説明

レーザ加工ヘッド及び肉盛溶接方法

【課題】本発明の課題は、パウダ供給量の迅速な制御が可能であり、より安定したパウダ供給量を得ることができるレーザ加工ヘッドを提供する。
【解決手段】本発明のレーザ加工ヘッドH1は、パウダ供給部3は、パウダを施工対象物6のレーザ5の照射部14に吐出するパウダ供給ノズル111(パウダ吐出部)と、このパウダ供給ノズル111に供給されるパウダ流の流量を予め分配することでこのパウダ供給ノズル111に対するパウダ供給量を調整するパウダ供給量調整機構130と、を備えると共に、パウダ供給量調整機構130によるパウダ流4の流量の分配を制御する制御機構9を更に備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウダを溶加材とするレーザ肉盛に用いるレーザ加工ヘッド及び肉盛溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ニアネットシェイプの直接造形や耐摩耗性等の機能付与を目的とした表面処理技術等に、パウダを溶加材としたレーザ肉盛が用いられている。このレーザ肉盛においては、肉盛部の形状や複数のパウダを用いた場合の肉盛部の化学組成を制御するために、施工中のパウダ供給量の精密な制御が必要となる。
しかしながら、パウダ供給量はパウダ供給装置により制御されるため、パウダ輸送のためのタイムラグが発生し、施工中の精密なパウダ供給量の制御は困難となっていた。また、このタイムラグのため、施工の前後では溶接に使用されないパウダが施工部に供給されるため、パウダに無駄を生じて歩留りを低下させていた。
【0003】
そこで、パウダ供給ノズルにパウダ供給量の調整機構を設け、施工中の精密なパウダ供給量の調整を行う工夫がなされている。例えば、特許文献1には、パウダ供給ノズルから供給されるパウダ供給量を監視し、このパウダ供給量に応じて、ノズルピンを上下駆動することによりパウダ供給量を制御するパウダ供給装置が開示されている。
【0004】
このパウダ供給装置は、パウダを、レーザの外周の一方向から施工部に向けてノズルからの自由落下により供給する装置である。このパウダ供給装置は、ノズルから吐出されるパウダの流量を検出するセンサと、ノズル内で上下駆動することによりパウダの流量を調整するノズルピンと、ノズルピンの位置を検出するセンサと、を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−033757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような構成のパウダ供給装置では、施工方向が変化した場合には安定したパウダ供給量を得ることができない。また、このパウダ供給装置では、ノズルピンでパウダの落下量を調節する構造により、パウダ供給ノズル内にパウダが一時的に滞留する。
つまり、このような従来のパウダ供給装置を使用したレーザ肉盛技術においては、施工部に対するパウダ供給量の迅速な制御が困難であると共に、安定したパウダ供給量を得ることができないという課題があった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、パウダ供給量の迅速な制御が可能であり、より安定したパウダ供給量を得ることができるレーザ加工ヘッド及び肉盛溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決した本発明の第1は、施工対象物にレーザを照射するレーザ出射部と、パウダ供給装置から供給されるパウダを施工対象物のレーザの照射部に供給するパウダ供給部と、を備えるレーザ加工ヘッドにおいて、前記パウダ供給部は、パウダを施工対象物のレーザの照射部に吐出するパウダ吐出部と、このパウダ吐出部に供給されるパウダ流の流量を予め分配することでこのパウダ吐出部に対するパウダ供給量を調整するパウダ供給量調整機構と、を有し、前記パウダ供給量調整機構によるパウダ流の流量の分配を制御する制御機構を更に備えることを特徴とするレーザ加工ヘッドである。
【0009】
前記課題を解決した本発明の第2は、施工対象物にレーザを照射するレーザ出射部と、パウダ供給装置から供給される複数種のパウダのそれぞれを、個別に施工対象物のレーザの照射部に供給するパウダ供給部と、を備えるレーザ加工ヘッドにおいて、前記パウダ供給部は、各パウダを個別に施工対象物のレーザの照射部に吐出する複数のパウダ吐出部と、各パウダ吐出部に供給されるパウダ流の流量を予め分配することで各パウダ吐出部に対する各パウダ供給量を調整するパウダ供給量調整機構と、を有し、前記パウダ供給量調整機構によるパウダ流の流量の分配を制御する制御機構を更に備えることを特徴とするレーザ加工ヘッドである。
【0010】
前記課題を解決した本発明の第3は、施工対象物にレーザ出射部からレーザを照射すると共に、パウダ供給装置から供給されるパウダを、パウダ吐出部から施工対象物のレーザの照射部に吐出して肉盛部を形成する肉盛溶接方法において、前記パウダ吐出部に供給されるパウダ流の流量を予め分配することでこのパウダ吐出部に対するパウダ供給量を調整することを特徴とする肉盛溶接方法である。
【0011】
前記課題を解決した本発明の第4は、施工対象物にレーザ出射部からレーザを照射すると共に、パウダ供給装置から供給される複数種のパウダのそれぞれを、個別に複数のパウダ吐出部から施工対象物のレーザの照射部に供給して肉盛部を形成する肉盛溶接方法において、前記各パウダ吐出部に供給されるパウダ流の流量を予め分配することで前記各パウダ吐出部に対する各パウダ供給量を調整することを特徴とする肉盛溶接方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パウダ供給量の迅速な制御が可能であり、より安定したパウダ供給量を得ることができるレーザ加工ヘッド及び肉盛溶接方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ加工ヘッドの構成説明図である。
【図2】図1のレーザ加工ヘッドを構成するパウダ供給量調整機構の模式図であり、(a)は、パウダ供給量調整機構の構成説明図、(b)及び(c)は、パウダ供給量調整機構におけるパウダ流の分岐部の構成説明図、(d)及び(e)は、パウダ供給量調整機構における補充ガス流の分岐部の構成説明図である。
