説明

レーザーマーキングホログラム及びホログラムレーザーマーキング方法

【課題】 体積型ホログラムにレーザー光を照射することにより物理的あるいは化学的に改質して、文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等の個別情報を記録して体積型ホログラムのセキュリティ性を高める。
【解決手段】 干渉縞が体積型ホログラム層2に記録されているホログラムにおいて、体積型ホログラム層2にレーザー光10を選択的に照射することにより照射部が改質11され、照射部と非照射部においてコントラストを持つ文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等が記録されているレーザーマーキングホログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーマーキングホログラム及びホログラムレーザーマーキング方法に関し、特に、体積型ホログラムにレーザー光を照射することにより改質して文字、数字、絵柄、バイオメトリックス(指紋、顔、血管等)情報等の個別情報を追記記録したセキュリティ性の高いホログラムとそのようなホログラムを得る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カード等に直接個人情報を打ち込むレーザーエングレービング法が注目されている。レーザーエングレービング技術は、券面情報の改ざん、変造の防止に関して、安全性・耐久性を向上させる確実な社会システムモデル構築に資する有効な技術である。個人情報や顔写真をカード素材そのものの特性変化による刻み込みでカード内部まで刻印するため、偽造・改ざんを困難にし、さまざまなICカードシステムとの連携により、高度なセキュリティが実現可能になる。
【0003】
また、一方、本出願人は、見た目で真偽が分かる体積型ホログラムをカードに転写することにより、高度なセキュリティ性が実現できる体積型ホログラム転写箔を開発し、上市した。このホログラムは、ホログラム原版、記録用レーザー、ホログラム感光材料等を用いて、同じ絵柄のものを高速に大量生産している。
【0004】
ところで、背後に反射層を有するレリーフホログラムにおいて、レーザー光を選択的に照射して反射層を破壊することによりマーキングを施すことは、特許文献1、特許文献2等において知られている。
【特許文献1】特開平11−305667号公報
【特許文献2】特開2002−29185号公報
【特許文献3】特開昭61−72748号公報
【特許文献4】特開2001−96913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、レーザー光等の光加工技術により、カード表面層を改質させ、個人情報を白黒のコントラストで書き込んでいる。一見、印刷、インクジェット等による記録との判別が難しく、この技術のみでは、見た目で分かるセキュリティ性を持たせることはできない。
【0006】
一方、体積型ホログラムは、上記大量生産方式により製造されるが、レリーフホログラムのように反射層を持たないため、個別情報を記録することは困難であった。また、仮に大量生産工程にレーザー光又は紫外光、白色光等の投影、描画等により何らかの個人情報を記録する方法を実現したとしても、大量生産品の歩留まりも考慮して、全品良品とすることは不可能である。
【0007】
また、大量生産品が同一絵柄であるため、何らかの方法でホログラムを媒体から外した場合、他の媒体への転用が可能となり、偽造品との区別が付かなくなる。
【0008】
本発明は従来技術のこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、体積型ホログラムにレーザー光を照射することにより物理的あるいは化学的に改質して、文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等の個別情報を記録して体積型ホログラムのセキュリティ性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カード等の媒体に転写又はラミネートされ、ホログラム干渉縞が記録された体積型ホログラム層にレーザー光で直接マーキングすることにより体積型ホログラム層へ個別情報を付与するものであり、そのホログラムは再利用等が不可能となり、高いセキュリティ性が得られるものである。
【0010】
すなわち、本発明のレーザーマーキングホログラムは、干渉縞が体積型ホログラム層に記録されているホログラムにおいて、前記体積型ホログラム層にレーザー光を選択的に照射することにより照射部が改質され、照射部と非照射部においてコントラストを持つ文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等が記録されていることを特徴とするものである。なお、本発明において、レーザーマーキングホログラムとは、上記のようなレーザーマーキングによりコントラストを持つ情報が記録されているホログラムを意味する。
【0011】
本発明の別のレーザーマーキングホログラムは、少なくとも、保護層、体積型ホログラム層、ヒートシール剤又は粘着剤が積層され、前記体積型ホログラム層に干渉縞が記録されているホログラムフィルム媒体において、前記体積型ホログラム層を改質させるレーザー光を前記体積型ホログラム層に照射することにより、前記体積型ホログラム層の照射部と非照射部においてコントラストを持つ文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等が記録されていることを特徴とするものである。
【0012】
これらにおいて、前記レーザー光を照射するレーザーが、10ピコ秒から10フェムト秒の範囲にある超短パルスを発振するレーザー、あるいは、紫外線領域のレーザーであることが望ましい。
【0013】
また、前記レーザー光が体積型ホログラム層に集光することによって照射部が改質されることが望ましい。
【0014】
また、前記体積型ホログラム層が、少なくとも光重合性化合物、光重合開始剤を含有するフォトポリマーからなることが望ましい。
【0015】
この場合に、前記体積型ホログラム層が、レーザー光照射により改質あるいは改質を促進する無機材料及び/又は有機材料を含有するフォトポリマーからなっていてもよい。
【0016】
以上のような干渉縞が記録されている体積型ホログラム層にレーザー光を照射して改質することにより情報が記録されたレーザーマーキングホログラムを備えたカード(レーザーマーキングホログラム付きカード)において、個別の情報をレーザー光を照射して前記体積型ホログラム層に記録することができる。
【0017】
また、そのようなレーザーマーキングホログラム付きカードにおいて、前記体積型ホログラム層に特定の光を回折、透過させる機能を有するホログラムとして干渉縞が記録されており、個別の情報がレーザー光を照射して前記体積型ホログラム層に記録されているものとしてもよい。
【0018】
この特定の光を回折、透過させる機能を有するホログラムは如何なるホログラムでもよいが、その例としては、均一な反射若しくは散乱面を持つホログラム散乱板、ホログラムミラー等があげられる。上記のようなレーザーマーキングとホログラム散乱板、ホログラムミラー等とを組み合わせることで、視認性の良い情報が記録される。
【0019】
本発明は、少なくとも、基材、干渉縞が記録されている体積型ホログラム層にレーザー光を照射して改質することにより情報が記録されたレーザーマーキングホログラム、ヒートシール剤又は粘着剤が積層されていることを特徴とする体積型ホログラム転写箔を含むものであり、媒体にその体積型ホログラム転写箔が転写されているレーザーマーキングホログラム転写体も含むものである。
【0020】
さらに、その媒体がカード形態であり、前記体積型ホログラム層に特定の光を回折、透過させる機能を有するホログラムとして干渉縞が記録されており、個別の情報がレーザー光を照射して前記体積型ホログラム層に記録されているレーザーマーキングホログラム転写体も含まれる。
【0021】
さらに、以上のような干渉縞が記録されている体積型ホログラム層にレーザー光を照射して改質することにより情報が記録されたレーザーマーキングホログラムを備えたレーザーマーキングホログラム転写体において、個別の情報をレーザー光を照射して前記体積型ホログラム層に記録することができる。
【0022】
また、そのようなレーザーマーキングホログラム転写体において、前記体積型ホログラム層に特定の光を回折、透過させる機能を有するホログラムとして干渉縞が記録されており、個別の情報がレーザー光を照射して前記体積型ホログラム層に記録されているものとしてもよい。
【0023】
また、本発明のホログラムレーザーマーキング方法は、コントラストを持つ文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等が記録されたホログラムを得るレーザーマーキング方法において、ホログラム干渉縞が記録された体積型ホログラム層の選択領域にレーザー光を照射することにより、ホログラム層に記録されている干渉縞を乱し、光を回折させる機能を増強又は低減させることを特徴とする方法である。
【0024】
この場合、前記レーザー光の光照射点において体積型ホログラム層のガラス転移点温度以上の状態を作り、前記体積型ホログラム層の屈折率変調の平均化を行い、照射部と非照射部の明暗コントラストを付与することができる。
【0025】
また、前記レーザー光の光照射点において高いエネルギー密度を実現させて分子の結合を制御して干渉縞の均一化を進め、照射部と非照射部のコントラストを付与することができる。
【0026】
また、前記体積型ホログラム層が、少なくとも光重合性化合物、光重合開始剤を含有するフォトポリマーからなっていてもよい。
【0027】
その場合、前記体積型ホログラム層が、レーザー光照射により改質あるいは改質を促進する無機材料及び/又は有機材料を含有するフォトポリマーからなっていてもよい。
