説明

レーザーによる貫通孔の形成方法

【課題】 高出力の1つのエネルギーの炭酸ガスレーザーのみで、小径のスルーホールを、多数枚の銅張板に、一度に精度良く、直接高速であける方法を得る。
【解決手段】 銅箔を炭酸ガスレーザーで除去できるに十分な20〜60mJ/パルスから選ばれたエネルギーを用いて、炭酸ガスレーザーのパルス発振により、少なくとも2層以上の銅の層を有する銅張板に多数枚同時に貫通孔を形成する方法において、少なくとも炭酸ガスレーザーを照射する銅箔面上に、融点900℃以上でかつ結合エネルギー300KJ/mol以上の金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉の1種以上3〜97vol%含む有機物の塗膜或いはシートを配置し、これを2〜10枚重ねて配置し、この上から炭酸ガスレーザーを必要パルス照射して同時に多数枚の銅張板に貫通孔用の孔を形成する。
【効果】 高速でスルーホール用貫通孔が形成でき、孔壁の接続信頼性が良く、経済性の改善されたプリント配線板用スルーホール貫通孔を得ることができた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メカニカルドリルに代わる少なくとも2層以上の銅の層を有する銅張板の貫通孔あけに関する。さらに詳しくは、予め表面銅箔をエッチング除去することなく、高出力の炭酸ガスレーザーの1つのエネルギーを、銅箔表面に補助材料を用いて、これを複数枚重ねて配置し、上から直接レーザーを照射して貫通孔をあける方法に関する。この孔あけで得られた銅張板を用いたプリント配線板は、主として小型の半導体プラスチックパッケージ用として使用される。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体プラスチックパッケージ等に用いられる高密度のプリント配線板は、スルーホール用の貫通孔をドリルであけていた。近年、ますますドリルの径は小径となり、孔径が 0.15mmφ以下となってきており、このような小径の孔をあける場合、ドリル径が細いため、孔あけ時にドリルが曲がる、折れる、加工速度が遅い等の欠点があり、生産性、信頼性等に問題のあるものであった。さらに、上下の銅箔にあらかじめネガフィルムを使用して所定の方法で同じ大きさの孔をあけておき、炭酸ガスレーザーで上下を貫通するスルーホールを形成しようとすると、上下の孔の位置にズレを生じ、ランドが形成しにくい等の欠点があった。加えて、複数枚を同時に孔あけすることは不可能であった。ガラス布基材の熱硬化性樹脂銅張積層板は、炭酸ガスレーザーの出力の小さい場合、ガラスの加工が困難で、孔壁にケバが残る等の問題点が見られ、一方、出力が大きい場合、孔壁が直線状とならず、形状が問題となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の問題点を解決した、高出力の炭酸ガスレーザーのエネルギーで、孔あけ用補助材料を配置した銅張板を多数枚重ね、小径の孔を高速で、孔壁の信頼性良く形成する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、銅箔を炭酸ガスレーザーで除去できるに十分な20〜60mJ/パルスのエネルギーから選ばれたエネルギーを用いて、炭酸ガスレーザーのパルス発振により、少なくとも2層以上の銅の層を有する銅張板に多数枚同時に貫通孔を形成する方法において、少なくとも炭酸ガスレーザーを照射する銅箔面上に、融点900℃以上でかつ結合エネルギー300KJ/mol以上の金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉の1種以上3〜97vol%含む有機物の塗膜或いはシートを配置し、この両面銅張板を2〜10枚重ねて配置し、この上から炭酸ガスレーザーを必要パルス照射して同時に多数枚の銅張板に貫通孔を形成する孔の形成方法を提供する。その後、銅箔の両表面を、平面的にエッチングし、もとの銅箔の一部の厚さをエッチング除去することにより、同時に孔部に張り出した銅箔バリをもエッチング除去し、孔周囲の両面の銅箔が残存したスルーホールメッキ用孔を形成することによって、上下の孔の銅箔位置がズレることもなく、ランドが形成でき、スルーホールは上下曲がることもなく形成でき、且つ、銅箔が薄くなるために、その後の金属メッキでメッキアップして得られた表裏銅箔の細線の回路形成において、ショートやパターン切れ等の不良の発生もなく、高密度のプリント配線板を作成することができた。