説明

レーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物

【課題】インキ汚れ抑制効果に優れた印刷原版及び印刷版の製造に適した撥インキ性に優れた樹脂組成物の提供。
【解決手段】シロキサン結合を含み、重合性不飽和基を有する数平均分子量が500以上10万以下の樹脂(a1)、シロキサン結合を含まず、重合性不飽和基を有する数平均分子量が1000以上30万以下の樹脂(a2)、および熱重合開始剤(c)を含有するレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な樹脂を含有するレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物と、該樹脂組成物を硬化せしめて得られうる印刷原版および該印刷原版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙・フィルムなどの軟包装に印刷を施す方法としてフレキソ印刷が広汎に用いられている。
段ボール、紙器、紙袋、軟包装用フィルムなどの包装材、壁紙、化粧板などの建装材、ラベル印刷などに用いられるフレキソ印刷は各種の印刷方式の中でその比重を高めている。これに用いる印刷版の製作には、通常、感光性樹脂が用いられることが多く、液状の樹脂、又はシート状に成形された固体樹脂板を用いられる。フォトマスクを感光性樹脂上に置き、マスクを通して光を照射し架橋反応を起こさせた後、非架橋部分を現像液で洗い落とすという方法が用いられてきた。近年、感光性樹脂表面にブラックレイヤーという薄い光吸収層を設け、これにレーザー光を照射し感光性樹脂板上に直接マスク画像を形成する。そのマスクを通して光を照射し架橋反応を起こさせた後、光の非照射部分の非架橋部分を現像液で洗い落とす、いわゆるフレキソCTP(Computer to Plate)という技術が開発され、印刷版製作の効率改善効果から、採用が進みつつある。しかしながら、この技術も現像工程が残るなど、効率改善効果も限られたものであり、レーザーを使って直接印刷原版上にレリーフ画像を形成し、しかも現像不要である技術の開発が求められている。
【0003】
その方法として直接レーザーで印刷原版を彫刻する方法が挙げられる。フレキソ印刷に代表される凸版印刷用の版材としては、レーザー彫刻版が挙げられる。製版時間の短縮、廃棄物の減少などの利点がある。
このような事情の下、特許文献1には、レーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物にシリコーンオイルを添加している。
また、特許文献2には、レーザー光を熱に変換する化合物、フィルム形成能を有する高分子化合物、光重合開始剤およびエチレン性不飽和モノマーを含有する光熱交換層ならびにシリコーンゴム層をこの順に積層し、該シリコーンゴム層形成後にエネルギー線による全面露光を施すことにより光熱変換層とシリコーンゴム層とを反応させたことを特徴とするレーザー感光性湿し水不要平版印刷原版に関する記載がある。
【特許文献1】特開2004−160898号公報
【特許文献2】特開平09−146264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レーザー彫刻されてなる印刷版において十分に撥インキ性に優れ、十分に版のインキ汚れが抑制されたものは知られていないのが実情である。
特許文献1に開示された技術は、シリコーンオイルを樹脂組成物の成分として添加しているもので、樹脂中へシロキサン結合を導入するものではない。また、シリコーンオイルの添加量を増加すると他の成分と均一に混合せずに分離が発生するという問題がある。
特許文献2に開示された発明は光熱変換層に更にシリコーンゴム層を積層してなる湿し水不要平版印刷原版であり、樹脂中へのシロキサン結合の導入とは異り、また印刷版のインキ汚れ抑制に関する記載もない。
すなわち、本発明は、特定の構造を有する新規な樹脂を含有する樹脂組成物を製造し、さらに、これを利用して版のインキ汚れ抑制にきわめて優れたレーザー彫刻可能な印刷原版及び印刷版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために樹脂について鋭意検討した結果、従来は他の成分との相分離が起こりやすく導入が困難であったシロキサン結合を、樹脂中の主鎖及び/又は側鎖にシロキサン結合を有する化合物を導入した新規な樹脂を含有する撥インキ性に優れた樹脂組成物を利用することで、卓越した版のインキ汚れ抑制効果を有したレーザー彫刻可能な印刷原版及び印刷版が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.シロキサン結合を含み、数平均分子量が500以上30万以下の樹脂(a1)、シロキサン結合を含まず、数平均分子量が1000以上30万以下の樹脂(a2)、および熱重合開始剤(c)を含有するレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
2.樹脂(a1)及び樹脂(a2)が重合性不飽和基を有する請求項1記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
3.前記樹脂組成物が、更に、重合性不飽和基を有する数平均分子量が1000未満の有機化合物(b)を含有する請求項1又は2に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
4.前記樹脂(a1)の主鎖に含まれるシロキサン結合を有する繰り返し単位の数平均分子量が500以上1万以下である請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
5.前記樹脂(a1)に含まれるシロキサン結合を有する繰り返し単位の数平均分子量が500以上5000以下である請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
6.前記樹脂(a2)がカーボネート結合、ウレタン結合、およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一種類の化学結合を有する樹脂である請求項1から5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
7.前記有機化合物(b)全量中、20質量%以上が脂環族の誘導体及び/又は芳香族の誘導体である請求項3から6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
8.20℃において液状である請求項1から7のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
9.数平均粒子径が0.01μm以上10μm以下である無機系微粒子を前記のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物100質量部に対して1〜100質量部をさらに含有する請求項1から8のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
10.支持体上に請求項1から9のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版樹脂組成物をシート状又は円筒状に形成する工程と、該形成した樹脂組成物を熱線を照射する方法、熱風を吹き付ける方法、熱風が対流する雰囲気に曝される方法、加熱したロールと接触させる方法からなる群より選択される少なくとも1つの方法で硬化せしめる工程とを含むレーザー彫刻印刷原版の製造方法。
11.請求項1から9のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物を硬化せしめることにより得られうるレーザー彫刻印刷原版。
12.前記レーザー彫刻印刷原版の非印刷面側に更に支持体を有する請求項11記載のレーザー彫刻印刷原版。
13.前記支持体が中空円筒状支持体である請求項12記載のレーザー彫刻印刷原版。
14.前記レーザー彫刻印刷原版と支持体の間に更に一層以上のクッション層を有する請求項12又は13に記載のレーザー彫刻印刷原版。
15.前記クッション層が中空マイクロカプセルを含む請求項14に記載のレーザー彫刻印刷原版。
16.前記レーザー彫刻印刷原版と中空円筒状支持体の間に更に1層以上の周長調整層を含む請求項13〜15のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版。
17.前記レーザー彫刻印刷原版の最外面を切削、研削、研磨から選択される少なくとも一種類の方法で表面調整されてなる請求項11から16のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版。
18.請求項11〜17のいずれか1項記載の印刷原版がレーザー彫刻されてなる印刷版。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、撥インキ性に優れた樹脂組成物を提供することができる。そして、この樹脂組成物を用いることにより版のインキ汚れ抑制効果にきわめて優れたレーザー彫刻可能な印刷原版及び印刷版を提供することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[樹脂組成物]
樹脂組成物は樹脂(a1)、樹脂(a2)および熱重合開始剤(c)を含む必要があり、印刷原版及び印刷版の製造に用いることができる。
また樹脂組成物は、特に制限されないが、樹脂(a1)、樹脂(a2)及び熱重合開始剤(c)の他に、用途や目的に応じて有機化合物(b)及び/又は無機系微粒子を含有することが好ましい。
さらに樹脂組成物は、含フッ素モノマー、石油ワックス類、炭化水素鎖を有するモノマー、重合禁止剤、紫外線吸収剤、染料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などの添加剤を添加することができる。
【0009】
また、樹脂組成物は、20℃で液状であることが好ましい。ここで言う20℃で液状とは、容易に流動変動し、かつ冷却により変形された形状に固化できるという性質を有する高分子体を意味し、外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状に回復する性質を有するエラストマーに対応する言葉である。この性質により、印刷原版を得るために樹脂組成物をシート状、もしくは円筒状に成形する際、良好な厚み精度や寸法精度を得られることができる。
また、樹脂組成物の20℃における粘度は、好ましくは、20℃において10Pa・s以上10kPa・s以下である。さらに好ましくは、50Pa・s以上5kPa・s以下である。粘度が10Pa・s以上であれば、作製される印刷版の機械的強度が十分であり、円筒状に成形する際であっても形状を保持し易く、加工し易い。粘度が10kPa・s以下であれば、高温にしなくとも変形し易く、加工が容易である。シート状あるいは円筒状の印刷版に成形し易く、プロセスも簡便である。特に厚み精度の高い印刷版を得るためには、該レーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物が重力により液ダレ等の現象を起こさないように粘度を好ましくは100Pa・s以上、より好ましくは200Pa・s以上、更に好ましくは500Pa・s以上である。
【0010】
[樹脂(a1)]
本実施の形態の樹脂(a1)は、撥インキ性の点からシロキサン結合を含む必要がある。シロキサン結合に位置は、樹脂の主鎖、側鎖のいずれでもよく、それら両方でもよいが、撥インキ性の点からは、少なくとも主鎖にシロキサン結合を含むことが好ましい。
【0011】
[シロキサン結合]
本実施の形態のシロキサン結合について説明する。
シロキサン結合とはケイ素(Si)と酸素(O)が交互に結合した分子構造を意味する。
本実施の形態の樹脂組成物が優れた撥インキ性を有することに関する機構について詳細は明らかではないが、樹脂中に安定的に結合しているシロキサン結合により、添加物として添加するシロキサン結合などよりもインキとの親和性が低いため、撥インキ性が向上するものと発明者は推定している。
前記、シロキサン結合を有する主鎖及び/又は側鎖は、下記平均組成式(1)で表されるシリコーン化合物を含む
SiO(4−p−r−s)/2 (1)
【0012】
式(1)中、Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、若しくはアリール基で置換された炭素数1〜30(置換前の炭素数)のアルキル基、ハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基又はその塩を含む1価の基、スルホ基又はその塩を含む1価の基、及びポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた1種又は2種以上の炭化水素基を表し、