【0028】
また、前記レーザー光は、例えば、10ピコ秒から10フェムト秒の範囲にある超短パルスのレーザー光、あるいは、紫外線領域のレーザー光であることが望ましい。
【0029】
また、前記レーザー光を体積型ホログラム層に集光することによって照射部を改質することが望ましい。
【0030】
本発明の別のホログラムレーザーマーキング方法は、コントラストを持つ文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等が記録されたホログラムを得るレーザーマーキング方法において、ホログラム干渉縞が記録された体積型ホログラム層を備え、前記体積型ホログラム層に隣接する隣接層の選択領域にレーザー光を照射することにより、前記隣接層から前記体積型ホログラム層に前記隣接層に含有された化合物を移行させることで、前記体積型ホログラム層に記録されている干渉縞を乱し、光を回折させる機能を増強又は低減させることを特徴とする方法である。
【0031】
この場合、前記体積型ホログラム層が、少なくとも光重合性化合物、光重合開始剤を含有するフォトポリマーからなることが望ましい。
【0032】
また、前記体積型ホログラム層が転写箔中に含有され、被着体と転写された後にレーザー光を照射することにより前記体積型ホログラム層に記録されている干渉縞を乱し、光を回折させる機能を増強又は低減させることもできる。
【発明の効果】
【0033】
本発明においては、干渉縞が記録されている体積型ホログラム層にレーザー光を選択的に照射することにより照射部が改質され、照射部と非照射部においてコントラストを持つ文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等が記録されてなるもので、ホログラムにコントラストにより2次元的な個人情報等の個別情報を記録でき、また、体積型ホログラム層から再生される3次元画像に重ねて2次元的な個人情報等を記録することにより、見た目での真偽の確認が可能となり、また、ホログラムに個別性を付与することができ、その再利用が不可能となるため、高いセキュリティ性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
一般に、体積型ホログラムは、大量なメディアを対象として大量複製をベースに生産しており、従来、大量複製の際に個人情報を投影露光等の方法を用いて付与する方式が考案されていた。また、フォトポリマーからなる体積型ホログラムは、通常、一度完全に感光した材料への記録はできない。したがって、感光が完了し、サンプル形態に加工したホログラム材料層に個人情報を記録する方法は従来考案されていなかった。
【0035】
本発明は、レーザー干渉を用いてホログラム干渉縞が記録された体積型ホログラム層にレーザー光を照射することにより、ホログラム層に記録されている干渉縞の形状を崩し(干渉縞を乱し)、光を回折させる機能を増強(例えば、回折範囲を広げて明るくする等)又は低減させることを特徴とするレーザーマーキングホログラムである。
【0036】
ホログラム干渉縞が記録された体積型ホログラム層は、無数の干渉縞からなり、その干渉縞により入射した光はある角度に回折される。そのすでに記録された干渉縞をレーザー光を用いて干渉縞の屈折率変調を平均化又は乱すことにより、照射部分と非照射部分において明暗のコントラストを持たせ、情報を記録することができる。例えば、ns(ナノ秒)オーダーのパルスレーザーを用いた場合は、レーザー光照射点において体積型ホログラム層のガラス転移点温度以上の状態を作り、材料そのものに対して熱的改質を行うことができる。この際、レーザー光を集光することによって、さらに効率の良い高熱スポットを実現できる。この熱を用いて屈折率変調の平均化を行い、照射部と非照射部の明暗コントラストを付与することができる。また、fs(フォムト秒)オーダーのパルスレーザーを用いた場合は、レーザー光照射点において、非常に高いエネルギー密度を実現でき、そのパルスの短さから熱を与えることなく分子の結合を切る等の制御をすることができる。これにより干渉縞の均一化を進め、照射部と非照射部のコントラストを実現できる。ここで、干渉縞の均一化とは、干渉縞自体のコントラスト(明暗)を低減させて屈折率を平均化することを言う。
【0037】
ここで、本発明の体積型ホログラム層のガラス転移温度は80℃〜90℃であるので、レーザー光照射点において90℃以上の高熱状態となればよい。なお、本発明におけるガラス転移温度は、レオメトリックス社製 固体粘弾性アナライザーRSA−IIを使用し、次の条件で測定した値である。動的貯蔵弾性率(E’)及び動的損失弾性率(E”)を測定し、E”/E’で定義される損失正接のピーク温度をガラス転移温度とした。
【0038】
以下、本発明について、具体的に説明する。本発明は、体積型ホログラム用樹脂組成物、それを用いて形成される体積型ホログラム層、及び、ホログラム転写箔を含むものである。以下、それぞれについて項を分けて説明する。
【0039】
本発明のレーザーマーキングホログラム用材料について説明する。レーザーマーキングホログラム用材料としては、従来公知の体積ホログラム記録材料を使用できる。具体的には、銀塩感材、重クロム酸ゼラチン、光架橋型ポリマー、フォトポリマー等が例示される。特にフォトポリマーは、その他材料に比べて、乾式プロセスのみで体積型ホログラムを作製することができ、量産性に優れた材料である。
【0040】
以下、フォトポリマー材料について具体的に説明する。
【0041】
本発明のレーザーマーキングホログラム用材料に使用されるフォトポリマーは、少なくとも1種の光重合性化合物と、光重合開始剤を有するものである。
【0042】
このようなフォトポリマーを用いて得られる体積型ホログラムに、本発明のマーキング方法で文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等の情報を記録することで、所望のレーザーマーキングホログラムを得ることができる。
【0043】
以下、このような体積型ホログラム記録用フォトポリマーの各構成材料について説明する。
【0044】
1.光重合性化合物
本発明に用いられる光重合性化合物について説明する。本発明における光重合性化合物としては、光ラジカル重合性化合物であってもよく、光カチオン重合性化合物であってもよい。以下、光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物に分けて説明する。
【0045】
a.光ラジカル重合性化合物
本発明に用いられる光ラジカル重合性化合物としては、本発明の体積型ホログラム用樹脂組成物を用いて体積型ホログラムを形成する際に、例えばレーザー照射等によって、後述する光ラジカル重合開始剤から発生した活性ラジカルの作用により重合する化合物であれば、特に限定されるものではないが、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ化合物を使用することができる。例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド結合物等をあげることができる。上記不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステルのモノマーの具体例を以下に示す。
【0046】
アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、2−(p−クロロフェノキシ)エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、ビスフェノールAの(2−アクリルオキシエチル)エーテル、エトキシ化されたビスフェノールAジアクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)エチルアクリレート、o−ビフェニルアクリレート、9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシトリエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシジプロポキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジメチル)フルオレン等が例示される。
【0047】
また、特許文献3に開示されている硫黄含有アクリル化合物を使用することもできる。例えば、4,4’−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトン、4,4’−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)3,3’,5,5’−テトラブロモジフェニルケトン、2,4−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトン等があげられる。
【0048】
さらに、メタクリル酸エステルとしては、上述したアクリル酸エステルに例示される化合物名のうち、「アクリレート」が「メタクリレート」に、「アクリロキシ」が「メタクリロキシ」に、及び「アクリロイル」が「メタクリロイル」に変換された化合物が例示される。
【0049】
また、上記光ラジカル重合性化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0050】
b.光カチオン重合性化合物
本発明に用いられる光カチオン重合性化合物は、エネルギー照射を受け、後述する光カチオン重合開始剤の分解により発生したブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合する化合物である。例えば、エポキシ環やオキセタン環等の環状エーテル類、チオエーテル類、ビニルエーテル類等をあげることができる。
【0051】
