説明

レーザ光強度測定方法およびカメラ付き携帯電話

【課題】レーザ光の強度分布測定を手軽に行えるようにする。
【解決手段】レーザ発振器10から照射されるレーザ光Lの強度分布を測定するにあたり、ミラー11を透過したレーザ光Lを、携帯電話20に装着した発光板25に照射させて可視化し、該発光板25を携帯電話20のカメラ23で撮像する。カメラ23で撮像された画像の信号を、レーザ光強度分布を解析する解析装置30に送信し、該解析装置30で画像を解析してレーザ光Lの強度分布を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々のレーザ加工機に採用されるレーザ光強度測定方法と、該方法を実施する際に好適なカメラ付き携帯電話に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイス製造工程においては、円板状の半導体ウェーハの表面に格子状の分割予定ラインによって多数の矩形領域を区画し、これら矩形領域の表面にICやLSI等の電子回路を形成し、次いで裏面を研削した後に研磨するなど必要な処理をしてから、全ての分割予定ラインを切断する、すなわちダイシングして、多数の半導体チップを得ている。このようにして得られた半導体チップは、樹脂封止によりパッケージングされて、携帯電話やPC(パーソナル・コンピュータ)等の各種電気・電子機器に広く用いられている。
【0003】
半導体ウェーハのダイシングは、高速回転させた切削ブレードを切り込ませていく方法が一般的であったが、近年では、特許文献1で知られるように、レーザ光を照射してウェーハを切断するレーザダイシングも試みられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザ光を照射してワークに加工を施すレーザ加工機にあっては、メンテナンスの際に、レーザ発振器から発振されるレーザ光の強度分布を測定して確認する場合がある。レーザ光の強度測定は、ビームプロファイラーと呼ばれる専用の測定器(例えば、オフィールジャパン社製のBEAM−STAR FX等)や解析用のPC等を必要とすることから、これら装置を組み合わせた測定システムを構築することが煩雑であった。レーザ光の強度分布測定やビームプロファイラーについては、例えば特許文献2,3等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特開2003−53578号公報
【特許文献3】特開2008−128987号公報
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その主な技術的課題は、手軽にレーザ光の強度分布を測定することができるレーザ光強度測定方法を提供することを目的としている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレーザ光強度測定方法は、レーザ加工機に搭載されたレーザ発振器から発振されるレーザ光の強度分布を測定するレーザ光強度測定方法であって、レーザ光を発光板によって可視光に変換する可視光変換工程と、可視光を結像レンズで撮像部に結像する結像工程と、該結像工程で得られた可視光の強度分布を示す画像を送信部により解析装置に無線送信する送信工程と、送信部から送信された画像を解析装置の受信部で受信する受信工程と、該受信工程で得られた画像を解析装置で解析してレーザ光の強度分布を解析する解析工程とを含み、上記結像工程と上記送信工程とを、結像レンズと撮像部と送信部とを備えたカメラ付き携帯電話によって行うことを特徴としている。
【0008】
本発明のレーザ光強度測定方法によれば、レーザ光をカメラ付き携帯電話で撮像し、撮像した画像の信号を解析装置に送信することにより、レーザ光の強度分布を測定することができる。専用のビームプロファイラー等を用いることなく携帯電話でレーザ光を撮像するといった容易な手法を採ることにより、手軽にレーザ光の強度分布測定を行うことができる。
【0009】
上記本発明の方法では、上記携帯電話の撮像部がレーザ光で破損することを未然に防止できる観点から、上記可視光変換工程の前に、レーザ発振器から発振されたレーザ光を減衰させる減衰工程を含むことを好ましい形態とする。
【0010】
また、本発明のカメラ付き携帯電話は、上記本発明のレーザ光強度測定方法に好適に用いられるカメラ付き携帯電話であって、上記結像レンズと上記撮像部と上記送信部とを備えており、さらに、該結像レンズへの入射光路における該結像レンズの前に、上記発光板が配設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カメラ付き携帯電話でレーザ光を撮像することによりレーザ光の強度分布を測定することができるので、レーザ光の強度分布測定を手軽に行うことができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザ光強度測定方法を模式的に示す図である。