Q及びXは、各々、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、若しくはアリール基で置換された炭素数1〜30のアルキル基、ハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基又はその塩を含む1価の基、スルホ基又はその塩を含む1価の基、及びポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた1種又は2種以上の炭化水素基を表し、p,r及びsは、
0<p<4、
0≦r<4、
0≦s<4、
及び(p+r+s)<4を満たす数である。
【0013】
本実施の形態において、樹脂(a1)はシロキサン結合を導入するための、シロキサン結合を有する化合物から得られうる。
シロキサン結合を導入するためのシロキサン結合を有する化合物としては、例えばシリコーンオイルが挙げられる。シリコーンオイルとしてはジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、ガム状のジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のシリコーンゴム、及びシリコーンゴムの環状シロキサン溶液、トリメチルシロキシケイ酸、トリメチルシロキシケイ酸の環状シロキサン溶液、ステアロキシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーンなどが挙げられる。
【0014】
中でも反応性を有するシリコーンオイルが好ましい。例としてモノアミン変性シリコーンオイル、ジアミン変性シリコーンオイル、特殊アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、脂環式エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、ハイドロジェン変性シリコーンオイル、アミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ・アラルキル変性シリコーンオイル、反応性シリコーンオイルシリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、側鎖アミノ・両末端メトキシ変性シリコーンオイル、ジオール変性シリコーンオイルが挙げられる。これら反応性を有するシリコーンオイルを用いることで、樹脂(a1)へのシロキサン結合の導入が容易となる。
【0015】
シロキサン結合を樹脂の主鎖部分へ導入するならば、反応性を有するシリコーンオイルの中でも両末端変性シリコーンオイルが好ましい。例として両末端アミノ変性シリコーンオイル、両末端エポキシ変性シリコーンオイル、両末端脂環式エポキシ変性シリコーンオイル、両末端カルビノール変性シリコーンオイル、両末端メタクリル変性シリコーンオイル、両末端ポリエーテル変性シリコーンオイル、両末端メルカプト変性シリコーンオイル、両末端カルボキシ変性シリコーンオイル、両末端フェノール変性シリコーンオイル、両末端シラノール変性シリコーンオイル、が挙げられる。
シロキサン結合を樹脂の側鎖部分へ導入する場合、反応性を有するシリコーンオイルの中でも片末端変性シリコーンオイルや側鎖変性シリコーンオイルが好ましい。例えば、片末端ジオール変性シリコーンオイル、側鎖モノアミン変性シリコーンオイル、側鎖ジアミン変性シリコーンオイル、側鎖エポキシ変性シリコーンオイル、側鎖カルビノール変性シリコーンオイル、側鎖カルボキシ変性シリコーンオイル、側鎖アミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、側鎖エポキシポリエーテル変性シリコーンオイル、側鎖エポキシ・アラルキル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0016】
中でも反応性、臭いや刺激性などの取扱い性の観点から両末端カルビノール変性シリコーンオイルや片末端ジオール変性シリコーンオイルが好ましい。
また、シロキサン結合を樹脂の主鎖に導入するためのシロキサン結合を有する化合物の分子量は、好ましくは500以上1万以下、より好ましくは500以上5000以下、さらに好ましくは500以上3000以下である。この範囲であれば、シロキサン結合による撥インキ性が十分に発揮され、また流動性、および該シリコーン化合物と樹脂(a2)との相溶性が確保できる傾向にあるため取扱いが容易であり、好ましい。
また、シロキサン結合を樹脂の側鎖に導入するためのシロキサン結合を有する化合物の分子量は、好ましくは1000以上3万以下、より好ましくは1万以上2万以下である。この範囲であれば、側鎖のシロキサン結合による分解性が十分に発揮され、また該シリコーン化合物の流動性が確保できるため取扱いが容易であり、好ましい。
ここで言う数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。
【0017】
また、樹脂(a1)は、熱により硬化する場合等分子内に重合性不飽和基を有する必要はない場合もあるが、分子内に重合性不飽和基を有することが好ましい。1分子あたり平均で0.3個以上の重合性不飽和基を有しているのが好ましい。1分子あたり平均で0.3個以上の重合性不飽和基を有している場合、印刷原版及び印刷版の機械強度が向上し、耐久性も良好となる傾向にあり好ましい。また、印刷原版及び印刷版の機械強度を考慮すると、樹脂(a1)中の重合性不飽和基の個数は1分子あたり0.5個以上がより好ましく、0.7個以上がさらに好ましい。硬化後の樹脂の機械的物性が向上すること、および重合性不飽和基を付与するプロセスが簡便である観点から、樹脂(a1)中の重合性不飽和基の個数は1分子あたり2以下が好ましい。ここで「重合性不飽和基」とは、ラジカル重合反応又は付加重合反応に関与する重合性官能基を意味する。重合性不飽和基の位置は、高分子主鎖、高分子側鎖の末端あるいは高分子主鎖中や側鎖中に直接結合していることが好ましい。樹脂(a1)1分子に含まれる重合性不飽和基の個数の平均は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)による分子構造解析法で求めることができる。
【0018】
樹脂(a1)の添加量は、樹脂(a2)100質量部に対して好ましくは1質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上50質量%以下である。添加量がこの範囲であれば、インキ汚れに対する効果が発現し、粘度も取り扱いやすい範囲となる傾向にある。
樹脂(a1)は、数平均分子量が500以上30万以下、好ましくは2000以上25万以下、より好ましくは3000以上20万以下の樹脂である。数平均分子量が500以上であると、印刷原版及び印刷版の強度が向上するため繰り返しの使用にも耐え得る傾向にあり好ましい。一方、10万以下であると、樹脂組成物の成形加工時の粘度が過度に上昇することがないため印刷原版及び印刷版をより容易に作製し得る傾向にあり好ましい。ここで言う数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。
【0019】
樹脂(a1)は、分子内にカーボネート結合、ウレタン結合、及びエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の化学結合を有しているのが好ましい。樹脂(a1)が前記化学結合を有する場合、印刷で用いられるエステル系溶剤を含有するインキ洗浄剤や炭化水素系溶剤を含有するインキ洗浄剤に対する印刷原版及び印刷版の耐性が向上する傾向にあるため好ましい。
樹脂(a1)を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、カーボネート結合、エステル結合を有し、かつ、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、アルコキシカルボニル基等の反応性基を複数有する数千程度の分子量の化合物と、上記反応性基と結合し得る官能基を複数有する化合物(例えば、水酸基やアミノ基等を有するポリイソシアネート等)を反応させ、分子量の調節および分子末端の結合性基への変換等を行った後、この末端結合性基と反応し得る官能基と重合性不飽和基を有する有機化合物とを反応させて末端に重合性不飽和基を導入する方法等を用いることができる。
【0020】
樹脂(a1)の製造に用いられるカーボネート結合を有する化合物としては、例えば、4,6−ポリアルキレンカーボネートジオール、8,9−ポリアルキレンカーボネートジオール、5,6−ポリアルキレンカーボネートジオール等の脂肪族ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。また、芳香族系分子構造を分子内に有する脂肪族ポリカーボネートジオールを用いてもよい。これらの化合物の末端の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゼン―2,4,6―トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート等のトリイソシアネート化合物を縮合反応させることにより、ウレタン結合を導入するとともに、高分子量化させることができる。さらに、末端の水酸基あるいはイソシアネート基を、重合性不飽和基を導入するために用いることもできる。
【0021】
樹脂(a1)の製造に用いられるエステル結合を有する化合物としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、マロン酸、コハク酸、イタコン酸、シュウ酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼラン酸、セバシン酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸化合物と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ピコナール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール等の分子内に2個以上の水酸基を有する化合物とを縮合反応させて得られるポリエステル類、ポリカプロラクトン等のポリエステル類等を挙げることができる。これらの化合物の末端の水酸基あるいはカルボキシル基にジイソシアネート化合物を縮合反応させることにより、ウレタン結合を導入するとともに、高分子量化させることができる。さらに、末端の水酸基、カルボキシル基あるいはイソシアネート基を、重合性不飽和基を導入するために用いることもできる。
【0022】
樹脂(a1)は、分子鎖中にカーボネート結合、エステル結合、及びエーテル結合からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化学結合を有する化合物、及び/又は、脂肪族飽和炭化水素鎖を有しウレタン結合を有する化合物、及び/又は脂肪族不飽和炭化水素鎖を有しウレタン結合を有する化合物、であることが印刷版の耐溶剤性を向上させるため好ましい。その中でも、カーボネート結合を有する化合物、脂肪族飽和炭化水素鎖を有しウレタン結合を有する化合物、脂肪族不飽和炭化水素差を有しウレタン結合を有する化合物は、溶剤インキで多用されるエステル系溶剤について特に高い耐溶剤性を示す。
樹脂(a1)の20℃における粘度は、好ましくは10Pa・s以上10kPa・s以下、より好ましくは30Pa・s以上7kPa・s以下、さらに好ましくは50Pa・s以上5kPa・s以下である。粘度が10Pa・s以上であれば、印刷原版にしたときの機械的強度が良好となる傾向にあり、粘度が10kPa・s以下であれば、常温でも変形し易く、他の組成物との混合や形成が容易となる傾向にある。
【0023】
[樹脂(a2)]
樹脂(a2)は、数平均分子量が1000以上30万以下、好ましくは2000以上25万以下、より好ましくは3000以上20万以下の樹脂である。
数平均分子量が1000以上であると、印刷原版及び印刷版の強度が向上するため繰り返しの使用にも耐え得る傾向にあり好ましい。一方、30万以下であると、樹脂組成物の成形加工時の粘度が過度に上昇することがないため印刷原版及び印刷版をより容易に作製し得る傾向にあり好ましい。ここで言う数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。
【0024】
また、樹脂(a2)は、熱により硬化する場合等分子内に重合性不飽和基を有する必要はない場合もあるが、分子内に重合性不飽和基を有することが好ましい。1分子あたり平均で0.3個以上の重合性不飽和基を有しているのが好ましい。1分子あたり平均で0.3個以上の重合性不飽和基を有している場合、印刷原版及び印刷版の機械強度が向上し、耐久性も良好となる傾向にあり好ましい。また、印刷原版及び印刷版の機械強度を考慮すると、樹脂(a2)中の重合性不飽和基の個数は1分子あたり0.5個以上がより好ましく、0.7個以上がさらに好ましい。硬化後の樹脂の機械的物性が向上すること、および重合性不飽和基を付与するプロセスが簡便である観点から、樹脂(a2)中の重合性不飽和基の個数は1分子あたり2以下が好ましい。ここで「重合性不飽和基」とは、ラジカル重合反応又は付加重合反応に関与する重合性官能基を意味する。重合性不飽和基の位置は、高分子主鎖、高分子側鎖の末端あるいは高分子主鎖中や側鎖中に直接結合していることが好ましい。樹脂(a2)1分子に含まれる重合性不飽和基の個数の平均は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)による分子構造解析法で求めることができる。