上記エポキシ環を含有する化合物としては、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド等が例示される。
【0052】
また、上記光カチオン重合性化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0053】
さらに、上記の光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0054】
ここで、本発明の体積型ホログラム用樹脂組成物を用いて体積型ホログラムを形成する際に、例えば目的とする像の形状にレーザーを照射して、光ラジカル重合性化合物を重合させた後、全面にエネルギーを照射することにより、光カチオン重合性化合物等の未硬化の物質を重合させることによって行われる。なお、像を形成する際のレーザー等と、全面にエネルギー照射されるエネルギーとは、通常異なる波長のものが用いられ、本発明に用いられる光カチオン重合性化合物は、像を形成する例えばレーザー等によって重合しない化合物であることが好ましい。
【0055】
また、このような光カチオン重合性化合物は、上記光ラジカル重合性化合物の重合が、比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、常温で液状であることが好ましい。
【0056】
c.その他
本発明に用いられる光重合性化合物は、後述するバインダー樹脂100重量部に対して10〜1000重量部、好ましくは10〜300重量部の割合で使用するとよい。
【0057】
ここで、体積型ホログラムは、例えばレーザー光又はコヒーレンス性の優れた光等によって光重合性化合物を重合させて干渉縞を形成し、像を形成するものである。したがって、体積型ホログラム用樹脂組成物に光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物が含有されている場合には、それぞれにおける屈折率が異なるものが選択されて用いられるものであり、どちらの屈折率が大きいものであってもよい。本発明においては、中でも材料選択性の面から光ラジカル重合性化合物の平均の屈折率が光カチオン重合性化合物より大きいものであることが好ましく、具体的には、平均の屈折率が0.02以上大きいことが好ましい。これは、光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物との平均の屈折率の差が上記値より低い場合には、屈折率変調が不十分となり、高精細な像を形成することが困難となる可能性があるからである。ここでいう平均の屈折率とは、光カチオン重合性化合物又は光ラジカル重合性化合物を重合させた後の重合体について測定する屈折率の平均値をいう。また、本発明の屈折率は、アッベ屈折率計により測定された値である。
【0058】
2.光重合開始剤
次に、本発明に用いられる光重合開始剤について説明する。本発明における光重合開始剤としては、上述した光重合性化合物により種類が異なるものである。すなわち、光重合性化合物が光ラジカル重合性化合物である場合は、光重合開始剤は光ラジカル重合開始剤を選択し、光重合性化合物が光カチオン重合性化合物である場合は、光重合開始剤は光カチオン重合開始剤を選択する必要がある。以下、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤に分けて説明する。
【0059】
a.光ラジカル重合開始剤
本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤としては、本発明の体積型ホログラム用樹脂組成物を用いて体積型ホログラム層を形成する際に照射される例えばレーザー等によって、活性ラジカルを生成し、上記光ラジカル重合性化合物を重合させることが可能な開始剤であれば、特に限定されるものではない。例えば、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等を使用することができる。具体的には、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名イルガキュア369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(商品名イルガキュア784、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)等があげられる。
【0060】
b.光カチオン重合開始剤
本発明に用いられる光カチオン重合開始剤としては、エネルギー照射によりブレンステッド酸やルイス酸を発生し、上記光カチオン重合性化合物を重合させるものであれば、特に限定されるものではない。体積型ホログラム用樹脂組成物が光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物を含有する場合、光カチオン重合性化合物は、特に上記光ラジカル重合性化合物を重合させる例えばレーザーやコヒーレンス性の優れた光等に対しては反応せず、その後全面に照射されるエネルギーによって感光するものであることが好ましい。これにより、上記光ラジカル重合性化合物が重合する際、光カチオン重合性化合物がほとんど反応しないまま存在させることができ、体積型ホログラムにおける大きな屈折率変調が得られるからである。
【0061】
具体的には、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η6−ベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示される。さらに、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等も使用することができる。
【0062】
c.その他
本発明において、光ラジカル重合開始剤としても、光カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示される。具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−t−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン化合物等があげられる。
【0063】
また、上記の光重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0064】
さらに、光重合開始剤は、後述するバインダー樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部の割合で使用するとよい。
【0065】
3.添加剤
次に、本発明の体積型ホログラム用樹脂組成物に添加することができる添加剤について説明する。
【0066】
a.増感色素
本発明においては、体積型ホログラム用樹組成物が増感色素を含有することが好ましい。上記光重合性化合物及び光重合開始剤は、紫外線に活性であるものが多いが、増感色素を添加することにより可視光にも活性となり、可視レーザー光を用いて干渉縞を記録することが可能となるからである。
【0067】
このような増感色素としては、干渉縞を記録する際に使用するレーザー光波長を考慮して選択されるものであるが、特に限定されるものではない。例えば、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、クマリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、シクロペンタノン系色素、シクロヘキサノン系色素等を使用することができる。
【0068】
上記シアニン系色素、メロシアニン系色素としては、3,3’−ジカルボキシエチル−2,2’−チオシアニンブロミド、1−カルボキシメチル−1’−カルボキシエチル−2,2’−キノシアニンブロミド、1,3’−ジエチル−2,2’−キノチアシアニンヨージド、3−エチル−5−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキサゾリジン等があげられる。
【0069】
また、上記クマリン系色素、ケトクマリン系色素としては、3−(2’−ベンゾイミダゾール)7−N,N−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジメトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)等があげられる。
【0070】
可視光領域に吸収波長を有する増感色素は、例えばホログラムを光学素子に用いる際には高透明性が要求されるため、このような場合には、干渉縞記録後の後工程、加熱や紫外線照射により分解される等して無色になるものが好ましい。このような増感色素としては、上述したシアニン系色素が好適に用いられる。
【0071】
また、増感色素は、後述するバインダー樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜2重量部の割合で使用するとよい。
【0072】
b.バインダー樹脂
本発明においては、体積型ホログラム用樹脂組成物がバインダー樹脂を含有することが好ましい。バインダー樹脂を含有することにより、成膜性、膜厚の均一性を向上させることができ、記録された干渉縞を安定に存在させることができるからである。
【0073】