【図3】図1のレーザ加工ヘッドを使用して肉盛溶接を行う様子を示す模式図である。
【図4】図2のパウダ供給量調整機構の動作説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るレーザ加工ヘッドの構成説明図である。
【図6】図5のレーザ加工ヘッドを使用して肉盛溶接を行う様子を示す模式図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るレーザ加工ヘッドの構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のレーザ加工ヘッド及び肉盛溶接方法は、溶加材としてのパウダを、所定のパウダ供給装置からノズル等のパウダ吐出部を介して施工対象物のレーザの照射部に供給する際に、パウダ供給装置からのパウダ流を予め分配してパウダ吐出部に供給することを主な特徴とする。以下に、本発明のレーザ加工ヘッド及び肉盛溶接方法における第1実施形態乃至第3実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH1は、施工対象物6にレーザ5を照射するレーザ出射部13と、パウダ供給装置2から供給されるパウダを施工対象物6のレーザ5の照射部14に供給するパウダ供給部3とを備えている。
そして、パウダ供給部3は、後に詳しく説明するパウダ供給ノズル111(パウダ吐出部)と、パウダ供給量調整機構130とを備えている。
【0016】
レーザ出射部13から施工対象物6の照射部14に照射されるレーザ5は、レーザ発振器1で発振された後に、光ファイバ11を通じてレーザ集光部12に伝送され、レーザ集光部12で集光されてから照射される。
【0017】
パウダ供給装置2は、パウダが収容される本体部2aと、キャリアガス供給源2bとで構成されている。このパウダ供給装置2は、キャリアガスに同伴させたパウダを、パウダ供給路21を通して後記するパウダ供給量調整機構130に供給するようになっている。
【0018】
パウダ供給ノズル111は複数からなり、後記するように、パウダ供給量調整機構130で分配されたパウダ流4を施工対象物6の照射部14に向けて吐出するようになっている。
【0019】
パウダ供給ノズル111は、パウダ供給量調整機構130に接続されるその上端から照射部14に向かって斜め下方に延びる管状体で形成されている。そして、複数のパウダ供給ノズル111のそれぞれは、レーザ光軸に対して等角度を形成するように、レーザ出射部13の先端に設けられたホルダ110にその下端が支持されている。つまり、各パウダ供給ノズル111から吐出されたパウダ流4は、レーザ光軸上で合流するように供給されることとなる。
なお、パウダ供給ノズル111の数は、この例では2以上であればよい。また、パウダ供給ノズル111の内径は特に制限されるものではない。また、パウダ供給ノズル111の配置は、レーザ光軸の外円周上に配置する形態に限定されず、ランダムに配置するものであってもよい。
【0020】
また、レーザ出射部13の上部には、ガス供給源7からガス供給管71を介してシールドガスが供給されるようになっている。ちなみに、このシールドガスは、ヘリウム、窒素ガス等の広義の不活性ガスからなり、レーザ出射部13の下部に設けられたシールドガスノズル97から吐出してシールドガス流8を形成する。このシールドガス流8は、施工対象物6に供給されることにより、肉盛溶接部の酸化を抑制する。
また、ガス供給源7は、後記するように、補充ガスとしての不活性ガスを分岐部分岐部134a及び分岐部135a(図2参照)にも供給するものであり、特許請求の範囲にいう「補充ガス供給機構」を兼ねている。
【0021】
シールドガスノズル97には、例えば、電動アクチュエータ等で構成されてシールドガスノズル97を上下移動させる位置決め機構96が設けられている。この位置決め機構96によって、シールドガスノズル97の先端の位置を上下に調整することで、施工対象物6の表面との距離、つまりシールドガスノズル97の取付け高さ(スタンドオフ)が設定される。
本実施形態での位置決め機構96の動作は、制御機構9で制御されており、この制御機構9によって、シールドガスノズル97の上下位置が調整される。
【0022】
また、レーザ出射部13の外周には、上下可動部93が配置されている。この上下可動部93は、その上部に設けられた、例えば電動アクチュエータ等で構成される位置決め機構92によって上下移動が可能になっている。そして、この上下可動部93の下端には、ホルダ110が固定されている。この上下可動部93が位置決め機構92によって上下移動すると、ホルダ110に支持されるパウダ供給ノズル111、及びこのパウダ供給ノズル111の上端に配置されるパウダ供給量調整機構130が、ホルダ110と一体になって上下移動するようになっている。
その結果、パウダ供給ノズル111の下端の高さが可変となって、パウダの集中位置を制御することが可能となる。
本実施形態での位置決め機構92の動作は、制御機構9で制御されている。
【0023】
また、上下可動部93の外周には、パウダ供給ノズル111の角度調整部99が配置されている。この角度調整部99は、上下可動部95と、電動アクチュエータ等で構成されて、上下可動部95を上下移動させる位置決め機構94と、上下可動部95に上端が軸支されるアーム10と、このアーム10の下端を軸支すると共にパウダ供給量調整機構130に取り付けられる中間部材101と、を備えて構成されている。
【0024】
この角度調整部99は、位置決め機構94が上下可動部95及びアーム10を上下移動させた際に、アーム10の下端を軸支し、パウダ供給量調整機構130に取り付けられている中間部材101は、下端がホルダ110に支持されているパウダ供給ノズル111と、アーム10との成す角度を可変にする。つまり、パウダ供給ノズル111から吐出されるパウダ流4の吐出角度は、位置決め機構94が上下可動部95を上下移動させることで調整可能となっている。
本実施形態での位置決め機構94の動作は、制御機構9で制御されている。
なお、制御機構9による前記した位置決め機構92,94,96の動作の制御は、信号線91を介して行われる。
