説明

レーザ加工方法、レーザ加工装置及びソーラパネル製造方法

【課題】レーザ発生装置から出射したレーザ光を加工の影響なく同じものとして加工位置まで分岐導入すると共にレーザ発生装置の交換に伴う光学系の調整を容易に行なえるようにする。
【解決手段】レーザ発生装置から出射したレーザ光を加工位置まで導入するのに光ファイバガイドを用い、分岐後のレーザ光を光ファイバガイドで加工位置まで導入するようにした。光ファイバガイドは、フレキシブルに変形可能なので、レーザ光を加工位置まで容易に導入することができる。また、レーザ光の分岐光学系をレーザ発生装置の直後に設けてあるので、レーザ発生装置を交換する場合に、光ファイバガイドのレーザ光入射部とレーザ発生装置との光軸を調整すると共に分岐光学系を同時に調整するだけでよくなり、レーザ発生装置交換に伴う光学系の調整が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いて薄膜等を加工するレーザ加工方法、レーザ加工装置及びソーラパネル製造方法に係り、特にレーザ光を複数に分岐して加工を行なうレーザ加工方法、レーザ加工装置及びソーラパネル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソーラパネルの製造工程では、透光性基板(ガラス基板)上に透明電極層、半導体層、金属層を順次形成し、形成後の各工程で各層をレーザ光で短冊状に加工してソーラパネルモジュールを完成している。このようにしてソーラパネルモジュールを製造する場合、ガラス基板上の薄膜に例えば約10mmピッチでレーザ光でスクライブ線を形成している。このスクライブ線の線幅は約30μmで、線と線の間隔は約30μmとなるような3本の線で構成されている。レーザ光でスクライブ線を形成する場合、通常は定速度で移動するガラス基板上にレーザ光を照射していた。これによって、深さ及び線幅の安定したスクライブ線を形成することが可能であった。このようなレーザ光を用いた加工方法においてレーザ光を複数に分岐して加工を行なうものについては、特許文献1に記載のようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−141929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のレーザ加工方法では、1本のレーザ光を位相格子を用いて複数のレーザ光に分岐し、分岐された複数のレーザ光をワークに照射している。また、同時に照射される複数のレーザ光の分岐方向とレーザ光の走査方向とのなす角度θを大きくして、照射エリアの幅を狭くしていき、複数の照射を繋げて、幅広の除去部を形成している。しかし、特許文献1に記載のレーザ加工方法では、位相格子を用いてレーザ光を分岐しているので、分岐されたレーザ光間のピッチ幅を約10mm程度とすることは非常に困難であり、ソーラパネルの製造工程に特許文献1の記載の技術を応用することは困難であった。
【0005】
そこで、本願出願人は、レーザ発生装置から出射されるレーザ光を複数のハーフミラー、反射ミラー及び偏光ミラーなどを用いてピッチ幅が約50〜100mm程度のレーザ光に分岐するように構成したレーザ加工装置について複数の出願を行なっている。これらの出願では、分岐光路内でレーザ光を分岐しているが、分岐ヘッド毎のパワーにバラツキが存在することが判明している。これは、ミラー等の部品やこれを調整するための無偏光クォーツガラスなどの個体差が原因である。また、寿命によってレーザ発生装置を交換しなければならない場合があるが、レーザ発生装置の交換に応じて分岐光学系全体の調整が必要となり、それに多大の時間を要するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上述の点に鑑みてなされたものであり、レーザ発生装置から出射したレーザ光を加工に影響なく同じものとして加工位置まで分岐導入することができ、レーザ発生装置の交換に伴う光学系の調整を容易に行なえるレーザ加工方法、レーザ加工装置及びソーラパネル製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレーザ加工方法の第1の特徴は、レーザ発生手段から出射されるレーザ光を複数のレーザ光に分岐し、分岐された複数のレーザ光をワークに対して相対的に移動させながら照射することによってワークに所定のレーザ加工を施すレーザ加工方法において、前記レーザ発生手段から出射した前記レーザ光を前記レーザ加工の行なわれる位置まで導入する手段として光ファイバガイド手段を用いたことにある。