このようなバインダー樹脂としては、ポリメタアクリル酸エステル又はその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニル又はその加水分解物、ポリビニルアルコール又はその部分アセタール化物、トリアセチルセルロース、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール又はその誘導体、ポリ−N−ビニルピロリドン又はその誘導体、スチレンと無水マレイン酸との共重合体又はその半エステル等をあげることができる。また、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルニトリル、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、及び酢酸ビニル等の共重合可能なモノマーからなる郡から選択される少なくとも1種のモノマーを重合させてなる共重合体を使用することもできる。また、側鎖に熱硬化又は光硬化可能な官能基を有するモノマーを重合させてなる共重合体も使用することができる。さらに、1種又は2種以上の混合物を用いることもできる。
【0074】
また、バインダー樹脂としては、オリゴマータイプの硬化性樹脂を使用することもできる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ノボラック、o−クレゾールノボラック、p−アルキルフェノールノボラック等の各種フェノール化合物とエピクロロヒドリンとの縮合反応により生成されるエポキシ化合物等があげられる。
【0075】
さらに、バインダー樹脂としては、ゾルゲル反応を利用した有機−無機ハイブリッドポリマーを使用することもできる。例えば、下記一般式(1)で表される重合性基を有する有機金属化合物とビニルモノマーとの共重合体があげられる。
【0076】
m M(OR’)n ・・・(1)
(ここで、MはSi、Ti、Zr、Zn、In、Sn、Al、Se等の金属、Rは炭素数1〜10のビニル基又は(メタ)アクリロイル基、R’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+nは金属Mの価数である)。
【0077】
金属MとしてSiを使用する場合の有機金属化合物の例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリアリルオキシシラン、ビニルテトラエトキシシラン、ビニルテトラメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等があげられる。
【0078】
また、上記ビニルモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等をあげることができる。
【0079】
ここで、体積型ホログラムは、干渉縞が屈折率変調又は透過率変調として記録され形成されるものである。よって、バインダー樹脂と光重合性化合物との屈折率差が大きいことが好ましい。本発明においては、バインダー樹脂と光重合性化合物との屈折率差を大きくするために、下記一般式(2)で表される有機金属化合物を体積型ホログラム用樹脂組成物中に添加することもできる。
【0080】
M(OR”)k ・・・(2)
(ここで、MはTi、Zr、Zn、In、Sn、Al、Se等の金属、R”は炭素数1〜10のアルキル基を表し、kは金属Mの価数である)。
【0081】
上記(2)式で表される化合物を体積型ホログラム用樹脂組成物中に添加すると、水、酸触媒の存在下でゾルゲル反応により、バインダー樹脂と網目構造を形成するため、バインダー樹脂の屈折率を高くするたけでなく、膜の強靭性、耐熱性を向上させる効果がある。よって、光重合性化合物との屈折率差を大きくするには、金属Mは高い屈折率を有するものを使用することが好ましい。
【0082】
上記バインダー樹脂は、体積型ホログラム用組成物中に、通常15〜50重量%の範囲内、好ましくは20〜40重量%の範囲内で用いられる。
【0083】
4.レーザーマーキング可能な化合物
上記材料に加えて、レーザー光照射により改質を促進する化合物を添加することもできる。ただし、改質の種類(後記)によっては必須ではない。
【0084】
このような化合物としては、無機系化合物、有機系化合物がある。
【0085】
フレーク状、粒子状等、様々な材料を使用することができるが、ホログラム像を記録する際に用いられるレーザー光等の波長(記録波長)より小さいサイズのものを使用することが好ましい。例えば、サイズとして平均粒径を考えた場合、平均粒径が記録波長より大きい場合には、ホログラムへの像形成に悪影響を及ぼす場合がある。ここで、例えばカラーホログラムを作製する際には、使用する記録波長の中で最も短い波長より小さい粒径の微粒子を選択することになる。よって、使用する記録波長により材料の平均粒径を適宜選択して用いればよいものである。
【0086】
具体的な平均粒径としては、50nm〜700nm、中でも50nm〜400nmの範囲内であることが好ましい。平均粒径が、上述した範囲より小さいものは製造が難しく、さらに、本発明の体積型ホログラム用樹脂組成物を用いて体積型ホログラム層を形成した場合に脆性を付与することが困難となり、また、平均粒径が上述した範囲より大きい場合には、ホログラムへの像形成に悪影響を及ぼす場合があるからである。
【0087】
ここで述べる平均粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、本発明においては、レーザー法により測定した値である。レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を細くし、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。上記平均粒径は、レーザー法による粒径測定機として、リーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup )社製 粒度分析計 マイクロトラックUPA Model-9230を使用して測定した値である。
【0088】
具体的な無機系材料としては、合成又は天然の雲母、タルク、カオリン、ガラスフレークシリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、二酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化コバルト、酸化鉄等の各種金属酸化物を使用することができる。また、Fe−Co,Fe−Ni,Fe−Co−Ni,Co−Ni,Fe−Mn−Zn,Fe−Ni−Zn,、Fe−Co−Ni−Cr,Fe−Co−Ni−P,Fe−Co−B,Fe−Co−Cr−B,Fe−Co−V等のFe,Co,Niを主成分とする各種の合金材料をあげることができる。これらには各種の特性を付与あるいは改善する目的でAl,Si,Ti,Cr,Mn,Mg,P等の元素を添加したものも含む。
【0089】
具体的な有機系材料としては、例えば、光エネルギーにより構造が変化するフォトクロミック化合物があり、クロメン系化合物、スピロオキサジン系化合物、スピロピラン系化合物、フルギド系化合物、アゾベンゼン系化合物等が例示される。
【0090】
また、無機−有機複合材料を使用することもでき、例えば、特許文献4に開示されている、アントラセン又はペンタエリスリトールで表面が被覆された二酸化チタン、雲母等が使用できる。
【0091】
上記化合物は、体積型ホログラム用樹脂組成物中に、1〜30重量%の範囲内、好ましくは5〜20重量%の範囲内で含有させるとよい。化合物の含有量が上述した範囲未満であると、レーザーマーキングの効果が小さく、含有量が上述した範囲を超えて多いと、体積型ホログラム層の強度や透明性、ホログラム記録性を保つことが困難となる場合があるからである。
【0092】
ホログラム層中に添加してレーザー光照射により改質を促進する別の化合物として、次のようなものがある。
【0093】
・マイクロカプセル
カプセル溶融温度はホログラム作製プロセス温度以上(例えば150℃以上)に設定する。カプセル内には干渉縞を乱すか若しくは破壊する化合物:可塑剤、光重合性化合物、を充填しておく。カプセル内が空洞の中空粒子でも可(中空シリカ、中空アクリル等)。
【0094】
・レーザー照射時の熱あるいは光で発泡(ボイド形成)する化合物
例えばAIBN等の熱重合開始剤。空隙ができることで大きな屈折率変調が得られ、マーキングされる。光重合開始剤も可能性としては考えられる。
【0095】
・バインダー骨格に結合させておく(フォトクロミック分子、金属キレート)。バインダーとして有機−無機ハイブリッドポリマーを使用すれば、特にマーキングを促進するような添加物を使用することなく、効率良くマーキングできる可能性がある。

次に、本発明の体積型ホログラム層の形成について説明する。
【0096】
本発明において、体積型ホログラム層の形成は、まず上記体積型ホログラム用樹脂組成物を、例えば目的とする基材フィルム上に、一般的なコーティング手段により塗布し、必要に応じて乾燥し、体積型ホログラム形成用層とする。また、体積型ホログラム形成用層は、例えば2枚のガラス板等の基材の間に体積型ホログラム用樹脂組成物を注入することによって形成されたものであってもよい。次に、上記体積型ホログラム形成用層に、通常ホログラフィー露光装置に用いられるレーザー光はコヒーレンス性の優れた光(例えば波長300nm〜1200nmの光)による露光によって、上述した光重合性化合物を重合させて、目的とする像の干渉縞を記録する。これにより、体積型ホログラム層が形成される。
【0097】
上記体積型ホログラム用樹脂組成物は、塗布の際、必要に応じて溶媒を用いてもよい。このような溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を使用することができる。また、これらの溶媒を1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0098】
また、体積型ホログラム用樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコーター、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター等の方法を使用することができる。
【0099】