【0025】
ここで「重合性不飽和基」とは、ラジカル重合反応又は付加重合反応に関与する重合性官能基を意味する。重合性不飽和基の位置は、高分子主鎖、高分子側鎖の末端あるいは高分子主鎖中や側鎖中に直接結合していることが好ましい。樹脂(a2)1分子に含まれる重合性不飽和基の個数の平均は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)による分子構造解析法で求めることができる。
さらに、樹脂(a2)は、分子内にカーボネート結合、ウレタン結合、及びエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の化学結合を有しているのが好ましい。樹脂(a2)が前記化学結合を有する場合、印刷で用いられるエステル系溶剤を含有するインキ洗浄剤や炭化水素系溶剤を含有するインキ洗浄剤に対する印刷原版及び印刷版の耐性が向上する傾向にあるため好ましい。
【0026】
樹脂(a2)を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、カーボネート結合、エステル結合を有し、かつ、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、アルコキシカルボニル基等の反応性基を複数有する数千程度の分子量の化合物と、上記反応性基と結合し得る官能基を複数有する化合物(例えば、水酸基やアミノ基等を有するポリイソシアネート等)を反応させ、分子量の調節および分子末端の結合性基への変換等を行った後、この末端結合性基と反応し得る官能基と重合性不飽和基を有する有機化合物とを反応させて末端に重合性不飽和基を導入する方法等を用いることができる。
【0027】
樹脂(a2)の製造に用いられるカーボネート結合を有する化合物としては、例えば、4,6−ポリアルキレンカーボネートジオール、8,9−ポリアルキレンカーボネートジオール、5,6−ポリアルキレンカーボネートジオール等の脂肪族ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。また、芳香族系分子構造を分子内に有する脂肪族ポリカーボネートジオールを用いてもよい。これらの化合物の末端の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゼン―2,4,6―トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート等のトリイソシアネート化合物を縮合反応させることにより、ウレタン結合を導入するとともに、高分子量化させることができる。さらに、末端の水酸基あるいはイソシアネート基を、重合性不飽和基を導入するために用いることもできる。
【0028】
樹脂(a2)の製造に用いられるエステル結合を有する化合物としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、マロン酸、コハク酸、イタコン酸、シュウ酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼラン酸、セバシン酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸化合物と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ピコナール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール等の分子内に2個以上の水酸基を有する化合物とを縮合反応させて得られるポリエステル類、ポリカプロラクトン等のポリエステル類等を挙げることができる。これらの化合物の末端の水酸基あるいはカルボキシル基にジイソシアネート化合物を縮合反応させることにより、ウレタン結合を導入するとともに、高分子量化させることができる。さらに、末端の水酸基、カルボキシル基あるいはイソシアネート基を、重合性不飽和基を導入するために用いることもできる。
【0029】
樹脂(a2)は、分子鎖中にカーボネート結合、エステル結合、及びエーテル結合からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化学結合を有する化合物、及び/又は、脂肪族飽和炭化水素鎖を有しウレタン結合を有する化合物、及び/又は脂肪族不飽和炭化水素鎖有しウレタン結合を有する化合物、であることが印刷版の耐溶剤性を向上させるため好ましい。その中でも、カーボネート結合を有する化合物、脂肪族飽和炭化水素鎖を有しウレタン結合を有する化合物、脂肪族不飽和炭化水素差を有しウレタン結合を有する化合物は、溶剤インキで多用されるエステル系溶剤について特に高い耐溶剤性を示す。
樹脂(a2)の20℃における粘度は、好ましくは10Pa・s以上10kPa・s以下、より好ましくは30Pa・s以上7kPa・s以下、さらに好ましくは50Pa・s以上5kPa・s以下である。粘度が10Pa・s以上であれば、印刷原版にしたときの機械的強度が良好となる傾向にあり、粘度が10kPa・s以下であれば、常温でも変形し易く、他の組成物との混合や形成が容易となる傾向にある。
【0030】
[熱重合開始剤(c)]
本実施の形態における熱重合開始剤(c)として、好適な化合物は、ラジカル重合反応、開環重合反応に使用できる全ての熱重合開始剤である。ラジカル重合反応に用いられる熱重合開始剤として、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機珪素過酸化物、ヒドロペルオキシド、アゾ化合物、チオール化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ハロゲン化合物、アルデヒド化合物等を挙げることができる。また、開環重合反応に用いられる熱重合開始剤としては、マイクロカプセル中に熱重合開始剤を入れた潜在性熱重合開始剤を選択することが好ましい。また、本実施の形態の熱重合開始剤(c)は、20℃において液状であることが好ましい。液状であることによって樹脂(a1)及び/あるいは(a2)との混合が容易となる。
【0031】
好適な熱重合開始剤(c)の選択は、本実施の形態において特に重要である。熱重合開始剤(c)の熱安定性は、通常、10時間半減期の温度10h−t1/2の方法によって、即ち、熱重合開始剤(c)の当初の量の50%が、10時間後に分解してフリーラジカルを形成する温度で示される。これに関する更なる詳細については、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」,11巻、1頁以降、John Wiley & Sons,ニューヨーク,1988年、に示されている。
本実施の形態に特に好適な熱重合開始剤(c)は、通常、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも70℃の10h−t1/2を有する。特に好適な熱重合開始剤(c)は、80℃〜150℃の10h−t1/2を有する。
【0032】
本実施の形態で用いる熱重合開始剤(c)として、有機過酸化物が特に好ましい。化合物の具体例としては、モノパーオキシカーボネート類、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、ペルオキシエステル類、例えば、過オクタン酸t−ブチル、過オクタン酸t−アミル、ペルオキシイソ酪酸t−ブチル、ペルオキシマレイン酸t−ブチル、過安息香酸t−アミル、ジペルオキシフタール酸ジ−t−ブチル、過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル及び2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ある種のジペルオキシケタール、例えば、1,1−ジ(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン及びエチル3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート、ある種のジアルキルペルオキシド、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド及び2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ある種のジアシルペルオキシド、例えば、ジベンゾイルペルオキシド及びジアセチルペルオキシド、ある種のt−アルキルヒドロペルオキシド、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド及びクミルヒドロペルオキシドである。また、気泡を含有させるクッション性を有する層を形成する際に好ましいものとして、アゾ化合物を挙げることができる。例えば、1−(t−ブチルアゾ)ホルムアミド、2−(t−ブチルアゾ)イソブチロニトリル、1−(t−ブチルアゾ)シクロヘキサンカルボニトリル、2−(t−ブチルアゾ)−2−メチルブタンニトリル、2,2’−アゾビス(2−アセトキシプロパン)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)及び2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)等の化合物である。
【0033】
熱重合開始剤(c)の添加量としては、樹脂(a2)100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部以上3質量部以下である。添加量がこの範囲であれば、樹脂組成物を硬化させた場合であっても、硬化物の機械的物性を充分に確保し得る。
【0034】
[有機化合物(b)]
有機化合物(b)は、重合性不飽和基を有し、かつ数平均分子量が1000未満の有機化合物である。樹脂(a1)および(a2)との希釈のし易さから数平均分子量は1000未満が好ましく、低揮発性など取扱いの観点から100以上が好ましい。
重合性不飽和基の定義は、樹脂(a1)および(a2)の箇所でも記載したように、ラジカル又は付加重合反応に関与する重合性不飽和基である。
本実施の形態において、有機化合物(b)の含有量は特に制限されないが、樹脂(a2)100質量部に対して好ましくは20質量部以上300質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上250質量部以下である。有機化合物(b)の含有量が20質量部以上であると、樹脂組成物の硬化物である印刷原版及び印刷版が十分な機械的強度が得られる傾向にあり、300質量部以下であると、樹脂組成物の硬化物である印刷原版及び印刷版の硬化収縮が低減される傾向にある。
【0035】
有機化合物(b)の具体例としては、ラジカル反応性化合物として、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類、アセチレン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ハロオレフィン類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、アリールアルコール、アリールイソシアネート等のアリール化合物、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。その種類の豊富さ、価格、レーザー光照射時の分解性等の観点から(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましい例である。該誘導体として、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケン基、ビシクロアルケン基などを有する脂環族化合物、ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、フルオレン基などを有する芳香族化合物、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、グリシジル基等を有する化合物、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとのエステル化合物などが挙げられる。
【0036】
有機化合物(b)の具体例としてさらに、付加重合反応するエポキシ基を有する化合物としては、種々のジオールやトリオールなどのポリオールにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物、分子中のエチレン結合に過酸を反応させて得られるエポキシ化合物などを挙げることができる。具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドが付加した化合物のジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(カプロラクトン)ジオールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物を挙げることができる。
