説明

レーザー加工装置

【課題】レーザー光線発振器から発振され集光レンズに入光されるレーザー光線のビーム径と発散角(平行度)を自動的に調整することができるレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】レーザー光線発振器53と集光レンズ541との間に配設されレーザー光線発振器から発振されるレーザー光線のビーム径と発散角を調整するビーム調整手段55と、ビーム調整手段55を通過したレーザー光線のビーム径と発散角を検出するビーム径および発散角検出手段6と、ビーム径および発散角検出手段6からの検出信号に基いてレーザー光線発振器53から発振されたレーザー光線のビーム径と発散角を演算し、演算されたレーザー光線発振器53から発振されたレーザー光線のビーム径と発散角およびビーム径および発散角検出手段6に入光する所望のビーム径と発散角に基いて該ビーム調整手段55を制御する制御手段とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物にレーザー加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。
【0003】
このような半導体ウエーハ等のウエーハのストリートに沿った分割方法として、ウエーハに形成されたストリートに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【0004】
上述したレーザー加工を実施するためのレーザー加工装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段とを具備している。このレーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振器と、該レーザー光線発振器から発振されたレーザー光線を集光する集光レンズを備えている。このようなレーザー光線照射手段においては、集光レンズに入射されるレーザー光線は所定のビーム径を有する平行ビームであることが望ましいが、レーザー光線発振器から発振されるレーザー光線は発散角を有しているため、レーザー光線発振器と集光レンズとの間にレーザー光線発振器から発振されるレーザー光線を平行にするためのビーム調整手段が配設される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、上記ビーム調整手段による調整は、集光レンズに入光されるレーザー光線をCCD等の受光手段で受光し、ビーム径と発散角(平行度)を確認しつつビーム調整手段を手動にて操作しなければならず、その調整作業に長時間を要する。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、レーザー光線発振器から発振され集光レンズに入光されるレーザー光線のビーム径と発散角(平行度)を自動的に調整することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にパルスレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段とを具備し、該レーザー光線照射手段がレーザー光線発振器と該レーザー光線発振器によって発振されたレーザー光線を集光する集光レンズとを具備しているレーザー加工装置において、
該レーザー光線発振器と該集光レンズとの間に配設され該レーザー光線発振器から発振されるレーザー光線のビーム径と発散角を調整するビーム調整手段と、
該ビーム調整手段を通過したレーザー光線のビーム径と発散角を検出するビーム径および発散角検出手段と、
該ビーム径および発散角検出手段からの検出信号に基いて該レーザー光線発振器から発振されたレーザー光線のビーム径と発散角を演算し、該演算された該レーザー光線発振器から発振されたレーザー光線のビーム径と発散角および該ビーム径および発散角検出手段に入光する所望のビーム径と発散角に基いて該ビーム調整手段を制御する制御手段と、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0008】
上記ビーム調整手段と集光レンズとの間にビーム調整手段を通過したレーザー光線を集光器に向けて反射せしめる反射ミラーが配設され、上記ビーム径および発散角検出手段は反射ミラーを透過したレーザー光線を入光するように構成されている。
また、上記ビーム調整手段は、上記レーザー光線発振器から発振されるレーザー光線の光軸上に配設され光軸に沿って移動可能に配設された第1のレンズおよび第2のレンズと、該第1のレンズと該第2のレンズをそれぞれ光軸に沿って移動せしめる第1の移動手段および第2の移動手段と、第1のレンズおよび第2のレンズの移動位置をそれぞれ検出する第1のレンズ位置検出手段および第2のレンズ位置検出手段とを具備している。
本発明の他の特徴は、以下に述べる説明によって明らかにされる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるレーザー加工装置においては、レーザー光線発振器と集光レンズとの間に配設されレーザー光線発振器から発振されるレーザー光線のビーム径と発散角を調整するビーム調整手段と、ビーム調整手段を通過したレーザー光線のビーム径と発散角を検出するビーム径および発散角検出手段と、ビーム径および発散角検出手段からの検出信号に基いてレーザー光線発振器から発振されたレーザー光線のビーム径と発散角を演算し、演算されたレーザー光線発振器から発振されたレーザー光線のビーム径と発散角およびビーム径および発散角検出手段に入光する所望のビーム径と発散角に基いてビーム調整手段を制御する制御手段とを具備しているので、レーザー光線発振器を組み付けた際や交換した際にはレーザー光線発振器から発振され集光レンズに入光されるレーザー光線のビーム径と発散角(平行度)を自動的に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0011】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記矢印Xで示す方向と直角な矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線ユニット支持機構4に矢印Zで示す方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0012】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上に矢印Xで示す加工送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上に矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0013】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられる。
【0014】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段374を備えている。加工送り量検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。この送り量検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。
