説明

レーザ光の処理装置

【課題】被加工体を透過するレーザ光を処理することができるレーザ光の処理装置を提供する。
【解決手段】本発明に一形態におけるレーザ光の処理装置は、レーザ光1を用いてガラス2の被加工体を加工する際に、被加工体を透過するレーザ光の処理装置において、被加工体を透過するレーザ光1を吸収する吸収部材20を備える。このとき、被加工体と吸収部材20との間の高さ位置に、被加工体を透過するレーザ光1の被加工体への再入射を遮蔽する遮蔽部材40を備えることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ光の処理装置に関し、特にレーザ光を用いてガラス等の被加工体を加工する際に、当該被加工体を透過するレーザ光の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光を用いて金属やガラス等の被加工体を加工する技術が実施されている(特許文献1)。このとき、金属等の被加工体は、レーザ光を殆ど反射又は吸収するため、レーザ光が被加工体を透過することがない。そのため、レーザ光を用いて金属等の被加工体を加工する際には、当該被加工体を透過するレーザ光の処理について検討する必要がない。
【0003】
一方、ガラス等のレーザ光を透過する被加工体を、レーザ光を用いて加工する際には、被加工体をレーザ光が透過するため、被加工体を透過するレーザ光を減衰又は吸収等させて処理する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/126977号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被加工体を透過するレーザ光を良好に処理することができる技術は見聞することができない。
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、被加工体を透過するレーザ光を処理することができるレーザ光の処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の形態に係るレーザ光の処理装置は、レーザ光を用いてガラスの被加工体を加工する際に、前記被加工体を透過するレーザ光の処理装置において、前記被加工体を透過するレーザ光を吸収する吸収部材を備える。
【0007】
本発明の第2の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記被加工体と前記吸収部材との間の高さ位置に、前記被加工体を透過するレーザ光の前記被加工体への再入射を遮蔽する遮蔽部材を備える。
【0008】
本発明の第3の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記吸収部材は、前記被加工体を透過するレーザ光の入射方向に対して傾斜して配置されており、前記被加工体を透過するレーザ光を前記遮蔽部材に導く。
【0009】
本発明の第4の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記レーザ光を前記被加工体に対して斜めから入射させ、前記被加工体を透過するレーザ光を前記吸収部材で反射させて、前記遮蔽部材に導く。
【0010】
本発明の第5の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記被加工体を透過するレーザ光を前記吸収部材に導く反射部材を備え、前記吸収部材は、前記被加工体と前記反射部材との間の高さ位置に配置される。
【0011】
本発明の第6の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記吸収部材の冷却手段を備える。
本発明の第7の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記吸収部材は、カーボンプレートを含む。
本発明の第8の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記吸収部材は、前記レーザ光を吸収する液体であって、容器内に収容される。
【0012】
本発明の第9の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記容器は、前記被加工体を透過するレーザ光が入射する開口部を有し、前記開口部から入射した前記レーザ光を内部で反射させて前記液体に吸収させる。
【0013】
本発明の第10の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記開口部は前記レーザ光を透過する部材で覆われており、前記容器が密閉される。
本発明の第11の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記液体を循環させ濾過する循環手段を備える。
【0014】