【0037】
これら重合性不飽和基を有する有機化合物(b)はその目的に応じて1種又は2種以上のものを選択できる。例えば印刷版として用いる場合、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤による膨潤を抑えるために用いる有機化合物として、長鎖脂肪族、脂環族又は芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上有することが好ましい。
樹脂組成物から得られる印刷原版の機械強度を高めるためには、有機化合物(b)としては脂環族誘導体及び/又は芳香族誘導体を含むことが好ましい。この場合、脂環族誘導体及び/又は芳香族誘導体の含有量は、有機化合物(b)の全体量の、好ましくは20質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。また、前記芳香族誘導体は、窒素、硫黄等の元素を有する芳香族化合物であっても構わない。
【0038】
印刷版の反発弾性を高めるため例えば特開平7−239548号公報に記載されているようなメタクリルモノマーを使用することもでき、公知の印刷用樹脂の技術知見等を利用して選択することができる。
有機化合物(b)は、分子鎖中にカーボネート結合、エステル結合、及びエーテル結合からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化学結合を有する化合物、及び/又は、脂肪族飽和炭化水素鎖を有しウレタン結合を有する化合物、及び/又は脂肪族不飽和炭化水素鎖有しウレタン結合を有する化合物、であることが印刷版の耐溶剤性を向上させるため好ましい。その中でも、カーボネート結合を有する化合物、脂肪族飽和炭化水素鎖を有しウレタン結合を有する化合物、脂肪族不飽和炭化水素差を有しウレタン結合を有する化合物は、溶剤インキで多用されるエステル系溶剤について特に高い耐溶剤性を示す。
【0039】
[添加剤]
本実施の形態において、添加剤としては例として、含フッ素モノマー、石油ワックス類、炭化水素鎖を有するモノマー、染料、顔料、重合禁止剤、紫外線吸収剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料が挙げられる。
添加剤の総添加量は特に制限されないが、樹脂(a2)100質量部に対して0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。
含フッ素モノマーは重合性の官能基を有する含フッ素モノマーであれば特に限定されるものではない。重合性の官能基を有する含フッ素モノマーとしては、二重結合、三重結合、エポキシ基、オキセタン骨格またはケテンアセタール骨格を有するモノマーなどが挙げられる。
【0040】
具体的には、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという。)、ビニリデンフルオライド(以下、VdFという。)、トリフルオロエチレン、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEという。)、3,3,3−トリフルオロプロペン、2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、パーフルオロ(ブチルエチレン)等の、直鎖状または分岐状の脂肪族フルオロオレフィン類、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(以下、PMVEという。)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下、PPVEという。)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)(以下、BVEという。)等のパーフルオロ(アルケニルビニルエーテル)、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(以下、PDDという。)、パーフルオロ−(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)等のエーテル性酸素原子含有環状パーフルオロオレフィン、(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(以下、FHAという。)、(パーフルオロヘプチル)メチルアクリレート、(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート(以下、FOAという。)等の(パーフルオロアルキル)エチルアクリレート、(パーフルオロブチル)エチルメタクリレ−ト、(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(以下、FHMAという。)、(パーフルオロヘプチル)メチルメタクリレート、(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート(以下、FOMAという。)等の(パーフルオロアルキル)エチルメタクリレート、α−フルオロスチレン、β−フルオロスチレン、α,β−ジフルオロスチレン、β,β−ジフルオロスチレン、α,β,β−トリフルオロスチレン、α−トリフルオロメチルスチレン、2,4,6−トリ(トリフルオロメチル)スチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、パーフルオロ(スチレン)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−α−メチルスチレン等のフルオロスチレン等が挙げられる。
中でも、パーフロロオクチルメタクリレートなどの長炭素鎖を有する化合物が好ましい。
【0041】
これらの含フッ素モノマーは、重合性の官能基以外の官能基を有していても構わない。
本実施の形態において用いられる石油ワックス(パラフィン)類は、炭化水素鎖が直鎖状であるn−パラフィン、分岐鎖状であるイソパラフィンおよび環状であるシクロパラフィンに大別される。中でも融点が65℃以下であるものが好ましく、更に好ましくは融点が60℃以下である。この範囲であれば、樹脂組成物中に添加した際に、ワックスが固形になりにくい傾向となる。
本実施の形態において用いられる炭化水素鎖を有するモノマーとして、デカン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、パルミチン酸ビニルのような脂肪族又は芳香族カルボン酸のビニルエステル類、デカン酸アリル、ステアリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリルのような脂肪族又は芳香族のアリルエステル類、ビニルエチルエーテル及び/又はビニルポリエーテルのようなアルキルビニルエーテル類が挙げられる。
また、視認性向上のために着色する方法としては、染料、顔料の使用が例として挙げられるが、具体的な顔料として「HELIOGEN BLUE D 6700」(商品名、BASF社製)、「PALIOGEN RED K 3580」(商品名、BASF社製)が好ましい。
【0042】
[無機系微粒子]
本実施の形態における無機系微粒子は、数平均粒子系が0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。数平均粒子径が上記範囲であれば切削、研削、研磨工程においてべとつきを低減でき、印刷原版の表面粗さへの影響が少なく、印刷画像に欠損が生じることなくレーザー彫刻によりパターン形成が可能である。また、本実施の形態における無機系微粒子は、多孔質微粒子あるいは無孔質超微粒子であることが好ましい。
本実施の形態における多孔質微粒子とは粒子中に細孔容積が0.1ml/g以上の微小細孔を有する微粒子、あるいは微小な空隙を有する微粒子と定義する。多孔質微粒子を含有することで印刷層表面を所望の表面粗さにする際に加工が容易となる。該加工の例として切削、研削や研摩などが挙げられる。多孔質微粒子により所望の表面粗さにする際の加工中に生じるカスなどのべとつきが低減し、印刷層表面を精密に加工することが容易となる。
【0043】
多孔質微粒子は比表面積が10m/g以上1500m/g以下、平均細孔径が1nm以上1000nm以下、細孔容積が0.1ml/g以上10ml/g以下、吸油量が10ml/100g以上2000ml/100g以下であることが好ましい。比表面積は−196℃における窒素の吸着等温線からBET式に基づいて求められる。また細孔容積および平均細孔径の測定には、窒素吸着法を用いる。吸油量の測定は、JIS−K5101にて行った。多孔質微粒子の比表面積が上記範囲内であれば、例えば印刷原版をレーザーによる彫刻にて画像部を形成する場合に、除去した分解物を吸収するのに好適である。
多孔質微粒子の数平均粒子径は0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.5μm以上8μm以下、更に好ましくは1μm以上5μm以下である。数平均粒子径が上記範囲であれば、切削、研削、研磨工程においてべとつきを低減でき、印刷原版の表面粗さへの影響が少なく、印刷画像に欠損が生じることなくレーザー彫刻によりパターン形成が可能である。
【0044】
多孔質微粒子の形状は特に限定するものではなく、球状、扁平状、針状、無定形、あるいは表面に突起のある粒子などを使用することができる。特に耐磨耗性の観点からは、少なくとも70%の粒子の真球度が0.5から1の範囲の球状粒子であることが好ましい。
多孔質微粒子の球状度合を規定する指環として、真球度を定義する。本実施の形態における真球度とは、多孔質微粒子を投影した場合に投影図形内に完全に入る円の最大値Dの、投影図形が完全に入る円の最小値Dの比(D/D)で定義する。真球の場合、真球度は1.0となる。好ましい多孔質微粒子の真球度は0.5以上1.0以下、より好ましくは0.7以上1.0以下である。0.5以上であれば、印刷版としての耐磨耗性が良好である。真球度1.0は、真球度の上限値である。多孔質微粒子として好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上の多孔質微粒子が、真球度0.5以上であることが望ましい。真球度を測定する方法としては、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した写真を基に測定する方法を用いることができる。その際、少なくとも100個以上の粒子がモニター画面に入る倍率において写真撮影を行うことが好ましい。また、写真を基に前記DおよびDを測定するが、写真をスキャナー等のデジタル化する装置を用いて処理し、その後画像解析ソフトウェアを用いてデータ処理することが好ましい。
【0045】
また、粒子の内部が空洞になっている粒子やシリカスポンジ等の均一な細孔径を有する球状顆粒体などを使用することも可能である。特に限定するものではないが、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス等を挙げることができる。また、層状粘土化合物のように、層間に数nmから数百nmの空隙が存在するものについては、細孔径を定義できないため、本実施の形態においては層間に存在する空隙の間隔を細孔径と定義する。
更に多孔質微粒子の表面をシランカップリンング剤、チタンカップリング剤、その他の有機化合物で被覆し表面改質処理を行い、より親水性化あるいは疎水性化した粒子を用いることもできる。これらの多孔質微粒子は1種類もしくは2種類以上のものを選択できる。
本実施の形態における無孔質超微粒子とは、細孔容積が0.1ml/g未満の粒子と定義する。無孔質超微粒子の数平均粒子径は、1次粒子を対象とする数平均粒子径であり、10nm以上500nm以下が好ましい。より好ましくは10nm以上100nm以下である。この範囲であれば、切削、研削、研磨工程においてべとつきを低減でき、印刷原版の表面粗さへの影響が少なく、印刷画像に欠損が生じることなくレーザー彫刻によりパターン形成が可能である。
【0046】
[印刷原版・印刷版]
本実施の形態の印刷原版について説明する。
本実施の形態の印刷原版は、前記樹脂組成物を硬化せしめて得られうるものであれば制限はない。印刷原版は、例えばシロキサン結合を主鎖に含む樹脂を含有する樹脂組成物をシート状又は円筒状に形成し、形成した当該樹脂組成物を熱線を照射する方法、熱風を吹き付ける方法、熱風が対流する雰囲気に曝される方法、加熱したロールと接触させる方法からなる群より選択される少なくとも1つの方法で硬化せしめる工程を含む方法によって製造されるものがある。熱による硬化工程によって印刷原版を得ることで光硬化工程と比較して印刷原版の厚膜化が容易となる。特に作業性の容易さの観点から熱線を照射する方法、加熱したロールと接触させる方法が好ましい。熱線としては、近赤外線、赤外線を挙げることができる。