【0025】
次に、パウダ供給量調整機構130について説明する。
パウダ供給量調整機構130は、後記する分岐部134a、分岐部135a、分岐弁150及び戻し側配管135、並びにガス供給源7、補充ガス供給路131、分岐部152、分岐部153、分岐弁151及び遮断弁155を主に備えて構成されている(図2参照)。なお、ガス供給源7、補充ガス供給路131、分岐部152、分岐部153、分岐弁151及び遮断弁155は、特許請求の範囲にいう「補充ガス供給機構」を構成している。
このパウダ供給量調整機構130は、前記したように、パウダ供給装置2からパウダ供給路21を介して供給されたパウダ流を分配して、一方のパウダ流4を、パウダ供給ノズル111から施工対象物6の照射部14に向けて吐出し、他方のパウダ流(図示省略)を、戻し側配管135を介してパウダ回収容器154に返送するようになっている。
【0026】
また、パウダ供給量調整機構130は、前記したガス供給源7から補充ガス供給路131を介して補充ガスを受け入れて、分配した一方及び他方の前記したパウダ流に合流させるようになっている。つまり、パウダは、キャリアガス供給源2bからのキャリアガス、及びガス供給源7からの補充ガスに同伴されて、パウダ供給ノズル111から吐出され、そして、パウダ回収容器154に返送されることとなる。
【0027】
このパウダ供給量調整機構130について、図2(a)から(e)を参照しながら、更に詳しく説明する。次に参照する図2(a)は、パウダ供給量調整機構の構成説明図、図2(b)及び(c)は、パウダ供給量調整機構におけるパウダ流の分岐部の構成説明図、図2(d)及び(e)は、パウダ供給量調整機構における補充ガス流の分岐部の構成説明図である。
【0028】
図2(a)に示すように、パウダ供給路21を介して供給されたパウダは、パウダ供給量調整機構130に導入され、パウダ供給路21の下流側で、分岐部134aと、分岐部135aとに分岐している。ちなみに、分岐部134aは、パウダ供給ノズル111(図1参照)に接続されて特許請求の範囲にいう供給側配管を兼ねている。また、分岐部135aは、戻し側配管135(図1参照)に接続されている。
【0029】
図2(b)及び(c)に示すように、分岐部134a及び分岐部135aの境には、分岐弁150が配置されている。この分岐弁150は、特許請求の範囲にいう「分配率調整機構」に相当し、分岐部134a及び分岐部135aの開度を調節する弁体150aと、この弁体150aを駆動する電動ロータリーアクチュエータ150bとで構成されている。この電動ロータリーアクチュエータ150bの動作は、信号線137を介して制御機構9(図1参照)が制御するようになっている。
【0030】
このようなパウダ供給量調整機構130においては、図2(b)に示すように、例えば分岐弁150が分岐部134aを完全に塞いで、分岐部135aの開度(10)に対する分岐部134aの開度(0)の比で表す開閉率が「10:0」の場合には、パウダ供給ノズル111(図1参照)にはパウダが供給されずに、パウダ回収容器154(図1参照)に全てのパウダが戻されることとなる。
【0031】
また、図2(c)に示すように、分岐部135aの開度(7)に対する分岐部134aの開度(3)の比で表す開閉率が「7:3」の場合には、パウダ供給ノズル111(図1参照)には30%のパウダが供給されると共に、パウダ回収容器154(図1参照)には70%のパウダが戻されることとなる。
【0032】
また、図2(a)に示すように、このパウダ供給量調整機構130においては、補充ガス供給路131を介して補充ガスが導入され、補充ガス供給路131の下流側で、補充ガス流の分岐部152と、補充ガス流の分岐部153とに分岐している。
そして、分岐部152は、パウダ流の分岐部134aに形成された補充ガス供給口138aに接続される共に、補充ガス流の分岐部153は、パウダ流の分岐部135aに形成された補充ガス供給口138bに接続されている。
【0033】
このような補充ガス流の分岐部152と、補充ガス流の分岐部153との境には、図2(d)及び(e)に示すように、分岐弁151と遮断弁155とが配置されている。
この分岐弁151は、分岐部152と分岐部153の開度を調節する弁体151aと、この弁体151aを駆動する電動ロータリーアクチュエータ151bとで構成されている。この電動ロータリーアクチュエータ151bの動作は、信号線136を介して制御機構9(図1参照)が制御するようになっている。
【0034】
このようなパウダ供給量調整機構130においては、補充ガスは、補充ガス流の分岐部152及び分岐部153のそれぞれに所定の分配率で送り込まれ、パウダ流の分岐部134a及び分岐部135aに合流した後には、パウダを同伴するキャリアガスとして機能する。
【0035】
また、図2(b)及び(c)に示す分岐弁150の開閉率に応じて、図2(d)及び(e)に示す分岐弁151の開閉率を調整することで、パウダ流の分岐前後のキャリアガスの流量を等しくすることができる。
例えば、図2(c)に示すように分岐弁150の開閉率が「7:3」の場合には、補充ガスの流量を、図2(d)に示すように、分岐部153の開度(3)に対する分岐部152の開度(7)の比で表す開閉率「3:7」となるように分岐弁151を制御することで、分岐によって不足したキャリアガスを補充ガスで補填することができる。その結果、パウダ流の分岐部134a及び分岐部135aにおいては、分岐後もパウダ供給路21と同じキャリアガス流量でパウダを同伴して輸送することができる。
【0036】
ちなみに、遮断弁155は、図2(e)に示すように、補充ガス供給路131を閉じて、分岐部134a及び分岐部135aのいずれにも、補充ガスが合流しないようにするためのものである。つまり、この遮断弁155は、図2(b)に示すように、パウダ流の分岐部134aが分岐弁150で完全に閉じられた場合や、図示しないが、パウダ流の分岐部135aが分岐弁150で完全に閉じられた場合に、補充ガス供給路131を閉じることとなる。