また、加工速度はドリルであける場合に比べて格段に速く、生産性も良好で、経済性にも優れているものが得られた。スルーホール貫通孔あけ後に、薬液でエッチングする方法以外に、機械で表面を研磨することも可能であるが、バリの除去、細密パターン作成の点からも、薬液でエッチングすることが好ましい。また、孔あけは、両面銅張積層板だけでなく、同様の樹脂組成を用いて得られた多層板でも実施し得る。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明は、高出力の炭酸ガスレーザーから選ばれたエネルギーを用いて、直接レーザーを、銅張板の銅箔光沢面に、融点900℃以上、かつ結合エネルギー300KJ/mol以上の金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉の1種以上3〜97vol%含む有機物の塗膜或いはシートを配置し、この両面銅張板を2〜10枚重ねて配置し、この上から炭酸ガスレーザーを必要パルス照射して、スルーホール用貫通孔、特に小径の孔をあける。孔あけされたプリント配線板は、半導体チップの搭載用として使用される。この場合、全ての銅張板の間に水溶性樹脂からなる補助材料を配置し、加熱ロールで接着させた後孔あけすることもできる。
【0006】本発明で使用される両面銅張板としては、特に限定しないが、例えばガラス布を基材とし、熱硬化性樹脂組成物に無機絶縁性充填剤を混合して、均質とした構成の両面銅張板が好適に用いられる。その他にもポリイミドフイルム等のフィルムに銅箔を張った銅張板、有機繊維基材の銅張板等が用いられ得る。もちろん銅の層が1層の銅の板も同様に孔あけ可能である。銅張板の厚さは特に限定しないが、好適には0.05〜1.0mmである。
【0007】基材としては、特に限定しないが、無機繊維としては、一般に公知のガラス織布、不織布が使用できる。具体的には、ガラス繊維としてはE,S,D,Nガラス等が挙げられる。ガラスの含有率は、特に限定しないが、一般に30〜85wt%である。有機繊維としては、例えば全芳香族ポリアミド繊維、液晶ポリエステル繊維等の織布、不織布が用いられる。その他、ポリイミドフイルムを基材とし、その片面又は両面に樹脂層を付着した形態でも使用できる。
【0008】本発明で使用される熱硬化性樹脂組成物の樹脂としては、一般に公知の熱硬化性樹脂が使用される。具体的には、エポキシ樹脂、多官能性シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミドーシアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、不飽和基含有ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられ、1種或いは2種類以上が組み合わせて使用される。出力の高い炭酸ガスレーザー照射による加工でのスルーホール形状の点からは、ガラス転移温度が 150℃以上の熱硬化性樹脂組成物が好ましく、耐湿性、耐マイグレーション性、吸湿後の電気的特性等の点から多官能性シアン酸エステル樹脂組成物が好適である。
【0009】本発明の熱硬化性樹脂分である多官能性シアン酸エステル化合物とは、分子内に2個以上のシアナト基を有する化合物である。具体的に例示すると、1,3 −又は 1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5 −トリシアナトベンゼン、1,3 −、1,4 −、1,6 −、1,8 −、2,6 −又は2,7 −ジシアナトナフタレン、1,3,6 −トリシアナトナフタレン、4,4 −ジシアナトビフェニル、ビス(4−ジシアナトフェニル)メタン、2,2 −ビス (4−シアナトフェニル) プロパン、2,2 −ビス (3,5 −ジブロモー4−シアナトフェニル) プロパン、ビス (4−シアナトフェニル) エーテル、ビス (4−シアナトフェニル) チオエーテル、ビス (4−シアナトフェニル) スルホン、トリス (4−シアナトフェニル) ホスファイト、トリス (4−シアナトフェニル) ホスフェート、およびノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などである。