【0015】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられる。
【0016】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33の割り出し加工送り量を検出するための割り出し送り量検出手段384を備えている。割り出し送り量検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。この送り量検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出する。なお、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。
【0017】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面に矢印Zで示す方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ねじロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられる。
【0018】
図示の実施形態のおけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、矢印Zで示す方向に移動可能に支持される。
【0019】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す方向(Z軸方向)に移動させるための移動手段53を具備している。移動手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザビーム照射手段52を案内レール423、423に沿って矢印Zで示す方向(Z軸方向)に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0020】
図示のレーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング521を含んでいる。また、レーザー光線照射手段52は、図2に示すようにケーシング521内に配設されたパルスレーザー光線発振手段53と、該レーザー光線発振手段53によって発振されたレーザー光線を集光する対物集光レンズ541を備えケーシング521の先端に配設された集光器54と、レーザー光線発振手段53と集光器54との間に配設されレーザー光線発振手段53から発振されるレーザー光線のビーム径と発散角を調整するビーム調整手段55と、該ビーム調整手段55と集光レンズ541との間に配設されビーム調整手段55を通過したレーザー光線を集光レンズ541に向けて反射せしめる反射ミラー58を具備している。
【0021】
上記パルスレーザー光線発振手段53は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器531と、これに付設された繰り返し周波数設定手段532とから構成されている。なお、パルスレーザー光線発振器531から発振されるパルスレーザー光線は、カタログや仕様書においては例えば発散角が1.8ラジアン±0.38ラジアン、ビーム径が1.7mm±0.4mm:50cmと記載されている。この例におけるパルスレーザー光線発振器531は、発振するパルスレーザー光線の発散角に±0.38ラジアンのバラツキがあり、ビーム径に±0.4mmのバラツキがある。
【0022】
上記集光器54は、上記チャックテーブル36に保持された被加工物と対向して配設され、上記反射ミラー58によって反射せしめられたレーザー光線を集光レンズ541によって集光してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する。なお、反射ミラー58は、図示の実施形態においては、ビーム調整手段55を通過したレーザー光線の99%を集光レンズ541に向けて反射せしめ、1%が透過するように構成されている。
【0023】
上記ビーム調整手段55は、図示の実施形態においては焦点距離が(f1)の凹レンズからなる第1のレンズ551と、該第1のレンズ551と間隔を置いて配設される焦点距離が(f2)の凸レンズからなる第2のレンズ552を具備している。この第1のレンズ551と第2のレンズ552は、図3に示すレンズ移動機構56に光軸方向に移動可能に配設されている。図3に示すレンズ移動機構56は、支持基台561と、該支持基台561の両側側辺に沿ってそれぞれ移動可能に配設された第1のレンズ支持部材562および第2のレンズ支持部材563と、該第1のレンズ支持部材562および第2のレンズ支持部材563をそれぞれ支持基台561の両側側辺に沿って移動せしめる第1の移動手段564および第2の移動手段565とからなっている。
【0024】
ビーム調整手段55を構成する第1のレンズ551と第2のレンズ552は、図2においてレーザー光線発振手段53から第1のレンズ551までの距離(L1)および第1のレンズ551から第2のレンズ552までの距離(L2)を調整することにより、レーザー光線発振手段53から発振された発散角を有するレーザー光線を平行なレーザー光線に調整することができる。
【0025】
図3に戻って説明を続けると、上記支持基台561は、両側側辺が互いに平行な第1の案内レール561aと第2の案内レール561bを形成している。第1のレンズ支持部材562は、支持基台561の第1の案内レール561aに嵌合する被案内レール562aを備えており、該被案内レール562aを第1の案内レール561aに嵌合することにより第1の案内レール561aに沿って移動可能に構成される。このように構成された第1のレンズ支持部材562に上記第1のレンズ551が取付けられる。第2のレンズ支持部材563は、支持基台561の第2の案内レール561bに嵌合する被案内レール563bを備えており、該被案内レール563bを第2の案内レール561bに嵌合することにより第2の案内レール561bに沿って移動可能に構成される。このように構成された第2のレンズ支持部材563に上記第2のレンズ552が取付けられる。なお、第1のレンズ支持部材562と第2のレンズ支持部材563にそれぞれ取付けられた第1のレンズ551と第2のレンズ552は、第1の案内レール561aおよび第2の案内レール561bと平行な同一光軸上に間隔を置いて配置される。
【0026】
