の遮断等の安全対策をとる。
【特許文献1】特開2005−31526号公報(段落[0026]〜[0034]、図1、2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、この従来の方法では、監視専用の別光源(発光部111)が必要であるため、装置の小型化、低消費電力化に課題があった。
【0014】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、侵入物体が有るかどうかを監視するための専用光源を不要とし、装置の小型化、低消費電力化を可能とするレーザプロジェクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明では、常に自らが発するレーザ光の投射光出力と、投射された画像を含む領域の光量の変化をモニタするようにした。
【0016】
画像をスクリーン等の安定した領域に投射している場合、レーザ光以外の光である背景光量と、レーザ光のスクリーンでの反射率は一定であり、モニタしているレーザ光の投射光出力の変化と、モニタしている投射された画像を含む領域の光量の変化との間には、近似的にある相関が成り立つ。
【0017】
ここで、スクリーンの前に人が侵入する、又は、装置の位置がずれて予定外の部分に画像を投射する等した場合、レーザ光以外の光である背景光量、及び又は、レーザ光が投射される部分の反射率が変化する。この変化により、レーザ光の投射光出力の変化と、投射された画像を含む領域の光量の変化との間の相関が、先程まで成立していた相関からずれる。このずれが設定した条件を満たした場合、危険と判断し、安全対策をとる。
【0018】
つまり、従来、レーザ光は画像情報の担い手としてのみ作用し、別に赤外光等の監視光が必要であったが、本発明では、画像情報の担い手としてのレーザ光の反射光を信号処理することにより、監視情報としても使用するものである。
【0019】
具体的には、本発明のレーザプロジェクタ装置は、画像信号に応じてレーザ光を走査することにより画像を投射する走査部と、投射された画像を含む領域の光量を検知する受光部と、前記レーザ光の一部を受光する投射側受光部と、前記投射側受光部からの出力信号の交流成分と前記受光部からの出力信号の交流成分とを信号処理する監視制御部と、を備え、前記監視制御部は前記投射側受光部からの出力信号の交流成分と前記受光部からの出力信号の交流成分との相関が変化した場合、走査部から出射されるレーザ光を制御することを特徴としている。
【0020】
また、本発明のレーザプロジェクタ装置は、画像信号に応じてレーザ光を走査することにより画像を投射する走査部と、投射された画像を含む領域の光量を検知する受光部と、前記画像信号の明るさ信号の交流成分と前記受光部からの出力信号の交流成分とを信号処理する監視制御部と、を備え、前記監視制御部は前記画像信号の明るさ信号の交流成分と前記受光部からの出力信号の交流成分との相関が変化した場合、走査部から出射されるレーザ光を制御することを特徴としている。
【0021】
ここで、走査部から出射されるレーザ光の制御の仕方としては、例えば、前記相関に差異が発生した後、走査部から出射されるレーザ光の出力を低減し、さらに、所定の時間で前記相関が保持された場合、前記レーザ光の出力を増加させることが考えられる。これによれば、レーザ光の出力の低減後に安全が確保された場合に、元の出力に自動復帰させることできる。
【0022】
また、前記走査部の走査開始後、所定の時間内で前記相関が保持された場合、走査部から出射されるレーザ光の出力を増加させるようにしてもよい。これによれば、プロジェクタの動作開始直後の安全対策としても応用できる。
【0023】
なお、画素毎の処理では十分なS/N比が確保できないため、前記監視制御部が信号処理する2つの出力信号の交流成分は、各々一定時間の積分した値を使用することが望ましい。
【0024】
上記構成のレーザプロジェクタ装置を携帯電話端末に搭載する場合、携帯電話端末のカメラモジュールを上記受光部として使用することができる。これにより、装置の部品共用化が可能で、小型化に更に貢献できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、侵入物体が有るかどうかを監視するための専用光源が不要となり、装置の小型化、低消費電力化を可能とし、装置のコストを削減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0027】
<第1の実施形態>
図1に本発明の第1の実施形態のレーザプロジェクタ装置の概略構成ブロック図を示す。
【0028】
なお、図中点線は情報の流れを、太実線はレーザ光の光路を、細実線はレーザ光の反射光を示す。また、レーザ光は本来RGBの3色分が必要であるが、簡略のため1つに略している。
【0029】