なお、本実施形態では、補充ガス供給路131を介してパウダ供給量調整機構130に供給される補充ガスの供給量は、パウダ供給路21を介してパウダ供給量調整機構130に供給されるキャリアガスの流量と同量としたが、これらのガス流量はこれに限定されない。また、パウダ流の分岐部134a及び分岐部135aのそれぞれに供給する補充ガスの量は、分岐弁151の開閉率によって調整したが、分岐弁151を用いずに独立して調整することもできる。
【0037】
次に、本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH1の動作を説明しつつ作用効果について説明する。図3は、図1のレーザ加工ヘッドを使用して肉盛溶接を行う様子を示す模式図である。図4は、図2のパウダ供給量調整機構の動作説明図である。
ここでは、本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH1を、施工対象物としてのタービン翼の上端部の肉盛溶接に利用した場合について説明する。
【0038】
図3に示すように、レーザ5によって形成された溶融プール142(レーザの照射部により溶融した部分)に、パウダ供給部3からパウダ流4を供給して、肉盛溶接部141を形成した。つまり、レーザ加工ヘッドH1の進行方向は、図3の紙面の右から左に向けてである。
また、シールドガスノズル97(図1参照)からシールドガス流8を溶融プール142に向かって吹き付けることにより肉盛溶接部141の酸化を抑制した。
なお、図3中、符号21は、パウダ供給路であり、符号130は、パウダ供給量調整機構であり、符号131は、補充ガス供給路であり、符号140は、施工対象物6としてのタービン翼であり、符号135は、パウダの戻し側配管であり、符号154は、パウダ回収容器である。
【0039】
本実施形態におけるパウダ供給量の調整方法を、図4を参照しながら説明する。
図4の左欄上段に示すように、施工前(レーザ照射前)においては、パウダ供給路21に所定のパウダ流4の流量を確保しておき、このパウダ流4の全てが、分岐部135aに流れるように、分岐弁150の開閉率を「10:0」に設定する(図4の(a)参照)。このとき、図4の左欄下段に示すように、補充ガス供給路131は、遮断弁155で閉じられている(図4の(e)参照)。そして、パウダ流4は、戻し側配管135(図1参照)を介してパウダ回収容器154(図1参照)に向かって流れて、施工前に供給されたパウダは回収されて再利用することが可能となる。
【0040】
次に、施工が開始して図3に示すように、施工対象物としてのタービン翼140にレーザ5が照射されると、図4に中欄上段(施工中(レーザ照射中))に示すように、分岐弁150の開閉率が調整されて、所定の割合(開閉率「3:7」)でパウダ流4が分岐部134aに分配されるようになる(図4の(b)参照)。このとき、図4の中欄下段に示すように、分岐弁151の開閉率は、図4の(b)の分岐弁150の開閉率「3:7」に応じて、分岐前後でパウダ流4に含まれるガス量が一定になるように開閉率「7:3」に調整される(図5の(f)参照)。その結果、図4の(b)の分岐部134aに分配されたパウダ流4は、パウダ供給ノズル111(図1参照)を介して溶融プール142(図3参照)に向かって吹き付けられて、肉盛溶接部141(図3参照)の溶接に供される。
【0041】
また、図4の中欄上段の(c)に示すように、施工の途中で分岐弁150の開閉率を「5:5」とし、これに対応して、図4の中欄下段の(g)に示すように、分岐弁151の開閉率を「5:5」となるように調整することによって、タイムラグがほとんどなく溶融プール142(図3参照)に対するパウダ供給量の迅速な調整が可能となる。
ちなみに、本実施形態での溶融プール142に対するパウダ供給量の調整は、予め分岐弁150と分岐弁151の開閉率がプログラムされた制御機構9によって行われる。
【0042】
また、本実施形態では、図示しないが、肉盛溶接部141(図3参照)の形状に合わせて肉盛形状を変化させるように、パウダ供給量を増減させた。例えば、肉盛幅や高さの増加が必要な箇所では、その直前でパウダ供給量が増加するように分岐弁150及び分岐弁151の開閉率を制御機構9に予めプログラムし、肉盛形状を調整しながら施工を行った。
【0043】
図4の右欄上段の(d)に示すように、施工後(レーザ照射後)においては、分岐弁150の開閉率を「10:0」に設定し、全てのパウダ流4を分岐部135aに分配することで、施工後の溶接に使用されないパウダを、図1に示すパウダ回収容器154で回収した(図4の(e)参照)。このとき、図4の右欄下段に示すように、補充ガス供給路131は、遮断弁155で閉じられている(図4の(h)参照)。
【0044】
なお、本実施形態では、分岐部135aは、戻し側配管135(図1参照)を介してパウダ回収容器154(図1参照)に接続したが、パウダ供給装置2(図1参照)に接続してパウダを回収することも可能である。
【0045】
また、本実施形態では、1種類のパウダのみを使用することを想定しているが、パウダ供給路21ごとに流通させるパウダの種類及びその流量を変えることで、種々の化学組成からなる肉盛部を形成することが可能である。
【0046】
このような本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH1及び肉盛溶接方法によれば、パウダ供給装置2からのパウダ流を予めパウダ供給量調整機構130で分配してパウダ供給ノズル111(パウダ吐出部)に供給するので、パウダ供給量の迅速な制御が可能であり、より安定したパウダ供給量を得ることができる。
【0047】
また、本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH1及び肉盛溶接方法によれば、肉盛溶接に使用されないパウダを施工中に回収することができるので、パウダに無駄が生じず、肉盛溶接の歩留まりを向上させることができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。参照する図5は、第2実施形態に係るレーザ加工ヘッドの構成説明図である。なお、本実施形態において前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
