説明

レーザ光を用いた接合方法

【課題】レーザ光に対して非透過性の部材側からレーザ光を照射して、複数の部材を良好に接合する接合方法を提供する。
【解決手段】レーザ光に対して非透過性の第1部材と、第1部材と同一又は異なる材料からなる第2部材とを接合する接合方法であって、ポリマーからなり23℃における引張弾性率が1000MPa以下であるレーザ接合用中間部材を第1部材と第2部材の間に挟み、第1部材側からレーザ光を照射することによって前記レーザ接合用中間部材を溶融させて、第1部材と第2部材とを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いた接合方法に関する。特に、レーザ光に対して非透過性の部材側からレーザ光を照射することによって、ポリマーからなるレーザ接合用中間部材を溶融させて、複数の部材を接合する接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂からなる部材同士を接合する方法として、レーザ光の照射による接合方法(いわゆるレーザ溶着法)が以前から用いられている、これはレーザ光に対する透過性を有する透過性部材と、レーザ光を吸収する吸収性部材とを加圧して当接させた後、透過性部材側からレーザ光を照射し、透過性部材と吸収性部材の当接部分を加熱溶着させて両者を一体的に接合する方法である。このような方法ではレーザ透過性の材料と非透過性の材料の組合せとする必要があったり、互いに親和性の低い材料同士を良好に接合する事ができなかったりするなど、接合可能な材料の組合せが制限されていた。
【0003】
レーザ接合する際には、接合する部材同士の間隙を一定に保ってレーザを照射することが重要である。即ち間隔が狭すぎるとレーザ照射で溶融した樹脂の局所的体積膨張変化を吸収することができず、好ましくない残存応力が発生するおそれがある。また間隙が広すぎると溶融面積が不足し溶着強度が低下する。そのために部材同士の間隙を数μm〜数十μmの範囲に保つ為に一定の圧力をかけてレーザ照射する方法が一般的に採用されている。しかしながら複雑な形状をした部材に対して適切な圧力をかけて一定の間隙を維持することは困難であった。
【0004】
また、このような方法により異種材料を接合する場合、線膨張係数の違いに起因して接合界面において応力が発生しやすく、このために十分な接合強度が得られず剥がれやすい事があった。また、前述のように適切な間隙を保って照射することはやはり困難であった。
【0005】
レーザ透過性の材料同士をレーザ溶着法により接合する方法として、レーザ透過性の部材同士の接合界面に、レーザ光を吸収するトナーや塗料などを含む樹脂部材を介在させて積層し、これにレーザ光を照射する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。また、レーザ透過性材料からなる第1部材と、第1部材と異なる材料からなる第2部材の間にエラストマーからなるシートを挟み、第1部材側からレーザ光を照射して接合する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
互いに相溶性の小さい樹脂材同士を接合する方法として、レーザ透過性を有する第1樹脂材料からなる第1樹脂部材と、第1樹脂部材と相溶性が小さくレーザ透過性のない第2樹脂材料からなる第2樹脂部材との間に、第1樹脂材料及び第2樹脂材料からなるアロイ樹脂材を介在させた状態でレーザ光を照射して、第1樹脂部材及び第2樹脂部材を一体的に接合する方法が開示されている(特許文献5参照)。これにより、互いに相溶性の小さい樹脂材同士であっても良好に接合することができるとされている。しかしながら、この接合方法では接合対象の2種の樹脂からなるアロイ(重合体組成物)を用いる必要があるため、樹脂材料同士の接合には使用できるものの、樹脂と金属などの無機物との接合に使用することはできなかった。また通常、第1樹脂材料と第2樹脂材料はいずれも硬質の樹脂であることから、得られるアロイ樹脂材も硬質材料となり、接合面の形状にうまく沿わせて密着させることが困難であった。そのようなアロイ樹脂材を介在させることで、接合界面において樹脂同士の線膨張係数の違いによって生じる応力や接合時の残存応力をある程度は緩和させることができると推測されるが、なお不十分であった。
【0007】
また、上記接合方法はいずれもレーザ光の照射側の部材が、レーザ透過性のものである必要があり、レーザ光の照射側の部材がレーザ光に対して非透過性である場合には適用できなかった。したがって、例えば、接合される部材の両方がレーザ光非透過性の場合には接合することができなかった。また、接合に際して、レーザ光透過性の部材をレーザ光の照射側に配置しなければならず、製造工程上の制約もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−181931号公報
【特許文献2】特開2004−1071号公報
【特許文献3】特開2005−238462号公報
【特許文献4】特開2008−7584号公報
【特許文献5】特開2002−18961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、レーザ光に対して非透過性の部材側からレーザ光を照射して、複数の部材を良好に接合する接合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、レーザ光に対して非透過性の第1部材と、第1部材と同一又は異なる材料からなる第2部材とを接合する接合方法であって、ポリマーからなり23℃における引張弾性率が1000MPa以下であるレーザ接合用中間部材を第1部材と第2部材の間に挟み、第1部材側からレーザ光を照射することによって前記レーザ接合用中間部材を溶融させて、第1部材と第2部材とを接合することを特徴とする接合方法を提供することによって解決される。
【0011】
このとき、第1部材が金属からなることが好適な実施態様であり、さらに第2部材が第1部材とは異なる種類の金属からなることがより好適な実施態様である。また、第2部材がポリマーからなることも好適な実施態様である。前記レーザ接合用中間部材が厚さ10〜5000μmのシートであることが好ましい。また、前記レーザ接合用中間部材が粘着性を有することが好ましく、前記レーザ接合用中間部材の、JIS Z0237の10.4に基づいて測定したSUS304板に対する180度引きはがし粘着力が0.1N/25mm以上であることが、より好ましい。
【0012】
前記レーザ接合用中間部材が、23℃における引張弾性率が0.01〜500MPaのポリマー(a)と、23℃における引張弾性率が500MPaを超えるポリマー(b)とを含む重合体組成物からなり、かつポリマー(b)が第1部材と第2部材の少なくとも一方を構成するポリマーと同じ種類のポリマーであることが好適な実施態様である。このとき、ポリマー(b)が、融点が200℃以上の結晶性ポリマーであることが好ましい。
【0013】
前記レーザ接合用中間部材が第1部材に接する第1ポリマー層と第2部材に接する第2ポリマー層とを有する多層シートからなることが好適な実施態様である。このとき、第1ポリマー層と第2ポリマー層の間に少なくとも1層のコア層を有することが好ましく、前記コア層の23℃における引張弾性率が、第1ポリマー層の23℃における引張弾性率及び第2ポリマー層の23℃における引張弾性率のいずれよりも高いことがより好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の接合方法によれば、レーザ光に対して非透過性の部材側からレーザ光を照射して、簡便な操作で、高い接合強度を得ることができる。例えば、金属のようなレーザ光非透過性の部材側からレーザ光を照射しても、部材同士を接合することができるので、接合工程の自由度が向上する。また、一定以下の引張弾性率の中間部材を用いることで、接合されるそれぞれの部材の間に生じる応力を緩和することもできる。さらに、相互に物性の異なる異種材料からなる部材同士を接合する際にも、両部材の組み合わせに適した中間部材を接合面に使用することで、高い接合強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の接合方法により得られる接合品の模式的断面図である。
【図2】実施例において第1部材、接合用シート及び第2部材を積層する方法を説明するための模式的上面図及び断面図である。
【図3】実施例において剪断強度の測定方法を説明するための概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の接合方法は、レーザ光に対して非透過性の材料からなる第1部材と、第1部材と同一又は異なる材料からなる第2部材とを接合する接合方法である。
【0017】
本発明に用いられる第1部材は、レーザ光に対して非透過性の材料からなる。ここで、レーザ光に対して非透過性であるとは、第1部材の外側から照射したレーザ光が接合面まで実質的に到達しない状態のことをいう。加熱源としてのレーザ光を吸収することで、まず第1部材が加熱され、引き続きその熱が接合用中間部材まで伝わって中間部材が溶融する。したがって、第1部材は、レーザ光の少なくとも一部を吸収する必要がある。
【0018】