【0010】これらのほかに特公昭 41-1928、同 43-18468 、同 44-4791、同 45-11712 、同 46-41112 、同 47-26853 及び特開昭 51-63149号公報等に記載の多官能性シアン酸エステル化合物類も用いら得る。また、これら多官能性シアン酸エステル化合物のシアナト基の三量化によって形成されるトリアジン環を有する分子量 400〜6,000 のプレポリマーが使用される。このプレポリマーは、上記の多官能性シアン酸エステルモノマーを、例えば鉱酸、ルイス酸等の酸類;ナトリウムアルコラート等、第三級アミン類等の塩基;炭酸ナトリウム等の塩類等を触媒として重合させることにより得られる。このプレポリマー中には一部未反応のモノマーも含まれており、モノマーとプレポリマーとの混合物の形態をしており、このような原料は本発明の用途に好適に使用される。一般には可溶な有機溶剤に溶解させて使用する。
【0011】エポキシ樹脂としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には、液状或いは固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂;ブタジエン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンチルエーテル等の二重結合をエポキシ化したポリエポキシ化合物類;ポリオール、水酸基含有シリコン樹脂類とエポハロヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジル化合物類等が挙げられる。これらは1種或いは2種類以上が組み合わせて使用され得る。
【0012】ポリイミド樹脂としては、一般に公知のものが使用され得る。具体的には、多官能性マレイミド類とポリアミン類との反応物、特公昭57−005406号公報に記載の末端三重結合のポリイミド類が挙げられる。
【0013】これらの熱硬化性樹脂は、単独でも使用されるが、特性のバランスを考え、適宜組み合わせて使用するのが良い。
【0014】本発明の熱硬化性樹脂組成物には、組成物本来の特性が損なわれない範囲で、所望に応じて種々の添加物を配合することができる。これらの添加物としては、不飽和ポリエステル等の重合性二重結合含有モノマー類及びそのプレポリマー類;ポリブタジエン、エポキシ化ブタジエン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブチルゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等の低分子量液状〜高分子量のelastic なゴム類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、スチレン−イソプレンゴム、ポリエチレン−プロピレン共重合体、4−フッ化エチレン−6−フッ化エチレン共重合体類;ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等の高分子量プレポリマー若しくはオリゴマー;ポリウレタン等が例示され、適宜使用される。また、その他、公知の有機の充填剤、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光増感剤、難燃剤、光沢剤、重合禁止剤、チキソ性付与剤等の各種添加剤が、所望に応じて適宜組み合わせて用いられる。必要により、反応基を有する化合物は硬化剤、触媒が適宜配合される。
【0015】本発明の熱硬化性樹脂組成物は、それ自体は加熱により硬化するが硬化速度が遅く、作業性、経済性等に劣るため使用した熱硬化性樹脂に対して公知の熱硬化触媒を用い得る。使用量は、熱硬化性樹脂100 重量部に対して 0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。
【0016】無機の絶縁性充填剤としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には、天然シリカ、焼成シリカ、アモルファスシリカ等のシリカ類;ホワイトカーボン、チタンホワイト、アエロジル、クレー、タルク、ウオラストナイト、天然マイカ、合成マイカ、カオリン、マグネシア、アルミナ、パーライト等が挙げられる。添加量は、10〜60wt%、好適には15〜50wt%である。