上記第1の移動手段564は、上記支持基台561の第1の案内レール561aに沿って配設された雄ネジロッド564aと、該雄ネジロッド564aを回転駆動するためのパルスモータ564b等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド564aは、その一端が上記支持基台561に固定された軸受ブロック564cに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータパルスモータ564bの出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド564aは、第1のレンズ支持部材562に取付けられた雌ネジブロック564dに形成された貫通雌ネジ穴564eに螺合されている。従って、パルスモータ564bによって雄ネジロッド564aを正転および逆転駆動することにより、第1のレンズ支持部材562は第1の案内レール561aに沿って移動せしめられる。また、上記第2の移動手段565は、上記支持基台561の第5の案内レール561bに沿って配設された雄ネジロッド565aと、該雄ネジロッド565aを回転駆動するためのパルスモータ565b等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド565aは、その一端が上記支持基台561に固定された軸受ブロック565cに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータパルスモータ565bの出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド565aは、第2のレンズ支持部材563に取付けられた雌ネジブロック565dに形成された貫通雌ネジ穴(図示せず)に螺合されている。従って、パルスモータ565bによって雄ネジロッド565aを正転および逆転駆動することにより、第2のレンズ支持部材563は第2の案内レール561bに沿って移動せしめられる。このように構成された第1の移動手段564のパルスモータパルスモータ564bおよび第2の移動手段565のパルスモータパルスモータ565bは、後述する制御手段によって制御される。
【0027】
上記ビーム調整手段55は、図示の実施形態においては上記第1のレンズ551および第2のレンズ552の移動位置を検出する第1のレンズ位置検出手段571および第2のレンズ位置検出手段572を具備している。第1のレンズ位置検出手段571は、上記第1の移動手段564の雄ネジロッド564aと平行に配設されたリニアスケール571aと、第1のレンズ支持部材562に取付けられた雌ネジブロック564dに配設されリニアスケール571aに沿って移動する読み取りヘッド571bとからなっており、読み取りヘッド571bは検出信号を後述する制御手段に送る。また、第2のレンズ位置検出手段572は、上記第2の移動手段565の雄ネジロッド565aと平行に配設されたリニアスケール575aと、第2のレンズ支持部材562に取付けられた雌ネジブロック564dに配設されリニアスケール572aに沿って移動する読み取りヘッド572bとからなっており、読み取りヘッド572bは検出信号を後述する制御手段に送る。なお、第1のレンズ551および第2のレンズ552の移動位置を検出する検出手段としては、第1の移動手段564のパルスモータ564bおよび第2の移動手段565のパルスモータ565bを駆動する駆動パルスをカウントして求めることもできる。
【0028】
図2に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記ビーム調整手段55の第1のレンズ551および第2のレンズ552を通過したレーザー光線のビーム径と発散角を検出するビーム径および発散角検出手段6を具備している。ビーム径および発散角検出手段6は、上記反射ミラー58を透過したレーザー光線を直角に反射するシアリングプレート61と、該シアリングプレート61で反射したレーザー光線を撮像するCCD等からなる受光手段62を具備している。シアリングプレート61は、入光するレーザー光線が平行ビームになっていない場合には図4の(a)で示すように2重の円となって反射するとともに、2つの円が重なった部分には発散角に応じて干渉縞が干渉縞角度(α)をもって形成される。一方、シアリングプレート61に入光するレーザー光線が平行ビームの場合には、シアリングプレート61は図4の(b)で示すように2つの円が完全に重なり1つの円になるとともに、干渉縞の干渉角度(α)が零(0)となるように反射する。上記受光手段62は、上記シアリングプレート61で反射したレーザー光線を受光し、図4の(a)や(b)に示す受光信号を後述する制御手段に送る。
【0029】
図1に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の先端部には、レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段7が配設されている。この撮像手段7は、撮像素子(CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を制御手段8に送る。
【0030】
制御手段8はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)81と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)82と、後述する被加工物の設計値のデータや演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)83と、カウンター84と、入力インターフェース85および出力インターフェース86とを備えている。制御手段8の入力インターフェース85には、上記加工送り量検出手段374、割り出し送り量検出手段384、第1のレンズ位置検出手段571の読み取りヘッド571b、第2のレンズ位置検出手段572の読み取りヘッド572b、ビーム径および発散角検出手段6の受光手段62および撮像手段7等からの検出信号が入力される。そして、制御手段8の出力インターフェース86からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、レーザー光線照射手段52、レンズ移動機構56を構成する第1の移動手段564のパルスモータ564bおよび第2の移動手段565のパルスモータ565b等に制御信号を出力する。
【0031】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図2において、パルスレーザー光線発振器531からから発振されるレーザー光線の波長を(λ)、パルスレーザー光線発振器531から第1のレンズ551までの領域を領域Iとし、その長さを(L1)、パルスレーザー光線発振器531から発振されるレーザー光線のパルスレーザー光線発振器531におけるビーム径を(r1)、発散角を(θ1)とする。第1のレンズ551の領域を領域IIとし、第1のレンズ551の焦点距離を(f1)、第1のレンズ551への入光するレーザー光線のビーム径を(r2)、第1のレンズ551内における発散角を(θ2)とする。第1のレンズ551から第2のレンズ552までの領域を領域IIIとし、その長さを(L2)、第1のレンズ551におけるビーム径を(r3)、発散角を(θ3)とする。第2のレンズ552の領域を領域IVとし、第2のレンズ552の焦点距離を(f2)、第2のレンズ552への入光するレーザー光線のビーム径を(r4)、第2のレンズ552内における発散角を(θ4)とする。第2のレンズ552から受光手段62までの領域を領域Vとし、受光手段62によって受光されるビーム径を(r5)、発散角を(θ5)とする。
【0032】
図2に示す光学系において光学行列を作成し、各パラメータの関係を求めると、
(1)領域I:

(2)領域II:

(3)領域III:

(4)領域IV:

【0033】
このような条件のもとにおいては、上記パルスレーザー光線発振器531からから発振されるレーザー光線の波長を(λ)、上記図4の(a)における2重の円のズレ量を(S)、図4の(a)における干渉縞の間隔を(df)、干渉縞角度を(α)とすると、発散角(θ5)は数式1によって求めることができる。
【0034】
【数1】

また、上記条件のもとにおいては、次の数式2が成り立つ。
【0035】
【数2】

【0036】
次に、パルスレーザー光線発振器531から発振される発散角を有するレーザー光線を所定のビーム径を有する平行ビームにする制御について説明する。
上述したレーザー加工装置にパルスレーザー光線発振器531が装着されたならば、制御手段8は第1の移動手段564のパルスモータ564bおよび第2の移動手段565のパルスモータ565bを制御して第1のレンズ支持部材562および第2のレンズ支持部材563を移動し、レーザー光線発振手段53から第1のレンズ551までの距離(L1)および第1のレンズ551から第2のレンズ552までの距離(L2)が予め設定された初期値(カタログや仕様書に記載された値)(例えば、L1:40mm,L2:90mm)になるように位置付ける。次に、制御手段8は、レーザー光線発振手段53を作動してレーザー光線を発振せしめ、上述したようにビーム径および発散角検出手段6の受光手段62によって受光された上記図4の(a)に示す受光信号を入力する。そして、制御手段8は、受光手段62からの受光信号に基いてビーム径(r5)と2重の円のズレ量(S)と干渉縞の間隔(df)および干渉縞角度を(α)を求め、上記数式1によって発散角を(θ5)を演算する。
【0037】
このようにして発散角(θ5)を求めたならば、制御手段8は発散角(θ5)と上述したように受光手段62からの受光信号に基いて求めたビーム径(r5)を上記数式2に代入して、パルスレーザー光線発振器531から発振されるレーザー光線のビーム径(r1)と発散角(θ1)を求める。このとき、レーザー光線発振手段53から第1のレンズ551までの距離(L1)および第1のレンズ551から第2のレンズ552までの距離(L2)は、予め設定された上記初期値(例えば、L1:40mm,L2:90mm)を代入する。
【0038】
上述したように上記数式2を用いてパルスレーザー光線発振器531から発振されるレーザー光線のビーム径(r1)と発散角(θ1)を求めたならば、受光手段62によって受光されるビーム径(r5)と発散角を(θ5)所望の値(例えば、r5:4.0mm、θ5:0度)に設定する。そして、制御手段8は、上記数式1にレーザー光線のビーム径(r1)と発散角(θ1)および所望の値に設定したビーム径(r5)と発散角を(θ5)を代入して、レーザー光線発振手段53から第1のレンズ551までの距離(L1)および第1のレンズ551から第2のレンズ552までの距離(L2)を求める。
【0039】
以上のようにして、レーザー光線発振手段53から第1のレンズ551までの距離(L1)および第1のレンズ551から第2のレンズ552までの距離(L2)を求めたならば、制御手段8はビーム調整手段55のレンズ移動機構56を構成する第1の移動手段564のパルスモータ564bおよび第2の移動手段565のパルスモータ565bを制御し、第1のレンズ支持部材562に取付けられた第1のレンズ551のレーザー光線発振手段53からの距離が(L1)になるようにするとともに、第2のレンズ支持部材563に取付けられた第2のレンズ552の第1のレンズ551からの距離が(L2)になるようにする。このとき、制御手段8は、第1のレンズ位置検出手段571および第2のレンズ位置検出手段572からの第1のレンズ551および第2のレンズ552の位置信号に基いて第1の移動手段564のパルスモータ564bおよび第2の移動手段565のパルスモータ565bを制御する。このように、本発明によるレーザー加工装置においては、レーザー光線発振器を組み付けた際や交換した際にはレーザー光線発振器から発振され集光レンズに入光されるレーザー光線のビーム径と発散角(平行度)を自動的に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段およびビーム調整手段の構成を簡略に示すブロック図。