第1部材はレーザ光に対して非透過性の部材であれば特に限定されず、例えば、金属、セラミックスなどが好適に用いられる。中でも、熱伝導性や耐熱性の観点から、金属が好適に用いられる。金属は、単体であってもよいし、2種以上の金属の合金であってもよい。具体的には、鉄鋼、ステンレス、アルミニウム(合金)、銅(合金)、チタン(合金)、マグネシウム(合金)などが例示される。また、表面処理が施された金属であってもよい。セラミックスとしては、ジルコニアやアルミナなどの酸化物系(複合酸化物も含む)、炭化ケイ素などの炭化物系、窒化ケイ素などの窒化物系、アパタイトなどのリン酸塩系など、公知の種々のものを用いることができる。更に、上記金属とセラミックスの複合材料なども使用可能である。
【0019】
本発明に用いられる第2部材は、第1部材と同じ材料からなるものであってもよいし、第1部材とは異なる材料からなるものであってもよい。ポリマー、ガラス、金属、セラミックスなどを用いることができる。
【0020】
ポリマーとしては、例えば、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリオキシメチレン;ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリスチレンやABSなどのスチレン系樹脂、エポキシ樹脂などをはじめとする公知の種々のものが用いられる。架橋ゴムや熱可塑性エラストマーのようなエラストマーを用いることもできる。レーザ光に対して透過性を有するものであってもよいし、非透過性のものであってもよい。上記ポリマーの混合物を用いることもできる。さらに、ポリマーに対して各種充填剤を配合したものも用いることができる。例えば、カーボンブラックや炭酸カルシウムなどが練り込まれたゴムや樹脂などレーザ光に対して非透過性のものも用いることができる。
【0021】
ガラスとしては、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラスなど公知の種々のものを用いることができる。また、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラスなども用いることができる。レーザ透過性の材料も、レーザ光に対して非透過性の材料も用いることができる。金属あるいはセラミックスとしては、上記第1部材と同様のものを用いることができる。
【0022】
本発明で用いられるレーザ接合用中間部材は、第1部材と第2部材の間に挟み、第1部材側からレーザ光を照射することによって前記レーザ接合用中間部材を溶融させて、第1部材と第2部材とを接合するために用いられる。当該中間部材は、ポリマーからなり23℃における引張弾性率が1000MPa以下のものである。レーザ光が第1部材の表面に照射されることによって第1部材が加熱され、その熱が中間部材に伝わってポリマーが溶融し、第1部材と第2部材が接着される。
【0023】
当該中間部材の、23℃における引張弾性率が1000MPa以下であることが重要である。このような引張弾性率を有することにより、異なる2つの材料を接合する際に、線膨張係数の違いに起因して生じる両部材の界面における応力(歪み)を緩和することができる。また、中間部材を接合面の表面形状に沿わせることも容易になる。そのため、得られる接合品が高い接着強度を維持することができる。引張弾性率が高すぎると、上記応力緩和や表面形状への追随が不十分となるおそれがある。引張弾性率は好ましくは500MPa以下であり、より好ましくは100MPa以下であり、さらに好ましくは50MPa以下である。一方、引張弾性率が低すぎると、中間部材の形状を保持することが困難となり、作業性が低下するおそれがある。引張弾性率は好ましくは0.01MPa以上であり、より好ましくは0.1MPa以上である。ここで、中間部材が多層構造体である場合、少なくとも1層において23℃における引張弾性率が1000MPa以下であればよい。
【0024】
本発明で用いられる中間部材に用いられるポリマーとしては、各種の柔軟樹脂やエラストマーを用いることができる。柔軟樹脂としては、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合などの、各種変性ポリエチレンに代表されるポリオレフィン;(メタ)アクリレート共重合体などのアクリル樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリウレタン樹脂などの各種樹脂を用いることができる。
【0025】
また、エラストマーとしては、架橋ゴムや熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。架橋ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエン系ゴムなどの公知の種々のものを用いることができるが、高度に架橋したものはレーザ溶着性が低下するおそれがあるので、架橋の程度は限定される。また、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、アクリル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコン系エラストマー、フッ素系エラストマーなどが例示される。本発明においては、溶融接着性や加工容易性などの観点から、熱可塑性エラストマーが好ましく用いられる。中でも、スチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー及びアクリル系エラストマーがより好ましく用いられる。
【0026】
また、第1部材又は第2部材として、金属、セラミックス、極性樹脂などを用いて接合する場合には、中間部材が極性官能基を有するポリマーからなることが好ましい。極性官能基を有するポリマーは大きい凝集エネルギーを有し、金属、セラミックスあるいは極性樹脂との親和性が高いため、中間部材と金属又は極性樹脂との接合強度を高くすることができる。官能基を有するポリマーとしては、極性官能基を有する単量体で変性されたポリマーであってもよいし、ポリマーの主鎖が極性官能基を有していてもよい。極性官能基としては、カルボキシル基(無水カルボン酸基を含む)、ウレタン基、エポキシ基、アミノ基、水酸基又はエステル基などの極性基が好ましく、カルボキシル基(無水カルボン酸基を含む)及びウレタン基が特に好ましい。
【0027】
本発明で用いられるレーザ接合用中間部材が粘着性を有することが好ましい。これによって、レーザ光の照射に先立って第1部材と第2部材の間に中間部材を挟む際に、接合面に対して簡単に中間部材を仮止めすることができ、作業性が大きく向上する。また、粘着力に由来する接着強度の向上も期待できる。
【0028】
本発明で用いられるレーザ接合用中間部材の粘着力については、JIS Z0237の10.4に基づいた180度引きはがし粘着力(被着体:SUS304)が0.1N/25mm以上であることが好ましい。このような粘着力を有する中間部材を使用することによって、接合面への中間部材の固定が容易になるし、第1部材と第2部材との接着力も大きくできる。180度引きはがし粘着力は、0.5N/25mm以上であることが好ましく、2N/25mm以上であることがより好ましく、5N/25mm以上であることがさらに好ましい。
【0029】
このときの中間部材を構成する材料は、粘着性を有するものであれば特に限定されない。ベースポリマー及び粘着性付与剤からなる樹脂組成物を用いてもよいし、ベースポリマー自体が粘着性を有する場合には、特に粘着性付与剤を用いなくてもよい。ベースポリマーの分子量分布を広くして、低分子量成分による粘着効果を得ることもできる。また、レーザ溶着性能を阻害しない範囲で架橋構造を有していてもよい。レーザ接合用中間部材に用いられるベースポリマーは特に限定されないが、前述の柔軟樹脂やエラストマーを用いることができる。また、ベースポリマーが極性官能基を有する単量体で変性されたものであることが、前述の理由から好ましい。ベースポリマーは、複数の樹脂やエラストマーをブレンドしたものであってもよい。例えば、複数の樹脂同士、エラストマー同士をブレンドしてもよいし、樹脂とエラストマーとをブレンドしてもよい。また、極性官能基を有するものとそうでないものとをブレンドしてもよい。目的に応じて各種ブレンド物をベースポリマーとして使用することができる。
【0030】
本発明で用いられるレーザ接合用中間部材として好適なものの一つは、ベースポリマー及び粘着性付与剤からなる樹脂組成物よりなるものである。粘着性付与剤を配合することによって、粘着性を有する中間部材を容易に製造することができる。粘着性付与剤の多くは金属などに対する親和性が高いので、レーザ光によって加熱溶着した部分の接着力も、粘着性付与剤を含有しない場合に比べて大きくできる場合が多い。
【0031】