上記体積型ホログラム用樹脂組成物の塗布量は、体積型ホログラム層の用途や種類によって適宜選択されるものであるが、通常1g/m2 〜100g/m2 の範囲内、好ましくは2g/m2 〜40g/m2 の範囲内とされ、体積型ホログラム形成用層の膜厚は、通常1μm〜100μm、中でも2μm〜40μmの範囲内とすることが好ましい。さらに、体積型ホログラム用樹脂組成物を硬化させて形成される体積型ホログラム層の膜厚としては、1〜100μm、中でも10〜40μmの範囲内とすることが好ましい。
【0100】
上記体積型ホログラム形成用層に、通常ホログラフィー露光装置に用いられるレーザー光はコヒーレンス性の優れた光(たとえば波長300nm〜1200nmの光)による露光によって、上述した光重合性化合物を重合させて、目的とする像の干渉縞を記録する。上記レーザー光としては、可視レーザー、例えばアルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、ヘリウム−ネオンレーザー(633nm)、YAGレーザー(532nm)等を使用することができる。
【0101】
上記の像の干渉縞を記録する方法としては、従来の公知の方法を使用することができる。例えば、上記体積型ホログラム形成用層に原版を密着させ、基材フィルム側から可視光、あるいは紫外線や電子線等の電離放射線を用いて干渉露光を行うことにより像の干渉縞が記録される。この干渉縞としては、特定の光を回折、透過させる機能を有するホログラムとしての干渉縞であれば特に限定されず、如何なるホログラムでもよいが、その例としては、均一な反射若しくは散乱面を持つホログラム散乱板、ホログラムミラー等があげられる。上記のようなレーザーマーキングとホログラム散乱板、ホログラムミラー等と組み合わせることで、視認性の良い情報が記録される。
【0102】
ホログラムミラーを作製するには、図6に示すように、上記のような体積型ホログラム記録用フォトポリマーからなる体積型ホログラム材料15を反射鏡16上に密着するか近接して配置し、体積型ホログラム材料15側から所定波長のコヒーレント光17を入射させ、体積型ホログラム材料15を透過し反射鏡16で正反射した反射光18とを体積型ホログラム材料15中で干渉させることで体積型ホログラム材料15中にホログラムミラーが記録される。
【0103】
また、ホログラム散乱板を作製するにはいくつかの方法があるが、図7に1ステップ撮影法、図8に2ステップ撮影法を示す。図7の1ステップ撮影法は、スリガラスのような散乱板20に対して予め拡散反射域と定めた位置に、上記のような体積型ホログラム記録用フォトポリマーからなる体積型ホログラム材料21を配置し、散乱板20の背面から同一光源から2分された所定波長のコヒーレント光22で照明して散乱板20の前面に出た散乱光24を物体光として体積型ホログラム材料21に入射させると同時に、同一光源から2分された所定波長の別のコヒーレント光23を参照光として、散乱光24と反対側からホログラム散乱板で想定される入射光と反対方向に進む参照光23を入射させることにより、体積型ホログラム材料21にホログラム散乱板が記録される。
【0104】
また、図8の2ステップ撮影法は、図8(a)に示すように、スリガラスのような散乱板20に対して予め拡散反射域と定めた位置に、透過型ホログラム乾板25を配置し、散乱板20の背面から同一光源から2分された所定波長のコヒーレント光22で照明して散乱板20の前面に出た散乱光24を物体光として透過型ホログラム乾板25に入射させると同時に、同一光源から2分された所定波長の別のコヒーレント光26を参照光として、散乱光24と同じ面側から任意の角度で入射させることにより、透過型ホログラム乾板25に第1のホログラムである透過型ホログラムを記録する。
【0105】
次に、この第1のホログラムを27とし、図8(b)に示すように、元の透過型ホログラム乾板25の位置に配置すると共に、散乱板20の位置に今度は上記のような体積型ホログラム記録用フォトポリマーからなる体積型ホログラム材料30を配置し、ホログラム27の実像をこの体積型ホログラム材料30の位置(図8(a)の散乱板20の位置)近傍に結像させるように、ホログラム27にその記録の際の参照光26と反対側から同じ波長の再生照明光28を照射して、ホログラム27からの回折光29を物体光として体積型ホログラム材料30に入射させると共に、ホログラム散乱板で想定される入射光と反対方向に進む参照光31を体積型ホログラム材料30の反対側から入射させることにより、体積型ホログラム材料30に第2のホログラムであるホログラム散乱板を記録する。この方法により、観察域を第1のホログラム27の範囲に限定するホログラム散乱板が作製できる。また、このホログラムを原版として、密着複製されたホログラムも原版の回折方向(散乱方向)が保持されたホログラム散乱板となる。図8と同様な方法で、2ステップ撮影法により、例えば模型等の3次元物体イメージを利用することもできる。また、散乱板パターンでもよい。
【0106】
さて、屈折率変調の促進、光重合性化合物等の重合反応完結のために以上のような干渉露光後に、紫外線による全面露光や加熱等の処理を適宜行うことができる。
【0107】
次に、本発明のホログラム転写箔について説明する。
【0108】
本発明のホログラム転写箔は、上記体積型ホログラム層と、基材フィルムと、感熱性接着剤層とを有するホログラム転写箔であって、上記基材フィルム上に上記体積型ホログラム層が形成され、上記体積型ホログラム層上に上記感熱性接着剤層が形成されていることを特徴とするものである。
【0109】
本発明によれば、ホログラム転写箔は本発明の体積型ホログラム層を有するものであり、上述したように体積型ホログラム層にレーザーマーキングによる情報を付与することで、高度なセキュリティ性を付与することができる。
【0110】
本発明のホログラム転写箔は、例えば図1に示すように、基材フィルム1と、その基材フィルム1上に形成された体積型ホログラム層2と、その体積型ホログラム層2上に形成された感熱性接着剤層3とを有するものである。
【0111】
また、本発明のホログラム転写箔は、上記感熱性接着剤と被着体とを接触させて、基材フィルム側から熱をかけることにより、感熱性接着剤により体積型ホログラム層と被着体とを接着することができ、被着体上に体積型ホログラム層を転写することができるのである。この際本発明によれば、上述した箔切れ性の良好な体積型ホログラム層を有することから、目的とする部分のみ、体積型ホログラム層を被着体に転写することが可能となり、様々な用途に用いることが可能なホログラム転写箔とすることができるのである。
【0112】
このような転写は、例えば図2に示すように、ホログラムを転写する被着体6の表面に、上記感熱性接着剤層3が接するように重ね合わせ、上記基材フィルム側からホログラムを転写する部分に、例えば加熱可能な金型7等で加熱・加圧して、上記感熱性接着剤層3を溶融接着させ、その後基材フィルム1を剥離することによって行うことができる。
【0113】
以下、ホログラム転写箔の他の構成について説明する。
【0114】
1.基材フィルム
本発明のホログラム転写箔に用いられる基材フィルムは、上述した体積型ホログラム層が形成されるものであり、体積型ホログラム層を被着体に転写する際には、この基材フィルム側から熱転写が行われるものである。したがって、上記体積型ホログラム層が形成可能であり、かつ熱転写の際に加わる熱や圧力に対して耐性を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の透明樹脂フィルムを用いることができる。
【0115】
また、このような基材フィルムの厚さとしては、ホログラム転写箔の用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、通常2μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmの範囲内とされる。
【0116】
2.感熱性接着剤層
次に、本発明のホログラム転写箔に用いられる感熱性接着剤層について説明する。感熱性接着剤層は、ホログラム転写箔の基材フィルムと反対側の表面に形成される層であり、体積型ホログラム層を熱転写により被着体上に転写する際に密着させて加熱等することにより体積型ホログラム層と被着体とを接着する層である。
【0117】
このような感熱性接着剤層としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル及びその共重合体樹脂、セルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。上記の中でも、180℃以下の温度でヒートシール可能な層であることが好ましく、さらにエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)の酢酸含量25%以上のものを用いることが好ましい。また、上記樹脂に、必要に応じて感熱性接着剤層が着色されたものであってもよい。
【0118】
3.ホログラム転写箔
次に、本発明のホログラム転写箔について説明する。本発明のホログラム転写箔は、上記体積型ホログラム層と、上記基材フィルムと、上記感熱性接着剤層とを有するものであって、上記基材フィルム上に体積型ホログラム層が形成され、上記体積型ホログラム層上に感熱性接着剤層が形成されているものであれば、その構成等は特に限定されるものではない。上記の層以外に例えば、図3に示すように、基材フィルム1と、その基材フィルム1上に形成された剥離層4と、その剥離層4上に形成された体積型ホログラム層2と、その体積型ホログラム層2上に形成された感熱性接着剤層3とを有するものであってもよい。またさらに、例えば図4に示すように、基材フィルム1と、その基材フィルム1上に形成された体積型ホログラム層2と、その体積型ホログラム層2上に形成された反射層5と、その反射層5上に形成された感熱性接着剤層3とを有するものであってもよい。
【0119】
