説明

レーザー溶着体

【課題】複雑な工程を経ることなく、簡便に調製された部材を一度のレーザー溶着工程で一体化でき、しかも溶着強度に優れ、樹脂特性を損なわないレーザー溶着体を提供する。
【解決手段】レーザー溶着体は、940nmの光に対する吸収係数εを4000〜7000とするニグロシンのみからなる着色剤を0.001〜0.3重量%含有することによりレーザー光の一部を透過させ別な一部を吸収させるレーザー光透過吸収性成形部材1と、ニグロシンおよび/またはカーボンブラックを含む着色剤を0.1〜5重量%含有することにより該レーザー光を吸収するレーザー光吸収性成形部材2とが、重ねられたまま、該レーザー光の照射による発熱で溶着されて一体化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニグロシンのみを着色剤として含有するレーザー光透過吸収性成形部材と、レーザー光吸収性成形部材とを、一度にレーザー溶着して一体化させたレーザー溶着体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性合成樹脂製材料からなる部材同士を接合するのに、レーザー溶着による方法が知られている。
【0003】
このようなレーザー溶着は、例えば次のようにして行われる。図2に示すように、一方の部材にレーザー光透過性を示す部材11を用い、他方の部材にレーザー光吸収性を示す部材12を用い、両者を当接させる。そこに、レーザー光透過性部材11の側からレーザー光吸収性部材12へ向けレーザー光13を照射すると、レーザー光透過性部材11を透過したレーザー光13が、レーザー光吸収性部材12に吸収されて、発熱を引き起こす。この熱により、レーザー光を吸収した部分を中心としてレーザー光吸収性部材12が、溶融し、更にレーザー光透過性部材11を溶融させて、双方が融合する。これが冷却されると、レーザー光透過性部材11とレーザー光吸収性部材12とが、溶着部位14で、強固に接合される。
【0004】
レーザー溶着の特長として、溶着すべき箇所へレーザー光発生部を接触させることなく、溶着させることが可能であること、局所加熱であるため周辺部への熱影響がごく僅かであること、機械的振動のおそれがないこと、微細な部分や立体的な複雑な構造を有する部材同士の溶着が可能であること、再現性が高いこと、高い気密性を維持できること、溶着強度が高いこと、溶着部分の境目が目視で分かりにくいこと、粉塵が発生しないこと等が挙げられる。
【0005】
このレーザー溶着によれば、簡単な操作により確実に溶着を行うことができるうえ、従来の樹脂部品の接合方法である締結用部品(ボルト、ビス、クリップ等)による締結、接着剤による接着、振動溶着、超音波溶着等の方法と同等以上の溶着強度が得られる。しかも振動や熱の影響が少ないので、省力化、生産性の改良、生産コストの低減等を実現することができる。そのためレーザー溶着は、例えば自動車産業や電気・電子産業等において、振動や熱の影響を回避すべき機能部品や電子部品等の接合に適すると共に、複雑な形状の樹脂部品の接合にも対応可能である。
【0006】
レーザー溶着に関する技術として、特許文献1には、レーザー光に対し弱吸収性の第一樹脂部材と、レーザー光に対し吸収性の第二樹脂部材とを、重ね合わせたのち第一樹脂部材側からレーザー光を照射してレーザー溶着させる方法が記載されている。しかしこの場合、エチレンおよび/またはプロピレンと他のオレフィン類やビニル系化合物との共重合体のような添加剤と、樹脂とを混練し、第一樹脂部材を作製するが、比較的多くの添加剤を含有するため、その樹脂特性が影響を受け易い。しかも、添加剤や樹脂の種類によっては混練時の層分離や、部材の強度低下を引き起こしたり、樹脂の選択が制限されてしまったりするという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2004-148800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、複雑な工程を経ることなく、簡便に調製された部材を一度のレーザー溶着工程で一体化でき、しかも外観や溶着強度に優れ、樹脂特性を損なわないレーザー溶着体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされたレーザー溶着体は、940nmの光に対する吸収係数εを4000〜7000(ml/g・cm)とするニグロシンのみからなる着色剤0.001〜0.3重量%、および熱可塑性樹脂を含有することにより、レーザー光の一部を透過しながら、一部を吸収するレーザー光透過吸収性成形部材と、
ニグロシンおよび/またはカーボンブラックを含む別な着色剤0.1〜5重量%、および熱可塑性樹脂を含有することにより、該レーザー光を吸収するレーザー光吸収性成形部材とが、重ねられたまま、該レーザー光の照射による発熱で溶着されて一体化している。
【0010】
すなわち、レーザー光透過吸収性成形部材とは、レーザー光透過性という特徴を有しながら、弱いレーザー光吸収性を併せ持つ成形部材である。
【0011】
レーザー溶着体は、前記別な着色剤がカーボンブラックを含んでいることが好ましい。
【0012】
レーザー溶着体は、前記別な着色剤が、更にニグロシンを含んでいると一層好ましい。
【0013】
レーザー溶着体は、前記レーザー光透過吸収性成形部材が、下記数式(I)
【数1】

(数式(I)中、aはその吸光度、ε(1/cm)はその吸収係数、C(重量%)はそれに含まれる前記着色剤の濃度、L(cm)はその厚さを示す)を満たすものであることが好ましい。
【0014】
レーザー溶着体は、前記レーザー光吸収性成形部材が、下記数式(II)
【数2】

(数式(II)中、aはその吸光度、ε(1/cm)はその吸収係数、C(重量%)はそれに含まれる前記別な着色剤の濃度、L(cm)はその厚さを示す)
を満たすものであることが好ましい。
【0015】
レーザー溶着体は、前記ニグロシンが、例えば下記化学式(1)〜(4)
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