粘着性付与剤としては、例えば、クマロン・インデン樹脂及びクマロン樹脂/ナフテン系油/フェノール樹脂の混合物等のクマロン樹脂;テルペン樹脂、変性テルペン樹脂(例、芳香族変性テルペン樹脂)、テルペン−フェノール樹脂及び水添テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、ロジンのペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリセロール・エステル、水素添加ロジン、水素添加ウッドロジン、水素添加ロジンのメチルエステル、水素添加ロジンのペンタエリスリトール・エステル、水素添加ロジンのトリエチレングリコール・エステル、不均化ロジン、重合ロジン、重合ロジンのグリセロール・エステル及び硬化ロジン等のロジン誘導体;テレピン系粘着付与剤;芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、不飽和炭化水素(オレフィン系、ジオレフィン系)の重合体、イソプレン系樹脂、水素添加炭化水素樹脂、炭化水素系粘着化樹脂、ポリブテン、液状ポリブタジエン及び低分子量ブチルゴム等の石油系炭化水素樹脂;スチレン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂を挙げることができる。これらの中でも、テルペン系樹脂が好ましい。
【0032】
粘着性付与剤の含有量は特に限定されないが、ベースポリマー100重量部に対して粘着性付与剤を1〜500重量部含有することが好ましい。粘着性付与剤の含有量が少ない場合には、粘着力の向上が不十分になる場合がある。粘着性付与剤の含有量はより好適には10重量部以上であり、さらに好適には20重量部以上である。一方、粘着性付与剤の含有量が多すぎる場合には、中間部材の柔軟性が低下して、上記応力緩和や表面形状への追随が不十分となるおそれがあるとともに、中間部材自体の強度が低下するおそれもある。粘着性付与剤の含有量はより好適には300重量部以下であり、さらに好適には200重量部以下である。
【0033】
前述のように、ベースポリマー自体が粘着性を有する場合には、特に粘着性付与剤を用いなくてもよい。ベースポリマー自体が粘着性を有するものの例としては、アクリル系重合体、ウレタン系重合体、ジエン系重合体などが例示される。
【0034】
室温において形態保持能力があって、しかも粘着性と柔軟性を有するためには、ハードブロックとソフトブロックから構成されるブロック共重合体が好適に使用される。このとき、形態保持性及び耐熱性の点からは、ハードブロックの融点(結晶性の場合)又はガラス転移温度(非晶性の場合)が50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。溶融成形性の観点からはハードブロックの融点又はガラス転移温度は、通常300℃以下である。一方、粘着性と柔軟性の観点からは、ソフトブロックのガラス転移点が20℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることがさらに好ましい。特に粘着性の観点からは、ソフトブロックが非晶性であることが好ましい。ソフトブロック、ハードブロックともに非晶性であることがより好ましい。
【0035】
ブロック共重合体としては、アクリル系ブロック共重合体が好適に用いられる。非晶性のハードブロックと非晶性のソフトブロックとがミクロ相分離構造を形成しており、良好な力学性能と粘着性能を併せ持つことができる。しかも、極性ポリマーであるためにレーザ照射後の接着強度も高い。さらにアクリル系重合体は一般に光や熱に対して安定であるので、長期間にわたる安定的な接着性能も期待できる。ハードセグメントがアルキルメタクリレートから構成され、ソフトブロックがアルキルアクリレートから構成されることが好ましい。ジブロック共重合体やトリブロック共重合体を用途に応じて使い分けることができるし、混合して用いてもよい。具体的には、メチルメタクリレート−nブチルアクリレート−メチルメタクリレートのトリブロック共重合体や、メチルメタクリレート−nブチルアクリレートのジブロック共重合体が例示される。ここで、メチルメタクリレートから構成されるハードブロックのガラス転移温度は100〜120℃程度であり、nブチルメタクリレートから構成されるソフトブロックのガラス転移温度は−40〜−50℃程度である。なお、アクリル系ブロック共重合体に対して粘着性付与剤を添加しても良い。
【0036】
また、ベースポリマー自体が粘着性を有するものとして、ウレタン系重合体も好適に使用される。ウレタン系重合体は極性の高いウレタン結合を有しており、特に金属に対する接着性が良好である。なかでも、二液硬化型のウレタン系重合体が好適に使用され、粘着性に優れた重合体を得ることができる。原料として用いられるイソシアネート化合物とアルコールを混合して反応させることによってウレタン系重合体が得られる。トリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などのジイソシアネート化合物と、ジオール化合物とを混合して反応させることが好ましい。ジオール化合物の化学構造や分子量は目的に応じて調整される。また、3官能以上のイソシアネート化合物やアルコールを用いて、本発明の効果を阻害しない範囲で架橋構造を導入しても構わない。
【0037】
また、レーザ接合用中間部材のレーザ吸収性を向上させる目的で、中間部材にレーザ光の吸収剤を含有させても構わない。本発明の接合方法では、中間部材にレーザ光が到達しないので、このような吸収剤を添加する意味はほとんどないが、レーザ光に対して透過性の部材側からレーザ照射する場合と併用するような場合に有用な場合がある。
【0038】
本発明で用いられるレーザ接合用中間部材の形態は特に限定されない。第1部材と第2部材との間に挟むことができればよい。例えば、シート状であってもよいし、棒状であってもよいし、複雑な三次元形状を有するものであってもよい。なかでも、製造の容易性や、取扱いの容易性を考慮すれば、シートであることが好ましい。ここで、本発明で言うシートとは、薄物であるフィルムや、厚物である板などを含む概念である。
【0039】
また、レーザ接合用中間部材の厚さは10〜5000μmであることが好ましい。中間部材が適度な厚さを有することにより、レーザ光のエネルギーによって加熱溶融して第1部材と第2部材を接合した際に、両部材の接合界面に生じる応力を適度に緩和させることが可能となる。中間部材が薄すぎる場合には両部材間の応力を緩和することが不十分となるおそれがある。このような観点から、中間部材の厚さはより好ましくは20μm以上であり、さらに好ましくは50μm以上である。一方、中間部材が厚い場合には、第1部材と第2部材の両方の接合面と溶融接着させることが困難になるけれども、そのような場合には、一方の界面をレーザ溶着し、他方の界面は粘着力だけで接着することも可能である。ただし、コスト面の要請や、中間部材自体の強度の問題もあるので、中間部材は厚すぎない方がよい。中間部材の厚さはより好ましくは2000μm以下であり、さらに好ましくは1000μm以下である。ここで、中間部材の厚さとは、第1部材と接する面と第2部材と接する面との間の距離のことをいう。
【0040】
本発明で用いられるレーザ接合用中間部材が、多層構造体であることが好ましい。具体的には、当該中間部材が第1部材に接する第1ポリマー層と第2部材に接する第2ポリマー層とを有する多層シートからなることが好ましい。このとき、第1ポリマー層と第2ポリマー層のいずれかの23℃における引張弾性率が1000MPa以下であることが必要である。特に、第1ポリマー層と第2ポリマー層の両方の23℃における引張弾性率が1000MPa以下であることが好ましい。第1ポリマー層と第2ポリマー層とは、異なるポリマーからなるものであってもよいし、同じポリマーからなるものであってもよい。第1ポリマー層と第2ポリマー層とが同じポリマーからなる場合には、その間に他の材料からなる層が配置される。第1ポリマー層と第2ポリマー層とは直接、あるいは他の層を介して相互に接着されている。したがって、本発明で用いられるレーザ接合用中間部材は、一つの成形品として容易に取り扱うことのできる多層シートである。
【0041】
本発明の好適な実施態様の一つは、第2ポリマー層が第1ポリマー層とは異なるポリマーからなるレーザ接合用シートである。第2部材が第1部材とは異なる材料からなる場合、それらの材料の物性は相互に異なっており、それらの材料に対して溶融接着するのに適したポリマーも異なる場合が多い。例えば、第1部材が金属で第2部材がポリマーであるときのように(例えばステンレスとポリプロピレンのように)、両者の材料物性が大きく異なる場合、両者に対して高い接着強度で融着できるポリマーを選択することは困難である。このような場合であっても、第1ポリマー層には第1部材と良好に融着できる材料を採用し、第2ポリマー層には第2部材と良好に融着できる材料を採用することで、全体として第1部材と第2部材の間の接着強度を高くすることができる。
【0042】
ここで、第2ポリマー層が第1ポリマー層とは異なるポリマーからなるとは、そのポリマーの化学組成が異なる場合のことをいう。ポリエチレンとポリプロピレンのように、ポリマーを構成するモノマー単位が異なる場合はもちろんのこと、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレンのように、一部の構成モノマーが共通するものであっても、他の構成モノマーが異なれば異なるポリマーである。また、同じ組み合わせの複数種の構成モノマーからなる共重合体同士であっても、その共重合比率が異なれば異なるポリマーである。但し、分子量の相違のみでは異なるポリマーではない。また、ポリマー層がブレンド物からなる場合には、一部のポリマーのみが共通する場合や、配合比率が異なる場合には異なるポリマーとする。