上記剥離層とは、ホログラム転写箔を用いて、被着体上に体積型ホログラム層を転写する際に、上記基材フィルムと上記体積型ホログラム層とを剥離を容易に行うことを可能とする層であり、例えばアクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等から、1種又は2種以上を混合したもの等を用いることができる。上記の中でも、分子量20000〜100000程度のアクリル系樹脂単独、又はアクリル系樹脂と分子量8000〜20000の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とからなり、さらに添加剤として分子量1000〜5000のポリエステル樹脂が1〜5重量%含有する組成物からなることが特に好ましい。
【0120】
また、上記基材フィルムと上記体積型ホログラム層との間の剥離力が1〜5g/インチ(90°剥離)となるようなものであることが好ましい。また、その厚みは剥離力、箔切れ等の面から、0.1μm〜2μmの範囲内であることが好ましい。
【0121】
また、反射層としては、上記感熱性接着剤層と体積型ホログラム層との間に形成されるものであり、この反射層に光を反射する例えば金属薄膜等を用いると、不透明タイプのホログラムとなり、体積型ホログラム層と屈折率差がある透明な物質を用いた場合には、透明タイプのホログラムとなるが何れも本発明に用いることが可能である。このような反射層は、昇華、真空蒸着、スパッタリング、反応性スパッタリング、イオンプレーティング、電気めっき等の公知の方法により形成することが可能である。
【0122】
また、不透明タイプのホログラムを形成する金属薄膜としては、例えば、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Al、Mg、Sb、Pb、Pd、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、Rb等の金属及びその酸化物、窒化物等を単独若しくは2種類以上組み合わせて形成される薄膜があげられる。上記金属薄膜の中でもAl、Cr、Ni、Ag、Au等が特に好ましく、その膜厚は1〜10,000nm、中でも20〜200nmの範囲であることが好ましい。
【0123】
一方、透明タイプのホログラムを形成する薄膜としては、ホログラム効果を発現できる光透過性のものであれば、いかなる材質のものも使用できる。例えば、体積型ホログラム用樹脂組成物に含まれる樹脂と、屈折率の異なる透明材料があげられる。この場合の屈折率は、体積型ホログラム用樹脂組成物に含まれる樹脂の屈折率より大きくても、小さくてもよいが、屈折率の差は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.5以上であり、1.0以上が最適である。また、上記以外では20nm以下の金属性反射膜があげられ、好適に使用される透明タイプ反射層としては、酸化チタン(TiO2 )、硫化亜鉛(ZnS)、Cu・Al複合金属酸化物等があげられる。
【0124】
さらに、上記剥離層と体積型ホログラム層との間、体積型ホログラム層と感熱性接着剤層との間の何れか若しくは双方にバリア層を設けることもできる。本発明に使用する体積型ホログラム用樹脂組成物や剥離層ならびに感熱性接着剤層の組み合わせによっては、経時的に体積型ホログラム層から他の層への低分子量成分の移行が起こり、これに起因して記録されたホログラムのピーク波長が青側(短波長側)に移行したり、剥離層等にこれが移行した場合にはその剥離性を変化させたりする場合がある。上記のようなバリア層を設けることによって、これらの阻害要因を解消することができるのである。
【0125】
このようなバリア層として用いる材料としては、そのバリア性を発現する材料であれば、特に制限はないが、通常、透明性有機樹脂材料を用いることによってその目的を達成することができる。中でも、無溶剤系の3官能以上、好ましくは6官能以上の、紫外線や電子線等の電離放射線に反応する電離放射線硬化性エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等を用いることができる。特に、その中でもウレタン変性アクリレート樹脂がそのバリア性の高さから好ましく用いられる。
【0126】
また、これらの電離放射線硬化性樹脂としては、そのコーティング適性、最終的に得られるバリア層の硬度等を考慮すると、その分子量は500〜2000の範囲のものが好ましく用いられる。また、バリア層のコーティングは基本的に無溶剤系であるため、体積型ホログラム層、剥離層、感熱性接着剤層のどの層にも積層形成することができる。
【0127】
また、各層の密着性が弱い場合には、密着向上層等が形成されたものであってもよい。
【0128】
本発明のホログラム転写箔は、上記基材フィルム、体積型ホログラム層、及び感熱性接着剤層を、それぞれ順次積層して製造されるものであってもよいが、各部材をそれぞれ独立の工程によって準備し、これらを積層することによって製造されるものであってもよい。
【0129】
例えば、像を記録した体積型ホログラム層、剥離層を形成した基材フィルム、及び感熱性接着剤層を準備し、これらを積層する方法等があげられる。各部材をそれぞれ独立の工程によって準備する場合には、例えば基材フィルム上に剥離層等をドライプロセス等により形成することが可能となり、様々な材料を用いることや、製造効率等の面から好ましいものとすることができる。
【0130】
また、例えば、上記基材フィルム(剥離層が形成されていてもよい)上に体積型ホログラム層を形成した後、体積型ホログラム層に像を記録した部材と、感熱性接着剤層とを準備し、これらを積層するもの等であってもよい。この場合、上述した体積型ホログラム層を形成する組成物を支持体上に塗布し、例えばレーザー等を照射することにより、ラジカル重合性化合物を重合させて像を記録し、上記基材フィルムと積層する。その後、上記体積型ホログラム用樹脂組成物全面に照射することにより、像が記録された体積型ホログラム層と上記基材フィルムとが積層された部材を形成する。続いて、上記支持体を剥離して、感熱性接着剤を例えば100℃〜180℃に加熱しながら積層する方法等とすることができる。
【0131】
ここで、上述した本発明の体積型ホログラム積層体は、例えばプラスチックカード、携帯電話、金券、日用品又はCD−ROMのパッケージ等に適用可能である。
【0132】
また、上記基材フィルムと上記体積型ホログラム層との層間接着力を制御する方法も包含する。
【0133】
すなわち、本発明のホログラム転写箔の層構成において剥離層を有する場合には、剥離層と基材フィルムとの間の層間接着力Aと剥離層と体積型ホログラム層との間の層間接着力Bと、体積型ホログラム層と感熱性接着剤層との間の層間接着力Cの相対関係ならびにBの値が、下記の関係を満足することが望ましい。
【0134】
層間接着力: C≧B>A
B値: 600gf/インチ
次に、上記体積ホログラム層のレーザーマーキングについて説明する。
【0135】
マーキングするレーザーの種類としては、CO2 レーザーに代表される遠赤外線レーザー、Nd:YAGレーザー、Nd:YVOレーザーに代表される近赤外線パルスレーザー、可視光のパルスレーザー、エキシマレーザー、Nd:YAGレーザー又はNd:YVOレーザーの第3高調波を用いた紫外線レーザー、半導体レーザー、フェムト秒レーザー、ピコ秒レーザー等があげられる。特に、Nd:YAGレーザー、Nd:YVOレーザーは、高出力、高パルス安定性が利点としてあげられる。また、Nd:YAGレーザー又はNd:YVOレーザーの第3高調波を用いたレーザーは、高解像度、マーキング材料のUV光吸収性等が利点としてあげられる。また、フェムト秒レーザー、ピコ秒レーザー等の超短パルスレーザーは、材料を高温状態にすることなく分子の結合を切ることができるため、非熱での書き込みが可能となる。
【0136】
マーキング用レーザーの例として、
○ 近赤外線レーザー:コヒーレント社製VECTOR
波長:1064nm
平均出力:0.75〜3W以上
パルス幅:10〜100ns以上
○ 紫外線レーザー:コヒーレント社製AVIA Ultra
波長:355nm
平均出力:1〜2W以上
パルス幅:25ns以上
○ 紫外線レーザー:コヒーレント社製Paladin
波長:355nm
平均出力:4〜8W以上
パルス幅:15ps以上
○ 超短パルスレーザー:コヒーレント社製Mira
波長:700nm〜980nm
平均出力:0.65〜1.3W以上
パルス幅:200fs以下
があげられる。
【0137】
また、通常のマーキングは、体積型ホログラム層にレーザーを照射し、レーザーパルスエネルギーの吸収により高温での炭化等が起こり、情報が記録される。レーザー光によって、プラスチック材料を炭化させる際には、下記の条件が必要である。
【0138】
照射エネルギー:0.2〜5.0mJ
照射パルスパワー:平均1kW以上
照射レーザーパワー:3〜20W
パルス幅:3ピコ秒〜30フェムトフェムト秒の短パルスレーザーを使用することで良好に情報を記録。特に、10ピコ秒〜10フェムトフェムト秒が好ましい。
【0139】
上記ホログラム転写箔を、カード材料に転写した基材に対して、あるいは、その転写前に、上記レーザーを用いて情報を書き込むことにより、以下のような効果で体積型ホログラム層が改質されてコントラストが付く。
【0140】
○物理的効果
・熱による素材の炭化・溶融・アブレーション(エングレービング):マーキング部のホログラムに記録された干渉縞は完全に破壊される。
【0141】
体積型ホログラム層に特にドーパントを添加する必要なく、対象素材へのレーザーマーキングが可能。
【0142】
また、ドーパントを添加することで、マーキング特性を向上させることが可能。
【0143】
ドーパントとしては、前記した無機系材料がある(例えば、特許文献4に開示されている、アントラセン又はペンタエリスリトールで表面が被覆された二酸化チタン、雲母等が使用できる。)。
