説明

レーザ処理装置

【課題】レーザ処理装置にロードロック室などを設置することなく被処理体の搬出、搬入を迅速に行うことができ、しかも処理室内の雰囲気安定化を短時間で行うことができるレーザ処理装置を提供する。
【解決手段】被処理体100を収容して調整された雰囲気下で該被処理体にレーザ光を照射する処理室2と、処理室2内に外部からレーザ光3aを導く光学系4を備え、処理室2は、処理室2外部から処理室2内部に被処理体100を装入する開閉可能な装入口7と、装入口7から被処理体を装入するべく処理室2内部に設けたロードロックエリアAと、ロードロックエリアAと別に処理室2内部に設けたレーザ光照射エリアBを備え、両エリアを被処理体100の移動を可能にして仕切手段で区画する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光を被処理体に照射してレーザアニールなどの処理を行うレーザ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイの基板などに用いられる半導体薄膜では、アモルファス膜を用いるものの他、結晶薄膜を用いるものが知られている。この結晶薄膜に関し、アモルファス膜をレーザ光によってアニールして結晶化させることにより製造する方法が提案されている。また、レーザアニール処理として、結晶質膜にレーザ光を照射して欠陥の除去や結晶性の改善などの改質を目的として行うものも知られている。
【0003】
上記レーザアニールなどの処理では、大気の影響を除去して結晶化などに最適な雰囲気に制御する方法が採用されている。該雰囲気は窒素等の不活性ガス、真空等の他に、これら雰囲気に積極的に少量の酸素などを混合する方法も知られている。上記雰囲気調整のため、被処理体を処理室内に収容し、該収容室内の雰囲気を調整して処理室外部からレーザ光を導入して被処理体に照射する。しかし、処理室外部から処理室内部に被処理体を装入する際に、処理室の装入口などを開けることによって処理室内に大気が混入する。そのため処理室内の雰囲気調整(低酸素濃度など)を行うことが必要になるが、雰囲気が安定するまでに時間を要し生産性が低くなるという問題がある。このため、半導体用基板を搬入、搬出するためのロードロック室を処理室とは別に設けたレーザ処理装置が提案されている(例えば特許文献1参照)
【0004】
該装置を図7に基づいて説明する。
処理室35には、被処理体100を装入して載置するステージ36が配置され、処理室35の天板には外部からレーザ光を導入する導入窓37が設けられる。処理室35には、ゲートバルブ34を介して搬送ロボット室33が接続され、さらに搬送ロボット室33には、ゲートバルブ32を介してロードロック室31が接続されている。ロードロック室31の外部には、ロードロック室31内に被処理体100を搬送する搬送ロボット30が配置される。
上記ロードロック室31、搬送ロボット室33、処理室35は、真空もしくは所定のガス雰囲気下でゲートバルブ32、34を介して連通する。
上記装置の稼働においては、基板搬入時に、ゲートバルブ32、34を閉じた状態で、ロードロック室31のゲートバルブ(図示しない)を開けて搬送ロボット30によって被処理体100をロードロック室31内に搬入し、ロードロック室31のゲートバルブを閉じる。ゲートバルブ32、34を閉じた状態で、ロードロック室31を真空引きした後に、真空保持もしくは所定のガスを導入する。次いで、ゲートバルブ32を開いて被処理体100をロードロック室31から搬送ロボット室33に搬送し、さらにゲートバルブ34を開けて処理室35内に被処理体100を装入し、ロードロック室34を閉じてレーザアニールなどの処理を行う。これにより処理室35の雰囲気を維持したままで所望の処理を行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−164407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにロードロック室を設けた処理装置では、処理室は所定の雰囲気(例えば低酸素濃度の窒素雰囲気など)に維持され、被処理体の搬出、搬入に際してはロードロック室のみで雰囲気の置換を行えばよいので、処理室の雰囲気調整を必要とすることなく処理を行うことが可能になる。しかし、該処理装置では、搬送ロボット室およびロードロック室を設けるためのコストが嵩み、また、処理室以外の設置スペースも大きく確保する必要がある。さらには、被処理体の搬出、搬入の度にロードロック室内の雰囲気を窒素ガスや不活性ガス等へ置換する為の時間やランニングコストが必要となり、また、被処理体を搬送するための時間も増大するという問題がある。