本発明の第12の形態に係るレーザ光の処理装置は、レーザ光を用いてガラスの被加工体を加工する際に、前記被加工体を透過するレーザ光の処理装置において、前記被加工体を透過するレーザ光を散乱させる散乱部材を備える。
【0015】
本発明の第13の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記被加工体と前記散乱部材との間の高さ位置に、前記被加工体を透過するレーザ光の前記被加工体への再入射を遮蔽する遮蔽部材を備える。
【0016】
本発明の第14の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記被加工体を透過するレーザ光を前記散乱部材に導く反射部材を備え、前記散乱部材は、前記被加工体と前記反射部材との間の高さ位置に配置される。
【0017】
本発明の第15の形態に係るレーザ光の処理装置は、前記散乱部材の冷却手段を備える。
上記レーザ光の処理装置において、前記レーザ光の波長は250〜5000nmであること、が好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被加工体を透過するレーザ光を処理することができるレーザ光の処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係るレーザ光の処理装置を概略的に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係るレーザ光の処理装置を概略的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る異なるレーザ光の処理装置を概略的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る異なるレーザ光の処理装置を概略的に示す図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係るレーザ光の処理装置を概略的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係るレーザ光の処理装置を概略的に示す図である。
【図7】水の吸収特性を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態5に係るレーザ光の処理装置を概略的に示す図である。
【図9】本発明の実施の形態6に係るレーザ光の処理装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。なお、以下の実施の形態のレーザ光の処理装置は、ガラス等のレーザ光を透過する被加工部材を、当該レーザ光を用いて加工する際に、被加工体を透過するレーザ光を処理するために好適に用いられる。
【0021】
実施の形態1
図1は、本実施の形態のレーザ光の処理装置(以下、単に処理装置と省略する場合がある。)100を概略的に示す図である。処理装置100は、不図示のレーザ加工装置を格納する筐体10、吸収部材20、冷却手段30を備える。ここで、レーザ加工装置は、一般的なレーザ加工装置と同様の構成とされており、レーザ光出力部、ガラス保持部、制御部等を備える。すなわち、例えば制御部によって出力等が制御されたレーザ光1がレーザ光出力部からガラス保持部に保持されたガラス2に向かって出射される。このとき、ガラス保持部は、制御部によってガラス2の所定の位置にレーザ光1が照射されるように当該ガラス2の面内方向に制御される。これにより、ガラス2はレーザ光1によって所定の位置が加工される。
【0022】
筐体10は、上述のようにレーザ光1を用いてガラス2を加工する際に、ガラス2や吸収部材20等で反射又は散乱するレーザ光1が外部に漏れ出さないように遮蔽する。つまり、筐体10内にレーザ加工装置及び吸収部材20が収容されており、筐体10内が密閉された状態でレーザ光1を用いたガラス2の加工が行われる。
【0023】
筐体10は、一般的なレーザ加工装置を覆う筐体と同様に、レーザ光を筐体内面で多重反射させることによって減衰させる。但し、筐体内面にレーザ光1を吸収するカーボンプレート等の吸収部材を配置して、レーザ光1を吸収してもよい。ちなみに、筐体10は開閉部(図示を省略)を備えており、当該開閉部からガラス2が搬入又は搬出される。
【0024】
吸収部材20は、ガラス2を透過するレーザ光1を吸収する。ここで云う吸収部材20のレーザ光1の吸収は、レーザ光1の全てのエネルギを吸収する場合だけでなく、レーザ光1の一部のエネルギを吸収する場合も含む。
【0025】
吸収部材20はレーザ光1の透過方向に配置されている。例えば、吸収部材20は、ガラス2の切断縁の下方領域、詳細にはガラス板から製品形状のガラスを抜き取るための補助切断線の下方領域やガラス板から製品形状のガラスを抜き取るための切断線の下方領域等に配置される。但し、吸収部材20は、レーザ光1の透過領域に配置されればよい。
【0026】