図5に示すように、本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH2においては、レーザ発振器1で発振されたレーザ5は、光ファイバ11を通じてレーザ集光部12に伝送され、レーザ集光部12で集光されたレーザ5は、レーザ出射部13を通じて施工対象物6に照射される。
【0050】
パウダ供給部3は、パウダ供給量調整機構130とパウダ流路41(パウダ吐出部)とで主に構成されている。本実施形態では、内ノズル31と外ノズル32によって形成される空間をパウダ流路41としている。
【0051】
本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH2は、一対のパウダ供給装置2A,2Bを備えている。そして、このパウダ供給装置2A,2Bのそれぞれから供給される各パウダは、パウダ供給路21A,21B、及びパウダ供給量調整機構130A,130Bを通じて、パウダ流路41に送り込まれて合流し、施工対象物6のレーザ5の照射部14にパウダ流4として集中するように供給される。
【0052】
ちなみに、パウダ供給量調整機構130A,130Bのそれぞれでは、第1実施形態でのパウダ供給量調整機構130と同様に、パウダ供給路21A,21Bからそれぞれ供給されるパウダ流を所定の分配率で分配して、分配されたパウダ流をパウダ流路41、及び戻し側配管135A,135Bに流すようになっている。
【0053】
なお、戻し側配管135A,135Bは、パウダ供給装置2A,2Bのそれぞれのパウダ格納部22A,22Bと接続されている。そして、各パウダ格納部22A,22Bは、戻し側配管135A,135Bからのパウダ流よりパウダを回収して、このパウダを再びパウダ供給装置2A,2Bからパウダ供給量調整機構130A,130Bのそれぞれに供給するようになっている。つまり、本実施形態でのパウダ格納部22A,22Bは、前記第1実施形態に係るレーザ加工ヘッドH1のパウダ回収容器154と同様にパウダを回収する点で特許請求の範囲にいう「パウダ回収容器」を構成する。
【0054】
レーザ出射部13には、ガス供給管71及びシールドガスノズル97が設けられており、シールドガスノズル97から施工対象物6に対し、シールドガス流8を吹き付けることができるようになっている。
【0055】
また、シールドガスノズル97に設けられた、電動アクチュエータからなる位置決め機構96によって、シールドガスノズル97の先端の位置を上下に調整し、施工対象物6の表面との距離(スタンドオフ)を制御することが可能となっている。この位置決め機構96は、信号線91を介して制御機構9によって制御されている。
【0056】
レーザ出射部13の外周に設けられた内ノズル31は、下方の先端に向かうほど縮径する円錐台状の外形を呈する先端部を有している。内ノズル31は、その中心軸がレーザ光軸と一致するように配置されている。そして、この内ノズル31の外側に設けられる外ノズル32も、その中心軸がレーザ光軸と一致するように配置されていると共に、下方の先端に向かうほど縮径する円錐台状の外形を呈する先端部を有している。
【0057】
そして、前記したように、パウダ流路41は、内ノズル31と外ノズル32との間に形成され、外ノズル32の円錐台状を呈する先端部では、その内径が下方の先端に向かうほど、内ノズル31寄りに徐々に絞られるように縮径している。その結果、パウダ流路41においては、下方に向かうほどパウダ流4の流速が早められると共に、パウダ流4は、レーザ光軸上の所定の位置で集中するようになっている。
【0058】
内ノズル31の上部には、電動アクチュエータからなる位置決め機構92が設置されている。この位置決め機構92は、内ノズル31をレーザ光軸に対して上下方向に位置調整を行うようになっている。
なお、内ノズル31が上下移動すると、外ノズル32も内ノズル31と共に上下移動するようになっている。その結果、内ノズル31と外ノズル32との先端の隙間から吐出するパウダ流4の集中位置は、位置決め機構92による内ノズル31の上下移動によって調整できるようになっている。この位置決め機構92は、信号線91を介して制御機構9によって制御されている。
【0059】
外ノズル32の上部には、電動アクチュエータからなる位置決め機構98が設置されている。この位置決め機構98は、外ノズル32をレーザ光軸に対して上下方向に位置調整を行うようになっている。そして、外ノズル32が、位置決め機構98によって内ノズル31よりも下方に位置すると、内ノズル31と外ノズル32の下端位置の相対関係が変化することで、パウダ流路41から吹き出されるパウダ流4の吹出し角を調整することができる。その結果、パウダ流4の集中位置は、位置決め機構98による外ノズル32の移動によっても調整できるようになっている。この位置決め機構98は、信号線91を介して制御機構9によって制御されている。
【0060】
次に、本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH2の動作を説明しつつ作用効果について説明する。図6は、図5のレーザ加工ヘッドを使用して肉盛溶接を行う様子を示す模式図である。ここでは、本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH2を、施工対象物としてのタービンのロータシャフトの耐摩耗性付与を目的とした肉盛溶接に利用した場合について説明する。
【0061】
図6に示すように、本実施形態では、タービンロータシャフト160を回転させながら、レーザ5によって形成された溶融プール142にパウダ供給部3からパウダ流4を供給して、肉盛溶接部141を形成した。
また、シールドガスノズル97(図5参照)からシールドガス流8を溶融プール142に向かって吹き付けることにより肉盛溶接部141の酸化を抑制した。
【0062】
このレーザ加工ヘッドH2においては、パウダ供給装置2Aからパウダ供給量調整機構130Aには、パウダ供給路21Aを通じてパウダAを供給し、パウダ供給装置2Bからパウダ供給量調整機構130Bには、パウダ供給路21Bを通じてパウダBを供給した。そして、パウダ供給量調整機構130A,130Bで所定の分配率で分配された、パウダA,Bのそれぞれを含むパウダ流は、パウダ流路41に送り込まれて合流し、施工対象物6のレーザ5の照射部14にパウダ流4として集中するように供給される。
