説明

レーザマーキング装置

【課題】タクトタイムが短いレーザマーキング装置を提供する。
【解決手段】レーザ光Lを出射するレーザ光源20と、レーザ光の方向を変える一対のガルバノミラー23a,23bと、ガルバノミラー23a,23bの回動及びレーザ光Lの出射を制御する制御装置26とを備えるレーザマーキング装置において、レーザ光Lの照射が必要な印字距離を変更可能に設定されるレーザ光Lを照射させた状態での同レーザ光Lの照射位置の移動速度である印字速度で除算した印字時間と、レーザ光Lの照射が不要な非印字距離をあらかじめ設定されるレーザ光Lを照射させない状態での同レーザ光Lの照射位置の移動速度である非印字速度で除算した非印字時間とを算出し、これら印字時間と非印字時間とを和算して印字必要時間を算出する演算部26bと、演算部26bが試算した印字必要時間を表示する表示器7aと、を備えるレーザマーキング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザマーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1のレーザマーキング装置には、レーザ光を一対のガルバノミラーにより屈折させて同レーザ光の照射位置を可変させるガルバノ駆動装置が設けられている。このレーザマーキング装置では、ガルバノ駆動装置を駆動させてレーザ光を走査させることにより、文字、記号、図形等を対象物へマーキングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−93416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなレーザマーキング装置では、同装置に設けられる制御部に文字、記号、図形等のマーキング情報が入力されると、実際にレーザ光を照射させてマーキングを実施する前に、レーザ光を照射しない状態で実際にガルバノ駆動装置を駆動させる疑似操作を行う。そして、この疑似操作にかかる時間を計測することにより、実際のマーキングにかかる時間を算出している。すなわち、実際にマーキングしないにもかかわらず、ガルバノ駆動装置を駆動させる必要がある。このため、疑似操作の分、ユーザがマーキング情報を入力してから対象物へのマーキングが完了するまでの時間、いわゆるタクトタイムに時間を要していた。
【0005】
また、近年では、大量の情報を対象物にマーキングする傾向にある。マーキングする情報量が増えるほど疑似操作にかかる時間が増えることから、タクトタイムが延びる傾向にある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、タクトタイムが短いレーザマーキング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、レーザ光を出射する光源と、軸を中心として回動することによりレーザ光の方向を変えるガルバノミラーと、前記ガルバノミラーの回動及び前記レーザ光の出射を外部から入力されるマーキング情報に基づいて制御する制御手段とを備え、同制御手段は、前記ガルバノミラーの制御を通じてレーザ光の照射位置を変更することにより、前記レーザ光を走査させつつ対象物に照射してマーキングを実行するレーザマーキング装置において、前記マーキング情報からレーザ光の照射が必要な印字距離を、変更可能に設定されるレーザ光を照射させた状態での同レーザ光の照射位置の移動速度である印字速度で除算した印字時間と、レーザ光の照射が不要な非印字距離を、予め設定されるレーザ光を照射させない状態での同レーザ光の照射位置の移動速度である非印字速度で除算した非印字時間とを算出し、これら印字時間と非印字時間とを和算することで求められる印字全体にかかる必要時間である印字必要時間を算出する演算手段と、前記演算手段が試算した前記印字必要時間を出力する出力手段と、を備えることを要旨とする。
【0008】
従来、印字必要時間を知るためには、一度レーザ光を照射しない状態でガルバノミラーを回動させる疑似操作を行う必要があった。その点、同構成によれば、マーキング情報に基づいて印字必要時間が試算され、その試算された時間が出力される。従って、ユーザは、疑似操作がなくとも印字必要時間を知ることができる。このため、疑似操作の分だけユーザがマーキング情報を入力してから対象物へのマーキングが完了するまでの時間、いわゆるタクトタイムが短縮される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザマーキング装置において、前記非印字速度は、前記ガルバノミラーの回動における最高速度であることを要旨とする。