吸収部材20は、レーザ光1を吸収することができ、且つ熱伝導性に優れた部材であればよい。つまり、吸収部材20は、一般的に被加工部材を加工する際に用いられる250〜5000nm程度の波長のレーザ光を吸収することができる部材であることが好ましい。但し、吸収部材20は、少なくとも800〜3000nm程度の波長のレーザ光を吸収することができる部材であればよい。本実施の形態では、吸収部材20としてカーボンプレートを用いている。なお、吸収部材20の厚さ等は、吸収するレーザ光の出力等を考慮して適宜設定される。ここで、吸収部材20におけるレーザ光1が入射する側の面に凹凸形状を形成し、吸収部材20で吸収できなかったレーザ光1を散乱させてもよい。
【0027】
冷却手段30は、レーザ光1を吸収することで発熱する吸収部材20を冷却する。冷却手段30は、吸収部材20を支持する支持部31、熱交換手段32を備える。支持部31におけるガラス2側の面には、吸収部材20が設けられている。支持部31の内部には、熱交換手段32の一構成要素である冷却管32aが配置されている。つまり、支持部31は、吸収部材20から伝えられる熱を熱交換手段32の冷却管32aに伝える。そのため、支持部31は、熱伝導性に優れた部材を含むことが好ましい。本実施の形態の支持部31は銅製である。
【0028】
熱交換手段32は、冷却管32a、及び図示を省略した冷却媒体、熱交換器、ポンプ等を備える。つまり、冷却媒体がポンプによって冷却管32a内に送り出され、冷却管32aに伝わった熱を吸収しつつ熱交換器に送られる。そして、冷却媒体は熱交換器によって冷却され、再びポンプによって冷却管32a内に送り出される。これにより、冷却手段30の支持部31が冷却され、結果として吸収部材20を良好に冷却することができる。なお、冷却媒体としては、液体、気体を問わず用いることができる。また、冷却管32a内に冷却媒体を循環させることなく、ヒートパイプ等を熱交換手段32として用いることもできる。
【0029】
このような処理装置100は、レーザ光1の透過方向に吸収部材20を配置したので、ガラス2を透過するレーザ光1を良好に吸収することができる。そのため、レーザ光1がガラス2に再入射することを略防ぐことができ、ガラス2の品質を維持できる。さらに、筐体10を簡易な構成にすることができる。
【0030】
しかも、吸収部材20を冷却手段30で冷却するので、吸収部材20の耐久性を向上させることができる。
【0031】
なお、吸収部材20でガラス2を透過するレーザ光1を略吸収することができる場合は、筐体10を省略してもよい。また、冷却手段30は、吸収部材20が配置されている全領域に配置してもよく、部分的に(例えば間隔を開けて)配置してもよい。
【0032】
実施の形態2
図2は、本実施の形態の処理装置101を概略的に示す図である。本実施の形態の処理装置101は、実施の形態1の処理装置100と略同様の構成とされているので、重複する説明は省略する。
【0033】
処理装置101は、ガラス2の下面(レーザ光が透過する側の面)へのレーザ光の再入射を略防ぐことができる構成とされている。すなわち、処理装置101は、実施の形態1の処理装置100の構成に加えて、遮蔽部材40を備える。遮蔽部材40は、ガラス2の下面と吸収部材20との間の高さ位置に配置されている。このとき、ガラス2を透過するレーザ光1の吸収部材20への入射が遮蔽部材40によって阻害されないように、遮蔽部材40は、ガラス2を透過するレーザ光1が吸収部材20に入射する入射経路L1を避けて配置される。例えば、遮蔽部材40は少なくともガラス2における製品形状に抜き取られる領域(即ち、ガラス2の加工領域)内であって、且つ当該入射経路L1を避けた領域に配置される。これにより、吸収部材20で散乱したレーザ光1がガラス2の加工領域内に再入射することを略防ぐことができる。
【0034】
遮蔽部材40は、吸収部材20で反射するレーザ光1が略透過しない部材であればよい。本実施の形態の遮蔽部材40は、散乱光に対し十分な強度を持つ金属製の板状部材から成る。ちなみに、遮蔽部材40におけるレーザ光1が入射する側の面に凹凸形状を形成し、レーザ光1を散乱させるとよい。
【0035】
このような処理装置101は、ガラス2の下面と吸収部材20との間の高さ位置に遮蔽部材40を配置したので、吸収部材20で反射するレーザ光1がガラス2の下面に再入射することを略防ぐことができる。そのため、ガラス2の品質に優れた切断作業が可能となる。
【0036】
ここで、図3に示すように、吸収部材20から反射するレーザ光1を確実に遮蔽部材40に導くことができるように、吸収部材20を入射経路L1に対して傾斜させてもよい。例えば、レーザ光1を鉛直方向から照射し、ガラス2を透過したレーザ光1を傾斜した状態で配置した吸収部材20に入射させ、吸収部材20で反射するレーザ光1を遮蔽部材40に導く。これにより、吸収部材20で反射するレーザ光1を確実に遮蔽部材40に導くことができ、加工中にガラス2の品質を損なうことがなく、特に吸収部材20を反射するレーザ光1が、入射経路L1を辿ってガラス2に再入射することを略防ぐことができる。
