説明

レーザ加工ヘッド

【課題】レーザ加工ヘッドを大型化することなく、被加工部の状態等をモニタリングできるようにしたレーザ加工ヘッドを提供する。
【解決手段】平行レーザ光L11にしたレーザ光L10を反射ミラー113,114により2分割し、この分割レーザ光L12a,L12bを集光レンズ群115にて被加工部Wに集光させることによりレーザ溶接を行うにあたって、集光レンズ群115により捕らえられた溶接部の光学像をイメージセンサ131上に結像する。ガイド光源132からスリット光を溶接開先に照射すると、画像処理装置140ではスリット光が溶接開先を横断する状態の画像を認識でき、溶接開先位置の認識もできる。また、イメージセンサの代わりに、プラズマの光や溶融金属の発する光を受光できるセンサを配置すれば、発光状態の認知もできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工ヘッドに関する。本発明が対象とするレーザ加工ヘッドは、レーザ光を2分割してから被加工部に集光させることによりレーザ加工(例えばレーザ溶接)を行うと共に、分割したレーザ光の間に配置した加工手段の先端加工部による加工(例えばアーク溶接)も同時に行うタイプのレーザ加工ヘッドである。
本発明では、かかるタイプのレーザ加工ヘッドにおいて、大型化することなく、被加工部の状態等をモニタリングできるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
金属同士を接合する溶接技術の一種として、レーザ溶接とアーク溶接がある。レーザ溶接では、レーザ光を光学機器により集光して高いエネルギー密度が得られることから、狭い溶融範囲において深溶け込みの溶接を行うことができる。一方、アーク溶接では、アークが比較的広範囲に広がるため、ビード幅の広い溶接となり、開先裕度の高い溶接が可能である。
【0003】
このため、近年では溶接範囲が広く且つ深溶け込みの溶接を行うことを目的として、レーザ溶接とアーク溶接とを同時に行うことができるレーザ加工ヘッドが開発されてきた。
【0004】
ここで、本願発明者が先に開発して出願し、出願公開(特開2002−59286)さたレーザ加工ヘッドの概要について、図3を参照して説明する。
【0005】
図3に示すレーザ加工ヘッド10では、外筒11内に、コリメートレンズ群12と、第1反射ミラー13と、第2反射ミラー14と、集光レンズ群15と、電極ヘッド16で保持したアーク電極17が備えられている。
【0006】
YAGレーザ発振器(図示省略)から出力されて光ファイバ20により伝送されてきたレーザ光L0は、レーザ加工ヘッド10のコリメートレンズ群12に向けて照射される。このレーザ光L0は、複数枚のレンズを直列配置して構成したコリメートレンズ群12を透過することにより、平行な平行レーザ光L1となる。
【0007】
平行レーザ光L1の一部は、第1反射ミラー13により、平行レーザ光L0の光軸に対して直交する方向に反射される。このようにして、平行レーザ光L1は、第1反射ミラー13により反射されなかった残りの分割レーザ光L2aと、第1反射ミラー13により反射された分割レーザ光L2bとに分かれる。
【0008】
分割レーザ光L2bは、第2反射ミラー14により、平行レーザ光L1及び分割レーザ光L2aの光軸に対して平行な方向に反射される。
このようにして、分割レーザ光L2aと分割レーザ光L2bとは平行で、且つ、両者間には空間(隙間)が形成される。
【0009】
分割レーザ光L2a,L2bは、複数枚のレンズを直列配置して構成された集光レンズ群15により集光され、母材Wの被溶接部に向けて集光・照射される。これにより、集光された分割レーザ光L2a,L2bによりレーザ溶接が行われる。
【0010】
電極ヘッド16により外筒11に支持されたアーク電極17は、集光レンズ15よりもワークW側で、かつ、集光されていく分割レーザ光L2aと分割レーザ光L2bとの間の空間(隙間)に配置されている。このアーク電極17により、アーク溶接が行われる。
【0011】
このようにして、このレーザ加工ヘッド10を用いることにより、レーザ溶接とアーク溶接とを同時に行うことができる。
【0012】
【特許文献1】特開2002−59286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した、レーザ溶接とアーク溶接を同時に行うことができる、または一方だけの溶接を行うことができる、加工ヘッド10において、溶接時における溶接状態等を観察したいという要望がある。