まず、画像情報101が制御部102に入力され、制御部102はレーザ光源103、ライトバルブ105走査部106の駆動を開始する。レーザ光源103で発振したレーザ光201は、照明光学系104を通過し整形された後、ライトバルブ105に入射、画像情報101に応じて通過又は一部遮断される。
【0030】
ライトバルブ105を通過したレーザ光202は、ビームスプリッタ109でその一部が投射側受光部110へ導かれ、一部が走査部106へ入射し、所望の画像となるよう走査される。なお、レーザ光202をビームスプリッタ109で分割する際、偏光ビームスプリッタ等を用いて、投射側受光部110へのレーザ光205の比率を下げ、走査部106方向へのレーザ光204の比率を可能な限り上げることが望ましい。
【0031】
なお、RGBのレーザ光源103の出力を、画像情報101に合わせて調整することにより、ライトバルブ105がない構成とすることも可能で、本発明でも同様の構成をとることができる。
【0032】
上記走査部106より投射されたレーザ光203は、スクリーン112で乱反射し画像として認識されると同時に、一部が受光部107に導かれる。なお、受光部107の位置及び開口部は、レーザ光203により投射された画像を含む領域の光量を検知できるよう調整されている。また、受光部107の位置及び開口部は、レーザ光203が直接入射しないように調整されている。
【0033】
上記投射側受光部110の検知光出力、及び、受光部107の検知光出力は、監視制御部108で信号処理され、レーザ光203の照射領域に侵入物体が有るかどうかが判断される。
【0034】
レーザ光203の投射光出力と、上記投射側受光部110の検知光出力の関係を下記式(1)とする。
Z=mX ・・・・・・(1)
ここで、
Z:レーザ光203の投射光出力
X:上記投射側受光部110の検知光出力
m:ビームスプリッタ109の分光比により決定する定数
【0035】
この時、上記投射側受光部110の検知光出力と、上記受光部107の検知光出力との間には、近似的に下記式(2)の相関が成り立つ。
Y=a0Z+b0=a0mX+b0 ・・・・・・(2)
ここで、
Y:投射された画像を含む領域の光量を検知する上記受光部107の検知光出力
Z:レーザ光203の投射光出力
X:上記投射側受光部110の検知光出力
0:レーザ光203が投射されるスクリーン112の反射率と上記受光部107への結合効率により決まる値(以下、反射効率と称する)
0:レーザを駆動していない時の上記受光部107の検知光出力(以下、背景光量と称する)
【0036】
上記式(2)において、スクリーンの反射率112が100%の場合でもa0は100%にはならず、光学設計により決まる固有の結合効率が加味された、あるパーセンテージになる。ここでは、この値を反射効率a0としている。
【0037】
本発明のレーザプロジェクタ装置は、常に自らが発するレーザ光203の投射光出力Zを投射側受光部110の検知光出力Xとして、また、投射された画像を含む領域の光量の変化を上記受光部107の検知光出力Yとしてモニタしている。画像をスクリーン等の安定した領域に投射している場合、レーザ光203以外の光である背景光量b0と、レーザ光のスクリーン112での反射効率a0は一定である。
【0038】
図2に、監視制御部108の具体的構成例を示すブロック図を示す。投射側受光部110の出力は、減衰器301に入力され、受光部107の出力と概同等となるよう減衰される。減衰器301の出力と、受光部107の出力は、各々AC成分分離器302,303に入力され、交流成分のみ抽出される。AC成分分離器302,303の出力は、各々A/D変換器304,305に入力され、変換された出力信号を比較器306で処理する。必要に応じて積分器307で一定時間の積分をとることにより、上記投射側受光部110の検知光出力と上記受光部107の検知光出力との間に、所望の相関信号を得る。
【0039】
ここで、光の出力の「交流成分」とは時間によって変化する/させる成分をいい、変化しない/させない成分を「直流成分」とする。例えば、黒画面=0、灰色画面=0.5、白画面=1とした時、黒→白→黒→白→黒と投影した場合、光の出力は交流成分だけであるが、灰→白→灰→白→灰と投影した場合、常に0.5の出力が出ており、これが光の出力の直流成分にあたる。
【0040】
相関信号において正常と判断する範囲は、光学系及び積算時間等の条件に合わせて、最適な値を規定する。また、例えば布製のスクリーンに投射している場合など、ユーザの使用状況によって、許容範囲が変化する場合も考えられるため、ユーザがこの許容範囲を設定できるような機能を持たせても良い。
【0041】
図3〜図5に本発明の監視制御部108での信号処理についての概念図を示す。なお図3から図5の縦軸は光出力、横軸は時間軸を示している。
【0042】