レーザ光による加工は、レーザ発生装置から出射されたレーザ光をガラス基板の表面に略垂直に照射して、ガラス基板上の薄膜を加工することによって行なわれる。従来は、レーザ発生手段から出射したレーザ光をその加工位置まで反射ミラー等を用いて導入していたが、この発明では、レーザ発生手段から出射したレーザ光を加工位置まで導入するのに光ファイバガイド手段を用いるようにした。光ファイバガイド手段は、フレキシブルに変形可能なので、レーザ光を加工位置まで容易に導入することができる。また、レーザ発生装置を交換した場合には、光ファイバガイド手段のレーザ光入射部とレーザ発生装置との光軸を調整するだけで途中の光学系を調整する必要がないので、予め分岐光学系側の調整が可能となり、レーザ発生装置交換に伴う光学系の調整が容易になるという効果がある。
【0008】
本発明に係るレーザ加工方法の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のレーザ加工方法において、前記レーザ発生手段から出射した前記レーザ光を分岐した後に前記光ファイバガイド手段を用いてレーザ加工の行なわれる位置まで導入することにある。これは、光ファイバガイド手段にレーザ光を導入する場合に、レーザ光を分岐してから分岐後の各レーザ光を光ファイバガイド手段で加工位置まで導入するようにしたものである。すなわち、レーザ光の分岐光学系をレーザ発生手段の直後に設け、分岐後のレーザ光を光ファイバガイド手段を用いて加工位置に導入するようにしたことによって、レーザ発生手段の交換と同時に分岐光学系の調整を容易に行なうことができる。
【0009】
本発明に係るレーザ加工装置の第1の特徴は、レーザ発生手段から出射されるレーザ光を複数のレーザ光に分岐し、分岐された複数のレーザ光を保持手段に保持されたワークに対して相対的に移動させながら照射することによってワークに所定の加工を施すレーザ加工装置において、前記レーザ発生手段から出射した前記レーザ光を前記レーザ加工の行なわれる位置まで導入する手段として光ファイバガイド手段を用いたことにある。これは、前記レーザ加工方法の第1の特徴に対応したレーザ加工装置の発明である。
【0010】
本発明に係るレーザ加工装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ発生手段から出射した前記レーザ光を分岐する第1の分岐光学系手段と、前記第1の分岐光学系手段によって分岐された前記レーザ光を個々に前記レーザ加工の行なわれる位置まで導入する光ファイバガイド手段群と、前記光ファイバガイド手段を介して導入された前記レーザ光を前記ワークに対して照射する第2の分岐光学系手段とを備えたことにある。これは、前記レーザ加工方法の第2の特徴に対応したレーザ加工装置の発明である。
【0011】
本発明に係るソーラパネル製造方法の特徴は、前記第1若しくは第2の特徴に記載のレーザ加工方法、又は前記第1若しくは第2の特徴に記載のレーザ加工装置を用いて、ソーラパネルを製造することにある。これは、前記レーザ加工方法、又は前記レーザ加工装置のいずれか1を用いて、ソーラパネルを製造するようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レーザ発生装置から出射したレーザ光を加工に影響なく同じものとして加工位置まで分岐導入することができるという効果がある。
また、本発明によれば、レーザ発生装置の交換に伴う光学系の調整を容易に行なうことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す図である。
【図2】スクライブ線の加工処理を行う図1の加工エリア部の詳細構成を示す図である。
【図3】図2の分岐光学系部材の詳細構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す図である。このレーザ加工装置は、ソーラパネル製造装置のレーザ光加工処理(レーザスクライブ)工程を行なうものである。本発明に係るレーザ加工装置は、アライメント処理を行うアライメント部をレーザ加工ステーションの両側2箇所に設けて、レーザ加工処理中に同時にアライメント処理を行い、待ち時間を短縮できるように構成されたものである。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置を用いたソーラパネル(光電変換装置)製造装置の概略構成を示す図であり、リターン方式の一例を示す図である。この製造装置は、搬入出ロボットステーション141とレーザ加工ステーション10とから構成される。ローラコンベア121は、成膜装置(図示せず)やレーザスクライブ加工処理を行う製造装置間でガラス基板1x〜1zを順次搬送するものである。