【図3】図2に示すビーム調整手段の斜視図。
【図4】図2に示すビーム調整手段を構成するビーム径および発散角検出手段によって検出される検出信号の説明図。
【符号の説明】
【0041】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
374:加工送り量検出手段
38:第1の割り出し送り手段
384:割り出し送り量検出手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
5:レーザー光線照射ユニット
51:ユニットホルダ
52:レーザー光線照射手段
53:レーザー光線発振手段
531:パルスレーザー光線発振器
54:集光器
541:集光レンズ
55:ビーム調整手段
551:第1のレンズ
552:第2のレンズ
56:レンズ移動機構
561:支持基台
562:第1のレンズ支持部材
563:第2のレンズ支持部材
564:第1の移動手段
565:第2の移動手段
571:第1のレンズ位置検出手段
572:第2のレンズ位置検出手段
6:発散角検出手段
61:シアリングプレート
62:受光手段
7:撮像手段
8:制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にパルスレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段とを具備し、該レーザー光線照射手段がレーザー光線発振器と該レーザー光線発振器によって発振されたレーザー光線を集光する集光レンズとを具備しているレーザー加工装置において、
該レーザー光線発振器と該集光レンズとの間に配設され該レーザー光線発振器から発振されるレーザー光線のビーム径と発散角を調整するビーム調整手段と、
該ビーム調整手段を通過したレーザー光線のビーム径と発散角を検出するビーム径および発散角検出手段と、
該ビーム径および発散角検出手段からの検出信号に基いて該レーザー光線発振器から発振されたレーザー光線のビーム径と発散角を演算し、該演算された該レーザー光線発振器から発振されたレーザー光線のビーム径と発散角および該ビーム径および発散角検出手段に入光する所望のビーム径と発散角に基いて該ビーム調整手段を制御する制御手段と、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該ビーム調整手段と集光レンズとの間にビーム調整手段を通過したレーザー光線を集光器に向けて反射せしめる反射ミラーが配設され、上記ビーム径および発散角検出手段は反射ミラーを透過したレーザー光線を入光するように構成されている、請求項1記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該ビーム調整手段は、該レーザー光線発振器から発振されるレーザー光線の光軸上に配設され光軸に沿って移動可能に配設された第1のレンズおよび第2のレンズと、該第1のレンズと該第2のレンズをそれぞれ光軸に沿って移動せしめる第1の移動手段および第2の移動手段と、該第1のレンズおよび該第2のレンズの移動位置をそれぞれ検出する第1のレンズ位置検出手段および第2のレンズ位置検出手段とを具備している、請求項1又は2記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
該ビーム径および発散角検出手段は、該第1のレンズおよび該第2のレンズを透過したレーザー光線を反射するシアリングプレートと、該シアリングプレートによって反射されたレーザー光線を受光し受光信号を該制御手段に送る受光手段とを具備しており、
該制御手段は、該受光手段からの受光信号に基いて該受光手段によって受光されるビーム径(r5)を求めるとともに、パルスレーザー光線発振器531からから発振されるレーザー光線の波長を(λ)、該受光手段によって受光された受光信号における2重の円のズレ量を(S)、干渉縞の間隔を(df)、干渉縞角度を(α)とし発散角(θ5)を次の数式1によって求め、