【0017】また、炭酸ガスレーザーの照射で、光が分散しないように樹脂に黒色の染料又は顔料を添加することが好ましい。粒子径は、均一分散のために1μm以下が好ましい。染料、顔料の種類は、一般に公知の絶縁性のものが使用され得る。添加量は、 0.1〜10wt%が好適である。さらには、繊維の表面を黒色に染めたガラス繊維等も使用し得る。
【0018】最外層の銅箔は、一般に公知のものが使用できる。好適には厚さ3〜18μmの電解銅箔等が使用される。内層用銅箔としては、5〜18μmの電解銅箔が好適に使用される。
【0019】基材補強銅張積層板は、まず上記基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸、乾燥させてBステージとし、プリプレグを作成する。次に、このプリプレグを所定枚数用い、上下に銅箔を配置して、加熱、加圧下に積層成形し、両面銅張積層板とする。この銅張積層板の断面は、ガラス以外の樹脂と無機充填剤が均質に分散していて、レーザー孔あけした場合、孔が均一にあく。また、黒色である方が、レーザー光が分散せずに孔壁の凹凸がなく、均質にあく。
【0020】本発明で使用する、銅箔表面に使用する補助材料中の金属化合物としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には、酸化物としては、酸化チタン等のチタニア類、酸化マグネシウム等のマグネシア類、酸化鉄等の鉄酸化物類、酸化ニッケル等のニッケル酸化物類、酸化銅等の銅酸化物類、二酸化マンガン等の酸化マンガン類、酸化亜鉛等の亜鉛酸化物類、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化コバルト等が挙げられる。また、E,A,C,L,D,S,N,M等のガラス粉類は、上記金属化合物の混合物であり、本補助材料として使用され得る。非酸化物としては、炭化ケイ素、炭化タングステン、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、希土類酸硫化物、一般に公知のものが挙げられる。その他、カーボン類も使用される。更には、銀、アルミニウム、ビスマス、コバルト、銅、鉄、マンガン、モリブデン、ニッケル、バナジウム、アンチモン、ケイ素、スズ、チタン、亜鉛等の単体、あるいはそれらの合金の金属粉が使用される。これらは、一種或いは二種以上が組み合わせて使用され得る。配合量は、3〜97vol%で、好ましくは5〜95vol%である。
【0021】炭酸ガスレーザーの照射で、化合物が解離したり飛散して、半導体チップ、孔壁密着性等に悪影響を及ぼさないものが好ましい。Na,K,Clイオン等は、特に半導体の信頼性に悪影響を及ぼすため、これらの成分を含むものは好適でない。
【0022】補助材料の有機物としては、特に制限はないが、混練して銅箔表面に塗布、乾燥した場合、或いはシートとした場合、剥離欠落しないものを選択する。好ましくは、樹脂が使用される。特に、環境の点からも水溶性の樹脂、例えばポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテル、澱粉等の一般に公知のものが好適に使用される。
【0023】金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉と有機物よりなる組成物を作成する方法は、特に限定しないが、ニーダー等で無溶剤で高温にて練り、シート状に押し出す方法、溶剤或いは水に溶解する樹脂組成物を用い、これに上記粉体を加え、均一に撹拌、混合して、これを用い、塗料として銅箔表面に塗布、乾燥して膜を作る方法、フィルムに塗布してシート状にする方法等が挙げられる。
【0024】銅張板の、少なくとも炭酸ガスレーザーを照射する面の孔形成位置の銅箔表面に、金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉の1種又は2種以上を含む樹脂組成物からなる塗膜、或いはシートを配置し、この銅張板を複数枚おいて、全部で2〜10枚重ね、直接目的とする径まで絞った、高出力から選ばれたエネルギーの炭酸ガスレーザーを照射することにより孔あけを行なう。もちろん銅張板の厚みが薄い場合、多数枚重ねることも可能であるが、レーザーパルスのショット数が増え、作業性に劣る。孔あけする場合、下面にレーザーを止めるための補助材料を一般に使用する。