【0007】
この発明は、上記のような従来の課題を解決するためになされたもので、ロードロック室の設置を必要とすることなく処理装置内の雰囲気を短時間で安定化させることができるレーザ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明のレーザ処理装置のうち、第1の本発明は、被処理体を収容して調整された雰囲気下で該被処理体にレーザ光を照射する処理室と、該処理室内に外部からレーザ光を導く光学系と、を備え、前記処理室は、処理室外部から処理室内部に被処理体を装入する開閉可能な装入口と、該装入口から被処理体を装入するべく処理室内部に設けられたロードロックエリアと、該ロードロックエリアと別に処理室内部に設けられたレーザ光照射エリアと、を備え、前記ロードロックエリアとレーザ光照射エリア間で前記被処理体の移動が可能になっていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、処理室内にロードロックエリアとレーザ光照射エリアとを設けることで、被処理体を処理室内に搬入または処理室から搬出する際に装入口から混入する大気がレーザ光照射エリアに影響するのを極力低減する。被処理体はロードロックエリアに装入され、該ロードロックエリアからレーザ光照射エリアに移動されて所定の処理がなされる。
ロードロックエリアは、装入口に連なるようにして装入口に隣接して設けるのが望ましく、装入口とレーザ光照射エリアとの間にロードロックエリアが位置しているのが望ましい。
【0010】
なお、被処理体に対する処理は、例えば、非結晶である被処理体を結晶化させたり、結晶体である被処理体の改質を行うレーザアニールを好適例として挙げることができるが、本発明としては処理の内容がこれらに限定されるものではなく、レーザ光を被処理体に照射して所定の処理を行うものであればよい。
また、被処理体としては、上記レーザアニール処理の対象となる半導体を代表的なものとして示すことができるが、本発明としてはその種別が特に限定されるものではなく、処理の目的に沿って対象とされるものであればよい。
また、上記処理は、調整された雰囲気下で処理室内において行われる。該雰囲気は、大気雰囲気を除外するものであり、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気などが代表的に挙げられる。また、湿度、温度などを調整した雰囲気であってもよい。すなわち、本発明としては調整された雰囲気の種別は特に限定されるものではなく、大気下以外であって所定の条件に調整されるものであればよい。
【0011】
第2の本発明のレーザ処理装置は、前記第1の本発明において、前記ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとは、前記被処理体を前記ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとの間で移動可能な仕切手段によって区画されていることを特徴とする。
【0012】
上記本発明によれば、仕切手段によってレーザ光照射エリアの雰囲気を極力維持してロードロックエリアで被処理体の搬入、搬出を行う際の影響を小さくすることができる。また、仕切手段に被処理体が移動可能な開放部を設けておくことで、ロードロックエリアからレーザ光照射エリアへの被処理体の移動を円滑に行うことができる。開放部としては、常時開放されているものであってもよく、開閉動作を伴うものであってもよい。また、ガスカーテンのように、被処理体の移動に伴って開放状態になるものであってもよい。
【0013】
第3の本発明のレーザ処理装置は、前記第2の本発明において、前記仕切手段は、前記ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとを仕切る仕切壁を有することを特徴とする。
【0014】
第4の本発明のレーザ処理装置は、前記第2の本発明において、前記仕切手段は、前記ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとを仕切る雰囲気ガスカーテンを有することを特徴とする。
【0015】
上記した仕切手段としては、ロードロックエリアとレーザ光照射エリアとを仕切る仕切壁や雰囲気ガスを用いたガスカーテンなどを用いることができる。仕切壁やガスカーテンは仕切手段全体に亘るものであってもよく、また、一部を仕切壁やガスカーテンで構成するものであってもよく、仕切壁とガスカーテンとを混在させるものであってもよい。