この要望を実現するには、レーザ加工ヘッド10により溶接している部分を撮影することができる撮像手段を、レーザ加工ヘッド10の横に取り付け、レーザ加工ヘッド10の移動に同期して撮像手段を移動していけばよい。
しかし、このような撮像手段を、レーザ加工ヘッド10とは別に取り付けると、装置構成が大型化する。また、レーザ加工ヘッド10の横に、撮像手段を配置した場合には、溶接の際に、撮像手段が、周囲の部材に干渉(衝突)してしまうことがあり、溶接精度や溶接効率が低下してしまうことがある。
【0014】
本発明は上記従来技術に鑑み、レーザ溶接等のレーザ加工と、アーク溶接等の加工を同時に行うレーザ加工ヘッドにおいて、装置構成を大型化することなく、被加工部の状態等をモニタリングできるレーザ加工ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明の構成は、
入力されたレーザ光を平行にして平行レーザ光として出力するコリメート光学系と、
前記コリメート光学系から出力された平行レーザ光を2分割し、2分割した2つの分割レーザ光を、互いに平行で空間的に離れた2つの分割光路に沿い個別に伝送する分割光学系と、
前記分割光学系から伝送されてきた2分割された分割レーザ光を、被加工部に集光する集光光学系と、
前記集光光学系よりも被加工部側の位置で、2分割された分割レーザ光の間の位置に占位する加工手段の先端加工部と、
前記被加工部側から発し、前記集光光学系で捕えられて、2つの前記分割光路のうちの一方の分割光路を伝播してきた光を集光させる調整光学系と、
前記調整光学系により前記光が集光される位置に配置されたセンサと、を有することを特徴とする。
【0016】
また本発明の構成は、
入力されたレーザ光を平行にして平行レーザ光として出力するコリメート光学系と、
前記コリメート光学系から出力された平行レーザ光の一部を反射することにより、反射されなかった第1の分割レーザ光と、反射された第2の分割レーザ光とに2分割する第1反射ミラーと、
第1反射ミラーにより反射された第2の分割レーザ光を更に反射して、第1の分割レーザ光と平行で且つ第1の分割レーザ光に対して空間的に離れた方向に進行させる一方、前記レーザ光の波長と異なる波長の光(可視光や、紫外光や、赤外光の一部)を透過させる第2反射ミラーと、
第1の分割レーザ光と、第2反射ミラーにて反射された第2の分割レーザ光を、被加工部に集光する集光光学系と、
前記集光光学系よりも被加工部側の位置で、第1と第2の分割レーザ光の間の位置に占位する加工手段の先端加工部と、
前記被加工部側から発し、前記集光光学系で捕えられて、前記第2の反射ミラーを透過して伝播してきた光(可視光や、紫外光や、赤外光の一部)を集光させる調整光学系と、
前記調整光学系により前記光(可視光や、紫外光や、赤外光の一部)が集光される位置に配置されたセンサと、を有することを特徴とする。
【0017】
また本発明の構成は、
入力されたレーザ光を平行にして平行レーザ光として出力するコリメート光学系と、
前記コリメート光学系から出力されて平行になった平行レーザ光を反射して、第1の分割レーザ光と第2の分割レーザ光とに2分割するビームスプリッタと、
第1の分割レーザ光を更に反射して、平行レーザ光と平行な方向に進行させる第1反射ミラーと、
第2の分割レーザ光を更に反射して、平行レーザ光と平行で且つ第1の分割レーザ光に対して空間的に離れた方向に進行させる一方、前記レーザ光の波長と異なる波長の光(可視光や、紫外光や、赤外光の一部)を透過させる第2反射ミラーと、
第1反射ミラーにて反射された第1の分割レーザ光と、第2反射ミラーにて反射された第2の分割レーザ光を、被加工部に集光する集光光学系と、
前記集光光学系よりも被加工部側の位置で、第1と第2の分割レーザ光の間の位置に占位する加工手段の先端加工部と、
前記被加工部側から発し、前記集光光学系で捕えられて、前記第2の反射ミラーを透過して伝播してきた光(可視光や、紫外光や、赤外光の一部)を集光させる調整光学系と、
前記調整光学系により前記光(可視光や、紫外光や、赤外光の一部)が集光される位置に配置されたセンサと、を有することを特徴とする。
【0018】
また本発明の構成は、
前記被加工部に向けて可視光であるガイド光を照射するガイド光源や、
前記被加工部に向けてスリット状の可視光であるガイド光を斜めに照射するガイド光源を備えていることを特徴とする。
【0019】
また本発明の構成は、