【0043】
また、第1ポリマー層及び/又は第2ポリマー層がエラストマーからなるものであることが好適な実施態様である。エラストマーを用いることによって、種々の材料同士の接合において接合界面に生じる応力を低減させることができ、これにより高い接合強度を維持することができる。また、エラストマーは、柔軟で弾性を有しており、接合面の形状にうまく沿わせて密着させるのにも適している。また、一方の部材からの振動が他方の部材に伝わるのを抑制することもできる。エラストマーとしては、前述のものを使用することができる。また、第1ポリマー層及び/又は第2ポリマー層が、極性官能基を有するポリマーからなることも好ましい。第1ポリマー層及び/又は第2ポリマー層が粘着性を有することも好ましい。粘着性を有することによる効果は前述のとおりである。
【0044】
本発明で用いられるレーザ接合用シートの好適な実施態様の一つは、第1ポリマー層と第2ポリマー層の間に少なくとも1層のコア層を有するものである。コア層を有することによって、レーザ接合用シート全体の力学特性や厚みを調整することができるし、第1部材又は第2部材との接着性を調整することもできる。コア層は第1ポリマー層及び第2ポリマー層と異なるポリマーからなる層であればよく、特に限定されない。コア層は、1層のみからなるものであってもよいし、複数の層からなるものであっても構わない。なお、コア層として形態の異なる層を用いることもでき、織布、編地、不織布などの布帛や高分子発泡体からなる層であってもよい。
【0045】
前記コア層の23℃における引張弾性率が、第1ポリマー層の23℃における引張弾性率及び第2ポリマー層の23℃における引張弾性率のいずれよりも高いことが好ましい。この場合、第1ポリマー層及び第2ポリマー層が柔軟なものであっても、レーザ接合用シート全体の剛性が向上し、該シートのハンドリングが容易になる。コア層の23℃における引張弾性率は、200MPa以上であることが好ましく、500MPa以上であることがより好ましく、1000MPaを超えることがさらに好ましい。コア層の23℃における引張弾性率は、通常5000MPa以下である。コア層に用いられるポリマーとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリオレフィン、ポリオキシメチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ABS、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエステルエーテル、フロロポリマー、ポリパラバン酸、ポリオキサジアゾール、ポリヒダントイン、ポリビニルブチラールなど公知の種々のものを用いることができる。このとき、コア層が二軸延伸フィルムであることが、引張弾性率を高くできて好ましい。例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが好適な素材として例示される。
【0046】
種々の形状を有する第1部材と第2部材を接合する場合、予めレーザ接合用シートを切断したり曲げたりして、接合面の形状に沿わせて配置する必要がある。このとき、レーザ接合用シートが薄かったり、柔軟だったり、粘着性を有したりした場合、該シートに皺が入ったり、空気を抱き込んだりしやすく、接合面の形状に沿わせて配置するのが非常に困難である。すなわち、レーザ接合用シートにある程度の剛性がないと、該シートを第1部材と第2部材の間に、適切に配置することが非常に困難である。このような場合に、上記引張弾性率の高いコア層を採用して、レーザ接合用シートの剛性を向上させる意義が大きい。
【0047】
レーザ接合用中間部材が、多層構造体である場合の、レーザ接合用部材全体の好適な厚さは10〜5000μmであることが好ましい。より好適な範囲は前述のとおりである。レーザ接合用シートに含まれる第1ポリマー層と第2ポリマー層の厚さは特に限定されないが、いずれも通常1〜2500μmであることが好ましい。該ポリマー層の厚さは、より好適には5μm以上である。また、より好適には500μm以下である。レーザ接合用シートがコア層を有する場合のコア層の厚さは特に限定されないが、通常5〜2000μmであることが好ましい。該コア層の厚さは、より好適には10μm以上であり、さらに好適には15μm以上である。また、より好適には1000μm以下であり、さらに好適には500μm以下である。
【0048】
このようなレーザ接合用中間部材の製造方法は特に限定されない。シートの成形に通常用いられる、押出成形やインフレーション成形などの溶融成形法によって成形することができる。粘着性を含有する場合には、溶剤に溶かして離型紙に塗布してから乾燥させることによって製造してもよい。ベースポリマーに粘着性付与剤を配合する場合には、ニーダーや押出機などの混練機を用いて混練してから成形することができる。また、レーザ接合用中間部材が多層構造体である場合、ダイから共押出することによって溶融成形することもできるし、複数のフィルムを積層して製造することもできるし、溶液をコーティングしてから乾燥させて製造することもできる。
【0049】
レーザ接合用シートがコア層を有する場合にも、上記同様の製造方法が採用される。このとき、第1ポリマー層と第2ポリマー層の少なくとも一方が粘着性を有する場合には、コア層に対して、ベースポリマーと粘着性付与剤の混合物をコーティングすることが好ましい。コーティング方法としては、溶融コーティングと溶液コーティングのいずれの方法を採用することもできる。好適には溶液コーティングしてから乾燥させる。第1ポリマー層と第2ポリマー層の両方が粘着性を有する場合には、コア層の片面に溶液を塗布し乾燥させてから離型紙をのせ、引き続きコア層の反対側にも溶液を塗布してから乾燥させることによって製造できる。また、コア層を構成するフィルムの表面にコロナ放電処理やプライマー処理を施してから積層してもよい。粘着性付与剤を用いない場合は、ベースポリマーのみで上記操作を行えば良い。
【0050】
本発明で用いられるレーザ接合用中間部材が、23℃における引張弾性率が0.01〜500MPaのポリマー(a)と、23℃における引張弾性率が500MPaを超えるポリマー(b)とを含む重合体組成物からなり、かつポリマー(b)が第1部材と第2部材の少なくとも一方を構成するポリマーと同じ種類のポリマーであることが好ましい。
【0051】
上記レーザ接合用中間部材を構成する重合体組成物が、23℃における引張弾性率が500MPa以下のポリマー(a)を含有することによって、中間部材全体が柔軟になり、接合面の形状にうまく沿わせて密着させることが容易になる。ポリマー(a)の引張弾性率は、より好適には200MPa以下であり、さらに好適には100MPa以下である。ポリマー(a)の23℃における引張弾性率が0.01MPa未満である場合には、中間部材の取扱いが困難になる場合があるとともに、接着強度も低下する場合がある。
【0052】
ポリマー(a)は、23℃における引張弾性率が500MPa以下のポリマーであればよく、特に限定されない。エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合などの、各種変性ポリエチレンに代表されるポリオレフィン;(メタ)アクリレート共重合体などのアクリル樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリウレタン樹脂などの各種樹脂を用いることができる。
【0053】
ポリマー(a)として、エラストマーが好適に用いられる。柔軟で弾性を有しており、接合面の形状にうまく沿わせて密着させるのに適しているからである。エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーや架橋ゴムなどを使用することができ、特に限定されない。架橋ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエン系ゴムなどの公知の種々のものを用いることができるが、高度に架橋したものはレーザ溶着性が低下するおそれがあるので、架橋の程度は低い方が好ましい。また、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコン系エラストマー、フッ素系エラストマーなどが例示される。本発明においては、溶融接着性や加工容易性などの観点から、熱可塑性エラストマーが好ましく用いられる。
【0054】
ポリマー(a)が、極性官能基を有する単量体で変性されていることが好ましい。これらの極性官能基は金属や極性樹脂との親和性が高いため、該極性官能基を有する単量体で変性されたポリマー(a)を含む重合体組成物からなるレーザ接合用中間部材を用いることにより、中間部材と金属又は極性樹脂との接合強度を高くすることができる。また、上記極性官能基を有するポリマー(a)は、使用するレーザ光の波長によっては、極性官能基を有しないポリマーよりもレーザ光に対する吸収性が高くなることがあるため、中間部材の材料として好適に用いることができる場合がある。極性官能基としては、カルボキシル基(無水カルボン酸基を含む)、エポキシ基、アミノ基、水酸基又はエステル基などの極性基を有するものであることが好ましい。これらのうち、カルボキシル基(無水カルボン酸基を含む)を有するポリマー(a)が特に好ましく用いられる。