【0016】
第5の本発明のレーザ処理装置は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記ロードロックエリアに連なるロードロックエリア給気装置とロードロックエリア排気装置とを備えることを特徴とする。
【0017】
ロードロックエリアには、給排気装置を接続するようにしてもよい。これによりロードロックエリアにおける雰囲気調整を容易に行うことができる。ロードロックエリア給気装置では、窒素ガス、不活性ガスなどをロードロックエリアに導入することができ、ロードロックエリア排気装置では、ロードロックエリアの排気や真空引きなどを行うことができる。
ロードロックエリアの雰囲気調整は、1)被処理体が処理室に搬入、搬出されるとき、2)処理中および3)被処理体が処理室内において搬送されるとき、それぞれの場合において上記給排気装置を用いて行うことができる。
【0018】
ロードロックエリアを処理室内部に設置し給排気システムを設けることで、
1、ロードロックエリアに給気を行うことで得られるシール構造により装入口外部より混入してくる大気量を抑えるとともに、処理室内部におけるロードロックエリア外部への大気混入を低減させる。
2、給排気によリロードロックエリアに混入した大気雰囲気を短時間で窒素やその他の大気以外のレーザ処理に影響を与えにくい雰囲気に置換することができる。
上記により、大気混入による照射部雰囲気への影響を低減させることにより、照射部の雰囲気を短時間で安定化させることが可能となる。
【0019】
第6の本発明のレーザ処理装置は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記レーザ光照射エリアに連なる照射エリア給気装置と照射エリア排気装置とを備えることを特徴とする。
【0020】
レーザ光照射エリアには、給排気装置を接続するようにしてもよい。これによりレーザ光照射エリアの雰囲気を極力一定に維持することができる。レーザ光照射エリアとロードロックエリアには、それぞれ給排気装置を設けるようにしてもよい。
【0021】
第7の本発明のレーザ処理装置は、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、前記ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとの間で被処理体を移動させる被処理体移送装置を処理室内部に備えることを特徴とする。
【0022】
ロードロックエリアに装入した被処理体は、処理室内部に備える被処理体移送装置によってレーザ光照射エリアに移動させることができる。また、必要に応じてレーザ光照射エリアからロードロックエリアに被処理体を移動させることができる。これにより、従来装置のように処理室外部にロードロック室から処理室に被処理体を移動させるための搬送ロボット室を設ける必要がない。
【0023】
第8の本発明のレーザ処理装置は、前記第1〜第7の本発明のいずれかにおいて、前記被処理体移送装置は、前記被処理体を載置して前記ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとの間で移動可能なステージを有していることを特徴とする。
【0024】
前記被処理体移動装置に被処理体を載置するステージを備えることにより、ロードロック室に装入する被処理体をステージ上に載置してそのままレーザ光照射エリアに移動させることができる。なお、ステージは被処理体を載置しない状態でも両エリア間で移動させることができる。
【0025】
第9の本発明のレーザ処理装置は、前記第8の本発明において、前記被処理体移送装置は、前記レーザ光照射エリアにおいて前記ステージを前記レーザ光に対し相対的に移動させることで前記レーザ光の走査を行うものであることを特徴とする。
【0026】
前記被処理体移送装置に備えるステージをレーザ光照射エリア側に移動させた後、該ステージを移動させることでレーザ光照射時の走査を行うようにしてもよい。これにより走査装置と被処理体を移送する装置とを兼用することができ、装置構成を簡易なものにすることができる。また、被処理体をロードロックエリアからレーザ光照射エリアに移動させる方向と、上記走査の方向とが同じ一軸方向とすれば、移動および走査のための装置構成を簡略にすることができ、また、処理室のスペースを有効に利用することができる。また、走査に際し、ステージを移動させて一部を退避させる際に、ステージの一部がロードロックエリア側の空間に位置するようにすれば、スペース効率がさらに向上する効果がある。