前記センサは、イメージセンサであったり、
前記センサは、光の色から温度を判定する温度センサであることを特徴とする。
【0020】
また本発明の構成は、
前記加工手段の先端加工部は、GMA電極、TIG電極、フィラワイヤ、または、ろう材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、レーザ光を2分割してから被加工部に集光させることによりレーザ加工(例えばレーザ溶接)を行うと共に、分割したレーザ光の間に配置した加工手段の先端加工部による加工(例えばアーク溶接)も同時に行うタイプのレーザ加工ヘッドにおいて、加工ヘッドの構造を大型化することなく、被加工部の状態等をモニタリングすることができる。
このため、被加工部の状態や、溶接状態や、位置制御などを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の実施例1に係るレーザ加工ヘッド110を備えたレーザ加工装置100を示す。
【0024】
実施例1に係るレーザ加工ヘッド110では、外筒111内に、コリメートレンズ群112と、第1反射ミラー113と、第2反射ミラー114と、集光レンズ群115と、ヘッド116で保持したアーク電極117と、調整光学系130と、イメージセンサ131と、ガイド光源132が備えられている。
【0025】
コリメートレンズ群112は、複数枚のレンズを直列配置して構成したものである。
第1反射ミラー113と第2反射ミラー114により、分割光学系が構成されている。第1反射ミラー113は、レーザ光(赤外光:波長が例えば1064nm)を反射するフラットミラーである。第2反射ミラー114は、レーザ光(赤外光:波長が例えば1064nm)は反射するが、このレーザ光の波長以外の波長の光、即ち、可視光(波長が例えば360nm〜830nm)及び紫外光,赤外光の一部を透過させるフラットミラーである。この第2反射ミラー114は、具体的には、石英に透明な赤外系反射コートが施されて構成されており、レーザ光に対しては全反射ミラーとして機能し、可視光に対しては透明板として機能するものである。
【0026】
集光レンズ群115は、複数枚のレンズを直列配置して構成したものである。
ヘッド116は、集光レンズ群115よりも下方側、つまり、母材(被加工部)W側に位置しており、後述する2つの分割レーザ光L12a、L12bの間の位置に占位するように配置されている。なお、アーク電極117としては、GMA(gas metal arc welding)電極やTIG(tungusten inert gas welding)電極を用いることができる。
【0027】
調整光学系130は、複数枚のレンズを直列配置して構成したものである。
イメージセンサ131は、CCD(Charge Coupled Device)により構成したものである。
ガイド光源132は、母材Wに向けて可視光であるガイド光を斜めに照射するものである。このガイド光源132は、後述する検査項目によっては使用しなくても良い場合がある。
ガイド光源132は、単なる照度を上げるためのガイド光を照射する場合と、スリット光を照射する場合とがある。
【0028】
YAGレーザ発振器121から出力されて光ファイバ120により伝送されてきたレーザ光L10は、レーザ加工ヘッド110のコリメートレンズ群112に向けて照射される。コリメートレンズ群112に入力されたレーザ光L10は、コリメートレンズ群112を透過することにより、平行な平行レーザ光L11として出力される。
【0029】
平行レーザ光L11の一部は、第1反射ミラー113により、平行レーザ光L10の光軸に対して直交する方向に反射される。このようにして、平行レーザ光L10は、第1反射ミラー113により反射されなかった第1の分割レーザ光L12aと、第1反射ミラー113により反射された第2の分割レーザ光L12bとに分かれる。
【0030】
分割レーザ光L12bは、第2反射ミラー114により更に反射されて、平行レーザ光L11及び分割レーザ光L12aの光軸に対して平行な方向に進行する。
このようにして、分割レーザ光L12aと分割レーザ光L12bとは平行で、且つ、両者間には空間(隙間)が形成される。
【0031】
分割レーザ光L12a,L12bは、集光レンズ群115により集光され、母材Wの被溶接部に向けて集光・照射される。これにより、集光された分割レーザ光L12a,L12bによりレーザ溶接が行われる。
【0032】