搬入出ロボットステーション141は、ローラコンベア121上を搬送される前段の成膜装置(図示せず)にて成膜されたガラス基板1xを搬入してガラス基板1mとして一時的に保持すると共にガラス基板1mの表裏を反転する表裏反転機構部143を備えており、レーザ加工処理の内容(スクライブ線P1加工、P2加工又はP3加工)及びガラス基板1mが膜面の加工方向により反り方向が変わるように、ガラス基板1mを表裏反転してレーザ加工ステーション10に搬送する。このとき、搬入出ロボットステーション141は、表裏反転された又は表裏反転されなかったガラス基板1mをそのままレーザ加工ステーション10に搬送すると共に表裏反転された又は表裏反転されなかったガラス基板1mをレーザ加工ステーション10の右端位置までローラ搬送してからレーザ加工ステーション10に搬送するように構成されている。また、搬入出ロボットステーション141は、レーザ加工ステーション10で加工されたガラス基板を表裏反転機構部143で直接受取るか又はレーザ加工ステーション10の右端位置で受け取ったガラス基板1rを表裏反転機構部143までローラ搬送又はエア浮上搬送し、表裏反転機構部143でレーザ加工処理後のガラス基板を表裏反転して又は表裏反転せずにローラコンベア121に搬出する。
【0016】
レーザ加工ステーション10は、搬入出ロボットステーション141から搬入されたガラス基板上の薄膜にスクライブ線を形成するものであり、アライメント部102,104、グリッパ部106〜109、グリッパ支持駆動部110,111、加工エリア部112を備えている。アライメント部102は、搬入出ロボットステーション141の表裏反転機構部143上のガラス基板1mを受取り、受け取ったガラス基板1nを所定の位置にアライメント処理すると共に加工エリア部112でスクライブ加工処理の施されたガラス基板1nを搬入出ロボットステーション141の表裏反転機構部143に搬出する。一方、アライメント部104は、搬入出ロボットステーション141の表裏反転機構部143で表裏反転された又は表裏反転されなかったガラス基板であって右端までローラ搬送又はエア浮上搬送されたガラス基板1rを受取り、受け取ったガラス基板を所定の位置にアライメント処理すると共に加工エリア部112でスクライブ加工処理の施されたガラス基板1qを搬入出ロボットステーション141の右端の位置に搬出する。
【0017】
グリッパ部106は、アライメント部102でアライメント処理されたガラス基板1oの搬送方向に沿った辺の一方側(図1におけるガラス基板1oの下辺側)保持し、グリッパ部107は、同じガラス基板1oの搬送方向に沿った辺の他方側(図1におけるガラス基板1oの上辺側)を保持する。グリッパ部108は、アライメント部104でアライメント処理されたガラス基板1qの搬送方向に沿った辺の一方側(図1におけるガラス基板1qの下辺側)を保持し、グリッパ部107は、同じガラス基板1qの搬送方向に沿った辺の他方側(図1におけるガラス基板1qの上辺側)を保持する。グリッパ支持駆動部110,111は、グリッパ部106,107又はグリッパ部108,109に保持されたガラス基板1o,1qを加工エリア部112のレーザ光に同期させてし、レーザ加工時にガラス基板1oと点線のガラス基板1pとの間を移動させる。この移動に同期させて加工エリア部112は、グリッパ部106,107又はグリッパ部108,109に保持されエア浮上搬送されるガラス基板1o,1qにレーザ光を照射して所定のスクライブ線の加工処理を行う。図1では、グリッパ部106,107に保持されたガラス基板1oを点線で示されたガラス基板1qの位置までエア浮上した状態で移動させながら、所定のスクライブ線加工を行う状態が示してある。
【0018】
図1のリターン方式のソーラパネル製造装置の動作の一例を説明する。まず、前段の成膜装置からローラコンベア121を介して搬送されて来たガラス基板1xは、搬入出ロボットステーション141によって表裏反転機構部143上にガラス基板1mとして一時的に保持され、そこで表裏反転されるか又は表裏反転されない。表裏反転された又は表示反転されなかったガラス基板1mは、レーザ加工ステーション10のアライメント部102に搬送され、そこでアライメント処理される。アライメント処理されたガラス基板1nは、グリッパ部106,107に保持され、ガラス基板1o,1pとして加工エリア部112にエア浮上移動され、所定のスクライブ線の加工処理が行われる。一方、アライメント部102のアライメント処理時及び加工エリア部112の加工処理時に、ローラコンベア121を介して搬送されて来た次のガラス基板1yが搬入出ロボットステーション141によって表裏反転機構部143上にガラス基板1mとして一時的に保持され、そこで表裏反転されるか又は表裏反転されない。表裏反転された又は表裏反転されなかったガラス基板1mは、ガラス基板1rとして、レーザ加工ステーション10のアライメント部104に対応した右端位置までローラ搬送される。ガラス基板1rは、レーザ加工ステーション10のアライメント部104に搬送され、そこでアライメント処理される。アライメント処理されたガラス基板1qは、グリッパ部108,109に保持され、グリッパ部106,107に保持されエア浮上搬送されたガラス基板への加工処理が終了するまで待機される。