【0027】
第10の本発明のレーザ処理装置は、前記第8または第9の本発明において、前記ステージは、前記被処理体を前記処理室内部に装入する際に、前記ロードロックエリア側に位置して、該ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとを区画する仕切手段の一部をなすことを特徴とする。
【0028】
また、上記ステージを仕切手段の一部として利用することで、仕切手段の構成部分を簡略にすることができる。
【0029】
第11の本発明のレーザ処理装置は、前記第8〜第10の本発明のいずれかにおいて、前記装入口と前記ロードロックエリアに位置するステージ上とが連なった空間を囲むとともに前記ステージのレーザ光照射エリア側への移動が可能となるように仕切手段としての仕切壁が設けられていることを特徴とする。
【0030】
上記ステージ上の空間を仕切壁で囲むことで、ロードロックエリアとレーザ光照射エリアとの区画をおこなうことができ、また、ステージがロードロックエリアとレーザ光照射エリア間で移動することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明によれば、ロードロックエリア外における雰囲気への影響を低減させ、レーザ光照射エリアの雰囲気を短時間で安定した状態に制御可能となり、被処理体の処理時間削減につながり、かつ均一な非晶質半導体薄膜の結晶化が可能になるなど処理効果が向上する効果がある。
また、ロードロック室や搬送ロボット室などの設置が不要になり、スペース効率が向上する。さらに、ロードロック室の雰囲気調整のために必要な時間や雰囲気ガスの使用量の低減効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施形態によるレーザアニール処理装置の概略を示す正面側の断面図である。
【図2】同じく、平面側の断面図である。
【図3】同じく、左側面での断面図である。
【図4】同じく、右側面での断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態におけるレーザアニール処理装置の概略を示す正面側の断面図である。
【図6】同じく、左側面での断面図である。
【図7】従来のレーザアニール処理装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明のレーザ処理装置1について添付図面に基づいて説明する。
図1は、該レーザ処理装置1の正面断面を示す図であり、図2は平面断面図、図3は、左側面断面図、図4は、右側面断面図である。
レーザ処理装置1は、処理室2と、該処理室2外にあるレーザ発振器3と該レーザ発振器3から出力されたレーザ光3aを整形して前記処理室2に導く光学系4を備えている。また、処理室2には、光学系4の一部としてレーザ光3aを処理室2外部から処理室2内に導く導入窓5を有しており、導入窓5を通して導かれるレーザ光3aは、処理室2内に設けたシールドボックス6に設けた透過孔6aを通して被処理体100に照射される。シールドボックス6は、被処理体100の照射部分にシールドガスを吹き付けるものである。
処理室2の側壁2aには、装入口7が設けられており、該装入口7の開閉を行うゲートバルブ8が備えられている。装入口7が位置する側で処理室2の外部に搬送ロボット9が位置する。なお、この例では、ゲートバルブ8を処理室2の側壁側に設けたが、図1示で正面側に設けるなどの構成も可能である。
【0034】
処理室2内には、図2示で左右方向および上下方向に移動可能なステージ10が設置されており、該ステージ10は、移動装置11によって移動される。該移動装置は本発明の被処理体移送装置としての役割も有している。ステージ10は、平面矩形形状を有しており、シールドボックス6よりも装入口7側に待機位置を有している。
待機位置にあるステージ10の両側端縁上には、仕切手段である側面仕切壁12、12がステージ10の上面側縁に沿いつつ処理室2の天板2bに上端を固定されて垂下され、側面仕切壁12、12の下端面とステージ10の上面とは小隙間のみを有しており、天板2bと側面仕切壁12とは隙間なく固定されている。
なお、この形態では、ステージ10が幅方向に移動するため、側面仕切壁12、12の下端面とステージ10の上面との間の隙間は、ステージ10上に載置した被処理体100が通過できる大きさに形成されている。なお、ステージ10を幅方向に移動させない場合には、該隙間をより狭いものにして気密性を高めることができる。
【0035】