【0047】
本実施の形態の樹脂組成物をシート状又は円筒状に成形する方法に制限はなく、既存の樹脂の成形方法を用いることができる。例えば、ポンプや押し出し機などの機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる方法(注型法);ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法などが例示できる。樹脂の性能を落とさない範囲で加熱しながら成形を行うことも可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理などを施してもよい。通常は、PET(ポリエチレンテレフタレート)やニッケルなどの素材からなるバックフィルムといわれる下敷きの上に樹脂組成物を成形するが、印刷機のシリンダー上に直接成形することもできる。その場合、継ぎ目のないシームレススリーブを成形することができる。また、スリーブ成形・彫刻装置(液状の樹脂組成物を円筒状支持体上に塗布し、光を照射して樹脂組成物を架橋硬化させる装置内に、熱を与えて樹脂組成物を硬化させる装置内にレーザー彫刻用のレーザー光源を組み込んだもの)を用いて印刷原版を成形することもできる。このような装置を用いた場合、スリーブを成形した後に直ちにレーザー彫刻して印刷版を成形することができるので、成形加工に数週間の期間を必要としていた従来のゴムスリーブでは到底考えられない短時間加工が実現可能となる。
【0048】
[支持体]
本実施の形態で用いられる支持体は、中空円筒状支持体であるのが好ましく、該中空円筒状支持体は強化プラスチック製であるのがよい。支持体が中空円筒状であることによって、支持体の印刷機への取り付け及び取り外しが容易となり、さらに支持体が円筒状であるため、軸の廻りに回転させながら樹脂組成物を塗布することで、より均一な塗布が可能となる。また、該中空円筒状支持体が強化プラスチック製であることにより、強度を保ちながら接着剤層との接着力を維持することができる。
本実施の形態においては、前記強化プラスチックは繊維強化プラスチックであって、該繊維強化プラスチックはエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリケトン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有するのが好ましい。
【0049】
また、無機化合物から形成された繊維を含むこともできる。繊維は特に限定するものではないがポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリイミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリフェニレンエーテル繊維、ポリビニルアルコール繊維、フェノール繊維、フッ素樹脂繊維、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ビニリデン繊維、ポリ−p−フェニレンビスオキサゾール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリクラール繊維、ポリケトン繊維、合成パルプ繊維などが挙げられる。また天然有機系化合物から形成された短繊維としては靭皮繊維、葉脈繊維、セルロースなどの植物系繊維などが好ましい例として挙げられる。
また、無機化合物から形成された繊維を含むこともできる。ガラス、カーボン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、アルミナ、ニッケル、チタン、銅、鉄、タングステン、クロムなどが好ましい例として挙げられる。
【0050】
[クッション層]
クッション層は特に限定はなく、ゴム弾性を有するものであれば使用することができる。例えば、天然ゴム材料、SBR、SBS、SIS等の合成ゴム材料、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレン等の軟質プラスチック材料等を挙げることができる。また、樹脂組成物を光硬化させて形成したシート状エラストマーを用いることもできる。これらの材料の中でも特に、印刷用途で用いられているポリエチレン、もしくはポリウレタンを主な成分としたシート材料を好ましい材料として挙げることができる。市販のフレキソ印刷用のクッションテープを使用することが簡便である。クッション層の厚みは0.10mm以上6.00mm以下であることが好ましい。より好ましくは0.20mm以上2.00mm以下、更に好ましくは0.30mm以上0.70mm以下である。クッション層の比重は0.20g/cm以上0.90g/cm以下であることが好ましい。より好ましくは0.30g/cm以上0.70g/cm以下、更に好ましくは0.40g/cm以上0.60g/cm以下である。クッション層のASKER−C硬度は30以上90以下であることが好ましい。
【0051】
また接着剤層に粘着性の層を使用することで、円筒状クッション使用後に円筒状支持体からクッション層を剥がし、円筒状支持体を再度使用することが容易となる。
本実施の形態においては、クッション層はさらに数平均粒子径が0.1μm以上200μm以下の微粒子を含むことが好ましい。そのような微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子、中空カプセル状微粒子等を用いることができる。上記微粒子を含有することで、チキソトロピー性が向上するため、支持体へのレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物の塗布が容易となる傾向にある。
微粒子の数平均粒子径は0.1μm以上200μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは1.0μm以上100μm以下である。ここで、微粒子の数平均粒子径は、顕微鏡観察により測定した長径の値の平均値をいう。具体的には、顕微鏡の視野に少なくとも50個程度の微粒子あるいは気泡が入るように倍率を調整し、該微粒子あるいは気泡の長径を測長する。測長機能を有する顕微鏡を用いることが好ましいが、カメラを用いて撮影した写真を基に寸法を測ってもよい。
【0052】
ここで、無機微粒子としては、無機微粒子の材質としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ゼオライト、水酸化マグネシウム、珪酸ジルコニウム等を挙げることができる。無機微粒子の平均粒子径は、好ましくは10nm以上30μm以下、より好ましくは0.1μm以上20μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上10μm以下である。
そして、有機微粒子としては、ポリシロキサン骨格、ポリスチレン骨格、ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格、ポリウレタン骨格、ポリアクリロニトリル骨格から選ばれる少なくとも1種の骨格を有する微粒子が、機械的強度と耐溶剤性のバランスを取る観点から好ましい。このような有機微粒子としては、例えば、シリコーンゴム、架橋アクリル酸微粒子、架橋アクリル酸多孔質微粒子、架橋ポリスチレン等が挙げられる。
【0053】
中空カプセル状微粒子とは外部の殻と内部のコアで組成が異なる、複合組成の1μmから数百μmの微粒子のことをいう。中空カプセルの製造方法には大きく分けて界面重合法、コアセルベーション法、界面沈澱法、液中乾燥法などがある。原理的には微粒化した芯物質を適当な媒質中に分散し、次いで微粒子の膜で被覆する。これまでの中空マイクロカプセルの製造方法としては、液体を内包するマイクロカプセルを生成し、その内部の液体を蒸散させて中空にする方法、あるいは同様のマイクロカプセルを熱膨張させて生成する方法がある。
中空カプセル状微粒子としては、中空カプセル状の有機微粒子の表面に無機微粒子が付着していてもよい。表面に無機微粒子が存在することにより、レーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物への溶解性が低下し、長期に安定してレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物中に存在し得る。表面に存在する無機微粒子の平均粒子径は、好ましくは10nm以上30μm以下、より好ましくは0.1μm以上20μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上10μm以下である。表面に存在する無機微粒子の材質としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ゼオライト、水酸化マグネシウム、珪酸ジルコニウム等を挙げることができる。
【0054】
[周長調整層]
本実施の形態の周長調整層の厚さは印刷機で印刷を行うリピート長に応じて任意に変えられることが好ましい。用いることのできる樹脂組成物としては、20℃において固体状の樹脂組成物であっても構わないが、周長調整層の厚さを任意に変えられる観点から、液状の樹脂組成物が特に好ましい。液状樹脂組成物中に溶剤が含まれていても構わないが、溶剤の除去工程が必要となるため、無溶剤型の液状樹脂組成物がより好ましい。液状樹脂組成物を用いた場合、膜厚の均一な継ぎ目のない層を形成することができる。液状樹脂組成物の好ましい粘度は、20℃において10Pa・s以上10kPa・s以下、より好ましくは500Pa・s以上5kPa・s以下である。厚膜を形成するためには、重力により液だれが発生し膜厚が変化してしまう可能性もあるので、前記のような粘度範囲が好ましい。また、成形する膜厚が非常に薄い場合には、粘度を低く抑えることが望ましい。粘度を低くする方法としては、溶剤を添加する方法も簡便な方法として用いることができる。
【0055】
[切削・研削・研磨]
表面を加工する際には、切削、研削、研磨から選択される少なくとも1種類の方法で表面調整することが好ましい。切削加工のみを用いて表面を加工することも可能であるが、切削工程、もしくは研削工程後に研摩加工を行うと印刷原版の表面形状をより精密に調節できるため好ましい。
印刷原版表面の切削による加工としては、特に制限するものではないが、例えば旋盤、ボール盤、フライス盤、形削り盤、平削り盤、NC工作機械などの刃物による加工が挙げられる。
また、印刷原版表面の研削による加工としては、砥石による加工などが挙げられる。研削加工に用いられる研削砥石の材質は、特に制限するものではないが、例としてアルミナ系や炭化珪素系の材質が挙げられる。該砥石の材質としては、例えば、アルミナ系では褐色アルミナ、白色アルミナ、淡紅色アルミナ、解砕形アルミナ等が挙げられ、炭化珪素系では黒色炭化珪素、緑色炭化珪素等が挙げられる。
研削加工に用いられる研削砥石の砥粒の粒度については、8番以上、5000番以下の砥石が好ましく用いられる。砥粒を結合させる結合剤の主要成分としては、例えば、長石可溶性粘度・フラックス、ベークライト人造樹脂、珪酸ソーダフラックス、天然・人造ゴム・硫黄、セラック天然樹脂、金属箔などが挙げられる。
印刷原版表面の研磨加工に用いる研磨体としては、特に制限するものでないが、例えば研磨紙、ラッピングフィルム、ミラーフィルムなどの研磨フィルム、研磨ホイールが挙げられる。
【0056】
該研磨紙や該研磨フィルム表面上の研磨剤の材質としては、金属、セラミックス、炭素化合物から選択される少なくとも1種類の微粒子が好ましい。金属微粒子の例としては、クロム、チタン、ニッケル、鉄等の比較的硬質の材料が好ましい。また、セラミックスの具体例としては、アルミナ、シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、ジルコニア、珪酸ジルコニウム、炭化珪素などが挙げられる。アルミナ質砥粒の素材質としては、褐色アルミナ質、解砕型アルミナ質研摩剤、淡紅色アルミナ質研摩剤、白色アルミナ質研削剤、人造エメリー研削剤などが挙げられる。炭化珪素質砥粒の素材質としては黒色炭化珪素質研磨剤、緑色炭化珪素質研摩剤などが挙げられる。また、炭素化合物としては、ダイヤモンド、グラファイト等の化合物を挙げることができる。特に人造ダイヤモンドは研磨剤として好ましい。他の研磨剤の材質として、ガラスビーズなどのガラス系研磨剤、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、メチルメタルアクリレートなどの樹脂系研磨剤、クルミ殻、杏の種、桃の種などの植物系研磨剤などを用いることもできる。さらに、研磨布と上記の研磨剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0057】
研磨剤の数平均粒子径は、0.1μm以上100μm以下のものが好ましい。より好ましくは3μm以上100μm以下である。さらに好ましくは粒度が9μm以上30μm以下である。100μm以下の範囲であれば印刷評価に好適に利用できる印刷原版が簡便に作成できる。