【0019】
グリッパ部106,107に保持されているガラス基板に対するレーザ加工処理が終了すると、グリッパ部106,107に保持されているガラス基板1oは、アライメント部102を介してガラス基板1nの位置から表裏反転機構部143上のガラス基板1mとして一時的に保持され、そこで表裏反転されて又は表裏反転されずに次段の成膜装置へ搬送されるために、ローラコンベア121上に搬送される。一方、グリッパ部106,107に保持されているガラス基板1oがアライメント部102上にガラス基板1nとしてエア浮上移動した時点で、グリッパ部108,109に保持されているガラス基板1qがガラス基板1o,1pとして加工エリア部112にエア浮上移動され、所定のスクライブ線の加工処理が行われる。図1のリターン方式のソーラパネル製造装置では、以上の処理を交互に繰り返すことによって、アライメント処理による待ち時間等を大幅に短縮している。また、いずれか一方のアライメント部が故障した場合でも、他方のアライメント部によって処理を続行することが可能となる。
【0020】
図2は、スクライブ線の加工処理を行う図1の加工エリア部の詳細構成を示す図である。加工エリア部は、レーザ加工ステーション10、エア浮上ステージ20、スライドフレーム30、レーザ発生装置40、分岐光学系部材50,60、リニアエンコーダ70及び制御装置80によって構成されている。
【0021】
図1において、レーザ加工ステーション10の大部分にエア浮上ステージ20が設けられているが、図2では、その一部分のみが示してある。エア浮上ステージ20の上側にはレーザ加工の対象となるガラス基板1がグリッパ部106,107によって、X軸方向に移動可能に保持制御されている。また、レーザ加工ステーション10の上方には分岐光学系部材50,60を保持し、分岐光学系部材60をY軸方向にスライド駆動するスライドフレーム30が設けられている。エア浮上ステージ20は、Z軸を回転軸としてθ方向に回転可能に構成されている。なお、スライドフレーム30によりY軸方向の移動量が十分に確保できる場合には、エア浮上ステージ20は、X軸方向の移動だけを行なう構成であってもよい。この場合、エア浮上ステージ20はX軸テーブルの構成でもよい。また、図2では、アライメント部102,104については図示を省略してある。
【0022】
スライドフレーム30は、レーザ加工ステーション10上の四隅に設けられた移動台に取り付けられている。スライドフレーム30は、この移動台によってY軸方向へ移動制御される。ベース板31と移動台との間には除振部材(図示せず)が設けられている。スライドフレーム30のベース板31には、レーザ発生装置40、分岐光学系部材50,60及び制御装置80が設置されている。レーザ発生装置40から照射したレーザ光は、光量調整を行うアッテネータ42と、偏光方向を合わせることにより、外部又は反射によるノイズ光を除去する光アイソレータ44を介して分岐光学系部材50に導かれる。
【0023】
分岐光学系部材50は、ミラーやレンズの組み合わせで構成され、レーザ発生装置40で発生したレーザ光を4系列に分割する。分岐光学系部材50と分岐光学系部材60との間は配線配置がフレキシブルな光ファイバガイドによって接続されており、分岐光学系部材50で分割されたレーザ光はそれぞれ光ファイバガイドを介して分岐光学系部材60に導かれる。分岐光学系部材60は、レンズの組み合わせで構成され、エア浮上ステージ20上のガラス基板1上にレーザ光を導くものである。分岐光学系部材60は、図2に示すように、ベース板31の側面側に設けられており、ベース板31の側面に沿ってY軸方向に移動するように構成されている。分岐光学系部材60は、先端部がZ軸を中心に回転可能となっている。なお、レーザ光の分割数は4系列に限るものではなく、2系列以上であればいくつでもよい。
【0024】