また、側面仕切壁12、12には、装入口7側においてステージ10の図1示右方側(以降後方側という)の後方端からステージ10の後方面に沿って下方に伸長する後方側面切壁12a、12aが連なっており、該後方側面仕切壁12a、12aは、装入口7側で側壁2aに隙間なく固定されている。また、後方側面仕切壁12a、12aの両下端同士は、装入口7の下方側で横板状の下方仕切壁12bで連結されている。後方側面仕切壁12a、12aの後方端部は、側壁2aに隙間なく固定されており、前方端部は、ステージ10の後方面に僅かに隙間を有して位置している。これにより装入口7の周囲が後方側面仕切壁12a、12a、下方仕切壁12bによって囲まれる。
【0036】
さらに、側面仕切壁12、12のシールドボックス6側(以降前方側という)の端部は、待機位置にあるステージ10の前方端側にまで伸長しており、側面仕切壁12、12の先端部間には、縦板状の前方仕切壁12cが連結されている。前方仕切壁12cの上端は天板2bに隙間なく固定されており、前方仕切壁12cの下端は、ステージ10に載置された被処理体100が通過できるようにステージ10上面との間に隙間12dを有して位置している。該隙間は、仕切手段における開放部に相当する。
上記側面仕切壁12、12、後方側面仕切壁12a、12a、下方仕切壁12b、前方仕切壁12cによって、本発明の仕切手段となる仕切壁が構成されている。該仕切壁は、酸素などによる汚染を受けにくい材質が望ましく、例えばアルマイト処理されたアルミニウム板を用いることができる。
【0037】
また、待機位置にあるステージ10、上記仕切壁、側壁2a、天板2bで囲まれる空間がロードロックエリアAとなっている。したがって、側壁2a、天板2bの一部も仕切手段としての機能を果たしている。ロードロックエリアAは、前記したように仕切壁とステージ10との間に僅かな隙間を有する状態でシールドがなされている。
また、ロードロックエリアAとは別に、シールドボックス6が位置する空間がレーザ光照射エリアBに区画されている。
なお、上記では仕切壁は固定物として説明したが、仕切手段を可動のものや可変形状のものによって構成することも可能である。
【0038】
さらに、ロードロックエリアAには、窒素、アルゴンなどの雰囲気ガスを給気可能な給気ライン13と、ロードロックエリアA内の雰囲気ガスを排気する排気ライン14とが接続されている。各ラインには、開閉弁13a、流量計13b、開閉弁14a、流量計14bが介設されている。
上記給気ライン13、開閉弁13a、流量計13b、図示しないガス供給源などによって本発明のロードロックエリア給気装置が構成されており、上記排気ライン14、開閉弁14a、流量計14b、図示しない排気ポンプなどによって本発明のロードロックエリア排気装置が構成されている。
ロードロックエリアAに雰囲気ガスを給気することで、上記した仕切壁とステージ10との間の僅かな隙間からガスが外側に向けて吹き出されることでガスカーテンとしての機能が得られ、シールド性が向上する。したがって、仕切壁とステージ10との隙間は、ステージの移動を損なわない程度に極力小さくするのが望ましく、また、雰囲気ガスの給気によるガスカーテンの作用が十分に得られる程度に小さくすることが望ましい。
【0039】
次に、上記レーザ処理装置1の動作について説明する。
先ず、処理に先立ってステージ10を待機位置に移動させてゲートバルブ8を閉めておき、流量計13b、14bによって流量を調整しつつ、開閉弁13a、14aを明けて排気とともに雰囲気ガスを給気して処理室2内の雰囲気を調整する。
また、ロードロックエリア用とは別に、レーザ光照射エリアBに給気ラインと排気ラインとを接続するものであってもよく、この場合、被処理体の搬入、処理、被処理体の搬出に至るまで、レーザ光照射エリアに対する給気および排気を継続したままにするのが望ましい。
ロードロックエリアAに対する給気および排気によって雰囲気調整が完了すると、ゲートバルブ8を開け、搬送ロボット9によって被処理体100を装入口7からロードロックエリアA内に挿入し、ステージ10上に載置する。ゲートバルブ8を開ける際に、給気ライン13によってロードロックエリアAに給気のみを行って外部の大気がロードロックエリアA内に混入するのを防止するのが望ましい。この際に、ロードロックエリアAのシールドが図られているため、ロードロックエリアAに大気が混入しても容易にレーザ光照射エリアに侵入することがない。
被処理体100をロードロックエリアAに装入した後、ゲートバルブ8を閉め、給気ライン13による給気と、排気ライン14による排気とを行って、処理室2内の雰囲気を安定化させる。この際に、レーザ光照射エリアBへの大気の混入は殆どなく、ロードロックエリアAにおける雰囲気を安定化させるための時間程度で済むため、雰囲気安定化のための処理時間は短くなる。