図3は画像をスクリーン等の安定した領域に投射している場合の信号処理についての概念図である。投射光出力Zが図3(a)のように変化する画像を表示した際を考える。投射光出力Zの内、スクリーン112で反射して、上記受光部107に戻る光量は、図3(b)に示すようにa0Zとなる。一方、背景光量は、図3(c)に示すようにb0で一定である。この時の上記受光部107の検知光出力Yは、図3(d)に示すように、a0Zとのb0の和となる。
【0043】
次に投射光出力Zの1/mとなる投射側受光部110の検知光出力Xの交流成分を図3(e)に、受光部107の検知光出力Yの交流成分を図3(f)に示す。受光部107の検知光出力Yの交流成分は、投射側受光部110の検知光出力Xの交流成分と概ね比例するという相関がある。
【0044】
ここで、スクリーン112の前に人が侵入する等、レーザ光203の照射領域に侵入物体が有った場合、又は、装置の位置がずれて予定外の部分に画像を投射した場合、レーザ光203以外の光である背景光量b0、又は、レーザ光203が投射される部分の反射効率a0が変化する。
【0045】
図4に背景光量b0が変化した場合の信号処理についての概念図を示す。投射光出力Zが図4(a)のように変化する画像を表示した際、投射光出力Zの内、スクリーン112で反射して、上記受光部107に戻る光量は、図4(b)に示すようにa0Zとなる。一方、背景光量は、図4(c)に示すようにb0から別の値b1に変化する。このときの上記受光部107の検知光出力Yは、図4(d)に示すように、a0Zと、b0又はb1の和となる。次に投射光出力Zの1/mとなる投射側受光部110の検知光出力Xの交流成分を図4(e)に、受光部107の検知光出力Yの交流成分を図4(f)に示す。受光部107の検知光出力Yの交流成分は、投射側受光部110の検知光出力Xの交流成分と比例せず、相関からずれる。
【0046】
次に図5にレーザ光203のスクリーン112での反射効率a0が変化した場合の信号処理についての概念図を示す。
【0047】
投射光出力Zが図5(a)の様に変化する画像を表示した際、投射光出力Zの内、スクリーン112で反射して、上記受光部107に戻る光量は、図5(b)に示すようにa0Zから別の値a1Zに変化する。一方、背景光量は図5(c)に示すようにb0で一定である。この時の上記受光部107の検知光出力Yは、図5(d)に示すように、a0Z又はa1Zと、b0の和となる。次に投射光出力Zの1/mとなる投射側受光部110の検知光出力Xの交流成分を図5(e)に、受光部107の検知光出力Yの交流成分を図5(f)に示す。受光部107の検知光出力Yの交流成分は、投射側受光部110の検知光出力Xの交流成分と比例せず、相関からずれる。
【0048】
なお、実際には、レーザ光203の照射領域に侵入物体が有った場合、図4で示した背景光量b0の変化と、図5で示した反射効率a0の変化は同時に起こるが、ここでは簡略のため、各々別個の概念図としている。
【0049】
上記の通り、レーザ光203の照射領域に侵入物体が有った場合、投射側受光部110の検知光出力Xの交流成分の変化と、受光部107の検知光出力Yの交流成分の変化との間の相関係数が、侵入物体が無い場合に成立していた相関(上記式(2))からずれる。
【0050】
このずれが設定した条件を満たした場合、危険と判断し下記の安全対策をとる。監視制御部108から制御部102へ情報が送られ、制御部102は、レーザ光源103の通電停止や、ライトバルブ105によりレーザ光203の出力の低減、又は、レーザ光203の光路の遮断等の安全対策をとる。
【0051】
安全対策として、レーザ光203の出力の低減を選択した場合は、更に下記のように自動復帰の機能をもたせることができる。
【0052】
レーザ光203の照射領域に侵入物体が有った場合、背景光量はb0からb1に変化し、反射効率はa0からa1に変化する。この結果、投射側受光部110の検知光出力Xと受光部107の検知光出力Yの交流成分の相関ずれる。ここで一旦、レーザ光203の出力を人体にとって安全な出力迄低減するが、その後も、投射側受光部110の検知光出力Xと受光部107の検知光出力Yの交流成分の相関係数の算出を継続する。新しい背景光量b1及び新しい反射率a1に変化が無く、新たな相関係数が設定された一定時間続いた場合、環境が安定し、安全であると判断し、レーザ光203の光出力を規定の元の光出力に戻す。
【0053】
上記の自動復帰の機能は、プロジェクタの動作開始直後の安全対策としても応用できる。すなわち、プロジェクタの動作開始直後は、レーザ光203の出力を人体にとって安全な出力とし、投射側受光部110の検知光出力Xと受光部107の検知光出力Yの交流成分の相関係数の算出を開始する。背景光量b0及び反射率a0に変化が無く、上記相関係数が設定された一定時間続いた場合、環境が安定しており安全であると判断し、初めてレーザ光203の光出力を規定の光出力とする。
【0054】