次に、制御手段は、該受光手段によって受光されるビーム径(r5)と数式1によって求めた発散角(θ5)に基いて、該パルスレーザー光線発振器から該第1のレンズまでの領域を領域Iとしてその長さを(L1)、該パルスレーザー光線発振器から発振されるレーザー光線のパルスレーザー光線発振器から所定距離離れた位置におけるビーム径を(r1)、発散角を(θ1)とし、該第1のレンズの領域を領域IIとして該第1のレンズの焦点距離を(f1)、第1のレンズへ入光するレーザー光線のビーム径を(r2)、該第1のレンズ内における発散角を(θ2)とし、該第1のレンズから該第2のレンズまでの領域を領域IIIとしてその長さを(L2)、該第1のレンズから所定距離離れた位置におけるビーム径を(r3)、発散角を(θ3)とし、該第2のレンズの領域を領域IVとして該第2のレンズの焦点距離を(f2)、第2のレンズへ入光するレーザー光線のビーム径を(r4)、該第2のレンズ内における発散角を(θ4)とし、該第2のレンズから該受光手段までの領域を領域Vとして該受光手段によって受光されるビーム径を(r5)、発散角を(θ5)とし、該受光手段によって受光されたレーザー光線に基いて求められたビーム径(r5)と数式1によって求めた発散角(θ5)を次の数式2に代入して該パルスレーザー光線発振器から発振されるレーザー光線の該ビーム径を(r1)と該発散角を(θ1)を求め、

但し、

次に、制御手段は、数式2によって求めた該ビーム径を(r1)と該発散角を(θ1)および所望の該ビーム径(r5)と該発散角を(θ5)を再度数式2に代入して、該パルスレーザー光線発振器から該第1のレンズまでの長さを(L1)および該第1のレンズから該第2のレンズまでの長さを(L2)を求める、請求項3記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−168323(P2008−168323A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3780(P2007−3780)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】