【0040】
雰囲気の安定化後、ステージ10を移動装置11によって図1示左方に移動させる。この移動の途中で被処理体100の一部が照射位置に達するので、被処理体100が完全にレーザ光照射エリアに移動する前にレーザ光の照射を開始することができる。レーザ光3aは、レーザ発振器3から出力され、光学系4および光学系4内の導入窓5、さらに処理室2内のシールドボックス6を通して、透過孔6aからレーザ光照射エリアB内に位置する被処理体100に照射される。ステージ10は、移動装置11によって前後方向に移動することでレーザ光3aが走査される。走査の際には、ステージ10はロードロックエリアA側への移動が可能になっており、ロードロックエリアA側の空間が利用される。
また、ステージ10を左右方向で移動させて走査位置を変更することで、被処理体100の全面に亘ってレーザ光照射による処理を行うことができる。該処理において、仕切壁はステージ10および被処理体100の移動に支障となることはない。
【0041】
上記により被処理体100の処理を効率よく行うことができる。処理が完了した被処理体100は、ステージ10とともに移動装置11によってロードロックエリアA側に移動させ、給気ライン13によってロードロックエリアA側に給気のみを行った状態でゲートバルブ8を開け、搬送ロボット9によって処理室2外に搬出する。その後は、前記と同様に他の処理体100を搬入して同様の処理を行うことができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、側面仕切壁12は、待機位置にあるステージ10上面の左右両側端縁上に位置してステージ10が左右方向に移動できるものとしたが、側面仕切壁の形状を変更したものであってもよい。この例を図5、6に基づいて説明する。なお、前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0043】
この例の側面仕切壁20、20は、ステージ10が左右方向に移動する範囲でステージの左右側壁面が干渉しない位置で天板2bに垂下固定されており、側面仕切壁20、20は、ステージ10の下面側近傍に至る長さを有している。また、側面仕切壁20、20の後方側は側壁2aに隙間なく固定されており、シールドボックス6側では、ステージ10の前方端縁に至る長さを有している。また、側面仕切壁20、20間には、ステージ10の後方側で横板状の下方仕切壁20aが連結されており、下方仕切壁20aの後方端は側壁2aに隙間なく固定され、前方端はステージ10の後方面と僅かな隙間を有する位置まで伸長している。
また、側面仕切壁20、20の前方端は、ステージ10上面の前方端縁にまで伸長しており、該前方端に、縦板状の前方仕切壁20bで連結されている。前方仕切壁20bの上端は天板2bに隙間なく固定され、下端面はステージ10に載置された被処理体100が通過できる程度に隙間20cを有している。該隙間は、仕切手段における開放部に相当する。上記側面仕切壁20、20、下方仕切壁20a、前方仕切壁20bによって、本発明の仕切手段となる仕切壁が構成されている。
【0044】
この実施形態においても待機位置にあるステージ10の上方側がロードロックエリアAに割り当てられており、シールドボックス6側がレーザ光照射エリアBに割り当てられている。側面仕切壁20、20、下方仕切壁20a、前方仕切壁20bで構成される仕切壁は、装入口7の周囲を覆い、ロードロックエリアAとレーザ光照射エリアBとを区画してシールド性を得ている。該ロードロックエリアAは、給気ライン13からの給気によってガスカーテン作用を得てシールド性を向上させることができ、また、排気ラインによって混入した大気を早期に排除することができる。
【0045】
この実施形態においても、前記実施形態と同様にして処理室内への被処理体の搬入、レーザ光照射による処理、処理室外への処理体の搬出を行うことができる。この際に、レーザ光照射エリアの雰囲気をできるだけ維持するとともに、被処理体の搬入、搬出に際し、短時間で雰囲気の安定化を測ることができる。
【0046】
なお、仕切手段の配置は、上記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば装入口の位置などによって適宜の配置、形状などとすることができる。
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 レーザ処理装置