次に、図6のフローチャートを用いて、本実施形態のレーザプロジェクタ装置の動作の一例を説明する。
【0055】
レーザプロジェクタ装置のキーなどの操作部(図示せず)から、プロジェクションが開始されると、ライトバルブ105を制御してレーザ光が通過できるよう光路を開にし(S701)、レーザ光源103を駆動する(S702)。
【0056】
投影する画像があるか否かをチェックし(S703)、画像がなければ、プロジェクション終了処理(S710)を行い、プロジェクションを終了する。ここで、プロジェクション終了処理(S710)は、レーザ光源103の通電停止、ライトバルブ105を制御してレーザ光の光路を閉じ、レーザ光を遮断する、といった処理を行う。
【0057】
投影する画像があれば、画像を投影後(S704)、監視制御部108から相関信号を取得し(S705)、相関信号に変化があるかをチェックする(S706)。S706にて、相関信号に変化がある、すなわち、相関:あり(保持)から相関:なし(差異あり)に変化した場合、安全対策処理(S707)が実行される。ここで、安全対策処理は、レーザ光源の通電を停止する、レーザ光の出力を眼に安全なレベルに低減する、あるいは、ライトバルブ105を制御してレーザ光の光路を閉じてレーザ光を遮断する、といった処理が行われる。これらの処理は、少なくとも一つが行われればよいもので、工場出荷時の既定の処理(例えば、レーザ光の出力を眼に安全なレベルに低減する)あるいは、ユーザが動作環境(人ごみの中、会議など)に応じて設定してもよい。
【0058】
安全対策処理(S707)の後、レーザプロジェクタ装置の液晶などの表示部(図示せず)に「装置が固定されてない、または、スクリーンまでの間に障害物が侵入しました。続行しますか(Yes/No)?」という旨のエラー表示を行い(S708)、「Yes」が操作されたらS702へ、「No」が操作されたらプロジェクション終了処理(S710)を行い、プロジェクションを終了する。
【0059】
次に、図7のフローチャートを用いて、本実施形態のレーザプロジェクタ装置の動作の他の例を説明する。
【0060】
レーザプロジェクタ装置のキーなどの操作部(図示せず)から、プロジェクションが開始されると、ライトバルブ105を制御してレーザ光が通過できるよう光路を開にし(S801)、レーザ光源103を眼に安全なレベルの低出力で駆動する(S802)。
【0061】
投影する画像があるか否かをチェックし(S803)、画像がなければ、プロジェクション終了処理(S814)を行い、プロジェクションを終了する。ここで、プロジェクション終了処理(S814)は、レーザ光源103の通電停止、ライトバルブ105を制御してレーザ光の光路を閉じ、レーザ光を遮断する、といった処理を行う。
【0062】
投影する画像があれば、画像を投影後(S804)、監視制御部108から相関信号を取得し(S805)、相関信号に変化があるかをチェックする(S806)。
【0063】
相関信号に変化がある、すなわち、相関:あり(保持)から相関:なし(差異あり)に変化した場合、積算時間を0に戻し(S807)、S802からの処理を継続する。
【0064】
S806にて相関信号に変化がない場合、すなわち、相関:あり(保持)の状態の、積算時間が所定時間を越えているかをチェックし(S808)、所定時間が経過していなければ、S802からの処理を継続する。
【0065】
S808にて積算時間が所定時間を越えていれば、通常出力でレーザを駆動する(S809)。ここで、通常出力とは、工場出荷時の既定の出力、あるいは、ユーザが事前に動作環境(明るい場所、暗い部屋など)に応じて設定した出力である。投影する画像があるかをチェックし(S810)、画像がなければ、プロジェクション終了処理(S814)を行い、プロジェクションを終了する。
【0066】
画像を投影(S811)後、監視制御部108から相関信号を取得し(S812)、相関信号に変化があるかをチェックする(S813)。相関信号に変化がない場合、すなわち、相関:あり(保持)の状態のままであれば、S809からの処理が行われる。
【0067】
S813にて、相関信号に変化がある、すなわち、相関:あり(保持)から相関:なし(差異あり)に変化した場合、レーザ光の出力が眼に安全なレベルとなるS802からの処理が行われる。
【0068】
<第2の実施形態>
図8に本発明の第2の実施形態のレーザプロジェクタ装置の概略構成ブロック図を示す。
【0069】
図1で示した第1の実施形態のレーザプロジェクタ装置では、投射光出力Zのモニタ用に、ビームスプリッタ109でレーザ光202の一部を投射側受光部110へ導いていたが、第2の実施形態では、図8に示すように、投射光出力Zとして、画像情報の明るさのデータを信号処理して用いている点が特徴である。
【0070】
本実施形態では、第1の実施形態と比較し、信号処理が複雑になるものの、ビームスプリッタ109及び投射側受光部110を削減することができ、装置の小型化に更に貢献できる。