で表わされる化合物の少なくとも一つを含有するというものである。
【0016】
レーザー溶着体は、前記レーザー光透過吸収性成形部材が、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂の少なくとも何れかを含有することが好ましい。
【0017】
レーザー溶着体は、前記レーザー光透過吸収性成形部材中、前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂であり、前記ニグロシンのみからなる着色剤が、0.01〜0.2重量%含有されていると一層好ましい。
【0018】
レーザー溶着体は、前記レーザー光透過吸収性成形部材中、前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂であり、前記ニグロシンのみからなる着色剤が0.01〜0.2重量%含有されていてもよい。
【0019】
レーザー溶着体は、前記ニグロシン中の鉄濃度が、最大でも1%であることが好ましい。
【0020】
レーザー溶着体は、前記ニグロシン中のアニリン濃度が、最大でも1%であることが好ましい。
【0021】
レーザー溶着体は、前記レーザー光透過吸収性成形部材と前記レーザー光吸収性成形部材との厚さが、例えば200〜5000μmであるというものである。
【0022】
レーザー溶着体は、前記レーザー光透過吸収性成形部材と前記レーザー光吸収性成形部材とが、厚さ200〜1000μmのフィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のレーザー溶着体のレーザー光透過吸収性成形部材中のニグロシンは、油溶性が高く、樹脂との相溶性・溶解性が良好であり、遅延化効果を有し、更に微量であるので、レーザー溶着体は、成形部材に用いられている樹脂本来の特性を維持できる。特に、レーザー光透過吸収性成形部材を用いたレーザー溶着体は、レーザー光により適度な発熱を引き起こして、広い溶融が起こる結果、強固にレーザー溶着している。このため、引張強度・溶着強度の高いレーザー溶着体が得られる。
【0024】
また、レーザー溶着体は、樹脂部材の接着の際に施す表面前処理工程やアロイ化工程のような煩雑な操作を必要とせず、簡便に製造できるものである。しかもレーザー溶着体は、一度のレーザー光照射で製造できるので、生産効率が高いものである。しかもレーザー溶着体は、接着剤や締結用部品を用いていないので、リサイクル性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明のレーザー溶着体の一例について、実施例に対応する図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0026】
レーザー溶着体には、ニグロシンのみからなる着色剤が含有された板状のレーザー光透過吸収性成形部材1と、ニグロシンおよび/またはカーボンブラックからなる別な着色剤を含有したレーザー光吸収性成形部材2とが、用いられている。レーザー溶着体は、その端部同士が、当接され重ねられたまま、レーザー溶着されて強固に一体化したものである。
【0027】
なお、レーザー光透過吸収性成形部材1とレーザー光吸収性成形部材2とは、前記の通り均一な厚さの平坦で複数枚のフィルム状または板状の部材であってもよく、湾曲または屈曲した板状または箱状で複数個の部材であってもよく、任意の形状をとり得る。図2に示すように、重畳させる部位で継ぎしろとなる段差を設けていてもよい。
【0028】
このレーザー溶着体の具体的な製造工程について、その一例を挙げて説明する。その製造工程は例えば下記の(A)〜(F)からなる。
【0029】
(A)樹脂と、940nmの光に対する吸収係数εを4000〜7000(ml/g・cm)とするニグロシンのみからなる着色剤0.001〜0.3重量%とを混練し、レーザー光透過吸収性成形部材1を成形する。この着色剤量の増減により、レーザー溶着に使用されるレーザー光の一部を適当量透過させ、一部を適当量吸収させるように制御されている。
【0030】
(B)樹脂と、レーザー光透過吸収性成形部材中のニグロシンよりも多量で同種または異種のニグロシンおよび/またはカーボンブラックからなる別な着色剤0.1〜5重量%とを、混練した後、レーザー光吸収性成形部材2を成形する。レーザー光吸収性成形部材2は、この別な着色剤の組成や量の増減により、レーザー溶着に使用されるレーザー光を吸収させるように制御されている。
【0031】
(C)レーザー光透過吸収性成形部材1と、レーザー光吸収性成形部材2とを、当接させる。この時、両成形部材を固定するために適宜、治具を用いて、加圧することができる。更に、レーザー光透過吸収性成形部材側に、反射防止膜等のような反射防止機能を有する部材、冷却効果を有する部材、又はガス処理装置を設置してもよい。
【0032】
(D)レーザー光3がレーザー光透過吸収性成形部材1を適当量透過してレーザー光吸収性成形部材2に適当量吸収されるように、適当な強度に調整されたレーザー光3を照射する。適当な強度に調整されたレーザー光3を、レーザー光透過吸収性成形部材1側から照射する。
【0033】
(E)レーザー光3は、その一部がレーザー光透過吸収性成形部材1を透過し別な一部が成形部材1に吸収され、発熱を引き起こす。透過したレーザー光3が、レーザー光吸収性成形部材2へ到達し、成形部材2に吸収され、発熱を引き起こす。これら発熱をした近傍でレーザー光透過吸収性成形部材1およびレーザー光吸収性成形部材2が溶融する。
【0034】
(F)この熱溶融部分が、冷却されると、固化して溶着する。その結果、これらレーザー光透過吸収性成形部材1およびレーザー光吸収性成形部材2は、その溶着部位4で確りと接合され、一体化する。
【0035】
レーザー光透過性部材とレーザー光吸収性部材との従来のレーザー溶着は、レーザー光が、専らレーザー光吸収性部材を発熱させて溶融させ、その熱でレーザー光透過性部材を溶融させるものであるから熱効率がさほど高くなく、またレーザー光透過性部材の樹脂溶融が小さくレーザー光吸収性部材の樹脂溶融が大きいから溶着強度がさほど強くないものである。それに対し、本発明のレーザー溶着体は、レーザー光透過吸収性成形部材1がニグロシンのみからなる着色剤を含有しており、レーザー光透過吸収性成形部材1およびレーザー光吸収性成形部材2が共に発熱を引き起こすため、両部材1・2間の温度差が少なく、低エネルギーで効率よくレーザー溶着することができるうえ、両部材1・2の樹脂の溶融部位が大きく広がるので、溶着強度が極めて強いものである。