特に、得られる印刷原版の表面の凹凸を小さくすることにより、被印刷体へのインキ転移性や印刷品質を向上する点からは、研磨剤の平均粒子径は20μm以下であることが好ましい。一方、表面加工に要する時間を短縮化し、印刷原版の生産性を向上する点からは、研磨剤の平均粒子径は12μm以下であることが好ましい。
【0058】
研磨ホイール表面の粒度としては、60番から3000番までが好ましく用いられる。研磨ホイールの材質としては、特に制限されるものではないが、鉄、アルミナ、セラミックス、炭素化合物、砥石、木、ブラシ、フェルト、コルクなどが挙げられる。
研磨紙や研磨フイルム等の支持体の厚み、材質などは特に制限するものではないが、厚みは1μm以上1000μm以下の範囲が好ましい。より好ましくは10μm以上500μm、さらに好ましくは25μm〜125μmである。25μm以上125μm以下の範囲であれば巻き取りなどの取り扱い性が簡便である。支持体の形状は特に制限するものではないが、ロール、ディスク、シート、ベルトなどが挙げられる。
【0059】
また、研磨体を用いた研磨の際に液体を介在させない乾式研磨でも印刷原版表面の研磨は可能であるが、研磨力、研磨後の印刷原版表面の均一性、粉塵の発生が少ないこと、研磨中に発生する熱の除去などを考慮すると、液体を介在させながら印刷原版に研磨剤を接触させることが好ましい。使用する液体としては、特に限定するものではないが、例えば石油、機械油、アルカリ溶液、水などが挙げられる。
特に、研磨の際に介在させる液体として、水を用いることによって他の液体を用いるよりも印刷原版の変性が少なくなり、また廃液の処理も容易となる。
本実施の形態の表面調整の好ましい別の態様として、金属、セラミックス、炭素化合物等から選択される少なくとも1種類の物質からなる平均粒子径が0.1μm以上100μm以下程度の微粒子を印刷原版表面に衝突させる方法も挙げられる。
微粒子を印刷原版に衝突させる方法は、特に限定されるものではないが、例えばサンドブラスト、ショットブラスト、エアーブラスト、ブロワブラストなどが挙げられる。また、微粒子の材質としては、特に限定するものではないが、例えばガラスビーズなどのガラス系粒子、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、メチルメタルアクリレートなどの樹脂系粒子、クルミ殻、杏の種、桃の種などの植物系粒子などが挙げられる。
【0060】
[レーザー彫刻]
レーザー彫刻においては、形成したい画像をデジタル型のデータとし、コンピューターを利用してレーザー装置を操作して原版上にレリーフ画像を作成する。レーザー彫刻に用いるレーザーは、原版が吸収を有する波長を含むものであればどのようなものを用いてもよい。彫刻を高速度で行なうためには出力の高いものが望ましく、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー等の赤外線あるいは近赤外線領域に発振波長を有するレーザーが好ましい。また、紫外線領域に発振波長を有する紫外線レーザー、例えばエキシマレーザー、第3あるいは第4高調波へ波長変換したYAGレーザー、銅蒸気レーザー等は、有機分子の結合を切断するアブレージョン加工が可能であり、微細加工に適している。フェムト秒レーザーなどの極めて高い尖頭出力を有するレーザーを用いることもできる。また、レーザーは連続照射でも、パルス照射でも良い。一般に樹脂は10μm近傍の波長に吸収を持つため、10μm近傍に発振波長を有する炭酸ガスレーザーを使用する場合には、特にレーザー光の吸収を助けるような成分の添加は必要ではない。しかし、YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザーは1μm近辺に発振波長を有するが、この波長領域に光吸収を有する有機物はあまり無いので、光吸収を助ける成分である染料や顔料の添加が必要となる。このような染料の例としては、ポリ(置換)フタロシアニン化合物および金属含有フタロシアニン化合物;シアニン化合物;スクアリリウム染料;カルコゲノピリロアリリデン染料;クロロニウム染料;金属チオレート染料;ビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料;オキシインドリジン染料;ビス(アミノアリール)ポリメチン染料;メロシアニン染料及びキノイド染料などが挙げられる。顔料の例としてはカーボンブラック、グラファイト、亜クロム酸銅、酸化クロム、コバルトクロームアルミネート、酸化鉄等の暗色の無機顔料や鉄、アルミニウム、銅、亜鉛のような金属粉およびこれら金属にSi、Mg、P、Co、Ni、Y等をドープしたもの等が挙げられる。これら染料、顔料は単独で使用しても良いし、複数を組み合わせて使用しても良いし、複層構造にするなどのあらゆる形態で組み合わせても良い。
レーザーによる彫刻は、酸素含有ガス下、一般には空気存在下もしくは気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。彫刻終了後、レリーフ印刷版面にわずかに発生する粉末状もしくは液状の物質は適当な方法、例えば、溶剤や界面活性剤の入った水等で洗いとる方法、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射する方法、高圧スチームを照射する方法などを用いて除去してもよい。
【0061】
[印刷版]
本実施の形態における印刷版は、印刷原版表面に印刷パターンをレーザー彫刻することにより得られる印刷版である。
本実施の形態の印刷版の様式に制限はなく、フレキソ版、樹脂凸版、又はオフセット、ドライオフセット、反転オフセット又はグラビアオフセットに用いるブランケットなど、あらゆる印刷版として使用可能であるが、とくにフレキソ版として好適に用いられる。
【実施例】
【0062】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態を詳細に説明する。なお、以下において、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を各々意味する。
(1)粘度の測定
液状樹脂組成物の粘度は、B型粘度計(商標、B8H型;日本国、東京計器社製)を用いて20℃で測定した。また、樹脂(a1)及び(a2)の粘度は、同様の装置を用いて50℃で測定した。単位はPa・sである。
(2)樹脂(a1)及び(a2)の数平均分子量の測定
樹脂(a1)及び(a2)の平均分子量は、GPC法を用いて求めた多分散度(Mw/Mn)が1.1より大きいものであったため、GPC法で求めた数平均分子量Mnを採用した。具体的には、樹脂(a1)及び(a2)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。高速GPC装置(日本国、東ソー社製、商標、HLC−8020)とポリスチレン充填カラム(商標:TSKgel GMHXL;日本国、東ソー社製)を用い、テトラヒドロフラン(THF)で展開して測定した。カラムの温度は40℃に設定した。GPC装置に注入する試料としては、樹脂濃度が1wt%のTHF溶液を調製し、注入量10μlとした。また、検出器としては、樹脂紫外吸収検出器を使用し、モニター光として254nmの光を用いた。
【0063】
(3)重合性不飽和基の数の測定
樹脂(a1)及び(a2)の分子内に存在する重合性不飽和基の平均数は、未反応の低分子成分を液体クロマトグラフ法を用いて除去した後、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法、Bruker Biospin社製、 商標「Avance 600」)を用いて分子構造解析し求めた。例えば「1.7官能」とは、分子内に存在する重合性不飽和基の平均数が1.7個であることを意味する。
(4)支持体への樹脂組成物(A)の塗工
印刷機のシリンダーとの内径を調整するために、内径152.905mm、外径175.187mm、幅1000mmのクッションブリッジスリーブ(独、AKL社製、商標「OptiFlex−Cushion Bridge」、PU50)を用いた。それぞれクッションブリッジスリーブのASKER−C硬度はPU50は78であった。
樹脂の支持体として繊維強化プラスチック製スリーブ(独、AKL社製、商標「OptiFlex−Basic」)を用いた。内径は175.18mm、外径は175.88mm、幅1000mmであった。該支持体上にレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物をドクターブレードで塗工し、130℃で60分間保持し硬化させ印刷原版を得た。硬化後の印刷周長が560mmとなるように印刷原版の最外面を研削、研磨で調整した。ドクターブレードで調節し、印刷性評価用のレーザー彫刻印刷原版を作成した。
【0064】
(5)レーザー彫刻
レーザー彫刻は、炭酸ガスレーザー彫刻機(英国、ZED社製、商標「ZED−mini−1000」、米国、コヒーレント社製、出力250W炭酸ガスレーザーを搭載)を用いて行った。彫刻画像は120Lines per inchで作成した。網点は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%のパターンを作成した。別途、1%から99%までのグラデーションのパターンを作成した。細線は60μm幅、100μm幅、150μm幅、200μm幅、250μm幅、500μm幅のパターンを作成した。白抜き線は60μm幅、100μm幅、150μm幅、200μm幅、250μm幅、500μm幅のパターンを作成した。細字は2point、3point、4point、6point、8pointを明朝体、ゴシック体で作成した。白抜き細字は2point、3point、4point、6point、8pointを明朝体、ゴシック体で作成した。
【0065】
(6)彫刻品質
彫刻した印刷原版の品質を確認するためレリーフ深度の測定を行った。「レリーフ深度」とは凸版印刷版の印刷部(レリーフ面)と非印刷部(バック面)の高低差を意味する。なお、レリーフ深度を大きく設定すると、微細な網点部のパターンのレリーフ面の面積が確保できず、形状も崩れて不鮮明となるため、レリーフ深度を0.5mmとした。版再現性の確認としてドットの形状が円錐状となっているか観察した。「版再現性」とは印刷画像を凸版印刷版に転写する正確さを意味する。また、版再現性の確認としてドットの形状が円錐状となっているか観察した。
【0066】
(7)インキ汚れ抑制効果
インキ汚れ抑制効果は、インキ汚れ発生までの時間及び印刷後のインキ汚れにより評価した。
印刷機は「FlexPress16S」(独、Fischer&Krecke社製、商標)、インキは溶剤「XS−812」(大日本インキ化学工業社製、商標)、インキ粘度はザーンカップ4番で8.4秒に調整、被印刷体として厚み45μmのコロナ処理済み乳白ポリエチレンを用い、アニロックスロールの線数は750lpi、アニロックスロールのセル容積は5cc)、印刷速度は200m/分で行った。印刷物上で網点部分がインキで汚れてくるまでの時間を測定した。インキ汚れが発生するまでの時間が20分以上であれば、インキ汚れを抑制する印刷版として使用しやすい傾向がある。
また、印刷終了後の版面のインキの残存を観察し、版面のインキ汚れを評価した。ほとんどインキ汚れが見られないものをA、ややインキ汚れが発生するものをB、顕著にインキ汚れが発生するものをCとして評価した。
(8)引張物性(引張強度、伸び)
SHIMADZU社製「AGS−100G」(商標)を用いて、JIS K−6301に基づき引張物性(引張強度、伸び)を測定した。引張物性試験の印刷版は SUS板にて該樹脂組成物を挟み、加熱温度130℃、圧縮力3.0×10Paで60分間プレス機(株式会社神藤金属工業所製、商品名「NF−37−H−2型」)にて加圧加温した。厚みは1mmとなるように調整した。プレス後は同プレス機の冷却プレスで圧力をかけずに3分間冷却を行った。
【0067】
[製造例1:樹脂(α1)の調製]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに信越化学工業社製、両末端型カルビノール変性反応性シリコーンオイルである、「KF−6003」(数平均分子量5100、OH価22.0)を413.72gとgとトリレンジイソシアナート11.05gを加え、80℃加温下で約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート5.49gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2.0個)である数平均分子量約24000の樹脂(α1)を調製した。この樹脂は主鎖にシロキサン結合を含み、20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
【0068】