ヘッド116により外筒111に支持されたアーク電極117は、集光レンズ115よりもワークW側で、かつ、集光されていく分割レーザ光L12aと分割レーザ光L12bとの間の空間(隙間)に配置されている。このアーク電極117により、アーク溶接が行われる。
【0033】
このようにして、このレーザ加工ヘッド110を用いることにより、レーザ溶接とアーク溶接とを同時に行うことができる。
なお、アーク電極117の代わりに、筒状のヘッド116からフィラワイヤや、ろう材を供給して、フィラ溶接やロウ付けをすることもできる。
【0034】
母材Wの被加工部分から発した光(光学像)は、集光レンズ115にて捕らえられ、反射ミラー114を透過して調整光学系130に伝播してくる。この光(光学像)は、調整光学系130にてイメージセンサ131上に集光(結像)される。このため、イメージセンサ131では、母材Wの被加工部分の画像を光電変換して画像信号Sとして出力する。
なお、集光レンズ系115から第2反射ミラー114に至る光学経路を、請求項1では「一方の分割光路」と称している。
【0035】
画像処理装置140は、画像信号Sを信号処理して、モニタ141上に、母材Wの被加工部分(つまり、集光レンズ115にて捕らえた画像)を映し出す。
【0036】
このとき、操作者が、モニタ141に映し出された画像を目視認識することにより、例えば溶接加工する前における、被加工部分の状態を観察することができる。
また溶接が完了した後に、溶接完了した部位(溶接が完了した溶接線)に沿いレーザ加工ヘッド110を移動させていけば、溶接完了した部位の状態(肉盛り状態)などを、モニタ141に映し出して目視確認することもできる。
【0037】
また画像処理装置140にて画像処理した結果をもとに、制御装置142では、レーザ加工ヘッド110と母材Wとの位置関係を認識し、溶接開始前における位置合わせをするように、レーザ加工ヘッド110の位置制御をすることもできる。
【0038】
なお、被加工部分が暗い場合には、ガイド光源132から照度をあげるために照明用のガイド光(可視光)を母材Wに向けて照射するようにしてもよい。
【0039】
またガイド光源132からスリット光(可視光)を母材Wの被加工部分である溶接開先を横断する状態で当てると、溶接開先にスリット光が横断した状態の画像が、集光レンズ115,第2反射ミラー114及び調整光学系130を介してイメージセンサ131に結像される。このため、溶接開先にスリット光が横断した状態の画像を示す画像信号Sが画像処理装置140に送られる。
【0040】
このとき画像処理装置140では、溶接開先にスリット光が横断した状態の画像を画像処理することにより、三角測量の原理を応用して、溶接開先の位置を検出することができる。なお、この位置検出手法は周知技術であるので、その詳細説明は省略する。
レーザ加工ヘッド110を溶接開先(溶接線)に沿って移動させていくときに、このような処理を連続的に行うことにより、画像処理装置140は溶接線位置を認識できる。画像処理装置140にて認識した溶接線位置をもとに、制御装置142では、レーザ加工ヘッド110が溶接線位置に沿って移動するように、倣い制御をすることができる。
【0041】
また画像処理装置140では、画像の色ならびに色分布を処理・検出することにより、例えば溶接中における、溶融池の温度状態やプラズマ発光の温度状態などを判定することもできる。
【0042】
さらに、イメージセンサ131の代わりに、光の色から温度を判定する温度センサを取り付け、この温度センサの検出結果をもとに、母材Wの温度状況を判定・検出することもできる。
さらに、イメージセンサ131の代わりに、プラズマから発光する紫外光等を検知する強度センサを取り付けることで溶接状況を判定することもできる。又、加工に使用するレーザの反射光を検知するセンサを取り付けることで溶接加工状態を判定することもできる。
【0043】
実施例1のレーザ加工ヘッド110では、レーザ溶接とアーク溶接が同時にできるようにするためレーザ光を一旦2分割した後に集光している。このような構成になっている実施例1のレーザ加工ヘッド110では、第2反射ミラー114の上方位置が光学的・空間的に余裕があるので、この位置に調整光学系130やイメージセンサ131を配置した。このため、レーザ加工ヘッド110の大型化を招来することなく、被溶接部分の画像認識などのモニタリングを行うことができる。
【実施例2】
【0044】
図2は本発明の実施例2に係るレーザ加工ヘッド210を備えたレーザ加工装置200を示す。
【0045】