【0025】炭酸ガスレーザーを、出力20〜60mJ/パルスの1エネルギーを選び、照射して貫通孔を形成した場合、孔周辺はバリが発生する。そのため、炭酸ガスレーザー照射後、銅箔の両表面を平面的にエッチングし、もとの金属箔の一部の厚さをエッチング除去することにより、同時にバリもエッチング除去し、且つ、得られた銅箔は細密パターン形成に適しており、高密度のプリント配線板に適した孔周囲の両面の銅箔が残存したスルーホールメッキ用貫通孔を形成する。
【0026】本発明の孔部に発生した銅のバリをエッチング除去する方法としては、特に限定しないが、例えば、特開平02−22887 、同02−22896 、同02−25089 、同02−25090 、同02−59337 、同02−60189 、同02−166789、同03−25995 、同03−60183 、同03−94491 、同04−199592、同04−263488号公報で開示された、薬品で金属表面を溶解除去する方法(SUEP法と呼ぶ)による。この場合、エッチング速度は、一般には0.02〜1.0 μm/秒で行う。
【0027】炭酸ガスレーザーは、赤外線波長域にある9.3 〜10.6μmの波長が一般に使用される。出力は20〜60mJ/パルス、好適には22〜50mJ/パルスにて用いられる。
【0028】
【実施例】以下に実施例、比較例で本発明を具体的に説明する。尚、特に断らない限り、「部」は重量部を表す。
実施例12,2 −ビス(4−シアナトフェニル)プロパン900 部、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン100 部を150 ℃に熔融させ、撹拌しながら4時間反応させ、プレポリマーを得た。これをメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解した。これにビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、油化シェルエポキシ<株>製)400 部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:ESCN−220F、住友化学工業<株>製)600 部を加え、均一に溶解混合した。更に触媒としてオクチル酸亜鉛0.4 部を加え、溶解混合し、これに無機絶縁性充填剤(商品名:BST200、平均粒径 0.4μmとしたもの、日本タルク<株>製)500 部、エポキシシランカップリング剤4部及び黒色顔料2部を加え、均一撹拌混合してワニスAを得た。このワニスを厚さ100 μmのガラス織布に含浸し150 ℃で乾燥して、ゲル化時間(at170 ℃)120 秒、ガラス布の含有量が57重量%のプリプレグ(プリプレグB)を作成した。厚さ12μmの電解銅箔を、上記プリプレグB4枚の上下に配置し、200 ℃、20kgf/cm2 、30mmHg以下の真空下で2時間積層成形し、絶縁層厚み400μmの両面銅張積層板Cを得た。一方、平均粒径0.9μmの黒色酸化銅粉800部を、ポリビニルアルコール粉体(融点83℃)を水に溶解したワニスに加え、均一に撹拌混合した。これを厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、厚さ20μm塗布し、110 ℃で30分間乾燥して、金属酸化物含有量13vol%のフィルム付きシート(補助材料D)を形成した。これを両面銅張積層板Cの上に置き、3セット重ねて、その上から、間隔 300μmで孔径100 μmの孔を 900個直接炭酸ガスレーザーで、出力40mJ/パルスで19パルス(ショット)かけ、70ブロックのスルーホール用貫通孔をあけた。表面の補助材料Dを剥離除去した後、SUEP法にて、孔周辺の銅箔バリを溶解除去すると同時に、表面の銅箔も5μmまで溶解した。この板に定法にて銅メッキを15μm(総厚み:20μm)施した。この孔周辺のランド用の銅箔は全て残存していた。この表裏に、定法にて回路(ライン/スペース=50/50μmを200 個)、ソルダーボール用ランド等を形成し、少なくとも半導体チップ、ボンディング用パッド、ハンダボールパッドを除いてメッキレジストで被覆し、ニッケル、金メッキを施し、プリント配線板を作成した。このプリント配線板の評価結果を表1に示す。