[製造例2:樹脂(α2)の調製]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに信越化学工業社製、両末端型カルビノール変性反応性シリコーンオイルである、「KF−6003」(数平均分子量5100、OH価22.0)を413.72gとgとトリレンジイソシアナート11.81gを加え、80℃加温下で約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート4.13gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2.0個)である数平均分子量約32000の樹脂(α2)を調製した。この樹脂は主鎖にシロキサン結合を含み、20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
【0069】
[製造例3:樹脂(α3)の調製]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに信越化学工業社製、両末端型カルビノール変性反応性シリコーンオイルである、「KF−6003」(数平均分子量5100、OH価22.0)を413.72gとgとトリレンジイソシアナート12.58gを加え、80℃加温下で約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート2.76gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2.0個)である数平均分子量約48000の樹脂(α3)を調製した。この樹脂は主鎖にシロキサン結合を含み、20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
【0070】
[製造例4:樹脂(α4)の調製]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに信越化学社製、両末端型カルビノール変性反応性シリコーンオイルである、「X−22−160AS」(数平均分子量935、OH価120.0)を579.63gとgとトリレンジイソシアナート98.15gを加え、80℃加温下で約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート17.53gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2.0個)である数平均分子量約12000の樹脂(α4)を調製した。この樹脂は主鎖にシロキサン結合を含み、20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
【0071】
[製造例5:樹脂(α5)の調製]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに信越化学社製、両末端型カルビノール変性反応性シリコーンオイルである、「X−22−160AS」(数平均分子量935、OH価120.0)を579.63gとgとトリレンジイソシアナート103.04gを加え、80℃加温下で約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート8.83gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2.0個)である数平均分子量約24000の樹脂(α5)を調製した。この樹脂は主鎖にシロキサン結合を含み、20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
【0072】
[製造例6:樹脂(α6)の調製]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに信越化学工業社製、両末端型カルビノール変性反応性シリコーンオイルである、「KF−6003」(数平均分子量5100、OH価22.0)を413.72gとgとトリレンジイソシアナート11.81gを加え、80℃加温下で約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート4.13gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2.0個)である数平均分子量約32000の樹脂(α6)を調製した。この樹脂は主鎖にシロキサン結合を含み、20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
【0073】
[製造例7:樹脂(α7)の調製]
温度計、攪拌機、還流器を備えた2Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDL T4672」(数平均分子量2059、OH価54.5)1318gとトリレンジイソシアナート76.8gを加え、80℃加温下で約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート52.6gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約1.7個)である数平均分子量約7000の樹脂(α7)を調製した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
【0074】
[製造例8:樹脂(α8)の調製]
温度計、攪拌機、還流器を備えた2Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDL T4692」(数平均分子量2033、OH価55.2)1351gとトリレンジイソシアナート80.17gを加え、80℃加温下で約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート63.44gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約1.7個)である数平均分子量約7000の樹脂(α8)を調製した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
【0075】
[製造例9:樹脂(α9)の調製]
温度計、攪拌機、還流器を備えた2Lのセパラブルフラスコにクラレ株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「C−2015N」(数平均分子量2011、OH価55.8)1324gとトリレンジイソシアナート79.77gを加え、80℃加温下で約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート62.23gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約1.7個)である数平均分子量約7000の樹脂(α9)を調製した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
上記各製造例で用いた化合物や樹脂の組成を表1、表2にまとめた。
【0076】
[実施例1]
樹脂(a2)として樹脂(α7)100質量部に対し、樹脂(a1)として樹脂(α2)5質量部、熱重合開始剤(c)としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(PBEと略記)(日本油脂株式会社製 商標「パーブチルE」)を70℃にて2.0質量部混合し、さらに、その他添加剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(DBMPと略記)を0.9質量部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(BPPSと略記)を1.5質量部、富士シリシア化学株式会社製、商標「サイロスフェアC−1504」を7.7質量部添加した(数平均粒子径4.5μm、比表面積520m/g、平均細孔径12nm、細孔容積1.5ml/g、灼熱減量2.5wt%、吸油量290ml/100g、添加した多孔質球状シリカであるサイロスフェアーC−1504の真球度は、走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、ほぼ全ての粒子が0.9以上であった)を加えて20℃で液状の樹脂組成物(A1)を作製した。
樹脂組成物(A1)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A1)の成型およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は30分であった。版面にはややインキ汚れが観察された。
更に、樹脂組成物(A1)から得られる印刷原版を用いた印刷版の機械的物性を評価するために、上記(8)に記載の方法で印刷版を作成し、得られた印刷版の引張物性を測定した。結果を表3に示す。
【0077】
[実施例2]
樹脂(a1)として樹脂(α4)を用いた以外は実施例1と同様にして、20℃で液状の樹脂組成物(A2)を作製した。
樹脂組成物(A2)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A2)の成型およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は30分であった。版面にはややインキ汚れが観察された。
更に、樹脂組成物(A2)から得られる印刷原版を用いた印刷版の機械的物性を評価するために、上記(8)に記載の方法で印刷版を作成し、得られた印刷版の引張物性を測定した。結果を表3に示す。
【0078】
[実施例3]
樹脂(a2)として樹脂(α7)100質量部に対し、樹脂(a1)として樹脂(α1)5質量部、有機化合物(b)としてフェノキシエチルメタクリレート(POHと略記)50質量部を添加し、熱重合開始剤(c)としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(日本油脂株式会社製 商標「パーブチルE」)を70℃にて2.0質量部混合した。さらに、その他添加剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.9質量部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートを1.5質量部、実施例1で用いたものと同様の多孔質球状シリカを7.7質量部加えて20℃で液状の樹脂組成物(A3)を作製した。
樹脂組成物(A3)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A3)の成型およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は30分であった。版面にはややインキ汚れが観察された。
更に、樹脂組成物(A3)から得られる印刷原版を用いた印刷版の機械的物性を評価するために、上記(8)に記載の方法で印刷版を作成し、得られた印刷版の引張物性を測定した。結果を表3に示す。
【0079】
[実施例4]
樹脂(a1)として樹脂(α2)を用いた以外は実施例3と同様にして、20℃で液状の樹脂組成物(A4)を作製した。樹脂組成物(A4)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A4)の成型およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は30分であった。版面にはややインキ汚れが観察された。
更に、樹脂組成物(A4)から得られる印刷原版を用いた印刷版の機械的物性を評価するために、上記(8)に記載の方法で印刷版を作成し、得られた印刷版の引張物性を測定した。結果を表3に示す。
【0080】
[実施例5]
樹脂(a1)として樹脂(α3)を用いた以外は実施例3と同様にして、20℃で液状の樹脂組成物(A5)を作製した。
樹脂組成物(A5)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A5)の成型およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は30分であった。版面にはややインキ汚れが観察された。
更に、樹脂組成物(A5)から得られる印刷原版を用いた印刷版の機械的物性を評価するために、上記(8)に記載の方法で印刷版を作成し、得られた印刷版の引張物性を測定した。結果を表3に示す。
【0081】
[実施例6]
樹脂(a1)として樹脂(α4)を用いた以外は実施例3と同様にして、20℃で液状の樹脂組成物(A6)を作製した。樹脂組成物(A6)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A6)の成型およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は45分であった。版面のインキ残存はほとんどなかった。
更に、樹脂組成物(A6)から得られる印刷原版を用いた印刷版の機械的物性を評価するために、上記(8)に記載の方法で印刷版を作成し、得られた印刷版の引張物性を測定した。結果を表3に示す。
【0082】
[実施例7]
樹脂(a1)として樹脂(α5)を用いた以外は実施例3と同様にして、20℃で液状の樹脂組成物(A7)を作製した。