実施例2に係るレーザ加工ヘッド210では、外筒211内に、コリメートレンズ群212と、ビームスプリッタ218と、第1反射ミラー213と、第2反射ミラー214と、集光レンズ群215と、ヘッド216で保持したアーク電極217と、調整光学系230と、イメージセンサ231と、ガイド光源232が備えられている。
【0046】
コリメートレンズ群212は、複数枚のレンズを直列配置して構成したものである。
ビームスプリッタ218は、レーザ光を2分割する機能をする光学素子である。
第1反射ミラー213と第2反射ミラー214により、分割光学系が構成されている。第1反射ミラー213は、レーザ光(赤外光:波長が例えば1064nm)を反射するフラットミラーである。第2反射ミラー214は、レーザ光(赤外光:波長が例えば1064nm)は反射するが、このレーザ光の波長以外の波長の光、即ち、可視光(波長が例えば360nm〜830nm)及び紫外光,赤外光の一部を透過させるフラットミラーである。この第2反射ミラー214は、具体的には、石英に透明な赤外系反射コートが施されて構成されており、レーザ光に対しては全反射ミラーとして機能し、可視光に対しては透明板として機能するものである。
【0047】
集光レンズ群215は、複数枚のレンズを直列配置して構成したものである。
ヘッド216は、集光レンズ群215よりも下方側、つまり、母材(被加工部)W側に位置しており、後述する2つの分割レーザ光L22a、L22bの間の位置に占位するように配置されている。なお、アーク電極217としては、GMA(gas metal arc welding)電極やTIG(tungusten inert gas welding)電極を用いることができる。
【0048】
調整光学系230は、複数枚のレンズを直列配置して構成したものである。
イメージセンサ231は、CCD(Charge Coupled Device)により構成したものである。
ガイド光源232は、母材Wに向けて可視光であるガイド光を斜めに照射するものである。このガイド光源232は、後述する検査項目によっては使用しなくても良い場合がある。
ガイド光源232は、単なる照度を上げるためのガイド光を照射する場合と、スリット光を照射する場合とがある。
【0049】
YAGレーザ発振器221から出力されて光ファイバ220により伝送されてきたレーザ光L20は、レーザ加工ヘッド210のコリメートレンズ群212に向けて照射される。コリメートレンズ群212に入力されたレーザ光L20は、コリメートレンズ群212を透過することにより、平行な平行レーザ光L21として出力される。
【0050】
平行レーザ光L21は、ビームスプリッタ218により、平行レーザ光L21の光軸に対して直交する方向で、互いに進行方向が逆向きの、第1の分割レーザ光L22aと第1の分割レーザ光L22bに2分割される。
【0051】
第1反射ミラー213に向かって進行していった分割レーザ光L22aは、第1反射ミラー213により更に反射されて、平行レーザ光L21の光軸に対して平行な方向に進行する。
第2反射ミラー214に向かって進行していった分割レーザ光L22bは、第2反射ミラー214により更に反射されて、平行レーザ光L21の光軸に対して平行な方向に進行する。
このようにして、分割レーザ光L22aと分割レーザ光L22bとは平行で、且つ、両者間には空間(隙間)が形成される。
【0052】
分割レーザ光L22a,L22bは、集光レンズ群215により集光され、母材Wの被溶接部に向けて集光・照射される。これにより、集光された分割レーザ光L22a,L22bによりレーザ溶接が行われる。
【0053】
ヘッド216により外筒211に支持されたアーク電極217は、集光レンズ215よりもワークW側で、かつ、集光されていく分割レーザ光L22aと分割レーザ光L22bとの間の空間(隙間)に配置されている。このアーク電極217により、アーク溶接が行われる。
【0054】
このようにして、このレーザ加工ヘッド210を用いることにより、レーザ溶接とアーク溶接とを同時に行うことができる。
なお、アーク電極217の代わりに、筒状のヘッド216からフィラワイヤや、ろう材を供給して、フィラ溶接やロウ付けをすることもできる。
【0055】
母材Wの被加工部分から発した光(光学像)は、集光レンズ215にて捕らえられ、反射ミラー214を透過して調整光学系230に伝播してくる。この光(光学像)は、調整光学系230にてイメージセンサ231上に集光(結像)される。このため、イメージセンサ231では、母材Wの被加工部分の画像を光電変換して画像信号Sとして出力する。