【0055】
さらに、上記レーザ接合用中間部材を構成する重合体組成物は、23℃における引張弾性率が500MPaを超えるポリマー(b)を含有するが、当該ポリマー(b)は、第1部材と第2部材の少なくとも一方を構成するポリマーと同じ種類のポリマーである。一般に、レーザ接合の対象となる第1部材又は第2部材は硬質樹脂であることが多いが、そのような硬質樹脂をそのままレーザ接合用中間部材として用いたのでは、中間部材が硬くなりすぎる。したがって、そのような硬質のポリマー(b)を、柔軟なポリマー(a)と配合することによって、中間部材全体が柔軟になり、接合面の形状にうまく沿わせて密着させることが容易になる。一般に、高弾性率のポリマー材料はレーザ接合するのが困難な場合が多く、そのようなポリマーであっても接着性の向上が期待できる本発明のレーザ接合用中間部材を用いる利益が大きい。したがって、ポリマー(b)の23℃における引張弾性率は1GPa(1000MPa)以上であることがより好ましく、2GPa(2000MPa)以上であることがさらに好ましい。また通常、ポリマー(b)の23℃における引張弾性率は10GPa(10000MPa)以下である。
【0056】
ここで、ポリマー(b)は、第1部材と第2部材の少なくとも一方を構成するポリマーと同じ種類のポリマーであることが重要であり、これによって第1部材又は第2部材と、レーザ接合用中間部材との間の接着力が向上する。中間部材全体を柔軟にして、接合面の形状にうまく沿わせて密着させるとともに、第1部材又は第2部材に親和性を有するポリマー(b)を配合することによって、高い接着強度を得ることができる。
【0057】
ここで、「同じ種類のポリマー」とは、分類上、同じグループに属するポリマーであるということである。例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂というようなグループに属するもの同士をいう。このとき、発明の効果を阻害しない範囲で、他のグループのポリマーを含有する組成物であっても同じグループであるとする。ここで、ポリマーが共重合体である場合には、その構成成分の重量割合が最も多い構成成分に基づいてグループ分けする。例えば、本願実施例4で用いているSEBS(スチレン−水添ブタジエン−スチレンブロック共重合体)では、スチレン含有量が32重量%であるから、その倍以上の水添ブタジエン単位を含むことになる。ここで、水添ブタジエン単位は、エチレン−ブチレン単位であるから、実質的にはオレフィン単位である。すなわち、オレフィン単位の含有量がスチレン単位の含有量の倍以上であるから、このような共重合体は、本発明ではポリオレフィンに分類されるものであるとする。
【0058】
ポリマー(b)と、第1部材と第2部材の少なくとも一方を構成するポリマーとが、同じ単量体に由来する構成単位を50モル%以上含むことがより好ましく、70モル%以上含むことがさらに好ましい。両者が実質的に同一のポリマーであることが最適である。
【0059】
ポリマー(b)は、23℃における引張弾性率が500MPaを超えていればよく、特に限定されない。結晶性のポリマーであってもよいし、非晶性のポリマーであっても構わない。一般に、非晶性のポリマーに比べて、結晶性のポリマーの方が溶融時に接着しにくい傾向があることから、そのようなポリマーであっても接着性の向上が期待できる本発明のレーザ接合用中間部材を用いる利益が大きい。また一般に、高融点のものは、溶融可能になる温度と熱分解温度が近く、レーザ接合によって接合しにくい傾向があることから、そのようなポリマーであっても接着性の向上が期待できる本発明のレーザ接合用中間部材を用いる利益が大きい。したがって、ポリマー(b)が融点が200℃以上の結晶性ポリマーであることが好適である。
【0060】
融点が200℃以上の結晶性ポリマーとしては、ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンエーテル;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリアセタール;ポリイミド;ポリエーテルイミド;PA6、PA66などの脂肪族ポリアミドや、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド/イソフタラミド、ポリナノメチレンテレフタラミドなどの半芳香族ポリアミドや、ポリp−フェニレンテレフタラミド、ポリm−フェニレンイソフタラミドなどの全芳香族ポリアミド(アラミド)を含むポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの半芳香族ポリエステルや、全芳香族ポリエステル(ポリアリレート)を含むポリエステル;フッ素樹脂などが例示される。より好適には、ポリマー(b)の融点は250℃以上である。また通常、ポリマー(b)の融点は400℃以下である。
【0061】
レーザ接合用中間部材を構成する重合体組成物中の、ポリマー(a)とポリマー(b)の重量比(a/b)は特に限定されないが、10/90〜95/5であることが好ましい。重量比(a/b)が10/90未満の場合には、中間部材の柔軟性が低下して、接合面の形状にうまく沿わせて密着させることが困難になる場合がある。重量比(a/b)は、より好適には20/80以上であり、さらに好適には40/60以上である。一方、重量比(a/b)が95/5を超える場合には、ポリマー(b)からなる第1部材又は第2部材と、レーザ接合用中間部材との間の接着力が不十分になる場合がある。重量比(a/b)は、より好適には90/10以下であり、さらに好適には80/20以下である。特に、中間部材の柔軟性を重視する場合には、ポリマー(a)の含有量をポリマー(b)の含有量よりも大きくすること、すなわち、重量比(a/b)が50/50を超えるようにするが好ましい。
【0062】
また、重合体組成物中において、ポリマー(b)の粒子がポリマー(a)のマトリックス中に分散していることが好ましい。このような分散形態を有していることによって、中間部材の柔軟性が向上し、接合面の形状にうまく沿わせて密着させることが容易になる。ポリマー(a)がマトリックスを構成していて、ポリマー(b)が粒子の形態で含まれている場合であっても接着性が向上することは驚きであり、これにより柔軟性と接着性を両立することができる。
【0063】
以上説明したレーザ接合用中間部材を第1部材と第2部材の間に挟み、第1部材側からレーザ光を照射することによって中間部材を溶融させて、第1部材と第2部材とが接合される。以下、図面を参照して本発明の接合方法を説明する。図1は、本発明の接合方法によって得られる接合品の一例を示す模式的断面図である。図1の接合品1は、第1部材2と、レーザ接合用シート3と、第2部材4とをこの順に積層してなる。本発明の接合方法においては、図1のようにレーザ接合用シート3を第1部材2と第2部材4との間に挟んでから、レーザ光Lを第1部材側から照射する。
【0064】
本発明のレーザ接合用中間部材は、23℃における引張弾性率が1000MPa以下であるので、両部材の接合表面形状に沿わせることが容易である。したがって、平面でない接合面に対して用いるのにも適している。
【0065】
レーザ接合用中間部材が粘着性を有している場合には、第1部材又は第2部材の接合面に簡単に固定することができる。したがって、広い面積の部材に対して局所的に複数の中間部材を用いるのに適している。粘着力を得るためには、第1部材と第2部材の間に挟んでから、第1部材と第2部材の両側から中間部材を加圧して接着力を向上させて、その後レーザ光を照射することが好ましい。レーザ照射の時には、前記加圧を解除することもできるので、作業性に優れている。
【0066】
レーザ接合用中間部材が多層構造体である場合、互いに異なる材料からなる第1部材と第2部材とを接合するのに適している。この場合、第2ポリマー層が第1ポリマー層とは異なるポリマーからなるレーザ接合用シートを用いることが好適である。それによって、それぞれの部材に接着するのに適したポリマー層を別個に選択することができる。
【0067】
本発明で用いられるレーザ接合用シートがコア層を有する場合、該コア層が第1部材と第2部材の少なくとも一方と同じ種類のポリマーからなることが好ましい。それによって、接合強度を向上させることができる。コア層は、第1部材あるいは第2部材と直接接触するものではないが、レーザ照射時の溶融や分解によって、第1ポリマー層、第2ポリマー層及びコア層は相互に混じり合い、このような接着強度の向上が認められるようである。ここで、同じ種類のポリマーとは、分類上、同じグループに属するポリマーであるということである。例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオキシメチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂というようなグループに属するもの同士をいう。このとき、発明の効果を阻害しない範囲で、他のグループの樹脂を含有する組成物であっても同じグループであるとする。