同構成によれば、非印字時間が最短となる。従って、非印字速度に他の速度、すなわち最高速度未満の速度を適用した場合に比べてタクトタイムは短縮される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のレーザマーキング装置において、前記出力手段から出力された前記印字必要時間を表示する表示手段を備えることを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、ユーザは、表示手段の視認を通じて印字必要時間を認識することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のレーザマーキング装置において、前記表示手段は、前記印字必要時間を表示するとともに、印字スタートを促すための確認画面を表示することを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、表示手段の視認を通じて、ユーザは印字を許可するか否かを判断することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のうち何れか一項に記載のレーザマーキング装置において、前記制御手段へ前記マーキング情報を入力する入力手段を備え、前記演算手段は、前記マーキング情報が入力されたことを契機として前記印字必要時間の試算を開始することを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、マーキング情報を入力すれば、自動的に印字必要時間が算出され、この算出される印字必要時間を知ることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のうち何れか一項に記載のレーザマーキング装置において、前記演算手段に演算を実行する旨の指令、及び前記制御手段に印字を実行する旨の指令、並びにマーキング情報を入力する入力手段を備え、前記演算手段は、前記入力手段によって演算を実行する旨の指令が入力されたときには、印字必要時間の算出を開始し、同じく印字を実行する旨の指令が入力されたときには、印字の実行を開始することを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、ユーザは、印字必要時間の算出が必要ない場合には、当該時間の算出を行わずに制御手段を実行する旨の指令を入力し、対象物への印字を行う。この場合、印字必要時間の算出にかかる時間分のタクトタイムを短縮することができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のうち何れか一項に記載のレーザマーキング装置において、前記出力手段による印字必要時間の出力後、前記制御手段への前記マーキング情報の再設定を許可することを特徴とする。
【0016】
同構成によれば、ユーザが、試算された印字必要時間が自身の想定する時間と異なる場合に、マーキング情報を再設定することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のレーザマーキング装置において、前記制御手段に対しマーキング情報が再設定された場合、前記演算手段は再設定されたマーキング情報に基づき印字必要時間を算出することを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、ユーザは、再設定されたマーキング情報に基づいた印字必要時間を知ることができる。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のうち何れか一項に記載にレーザマーキング装置において、前記制御手段は、前記演算手段及び前記出力手段を備えることを要旨とする。
【0018】
同構成によれば、レーザマーキング装置の構成部材の点数を抑制することができる。従って、レーザマーキング装置の組み付け工数を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、タクトタイムが短いレーザマーキング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態のレーザマーキング装置についてその概略構成を示す斜視図。
【図2】同実施形態のレーザマーキング装置についてその概略構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態におけるガルバノ駆動装置を示す模式図。
【図4】同実施形態における表示器の正面図。
【図5】印字区間及び非印字区間を示すイメージ図。
【図6】同実施形態の制御装置における制御の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化したレーザマーキング装置の一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示すように、レーザマーキング装置1は、レーザ光Lを出射するコントローラ2を備えている。コントローラ2にはファイバケーブル3を介してヘッド4が接続されている。また、コントローラ2には電気ケーブル5を介してヘッド4が接続されている。さらに、コントローラ2には電気ケーブル6を介してコンソール7が接続されている。そして、レーザマーキング装置1は、載置台8に載置された対象物Wのマーキング面Wa上に所望の文字、図形、記号等(以下、文字等という)を印字する。ヘッド4の下面には、レーザ光Lが出射される窓部9が形成されている。窓部9は、対象物Wのマーキング面Waと対向している。
【0022】
図2に示すように、コントローラ2はレーザ光源20を備える。レーザ光源20から出射されたレーザ光Lは、ファイバケーブル3を介してヘッド4に送られる。図1に示すように、ヘッド4においてファイバケーブル3の一端はビームエキスパンダ収納部10に接続されている。このビームエキスパンダ収納部10には、図2に示すように、ビームエキスパンダ21が収納されている。レーザ光Lは、ファイバケーブル3からビームエキスパンダ21に送られる。
【0023】