【0036】
レーザー溶着に用いられるレーザー光としては、例えば、固体レーザー(Nd:YAG励起、半導体レーザー励起など)、半導体レーザー、チューナブルダイオードレーザー、チタンサファイアレーザー(Nd:YAG励起、)などが利用できる。また、その他に波長が700nm以上の赤外線を発生するハロゲンランプやキセノンランプを用いてもよい。
【0037】
これらのレーザー光のうち、通常、可視光より長波長域の800〜1600nm、好ましくは800〜1100nmに発振波長を有するレーザー光が使用される。又、赤外線又はレーザー光、レーザー光透過吸収性成形部材の面に対して、垂直方向から又は斜め方向から照射されるものであってもよい。レーザー光は、1方向から又は複数方向から照射されるものであってもよい。
【0038】
レーザー光の出力は、走査速度と、レーザー光透過吸収性成形部材並びにレーザー光吸収性成形部材の吸収能力に応じ、適宜調整される。レーザー光の出力が低過ぎると樹脂材料の接合面を互いに溶融させ難くなり、出力が高過ぎると樹脂材料が蒸発したり、変質し強度が低下したりする。また照射条件は、適宜、赤外線又はレーザー光の照射幅、照射時間等を調整して行うことができる。
【0039】
このようにして一体化したレーザー溶着体は、溶着部位で、実用的に充分な強度を発現している。また、レーザー溶着体は、JIS K7113−1995に準じた引張試験を行なうと、好ましい条件では、引張溶着強度が300N以上である。
【0040】
レーザー溶着体は、輸液を点滴する際に使用される医療用チューブ、流動食や飲料組成物を封入するスパウトパウチ等に用いた時に遺漏することなく安心して使用できるように、レーザー光透過吸収性成形部材の厚さを200〜5000μmとすることが好ましい。この厚さが200μm未満であると、レーザー光エネルギーのコントロールが難しく、レーザー溶着の際に、熱溶融の過不足が生じ過熱により破断したり十分な溶着強度が得られなくなったりする。一方、5000μmを超えると、透過率の低下により十分な溶着強度が得られなくなってしまう。
【0041】
特に、レーザー光透過吸収性成形部材の各々の厚さが、200〜1000μmのフィルムから構成されていると、一層好ましい。
【0042】
次に、レーザー光透過吸収性成形部材について、より具体的に説明する。
【0043】
レーザー光透過吸収性部材は、樹脂例えばレーザー光透過性樹脂と、ニグロシンとの混合物を成形したものである。レーザー光透過吸収性成形部材がレーザー光の一部を透過させ別な一部を吸収する。それは、それに含有されている少量のニグロシンからなる着色剤が、このレーザー光の波長に共振してその一部を吸収し、一方残りの一部を透過させるということに起因している。
【0044】
このようなレーザー光透過性樹脂として、例えば、レーザー光透過性を有し、顔料の分散剤として用いられる樹脂、マスターバッチまたは着色ペレットの担体樹脂として使用されている公知の樹脂等が挙げられる。より具体的には、熱可塑性樹脂の代表的な例であるポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、メタクリル樹脂、アクリルポリアミド樹脂、エチレンビニルアルコール(EVOH)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアリルサルホン樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。
【0045】
またこの熱可塑性樹脂は、前記熱可塑性樹脂を構成するような単量体等の2種以上からなる共重合体樹脂であってもよい。例えば、AS(アクリロニトリル−スチレン)共重合体樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)共重合体樹脂、AES(アクリロニトリル−EPDM−スチレン)共重合体樹脂、PA−PBT共重合体、PET−PBT共重合体樹脂、PC−PBT共重合体樹脂、PC−PA共重合体樹脂等が挙げられる。更にポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;前記樹脂類を主成分とする合成ワックスまたは天然ワックス等も挙げられる。なお、これらの熱可塑性樹脂の分子量は、特に限定されるものではない。また、これらの熱可塑性樹脂を、単独で、または2種類以上混合して、用いてもよい。
【0046】
この熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂(ナイロン(登録商標))、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエステル樹脂(PETおよびPBTを含む)、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)を含む)であることが好ましい。この中でも、樹脂の透過率を考慮するとポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂が更に好ましく、ポリアミド樹脂(ナイロン)が更に好ましい。
【0047】
ポリアミド樹脂(ナイロン)として、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン96、非晶質性ナイロン、高融点ナイロン、ナイロンRIM、ナイロンMIX6等;それらの2種類以上の共重合体、すなわち、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロン6/66/11/12共重合体、結晶性ナイロン/非結晶性ナイロン共重合体等が挙げられる。またポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂と他の合成樹脂との混合重合体であってもよい。そのような混合重合体の例として、ポリアミド/ポリエステル混合重合体、ポリアミド/ポリフェニレンオキシド混合重合体、ポリアミド/ポリカーボネート混合重合体、ポリアミド/ポリオレフィン混合重合体、ポリアミド/スチレン/アクリロニトリル混合重合体、ポリアミド/アクリル酸エステル混合重合体、ポリアミド/シリコーン混合重合体等が挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、単独で、または2種類以上を混合して用いてもよい。