なお、集光レンズ系215から第2反射ミラー214に至る光学経路を、請求項1では「一方の分割光路」と称している。
【0056】
画像処理装置240は、画像信号Sを信号処理して、モニタ241上に、母材Wの被加工部分(つまり、集光レンズ215にて捕らえた画像)を映し出す。
【0057】
このとき、操作者が、モニタ241に映し出された画像を目視認識することにより、例えば溶接加工する前における、被加工部分の状態を観察することができる。
また溶接が完了した後に、溶接完了した部位(溶接が完了した溶接線)に沿いレーザ加工ヘッド210を移動させていけば、溶接完了した部位の状態(肉盛り状態)などを、モニタ241に映し出して目視確認することもできる。
【0058】
また画像処理装置240にて画像処理した結果をもとに、制御装置242では、レーザ加工ヘッド210と母材Wとの位置関係を認識し、溶接開始前における位置合わせをするように、レーザ加工ヘッド210の位置制御をすることもできる。
【0059】
なお、被加工部分が暗い場合には、ガイド光源232から照度をあげるために照明用のガイド光(可視光)を母材Wに向けて照射するようにしてもよい。
【0060】
またガイド光源232からスリット光(可視光)を母材Wの被加工部分である溶接開先を横断する状態で当てると、溶接開先にスリット光が横断した状態の画像が、集光レンズ215,第2反射ミラー214及び調整光学系230を介してイメージセンサ231に結像される。このため、溶接開先にスリット光が横断した状態の画像を示す画像信号Sが画像処理装置240に送られる。
【0061】
このとき画像処理装置240では、溶接開先にスリット光が横断した状態の画像を画像処理することにより、三角測量の原理を応用して、溶接開先の位置を検出することができる。なお、この位置検出手法は周知技術であるので、その詳細説明は省略する。
レーザ加工ヘッド210を溶接開先(溶接線)に沿って移動させていくときに、このような処理を連続的に行うことにより、画像処理装置240は溶接線位置を認識できる。画像処理装置240にて認識した溶接線位置をもとに、制御装置242では、レーザ加工ヘッド210が溶接線位置に沿って移動するように、倣い制御をすることができる。
【0062】
また画像処理装置240では、画像の色ならびに色分布を処理・検出することにより、例えば溶接中における、溶融池の温度状態やプラズマ発光の温度状態などを判定することもできる。
【0063】
さらに、イメージセンサ231の代わりに、光の色から温度を判定する温度センサを取り付け、この温度センサの検出結果をもとに、母材Wの温度状況を判定・検出することもできる。
さらに、イメージセンサ231の代わりに、プラズマから発光する紫外光等を検知する強度センサを取り付けることで溶接状況を判定することもできる。又、加工に使用するレーザの反射光を検知するセンサを取り付けることで溶接加工状態を判定することもできる。
【0064】
実施例2のレーザ加工ヘッド210では、レーザ溶接とアーク溶接が同時にできるようにするためレーザ光を一旦2分割した後に集光している。このような構成になっている実施例2のレーザ加工ヘッド210では、第2反射ミラー214の上方位置が光学的・空間的に余裕があるので、この位置に調整光学系230やイメージセンサ231を配置した。このため、レーザ加工ヘッド210の大型化を招来することなく、被溶接部分の画像認識などのモニタリングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例1に係るレーザ加工ヘッドを示す構成図。
【図2】本発明の実施例2に係るレーザ加工ヘッドを示す構成図。
【図3】従来のレーザ加工ヘッドを示す構成図。
【符号の説明】
【0066】
100,200 レーザ加工装置
110,210 レーザ加工ヘッド
111,211 外筒
112,212 コリメートレンズ群
113,213 第1反射ミラー
114,214 第2反射ミラー
115,215 集光レンズ群
116,216 ヘッド
117,217 アーク電極
218 ビームスプリッタ
120,220 光ファイバ
121,221 YAGレーザ発振器
130,230 調整光学系
131,231 イメージセンサ
132,232 ガイド光源
140,240 画像処理装置
141,241 モニタ
142,242 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたレーザ光を平行にして平行レーザ光として出力するコリメート光学系と、