【0071】
本発明の監視制御部108での信号処理については、画素毎の処理では十分なS/N比が確保できないため、例えば1画面走査毎等、ある一定時間の投射光出力Zと検知光出力Yの積分値同士を使用することが望ましい。
【0072】
以上説明した本発明のレーザプロジェクタ装置を携帯電話端末に搭載する場合、携帯電話端末のカメラモジュールを上記受光部107として使用することができる。これにより装置の部品共用化が可能で、小型化に更に貢献できる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、レーザプロジェクタ装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレーザプロジェクタ装置の概略構成ブロック図
【図2】本発明の第1の実施形態に係るレーザプロジェクタ装置の監視制御部の具体的構成ブロック図
【図3】上記監視制御部での信号処理についての概念図
【図4】上記監視制御部での信号処理についての概念図
【図5】上記監視制御部での信号処理についての概念図
【図6】本発明の第1の実施形態に係るレーザプロジェクタ装置の動作の一例のフローチャート
【図7】本発明の第1の実施形態に係るレーザプロジェクタ装置の動作の他の例のフローチャート
【図8】本発明の第2の実施形態に係るレーザプロジェクタ装置の概略構成ブロック図
【図9】従来のレーザプロジェクタ装置の概略構成ブロック図
【符号の説明】
【0075】
101 画像情報
102 制御部
103 レーザ光源
104 照明光学系
105 ライトバルブ
106 走査部
107 受光部
108 監視制御部
109 ビームスプリッタ
110 投射側受光部
111 発光部
112 スクリーン
201〜205 レーザ光
206 レーザ光のスクリーンからの反射光
207 監視用赤外光
208 監視用赤外光のスクリーンからの反射光
301 減衰器
302、303 AC成分分離器
304、305 A/D変換器
306 比較器
307 積分器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に応じてレーザ光を走査することにより画像を投射する走査部と、投射された画像を含む領域の光量を検知する受光部と、前記レーザ光の一部を受光する投射側受光部と、前記投射側受光部からの出力信号の交流成分と前記受光部からの出力信号の交流成分とを信号処理する監視制御部と、を備え、前記監視制御部は前記投射側受光部からの出力信号の交流成分と前記受光部からの出力信号の交流成分との相関が変化した場合、走査部から出射されるレーザ光を制御することを特徴とするレーザプロジェクタ装置。
【請求項2】
画像信号に応じてレーザ光を走査することにより画像を投射する走査部と、投射された画像を含む領域の光量を検知する受光部と、前記画像信号の明るさ信号の交流成分と前記受光部からの出力信号の交流成分とを信号処理する監視制御部と、を備え、前記監視制御部は前記画像信号の明るさ信号の交流成分と前記受光部からの出力信号の交流成分との相関が変化した場合、走査部から出射されるレーザ光を制御することを特徴とするレーザプロジェクタ装置。
【請求項3】
前記相関に差異が発生した後、走査部から出射されるレーザ光の出力を低減し、さらに、所定の時間で前記相関が保持された場合、前記レーザ光の出力を増加させることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザプロジェクタ装置。
【請求項4】
前記走査部の走査開始後、所定の時間内で前記相関が保持された場合、走査部から出射されるレーザ光の出力を増加させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレーザプロジェクタ装置。
【請求項5】
前記監視制御部が信号処理する2つの出力信号の交流成分は、各々一定時間の積分した値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザプロジェクタ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のレーザプロジェクタ装置を搭載する携帯電話端末であって、前記受光部は、携帯電話端末のカメラモジュールであることを特徴とする携帯電話端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−127972(P2010−127972A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299339(P2008−299339)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】