2 処理室
3 レーザ発振器
4 光学系
6 シールドボックス
7 装入口
8 ゲートバルブ
9 搬送ロボット
10 ステージ
11 移動装置
12 側面仕切壁
12a 後方側面仕切壁
12b 下方仕切壁
12c 前方仕切壁
13 給気ライン
14 排気ライン
20 側面仕切壁
20a 下方仕切壁
20b 前方仕切壁
A ロードロックエリア
B レーザ光照射エリア
100 被処理体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を収容して調整された雰囲気下で該被処理体にレーザ光を照射する処理室と、該処理室内に外部からレーザ光を導く光学系と、を備え、
前記処理室は、処理室外部から処理室内部に被処理体を装入する開閉可能な装入口と、該装入口から被処理体を装入するべく処理室内部に設けられたロードロックエリアと、該ロードロックエリアと別に処理室内部に設けられたレーザ光照射エリアと、を備え、前記ロードロックエリアとレーザ光照射エリアとの間で前記被処理体の移動が可能になっていることを特徴とするレーザ処理装置。
【請求項2】
前記ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとは、前記被処理体を前記ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとの間で移動可能な仕切手段によって区画されていることを特徴とする請求項1記載のレーザ処理装置。
【請求項3】
前記仕切手段は、前記ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとを仕切る仕切壁を有することを特徴とする請求項2記載のレーザ処理装置。
【請求項4】
前記仕切手段は、前記ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとを仕切る雰囲気ガスカーテンを有することを特徴とする請求項2記載のレーザ処理装置。
【請求項5】
前記ロードロックエリアに連なるロードロックエリア給気装置とロードロックエリア排気装置とを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ処理装置。
【請求項6】
前記レーザ光照射エリアに連なる照射エリア給気装置と照射エリア排気装置とを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレーザ処理装置。
【請求項7】
前記ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとの間で前記被処理体を移動させる被処理体移送装置を前記処理室内部に備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のレーザ処理装置。
【請求項8】
前記被処理体移送装置は、前記被処理体を載置して前記ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとの間で移動可能なステージを有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のレーザ処理装置。
【請求項9】
前記被処理体移送装置は、前記レーザ光照射エリアにおいて前記ステージを前記レーザ光に対し相対的に移動させることで前記レーザ光の走査を行うものであることを特徴とする請求項8記載のレーザ処理装置。
【請求項10】
前記ステージは、前記被処理体を前記処理室内部に装入する際に、前記ロードロックエリア側に位置して、該ロードロックエリアと前記レーザ光照射エリアとを区画する仕切り手段の一部をなすことを特徴とする請求項8または9に記載のレーザ処理装置。
【請求項11】
前記装入口と前記ロードロックエリアに位置するステージ上とが連なった空間を囲むとともに前記ステージのレーザ光照射エリア側への移動が可能となるように仕切手段としての仕切壁が設けられていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のレーザ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−222838(P2011−222838A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91802(P2010−91802)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】