【0048】
ポリカーボネート樹脂は主鎖に炭酸エステル結合を持つ熱可塑性樹脂で、優れた機械的強度性質,耐熱性,耐寒性,電気的性質,透明性などを備えており、エンジニアリングプラスチックの代表的なものである。現在、工業的に生産されているのは、ビスフェノールAからの芳香族ポリカーボネートである。製法にはホスゲン法とエステル交換法の二つの方法がある。化学構造式は、芳香族炭化水素の炭酸エステル基を多数連結した直鎖状分子で、分子主鎖にかさばったベンゼン核とフレキシブルな炭酸エステル基とを有している。前者は高い熱変形温度や優れた物理的及び機械的性質を与え、後者は、成形性と柔軟性に寄与するが、アルカリで加水分解しやすい。
【0049】
レーザー光透過吸収性成形部材に含有される着色剤は、940nmの光に対する吸収係数(吸光係数)εを4000〜7000(ml/g・cm)とするニグロシンのみからなる。吸収係数εが7000を超えると、レーザー照射時のレーザー光の透過率が小さ過ぎて、十分な溶着強度を得ることができない。一方、吸収係数が4000未満であると、発熱が不十分となり、十分な溶着強度を得ることができない。
【0050】
吸収係数(吸光係数)εの測定方法は、レーザー光透過吸収剤0.05gを精秤し、50mlメスフラスコを用いて、例えば、溶媒N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解後、その1mlを、50mlメスフラスコを用いてDMFで希釈して測定サンプルとし、分光光度計(島津製作所製の商品名:UV1600PC)を用いて、940nmの光に対する吸光度測定し、そこから吸収係数(吸光係数)ε(ml/g・cm)を得るというものである。
【0051】
ニグロシンは、COLOR INDEXにC.I.SOLVENT BLACK 5およびC.I.SOLVENT BLACK 7として記載されているような黒色アジン系縮合混合物を挙げることができる。好ましくはC.I.SOLVENT BLACK 7である。このようなニグロシン類の合成は、例えば、アニリン、アニリン塩酸塩およびニトロベンゼンを、塩化鉄の存在下、反応温度160乃至180℃で酸化および脱水縮合することにより行い得るものである。このようなニグロシンとして、オリヱント化学工業社製の商品名NUBIAN BLACKシリーズとして市販されている。
【0052】
前記ニグロシン染料は平均粒径が5乃至20μmであることが好ましく、5乃至15μmであると更に好ましい。このようなニグロシン染料を用いることにより、成形処理がし易く、更に均一な成形物が得られる。
【0053】
更にニグロシン中の鉄濃度は、例えば1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.4重量%以下のニグロシンである。このことにより、ニグロシン染料の樹脂に対する分散、相溶性は向上し、良好な樹脂成形物が得られる。このようなニグロシン中のFe含有量は原子吸光法によって測定できる。またこのようなニグロシンの低Fe処理としては下記の操作が例示できる。アニリン、アニリン塩酸塩を塩化第二鉄の存在下にニトロベンゼンで縮合反応させて得られたニグロシン縮合物に水酸化ナトリウムを添加し、ニグロシンのベース化処理され、このとき鉄は水酸化鉄として得られる。得られた水酸化鉄はスクリューデカンタ、シャープレス等の遠心分離機を用いて除去することにより、乾燥後のニグロシン染料中のFe量を低減並びに調整することができる。
【0054】
また、ニグロシン中のアニリン濃度は、例えば1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.4重量%以下のニグロシンである。このようなニグロシン染料の精製方法として、下記方法が挙げられる。
(i)沸点が100乃至230℃の溶剤を添加し、加熱・減圧して、その溶剤と共にアニリンまたはニトロベンゼンを除去する方法(なお、このような溶剤としてはキシレン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレン、デカヒドロナフタレン、ジブチルエーテル、エチレングリコール等を挙げることができる)、
(ii)アニリン可溶性の溶液によりニグロシンを洗浄して除去する方法(なお、このような溶液としては、有機溶剤(例えば、アルコール)、水溶液、有機溶剤と水の混合溶液、或はこれらの酸性溶液等を挙げることができる)、
(iii)単に加熱・減圧して除去する方法、
(iv)加熱・留去する方法、
(v)水蒸気蒸留など蒸留方法、
(vi)酸素、オゾン、並び各種酸化剤を用いた酸化方法
等が挙げられる。
【0055】
ニグロシンが、前記化学式(1)〜(4)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも一つを含有していると、レーザー溶着体の綺麗な外観性や、高い引張強度を得られる点で望ましい。
【0056】
また、ニグロシンの含有量は、レーザー光透過性樹脂に対し、0.001〜0.3重量%であることが好ましい。含有量が0.001重量%よりも少ないと、レーザー光のエネルギーを吸収することによる発熱が少ないため、温度が十分にあがらず、レーザー光透過性成形部材とレーザー光吸収性成形部材との接合部の溶着強度が低くなる。また、含有量が0.3重量%を超えると、レーザー光の透過率が低下しやすく、成形部材同士の十分な溶着強度を得ることができない。
【0057】
また、レーザー光透過性樹脂がポリアミド樹脂の場合、ニグロシンの含有量が0.01〜0.2重量%、レーザー光透過性樹脂がポリカーボネート樹脂の場合、ニグロシンの含有量が0.01〜0.2重量%であると、適度な発熱が起こり、成形部材同士の十分な溶着強度が得られるので好ましい。
【0058】
また、レーザー光透過吸収性成形部材の吸光度aは、下記数式(I)、
【数3】