【0037】
このとき、吸収部材20で反射するレーザ光1がガラス2の加工領域より外方に反射されるように、吸収部材20を配置すると、吸収部材20で散乱したレーザ光1がガラス2の加工領域内に再入射することを防ぐことができる。
【0038】
または、図4に示すように、吸収部材20から反射するレーザ光1を確実に遮蔽部材40に導くことができるように、ガラス2に対して斜めからレーザ光1を照射してもよい。例えば、斜めからレーザ光1をガラス2に照射し、ガラス2を透過したレーザ光1を略水平に配置した吸収部材20に入射させ、吸収部材20で反射するレーザ光1を遮蔽部材40に導く。これにより、吸収部材20で反射するレーザ光1を確実に遮蔽部材40に導くことができ、加工中にガラス2の品質を損なうことがなく、特に吸収部材20を反射するレーザ光1が、入射経路L1を辿ってガラス2に再入射することを略防ぐことができる。
【0039】
このとき、吸収部材20で反射するレーザ光1がガラス2の加工領域より外方に反射されるように、レーザ光1のガラス2への照射角度を設定すると、吸収部材20で散乱したレーザ光1がガラス2の加工領域内に再入射することを防ぐことができる。
【0040】
実施の形態3
図5は、本実施の形態の処理装置102を概略的に示す図である。本実施の形態の処理装置102も、実施の形態1の処理装置100と略同様の構成とされているので、重複する説明は省略する。
【0041】
処理装置102も、ガラス2の下面(レーザ光が透過する側の面)へのレーザ光1の再入射を略防ぐことができる構成とされている。すなわち、処理装置102は、ガラス2を透過するレーザ光1を吸収部材20に導くための反射部材50を備える。
【0042】
詳細には、レーザ光1の透過方向に反射部材50が配置されている。例えば、反射部材50は、ガラス2の切断縁の下方領域、詳細にはガラス板から製品形状のガラスを抜き取るための補助切断線の下方領域やガラス板から製品形状のガラスを抜き取るための切断線の下方領域等に配置される。このとき、反射部材50は、ガラス2の加工領域より外方にレーザ光1が反射するように配置することが好ましい。これにより、レーザ光1がガラス2の加工領域内に再入射することを防ぐことができる。
【0043】
この反射部材50とガラス2の下面との間の高さ位置に吸収部材20が配置されている。このとき、ガラス2を透過するレーザ光1の反射部材50への入射が吸収部材20によって阻害されないように、吸収部材20は、ガラス2を透過するレーザ光1が反射部材50に入射する入射経路L2を避けて配置される。例えば、吸収部材20は、平面から見て、切断線の下方領域に断続的に配置される反射部材50に沿って、当該入射経路L2を避けてガラス2の加工領域の外方に配置される。このとき、吸収部材20をガラス2の加工領域内にも配置すると、散乱したレーザ光1がガラス2に再入射することを防ぐことができる。
【0044】
ここで、反射部材50は、ガラス2を透過するレーザ光1を良好に吸収部材20に導くように配置角度・位置が設定される。つまり、ガラス2を透過するレーザ光1の反射部材50への入射角度及び吸収部材20の配置位置に応じて、反射部材50の配置角度・位置を設定すればよい。
【0045】
このような処理装置102は、ガラス2の下面と反射部材50との間の高さ位置に吸収部材20を配置し、この吸収部材20に反射部材50からガラス2を透過したレーザ光1を導くので、当該レーザ光1を略吸収することができるだけでなく、吸収部材20が実施の形態2の遮蔽部材の役割を担ってガラス2の下面へのレーザ光の再入射を略防ぐことができる。
【0046】
実施の形態4
図6は、本実施の形態の処理装置103を概略的に示す図である。本実施の形態の説明においても、上述の説明と重複部分については省略する。
【0047】
本実施の形態では、吸収部材として液体60がレーザ光1の透過方向に配置されている。詳細には、例えば液体60として水を採用し、水の遠赤外や赤外光の吸収特性を利用して、ガラス2を透過するレーザ光1を吸収する。液体60は、容器70に収容されている。容器70は、レーザ光1の透過方向に配置されており、液体60を収容している。容器70は、上面、側面及び底面を有し、上面に少なくともレーザ光1を入射させることができる幅寸法の開口部71が形成されている。
【0048】
ここで、水の吸収特性について、図7を参照しつつ説明する。一般的に吸収特性は、I=I−αx(I:吸収後の出射光強度、I:入射光強度、x:光通過距離、α:吸収係数)で表すことができ、光の波長が1000nm帯域では、図7に示すように吸収係数αが0.1(cm−1)程度であり、入射強度を1/2程度にするには70nmの光路長が必要になる。
【0049】