【0144】
○化学的効果
・熱又は光による使用素材の構造変化:マーキング部の干渉縞破壊はほとんどなく、下記のような添加物質の変質によりマーキングされる。
【0145】
例えば、光照射により屈折率(構造)が変化する材料:フォトクロミック材料、色素を添加しておく。
【0146】
一般的に、上記物理的効果を得るためには、強力な照射エネルギーが必要となるが、フォトクロミック材料等の光で屈折率が変化する材料を添加することで、容易にマーキングできる可能性がある。
【0147】
色素としては、前記の増感色素が使用できるが、その場合、ホログラム記録波長とレーザーマーキング波長をずらす必要がある。
【0148】
色素については、紫外領域から赤外領域まで様々な吸収波長を持つ化合物が多数あり、材料の選択範囲が広がる。
【0149】
以上のような物理的効果、化学的効果により、レーザー光照射部と非照射部にコントラストがつく。
【0150】
1.ホログラム層の炭化、溶融、除去等により、ホログラム層を改質又は破壊させ、照射部と未照射部にて明暗のコントラストを持たせた情報がホログラム層に記録される。
【0151】
2.レーザー光の熱、エネルギー、光等により、ホログラム層に含有される無機材料又は有機材料を介してホログラム層を改質させ、照射部と未照射部にて明暗のコントラストを持たせた情報がホログラム層に記録される。
【0152】
明暗のコントラストについては、
炭化の場合;明部:ホログラムイメージ、暗部:黒色
溶融の場合;明部:ホログラムイメージ、暗部:弱いホログラムイメージ又は基板イメージ
除去の場合;明部:ホログラムイメージ、暗部:基板イメージ
屈折率変調の場合;
増強=
明部:強いホログラムイメージ(照射部)、暗部:ホログラムイメージ(未照射部)
低減=
明部:ホログラムイメージ(未照射部)、暗部:弱いホログラムイメージ(照射部)
フォトクロミック材料の場合;明部:ホログラムイメージ、暗部:変色

次に、体積型ホログラム層へのマーキングのためのレーザー光の照射方法について説明する。ホログラム層への選択的はレーザー光の照射にはマスク等を介してレーザー光を直接照射する方法も適用できるが、エネルギー密度を高くし、体積型ホログラム層へ付与する情報の解像度を高くするために、照射するレーザー光を集光するようにすることが望ましい。その様子を図5に示す。レーザー8からのレーザー光10は集光レンズ9で集光させ、その集光点近傍に体積型ホログラムを記録した体積型ホログラム層2を位置させることで、その集光点近傍の改質領域11に変えて記録する。所望のパターンを記録するには、レーザー光10の集光ビームを変調しながら相対的に走査するようにすればよい。このレーザー光の照射は、転写箔(図1、図3、図4)の状態でも、被着体6への転写の後(図2)でも、あるいは、基材フィルム(保護層)1を設ける前のホログラムフィルムの状態でもよい。
【0153】
なお、図5のように、被着体6へ体積型ホログラム層2を転写した後にレーザー光10を集光させて照射する場合、体積型ホログラム層2だけでなくその下の被着体6のプラスチック表面を同時に改質させるようにすると、マーキングの視認性がより向上する。なお、図5の領域11’は被着体6のプラスチック表面の改質領域を示す。
【0154】
なお、本発明において、次のように構成してもよい。
【0155】
先に示した光重合性化合物等を含有したフィルムを体積型ホログラム層へ積層し、レーザー光照射する。レーザー光の熱及び光により照射部において、その積層体から化合物がホログラム層に熱拡散し、さらに光重合して固定化され、ホログラム層にマーキングされる。
【0156】
また、ホログラム転写箔構成におけるホログラム層に隣接するヒートシール層若しくは剥離層に化合物を添加し、レーザー光の熱及び光によりその化合物が固定化されたホログラム層に移行させて、さらに光重合して固定化され、ホログラム層にマーキングされる。
【実施例】
【0157】
以下、本発明のレーザーマーキングホログラムを実施例を用いて具体的に説明する。
【0158】
[実施例1]
下記組成からなる体積型ホログラム用樹脂組成物を調製した。
【0159】
ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量200,000)100重量部
2−フェノキシエチルアクリレート 120重量部
2−エトキシエチルアクリレート 120重量部
ヘキサアリルビイミダゾール 10重量部
2,5−ビス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]メチレン−シクロペンタノン
1重量部
1−ブタノール 100重量部
メチルエチルケトン 100重量部
上記体積型ホログラム用樹脂組成物を50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製ルミラーT60)上に、乾燥後膜厚10μmとなるように塗布して体積型ホログラム形成用層を得た。図6のように、この体積型ホログラム形成用層をミラー原版に密着させ、アルゴンイオンレーザー光(波長514.5nm)をPETフィルム側から法線方向から35°で入射し、入射光と反射光を干渉させて体積型ホログラム(ホログラムミラー)を記録した。さらに、加熱、紫外線定着露光により固定化された体積型ホログラムを得た。
【0160】
得られたホログラムに、コヒーレント社製AVIA Ultraを用い、集光したレーザー光を照射させることによって、ホログラムのコントラストの変化を確認した(炭化による改質)。これにより、個別情報を付与したセキュリティー性の高い体積型ホログラムを得た。
【0161】
[実施例2]
実施例1において、体積型ホログラム記録用樹脂組成物を下記の通り変更した以外は、実施例1と同様に体積型ホログラムを作製した。
【0162】
体積型ホログラム記録用樹脂組成物
ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量200,000)100重量部
9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン
80重量部
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル 70重量部
ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート 5重量部
3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニンヨードニウム塩 1重量部
1−ブタノール 100重量部
メチルエチルケトン 100重量部
実施例1と同様にレーザー光を照射させることによって、ホログラムのコントラストの変化を確認した(炭化による改質)。これにより、個別情報を付与したセキュリティー性の高い体積型ホログラムを得た。
【0163】
[実施例3、4]
実施例1、2の体積型ホログラム記録用樹脂組成物中に、レーザーマーキング化合物として平均粒径300nmの二酸化チタンを20重量部添加した以外は、実施例1と同様にして体積型ホログラムを作製した。実施例1と同様にして個別情報をレーザーマーキングした結果、セキュリティー性の高い体積型ホログラムを得た(熱溶融による改質)。
【0164】
[実施例5]
実施例4の体積型ホログラム層を使用し、下記方法によりホログラム転写箔を作製した。
【0165】
(剥離層/PETの作製)
下記組成からなる剥離層形成材料を25μm厚のPETフィルム(東レ(株)製ルミラーT60)上に、乾燥後膜厚1μmとなるように塗布して、剥離層/PETを作製した。
【0166】
ポリメチルメタクリレート(平均重量分子量3万5千) 97重量部
ポリエチレンワックス(平均重量分子量1万) 3重量部
ポリエステル(平均重量分子量1500) 0.3重量部
メチルエチルケトン 200質量部
トルエン 200質量部
(感熱性接着剤層/離型処理PETの作製)
下記の感熱性接着剤層形成材料を38μm厚の離型剤処理PETフィルム(東セロ(株)製SP−PET)上に、乾燥後膜厚3μmとなるように塗布して、感熱性接着剤層/離型処理PETを作製した。
【0167】
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂溶液(東洋モートン製AD1790−15)
(ホログラム転写箔の作製)
ミラー原版から剥がしたホログラム面に、剥離層/PETの剥離層面を80℃でラミネートし、PET/剥離層/体積型ホログラム層/PETからなる積層体を得た。次いで、体積型ホログラム層に積層されているPETを剥がし、ホログラム面に、感熱性接着剤層/離型処理PETの感熱性接着剤層を130℃でラミネートし、さらに離型処理PETを剥がすことで、PET/剥離層/体積型ホログラム層/感熱性接着剤層からなるホログラム転写箔を得た。
【0168】
(ホログラムの転写とレーザーマーキング)
被着体とした塩化ビニルカードに、得られたホログラム転写箔の感熱性接着剤層面を合わせ、PET側から、150℃に加熱した金型を押し当て、ホログラムを転写した。さらに、実施例1と同様の方法により、個別情報をレーザーマーキングにより書き込むことで、高度なセキュリティー性を持ったホログラム転写カードを作製することができた。また、二酸化チタン微粒子の添加により、転写時の箔切れ性は良好であった。

なお、本発明は、以上の実施形態、実施例に限定されるものではない。上記実施形態及び実施例は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものはいかなるものであっても、本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本発明に基づくホログラム転写箔の1例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に基づくホログラム転写箔の転写の1例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に基づくホログラム転写箔の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明に基づくホログラム転写箔の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明においてマーキングのためのレーザー光の照射方法の1例を説明するための図である。