(数式(I)中、ε(1/cm)はその吸収係数、C(重量%)はそれに含まれる着色剤濃度、L(cm)はその厚さを示す)
を満たすように調節されている。
【0059】
このとき吸光度aが0.07未満の場合、レーザー光透過吸収性成形部材がレーザー光のエネルギーを吸収することによる発熱が少ないため、温度が十分にあがらず、レーザー光透過吸収性成形部材と、レーザー光吸収性成形部材との十分な溶着強度を得ることができない。また、吸光度aが0.8を超える場合、レーザー光透過吸収性成形部材のレーザー光の透過率が低下し、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材との溶着強度が低下してしまう。
【0060】
またレーザー光透過吸収性成形部材が、940nmのレーザー光に対し、14〜80%の透過率Tを有するものが好ましい。なお、前記レーザー光に対する透過率Tは、レーザー光透過吸収性成形部材の1mm厚の成形板について測定した数値である。
【0061】
レーザー光透過吸収性成形部材を形成する際、このレーザー光透過性樹脂に、種々の添加剤を必要に応じ配合したものを用いてもよい。このような添加剤としては、例えば助色剤、分散剤、補強材または充填剤、安定剤、可塑剤、改質剤、紫外線吸収剤または光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、結晶促進剤、結晶核剤、難燃剤等が挙げられる。
【0062】
補強材としては、通常の合成樹脂の補強に用い得るものであればよく、特に限定されない。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、その他の無機繊維、および有機繊維(アラミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ナイロン、ポリエステルおよび液晶ポリマー等)等を用いることができ、透明性を要求される樹脂の補強にはガラス繊維が好ましい。好適に用いることができるガラス繊維の繊維長は2〜15mmであり、その繊維径は1〜20μmである。ガラス繊維の形態については特に制限はなく、例えばロービング、ミルドファイバー等、何れであってもよい。これらのガラス繊維は、1種類を単独で用いるほか、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0063】
また、充填材としては、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク等の板状充填材、タルク、カオリン、クレー、ウォラストナイト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート等の珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、炭化珪素等の粒子状充填材等を添加することができる。
【0064】
レーザー光透過吸収性成形部材はレーザー光透過吸収性着色熱可塑性樹脂組成物のマスターバッチを用いて製造してもよい。前記マスターバッチとしては、任意の方法により得られる。例えば、マスターバッチのベースとなる樹脂の粉末又はペレットと着色剤をタンブラーやスーパーミキサー等の混合機で混合した後、押出機、バッチ式混練機又はロール式混練機等により加熱溶融してペレット化又は粗粒子化することにより得ることができる。
【0065】
レーザー光透過吸収性成形部材の成形は、通常行われる種々の手順により行い得る。例えば、着色ペレットを用いて、押出機、射出成形機、ロールミル等の加工機により成形することにより行うこともでき、また、透明性を有する樹脂のペレットまたは粉末、粉砕された着色剤、および必要に応じ各種の添加物を、適当なミキサー中で混合し、この混合物を、加工機を用いて成形することにより行うこともできる。また例えば、適当な重合触媒を含有するモノマーに着色剤を加え、この混合物を重合により所望の樹脂とし、これを適当な方法で成形することもできる。成形方法としては、例えば射出成形、押出成形、圧縮成形、発泡成形、ブロー成形、真空成形、インジェクションブロー成形、回転成形、カレンダー成形、溶液流延等、一般に行われる何れの成形方法を採用してもよい。このような成形により、種々形状のレーザー光透過吸収性成形部材を得ることができる。
【0066】
次に、レーザー光吸収性成形部材について、より具体的に説明する。
【0067】
レーザー光吸収性成形部材は、前記のレーザー光透過吸収性部材で例示されたものと同種のレーザー光透過性樹脂と、それに分散させレーザー光を吸収する着色剤との混合物を成形したものである。このため、レーザー光が照射されたとき、レーザー光が吸収されてレーザー光吸収性成形部材が溶融する。
【0068】
用途および目的に応じ、この樹脂に、各種の添加剤、例えば前述したのと同種の添加剤(助色剤、分散剤、補強材または充填剤、安定剤、可塑剤、改質剤、紫外線吸収剤または光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、結晶促進剤、結晶核剤、難燃剤等)が適宜配合されていてもよい。
【0069】
レーザー光吸収性成形部材におけるレーザー光に対して吸収性を有する着色剤として、カーボンブラックおよび/またはニグロシン(ニグロシン、カーボンブラック、またはカーボンブラックとニグロシンとの組合わせ)(下記にレーザー光を吸収する着色剤と表記する。)が挙げられる。エネルギー密度に対して吸収発熱が多い着色剤は、カーボンブラック、またはカーボンブラックとニグロシンとの組み合わせである。レーザー溶着条件に合わせ、カーボンブラックの量に対し、ニグロシン量を調節して混合させることにより、吸収性成形部材の発熱量を制御でき、更に好適である。
【0070】
レーザー光吸収性成形部材はニグロシンおよび/またはカーボンブラックを含む別な着色剤0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%含有している。
レーザー光を吸収する着色剤別に、好ましい使用量を表記すると、熱可塑性樹脂に対し、レーザー光を吸収する着色剤がカーボンブラック単独の場合は、0.1〜0.3重量%、レーザー光を吸収する着色剤がニグロシン単独の場合は、0.1〜0.7重量%、レーザー光を吸収する着色剤がカーボンブラックとニグロシンを組合せた場合は、0.1〜0.6重量%であることが好ましい。また、カーボンブラックとニグロシンを組合せた場合の比率は1:2〜2:1が好ましい
【0071】
また、レーザー光吸収性成形部材は、照射されるレーザー光に対して5%以下の透過率を有することが好ましい。透過率が5%を超えて大きくなると、レーザー光透過吸収性成形部材を透過し、レーザー光吸収性成形部材に吸収されるレーザー光のエネルギーが減少したり、損失を生じたりする。
【0072】
また、レーザー光吸収性成形部材の吸光度aは下記数式(II)
【数4】