そこで、本実施の形態では、レーザ光1を容器70内で多重反射させ、水中での光路長を確保する。そのため、容器70内での多重反射を促進するために、容器70の上面、側面及び底面を反射率の高い材質(例えばアルミニウムや銅)で構成することが好ましい。さらにレーザ光1を反射又は散乱させる部材3を容器70内に配置し、開口部71から入射したレーザ光1が良好に側面又は上面に反射又は散乱する構成とすることが好ましい。本実施の形態では、当該部材3を容器70の底部に傾斜させた状態で配置している。但し、容器70の底面を傾斜させたり、散乱を促すために凹凸形状を形成したりしてもよい。このようにレーザ光1を多重反射させることで、良好に光路長を確保することができ、液体60でレーザ光1を吸収することができる。なお、本実施の形態では液体60として水を用いているが、レーザ光を良好に吸収することができる液体であればよく、例えば水に添加材を添加してもよい。また、本実施の形態では、レーザ光1を容器70内で多重反射させているが、容器70の深さを十分に確保して、レーザ光1を容器70内で反射させることなく、液体60で吸収しても良い。
【0050】
このような処理装置103は、レーザ光1の透過方向に当該レーザ光1を吸収する液体60を配置したので、ガラス2を透過するレーザ光1を略吸収することができる。しかも、レーザ光1の熱は液体60で吸収される。
【0051】
ここで、液体60はレーザ光1の熱を吸収して、当該液体60の温度が上昇するので、図示を省略した冷却手段で液体60を冷却する構成とされていることが好ましい。冷却手段の構成は、特に限定されず、液体60を冷却することができる構成であれば、公知の冷却手段を用いることができる。
【0052】
また、液体60内に不純物が混入して反射率低下、熱伝導率の低下を防止するために、循環手段(図示を省略)によって液体60を循環させて濾過する構成とされていることが好ましい。
【0053】
さらに大気の介在により容器70が腐食しないように、開口部71がレーザ光を透過する部材で覆われて容器70が密閉されていることが好ましい。このとき、容器70内が液体60で満たされていることが好ましい。
【0054】
実施の形態5
図8は、本実施の形態の処理装置104を概略的に示す図である。本実施の形態の説明においても、上述の説明と重複部分については省略する。
【0055】
本実施の形態では、レーザ光1の透過方向に吸収部材に代わって、レーザ光1を散乱させる散乱部材80が配置されている。散乱部材80は、レーザ光1の透過方向に配置されている。散乱部材80は、熱伝導性に優れた部材であればよい。本実施の形態の散乱部材80は銅製である。
【0056】
ここで、散乱部材80は、レーザ光1が入射する側の面に凹凸形状が形成され、レーザ光1を良好に散乱させることができる構成とされていることが好ましい。また、散乱部材80は、レーザ光1が入射することで発熱するので、冷却手段90を備えていることが好ましい。
【0057】
冷却手段90は、実施の形態1の冷却手段30と略同様の構成とされており、散乱部材80内に冷却手段90の一構成要素である冷却管90aが配置されている。そして、冷却媒体がポンプによって冷却管90a内に送り出され、冷却管90aに伝わった熱を吸収しつつ熱交換器に送られる。そして、冷却媒体は熱交換器によって冷却され、再びポンプによって冷却管90a内に送り出される。これにより、散乱部材80を良好に冷却することができる。なお、冷却媒体としては、液体、気体を問わず用いることができる。また、冷却管90a内に冷却媒体を循環させることなく、ヒートパイプ等を冷却手段として用いることもできる。
【0058】
このような処理装置104は、レーザ光1の透過方向に散乱部材80を配置したので、ガラス2を透過するレーザ光1が散乱部材80によって散乱して筐体10内で多重反射する。これにより、ガラス2を透過するレーザ光1を減衰させることができる。ここで、散乱部材80によって散乱するレーザ光1が、ガラス2の下面に再入射しないように、実施の形態2と同様にガラス2の下面と散乱部材80との間の高さ位置に遮蔽部材40を配置することが好ましい。
【0059】
実施の形態6
図9は、本実施の形態の処理装置105を概略的に示す図である。本実施の形態の説明においても、上述の説明と重複部分については省略する。
【0060】
処理装置105は、実施の形態3の処理装置102と略同様の構成とされているが、吸収部材20に代わって散乱部材80が配置されている。
このような処理装置105は、ガラス2の下面と反射部材50との間の高さ位置に散乱部材80を配置し、この散乱部材80に反射部材50からガラス2を透過したレーザ光1を導くので、当該レーザ光1を散乱させて筐体10内で多重反射させることができるだけでなく、散乱部材80が実施の形態5の遮蔽部材の役割を担ってガラス2の下面へのレーザ光1の再入射を略防ぐことができる。
【0061】
このときも、反射部材50で反射するレーザ光1がガラス2の加工領域内に反射しないように、反射部材50を配置することが好ましい。