ちなみに、この例では、パウダA及びパウダBは、その硬さが相互に異なっており、具体的には、パウダAは、施工対象物6のタービンロータシャフト160の材質よりも硬い材質で形成されており、パウダBは、パウダAよりも硬い材質で形成されている。
【0063】
そして、このレーザ加工ヘッドH2による肉盛溶接方法においては、この2種類のパウダA,Bを使用して、肉盛溶接部141の最表面が最も硬くなるようにパウダA及びパウダBの混合比率を調整した。
つまり、本実施形態では、肉盛溶接部141における化学組成を制御する組成傾斜肉盛を実施した。
【0064】
まず、この肉盛溶接方法においては、前記したように、パウダA及びパウダBは、パウダ供給装置2A,2Bからパウダ供給量調整機構130A,130Bに供給した。
【0065】
このとき、パウダA及びパウダBは、施工前から一定量をパウダ供給量調整機構130A,130Bに供給しておき、施工前の段階ではパウダA及びパウダBの全てが、パウダ供給量調整機構130A,130Bによって、戻し側配管135A,135Bに分配されるように調整した。つまり、施工前に供給されたパウダA及びパウダBの全てはパウダ供給装置2A,2Bのそれぞれのパウダ格納部22A,22Bで回収されて再利用される。
【0066】
なお、このとき、パウダ供給量調整機構130A,130Bに補充ガスを導入する補充ガス供給路131A,131Bは、第1実施形態での遮断弁155(図2(d)及び(e)参照)と同様の遮断弁で閉じられている。つまり、パウダ供給量調整機構130A,130Bには、補充ガスが供給されていない。
次の表1には、本実施形態で施工した肉盛各層のパウダA,Bのパウダ混合比率を示している。
【0067】
【表1】

【0068】
表1に示すように、本実施形態で施工した肉盛溶接の積層数の1層目には、パウダBよりもその硬さが施工対象物6のタービンロータシャフト160の硬さに近い、パウダAのみを施工対象物6のレーザ5の照射部14に供給した。つまり、パウダ格納部22Aからパウダ供給量調整機構130Aに供給されるパウダAについては、パウダ供給量調整機構130Aによって、その全てがパウダ流路41に供給されるように設定した。
【0069】
また、パウダ格納部22Bからパウダ供給量調整機構130Bに供給されるパウダBについては、パウダ供給量調整機構130Bによって、その全てが戻し側配管135Bを介してパウダ格納部22Bで回収されるように設定した。
なお、このとき、パウダ供給量調整機構130A,130Bに補充ガスを導入する補充ガス供給路131A,131Bは、第1実施形態での遮断弁155(図2(d)及び(e)参照)と同様の遮断弁で閉じられている。つまり、パウダ供給量調整機構130A,130Bには、補充ガスが供給されていない。
【0070】
表1に示すように、本実施形態で施工した肉盛溶接の積層数の2層目には、パウダAとパウダBとのパウダ混合比率が8:2になるように調整して、施工を行った。
なお、パウダ供給装置2A,2Bからパウダ供給量調整機構130A,130Bに供給するパウダAとパウダBとの総量は変更せずに、前記パウダ混合比率のみが変更されている。
【0071】
そして、ガス供給源7は、補充ガス供給路131A,131Bを介して、パウダ供給量調整機構130A,130Bに補充ガスを供給した。
このとき、第1実施形態での分岐弁151(図2(d)及び(e)参照)と同様に構成されるパウダ供給量調整機構130A,130Bの分岐弁(図示省略)は、分岐前後でパウダ流に含まれるキャリアガス量が変化しないように、補充ガスをパウダ流に補填している。
【0072】
また、表1に示す積層数3層目以降の施工においても、パウダ混合比率が表1に示す値となるように操作した以外は前記した操作と同様の操作を行って肉盛溶接を行った。
ちなみに、本実施形態では、この組成傾斜肉盛溶接を実施した結果、タービンロータシャフト160の表面と肉盛部との密着性に優れると共に、肉盛部の各層は互いに密着性に優れることとなる。また、肉盛部の最外層(5層目)は、パウダBのみからなる組成となり、タービンロータシャフト160の最表面に最も硬い表面層を形成することとなる。
【0073】
このようなレーザ加工ヘッドH2及び肉盛溶接方法によれば、パウダ供給装置2A,2Bからのパウダ流を予めパウダ供給量調整機構130A,130Bで分配してパウダ流路41(パウダ吐出部)に供給するので、パウダ供給量の早急な制御が可能であり、より安定したパウダ供給量を得ることができる。
【0074】
また、このようなレーザ加工ヘッドH2及び肉盛溶接方法によれば、パウダ流路41(パウダ吐出部)に複数種のパウダA,Bを供給すると共に、これらの供給量を個別に変化させることで、異なった組成の肉盛部を形成することができる。
【0075】
そして、施工中に、連続して供給量を個別に変化させることで、異なった組成で積層した肉盛部を形成することができる。
この際、本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH2及び肉盛溶接方法によれば、パウダ供給量の早急な制御が可能となるので、肉盛層ごとの化学組成の制御を容易に行うことが可能となる。
【0076】
また、本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH2及び肉盛溶接方法によれば、肉盛溶接に使用されないパウダA,Bを施工中に回収することができるので、パウダA,Bに無駄が生じず、肉盛溶接の歩留まりを向上させることができる。
【0077】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。参照する図7は、第3実施形態に係るレーザ加工ヘッドの構成説明図である。なお、本実施形態において前記第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0078】
図7に示すように、本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH3は、前記第2実施形態に係るレーザ加工ヘッドH2(図5参照)において、外ノズル32の外周に、ガスノズル121を更に備えた構成となっている。そして、外ノズル32とガスノズル121との間には、ガス供給源7からガス供給管125を介して不活性ガスが導入されるようになっている。この不活性ガスは、ガスノズル121の先端から吹き出されるガイドガス流122を形成する。