(数式(II)中、ε(1/cm)はその吸収係数、C(重量%)はレーザー光を吸収する着色剤濃度、L(cm)はその厚さを示す)を満たすように調節されている。
【0073】
このとき吸光度aが1未満の場合は、レーザー光吸収性成形部材がレーザー光のエネルギーを吸収することによる発熱が少ないため、温度が十分にあがらずレーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材との十分な溶着強度を得ることができない。また、吸光度aが50を超えると、レーザー光吸収性成形部材のレーザー光のエネルギーを吸収することによる発熱が過剰となり、ポイドが発生し、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材の溶着強度が低下してしまう。
【0074】
レーザー溶着体は、レーザー光透過吸収性成形部材と、レーザー光吸収性成形部材とを同色に着色していると、接合した同色同士の成形部材間で外観上の違和感がなく、綺麗に見える。
【0075】
また、レーザー光吸収性成形部材の作製は、レーザー光に対して吸収する着色剤を含有すること以外、前述のレーザー光透過吸収性成形部材で説明したものと同様に用いることができ、また、用途および目的に応じ、各種の添加剤を適量含有するものとすることができる。
【0076】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0077】
レーザー光透過吸収性成形部材、およびレーザー光吸収性成形部材を試作し次いでレーザー溶着させ、本発明を適用するレーザー溶着体を試作した例を実施例1〜6に示し、本発明を適用外のレーザー溶着体の例を比較例1〜4に示す。
【0078】
(実施例1)
(1−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
繊維強化ポリアミド6樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標)73G30L)の499.9gと、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PA9801 鉄含有量 0.75% アニリン含有量 1.08%)の0.1gとを、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0079】
(1−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
繊維強化ポリアミド6樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標)73G30L)の499gと、カーボンブラック(三菱化学社製の商品名:#32)の1.0gとを、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0080】
(1−c)レーザー溶着体の製造
次に、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とを一部が重畳するように当接させつつ重ねた。レーザー光透過吸収性成形部材の上方から、出力10Wのダイオード・レーザー[波長:940nm 連続的](ファインデバイス社製)によるレーザービームを走査速度2mm/secで、20mm走査させて、照射すると、レーザー溶着体が得られた。
【0081】
なお、前記ニグロシンのNUBIAN(登録商標) BLACK PA9801のDMF中での940nmの光に対する吸収係数εは、6.0×10(ml/g・cm)であった。
【0082】
(実施例2)
(2−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
繊維強化ポリアミド6樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標)73G30L)の499.65gとニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PA9801)の0.35gとをステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0083】
(2−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
実施例1(1−b)と同様の方法で、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0084】
(2−c)レーザー溶着体の製造
次に、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とを一部が重畳するように当接させつつ重ねた。レーザー光透過吸収性成形部材の上方から、出力10Wのダイオード・レーザー[波長:940nm 連続的](ファインデバイス社製)によるレーザービームを走査速度1mm/secで、20mm走査させて、照射すると、レーザー溶着体が得られた。
【0085】
(実施例3)
(3−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
繊維強化ポリアミド6樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標)73G30L)の499.65gとニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PA9803 鉄含有量 0.26% アニリン含有量 0.15%)の0.35gとをステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0086】
(3−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
実施例1(1−b)と同様の方法で、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0087】
(3−c)レーザー溶着体の製造
実施例2(2−c)と同様の方法で、レーザー溶着体が得られた。
【0088】
なお、前記ニグロシンのNUBIAN(登録商標) BLACK PA9803のDMF中での940nmの光に対する吸収係数εは、6.4×10(ml/g・cm)であった。
【0089】
(実施例4)
(4−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
繊維強化ポリアミド6樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標)73G30L)499.5gと、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PA9801)0.5gとを、表1に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0090】
(4−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
実施例1(1−b)と同様の方法で、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0091】
(4−c)レーザー溶着体の製造
実施例2(2−c)と同様の方法で、レーザー溶着体が得られた。
【0092】
(実施例5)
(5−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリアミド66樹脂(デュポン社製 商品名:ZYTEL(登録商標)101NC)499.8gと、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PA9801)0.2gとを、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度270℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0093】
(5−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
ポリアミド66樹脂(デュポン社製 商品名:ZYTEL(登録商標)101NC)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PA9801)と、カーボンブラック(三菱化学社製の商品名:#32)とを、表1に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度270℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0094】
(5−c)レーザー溶着体の製造
次に、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とを一部が重畳するように当接させつつ重ねた。レーザー光透過吸収性成形部材の上方から、出力10Wのダイオード・レーザー[波長:940nm 連続的](ファインデバイス社製)によるレーザービームを走査速度4mm/secで、20mm走査させて、照射すると、レーザー溶着体が得られた。
【0095】
(実施例6)
(6−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
繊維強化ポリアミド6樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標)73G30L)の499.65gと精製ニグロシン0.35g(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PA9803を、パドル乾燥機を用いて真空下で、250℃で12時間乾燥して得られた精製ニグロシン。鉄含有量 0.20% アニリン含有量 0.07%)とを、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0096】
(6−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
【0097】
実施例1(1−b)と同様の方法で、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
(6−c)レーザー溶着体の製造
実施例2(2−c)と同様の方法で、レーザー溶着体が得られた。
【0098】
(比較例1)
(1−A)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
繊維強化ポリアミド6樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標)73G30L)500gを、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0099】
(1−B)レーザー光吸収性成形部材の作製
繊維強化ポリアミド6樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標)73G30L)とカーボンブラック(三菱化学社製の商品名:#32)とを、表1に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0100】
(1−C)レーザー溶着体の製造
次に、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とを一部が重畳するように当接させつつ重ねた。レーザー光透過吸収性成形部材の上方から、出力10Wのダイオード・レーザー[波長:940nm 連続的](ファインデバイス社製)によるレーザービームを走査速度2mm/secで、20mm走査させて、照射した。
【0101】
(比較例2)
(2−A)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
比較例1(1−A)の繊維強化ポリアミド6樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標)73G30L)の代わりに、ポリアミド66樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標) 101NC)を使用し、シリンダー温度270℃、金型温度60℃にした以外は比較例1(1−A)と同様の方法で、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0102】
(2−B)レーザー光吸収性成形部材の作製
ポリアミド66樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標) 101NC)とカーボンブラック(三菱化学社製の商品名:#32)とを、表1に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度270℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0103】
(2−C)レーザー溶着体の製造
次に、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とを一部が重畳するように当接させつつ重ねた。レーザー光透過吸収性成形部材の上方から、出力10Wのダイオード・レーザー[波長:940nm 連続的](ファインデバイス社製)によるレーザービームを走査速度4mm/secで、20mm走査させて、照射した。
【0104】
(比較例3)
(3−A)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
繊維強化ポリアミド6樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標)73G30L)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PA9801)とを、表1に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0105】
(3−B)レーザー光吸収性成形部材の作製
比較例1(1−B)と同様の方法で、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0106】
(3−C)レーザー溶着体の製造
比較例1(1−c)と同様の方法で、レーザー溶着体を製造した。
【0107】
(比較例4)
(4−A)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
繊維強化ポリアミド6樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標)73G30L)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PA9801)とを、表1に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0108】
(4−B)レーザー光吸収性成形部材の作製
繊維強化ポリアミド6樹脂(デュポン社製の商品名:ZYTEL(登録商標)73G30L)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PA9801)とを、表1に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0109】
(4−C)レーザー溶着体の製造