【0062】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、被加工体としてガラスを例示したが、レーザ光を透過する部材であれば、ガラスに限定されない。
【符号の説明】
【0063】
1 レーザ光
2 ガラス
3 レーザ光を反射又は散乱させる部材
10 筐体
20 吸収部材
30 冷却手段
31 支持部
32 熱交換手段
32a 冷却管
40 遮蔽部材
50 反射部材
60 液体
70 容器
71 開口部
80 散乱部材
90 冷却手段
90a 冷却管
100 処理装置
101 処理装置
102 処理装置
103 処理装置
104 処理装置
105 処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を用いてガラスの被加工体を加工する際に、前記被加工体を透過するレーザ光の処理装置において、
前記被加工体を透過するレーザ光を吸収する吸収部材を備えるレーザ光の処理装置。
【請求項2】
前記被加工体と前記吸収部材との間の高さ位置に、前記被加工体を透過するレーザ光の前記被加工体への再入射を遮蔽する遮蔽部材を備える請求項1に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項3】
前記吸収部材は、前記被加工体を透過するレーザ光の入射方向に対して傾斜して配置されており、前記被加工体を透過するレーザ光を前記遮蔽部材に導く請求項2に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項4】
前記レーザ光を前記被加工体に対して斜めから入射させ、前記被加工体を透過するレーザ光を前記吸収部材で反射させて、前記遮蔽部材に導く請求項2に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項5】
前記被加工体を透過するレーザ光を前記吸収部材に導く反射部材を備え、
前記吸収部材は、前記被加工体と前記反射部材との間の高さ位置に配置される請求項1に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項6】
前記吸収部材の冷却手段を備える請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項7】
前記吸収部材は、カーボンプレートを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項8】
前記吸収部材は、前記レーザ光を吸収する液体であって、容器内に収容される請求項1に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項9】
前記容器は、前記被加工体を透過するレーザ光が入射する開口部を有し、前記開口部から入射した前記レーザ光を内部で反射させて前記液体に吸収させる請求項8に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項10】
前記開口部は前記レーザ光を透過する部材で覆われており、前記容器が密閉される請求項9に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項11】
前記液体を循環させ濾過する循環手段を備える請求項8〜10のいずれか一項に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項12】
レーザ光を用いてガラスの被加工体を加工する際に、前記被加工体を透過するレーザ光の処理装置において、
前記被加工体を透過するレーザ光を散乱させる散乱部材を備えるレーザ光の処理装置。
【請求項13】
前記被加工体と前記散乱部材との間の高さ位置に、前記被加工体を透過するレーザ光の前記被加工体への再入射を遮蔽する遮蔽部材を備える請求項12に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項14】
前記被加工体を透過するレーザ光を前記散乱部材に導く反射部材を備え、
前記散乱部材は、前記被加工体と前記反射部材との間の高さ位置に配置される請求項12に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項15】
前記散乱部材の冷却手段を備える請求項12〜14のいずれか一項に記載のレーザ光の処理装置。
【請求項16】
前記レーザ光の波長は250〜5000nmである請求項1〜15のいずれか一項に記載のレーザ光の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−49066(P2013−49066A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187150(P2011−187150)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】