【図6】ホログラムミラーの1つの作製方法を説明するための図である。
【図7】ホログラム散乱板を1ステップ撮影法で作製する方法を説明するための図である。
【図8】ホログラム散乱板を2ステップ撮影法で作製する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0170】
1…基材フィルム
2…体積型ホログラム層
3…感熱性接着剤層
4…剥離層
5…反射層
6…被着体
7…金型
8…レーザー
9…集光レンズ
10…レーザー光
11、11’…改質領域
15…体積型ホログラム材料
16…反射鏡
17…コヒーレント照明光
18…反射光
20…散乱板
21…体積型ホログラム材料
22…コヒーレント照明光
23…参照光
24…散乱光
25…透過型ホログラム乾板
26…参照光
27…第1のホログラム
28…再生照明光
29…回折光
30…体積型ホログラム材料
31…参照光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉縞が体積型ホログラム層に記録されているホログラムにおいて、前記体積型ホログラム層にレーザー光を選択的に照射することにより照射部が改質され、照射部と非照射部においてコントラストを持つ文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等が記録されていることを特徴とするレーザーマーキングホログラム。
【請求項2】
少なくとも、保護層、体積型ホログラム層、ヒートシール剤又は粘着剤が積層され、前記体積型ホログラム層に干渉縞が記録されているホログラムフィルム媒体において、前記体積型ホログラム層を改質させるレーザー光を前記体積型ホログラム層に照射することにより、前記体積型ホログラム層の照射部と非照射部においてコントラストを持つ文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等が記録されていることを特徴とするレーザーマーキングホログラム。
【請求項3】
前記レーザー光を照射するレーザーが、10ピコ秒から10フェムト秒の範囲にある超短パルスを発振するレーザーであることを特徴とする請求項1又2記載のレーザーマーキングホログラム。
【請求項4】
前記レーザー光を照射するレーザーが、紫外線領域のレーザーであることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載のレーザーマーキングホログラム。
【請求項5】
前記レーザー光が体積型ホログラム層に集光することによって照射部が改質されることを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載のレーザーマーキングホログラム。
【請求項6】
前記体積型ホログラム層が、少なくとも光重合性化合物、光重合開始剤を含有するフォトポリマーからなることを特徴とする請求項1から5の何れか1項記載のレーザーマーキングホログラム。
【請求項7】
前記体積型ホログラム層が、レーザー光照射により改質あるいは改質を促進する無機材料及び/又は有機材料を含有するフォトポリマーからなることを特徴とする請求項6記載のレーザーマーキングホログラム。
【請求項8】
干渉縞が記録されている体積型ホログラム層にレーザー光を照射して改質することにより情報が記録された請求項1から7の何れか1項記載のレーザーマーキングホログラムを備えたカードにおいて、個別の情報がレーザー光を照射して前記体積型ホログラム層に記録されていることを特徴とするレーザーマーキングホログラム付きカード。
【請求項9】
干渉縞が記録されている体積型ホログラム層にレーザー光を照射して改質することにより情報が記録された請求項1から7の何れか1項記載のレーザーマーキングホログラムを備えたカードにおいて、前記体積型ホログラム層に特定の光を回折、透過させる機能を有するホログラムとして干渉縞が記録されており、個別の情報がレーザー光を照射して前記体積型ホログラム層に記録されていることを特徴とするレーザーマーキングホログラム付きカード。
【請求項10】
少なくとも、基材、干渉縞が記録されている体積型ホログラム層にレーザー光を照射して改質することにより情報が記録されたレーザーマーキングホログラム、ヒートシール剤又は粘着剤が積層されていることを特徴とする体積型ホログラム転写箔。
【請求項11】
媒体に請求項10記載の体積型ホログラム転写箔が転写されていることを特徴とするレーザーマーキングホログラム転写体。
【請求項12】
媒体がカード形態であり、前記体積型ホログラム層に特定の光を回折、透過させる機能を有するホログラムとして干渉縞が記録されており、個別の情報がレーザー光を照射して前記体積型ホログラム層に記録されていることを特徴とする請求項11記載のレーザーマーキングホログラム転写体。
【請求項13】
干渉縞が記録されている体積型ホログラム層にレーザー光を照射して改質することにより情報が記録された請求項1から7の何れか1項記載のレーザーマーキングホログラムを備えたレーザーマーキングホログラム転写体において、個別の情報がレーザー光を照射して前記体積型ホログラム層に記録されていることを特徴とするレーザーマーキングホログラム転写体。
【請求項14】
干渉縞が記録されている体積型ホログラム層にレーザー光を照射して改質することにより情報が記録された請求項1から7の何れか1項記載のレーザーマーキングホログラムを備えたレーザーマーキングホログラム転写体において、前記体積型ホログラム層に特定の光を回折、透過させる機能を有するホログラムとして干渉縞が記録されており、個別の情報がレーザー光を照射して前記体積型ホログラム層に記録されていることを特徴とするレーザーマーキングホログラム転写体。
【請求項15】
コントラストを持つ文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等が記録されたホログラムを得るレーザーマーキング方法において、ホログラム干渉縞が記録された体積型ホログラム層の選択領域にレーザー光を照射することにより、ホログラム層に記録されている干渉縞を乱し、光を回折させる機能を増強又は低減させることを特徴とするホログラムレーザーマーキング方法。
【請求項16】
前記レーザー光の光照射点において体積型ホログラム層のガラス転移点温度以上の状態を作り、前記体積型ホログラム層の屈折率変調の平均化を行い、照射部と非照射部の明暗コントラストを付与することを特徴とする請求項15記載のホログラムレーザーマーキング方法。
【請求項17】
前記レーザー光の光照射点において高いエネルギー密度を実現させて分子の結合を制御して干渉縞の均一化を進め、照射部と非照射部のコントラストを付与することを特徴とする請求項15記載のホログラムレーザーマーキング方法。
【請求項18】
前記体積型ホログラム層が、少なくとも光重合性化合物、光重合開始剤を含有するフォトポリマーからなることを特徴とする請求項15から17の何れか1項記載のホログラムレーザーマーキング方法。
【請求項19】
前記体積型ホログラム層が、レーザー光照射により改質あるいは改質を促進する無機材料及び/又は有機材料を含有するフォトポリマーからなることを特徴とする請求項請求項18記載のホログラムレーザーマーキング方法。
【請求項20】
前記レーザー光が、10ピコ秒から10フェムト秒の範囲にある超短パルスのレーザー光であることを特徴とする請求項15から19の何れか1項記載のホログラムレーザーマーキング方法。
【請求項21】
前記レーザー光が、紫外線領域のレーザー光であることを特徴とする請求項15から20の何れか1項記載のレーザーマーキングホログラム。
【請求項22】
前記レーザー光を体積型ホログラム層に集光することによって照射部を改質することを特徴とする請求項15から21の何れか1項記載のレーザーマーキングホログラム。
【請求項23】
コントラストを持つ文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等が記録されたホログラムを得るレーザーマーキング方法において、ホログラム干渉縞が記録された体積型ホログラム層を備え、前記体積型ホログラム層に隣接する隣接層の選択領域にレーザー光を照射することにより、前記隣接層から前記体積型ホログラム層に前記隣接層に含有された化合物を移行させることで、前記体積型ホログラム層に記録されている干渉縞を乱し、光を回折させる機能を増強又は低減させることを特徴とするホログラムレーザーマーキング方法。
【請求項24】
前記体積型ホログラム層が、少なくとも光重合性化合物、光重合開始剤を含有するフォトポリマーからなることを特徴とする請求項23記載のホログラムレーザーマーキング方法。
【請求項25】
前記体積型ホログラム層が転写箔中に含有され、被着体と転写された後にレーザー光を照射することにより前記体積型ホログラム層に記録されている干渉縞の乱し、光を回折させる機能を増強又は低減させることを特徴とする請求項15から24の何れか1項記載のレーザーマーキングホログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−105732(P2007−105732A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295236(P2005−295236)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】