【0079】
ガスノズル121は、下方の先端に向かうほど縮径する円錐台状の外形を呈する先端部を有している。このガスノズル121は、内側の外ノズル32と同様に、その中心軸がレーザ光軸と一致するように配置されている。
【0080】
そして、外ノズル32とガスノズル121との間には、ガイドガスのガス流路123が形成され、ガスノズル121の円錐台状を呈する先端部では、その内径が下方の先端に向かうほど、外ノズル32寄りに徐々に絞られるように縮径している。その結果、ガス流路123においては、下方に向かうほどガイドガス流122の流速が早められると共に、ガイドガス流122は、レーザ光軸上の所定の位置で集中するようになっている。ちなみに、このガイドガス流122は、パウダ流4の外側でレーザ光軸上の所定の位置で集中するように流れることで、パウダ流4がレーザ光軸上の所定の位置で集中し易いようにガイドしている。
【0081】
ガスノズル121の上部には、電動アクチュエータからなる位置決め機構120が設置されている。この位置決め機構120は、ガスノズル121をレーザ光軸に沿って上下方向に位置調整を行うようになっている。そして、ガスノズル121が、位置決め機構120によって外ノズル32よりも下方に位置すると、外ノズル32とガスノズル121の下端位置の相対関係が変化することで、ガス流路123から吹き出されるガイドガス流122の吹出し角を調整することができる。その結果、ガイドガス流122の集中位置は、位置決め機構120によるガスノズル121の移動によって調整できるようになっている。この位置決め機構120は、信号線91を介して制御機構9によって制御されている。
図7中、符号1は、レーザ発振器であり、符号2は、パウダ供給装置であり、符号3は、パウダ供給部であり、符号6は、施工対象物であり、符号5は、レーザであり、符号8は、シールドガス流であり、符号11は、光ファイバであり、符号12は、レーザ集光部であり、符号13は、レーザ出射部であり、符号21は、パウダ供給路であり、符号31は、内ノズルであり、符号41は、パウダ流路であり、符号71は、ガス供給管であり、符号92,96,98,120は、位置決め機構であり、符号130は、パウダ供給量調整機構であり、符号131は、補充ガス供給路であり、符号135は、戻し側配管であり、符号154は、パウダ回収容器である。
【0082】
このような本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH3及び肉盛溶接方法によれば、パウダ供給装置2からのパウダ流を予めパウダ供給量調整機構130で分配してパウダ流路41(パウダ吐出部)に供給するので、パウダ供給量の迅速な制御が可能であり、より安定したパウダ供給量を得ることができる。
【0083】
また、本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH3及び肉盛溶接方法によれば、肉盛溶接に使用されないパウダを施工中に回収することができるので、パウダに無駄が生じず、肉盛溶接の歩留まりを向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態に係るレーザ加工ヘッドH3及び肉盛溶接方法によれば、ガイドガス流によって、パウダ流4がレーザ光軸上の所定の位置で集中し易くなるので、施工部に肉盛部を的確に形成することができる。
【符号の説明】
【0085】
2 パウダ供給装置
2A パウダ供給装置
2B パウダ供給装置
3 パウダ供給部
4 パウダ流
5 レーザ
6 施工対象物
7 ガス供給源
9 制御機構
13 レーザ出射部
14 照射部
21A パウダ供給路
21B パウダ供給路
22A パウダ格納部
22B パウダ格納部
41 パウダ流路(パウダ吐出部)
111 パウダ供給ノズル(パウダ吐出部)
130 パウダ供給量調整機構
130A パウダ供給量調整機構
130B パウダ供給量調整機構
134a 分岐部
135a 分岐部
141 肉盛溶接部
142 溶融プール(レーザの照射部)
150 分岐弁
151 分岐弁
152 分岐部
153 分岐部
154 パウダ回収容器
155 遮断弁
H1 レーザ加工ヘッド
H2 レーザ加工ヘッド
H3 レーザ加工ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象物にレーザを照射するレーザ出射部と、
パウダ供給装置から供給されるパウダを施工対象物のレーザの照射部に供給するパウダ供給部と、を備えるレーザ加工ヘッドにおいて、
前記パウダ供給部は、パウダを施工対象物のレーザの照射部に吐出するパウダ吐出部と、このパウダ吐出部に供給されるパウダ流の流量を予め分配することでこのパウダ吐出部に対するパウダ供給量を調整するパウダ供給量調整機構と、を有し、
前記パウダ供給量調整機構によるパウダ流の流量の分配を制御する制御機構を更に備えることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
パウダ回収容器を更に備えると共に、
前記パウダ供給量調整機構は、前記パウダ供給装置から供給されるパウダのパウダ供給路の下流側が分岐して形成される複数の分岐部と、
この複数の分岐部のうちの、少なくとも一つの分岐部と前記パウダ吐出部とを接続する供給側配管と、
この複数の分岐部のうちの、残りの分岐部と、前記パウダ回収容器とを接続する戻し側配管と、
この複数の分岐部におけるパウダ流の流量の分配率を調整する分配率調整機構と、
を有していることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記パウダ供給装置は、パウダ格納部を有していると共に、
前記パウダ供給量調整機構は、前記パウダ供給装置から供給されるパウダのパウダ供給路の下流側が分岐して形成される複数の分岐部と、
この複数の分岐部のうちの、少なくとも一つの分岐部と前記パウダ吐出部とを接続する供給側配管と、
この複数の分岐部のうちの、残りの分岐部と、前記パウダ格納部とを接続する戻し側配管と、