【0029】実施例2エポキシ樹脂(商品名:エピコート 5045 )1400部、エポキシ樹脂(商品名:ESCN220F)600部、ジシアンジアミド70部、2−エチル−4−メチルイミダゾール2部をメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解し、さらに実施例1の絶縁性無機充填剤を800 部加え、強制撹拌して均一分散し、ワニスを得た。これを厚さ 100μmのガラス織布に含浸、乾燥して、ゲル化時間 150秒、ガラス布含有量55wt%のプリプレグ(プリプレグE)を作成した。このプリプレグEを1枚使用し、両面に12μmの電解銅箔を置き、190 ℃、20kgf/cm2、30mmHg以下の真空下で2時間積層成形して両面銅張積層板Fを作成した。絶縁層の厚みは100μmであった。一方、上記 MgO 43 %、Sio2 7%よりなる、平均粒子径 0.8μmの金属酸化物を、ポリビニルアルコール溶液に溶解し、これを実施例1と同様に、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートのフィルムに厚さ25μmとなるように塗布、乾燥して金属酸化物90容積%の樹脂組成物層が付着したシートを作成した。これを上記の両面銅張積層板Fの上に配置して実施例1と同様にラミネートし、これを8セット重ね、炭酸ガスレーザーの出力40mJ/パルスにて25パルス(ショット)でスルーホール用貫通孔をあけた。後は同様にして加工し、プリント配線板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0030】比較例1実施例1の両面銅張積層板を用い、表面に補助材料を配置せずに炭酸ガスレーザーで同様に孔あけを行なったが、孔はあかなかった。
【0031】比較例2実施例2において、エポキシ樹脂としてエピコート5045単独を2,000 部使用し、他は同様にして作成した両面銅張積層板を用い、銅箔面に同様にシートを配置し、これを8セット重ね、出力17mJ/パルスにて炭酸ガスレーザーで41ショット照射し、スルーホール用貫通孔をあけた。この孔壁は、ガラス繊維が孔内に見られ、孔形状は真円ではなく、楕円形状であった。同様に温水洗浄を行い、SUEP処理を行わず、機械研磨のみでプリント配線板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0032】比較例3実施例1の両面銅張積層板を1枚使用し、径 100μmのメカニカルドリルにて、回転数 10 万rpm 、送り速度1m/min,にて同様に300 μ間隔で孔をあけた。機械研磨を行ない、SUEP処理を行なわずに同様に銅メッキを15μm施し、表裏に回路形成し、同様に加工してプリント配線板を作成した。途中でドリルの折れが2本発生した。評価結果を表1に示す。
【0033】比較例4実施例1の両面銅張積層板の銅箔表面に間隔 300μmにて、孔径 100μmの孔を 900個、銅箔をエッチングしてあけた。同様に裏面にも同じ位置に孔径 100μmの孔を 900個あけ、1パターン 900個を70ブロック、合計63,000の孔をあけた銅張積層板を3セット重ね、表面から炭酸ガスレーザーで、出力40mJ/パルスにて19パルス(ショット)かけ、スルーホール用貫通孔をあけた。後は比較例3と同様にして、機械研磨のみで銅メッキを15μm施し、表裏に回路を形成し、同様にプリント配線板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0034】<測定方法>1) 表裏孔位置のズレ及び孔あけ時間ワークサイズ 250mm角内に、孔径 100μmの孔を、 900孔/ブロックとして70ブロック(孔計63,000孔)作成した。炭酸ガスレーザー及びメカニカルドリルで孔あけを行なった場合の、63,000孔/枚孔をあけるのに要した時間、及び表裏の孔位置のズレの最大値を示した。
2) 回路パターン切れ、及びショート実施例、比較例で、孔のあいていない板を同様に作成し、ライン/スペース=50/50μmの櫛形パターンを作成した後、拡大鏡でエッチング後の 200パターンを目視にて観察し、パターン切れ、及びショートしているパターンの合計を分子に示した。
3) ガラス転移温度DMA法にて測定した。