樹脂組成物(A7)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A7)の成型およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は45分であった。版面のインキ残存はほとんどなかった。
更に、樹脂組成物(A7)から得られる印刷原版を用いた印刷版の機械的物性を評価するために、上記(8)に記載の方法で印刷版を作成し、得られた印刷版の引張物性を測定した。結果を表3に示す。
【0083】
[実施例8]
樹脂(a1)として樹脂(α6)を用いた以外は実施例3と同様にして、20℃で液状の樹脂組成物(A8)を作製した。
樹脂組成物(A8)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A8)の成型およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は45分であった。版面のインキ残存はほとんどなかった。
更に、樹脂組成物(A8)から得られる印刷原版を用いた印刷版の機械的物性を評価するために、上記(8)に記載の方法で印刷版を作成し、得られた印刷版の引張物性を測定した。結果を表3に示す。
【0084】
[実施例9]
樹脂(a2)として樹脂(α8)を用いた以外は実施例7と同様にして、20℃で液状の樹脂組成物(A9)を作製した。
樹脂組成物(A9)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A9)の成型およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は45分であった。版面のインキ残存はほとんどなかった。
更に、樹脂組成物(A9)から得られる印刷原版を用いた印刷版の機械的物性を評価するために、上記(8)に記載の方法で印刷版を作成し、得られた印刷版の引張物性を測定した。結果を表3に示す。
【0085】
[実施例10]
樹脂(a2)として樹脂(α9)を用いた以外は実施例7と同様にして、20℃で液状の樹脂組成物(A10)を作製した。
樹脂組成物(A10)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A10)の成型およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は45分であった。版面のインキ残存はほとんどなかった。
更に、樹脂組成物(A10)から得られる印刷原版を用いた印刷版の機械的物性を評価するために、上記(8)に記載の方法で印刷版を作成し、得られた印刷版の引張物性を測定した。結果を表3に示す。
【0086】
[実施例11]
実施例7の有機化合物(b)であるフェノキシエチルメタクリレート(POHと略記)50質量部の代わりに、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTとも略記)を樹脂(a2)100質量部に対して、10質量部を添加した以外は実施例7と同様にして、20℃で液状の樹脂組成物(A11)を作製した。
樹脂組成物(A11)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A11)の成型およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は45分であった。版面のインキ残存はほとんどなかった。
更に、樹脂組成物(A11)から得られる印刷原版を用いた印刷版の機械的物性を評価するために、上記(8)に記載の方法で印刷版を作成し、得られた印刷版の引張物性を測定した。結果を表3に示す。
【0087】
[実施例12]
実施例1の樹脂組成物(A1)の塗工厚みを7mmとなるよう調節しながら塗工した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(A1)の形成を行い、印刷原版を得た。印刷原版は内部まで完全に硬化しており、外力を加えても元の形状を確保した。
【0088】
[比較例1]
樹脂(a2)として樹脂(α7)100質量部に対し、有機化合物(b)としてフェノキシエチルメタクリレート50質量部を添加し、熱重合開始剤(c)としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(日本油脂株式会社製 商標「パーブチルE」)を70℃にて2.0質量部混合した。さらに、その他添加剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.9質量部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートを1.5質量部、実施例1で用いたものと同様の多孔質球状シリカを7.7質量部、およびメチルスチリル変性シリコーンオイル「KF−410」(信越化学工業社製、商標)1.5質量部加えて20℃で液状の樹脂組成物(A12)を作製した。
樹脂組成物(A12)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A12)の成型およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は5分以下であった。版面には顕著にインキ汚れが発生した。
【0089】
[比較例2]
樹脂(a2)として樹脂(α8)を用いた以外は比較例1と同様にして、20℃で液状の樹脂組成物(A13)を作製した。
樹脂組成物(A13)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A13)の塗工およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は5分以下であった。版面には顕著にインキ汚れが発生した。
【0090】
[比較例3]
樹脂(a2)として樹脂(α9)を用いた以外は比較例1と同様にして、20℃で液状の樹脂組成物(A14)を作製した。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A14)の塗工およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は5分以下であった。版面には顕著にインキ汚れが発生した。
【0091】
[比較例4]
比較例1の有機化合物(b)であるフェノキシエチルメタクリレート(POHと略記)50質量部の代わりに、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTとも略記)を樹脂(a2)100質量部に対して、10質量部を添加した以外は比較例1と同様にして、20℃で液状の樹脂組成物(A15)を作製した。
樹脂組成物(A15)のB型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、3000Pa・s以下であった。
前記の方法で支持体への樹脂組成物(A15)の塗工およびレーザー彫刻を行った。レリーフ深度0.5mmで、ドットの形状が円錐状であった。
前記印刷試験においてインキ汚れが発生するまでの時間は5分以下であった。版面には顕著にインキ汚れが発生した。
上記実施例1〜11及び比較例1〜4の組成及び試験結果を表4にまとめた。
シロキサン結合を含み、数平均分子量が500以上10万以下の樹脂(a1)、シロキサン結合を含まず、数平均分子量が1000以上30万以下の樹脂(a2)、および光重合開始剤(c)を用いた印刷原版を彫刻することにより、インキ汚れ抑制効果に優れた印刷原版が得られた。また、印刷版とした場合に実用上問題のない機械的強度を有することも分かる。更に前記樹脂(a1)に含まれるシロキサン結合を有する繰り返し単位の数平均分子量が500以上5000以下である樹脂組成物から成る印刷原版を彫刻することにより、さらに優れたインキ汚れ抑制効果が得られた。
また、厚みを7mmにしても内部まで硬化しており、熱硬化による厚膜化の容易性を確認した。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によれば、主鎖にシロキサン結合を含んだ樹脂、これを含む樹脂組成物は撥インキ性に優れ、インキ汚れ抑制効果に優れた印刷版を得る為の印刷原版の製造を可能にする。また、該印刷原版は、レーザーによる彫刻より直接凹凸パターンを形成して印刷版を形成することが可能である。
また、このような印刷版は、特にインキの乾燥速度が比較的速い溶剤インキとフィルムを用いた場合や、インキ中の樹脂が比較的蓄積しやすい水性インキと紙を用いた場合ののフレキソ印刷に適し、版のインキ汚れが抑制され、印刷精度を大幅に向上させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン結合を含み、数平均分子量が500以上30万以下の樹脂(a1)、シロキサン結合を含まず、数平均分子量が1000以上30万以下の樹脂(a2)、および熱重合開始剤(c)を含有するレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂(a1)及び樹脂(a2)が重合性不飽和基を有する請求項1記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、更に、重合性不飽和基を有する数平均分子量が1000未満の有機化合物(b)を含有する請求項1又は2に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂(a1)の主鎖に含まれるシロキサン結合を有する繰り返し単位の数平均分子量が500以上1万以下である請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂(a1)に含まれるシロキサン結合を有する繰り返し単位の数平均分子量が500以上5000以下である請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂(a2)がカーボネート結合、ウレタン結合、およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一種類の化学結合を有する樹脂である請求項1から5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
【請求項7】
前記有機化合物(b)全量中、20質量%以上が脂環族の誘導体及び/又は芳香族の誘導体である請求項3から6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
【請求項8】
20℃において液状である請求項1から7のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
【請求項9】
数平均粒子径が0.01μm以上10μm以下である無機系微粒子を前記のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物100質量部に対して1〜100質量部をさらに含有する請求項1から8のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物。
【請求項10】
支持体上に請求項1から9のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版樹脂組成物をシート状又は円筒状に形成する工程と、該形成した樹脂組成物を熱線を照射する方法、熱風を吹き付ける方法、熱風が対流する雰囲気に曝される方法、加熱したロールと接触させる方法からなる群より選択される少なくとも1つの方法で硬化せしめる工程とを含むレーザー彫刻印刷原版の製造方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷原版用樹脂組成物を硬化せしめることにより得られうるレーザー彫刻印刷原版。
【請求項12】
前記レーザー彫刻印刷原版の非印刷面側に更に支持体を有する請求項11記載のレーザー彫刻印刷原版。
【請求項13】
前記支持体が中空円筒状支持体である請求項12記載のレーザー彫刻印刷原版。
【請求項14】
前記レーザー彫刻印刷原版と支持体の間に更に一層以上のクッション層を有する請求項12又は13に記載のレーザー彫刻印刷原版。
【請求項15】
前記クッション層が中空マイクロカプセルを含む請求項14に記載のレーザー彫刻印刷原版。
【請求項16】
前記レーザー彫刻印刷原版と中空円筒状支持体の間に更に1層以上の周長調整層を含む請求項13〜15のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版。
【請求項17】
前記レーザー彫刻印刷原版の最外面を切削、研削、研磨から選択される少なくとも一種類の方法で表面調整されてなる請求項11から16のいずれか1項に記載のレーザー彫刻印刷原版。
【請求項18】
請求項11〜17のいずれか1項記載の印刷原版がレーザー彫刻されてなる印刷版。

【公開番号】特開2009−190331(P2009−190331A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35031(P2008−35031)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】