リニアエンコーダ70は、エア浮上ステージ20のX軸移動テーブルの側面に設けられたスケール部材と、グリッパ部106,107に取り付けられた検出部で構成される。リニアエンコーダ70の検出信号は、制御装置80に出力される。制御装置80は、リニアエンコーダ70からの検出信号に基づいてグリッパ部106,107のX軸方向の移動速度(移動周波数)を検出し、レーザ発生装置40の出力(レーザ周波数など)を制御する。
【0025】
図3は、図2の分岐光学系部材の詳細構成を示す図である。実際の分岐光学系部材50,60の構成は複雑なので、ここでは説明を簡単にするために図示を簡略化して示している。図3において、分岐光学系部材50は図2の上から見た内部構造を示し、分岐光学系部材60は図2の−X軸方向から見た内部構造を示す。図3に示すように分岐光学系部材50のレーザ発生装置40側にはアッテネータ42及び光アイソレータ44を介して入射するレーザ光を内部に導入するための貫通穴が設けられている。
【0026】
分岐光学系部材50は、ハーフミラー511〜513、反射ミラー521〜523、シャッター機構531〜534及び集光レンズ541〜544から構成される。分岐光学系部材50の筐体側面に設けられた貫通穴を介して入射したレーザ光は、ハーフミラー511によって反射ビームと透過ビームにそれぞれ分岐され、反射ビームは左方向のハーフミラー512に向かって、透過ビームは下方向の反射ミラー521に向かって進む。ハーフミラー511を透過したビームは反射ミラー521によって反射され、右方向に進み、ハーフミラー513によって反射ビームと透過ビームに分岐される。ハーフミラー513を透過した透過ビームは反射ミラー523によって反射され、下方向のシャッター機構531及び集光レンズ541側に向い、集光レンズ541によって集光されたレーザ光は光ファイバガイド561に導入される。一方、ハーフミラー513によって反射された反射ビームは下方向のシャッター機構532及び集光レンズ542に向い、集光レンズ542によって集光されたレーザ光は光ファイバガイド562に導入される。
【0027】
ハーフミラー511によって反射したビームは左方向に進み、ハーフミラー512によって反射ビームと透過ビームに分岐される。ハーフミラー512によって反射された反射ビームは下方向のシャッター機構533及び集光レンズ543に向い、集光レンズ543によって集光されたレーザ光は光ファイバガイド563に導入される。ハーフミラー512を透過した透過ビームは反射ミラー522によって反射され、下方向のシャッター機構534及び集光レンズ544側に向い、集光レンズ544によって集光されたレーザ光は光ファイバガイド564に導入される。貫通穴を介して入射したレーザ光は、ハーフミラー511〜513及び反射ミラー521〜523によって、透過・反射されて集光レンズ541〜544に導かれる。シャッター機構531〜534は、分岐光学系部材50の各集光レンズ541〜544から出射されるレーザ光の出射状態を遮蔽するものである。このとき、貫通穴から各集光レンズ541〜544までの光路長は等しくなるように構成されていること、又はロスによる影響を考慮した構成とすることが好ましい。
【0028】
分岐光学系部材50によってそれぞれ均等に分割されたレーザ光は、光ファイバガイド561〜564によって、加工箇所に位置する分岐光学系部材60に導かれる。分岐光学系部材60は、集光レンズ611〜614、光アイソレータ621〜624及び集光レンズ631〜634から構成される。集光レンズ611〜614は、光ファイバガイド561〜564から出射するレーザ光を平行光に集光する。光アイソレータ621〜624は、加工位置や途中で反射して戻って来るレーザ光が光ファイバガイド561〜564側に偏光方向を利用して、戻るのを阻止するものである。集光レンズ631〜634は、レーザ発生装置40から発生された波長1064[nm]の加工用のレーザ光をそれぞれの加工位置に照射するものである。これらの集光レンズ611〜614、光アイソレータ621〜624及び集光レンズ631〜634は、それぞれの光軸に沿って上下方向に駆動制御される筐体601〜604内に収納されている。
【0029】
なお、図示していないが、各筐体601〜604には、検出光照射用レーザとオートフォーカス用フォトダイオードとから構成されるオートフォーカス用測長システムが搭載されており、検出光照射用レーザから照射された光の中でガラス基板1の表面から反射した反射光を受光し、その反射光量に応じて筐体601〜604を上下に駆動し、ガラス基板1に対する個々の集光レンズ631〜634の高さを調整する。なお、筐体601〜604を個々に駆動するフォーカス調整用駆動機構については図示を省略してある。また、図示していないが、光学系部材60は、先端部がZ軸を中心に回転可能となっている。このように光学系部材60の回転角度を適宜調整することによって、スクライブ線のピッチ幅を所望の値に適宜可変調整することができる。このとき、フレキシブルな光ファイバガイドを用いているので回転を容易に行なうことが可能となる。