次に、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とを一部が重畳するように当接させつつ重ねた。レーザー光透過吸収性成形部材の上方から、出力10Wのダイオード・レーザー[波長:940nm 連続的](ファインデバイス社製)によるレーザービームを走査速度1mm/secで、20mm走査させて、照射した。
【0110】
ポリカーボネート樹脂を用い、レーザー光透過吸収性成形部材、およびレーザー光吸収性成形部材を試作し次いでレーザー溶着させ、本発明を適用するレーザー溶着体を試作した例を実施例7〜10に示し、本発明を適用外のレーザー溶着体の例を比較例5〜7に示す。
【0111】
(実施例7)
(7−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリカーボネート樹脂(帝人社製 商品名:パンライト(登録商標) 1225Y)499.9gと、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850 鉄含有量 0.1% アニリン含有量 0.07%)0.1gとを、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0112】
(7−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
ポリカーボネート樹脂(帝人社製 商品名:パンライト 1225Y)495gと、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標) BLACK PC0850)5gとを、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0113】
(7−c)レーザー溶着体の製造
次に、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とを一部が重畳するように当接させつつ重ねた。レーザー光透過吸収性成形部材の上方から、出力8Wのダイオード・レーザー[波長:940nm 連続的](ファインデバイス社製)によるレーザービームを走査速度2mm/secで、20mm走査させて、照射すると、レーザー溶着体が得られた。
【0114】
なお、前記ニグロシンのNUBIAN(登録商標) BLACK PC0850のDMF中での940nmの光に対する吸収係数εは、4.8×10(ml/g・cm)であった。
【0115】
(実施例8)
(8−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリカーボネート樹脂(帝人社製 商品名:パンライト 1225Y)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)とを、表2に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0116】
(8−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
実施例7(7−b)と同様の方法で、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0117】
(8−c)レーザー溶着体の製造
実施例7(7−c)と同様の方法で、レーザー溶着体が得られた。
【0118】
(実施例9)
(9−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリカーボネート樹脂(帝人社製 商品名:パンライト 1225Y)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)とを、表2に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0119】
(9−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
実施例7(7−b)と同様の方法で、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0120】
(9−c)レーザー溶着体の製造
実施例7(7−c)と同様の方法で、レーザー溶着体が得られた。
【0121】
(実施例10)
(10−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリカーボネート樹脂(帝人社製 商品名:パンライト 1225Y)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)とを、表2に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0122】
(10−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
ポリカーボネート樹脂(帝人社製 商品名:パンライト 1225Y)と、カーボンブラック(三菱化学社製の商品名:#32)とを、表2に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0123】
(10−c)レーザー溶着体の製造
実施例7(7−c)と同様の方法で、レーザー溶着体が得られた。
【0124】
(比較例5)
(5−A)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリカーボネート樹脂(帝人社製 商品名:パンライト 1225Y)500gを、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0125】
(5−B)レーザー光吸収性成形部材の作製
ポリカーボネート樹脂(帝人社製 商品名:パンライト 1225Y)495gと、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)5gとを、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0126】
(5−C)レーザー溶着体の製造
次に、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とを一部が重畳するように当接させつつ重ねた。レーザー光透過吸収性成形部材の上方から、出力8Wのダイオード・レーザー[波長:940nm 連続的](ファインデバイス社製)によるレーザービームを走査速度2mm/secで、20mm走査させて、照射した。
【0127】
(比較例6)
(6−A)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリカーボネート樹脂(帝人社製 商品名:パンライト 1225Y)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)とを、表2に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0128】
(6−B)レーザー光吸収性成形部材の作製
比較例5(5−B)と同様の方法で、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0129】
(6−C)レーザー溶着体の製造
比較例5(5−c)と同様の方法で、レーザー溶着体を製造した。
【0130】
(比較例7)
(7−A)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリカーボネート樹脂(帝人社製 商品名:パンライト 1225Y)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)とを、表2に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0131】
(7−B)レーザー光吸収性成形部材の作製
ポリカーボネート樹脂(帝人社製 商品名:パンライト 1225Y)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)とを、表2に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0132】
(7−C)レーザー溶着体の製造
比較例5(5−c)と同様の方法で、レーザー溶着体を製造した。
【0133】
ポリプロピレン樹脂を用い、レーザー光透過吸収性成形部材、およびレーザー光吸収性成形部材を試作し次いでレーザー溶着させ、本発明を適用するレーザー溶着体を試作した例を実施例11〜13に示し、本発明を適用外のレーザー溶着体の例を比較例8〜10に示す。
【0134】
(実施例11)
(11−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム社製 商品番号:HG30U)499gと、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)1.0gとを、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0135】
(11−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム社製 商品番号:HG30U)495gと、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)5.0gとを、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0136】
(11−c)レーザー溶着体の製造
次に、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とを一部が重畳するように当接させつつ重ねた。レーザー光透過吸収性成形部材の上方から、出力10Wのダイオード・レーザー[波長:940nm 連続的](ファインデバイス社製)によるレーザービームを走査速度3mm/secで、20mm走査させて、照射すると、レーザー溶着体が得られた。
【0137】
(実施例12)
(12−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
実施例11(11−a)と同様の方法で、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0138】
(12−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム社製 商品番号:HG30U)と、カーボンブラック(三菱化学社製の商品名:#32)とを、表3に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0139】
(12−c)レーザー溶着体の製造
実施例11(11−c)と同様の方法で、レーザー溶着体が得られた。
【0140】
(実施例13)
(13−a)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム社製 商品番号:HG30U)499.5gと、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)0.5gとを、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0141】
(13−b)レーザー光吸収性成形部材の作製
ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム社製 商品番号:HG30U)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)と、カーボンブラック(三菱化学社製の商品名:#32)とを、表3に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0142】
(13−c)レーザー溶着体の製造
実施例11(11−c)と同様の方法で、レーザー溶着体が得られた。
【0143】
(比較例8)
(8−A)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム社製 商品番号:HG30U)500gを、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0144】
(8−B)レーザー光吸収性成形部材の作製
ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム社製 商品番号:HG30U)490gと、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)10gとを、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0145】
(8−C)レーザー溶着体の製造
次に、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とを一部が重畳するように当接させつつ重ねた。レーザー光透過吸収性成形部材の上方から、出力10Wのダイオード・レーザー[波長:940nm 連続的](ファインデバイス社製)によるレーザービームを走査速度3mm/secで、20mm走査させて、照射した。
【0146】
(比較例9)
(9−A)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム社製 商品番号:HG30U)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)とを、表3に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0147】
(9−B)レーザー光吸収性成形部材の作製
比較例8(8−B)と同様の方法で、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0148】
(9−C)レーザー溶着体の製造
比較例8(8−C)と同様の方法で、レーザー溶着体を製造した。
【0149】
(比較例10)
(10−A)レーザー光透過吸収性成形部材の作製
ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム社製 商品番号:HG30U)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)とを、表3に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光透過吸収性成形部材を作製した。
【0150】
(10−B)レーザー光吸収性成形部材の作製
ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム社製 商品番号:HG30U)と、ニグロシン(オリヱント化学工業社製の商品名:NUBIAN(登録商標)BLACK PC0850)とを、表3に示す組成比で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で通常の方法により成形して、縦80mm×横50mm×厚さ1mmのレーザー光吸収性成形部材を作製した。
【0151】
(10−C)レーザー溶着体の製造
比較例8(8−C)と同様の方法で、レーザー溶着体を製造した。
【0152】
(物性評価)
実施例、比較例で得た成形部材、およびそれのレーザー溶着体について、下記方法により物性評価を行った。
【0153】
(1)吸光度および吸収係数(ε)の算出
吸収係数の算出方法は、以下の通りである。
分光光度計(日本分光社製の商品名:V−570)を用いて、
1mm厚(厚さL=0.1(cm))のレーザー光透過吸収性成形部材1について、
940nmでの透過率(I)を測定し、
Lambert−Beerの法則(IV)
【数5】