【図2】同方法で使用するカメラ付き携帯電話の斜視図であって、(a)は発光板の装着前、(b)発光板の装着後である。
【図3】一実施形態に係る携帯電話のカメラで撮像されるレーザ光の画像の例を示している。
【図4】レーザ光の強度分布の測定結果例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態に係るレーザ光強度測定方法を模式的に表しており、図中符号10は、図示せぬレーザ加工機が備えるレーザ発振器である。この場合のレーザ加工機としては、半導体ウェーハにレーザ光を照射して多数の半導体チップに分割するレーザダイシング装置等が挙げられる。レーザ発振器10からは、発振されたレーザ光Lが水平に照射され、そのレーザ光Lは、ミラー11により90°の角度で下方に反射されて、下方にセットされるワークWに照射される。
【0014】
本実施形態では、図2に示すカメラ付き携帯電話20を用いて、レーザ発振器10から発振されるレーザ光Lの強度分布を測定する。携帯電話20は、通常の会話機能、および文字等の画像を無線通信するメール機能の他に、結像レンズ21を通した像を撮像部22で撮像するカメラ23が内蔵されている。撮像部22は、例えばCCD素子を備えたもので構成される。
【0015】
撮像部22で撮像された画像は、送信部24によりメールに添付する形態で無線送信することができる。本実施形態では、レーザ発振器10から照射されるレーザ光Lを携帯電話20のカメラ23で撮像し、撮像した画像の信号を、レーザ光の強度分布を測定する解析装置30の受信部31に無線送信する。
【0016】
図2に示すように、携帯電話20には、結像レンズ21の前を覆う発光板25が着脱自在に装着されるようになっている。この発光板25は、レーザ光が照射されると可視光を発するものであればいかなるものであってもよく、例えば蛍光色素をガラス板でサンドイッチした構造の蛍光板等が好適に用いられる。発光板25は、左右一対のアーム26を介して携帯電話20の筐体20Aに着脱自在に装着される。
【0017】
本実施形態のレーザ光強度測定方法は、図1に示すように、携帯電話20をミラー11の後方に配し、カメラ23をレーザ発振器10に向け、この状態からレーザ光Lをレーザ発振器10から照射させて、発光板25をカメラ23で撮像する。
【0018】
レーザ光Lはミラー11で大部分(例えば99%以上)が反射してワークWに照射されるが、レーザ光Lのうちの僅かな光がミラー11を真っ直ぐに透過し(減衰工程)、その光が発光板25に達する。すなわち、レーザ発振器10から照射したレーザ光Lは、ミラー11を真っ直ぐ透過することにより強度が減衰される。ミラー11で減衰されたレーザ光Lはカメラ23の結像レンズ21に入射するが、その入射光路における結像レンズ21の前には発光板25が配設されている。
【0019】
レーザ光Lには光の波長が355nm付近や1000nm以上の可視光(約380〜750nmの間の波長の光)外の光が用いられるので、一般的に可視光範囲に感度を有する携帯電話の撮像部22では撮像が不可能であり、そのままレーザ光Lを撮像すると、レンズ21でレーザ光Lが撮像部22に集光されるので正常にレーザ光強度の測定ができない。しかしながら本実施形態では、発光板25にレーザ光Lが照射されることにより、発光板25がレーザ光Lの強度に応じて可視光を発光する(可視光変換工程)。そして発光板25で発光した光が、結像レンズ21により撮像部22に結像され(結像工程)、これによってレーザ光Lの光強度の測定が可能になる。
【0020】
カメラ23で撮像されたレーザ光Lの画像は強度分布を示すものであり、強度が正常であれば、強度が最も大きい中心が明るく、周囲に広がるにつれて暗くなっていくといった画像になる。図3は、カメラ23で撮像されたレーザ光Lの画像の例を示している。次に、撮像したレーザ光Lの画像を送信部24により解析装置30の受信部31に送信する(送信工程)。次いで解析装置30では、携帯電話20から送信されたレーザ光Lの画像が解析され(解析工程)、該レーザ光Lの強度分布が出力される。強度分布のデータとしては、図4に示すようなグラフで表される。同図は、図3のA−B断面におけるレーザ光の強度分布を示しており、縦軸が相対的な強度の程度を示している。このレーザ光の強度分布は、ほぼ左右均等で、最大強度を示す頂点も中心付近にあり、概ね良好な強度分布を示している。