【0068】
第1部材と第2部材のいずれかの被着面に対して、溶融コーティング又は溶液コーティングすることによってレーザ接合用シートを形成しても構わない。溶融コーティングによってレーザ接合用シートを形成する場合には、単層コーティングを行ってもよいし、共押出多層コーティングを行ってもよい。溶液コーティングの場合にも、単層コーティングを行ってもよいし、コーティング操作を繰り返して多層コーティングを行ってもよい。このような場合、第1部材と第2部材のいずれか一方にレーザ接合用シートが予め接着されたものを用いて接合操作を行うことになる。
【0069】
本発明では、レーザ光の種類として、ガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザ等の公知のいずれも用いることができ、特に限定されない。第1部材、第2部材及びレーザ接合用中間部材の種類や厚さに応じて、最適な波長及び出力のものを選択して用いることができる。また、レーザ光は1つの波長からなるものに限らず、2以上の波長が混合されたものであってもよい。また、接合範囲がレーザ光の照射径より広い場合、必要に応じてレーザ光源又は接合対象の積層品(レーザ接合用中間部材を挟んで第1部材と第2部材とを積層したもの)を移動させながら、レーザ光の照射を行ってもよい。
【0070】
第1部材はレーザ光に対して非透過性であり、かつレーザ光の少なくとも一部を吸収する。したがって、まず加熱源としてのレーザ光を吸収して第1部材が加熱され、その熱が接合用中間部材に伝わって、中間部材が溶融する。このとき第2部材がポリマーからなる場合、中間部材の熱がこれらのポリマーにも伝わって同時に溶融することも可能である。レーザ光の照射が終了すると、レーザ接合用部材が冷却されて再度固化することにより、第1部材と第2部材が接合される。従来、レーザ光に対して透過性の部材側からレーザ光を入射させ、中間部材に直接レーザ光を到達させて中間部材を溶融させて接合する方法が知られていたが、この方法では、短時間で高強度のレーザ光が照射されるので、中間部材が局所的に高温になりすぎて分解するおそれがあった。これに対し、本発明では第1部材内を伝わった熱で中間部材を融解させるので、局所的に高温になりすぎるのを防止することが容易であり、結果として接合強度を向上させることができる。また、光を透過しない側から照射するので、中間部材の分解や発泡が外側から観察されず、外観の良好な接合品を得ることができる。
【0071】
本発明の接合方法は、レーザ光の照射によりレーザ接合用部材を溶融させて、第1部材と第2部材とを接合するものである。よって、上述したように、レーザ接合用部材と、第1部材及び/又は第2部材のレーザ接合用部材側の接合界面が、レーザ光の照射により加熱されてその後冷却されるという熱サイクルを受ける。このとき、第1部材と第2部材の線膨張係数の違いなどに起因した応力が接合界面に生じ得るが、本発明では柔軟なレーザ接合用シートを用いているので、このような応力を緩和することができ、接合強度の低下や剥がれを防止することができる。これにより、接合の信頼性を向上させることができる。さらに、レーザ接合用部材が粘着性を有する場合、粘着性付与剤の多くは金属などに対する親和性が高いので、レーザによって加熱溶着した部分の接着力が、粘着性付与剤を含有しない場合に比べて大きくなる。また、レーザ光によって加熱溶着しなかった部分についても、粘着力によって接着されているので、一段と接着強度を向上させることができる。
【0072】
また、得られた接合品の使用によって熱ストレスや機械的応力が接合界面に発生するが、このような場合でも、柔軟なレーザ接合用シートを用いているので、上記ストレスや応力が緩和され、長期の使用によっても接合強度を維持することができる。さらに、粘着力だけで接着させた場合には長期間の使用によるクリープの発生が問題になる場合が多いが、局所的にレーザ光を照射して、レーザ接合用シートの一部のみを溶融させて接合した場合には、融着部分がアンカーになってクリープの発生を防止することができる。
【0073】
第1部材と第2部材の組合せ(第1部材/第2部材)としては、例えば金属/ポリマー、金属/金属、金属/ガラス、金属/セラミックス、ポリマー/ポリマー、セラミックス/ポリマー、ポリマー/ガラス、セラミックス/ガラスなどが例示される。中でも、第2部材が第1部材とは異なる材料からなる場合に、本発明の接合方法を採用する実益が大きい。中でも、「金属/ポリマー」は、本発明の効果を効果的に奏する組合せであって、実用上のニーズも大きいので、特に重要な組合せであり、熱膨張率の相違から発生するストレスも本発明のレーザ接合用シートを使用することで解消できる。さらにまた、金属を第1部材とし、樹脂やゴムなどのポリマーの中にカーボンブラックや炭酸カルシウムなどの充填剤を含む組成物を第2部材とする組み合わせは、接合面までレーザ光が届かないので、本発明の接合方法を採用する意義が特に大きい組み合わせである。
【0074】
さらに、第1部材と第2部材とがともに金属である場合も好適な実施態様である。このとき、第2部材が第1部材とは異なる種類の金属からなることが好適である。すなわち、異種金属同士を接合する場合に、本発明の接合方法を採用する実益が特に大きい。ここで、「異なる種類の金属」とは、主たる構成金属が同じであっても合金組成が異なるために性状の異なる金属を含む。ただし、製造条件の変動に由来する程度の差異しかないようなものは同種の金属として捉えるものとする。
【0075】
近年、軽量化を目的とする異種金属間の接合が広く行われるようになってきているが、接合部分において、硬くて脆い金属間化合物が生成したり、電池腐食が発生したりすることが問題にされている。これに対して、レーザを照射することにより高速加熱して金属を溶融させてから、冷却固化させて接合する方法によって金属間化合物の層を薄くする方策が提案されている。また、摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)によって、母材を溶融させずに、接合部周辺のみを塑性流動させて練り混ぜ、複数の金属部材を接合する方法も提案されている。しかしながら、これらの方法では、用いる設備が高価である上に、接合条件の制御が困難である。
【0076】
これに対し、本発明の接合方法では、有機材料からなるレーザ接合用シートを介在させるので電池腐食が発生しない、再熱処理で第1部材と第2部材とを分離することができるのでリサイクル性に優れている、低弾性率のレーザ接合用シートを介在させるために応力を緩和することができる、というような利点を有している。したがって、チタンやアルミニウムなど、他の金属と直接接合することの困難な金属を接合するのに特に適している。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。下記実施例中における試験方法は以下のとおりである。
【0078】
(1)引張弾性率
JIS K7161及びJIS K6251に準拠して、JIS K7161の「4.6 引張弾性率」に規定される引張弾性率を測定し、算出した。試料の形状は、「ダンベル状3号型」とした。測定は、23℃の環境下で状態調節してから行った。
【0079】
(2)180度引きはがし粘着力
JIS Z0237の10.4に基づいて、ステンレス(SUS304)板に対する180度引きはがし粘着力(N/25mm)を測定した。ここで、粘着力の測定チャートが波打つときには、その凸点の平均値と凹点の平均値とをそれぞれ求め、その平均値を180度引きはがし粘着力とした。
【0080】
(3)剪断強度
得られた接合品の剪断試験は、インストロン3382(インストロンコーポレーション)により行った。図3に示すように、第1部材2と同様の部材からなるスペーサ8を第2部材4の接合面側に重ねて試験機のチャックで固定し、第2部材4と同様の部材からなるスペーサ9を第1部材2の接合面側に重ねて試験機のチャックに固定した。引き続き、第1部材2及び第2部材4に対して平行(図の矢印方向)な引張力を加え、剪断試験を行った。その際、剪断速度を0.5mm/secとし、最大強度を求めた。得られた最大強度(N)を剪断強度とした。
【0081】
下記実施例及び比較例に用いる接合対象の部材として以下に示すものを用いた。
・ポリメタクリル酸メチル(PMMA)
幅25mm、長さ50mm、厚さ2mmの「アクリライト001」(三菱レイヨン(株)製)を用いた。
・ポリプロピレン(PP)
幅25mm、長さ50mm、厚さ2mmのポリプロピレンからなる板(新神戸電機株式会社製「PP−N−BN」)を用いた。
・ポリアミド66(PA66)
幅25mm、長さ50mm、厚さ2mmのナイロン66からなる板(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「ノバミッド3010SR」)を用いた。
・ポリアミド6(PA6)
幅25mm、長さ50mm、厚さ2mmのナイロン6(ポリ−ε−カプロラクタム)からなる板(東レ株式会社製「アミランCM1017」)を用いた。
・ポリフェニレンスルフィド(PPS)
幅25mm、長さ50mm、厚さ2mmのポリフェニレンスルフィドからなる板(ポリプラスチック株式会社製「フォートロン0220AQ」)を用いた。