図2に示すように、ヘッド4においてビームエキスパンダ21からのレーザ光Lの光路途中には、ビームエキスパンダ21から順に、角度の調節が可能とされた第1及び第2のガルバノミラー23a,23bと、集光レンズ24が配設されている。ビームエキスパンダ21により集光されたレーザ光Lは、第1及び第2のガルバノミラー23a,23bによって屈折し、集光レンズ24に入射する。第1及び第2のガルバノミラー23a,23bは、同じくヘッド4に設けられたボールベアリングを用いた機械式のガルバノ駆動装置(駆動手段)25により駆動される。なお、ガルバノ駆動装置25には、第1及び第2のガルバノミラー23a,23bの回転角度を検出する図示しない回転角度センサが設けられている。このガルバノ駆動装置25には、コントローラ2から図1に示す電気ケーブル5を介して第1及び第2のガルバノミラー23a,23bの角度を可変させるための電力が供給される。また、回転角度センサによって検出された回転角度は、電気ケーブル5を介してコントローラ2へ送られる。
【0024】
図3に示すように、第1のガルバノモータ34の回動軸、この回動軸を支持するボールベアリング30,31、及び第1のガルバノミラー23aの回動軸36は、a1軸上に配置されている。第1のガルバノモータ34の回動軸と回動軸36は一体回転するように接続されている。従って、第1のガルバノミラー23aは、第1のガルバノモータ34の駆動により回動する。同様に、a1軸に対してねじれの位置とされたa2軸上には、第2のガルバノモータ35の回動軸を支持するボールベアリング32,33、及び第2のガルバノミラー23bの回動軸37が配置されている。第2のガルバノモータ35の回動軸と回動軸37は一体回転するように接続されている。従って、第2のガルバノミラー23bは、第2のガルバノモータ35の駆動により回動する。各ガルバノモータ34,35により、第1及び第2のガルバノミラー23a,23bは、a1,a2軸を中心としてそれぞれ正・逆方向への回動が可能とされている。
【0025】
第1及び第2のガルバノミラー23a,23bは、ビームエキスパンダ21からのレーザ光Lを反射し、その出射方向を変更させる。具体的には、第1のガルバノミラー23aは、回動して対象物Wに向けて照射するレーザ光Lを、そのマーキング面Waの一方向(X方向、図1,3参照)に走査させる。また、第2のガルバノミラー23bは、回動して対象物Wに向けて照射するレーザ光Lを、そのマーキング面WaのX方向に対して直交する方向(Y方向、図1,3参照)に走査させる。従って、対象物Wに向けて照射するレーザ光Lは、第1及び第2のガルバノミラー23a,23bにより、対象物Wのマーキング面Waに対して、X方向及びY方向に走査される。
【0026】
このように、駆動装置25は、第1及び第2のガルバノミラー23a,23bを回動させて、レーザ光源20から出力されたレーザ光Lを走査しつつ対象物Wに照射してマーキングを行う。
【0027】
図1に示すように、コンソール7には、表示器7aと操作部7bが設けられている。操作部7bはテンキー等を備えている。ユーザは、操作部7bを通じて対象物Wに加工を行うレーザパワー及び文字等のマーキング情報の設定を行う。設定された情報は、コンソール7から電気ケーブル6を介してコントローラ2へ送られる。表示器7aは、印字後のイメージ、印字の開始及び印字必要時間の試算を開始する確認画面等を表示する。
【0028】
図2において、コントローラ2は、レーザマーキング装置1を統括的に制御する制御装置26を備えている。制御装置26は不揮発性のメモリ26aを備えている。このメモリ26aには、印字される文字等のマーキング情報が予め記憶されている。このマーキング情報には、文字等を構成する各線分の始点及び終点の座標値、及びレーザ光Lの照射により形成される線分の太さ等の情報が含まれる。
【0029】
制御装置26は、コンソール7の操作部7bと接続されている。制御装置26には、操作部7bからレーザパワーの設定値等の情報が入力される。また、制御装置26は、レーザ光源20、及び先の駆動装置25と接続されている。駆動装置25は、制御装置26により、その駆動が制御される。すなわち、第1及び第2のガルバノミラー23a,23bの回動は、制御装置26により制御される。
【0030】
制御装置26は、操作部7bによって入力されたマーキング情報に基づいてメモリ26aに記憶された必要なマーキング情報を選択する。そして、制御装置26は、この選択した情報に基づきレーザ光源20を駆動してレーザ光Lを出射させるとともに、第1及び第2のガルバノモータ34,35の駆動を制御することでレーザ光Lを2次元的に走査し、対象物Wへのマーキング面Waに文字等のマーキングを行う。
【0031】
また、メモリ26aには、レーザを照射して線分のマーキングにかかる印字速度V1と、前の線分の終点から次の線分の始点までの非印字距離L2の移動にかかる非印字速度V2とが予め記憶されている。本例においては、印字速度V1は、レーザパワー、線分の長さ(印字距離L1)、及び線分の太さと対応付けられて記憶されている。また、非印字速度V2は、ガルバノ駆動装置25に予め設定されている最高速度とされている。本例では、この最高速度、すなわち、非印字速度V2は、レーザマーキング装置1として製品とされた時点において既に設定されている。
【0032】