この複数の分岐部におけるパウダ流の流量の分配率を調整する分配率調整機構と、
を有していることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記パウダ供給量調整機構は、前記分岐部に補充ガスを送り込む補充ガス供給機構を更に有していることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項5】
施工対象物にレーザを照射するレーザ出射部と、
パウダ供給装置から供給される複数種のパウダのそれぞれを、個別に施工対象物のレーザの照射部に供給するパウダ供給部と、を備えるレーザ加工ヘッドにおいて、
前記パウダ供給部は、各パウダを個別に施工対象物のレーザの照射部に吐出する複数のパウダ吐出部と、各パウダ吐出部に供給されるパウダ流の流量を予め分配することで各パウダ吐出部に対する各パウダ供給量を調整するパウダ供給量調整機構と、を有し、
前記パウダ供給量調整機構によるパウダ流の流量の分配を制御する制御機構を更に備えることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
パウダ回収容器を更に備えると共に、
前記パウダ供給量調整機構は、前記パウダ供給装置から供給される各パウダの各パウダ供給路のそれぞれの下流側が分岐して形成される複数の分岐部と、
この複数の分岐部のうちの、少なくとも一つの分岐部と前記パウダ吐出部とを接続する供給側配管と、
この複数の分岐部のうちの、残りの分岐部と、前記パウダ回収容器とを接続する戻し側配管と、
この複数の分岐部におけるパウダ流の流量の分配率を調整する分配率調整機構と、を有していることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項7】
請求項5に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記パウダ供給装置は、パウダ格納部を有していると共に、
前記パウダ供給量調整機構は、前記パウダ供給装置から供給される各パウダの各パウダ供給路のそれぞれの下流側が分岐して形成される複数の分岐部と、
この複数の分岐部のうちの、少なくとも一つの分岐部と前記パウダ吐出部とを接続する供給側配管と、
この複数の分岐部のうちの、残りの分岐部と、前記パウダ格納部とを接続する戻し側配管と、
この複数の分岐部におけるパウダ流の流量の分配率を調整する分配率調整機構と、を有していることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記パウダ供給量調整機構は、前記分岐部に補充ガスを送り込む補充ガス供給機構を更に有していることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項9】
施工対象物にレーザ出射部からレーザを照射すると共に、パウダ供給装置から供給されるパウダを、パウダ吐出部から施工対象物のレーザの照射部に吐出して肉盛部を形成する肉盛溶接方法において、
前記パウダ吐出部に供給されるパウダ流の流量を予め分配することでこのパウダ吐出部に対するパウダ供給量を調整することを特徴とする肉盛溶接方法。
【請求項10】
請求項9に記載の肉盛溶接方法において、
前記パウダ吐出部に供給されるパウダ流の流量の分配は、
前記パウダ供給装置から供給されるパウダのパウダ供給路の下流側で前記パウダ流を分岐させて、一方の前記パウダ流を前記パウダ吐出部に向けて流通させ、他方の前記パウダ流をパウダ回収容器に向けて流通させると共に、
一方の前記パウダ流の流量と、他方の前記パウダ流の流量との分配率を調整して行うことを特徴とする肉盛溶接方法。
【請求項11】
請求項9に記載の肉盛溶接方法において、
前記パウダ吐出部に供給されるパウダ流の流量の分配は、
前記パウダ供給装置から供給されるパウダのパウダ供給路の下流側で前記パウダ流を分岐させて、一方の前記パウダ流を前記パウダ吐出部に向けて流通させ、他方の前記パウダ流を前記パウダ供給装置のパウダ格納部に向けて流通させると共に、
一方の前記パウダ流の流量と、他方の前記パウダ流の流量との分配率を調整して行うことを特徴とする肉盛溶接方法。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の肉盛溶接方法において、
前記パウダ供給装置から供給されるパウダは、キャリアガスと共に前記パウダ供給路に送り出されることを特徴とする肉盛溶接方法。
【請求項13】
請求項12に記載の肉盛溶接方法において、
分配した前記パウダ流には、補充ガスを更に加えて前記パウダ吐出部に向けて流通させることを特徴とする肉盛溶接方法。
【請求項14】
施工対象物にレーザ出射部からレーザを照射すると共に、パウダ供給装置から供給される複数種のパウダのそれぞれを、個別に複数のパウダ吐出部から施工対象物のレーザの照射部に供給して肉盛部を形成する肉盛溶接方法において、
前記各パウダ吐出部に供給されるパウダ流の流量を予め分配することで前記各パウダ吐出部に対する各パウダ供給量を調整することを特徴とする肉盛溶接方法。
【請求項15】
請求項14に記載の肉盛溶接方法において、
前記各パウダ吐出部に供給されるパウダ流の流量の分配は、
前記パウダ供給装置から供給される各パウダの各パウダ供給路の下流側で前記パウダ流を分岐させて、一方の前記パウダ流を前記パウダ吐出部に向けて流通させ、他方の前記パウダ流を前記パウダ供給装置のパウダ格納部に向けて流通させると共に、
一方の前記パウダ流の流量と、他方の前記パウダ流の流量との分配率を調整して行うことを特徴とする肉盛溶接方法。
【請求項16】
請求項14又は請求項15に記載の肉盛溶接方法において、
前記パウダ供給装置から供給されるパウダは、キャリアガスと共に前記パウダ供給路に送り出されることを特徴とする肉盛溶接方法。
【請求項17】
請求項16に記載の肉盛溶接方法において、
分配した前記パウダ流には、補充ガスを更に加えて前記パウダ吐出部に向けて流通させることを特徴とする肉盛溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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