・アルミニウム(AL)
幅25mm、長さ50mm、厚さ2.0mmのアルミニウム合金(A5052)板を用いた。実施例
・鋼板(SPCC)
幅25mm、長さ50mm、厚さ1.5mm2.0mmの鋼板(SPCC)を用いた。
・ステンレス(SUS)
SUS(304)を用いた。幅25mm、長さ50mm、厚さ1.0mm;幅25mm、長さ50mm、厚さ1.5mm;幅25mm、長さ50mm、厚さ2.0mmの3種類の寸法のステンレス板を使用した。
・チタン(Ti)
幅25mm、長さ50mm、厚さ2mmのチタン板を用いた。
【0082】
本実施例では、以下のA〜Fの6種類のレーザ接合用中間部材を作成した。その作成方法について、以下に説明する。
【0083】
A:カルボキシル基を有する単量体で変性されたSEBS(スチレン含有量32重量%、分子量52,000)100重量部及びトルエン200重量部を計量し、容器の中に入れて18時間封をして放置した後、均一になるまでスクリューで攪拌し、離型紙上に塗工機にて塗布してから乾燥し、厚さ50μmのレーザ接合用シートを得た。23℃における引張弾性率は81.5MPaである。ステンレス(SUS304)板に対する180度引きはがし粘着力は0N/25mmである。
【0084】
B:株式会社クラレ製アクリル系ブロック共重合体「LA2140E」100重量部及びトルエン200重量部を計量し、容器の中に入れて18時間封をして放置した後、均一になるまでスクリューで攪拌し乾燥時の厚みが50μmになるように離型紙上に塗工機にて塗布してから乾燥し、乾燥時の厚みが50μmの積層シートを得た。23℃における引張弾性率は0.5MPaである。ステンレス(SUS304)板に対する180度引きはがし粘着力は0N/25mmである。
【0085】
C:カルボキシル基を有する単量体で変性されたSEBS(スチレン含有量32重量%、分子量52,000)100重量部、テルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製YSレジンTO−115)100重量部、トルエン300重量を計量し、容器の中に入れて18時間封をして放置した後、均一になるまでスクリューで攪拌し、離型紙上に塗工機にて塗布してから乾燥し、厚さ50μmのレーザ接合用シートを得た。23℃における引張弾性率は4.1MPaである。ステンレス(SUS304)板に対する180度引きはがし粘着力は17.4N/25mmである。
【0086】
D:カルボキシル基を有する単量体で変性されたSEBS(スチレン含有量32重量%、分子量52,000)100重量部、水添テルペンスチレン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製「クリアロンK−115」)100重量部、トルエン300重量を計量し、容器の中に入れて18時間封をして放置した後、均一になるまでスクリューで攪拌し、離型紙上に塗工機にて塗布してから乾燥し、厚さ50μmのレーザ接合用シートを得た。23℃における引張弾性率は6.0MPaである。ステンレス(SUS304)板に対する180度引きはがし粘着力は16.9N/25mmである。
【0087】
E:カルボキシル基を有する単量体で変性されたSEBS(スチレン含有量32重量%、分子量52,000)100重量部及びトルエン200重量部を計量し、容器の中に入れて18時間封をして放置した後、均一になるまでスクリューで攪拌し、離型紙上に塗工機にて塗布してから乾燥し、厚さ25μmのSEBSシートを作成した。引き続き、株式会社クラレ製アクリル系ブロック共重合体「LA2140E」100重量部及びトルエン200重量部を計量し、容器の中に入れて18時間封をして放置した後、均一になるまでスクリューで攪拌して溶液を調整し、それを前記SEBSシート上に塗工機にて塗布してから乾燥し、厚さ25μmのアクリル系ブロック共重合体層を形成した。このようにして、SEBS層とアクリル系ブロック共重合体層からなる、合計厚みが50μmの多層シートを得た。SEBS層及びアクリル系ブロック共重合体層の23℃における引張弾性率は、それぞれ中間部材A及び中間部材Bの引張弾性率と概ね同じである。また、いずれの表面も、ステンレス(SUS304)板に対する180度引きはがし粘着力は0N/25mmである。
【0088】
F:カルボキシル基を有する単量体で変性されたSEBS(スチレン含有量32重量%、分子量52,000)100重量部、近赤外吸収材(昭和電工株式会社製「IR−T」)0.1重量部、トルエン300重量を計量し、容器の中に入れて18時間封をして放置した後、均一になるまでスクリューで攪拌し、離型紙上に塗工機にて塗布してから乾燥し、厚さ50μmのレーザ接合用シートを得た。23℃における引張弾性率は4.1MPaである。ステンレス(SUS304)板に対する180度引きはがし粘着力は0N/25mmである。
【0089】
G:東洋精機株式会社製プラストミルを用いて、カルボキシル基を有する単量体で変性されたスチレン−水添ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(変性SEBS:スチレン含有量32重量%、分子量52,000:引張弾性率80MPa)のペレット67重量部とポリアミド6(ポリ−ε−カプロラクタム(PA6):融点225℃:引張弾性率2.7GPa)のペレット33重量部を、230℃で溶融混練して、重合体組成物ペレットを得た。得られた重合体組成物ペレット100重量部に対して、近赤外線吸収剤(昭和電工株式会社製「IR−13F」)0.5重量部を均一に混合してから上記プラストミルを用いて190℃で溶融混練して近赤外線吸収性重合体組成物ペレットを得た。得られた近赤外線吸収性重合体組成物ペレットを用いて190℃でプレス成形して厚さ100μmのシートを得た。得られたシート中においては、ポリアミド6の粒子が変性SEBSのマトリックス中に分散していた。
【0090】
H:上記Gにおいて、レーザ接合用中間部材が、ポリアミド6を含有しない例である。東洋精機株式会社製プラストミルを用いて、カルボキシル基を有する単量体で変性されたスチレン−水添ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(変性SEBS:スチレン含有量32重量%、分子量52,000)のペレット100重量部に対して、近赤外線吸収剤(昭和電工株式会社製「IR−13F」)0.5重量部を均一に混合してから190℃で溶融混練して近赤外線吸収性重合体組成物ペレットを得た。得られた近赤外線吸収性重合体組成物ペレットを用いて190℃でプレス成形して厚さ100μmのシートを得た。
【0091】
I:一軸ブラベンダーを用いて、カルボキシル基を有する単量体で変性されたスチレン−水添ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(変性SEBS:スチレン含有量32重量%、分子量52,000:引張弾性率80MPa)のペレット60重量部とポリフェニレンスルフィド(PPS:融点280℃:引張弾性率3.3GPa)の粉末(粒径100〜200μm)40重量部を、300℃で溶融混練して、重合体組成物ペレットを得た。得られた重合体組成物ペレット100重量部に対して、近赤外線吸収剤(昭和電工株式会社製「IR−13F」)0.5重量部を均一に混合してから上記一軸ブラベンダーを用いて200℃で溶融混練して近赤外線吸収性重合体組成物ペレットを得た。得られた近赤外線吸収性重合体組成物ペレットを用いて200℃でプレス成形して厚さ100μmのシートを得た。得られたシート中においては、ポリフェニレンスルフィドの粒子が変性SEBSのマトリックス中に分散していた。
【0092】
J:上記Iにおいて、レーザ接合用中間部材が、ポリフェニレンスルフィドを含有しない例である。一軸ブラベンダーを用いて、カルボキシル基を有する単量体で変性されたスチレン−水添ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(変性SEBS:スチレン含有量32重量%、分子量52,000)のペレット100重量部に対して、近赤外線吸収剤(昭和電工株式会社製「IR−13F」)0.5重量部を均一に混合してから200℃で溶融混練して近赤外線吸収性重合体組成物ペレットを得た。得られた近赤外線吸収性重合体組成物ペレットを用いて200℃でプレス成形して厚さ100μmのシートを得た。
【0093】
実施例1
実施例1は、レーザ光に対して非透過性の金属側からレーザ光を照射する場合と、レーザ光に対して透過性の樹脂側からレーザ光を照射する場合とを対比した実施例である。表1に示すような組み合わせで、第1部材、第2部材及び中間部材をそれぞれ用いて、ステンレス(SUS)とポリプロピレン(PP)を接合した。中間部材Aと中間部材Fとは、同じエラストマーを用いているけれども、中間部材Fは赤外線吸収剤を含有している点で相違する。これは、PP側から入射したレーザ光が中間部材に吸収されるようにするためである。
【0094】