さらに、制御装置26は、マーキング情報に基づきマーキングにかかる時間を演算する演算部26bを備えている。本例では、制御装置26は、操作部7bを通じて演算モードが入力されたことを通じて、マーキングにかかる時間を演算する。演算モードが入力されると演算部26bは、マーキング情報から印字距離L1と非印字距離L2とを抽出する。また、演算部26bは、メモリ26aからマーキング情報に対応する印字速度V1及び非印字速度V2を読み込む。そして、印字距離L1を印字速度V1で除すことで求められる印字時間T1、及び非印字距離L2を非印字速度V2で除すことで求められる非印字時間T2、並びにこれらを合算することで求められる印字必要時間Tを算出する。印字時間T1、非印字時間T2、及び印字必要時間Tの算出式は下式(1)、(2)、(3)で表される。
【0033】

【0034】

【0035】

【0036】
次に、このように構成されたレーザマーキング装置1における印字必要時間Tの算出方法について詳細に説明する。ここでは、「A」の文字をマーキングする場合について代表して説明する。なお、「A」の文字を構成する各線分の太さは一定であるものとする。
【0037】
制御装置26は、入力されたマーキング情報を基に文字「A」のベクトルデータを生成する。ここでは、図5に示すように、文字「A」は、座標Oを始点とし座標Pを終点とする線分ベクトル101、座標Pを始点とし座標Qを終点とする線分ベクトル102、座標Qを始点とし座標Rを終点とする非線分ベクトル103、及び座標Rを始点とし座標Sを終点とする線分ベクトル104を生成する。なお、図5における各線分ベクトル及び非線分ベクトルの矢印の向きは、レーザ光Lの走査方向を示す。
【0038】
制御装置26は、演算モードが入力されると、線分ベクトル101,102,104から印字距離OP,PQ,RSを抽出し、この和を印字距離L1に代入する。印字速度V1については、操作部7bから入力された値を代入して印字時間T1を算出する。同様に非線分ベクトル103から非印字距離QRを抽出し、この値を非印字距離L2に代入する。非印字速度V2については、ガルバノ駆動装置25に予め設定されている最高速度を代入して、非印字時間T2を算出する。そして、これら算出される印字時間T1,T2を上式(3)に代入して、印字必要時間Tを算出する。
【0039】
次に、レーザマーキング装置1におけるマーキング処理を図6のフローチャートに従って説明する。当該フローチャートは制御装置26のメモリ26aに格納された制御プログラムに従って実行される。当該制御プログラムは、レーザマーキング装置1に電源が供給されている状態において、制御装置26にマーキング情報が入力が完了したことを契機として実行される。
【0040】
制御装置26は、マーキング情報が入力が完了すると(ステップS1)、入力されたマーキング情報に基づきベクトルデータを生成し(ステップS2)、その後、そのベクトルデータに基づくマーキングイメージを表示器7aに表示させる(ステップS3)。このとき、表示器7aには、マーキングイメージとともに、図4に示されるように印字開始を入力するためのスタートスイッチ、及び印字必要時間Tを算出するための演算スタートスイッチが表示される。なお、この状態において、制御装置26はマーキング情報の変更を受け付ける。
【0041】
次に、制御装置26は、マーキング情報が変更ないか否かを判断する(ステップS4)。ステップS4においてNO、すなわち、マーキング情報に変更があった場合には、ステップS2へその処理を移行する。ステップS4においてYES、すなわち、マーキング情報に変更がない場合には、印字スタートスイッチが操作部7bの操作により選択されたか否かを判断する(ステップS5)。ステップS5においてNO、すなわち、印字スタートスイッチが操作部7bの操作により選択されない場合には、演算スタートスイッチが操作部7bの操作により選択されたか否かを判断する(ステップS6)。ステップS6においてNO、すなわち、演算スタートスイッチが選択されない場合には、ステップS5へその処理を移行する。
【0042】
ステップS6においてYES、すなわち、演算スタートスイッチが選択された場合には、ベクトルデータの線分ベクトルから印字距離L1(ここでは、A,B,Cの印字距離の合計)を抽出するとともに、メモリ26aからユーザにより設定された印字速度V1を読出し、これらを上式(1)に代入して印字時間T1を算出する(ステップS7)。次に、制御装置26は、ベクトルデータの非線分ベクトルから非印字距離L2(ここでは、A,B,Cの非印字距離の合計)を抽出するとともに、メモリ26aから非印字速度V2を読出し、これらを上式(2)に代入して非印字時間T2を算出する(ステップS8)。そして、これら算出したデータを上式(3)に代入して、印字必要時間Tを算出する(ステップS9)。次に、制御装置26は、算出した印字必要時間Tを電気ケーブル6を介して演算部26bの外部である表示器7に出力し、この表示器7aに印字必要時間Tを表示させ(ステップS10)、その処理をステップS4へ移行する。
【0043】
マーキング情報に変更がなくステップS5においてYES、すなわち、スタートスイッチが選択された場合には、制御装置26はステップS2で生成したベクトルデータを基に第1及び第2のガルバノミラー23a,23bの回動を制御するためのガルバノデータを生成する(ステップS11)。その後、制御装置26は、レーザ光を発射させるとともに、ガルバノデータに基づき駆動装置25を駆動させて対象物Wへの印字を開始する(ステップS12)。その後、印字が完了したか否かを判断する(ステップS13)。ステップS13においてNO、すなわち、印字が完了していない場合には、ステップS12へその処理を移行する。すなわち、印字を継続する。ステップS13においてYES、すなわち、印字が完了した場合には、この一連の処理を終了する。