(式(IV)中、(I)が入射光の強さ、(I)が透過光の強さ、(I)が反射光の強さ)により、吸光度aを求めた。また、検量線を作成し、
【数6】

であるから、この検量線の傾きより、吸収係数ε(1/cm)を求めた。また、吸光度aも同様に求めた。吸光度aは下記数式で表される。
【数7】

(数式(VI)中、ε(1/cm)はレーザー光吸収性成形部材の吸収係数、C(重量%)はそれに含まれる前記レーザー光吸収剤の濃度、L(cm)はその厚さを示す。)
【0154】
(2)引張強度試験
前記実施例、比較例で得られたレーザー溶着体に対し、JIS K7113−1995に準じ、引張試験機(島津製作所社製の商品名:AG−50kNE)にて、溶着体の長手方向(溶着部を引離す方向)に試験速度10mm/minで引張試験を行って、引張溶着強度を測定した。
【0155】
(3)レーザー溶着体表面の目視観察
前記実施例、比較例で得られたレーザー溶着体の表面にコゲやレーザーの走査痕がほとんど認められずに溶着できたかについて目視判定を行った。
【0156】
上記実施例、比較例で得たレーザー溶着体の物性評価の結果を、表1〜表3に纏めて示す。
【0157】
【表1】

【0158】
ポリアミド樹脂を用いた実施例1〜6のレーザー溶着体は、表1から明らかな通り、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とが、しっかりと溶着されたものであり、何れも優れた引張強度を有していた。
【0159】
一方、比較例1または比較例2は、レーザー光透過吸収性成形部材中にニグロシンが含有されていないため、成形部材同士が溶着するものの、実施例のレーザー溶着体と比較して、溶着強度が低いものであった。また、比較例3はレーザー光透過吸収性成形部材中にニグロシンが0.6重量%、比較例4はレーザー光吸収性成形部材中にニグロシンが0.008重量%しか含有していないため、成形部材同士を溶着することはできなかった。
【0160】
【表2】

【0161】
次に、ポリカーボネート樹脂を用いた実施例7〜10のレーザー溶着体は、表2から明らかな通り、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とが、しっかりと溶着されたものであり、何れも優れた引張強度を有していた。
【0162】
一方、比較例5はレーザー光透過吸収性成形部材中にニグロシンが含有されていないため、成形部材同士が溶着するものの、実施例のレーザー溶着体と比較して、溶着強度が低いものであった。また、比較例6はレーザー光透過吸収性成形部材中にニグロシンが0.6重量%、比較例7はレーザー光透過吸収性成形部材中にニグロシンが0.1重量%含有しているため、成形部材同士を溶着することはできなかった。
【0163】
【表3】

【0164】
ポリプロピレン樹脂を用いた実施例11〜13のレーザー溶着体は、表3から明らかな通り、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材とが、しっかりと溶着されたものであり、何れも優れた引張強度を有していた。
【0165】
一方、比較例8はレーザー光透過吸収性成形部材中にニグロシンが含有されていないため、成形部材同士が溶着するものの、実施例のレーザー溶着体と比較して、溶着強度が低いものであった。また、比較例9はレーザー光透過吸収性成形部材中にニグロシンが0.6重量%、比較例10はレーザー光吸収性成形部材中にニグロシンが0.008重量%しか含有していないため、成形部材同士を溶着することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明のレーザー溶着体は、自動車部品例えば内装のインストルメントパネル、エンジンルーム内におけるレゾネター(消音器)、医療器具例えば輸液等の内容物を注入して点滴などで使用する医療用チューブ、食料包材例えば流動食や飲料組成物を含有するスパウトパウチ、電気・電子部品・家電製品部品例えばハウジング等に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明を適用するレーザー溶着体の実施の一例を示す図である。
【図2】本発明を適用外のレーザー溶着体の実施の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0168】
1はレーザー光透過吸収性成形部材、2はレーザー光吸収性成形部材、3はレーザー光、4は溶着部位、11はレーザー光透過性成形部材、12はレーザー光吸収性成形部材、13はレーザー光、14は溶着部位である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
940nmの光に対する吸収係数εを4000〜7000(ml/g・cm)とするニグロシンのみからなる着色剤0.001〜0.3重量%、および熱可塑性樹脂を含有することにより、レーザー光の一部を透過しながら、一部を吸収するレーザー光透過吸収性成形部材と、
ニグロシンおよび/またはカーボンブラックを含む別な着色剤0.1〜5重量%、および熱可塑性樹脂を含有することにより、該レーザー光を吸収するレーザー光吸収性成形部材とが、
重ねられたまま、該レーザー光の照射による発熱で溶着されて一体化していることを特徴とするレーザー溶着体。
【請求項2】
前記別な着色剤が、カーボンブラックを含んでいることを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶着体。
【請求項3】
前記別な着色剤が、ニグロシンを含んでいることを特徴とする請求項2に記載のレーザー溶着体。
【請求項4】
前記レーザー光透過吸収性成形部材が、下記数式(I)
【数1】

(数式(I)中、aはその吸光度、ε(1/cm)はその吸収係数、C(重量%)はそれに含まれる前記着色剤の濃度、L(cm)はその厚さを示す)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶着体。
【請求項5】
前記レーザー光吸収性成形部材が、下記数式(II)
【数2】

(数式(II)中、aはその吸光度、ε(1/cm)はその吸収係数、C(重量%)はそれに含まれる前記別な着色剤の濃度、L(cm)はその厚さを示す)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶着体。
【請求項6】
前記ニグロシンが、下記化学式(1)〜(4)
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

で表わされる化合物の少なくとも一つを含有することを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶着体。
【請求項7】
前記レーザー光透過吸収性成形部材が、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂の少なくとも何れかを含有することを特徴とする請求項1乃至6に記載のレーザー溶着体。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂であり、前記ニグロシンのみからなる着色剤が、0.01〜0.2重量%含有されていることを特徴とする請求項7に記載のレーザー溶着体。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂であり、前記ニグロシンのみからなる着色剤が、0.01〜0.2重量%含有されていることを特徴とする請求項7に記載のレーザー溶着体。
【請求項10】
前記ニグロシン中の鉄濃度が、最大でも1%であることを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶着体。
【請求項11】
前記ニグロシン中のアニリン濃度が、最大でも1%であることを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶着体。
【請求項12】
前記レーザー光透過吸収性成形部材と前記レーザー光吸収性成形部材との厚さが、200〜5000μmであることを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶着体。
【請求項13】
前記レーザー光透過吸収性成形部材と前記レーザー光吸収性成形部材とが、厚さ200〜1000μmのフィルムであることを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶着体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−112127(P2007−112127A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254061(P2006−254061)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000103895)オリヱント化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】