【0021】
本実施形態のレーザ光強度測定方法によれば、レーザ光Lを携帯電話20のカメラ23で撮像し、撮像した画像の信号を解析装置30に送信することにより、該レーザ光Lの強度分布を測定することができる。したがって、専用のビームプロファイラー等を用いる必要がなく、かつ、携帯電話20でレーザ光Lを撮像するといった容易な手法なため、手軽にレーザ光Lの強度分布測定を行うことができる。
【0022】
上記実施形態の測定方法によれば、レーザ加工機と解析装置30とがどれだけ離れているかに関係なく、レーザ光Lの強度分布を速やかに測定することができる。すなわち、例えばレーザ加工機が解析装置30からかなり遠くに離れていても、カメラ23で撮像したレーザ光Lの画像信号を携帯電話20から解析装置30の受信部31に送信することにより、測定が可能である。さらに、測定結果を解析装置30側から携帯電話20に折り返し返信して通知することも可能である。レーザー加工機のある作業現場は非常に狭いことが多いため、前述のビームプロファイラー等の測定器を持ち込むことは困難であるが、このように本発明を用い双方向でデータのやり取りを行えば、レーザ加工機のある現場でレーザ光Lの強度分布を速やかに取得することができ、さらにその結果に応じて次の工程に速やかに移ることができる。
【0023】
また、上記実施形態では、ミラー11を透過したレーザ光Lを携帯電話20のカメラ23で撮像している。ミラー11を透過したレーザ光Lは強度が著しく減衰されるため、携帯電話20のカメラ23の撮像部22が破損するおそれがなく、安全に測定を行うことができる。なお、本実施形態では、ミラー11はレーザ加工機側の構成部材であり、したがって、特に測定のために他のレーザ光減衰手段を別途設ける必要がないといった利点がある。もしもレーザ加工機がミラー11等の流用可能なレーザ光減衰手段を具備しないものの場合には、別途減衰手段を用意して測定すればよい。
【0024】
なお、上記実施形態の携帯電話20は発光板25が着脱自在に装着されるものであるが、発光板25が装着されない一般的なカメラ付き携帯電話であっても、本発明の方法でレーザ光Lの強度分布を測定することができる。その場合には、携帯電話20のカメラ23でレーザ光Lを撮像する時に、図1で示したようにレーザ光Lを可視化する機能を有する任意の発光板を携帯電話20とミラー11との間に配置すればよい。
【符号の説明】
【0025】
10…レーザ発振器
11…ミラー
20…カメラ付き携帯電話
21…結像レンズ
22…撮像部
24…送信部
25…発光板
30…解析装置
31…受信部
L…レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工機に搭載されたレーザ発振器から発振されるレーザ光の強度分布を測定するレーザ光強度測定方法であって、
前記レーザ光を発光板によって可視光に変換する可視光変換工程と、
前記可視光を結像レンズで撮像部に結像する結像工程と、
該結像工程で得られた前記可視光の強度分布を示す画像を送信部により解析装置に無線送信する送信工程と、
前記送信部から送信された前記画像を前記解析装置の受信部で受信する受信工程と、
該受信工程で得られた前記画像を前記解析装置で解析して前記レーザ光の強度分布を解析する解析工程と、を含み、
前記結像工程と前記送信工程とを、前記結像レンズと前記撮像部と前記送信部とを備えたカメラ付き携帯電話によって行うことを特徴とするレーザ光強度測定方法。
【請求項2】
前記可視光変換工程の前に、前記レーザ発振器から発振された前記レーザ光を減衰させる減衰工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザ光強度測定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザ光強度測定方法に用いられるカメラ付き携帯電話であって、前記結像レンズと前記撮像部と前記送信部とを備えており、さらに、該結像レンズへの入射光路における該結像レンズの前に、前記発光板が配設されていることを特徴とするカメラ付き携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−249727(P2010−249727A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100980(P2009−100980)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】