【0044】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)制御装置26に、設定されるマーキング情報に基づき印字必要時間Tを算出する演算部26bを設けた。そして、制御装置26は、印字必要時間Tの算出後、これを表示器7aに表示させるようにした。これにより、ユーザは、表示器7aの視認を通じて、字必要時間を知ることができる。従って、従来、印字必要時間Tを知るために行っていたレーザ光を照射しない状態でガルバノミラーを回動させる疑似操作を行う必要がない。すなわち、この疑似操作の分だけユーザがマーキング情報を入力してから対象物へのマーキングが完了するまでの時間、いわゆるタクトタイムが短縮される。
【0045】
(2)制御装置26は、レーザ光を照射しない部分における第1及び第2のガルバノミラー23a,23bを回動させる速度である非印字速度V2を同第1及び第2のガルバノミラー23a,23bを回動させることのできる最高速度とした。これにより、非印字時間T2は最短となる。従って、非印字速度V2に他の速度(最高速度未満の速度)を適用した場合に比べてタクトタイムも短縮される。
【0046】
(3)制御装置26は、表示器7aに印字必要時間Tの表示後、マーキング情報の再設定を許可するようにした。これにより、ユーザが試算された印字必要時間が自身の想定する時間と異なる場合に、容易にマーキング情報を再設定することができる。例えば、線分の太さや、レーザパワーを調整することにより、マーキング時間の調節ができる。
【0047】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、演算部26bは、制御装置26と、別個に設けてもよい。別個に設けた場合は、演算部は、試算した印字必要時間を表示器7aに出力する、又は試算した印字必要時間を制御装置に出力し、制御装置がこれを表示器7aに出力する。このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
・上記実施形態において、非印字速度は、ガルバノミラーの回動における最高速度でなくてもよい。このように構成しても、疑似操作を行わない分、タクトタイムは短縮される。
【0049】
・上記実施形態において、コンソール7に代えてパーソナルコンピュータを採用してもよい。この場合、パーソナルコンピュータに付属されるディスプレイが表示器7aを構成し、キーボード、又はマウス、又はこれらの両方が操作部7bを構成する。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
・上記実施形態では、制御装置26は、ユーザが印字必要時間Tの試算を選択した場合にのみ印字必要時間Tを試算したが、マーキング情報が入力された時点で試算を開始してもよい。この場合、制御装置26は、図6で示すフローチャートにおいて、ステップS7〜S10の処理をステップS3とステップS4との間に組み込むとともに、ステップS6の処理を省略する。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
・上記実施形態において、制御装置26は、印字時間T1を算出したのち非印字時間T2を算出したが、この順番は逆であってもよい。すなわち、図6で示すフローチャートにおいて、ステップS7とステップS8の処理順序を逆にしてもよい。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
・上記実施形態において、試算した印字必要時間Tは、表示器7aに表示する以外の方法でユーザに報知するようにしてもよい。例えば、表示器7aに代えてスピーカを採用し、同スピーカから音声を通じて印字必要時間Tを報知してもよい。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
・上記実施形態において、マーキング情報の再設定を許可せずに、印字の開始か否かのみ選択するようにしてもよい。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。この場合、図6で示すフローチャートにおいて、ステップS4の処理を省略できる。
【0054】
・上記実施形態において、第1及び第2のガルバノミラー23a,23bによって屈折されたレーザ光Lは集光レンズ24によって集光されてから対象物Wに照射されたが、この集光レンズ24は、必ずしも設ける必要はない。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
・上記実施形態では、印字時間T1の算出は、A,B,Cの各印字区間の距離を合計して、印字距離L1を算出してから、上記(1)式に代入する方法を用いたが、各印字区間の距離ごとに上記(1)式に代入して、区間毎の印字時間を算出した後にこれを合計する方法であってもよい。また、非印字時間T2の算出においても、同様の方法を選択してもよい。このようにしても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