図2に示すように、第1部材2と第2部材4を長さ方向に25mmずらして第1部材2が上になるように重ね、第1部材2と第2部材4の間(図2のAで示す重ね合わせ部分)に、得られた接合用シート(図中の3)を挟んで、積層品を得た。得られた積層品の上記重ねあわせ部分に対し、上方(第1部材側)から以下の条件でレーザ照射による加熱を行った。得られた積層品の上記重ね合わせ部分に対し両側から0.4MPaの圧力を加え上方(第1部材2側)から以下の条件でレーザ照射による加熱を行った。レーザとして、940nmの半導体レーザを用いた。レーザ光線のコリメート径は46mm、焦点距離は222.5mmであり、照射角度は45度とし、最小スポット径は1.52mmで第1部材の表面にジャストフォーカスさせ、表1に記載した走査速度及び出力で、短手方向に25mmの長さで、1回走査した。照射終了後は空冷によりレーザ接合用中間部材が再度固化することにより第1部材と第2部材が接合され接合品が得られた。得られた接合品の剪断強度を測定した結果を表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
表1に示されるように、第1部材にレーザ光に対して非透過性の金属(SUS又はSPCC)を用いた例では、走査速度が遅く出力が大きいほど剪断強度が向上する傾向が認められた。一方、第1部材にレーザ光に対して透過性の樹脂(PP)を用いた例では、走査速度や出力に関わらずほぼ一定の剪断強度が得られる傾向が認められたが、剪断強度はそれほど高くならなかった。したがって、レーザ光に対して非透過性の金属側からレーザ光を照射し、照射条件を最適化することによって、レーザ光に対して透過性の樹脂側からレーザ光を照射する場合よりも高い接合強度が得られることがわかった。
【0097】
実施例2
実施例2は、中間部材のポリマーの種類による接合強度の変化を検討した実施例である。表2に示すような組み合わせで、第1部材にアルミニウム(AL)を用い、第2部材にポリアミド(PA)を用い、中間部材A(カルボキシル基を有する単量体で変性されたSEBS)と中間部材B(アクリル系ブロック共重合体)をそれぞれ用いて、第1部材と第2部材を接合した。レーザ光の照射方法と剪断強度の測定方法は実施例1と同じである。測定結果を表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
表2と表1を対比すればわかるように、中間部材A(カルボキシル基を有する単量体で変性されたSEBS)を用いた場合には、実施例1よりも走査速度を遅くし出力を上昇させなければ、接合強度が高くならないことがわかる。また、中間部材B(アクリル系ブロック共重合体)を用いた方が、中間部材A(カルボキシル基を有する単量体で変性されたSEBS)を用いるよりも高い接合強度が得られることがわかる。すなわち、第1部材及び第2部材の組み合わせによって好適な中間部材が異なることがわかる。
【0100】
実施例3
実施例3は粘着性を有する中間部材を使用した実施例である。表3に示すような組み合わせで、第1部材にステンレス(SUS)を用い、第2部材にポリプロピレン(PP)を用い、粘着性を有する中間部材C、中間部材Dと、粘着性を有さない中間部材Aをそれぞれ用いて、第1部材と第2部材を接合した。中間部材C、中間部材D及び中間部材Aの、ステンレス(SUS304)板に対する180度引きはがし粘着力(N/25mm)は、表3に示すとおりである。レーザ光の照射方法と剪断強度の測定方法は実施例1と同じである。測定結果を表3に示す。
【0101】
【表3】

【0102】
表3からわかるように、レーザ光を照射しなくても接合しているので、レーザ照射時に仮止めができ、操作性が大きく向上する。また、単に粘着性によって得られた接合強度を、レーザ照射することによってさらに向上させることができる。
【0103】
実施例4
実施例4は多層構造体である中間部材を使用した実施例である。表4に示すような組み合わせで、第1ポリマー層にSEBSを用い第2ポリマー層にアクリル系ブロック共重合体を用いた多層構造体である中間部材Eと、単層構造である中間部材A及び中間部材Bをそれぞれ用いて、第1部材のステンレス(SUS)と第2部材のポリメタクリル酸メチル(PMMA)を接合した。このとき、中間部材EのSEBS層を第1ポリマー層とし、PMMA層を第2ポリマー層とし、第1ポリマー層が第1部材に接し、第2ポリマー層が第2部材に接するように挟んで積層品を得てからレーザ光を照射した。レーザ光の照射方法と剪断強度の測定方法は実施例1と同じである。測定結果を表4に示す。
【0104】
【表4】

【0105】
表4からわかるように、中間部材A(SEBS単独)及び中間部材B(アクリル系ブロック共重合体単独)を用いた場合に比べて、SEBS層とアクリル系ブロック共重合体層からなる多層構造体である中間部材Eを用いた場合には、接合強度が大きく向上していることがわかる。
【0106】
実施例5
実施例5は、第1部材、第2部材ともに金属である場合の実施例である。中間部材Aを用い、第1部材のチタン(Ti)と第2部材のアルミニウム(AL)を接合した。レーザ光の照射方法と剪断強度の測定方法は実施例1と同じである。測定結果を表5に示す。
【0107】
【表5】

【0108】
実施例6
実施例6は、重合体組成物からなる中間部材を使用した実施例である。中間部材G及びHを用い、第1部材のアルミニウム(AL)と第2部材のナイロン6(PA6)を接合した。レーザ光の照射方法と剪断強度の測定方法は実施例1と同じである。測定結果を表6に示す。
【0109】
【表6】

【0110】
実施例7
実施例7は、重合体組成物からなる中間部材を使用した実施例である。中間部材I及びJを用い、第1部材のアルミニウム(AL)と第2部材のポリフェニレンスルフィド(PPS)を接合した。レーザ光線のコリメート径は46mm、焦点距離は100mmであり、最小スポット径は600μmである。照射角度を0度(垂直入射)とし、第1部材の表面にジャストフォーカスする位置からレーザを10mm近づけて照射した。出力を200Wに固定し、表2に記載したように走査速度を変動させて、短手方向に25mmの長さで、1回走査した。照射終了後は空冷によりレーザ接合用中間部材が再度固化することにより第1部材と第2部材が接合され接合品が得られた。測定結果を表7に示す。
【0111】
【表7】

【符号の説明】
【0112】
1 接合品
2 第1部材
3 レーザ接合用シート(レーザ接合用中間部材)
4 第2部材
8、9 スペーサ
A 重ね合わせ部分
L レーザ光



【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光に対して非透過性の第1部材と、第1部材と同一又は異なる材料からなる第2部材とを接合する接合方法であって、ポリマーからなり23℃における引張弾性率が1000MPa以下であるレーザ接合用中間部材を第1部材と第2部材の間に挟み、第1部材側からレーザ光を照射することによって前記レーザ接合用中間部材を溶融させて、第1部材と第2部材とを接合することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
第1部材が金属からなる請求項1記載の接合方法。
【請求項3】
第2部材が、第1部材とは異なる種類の金属からなる請求項2記載の接合方法。
【請求項4】
第2部材がポリマーからなる請求項1〜3のいずれか記載の接合方法。
【請求項5】
前記レーザ接合用中間部材が厚さ10〜5000μmのシートである請求項1〜4のいずれか記載の接合方法。
【請求項6】
前記レーザ接合用中間部材が粘着性を有する請求項1〜5のいずれか記載の接合方法。
【請求項7】
前記レーザ接合用中間部材の、JIS Z0237の10.4に基づいて測定したSUS304板に対する180度引きはがし粘着力が0.1N/25mm以上である請求項6記載の接合方法。
【請求項8】
前記レーザ接合用中間部材が、23℃における引張弾性率が0.01〜500MPaのポリマー(a)と、23℃における引張弾性率が500MPaを超えるポリマー(b)とを含む重合体組成物からなり、かつポリマー(b)が第1部材と第2部材の少なくとも一方を構成するポリマーと同じ種類のポリマーである請求項1、2、4〜7のいずれか記載の接合方法。
【請求項9】
ポリマー(b)が、融点が200℃以上の結晶性ポリマーである請求項8記載の接合方法。
【請求項10】
前記レーザ接合用中間部材が第1部材に接する第1ポリマー層と第2部材に接する第2ポリマー層とを有する多層シートからなる請求項1〜9のいずれか記載の接合方法。
【請求項11】
第1ポリマー層と第2ポリマー層の間に少なくとも1層のコア層を有する請求項10記載の接合方法。
【請求項12】
前記コア層の23℃における引張弾性率が、第1ポリマー層の23℃における引張弾性率及び第2ポリマー層の23℃における引張弾性率のいずれよりも高い請求項11記載の接合方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−269401(P2009−269401A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94460(P2009−94460)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(591060980)岡山県 (96)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】