4) スルーホール・ヒートサイクル試験各スルーホールにランド径 200μmを作成し、900 孔を表裏交互につなぎ、1サイクルが、260 ℃・ハンダ・浸せき 30 秒→室温・5分で、200 サイクル実施し、抵抗値の変化率の最大値を示した。
5) 孔形状孔の断面、上からの形状を見た。
6) ランド周辺銅箔欠落径200μmのランドを作成し、孔部のランド部とスルーホールとの銅箔の欠落状況を観察した。
【0035】
表1項目 実施例 比較例 1 2 2 3 4表裏孔位置のズレ(μm) 0 0 0 0 25孔形状 円形 円形 楕円形 円形 上円形 下楕円形孔内部 ほぼ直線 ほぼ直線 内壁凹 直線 ほぼ直線 凸大 孔大きさ 上下 上下 下側に行くと 上下 1番上の板はほぼ同一 ほぼ同一 ほぼ同一 段々小さく 同一 下側の板に行くに従い なる 孔径が小さくなり 不定形となるランド周辺銅箔欠落 なし なし なし なし 有りパターン切れ及びショート(個数) 0/200 0/200 55/200 55/200 57/100ガラス転移温度(℃) 235 160 139 234 235スルーホール・ヒートサイクル試験(%) 2.6 4.3 27.8 2.6 10.9孔あけ加工時間(分) 17 10 16 630 −
【0036】
【発明の効果】銅箔の炭酸ガスレーザーで除去できるに十分な20〜60mJ/パルスの高出力から選ばれtaエネルギーを用いて、炭酸ガスレーザーのパルス発振により、多数枚の銅張板に貫通孔を形成する方法であり、好適にはガラス布を基材とし、絶縁性の染料又は顔料を混合して黒色化した、ガラス転移温度150 ℃以上の熱硬化性樹脂に、絶縁性無機充填剤を混合し、積層板の断面において、熱硬化性樹脂組成物中の無機充填剤と樹脂との割合が均質となったガラス布基材銅張積層板を用い、炭酸ガスレーザーを照射する銅箔表面に、金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉の1種又は2種以上を含む有機物の塗膜、或いはシートを配置して、これを全部で2〜10枚重ね、その上に、20〜60mJ/パルスの炭酸ガスレーザーから選ばれたエネルギーを照射して貫通孔を形成することにより、表裏の孔位置のズレがなく、孔壁も良好にあき、スルーホールの接続信頼性の優れたものを得ることができた。また、加工速度はドリルであけるのに比べて格段に速く、生産性についても大幅に改善できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の炭酸ガスレーザーによる貫通孔あけ[(1)、(2)]、SUEPによるバリ除去[(3)]及び銅メッキ[(4)]の工程図である。
【図2】比較例4の炭酸ガスレーザーによる同様の工程図である。但し、SUEPは使用せず。
【符号の説明】
a 金属酸化粉含有樹脂シート
b 銅箔
c ガラス布基材熱硬化性樹脂層
d 炭酸ガスレーザーによるスルーホール貫通孔あけ部
e 発生したバリ
f 表裏銅箔のズレを生じたスルーホール貫通孔あけ部
g 銅メッキしたズレ発生スルーホール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 銅箔を炭酸ガスレーザーで除去できるに十分な20〜60mJ/パルスから選ばれたエネルギーを用いて、炭酸ガスレーザーのパルス発振により、少なくとも2層以上の銅の層を有する銅張板に多数枚同時に貫通孔を形成する方法において、少なくとも炭酸ガスレーザーを照射する銅箔面上に、融点900℃以上でかつ結合エネルギー300KJ/mol以上の金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉の1種以上3〜97vol%含む有機物の塗膜或いはシートを配置し、これを2〜10枚重ねて配置し、この上から炭酸ガスレーザーを必要パルス照射して同時に多数枚の銅張板に貫通孔を形成することを特徴とする孔の形成方法。
【請求項2】 該孔あけされた銅張板の両表面を、平面的にエッチングし、もとの銅箔の一部の厚さをエッチングし、同時に孔部に張り出した銅箔バリをエッチング除去することを特徴とする請求項1記載の孔の形成方法。

【図1】
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【図2】
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