・上記実施形態では、レーザ光源20から出射されたレーザ光Lはファイバケーブル3を介してビームエキスパンダ21に送られるファイバ伝送式のレーザマーキング装置1について説明したが、この方式のレーザマーキング装置に限定されるものではない。例えば、レーザ光源20とビームエキスパンダ21とを対向して設け、レーザ光源20から出射されたレーザ光Lが空間を通過し直接ビームエキスパンダ21に送られるいわゆる空間伝送式のレーザマーキング装置に適用してもよい。このように構成した場合でも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
・上記実施形態では、表示器7aはコンソール7に設けられたが、コントローラ2やヘッド4に設けられてもよい。また、これらの複数に設けられてもよい。このように構成した場合でも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0058】
L…レーザ光、T…印字必要時間、L1…印字距離、L2…非印字距離、T1…印字時間、T2…非印字時間、V1…印字速度、V2…非印字速度、1…レーザマーキング装置、
7a…表示手段としての表示器、7b…入力手段としての操作部、20…レーザ光源、23a…第1のガルバノミラー、23b…第2のガルバノミラー、26…出力手段及び制御手段としての制御装置、26b…演算手段としての演算部、34…第1のガルバノモータ、35…第2のガルバノモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源と、軸を中心として回動することによりレーザ光の方向を変える一対のガルバノミラーと、前記ガルバノミラーの回動及び前記レーザ光の出射を外部から入力されるマーキング情報に基づいて制御する制御手段とを備え、同制御手段は、前記ガルバノミラーの制御を通じてレーザ光の照射位置を変更することにより、前記レーザ光を走査させつつ対象物に照射してマーキングを実行するレーザマーキング装置において、
前記マーキング情報からレーザ光の照射が必要な印字距離を、変更可能に設定されるレーザ光を照射させた状態での同レーザ光の照射位置の移動速度である印字速度で除算した印字時間と、レーザ光の照射が不要な非印字距離を、予め設定されるレーザ光を照射させない状態での同レーザ光の照射位置の移動速度である非印字速度で除算した非印字時間とを算出し、これら印字時間と非印字時間とを和算することで求められる印字全体にかかる必要時間である印字必要時間を算出する演算手段と、
前記演算手段が試算した前記印字必要時間を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザマーキング装置において、
前記非印字速度は、前記ガルバノミラーの回動における最高速度であることを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザマーキング装置において、
前記出力手段から出力された前記印字必要時間を表示する表示手段を備えることを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザマーキング装置において、
前記表示手段は、前記印字必要時間を表示するとともに、印字スタートを促すための確認画面を表示することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうち何れか一項に記載のレーザマーキング装置において、
前記制御手段へ前記マーキング情報を入力する入力手段を備え、
前記演算手段は、前記マーキング情報が入力されたことを契機として前記印字必要時間の試算を開始することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項6】
請求項1〜4のうち何れか一項に記載のレーザマーキング装置において、
前記演算手段に演算を実行する旨の指令、及び前記制御手段に印字を実行する旨の指令、並びにマーキング情報を入力する入力手段を備え、
前記演算手段は、前記入力手段によって演算を実行する旨の指令が入力されたときには、印字必要時間の算出を開始し、同じく印字を実行する旨の指令が入力されたときには、印字の実行を開始することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうち何れか一項に記載のレーザマーキング装置において、
前記出力手段による印字必要時間の出力後、前記制御手段への前記マーキング情報の再設定を許可することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザマーキング装置において、
前記制御手段に対しマーキング情報が再設定された場合、前記演算手段は再設定されたマーキング情報に基づき印字必要時間を算出することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項9】
請求項1〜8のうち何れか一項に記載にレーザマーキング装置において、
前記制御手段は、前記演算手段及び前記出力手段を備えることを特徴とするレーザマーキング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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