前記コリメート光学系から出力された平行レーザ光を2分割し、2分割した2つの分割レーザ光を、互いに平行で空間的に離れた2つの分割光路に沿い個別に伝送する分割光学系と、
前記分割光学系から伝送されてきた2分割された分割レーザ光を、被加工部に集光する集光光学系と、
前記集光光学系よりも被加工部側の位置で、2分割された分割レーザ光の間の位置に占位する加工手段の先端加工部と、
前記被加工部側から発し、前記集光光学系で捕えられて、2つの前記分割光路のうちの一方の分割光路を伝播してきた光を集光させる調整光学系と、
前記調整光学系により前記光が集光される位置に配置されたセンサと、
を有することを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項2】
入力されたレーザ光を平行にして平行レーザ光として出力するコリメート光学系と、
前記コリメート光学系から出力された平行レーザ光の一部を反射することにより、反射されなかった第1の分割レーザ光と、反射された第2の分割レーザ光とに2分割する第1反射ミラーと、
第1反射ミラーにより反射された第2の分割レーザ光を更に反射して、第1の分割レーザ光と平行で且つ第1の分割レーザ光に対して空間的に離れた方向に進行させる一方、前記レーザ光の波長と異なる波長の光を透過させる第2反射ミラーと、
第1の分割レーザ光と、第2反射ミラーにて反射された第2の分割レーザ光を、被加工部に集光する集光光学系と、
前記集光光学系よりも被加工部側の位置で、第1と第2の分割レーザ光の間の位置に占位する加工手段の先端加工部と、
前記被加工部側から発し、前記集光光学系で捕えられて、前記第2の反射ミラーを透過して伝播してきた光を集光させる調整光学系と、
前記調整光学系により前記光が集光される位置に配置されたセンサと、
を有することを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項3】
入力されたレーザ光を平行にして平行レーザ光として出力するコリメート光学系と、
前記コリメート光学系から出力されて平行になった平行レーザ光を反射して、第1の分割レーザ光と第2の分割レーザ光とに2分割するビームスプリッタと、
第1の分割レーザ光を更に反射して、平行レーザ光と平行な方向に進行させる第1反射ミラーと、
第2の分割レーザ光を更に反射して、平行レーザ光と平行で且つ第1の分割レーザ光に対して空間的に離れた方向に進行させる一方、前記レーザ光の波長と異なる波長の光を透過させる第2反射ミラーと、
第1反射ミラーにて反射された第1の分割レーザ光と、第2反射ミラーにて反射された第2の分割レーザ光を、被加工部に集光する集光光学系と、
前記集光光学系よりも被加工部側の位置で、第1と第2の分割レーザ光の間の位置に占位する加工手段の先端加工部と、
前記被加工部側から発し、前記集光光学系で捕えられて、前記第2の反射ミラーを透過して伝播してきた光を集光させる調整光学系と、
前記調整光学系により前記光が集光される位置に配置されたセンサと、
を有することを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項において、
前記被加工部に向けて可視光であるガイド光を照射するガイド光源を備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れか一項において、
前記被加工部に向けてスリット状の可視光であるガイド光を斜めに照射するガイド光源を備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項において、
前記センサは、イメージセンサであることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5の何れか一項において、
前記センサは、光の色から温度を判定する温度センサであることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一項において、
前記加工手段の先端加工部は、GMA電極、TIG電極、フィラワイヤ、または、ろう材であることを特徴とするレーザ加工ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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