【0030】
上述の実施の形態では、レーザ光の光軸ずれ及びパルス抜けを検査する機構について説明を省略したが、光軸ずれ、パルス抜け、パルス幅及びパルス高さのそれぞれを適宜組み合わせてレーザ光の状態を検査するようにしてもよい。
レーザ光の光路途中にガウシアン強度分布のレーザ光をトップハット強度分布のレーザ光に変換する位相型回折光学素子(DOE:Diffractive
Optical Element)500を設けてもよい。
上述の実施の形態では、薄膜の形成されたガラス基板1の表面からレーザ光を照射して薄膜にスクライブ線(溝)を形成する場合について説明したが、ガラス基板1の裏面からレーザ光を照射して、基板表面の薄膜にスクライブ線を形成するようにしてもよい。
上述の実施の形態では、ソーラパネル製造装置を例に説明したが、本発明はELパネル製造装置、ELパネル修正装置、FPD修正装置などのレーザ加工を行なう装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…ガラス基板、
10…レーザ加工ステーション、
102,104…アライメント部
106,107,108,109…グリッパ部
110…グリッパ支持駆動部、
112…加工エリア部、
121…ローラコンベア、
141…搬入出ロボットステーション、
143…表裏反転機構部、
1x〜1z,1m〜1r…ガラス基板
20…エア浮上ステージ、
30…スライドフレーム、
31…ベース板、
40…レーザ発生装置、
42…アッテネータ、
44…光アイソレータ、
50,60…分岐光学系部材、
511〜513…ハーフミラー
521〜523…反射ミラー、
531〜534…シャッター機構、
541〜544…集光レンズ、
56,561〜564…光ファイバガイド、
601〜604…筐体、
611〜614…集光レンズ、
621〜624…光アイソレータ、
631〜634…集光レンズ、
70…リニアエンコーダ、
80…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発生手段から出射されるレーザ光を複数のレーザ光に分岐し、分岐された複数のレーザ光をワークに対して相対的に移動させながら照射することによってワークに所定のレーザ加工を施すレーザ加工方法において、
前記レーザ発生手段から出射した前記レーザ光を前記レーザ加工の行なわれる位置まで導入する手段として光ファイバガイド手段を用いたことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工方法において、前記レーザ発生手段から出射した前記レーザ光を分岐した後に前記光ファイバガイド手段を用いてレーザ加工の行なわれる位置まで導入することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項3】
レーザ発生手段から出射されるレーザ光を複数のレーザ光に分岐し、分岐された複数のレーザ光を保持手段に保持されたワークに対して相対的に移動させながら照射することによってワークに所定の加工を施すレーザ加工装置において、
前記レーザ発生手段から出射した前記レーザ光を前記レーザ加工の行なわれる位置まで導入する手段として光ファイバガイド手段を用いたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ発生手段から出射した前記レーザ光を分岐する第1の分岐光学系手段と、
前記第1の分岐光学系手段によって分岐された前記レーザ光を個々に前記レーザ加工の行なわれる位置まで導入する光ファイバガイド手段群と、
前記光ファイバガイド手段を介して導入された前記レーザ光を前記ワークに対して照射する第2の分岐光学系手段とを備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項1若しくは2に記載のレーザ加工方法、又は請求項3若しくは4に記載のレーザ加工装置を用いて、ソーラパネルを製造することを特徴とするソーラパネル製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−11397(P2012−11397A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147487(P2010−147487)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】